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  • 特開-内燃機関の燃料供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017618
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/48 20190101AFI20240201BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F02M37/48
F02M37/00 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120375
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】野沢 唯
(57)【要約】
【課題】複数の燃料フィルタの目詰まりの発生頻度を均等化し、燃料フィルタのメンテナンスインターバルを延長することができる内燃機関の燃料供給装置を提供する。
【解決手段】この燃料供給装置100の燃料供給通路は、第1の燃料フィルタ20と、第2の燃料フィルタ30と、主還流通路70と、第1還流通路80と、第2還流通路90とを備える。さらに、第1の燃料フィルタ20に設けられ、燃料供給装置100の要求負圧よりも高い場合に開弁する第1の調圧弁と、第2の燃料フィルタ30に設けられ、燃料供給装置100の要求負圧よりも高い場合に開弁する第2の調圧弁と、第1の調圧弁の下流側に位置する第1のオリフィスと、第2の調圧弁の下流側に位置する第2のオリフィスと、を備える。第1のオリフィスの径は、第2のオリフィスの径よりも大きくなっている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ポンプによって燃料タンク内の燃料をコモンレールへ供給し、前記コモンレールによって蓄圧された燃料を燃料噴射弁へ供給すると共に、前記コモンレールからの余剰燃料を前記燃料タンクへ還流させる燃料供給通路を備えた内燃機関の燃料供給装置であって、
前記燃料供給通路は、
前記燃料タンクと前記燃料ポンプとの間に設けられる第1の燃料フィルタと、
前記燃料タンクと前記燃料ポンプとの間に設けられ、前記第1の燃料フィルタよりも下流側に設けられる第2の燃料フィルタと、
前記コモンレールからの余剰燃料を前記燃料タンクへ還流させる主還流通路と、
前記主還流通路及び前記燃料噴射弁からの余剰燃料を前記1の燃料フィルタに供給する第1還流通路と、
前記第1還流通路からの余剰燃料を前記第2の燃料フィルタに供給する第2還流通路と、
前記第1の燃料フィルタに設けられ、前記燃料供給装置の要求負圧よりも高い場合に開弁する第1の調圧弁と、
前記第2の燃料フィルタに設けられ、前記燃料供給装置の要求負圧よりも高い場合に開弁する第2の調圧弁と、
前記第1の燃料フィルタに設けられ、前記第1の調圧弁の下流側に位置する第1のオリフィスと、
前記第2の燃料フィルタに設けられ、前記第2の調圧弁の下流側に位置する第2のオリフィスと、を備え、
前記第1のオリフィスの径が前記第2のオリフィスの径よりも大きくなっていることを特徴とする、内燃機関の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の燃料供給装置として、例えばディーゼルエンジンでは、燃料タンクに貯留された燃料をエンジン本体のシリンダへ供給するまでに、燃料フィルタを介してコモンレールや燃料噴射弁などの高圧燃料系の構成部品へ供給して、エンジン本体のシリンダへ燃料が供給される。ディーゼルエンジンで使用される軽油やバイオ燃料などの燃料は、低温環境下においてパラフィン系成分が結晶化し、これが成長してワックスが析出され固化され、ワックスによって燃料フィルタが目詰まりすることがある。特にバイオ燃料の場合には、通常の軽油よりも固化する温度が高いことが知られている。
【0003】
下記特許文献1の燃料流路では、燃料タンクと燃料フィルタとの間に、第1流路部と、第1流路部から互いに分岐して延びる第2流路部及び第3流路部と、第2流路部及び第3流路部が合流する第4流路部と、を有し、第2流路部と第3流路部との分岐部に、所定以上の大きさのワックスが第2流路部に流れ込むのを阻止する分離器が配置されており、加熱装置は、第3流路部を加熱可能な位置に配置されている。
【0004】
