(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176182
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】吸水性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20241212BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20241212BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20241212BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20241212BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08L101/02
C08K5/053
C08F220/06
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094522
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】301023009
【氏名又は名称】SDPグローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星山 裕城
【テーマコード(参考)】
3B200
4F070
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
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3B200DB02
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(57)【要約】
【課題】吸水速度と荷重下吸収量を両立させた、水溶性不飽和モノカルボン酸のカリウム塩を構成単位として有する吸水性樹脂組成物、これを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位と、内部架橋剤(b)に由来する構成単位と、を有し、表面が表面架橋剤(c)で架橋された構造を有する架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が20~100mPa・sである多価水酸基含有化合物(B)を含有する、吸水性樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位と、内部架橋剤(b)に由来する構成単位と、を有し、表面が表面架橋剤(c)で架橋された構造を有する架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が20~100mPa・sである多価水酸基含有化合物(B)を含有する、吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
疎水性物質(C)を含有する、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸水性樹脂組成物を含む吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を含む吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)及びそのカリウム塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、前記内部架橋剤(b)と、を含む単量体組成物を重合して前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程と、
前記含水ゲルを乾燥する乾燥工程と、
前記多価水酸基含有化合物(B)及び前記表面架橋剤(c)を含有する表面架橋剤組成物と、前記架橋重合体(A)と、を混合し、加熱して前記架橋重合体(A)を前記表面架橋剤(c)で表面架橋する表面架橋工程と、を有する吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記表面架橋剤組成物における前記多価水酸基含有化合物(B)の含有量が10重量%以上60重量%以下であり、前記表面架橋剤(c)の含有量が0.4重量%以上5.0重量%以下である、請求項5に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、パルプ等の親水性繊維とアクリル酸(塩)等とを主原料とする吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer:SAPともいう)が吸収体において幅広く利用されている。前記吸水性樹脂としては、例えばアクリル酸等の水溶性不飽和モノカルボン酸のナトリウム塩を構成単位として有するナトリウム塩系吸水性樹脂や、水溶性不飽和モノカルボン酸のカリウム塩を構成単位として有するカリウム塩系吸水性樹脂等が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、吸水性樹脂は荷重下吸収量を高めるために表面架橋されて用いられるが、前記カリウム塩系吸水性樹脂は、吸水速度が早いため、表面架橋を行う際、表面架橋剤を含有する溶液がカリウム塩系吸水性樹脂の表面全体に行き渡る前に部分的に吸収されてしまい、表面架橋が部分的なものになってしまう傾向があった。そのため、十分な荷重下吸収量を有するカリウム塩系吸水性樹脂組成物を得ることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、吸水速度と荷重下吸収量を両立させた、水溶性不飽和モノカルボン酸のカリウム塩を構成単位として有する吸水性樹脂組成物、これを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位と、内部架橋剤(b)に由来する構成単位と、を有し、表面が表面架橋剤(c)で架橋された構造を有する架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が20~100mPa・sである多価水酸基含有化合物(B)を含有する、吸水性樹脂組成物、これを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物である。
【0007】
