(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176177
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】D-セリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 13/06 20060101AFI20241212BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C12P13/06 D
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094516
(22)【出願日】2023-06-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明者等が、ウェブサイトで公開された日本農芸化学会2023年度大会の大会講演要旨集にて、D-セリンの製造方法について公開した。(公開日:令和5年3月5日)
(71)【出願人】
【識別番号】509298012
【氏名又は名称】公立大学法人宮城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金内 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽菜子
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE08
4B064CA02
4B064CC03
4B064CC06
4B064CD19
4B064CD20
4B064DA10
4B065AA49X
4B065AA49Y
4B065AC14
4B065BB15
4B065BB16
4B065BB17
4B065BB18
4B065BB19
4B065BB29
4B065BC03
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】L-セリンからD-セリンへの変換率を向上したD-セリンの製造方法を提供する。
【解決手段】D-セリンの製造方法は、0.5~1.0質量%のL-セリンと、0.1~5.0質量%のD-アラビノース、デンプン、メレチトース、ソルビトール、ガラクトース、又はスクロースと、1.0~2.0質量%の酵母エキスと、0.5~2.0質量%のペプトンと、5.0~10μg/リットルのピリドキサール塩酸塩又はビオチンとを含む培地において、ラクトコッカス ラクティス H74株(寄託番号:NITE P-03887)を用いて発酵培養することによりL-セリンの少なくとも一部をD-セリンに変換する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5~1.0質量%のL-セリンと、
0.1~5.0質量%のD-アラビノース、デンプン、メレチトース、ソルビトール、ガラクトース、又はスクロースと、
1.0~2.0質量%の酵母エキスと、
0.5~2.0質量%のペプトンと、
5.0~10μg/リットルのピリドキサール塩酸塩又はビオチンと
を含む培地において、ラクトコッカス ラクティス H74株(寄託番号:NITE P-03887)を用いて発酵培養することにより前記L-セリンの少なくとも一部をD-セリンに変換するD-セリンの製造方法。
【請求項2】
15~37℃の温度で2~8日間発酵培養する、請求項1に記載のD-セリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、D-セリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸には、広く天然に存在するL型のアミノ酸と、存在量は少ないが生物の代謝に関わるD型のアミノ酸とが存在する。通常の食品から得られるアミノ酸は、動植物のタンパク質を分解することで得られるのでL型のアミノ酸である。一方、体内の代謝に関わるアミノ酸の一つであるD型のアミノ酸は、天然界の存在量は少なく、動植物のタンパク質を分解することにより得ることは難しい。そこで、発酵法のみならず、重金属の触媒を用いた化学的製造法も提唱されているが(例えば、特許文献1を参照)、衛生面の観点から食品などの用途に適用することは難しく、また、製品中にL型のアミノ酸が混入する場合も多い。
【0003】
一方で、様々な食品からD型のアミノ酸を検出することが近年では可能になってきており、生鮮食品よりも発酵食品や熟成食品において高濃度のD型のアミノ酸が検出されることと、D型のアミノ酸が体内で様々な代謝機能に関わることとがわかってきた。そのため、様々なD型のアミノ酸が発酵法でも生産されるようになってきているが(例えば、特許文献2及び3を参照)、その生産性が低いのが現状で、L型のアミノ酸が混入することや、D型のアミノ酸のうちD-セリンの生産については報告例が少ない。近年では、D-セリンは統合失調症やアルツハイマー病、脳卒中等、脳内の神経伝達に関わる疾患に関与し、それらの症状を改善する可能性があることが報告されている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5478035号公報
【特許文献2】特許第3834960号公報