この燃料溶融装置では、燃料流路を通って燃料タンクから内燃機関に供給される燃料は、燃料フィルタの上流側において、第1流路部から第2流路部及び第3流路部に分流される。このとき、第2流路部と第3流路部との分岐部に分離器が配置されているため、所定以上の大きさのワックスは、第2流路部に流れ込むことなく第3流路部に流れ込む。そして、加熱装置が第3流路部を加熱可能な位置に配置されているため、第3流路部に流れ込んだワックスは、加熱装置の加熱により溶融されて、第4流路部に流れ込む。このため、ワックスによる燃料流路の詰まりを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-080873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、ワックスを溶融するために、電熱線等の発熱体による加熱装置を常時通電していると余計な電力が消費されてしまう。また、バイオ燃料や燃料性状の悪い燃料を使用することが想定される場合には、複数の燃料フィルタを設けることがあるが、複数の燃料フィルタのうち、上流側の目詰まりの発生する頻度が多い傾向にある。
【0007】
本発明の目的は、複数の燃料フィルタの目詰まりの発生頻度を均等化し、燃料フィルタのメンテナンスインターバルを延長することができる内燃機関の燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
本適用例に係る内燃機関の燃料供給装置は、燃料ポンプによって燃料タンク内の燃料をコモンレールへ供給し、前記コモンレールによって蓄圧された燃料を燃料噴射弁へ供給すると共に、前記コモンレールからの余剰燃料を前記燃料タンクへ還流させる燃料供給通路を備えた、内燃機関の燃料供給装置であって、前記燃料供給通路は、前記燃料タンクと前記燃料ポンプとの間に設けられる第1の燃料フィルタと、前記燃料タンクと前記燃料ポンプとの間に設けられ、前記第1の燃料フィルタよりも下流側に設けられる第2の燃料フィルタと、前記コモンレールからの余剰燃料を前記燃料タンクへ還流させる主還流通路と、前記主還流通路及び前記燃料噴射弁からの余剰燃料を前記1の燃料フィルタに供給する第1還流通路と、前記第1還流通路からの余剰燃料を前記第2の燃料フィルタに供給する第2還流通路と、前記第1の燃料フィルタに設けられ、前記燃料供給装置の要求負圧よりも高い場合に開弁する第1の調圧弁と、前記第2の燃料フィルタに設けられ、前記燃料供給装置の要求負圧よりも高い場合に開弁する第2の調圧弁と、前記第1の燃料フィルタに設けられ、前記第1の調圧弁の下流側に位置する第1のオリフィスと、前記第2の燃料フィルタに設けられ、前記第2の調圧弁の下流側に位置する第2のオリフィスと、を備え、前記第1のオリフィスの径は、前記第2のオリフィスの径よりも大きくなっている。
【0010】
このように、第1の燃料フィルタ及び第2の燃料フィルタの負圧が燃料供給装置の要求負圧より高くなった場合には、第1の調圧弁及び第2の調圧弁が開弁し、第1のオリフィス及び第2のオリフィスを介して第1の燃料フィルタ及び第2の燃料フィルタに余剰燃料が供給される。これにより、燃料フィルタにワックスが析出しても、高温の余剰燃料により溶解させて目詰まりを解消することができる。特に、第1のオリフィスの径は、前記第2のオリフィスの径よりも大きくすることで、比較的目詰まりしやすい上流側の第1の燃料フィルタにより多くの余剰燃料を供給でき、目詰まりの発生頻度を均等化できる。
【0011】
本適用例に係る内燃機関の燃料供給装置によれば、複数の燃料フィルタの目詰まりの発生頻度を均等化し、燃料フィルタのメンテナンスインターバルを延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る内燃機関の燃料供給装置における一実施形態を示す全体構成図である。
図2図1に示す第1の燃料フィルタの一部を示す部分概略図である。
図3図1に示す第1の燃料フィルタの上部を示す部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(内燃機関の燃料供給装置の構成)
次に、本発明に係る内燃機関の燃料供給装置における一実施形態について説明する。図1に示すように、燃料供給装置100は、燃料タンク10と、第1の燃料フィルタ20と、第2の燃料フィルタ30と、燃料ポンプ40と、コモンレール50と、燃料噴射弁60(60A~60F)と、主還流通路70と、第1還流通路80と、第2還流通路90とを備えている。これらの構成10~90などによって燃料供給通路が構成されている。
【0014】
燃料タンク10は、燃料を貯留するためのタンクである。燃料としては、例えば、本実施形態ではバイオ燃料を例に説明するが、燃料はこれに限られず、他にも軽油、等が挙げられる。
【0015】