本発明は、前記吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)及びそのカリウム塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、前記内部架橋剤(b)と、を含む単量体組成物を重合して前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程と、
前記含水ゲルを乾燥する乾燥工程と、
前記多価水酸基含有化合物(B)及び前記表面架橋剤(c)を含有する表面架橋剤組成物と、前記架橋重合体(A)と、を混合し、加熱して前記架橋重合体(A)を前記表面架橋剤(c)で表面架橋する表面架橋工程と、を有する吸水性樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸水速度と荷重下吸収量を両立させた、水溶性不飽和モノカルボン酸のカリウム塩を構成単位として有する吸水性樹脂組成物、これを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】吸水性樹脂組成物のゲル通液速度を測定するための濾過円筒管の断面を模式的に表した図。
【
図2】吸水性樹脂組成物のゲル通液速度を測定するための加圧軸及びおもりを模式的に表した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<吸水性樹脂組成物>
本実施形態の吸水性樹脂組成物は、水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位と、内部架橋剤(b)に由来する構成単位と、を有し、表面が表面架橋剤(c)で架橋された構造を有する架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物であって、
25℃における粘度が20~100mPa・sである多価水酸基含有化合物(B)を含有する。本実施形態の吸水性樹脂組成物によれば、吸水速度と荷重下吸収量を両立させた、水溶性不飽和モノカルボン酸のカリウム塩を構成単位として有する吸水性樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
〔架橋重合体(A)〕
水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩は、水溶性を有する不飽和カルボン酸のカリウム塩であれば特に限定されずに用いることができる。前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)は、架橋体にした際の吸水性能や入手の容易さの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メチレンコハク酸、及びシトラコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びメチレンコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0012】
なお、本明細書において、水溶性とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解することを意味する。
【0013】
前記架橋重合体(A)は、水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位とともに、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム以外のアルカリ金属塩に由来する構成単位を有していてもよい。カリウム以外のアルカリ金属としてはナトリウムが好ましい。
【0014】
前記架橋重合体(A)において、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位の合計モル数に対する前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位のモル数の割合は、得られる吸水性樹脂組成物の吸収性能の観点から、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
【0015】
前記架橋重合体(A)に含まれるモノマー(A1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位は、モノマー(A1)のアルカリ金属塩を含む単量体組成物を重合することによって得ることも出来るし、アルカリ金属塩を含まず前記モノマー(A1)を含む単量体組成物を重合して得られた含水ゲル状物とアルカリ金属の水酸化物とを混合してモノマー(A1)に由来する構成単位を中和することによっても得ることができる。
【0016】
前記架橋重合体(A)は、水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位とともに、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)に由来する構成単位を有していてもよい。前記架橋重合体(A)において、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位と、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)に由来する構成単位との合計モル数に対する前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位のモル数の割合は、皮膚に触れた際の皮膚への刺激を抑制する観点から、50~90モル%が好ましく、60~80モル%がより好ましい。
【0017】
前記架橋重合体(A)は、水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のカリウム塩に由来する構成単位とともに、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)と共重合可能なその他のビニルモノマー(A2)に由来する構成単位を有していてもよい。前記ビニルモノマー(A2)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記ビニルモノマー(A2)としては特に限定はなく、公知(例えば、特許第3648553号公報の0028~0029段落に開示されている疎水性ビニルモノマー、特開2003-165883号公報の0025段落及び特開2005-75982号公報の0058段落に開示されているビニルモノマー等)の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、具体的には例えば下記の(i)~(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン、並びにジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレン性モノマー
アルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等);並びにアルカジエン(ブタジエン及びイソプレン等)等。
(iii)炭素数5~15の脂環式エチレン性モノマー
モノエチレン性不飽和モノマー(ピネン、リモネン及びインデン等);並びにポリエチレン性ビニルモノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0019】
前記架橋重合体(A)において、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)に由来する構成単位、及び前記ビニルモノマー(A2)に由来する構成単位の合計モル数に対する前記ビニルモノマー(A2)に由来する構成単位のモル数の割合は、吸収性能等の観点から、0~5モル%が好ましく、0~3モル%がより好ましく、0~1.5モル%が更に好ましく、0モル%がより更に好ましい。
【0020】
〔内部架橋剤(b)〕
前記内部架橋剤(b)としては特に限定はなく公知(例えば、特許第3648553号公報の0031~0034段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有してかつ少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する架橋剤及び水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個有する架橋剤、特開2003-165883号公報の0028~0031段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、エチレン性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤及び反応性置換基を2個以上有する架橋剤、特開2005-75982号公報の0059段落に開示されている架橋性ビニルモノマー並びに特開2005-95759号公報の0015~0016段落に開示されている架橋性ビニルモノマー)の架橋剤等が使用できる。
【0021】
前記内部架橋剤(b)は、エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤が好ましく、モノマーとの反応性および吸水特性の観点から、エチレン性不飽和基を2個以上有する多価(メタ)アリル化合物及びアクリルアミド化合物が好ましく、アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等の多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテル、テトラアリロキシエタン並びにトリアリルイソシアヌレート等の多価(メタ)アリル化合物、並びに下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましい。前記内部架橋剤(b)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
【化1】
[一般式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である。X
1は、炭素数1以上の脂肪族基を有し、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を含んでもよいn価の有機基であり、前記脂肪族基は直鎖であっても分岐を有していてもよい。nは2から6の整数である。]
【0023】
前記一般式(1)で表される化合物の市販品としては、メチレンビスアクリルアミドや富士フィルム株式会社製のFOM-03006、FOM-03007、FOM-03008、FOM-03009が例示できる。
【0024】
前記架橋重合体(A)において、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)のアルカリ金属塩に由来する構成単位、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)に由来する構成単位、及び前記ビニルモノマー(A2)に由来する構成単位の合計モル数に対する前記内部架橋剤(b)に由来する構成単位のモル数の比は、吸収性能等の観点から、0.001~5が好ましく、0.005~3がより好ましく、0.005~1が更に好ましい。
【0025】
〔表面架橋剤(c)〕
前記吸水性樹脂組成物は、前記架橋重合体(A)の表面が表面架橋剤(c)により架橋された構造を有する。前記架橋重合体(A)の表面を架橋することにより、吸水性樹脂組成物のゲル強度を向上させることができ、望ましい保水量と荷重下における吸収量とを満足させることができる。前記表面架橋剤(c)は、無機物でも有機物でも用いることができる。前記表面架橋剤(c)としては、公知(特開昭59-189103号公報に記載の多価グリシジル化合物、多価アミン、多価アジリジン化合物及び多価イソシアネート化合物等、特開昭58-180233号公報及び特開昭61-16903号公報の多価アルコール、特開昭61-211305号公報及び特開昭61-252212号公報に記載のシランカップリング剤、特表平5-508425号公報に記載のアルキレンカーボネート、特開平11-240959号公報に記載の多価オキサゾリン化合物等)の有機表面架橋剤等が使用できる。これらの前記表面架橋剤(c)のうち、経済性及び吸収特性の観点から、多価グリシジル化合物、多価アルコール及び多価アミンが好ましく、更に好ましいのは多価グリシジル化合物及び多価アルコール、特に好ましいのは多価グリシジル化合物、最も好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。前記表面架橋剤(c)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0026】
前記表面架橋剤(c)の使用量(重量%)は、種類、架橋条件、目標とする性能等により種々変化させることができるため、特に限定はないが、吸水性樹脂組成物の保水量の観点から、前記吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、0.001~3が好ましく、0.005~2がより好ましく、0.01~1.5が更に好ましい。