【特許文献3】特許第5965875号公報
【特許文献4】特許第6978874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常の乳酸菌による発酵でL-セリンをD-セリンに変換しようとすると、L-セリンとD-セリンとが等量となり、すなわち、L-セリンの添加量の50重量パーセントしかD-セリンに変換されず、残りのL-セリンが不純物として残存してしまうという課題があった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、L-セリンからD-セリンへの変換率を向上したD-セリンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るD-セリンの製造方法は、0.5~1.0質量%のL-セリンと、0.1~5.0質量%のD-アラビノース、デンプン、メレチトース、ソルビトール、ガラクトース、又はスクロースと、1.0~2.0質量%の酵母エキスと、0.5~2.0質量%のペプトンと、5.0~10μg/リットルのピリドキサール塩酸塩又はビオチンとを含む培地において、ラクトコッカス ラクティス H74株(寄託番号:NITE P-03887)を用いて発酵培養することにより前記L-セリンの少なくとも一部をD-セリンに変換する。
【発明の効果】
【0008】
本開示のD-セリンの製造方法によれば、L-セリンからD-セリンへの変換率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】培地に添加されるビタミン類の種類及び添加量についての検証結果を示すグラフである。
【
図2】培地に添加される糖類の種類についての検証結果を示すグラフである。
【
図3】培地に添加されるD-アラビノースの添加量についての検証結果を示すグラフである。
【
図4】培地に添加されるL-セリンの濃度についての検証結果を示すグラフである。
【
図5】発酵温度についての検証結果を示すグラフである。
【
図6】発酵培養時間についての検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に係るD-セリンの製造方法の概要)
本開示に係るD-セリンの製造方法は、ラクトコッカス ラクティス H74株(寄託番号:NITE P-03887)を用いて発酵培養することにより前記L-セリンの少なくとも一部をD-セリンに変換するものである。
【0011】
ラクトコッカス ラクティス H74株を用いた発酵培養は培地において行われる。発酵培養に使用される培地には、0.5~1.0質量%のL-セリンと、0.1~5.0質量%のD-アラビノース、デンプン、メレチトース、又はソルビトールと、1.0~2.0質量%の酵母エキスと、0.5~2.0質量%のペプトンと、5.0~10μg/リットルのピリドキサール塩酸塩又はビオチンとが含まれる。発酵培養は、15~30℃の温度で2~8日間行うのが好ましい。
【実施例0012】
(実施例の概要)
以下で説明する実施例において、下記事項の検証を行った。
1.培地に添加されるビタミン類の種類及び添加量についての検証
2.培地に添加される糖類の種類及び添加量についての検証
3.培地に添加されるL-セリンの添加量についての検証
4.発酵温度についての検証
5.発酵培養時間についての検証
【0013】
<1.培地に添加されるビタミン類の種類及び添加量について>
1.0質量%のグルコースと、1.0質量%の粉末酵母エキス(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のパンクレアチン消化カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のL-セリンと、0.1質量%のトウィーン80と、0.2質量%の酢酸ナトリウムと、0.5容量%のミネラル溶液(40mgの硫酸マグネシウムと、2mgの硫酸マンガンと、2mgの硫酸鉄と、2mgの塩化ナトリウムとを含む)とを含む基本培地に、ビタミン類としてビオチン又はピリドキサール塩酸塩を添加し、それぞれの濃度が1.0μg/L、5.0μg/L、10.0μg/Lである6つの培地サンプルと、対照としてビタミン類を添加しない培地サンプルとの合計7つの培地サンプルを準備した。ラクトコッカス ラクティス H74株は予め、OXOID社から入手した30mLのMRS培地で前培養した。この培養菌体は、これらの培地サンプルのそれぞれに、最終菌体数が1ml当たり1.0×10
7細胞となるように添加し、30℃の温度で48時間発酵培養を行った。発酵培養終了後、培地中のD-セリンの濃度を測定し、L-セリンからD-セリンへの変換率(相対変換率)を算出した。その結果を
図1に示す。尚、
図1の縦軸にとった相対変換率とは、最も変換率が高かった条件(ピリドキサール塩酸塩を5.0μg/L添加した条件)で得られた変換率に対する各条件で得られた変換率の百分率である。
【0014】