第1の燃料フィルタ20は、燃料タンク10と燃料ポンプ40との間に設けられ、燃料タンク10から第1供給路101を介して供給される燃料F1を濾過するためのものである。図2に示すように、第1の燃料フィルタ20は、フィルタケース21内に設けられた燃料F1を濾過するための円筒状の第1フィルタ部材21a(フィルタエレメント)と、第1供給路101からの燃料F2を第1フィルタ部材21aに流入させるための第1流入部22と、第1フィルタ部材21aから排出される燃料F2を排出するための第1排出部23とを備えている。第1の燃料フィルタ20においては、第1フィルタ部材21aの径方向外側から燃料F1が供給され、第1フィルタ部材21aの内部において燃料F1から不純物が除去され、これにより得られる燃料F2が第1フィルタ部材21aの径方向内側から第1排出部23に吸引される。第1排出部23の一部には、第1の調圧弁V1が設けられている。第1の調圧弁V1の技術的意義については後述する。第1の燃料フィルタ20の第1排出部23は第2供給路102に接続され、当該第2供給路102は第2の燃料フィルタ30に接続されている。
【0016】
第2の燃料フィルタ30は、燃料タンク10と燃料ポンプ40との間において第1の燃料フィルタ20よりも供給燃料の流れにおいて下流側に設けられ、第1の燃料フィルタ20から第2供給路102を介して供給される燃料F2を濾過するためのものである。第2の燃料フィルタ30の基本構成は、第1の燃料フィルタ20と同様であり、図2に示すフィルタケース31内に設けられた第2フィルタ部材31a(フィルタエレメント)と、第2流入部32と、第2排出管33とを備えている。また、第2排出部33には第2の調圧弁V2が設けられている。ただし、第2の燃料フィルタ30においては、図2に示す燃料F1に代えて燃料F2が供給され、図2に示す燃料F2に代えて燃料F3が排出される。第2フィルタ部材31a及び第1フィルタ部材21aはいずれも濾紙からなるが、第2フィルタ部材31aの方が第1フィルタ部材21aよりも目が細かい。そして、第2の燃料フィルタ30の第2排出部33は第3供給路103に接続され、当該第3供給路103は燃料ポンプ40に接続されている。
【0017】
燃料ポンプ40は、燃料タンク10から燃料F1を吸い上げ、吸い上げた燃料F1を第1の燃料フィルタ20と第2の燃料フィルタ30とに通過させ、第2の燃料フィルタ30から排出された燃料F3を第4供給路104を介してコモンレール50に供給するためのものである。
【0018】
コモンレール50は、燃料ポンプ40から供給された燃料F3を蓄圧し、高圧状態に蓄圧した燃料F4(F4A~F4F)を複数の吐出口(図示せず)から各第5供給路105A~105Fを介して複数の燃料噴射弁60(60A~60F)にそれぞれ供給するためのものである。
【0019】
燃料噴射弁60(60A~60F)は、それぞれ内燃機関(図示せず)のシリンダ室(図示せず)に燃料SA~SFを噴射するためのものである。本実施形態の内燃機関は、6気筒のディーゼルエンジンである。
【0020】
主還流通路70は、コモンレール50に設けられる圧力調整弁(図示せず)から供給される余剰燃料R1と、燃料ポンプ40に設けられる流量制御弁(図示せず)から供給される余剰燃料Rpとを合流させた余剰燃料Rmを、第1還流通路80に供給するものであり、余剰燃料Rmを最終的に燃料タンク10に還流させるためのものである。具体的には、コモンレール50において所定圧力以上となることにより圧力調整弁が開弁し、燃料ポンプ40において所定流量以上となることにより流量制御弁が開弁すると、コモンレール50の圧力調整弁から流出する余剰燃料R1と、燃料ポンプ40の流量制御弁から流出する余剰燃料Rpとが合流して余剰燃料Rmとなり、この余剰燃料Rmが、主還流通路70から第1還流通路80に供給され、後述するように最終的には燃料タンク10まで還流する。
【0021】
第1還流通路80は、主還流通路70からの余剰燃料Rmと、燃料噴射弁60(60A~60F)からそれぞれ排出された余剰燃料R2(R2A~R2F)を合流させた余剰燃料R3とを、第1の燃料フィルタ20に還流させるためのものである。
【0022】
第1の燃料フィルタ20は、図3に示すように、第1還流通路80から戻された余剰燃料R4を受け入れる第1受入管24と、この余剰燃料R4を第2還流通路90に供給する第1連結管25と、第1受入管24及び第1連結管25に連通している第1バルブ管26と、第1バルブ管26の先端側に設けられている第1弁体27と、第1弁体27に取り付けられている第1ばね28とを備えている。主に第1弁体27及び第1ばね28により、燃料供給装置100の要求負圧よりも高い場合に開弁する第1の調圧弁V1が構成されている。第1弁体27は、第1の燃料フィルタ20の第1排出部23の負圧に応じて、第1ばね28の伸縮力に抗して摺動可能である。また、第1バルブ管26の先端側には、第1のオリフィスO1が形成されている。第1のオリフィスO1は、余剰燃料R4の流れにおいて第1の調圧弁V1より下流側となる位置に形成され、第1流入部22と連通している。