【0027】
〔多価水酸基含有化合物(B)〕
前記吸水性樹脂組成物は、25℃における粘度が20~100mPa・sである多価水酸基含有化合物(B)を含有する。多価水酸基含有化合物(B)が前記吸水性樹脂組成物中に含有されていることで、前記吸水性樹脂組成物の壊れ防止や経時変化に対する安定性にも寄与する利点があり、多価水酸基含有化合物(B)の25℃における粘度が20~100mPa・sであることで吸水性樹脂組成物のゲル強度が向上し、保水量と荷重下における吸収量とに優れた吸水性樹脂組成物とすることができる。
【0028】
前記多価水酸基含有化合物(B)としては、エチレングリコール(25℃における粘度:21mPa・s)、ジエチレングリコール(25℃における粘度:36mPa・s)、トリエチレングリコール(25℃における粘度:48mPa・s)、プロピレングリコール(25℃における粘度:48mPa・s)、1,2-ブタンジオール(25℃における粘度:40mPa・s)、1,3-ブタンジオール(25℃における粘度:45mPa・s)、1,4-ブタンジオール(25℃における粘度:65mPa・s)、1,2-ペンタンジオール(25℃における粘度:60mPa・s)等が挙げられる。これら前記多価水酸基含有化合物(B)のうち、吸水性樹脂組成物のゲル強度、保水量及び荷重下吸収特性の観点から、多価アルコールが好ましく、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4-ブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。前記多価水酸基含有化合物(B)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、前記多価水酸基含有化合物(B)の25℃における粘度は実施例に記載の方法により測定する。
【0029】
前記吸水性樹脂組成物の固形分中の前記多価水酸基含有化合物(B)の含有量(重量%)は、架橋条件、目標とする性能等により種々変化させることができるため特に限定はないが、前記吸水性樹脂組成物の吸収性能の観点から、0.1~5が好ましく、0.2~3.0がより好ましく、0.3~1.5が更に好ましい。前記吸水性樹脂組成物の固形分中の前記多価水酸基含有化合物(B)の含有量(重量%)は以下の方法によって測定することができる。
【0030】
吸水性樹脂組成物の固形分5.0gを液体窒素にて十分に冷却し、冷凍粉砕機で粉砕する。粉砕した吸水性樹脂組成物の固形分2.000gを50mlスクリュー管に入れ、更に80%メタノール水溶液を20ml及び攪拌子を投入し蓋をした後に、密閉下で1時間半、400rpmで撹拌し、10分間静置する。次いで、スクリュー管の上澄み液5mlを回収し、メンブレンフィルター(ジーエルサイエンス製 GLクロマトディスク 孔径:0.2μm)にてろ過し、ろ過液をガスクロマトグラフにて下記条件で測定する。この測定値を検量線と比較することで、吸水性樹脂組成物の固形分中の多価水酸基含有化合物(B)の含有量を算出する。
[測定条件]
(1)装置:ガスクロマトグラフ Nexis GC-2030、島津製作所社製
(2)カラム:ZB-WAX 30m×0.25mmφ×0.25μm
(3)溶離液:メタノール/水=80/20(容量比)
(4)注入条件:キャリアガス:窒素、カラム流量:1.47ml/min、カラム温度80℃
(5)検量線:20mlメスフラスコに測定対象の有機溶媒0.600gを入れ、60%メタノール水溶液でメスアップし、3.0重量%溶液となるようにサンプルを作成する。次いで、3.0重量%溶液を使用し、0.3重量%、0.2重量%、0.1重量%の濃度検量線用サンプルを作成する。
【0031】
〔他の成分〕
前記吸水性樹脂組成物は、その性能を損なわない範囲で他の成分を多少含んでも良い。前記他の成分の例としては、下記疎水性物質(C)、抗菌剤(カチオン性界面活性剤等)、防腐剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、通液性向上剤、粉体流動性改良剤及び有機質繊維状物等が挙げられる。その量は前記吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、通常、5重量%以下である。
【0032】
[疎水性物質(C)]
前記吸水性樹脂組成物は、疎水性物質(C)を含有してもよい。当該疎水性物質(C)としては、炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)、フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する疎水性物質(C2)及びポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(C3)等が含まれる。
【0033】
炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)としては、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、ワックス、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物、長鎖脂肪族アミド及びこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0034】
ポリオレフィン樹脂としては、炭素数2~4のオレフィン{エチレン、プロピレン、イソブチレン及びイソプレン等}を必須構成単量体(オレフィンの含有量はポリオレフィン樹脂の重量に基づいて、少なくとも50重量%)としてなる重量平均分子量1000~100万の重合体{たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(エチレン-イソブチレン)及びイソプレン等}が挙げられる。
【0035】
ポリオレフィン樹脂誘導体としては、ポリオレフィン樹脂にカルボキシ基(-COOH)や1,3-オキソ-2-オキサプロピレン(-COOCO-)等を導入した重量平均分子量1000~100万の重合体{たとえば、ポリエチレン熱減成体、ポリプロピレン熱減成体、マレイン酸変性ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、マレイン化ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体のマレイン化物等}が挙げられる。
【0036】
ポリスチレン樹脂としては、重量平均分子量1000~100万の重合体等が使用できる。
【0037】