ビタミン類を添加しない条件よりもビオチン又はピリドキサール塩酸塩を添加した条件の方が高い変換率を得られることが明らかになった。ビオチンとピリドキサール塩酸塩との対比については、ビオチンを添加した条件よりもピリドキサール塩酸塩を添加した条件の方が、高い変換能が得られた。ピリドキサールは、酵素反応において補酵素的に働くので、ビオチンを添加した条件に比べて活性が亢進したのではないかと考察される。添加量については、ビオチン及びピリドキサール塩酸塩の両方とも、1.0μg/Lの条件よりも5.0~10.0μg/Lの条件のほうが、高い変換能が得られた。したがって、本開示に係るD-セリンの製造方法におけるビオチン及びピリドキサール塩酸塩の好ましい添加量は5.0~10.0μg/Lである。
【0015】
<2.培地に添加される糖類の種類及び添加量について>
1.0質量%の粉末酵母エキス(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のパンクレアチン消化カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社)と、0.1質量%のL-セリンと、0.1質量%のトウィーン80と、0.2質量%の酢酸ナトリウムと、5.0μg/Lのピリドキサール塩酸塩と、0.5容量%のミネラル溶液(40mgの硫酸マグネシウムと、2mgの硫酸マンガンと、2mgの硫酸鉄と、2mgの塩化ナトリウムとを含む)とを含む基本培地に、各種糖を1.0質量%の濃度となるように添加した17の培地サンプルと、糖を添加しない1つの培地サンプルとの合計18の培地サンプルを準備した。この検証実験で使用した糖は、D-アラビノース、デンプン、メチレトース、ソルビトール、ガラクトース、スクロース、ラフィノース、グルコース、マンニトール、ラクトース、マルトース、フラクトース、サリシン、マンノース、L-アラビノース、キシロース、トレハロースである。ラクトコッカス ラクティス H74株は予め、OXOID社から入手した30mLのMRS培地で前培養した。この培養菌体は、これらの培地サンプルのそれぞれに、最終菌体数が1ml当たり1.0×10
7細胞となるように添加し、30℃の温度で48時間発酵培養を行った。発酵培養終了後、培地中のD-セリンの濃度を測定し、L-セリンからD-セリンへの変換率(相対変換率)を算出した。その結果を
図2に示す。
【0016】
最も高い変換率を得られた糖はD-アラビノースであった。デンプン、メチレトース、ソルビトール、ガラクトース、スクロースについては、D-アラビノースに比べて変換率は劣るが、実用的には比較的十分な結果であった。ただし、D-アラビノースを使用した場合に得られる変換率に対する相対変換率が10%未満のラフィノース等については、実用的には変換率が不十分であると言える。したがって、本開示に係るD-セリンの製造方法において使用できる最も好ましい等はD-アラビノースであり、D-アラビノースよりも効果は劣るが、デンプン、メチレトース、ソルビトール、ガラクトース、スクロースについても使用できる。
【0017】
次に、上述の検証実験で最も変換率が高かったD-アラビノースについて、培地への添加量についての適した範囲の検証を行った。1.0質量%の粉末酵母エキス(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のパンクレアチン消化カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社)と、0.1質量%のL-セリンと、0.1質量%のトウィーン80と、0.2質量%の酢酸ナトリウムと、5.0μg/Lのピリドキサール塩酸塩と、0.5容量%のミネラル溶液(40mgの硫酸マグネシウムと、2mgの硫酸マンガンと、2mgの硫酸鉄と、2mgの塩化ナトリウムとを含む)とを含む基本培地にD-アラビノースを添加し、D-アラビノースの濃度が0.1質量%、1.0質量%、5.0質量%、10質量%である4つの培地サンプルを準備した。ラクトコッカス ラクティス H74株は予め、OXOID社から入手した30mLのMRS培地で前培養した。この培養菌体は、これらの培地サンプルのそれぞれに、最終菌体数が1ml当たり1.0×10
7細胞となるように添加し、30℃の温度で48時間発酵培養を行った。発酵培養終了後、培地中のD-セリンの濃度を測定し、L-セリンからD-セリンへの変換率(相対変換率)を算出した。その結果を
図3に示す。
【0018】
D-アラビノースの濃度を1.0質量%とした場合に変換率が最も高く、D-アラビノースの濃度が0.1~5.0質量%であれば、D-アラビノースの濃度を1.0質量%とした場合の変換率に対する相対変換率が80~90%となる。一方で、D-アラビノースの濃度を10質量%とした場合には、相対変換率が20%程度となり、急激な低下が見られた。この結果から、D-アラビノースの適切な濃度(添加量)は、0.1~5.0質量%であると言える。デンプン、メチレトース、ソルビトールの添加量についても同じことが言えると考察できる。
【0019】
<3.培地に添加されるL-セリンの添加量について>