【0023】
第1の調圧弁V1は、第1の燃料フィルタ20が目詰まりしておらず、第1の燃料フィルタ20の第1排出部23の負圧が燃料供給装置100として要求される負圧(要求負圧)以下の通常時においては、第1弁体27により第1のオリフィスO1を塞いでいる。一方、第1の燃料フィルタ20が目詰まりし始め、第1の燃料フィルタ20の第1排出部23の負圧が燃料供給装置100として要求される負圧(要求負圧)よりも高くなると、第1弁体27は第1のオリフィスO1を開放する。第1のオリフィスO1が開放されると、余剰燃料R4が第1流入部22に流入することになる。
【0024】
第2還流通路90は、第1の燃料フィルタ20における第1連結管25から供給された余剰燃料R5を、第2の燃料フィルタ30に還流させるためのものである。
【0025】
第2の燃料フィルタ30は、第1の燃料フィルタ20と同様に、図3に示す構成を備えている。ただし、第1の燃料フィルタ20における第1受入管24が、第1還流通路80からの余剰燃料R4を受け入れるのに対し、第2の燃料フィルタ30における第2受入管34は、第2還流通路90からの余剰燃料R6を受け入れる。当該第2受入管34には、余剰燃料R7を燃料タンク10に還流させるための第2連結管35が連通している。また、第2の燃料フィルタ30は、第2受入管34及び第2連結管35に連通している第2バルブ管36と、第2バルブ管36の先端側に設けられている第2弁体37と、第2弁体37に取り付けられている第2ばね38とを備えている。主に第2弁体37及び第2ばね38により、燃料供給装置100の要求負圧よりも高い場合に開弁する第2の調圧弁V2が構成されている。第2弁体37は、第2の燃料フィルタ30の第2排出部33の負圧に応じて、第2ばね38の伸縮力に抗して摺動可能であり、機能としては第1の調圧弁V1と同じである。また、第2バルブ管36の先端側には、第2のオリフィスO2が形成されている。第2のオリフィスO2は、余剰燃料R6の流れにおいて第2の調圧弁V2より下流側となる位置に形成され、第2流入部32と連通している。
【0026】
さらに、第1のオリフィスO1の径は、第2のオリフィスО2の径よりも大きくなっている。これにより、第1の燃料フィルタ20の第1のオリフィスO1から第1フィルタ部材21aに戻される余剰燃料R4の流量が、第2の燃料フィルタ30の第2のオリフィスO2から第2フィルタ部材31aに戻される余剰燃料R6の流量よりも多くなっている。
【0027】
(内燃機関の燃料供給装置の動作)
次に、本実施形態に係る燃料供給装置100の動作について説明する。まず、図1に示すように、燃料タンク10に貯留されている燃料F1を燃料ポンプ40により吸い上げる。次に、吸い上げた燃料F1を、図2に示すように、第1の燃料フィルタ20における第1フィルタ部材21aに供給する。さらに、これにより得られる燃料F2を、第1の燃料フィルタ20における第1排出管23から、第2の燃料フィルタ30における第2フィルタ部材31aに供給する。そして、これにより得られる燃料F3を、第2の燃料フィルタ30における第2排出管33から、燃料ポンプ40を介してコモンレール50に供給する。さらに、コモンレール50において、供給された燃料F3を蓄圧し、蓄圧した燃料F4(F4A~F4F)を複数の吐出口(図示せず)からそれぞれ燃料噴射弁60(60A~60F)に供給する。そして、燃料噴射弁60(60A~60F)から、それぞれ燃料SA~SFを内燃機関(図示せず)のシリンダ室(図示せず)に供給する。
【0028】
さらに、コモンレール50の圧力制御弁(図示せず)から流出した余剰燃料R1と、燃料ポンプ40の流量制御弁から流出した余剰燃料Rpとを合流させ、合流させた余剰燃料Rmを主還流通路70経由で第1還流通路80に供給する。また、燃料噴射弁60(60A~60F)からそれぞれ排出された余剰燃料R2A~R2Fを合流させた余剰燃料R3を、第1還流通路80に供給する。そして、図3に示すように、第1還流通路80から、第1の燃料フィルタ20における第1受入管24に余剰燃料R4を供給し、第1受入管24から第1連結管25に流入した余剰燃料R5を第2還流通路90に流す。
【0029】
ここで、第1の燃料フィルタ20における第1排出部23の負圧が要求負圧より大きくなると、第1の燃料フィルタ20における第1バルブ管26に形成された第1のオリフィスO1が開口した状態となり、第1の燃料フィルタ20における第1受入管24に流入した余剰燃料R4が、この第1のオリフィスO1から、第1の燃料フィルタ20における第1フィルタ部材21aに供給される。すると、この第1フィルタ部材21aにおいて、ワックスの析出により目詰まりが発生していても、高温の余剰燃料R4によりワックスを溶解させて目詰まりを解消することができる。
【0030】
一方、第1の燃料フィルタ20における第1排出部23の負圧が要求負圧以下であると、この第1のオリフィスO1が、第1の燃料フィルタ20における第1弁体27により塞がれた状態となり、第1の燃料フィルタ20における第1受入管24に流入した余剰燃料R4が、この第1のオリフィスO1から流出することなく、第1の燃料フィルタ20における第1の連結管25からのみ流出する。
【0031】
また、図1に示すように、第1の燃料フィルタ20から第2還流通路90経由で、第2の燃料フィルタ30における第2受入管34(図3参照)に余剰燃料R6を供給し、この第2受入管34から、第2の燃料フィルタ30における第2連結管35に流入した余剰燃料R7を燃料タンク10に戻す。なお、第2の燃料フィルタ30においても、第1の燃料フィルタ20と同様の動作により、第2のオリフィスO2の開閉がなされる。
【0032】
(内燃機関の燃料供給装置の効果)
本実施形態においては、第1の燃料フィルタ20における第1フィルタ部材21aは、第2の燃料フィルタ30における第2フィルタ部材31aよりも、供給燃料の流れにおける上流側に配置されているため、その分だけワックスが析出しやすい環境となっている。そこで、本実施形態においては、第1の燃料フィルタ20における第1バルブ管26に形成された第1のオリフィスO1の径が、第2の燃料フィルタ30における第2バルブ管36に形成された第2のオリフィスO2の径よりも大きくなっている。これにより、第1の燃料フィルタ20において第1のオリフィスO1から第1フィルタ部材21aに戻される余剰燃料R4の流量を、第2の燃料フィルタ30において第2のオリフィスO2から第2フィルタ部材31aに戻される余剰燃料R6の流量よりも多くすることができる。
【0033】
したがって、第1の燃料フィルタ20と第2の燃料フィルタ30とにおいて、それぞれのフィルタ部材21a、31aにおけるワックスの析出しやすさに応じて、それぞれのオリフィスО1、O2からフィルタ部材21a、31aに適量の余剰燃料R4、R6を供給することができる。これにより、それぞれのフィルタ部材21a、31aにおいてワックスが析出しても、析出したワックスを高温の余剰燃料R4、R6により溶解させ(完全に溶解させることができなくても、第1の燃料フィルタ20と第2の燃料フィルタ30とのフィルタ部材21a、31aにおいて発生する目詰まりの発生頻度を均等化することができ)、第1の燃料フィルタ20と第2の燃料フィルタ30とのメンテナンスのインターバルを延ばすことができ、その一方で、第2の燃料フィルタ30から十分な量の余剰燃料R7を燃料タンク10に戻すことができるため、燃料タンク10から燃料噴射弁60(60A~60F)を介して内燃機関のシリンダ室に噴射される燃料の流量を高めることができる。
【0034】
以上のことから、本実施形態の内燃機関の燃料供給装置によれば、複数の燃料フィルタの目詰まりの発生頻度を均等化し、燃料フィルタのメンテナンスインターバルを延長することができる。
【0035】
以上で本発明に係る内燃機関の燃料供給装置の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0036】
上記実施形態では、第1の調圧弁V1及び第2の調圧弁V2はいずれも燃料供給装置100の要求負圧より高い場合に開弁するが、第1の調圧弁V1及び第2の調圧弁V2の開弁する閾値となる圧力(閾値圧力)を異ならせてもよい。例えば、第1の燃料フィルタ20の方が目詰まりしやすいことを考慮して、第1の調圧弁V1の閾値圧力を第2の調圧弁V2よりも低くして、第1の調圧弁V1が先に開弁するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 内燃機関の燃料供給装置
10 燃料タンク
20 第1の燃料フィルタ
21、31 フィルタケース
21a、31a フィルタ部材
22、32 流入部
23、33 排出部
24、34 受入管
25、35 連結管
26、36 バルブ管
27、37 弁体
28、38 ばね
30 第2の燃料フィルタ
40 燃料ポンプ
50 コモンレール
60 燃料噴射弁
70 主還流通路
80 第1還流通路
90 第2還流通路
V1 第1の調圧弁
V2 第2の調圧弁
O1 第1のオリフィス
O2 第2のオリフィス
図1
図2
図3