1.0質量%のD-アラビノースと、1.0質量%の粉末酵母エキス(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のパンクレアチン消化カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社)と、0.1質量%のトウィーン80と、0.2質量%の酢酸ナトリウムと、5.0μg/Lのピリドキサール塩酸塩と、0.5容量%のミネラル溶液(40mgの硫酸マグネシウムと、2mgの硫酸マンガンと、2mgの硫酸鉄と、2mgの塩化ナトリウムとを含む)とを含む基本培地にL-セリンを添加し、L-セリンの濃度が0.1質量%、1.0質量%、5.0質量%、1質量%である3つの培地サンプルを準備した。ラクトコッカス ラクティス H74株は予め、OXOID社から入手した30mLのMRS培地で前培養した。この培養菌体は、これらの培地サンプルのそれぞれに、最終菌体数が1ml当たり1.0×10
7細胞となるように添加し、30℃の温度で48時間発酵培養を行った。発酵培養終了後、培地中のD-セリンの濃度を測定した。その結果を
図4に示す。
【0020】
L-セリンの濃度を0.1質量%とした培養発効後のD-セリンの濃度に対し、L-セリンの濃度を0.5~1質量%とした培養発効後のL-セリンの濃度は約6倍の値を示した。この結果から、L-セリンの適切な濃度(添加量)は、0.5~1質量%であると言える。
【0021】
<4.発酵温度についての検証>
1.0質量%のL-セリンと、1.0質量%のD-アラビノースと、1.0質量%の粉末酵母エキス(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のパンクレアチン消化カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社)と、0.1質量%のトウィーン80と、0.2質量%の酢酸ナトリウムと、5.0μg/Lのピリドキサール塩酸塩と、0.5容量%のミネラル溶液(40mgの硫酸マグネシウムと、2mgの硫酸マンガンと、2mgの硫酸鉄と、2mgの塩化ナトリウムとを含む)とを含む基本培地に、OXOID社から入手した30mLのMRS培地で予め前培養したラクトコッカス ラクティス H74株を、最終菌体数が1ml当たり1.0×10
7細胞となるように添加し、15℃、30℃、37℃で48時間発酵培養を行った。培地終了後にD-セリンの濃度を測定し、L-セリンからD-セリンへの変換率(発酵培養終了後における変換率に対する相対変換率)を算出した。その結果を
図6に示す。
【0022】
3種類の温度での実験のうち、15℃の温度で最も高い変換率が得られたのに対し、30℃での変換率は15℃での変換率の約28%であり、さらに37℃での変換率は15℃での変換率の約16%であった。
図5には示していないが、40℃という温度以外は同じ条件で行った実験では、変換率は10%以下となった。さらに、
図5には示していないが、10度以下という温度以外は同じ条件で行った実験では、変換率は数%程度という低いものであった。本来、菌体の増殖のために使われるD-アミノ酸は、増殖が旺盛な30℃から37℃で、分解や菌体内での取り込みなどの栄養分とされていると考えられる。一方、温度が低い状態(15℃未満)では、菌体が生育できないため、L-セリンからD-セリンへの変換もできないと考えられる。したがって、本開示では、L-セリンからD-セリンへの変換が可能な温度域は15℃から37℃であり、15℃から30℃の温度域がさらに好ましく、15℃での発酵が最も好ましい。
【0023】
<5.発酵培養時間についての検証>
1.0質量%のL-セリンと、1.0質量%のD-アラビノースと、1.0質量%の粉末酵母エキス(極東製薬工業株式会社)と、0.5質量%のパンクレアチン消化カゼインペプトン(極東製薬工業株式会社)と、0.1質量%のトウィーン80と、0.2質量%の酢酸ナトリウムと、5.0μg/Lのピリドキサール塩酸塩と、0.5容量%のミネラル溶液(40mgの硫酸マグネシウムと、2mgの硫酸マンガンと、2mgの硫酸鉄と、2mgの塩化ナトリウムとを含む)とを含む基本培地に、OXOID社から入手した30mLのMRS培地で予め前培養したラクトコッカス ラクティス H74株を、最終菌体数が1ml当たり1.0×10
7細胞となるように添加し、30℃の温度で8日間発酵培養を行った。発酵培養の途中の3回と、発酵培養終了後との合計4回、培地中のD-セリンの濃度を測定し、L-セリンからD-セリンへの変換率(発酵培養終了後における変換率に対する相対変換率)を算出した。その結果を
図6に示す。
【0024】
発酵培養開始から1日経過後までは変換率があまり向上せず、2日経過後に急激に変換率が上昇し、8日経過後までは変換率が微増する傾向を示した。この結果から、発酵培養の期間としては最低2日程度を必要とし、8日経過後までは変換率に対して悪影響も見られなかった。したがって、培養発酵の適切な期間は2~8日であると言える。
【0025】
このように、本開示のD-セリンの製造方法によれば、L-セリンからD-セリンへの変換率を向上することができる。
【0026】
<その他の条件についての考察>
酵母エキス及びペプトンの添加量についてはそれぞれ、1.0質量%及び0.5質量%の実施例しかなかったが、これらの添加量は多い方が好ましい一方で、培地に溶解可能な量に上限があり、また添加量が多すぎると発酵培養のコストが増加することから、酵母エキスの添加量についての適した範囲は1.0~2.0質量%の範囲が好ましく、ペプトンの添加量についての適した範囲は0.5~2.0質量%の範囲が好ましい。