ポリスチレン樹脂誘導体としては、スチレンを必須構成単量体(スチレンの含有量は、ポリスチレン誘導体の重量に基づいて、少なくとも50重量%)としてなる重量平均分子量1000~100万の重合体{たとえば、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体及びスチレン-イソブチレン共重合体等}が挙げられる。
【0038】
ワックスとしては、融点50~200℃のワックス{たとえば、パラフィンワックス、ミツロウ、カルバナワックス及び牛脂等}が挙げられる。
【0039】
長鎖脂肪酸エステルとしては、炭素数8~30の脂肪酸と炭素数1~12のアルコールとのエステル{たとえば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、グリセリンラウリン酸モノエステル、グリセリンステアリン酸モノエステル、グリセリンオレイン酸モノエステル、ペンタエリスリットラウリン酸モノエステル、ペンタエリスリットステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリットオレイン酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビットラウリン酸モノエステル、ソルビットステアリン酸モノエステル、及びソルビットオレイン酸モノエステル等)、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖パルミチン酸モノエステル、ショ糖パルミチン酸ジエステル、ショ糖パルミチン酸トリエステル、ショ糖ステアリン酸モノエステル、ショ糖ステアリン酸ジエステル、及びショ糖ステアリン酸トリエステル等)及び牛脂等}が挙げられる。
【0040】
長鎖脂肪酸及びその塩としては、炭素数8~30の脂肪酸{たとえば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ダイマー酸及びベヘニン酸等}が挙げられ、その塩としては亜鉛、カルシウム、マグネシウム又はアルミニウム(以下、それぞれZn、Ca、Mg、Alと略す)との塩{たとえば、パルミチン酸Ca、パルミチン酸Al、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Al等}が挙げられる。
【0041】
長鎖脂肪族アルコールとしては、炭素数8~30の脂肪族アルコール{たとえば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等}が挙げられる。吸収性物品の耐モレ性の観点等から、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、及びペンタデシルアルコールが好ましく、さらに好ましくはステアリルアルコールである。
【0042】
長鎖脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物としては、前記の長鎖脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド(好ましくは炭素数2~4のアルキレンオキサイド)付加物(付加モル数=1~5)等が挙げられる。吸収性物品の耐モレ性の観点等から、オレイルアルコールのエチレンオキサイド2モル付加物、及びペンタデシルアルコールのエチレンオキサイド4モル付加物が好ましく、さらに好ましくはペンタデシルアルコールのエチレンオキサイド4モル付加物である。
【0043】
長鎖脂肪族アミドとしては、炭素数8~30の長鎖脂肪族一級アミンと炭素数1~30の炭化水素基を有するカルボン酸とのアミド化物、アンモニア又は炭素数1~7の1級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物、炭素数8~30の脂肪族鎖を少なくとも1つ有する長鎖脂肪族二級アミンと炭素数1~30のカルボン酸とのアミド化物及び炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を2個有する二級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物が挙げられる。
【0044】
炭素数8~30の長鎖脂肪族一級アミンと炭素数1~30の炭化水素基を有するカルボン酸とのアミド化物としては、1級アミンとカルボン酸とが1:1で反応した物と1:2で反応した物に分けられる。1:1で反応した物としては、酢酸N-オクチルアミド、酢酸N-ヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N-オクチルアミド及びヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。1:2で反応したものとしては、二酢酸N-オクチルアミド、二酢酸N-ヘキサコシルアミド、ジヘプタコサン酸N-オクチルアミド及びジヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。なお、1級アミンとカルボン酸とが1:2で反応した物の場合、使用するカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい。
【0045】
アンモニア又は炭素数1~7の1級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物としては、アンモニア又は1級アミンとカルボン酸とが1:1で反応した物と1:2で反応した物に分けられる。1:1で反応した物としては、ノナン酸アミド、ノナン酸メチルアミド、ノナン酸N-ヘプチルアミド、ヘプタコサン酸アミド、ヘプタコサン酸N-メチルアミド、ヘプタコサン酸N-ヘプチルアミド及びヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。1:2で反応したものとしては、ジノナン酸アミド、ジノナン酸N-メチルアミド、ジノナン酸N-ヘプチルアミド、ジオクタデカン酸アミド、ジオクタデカン酸N-エチルアミド、ジオクタデカン酸N-ヘプチルアミド、ジヘプタコサン酸アミド、ジヘプタコサン酸N-メチルアミド、ジヘプタコサン酸N-ヘプチルアミド及びジヘプタコサン酸N-ヘキサコシルアミド等が挙げられる。なお、アンモニア又は1級アミンとカルボン酸とが1:2で反応した物としては、使用するカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい。
【0046】
炭素数8~30の脂肪族鎖を少なくとも1つ有する長鎖脂肪族二級アミンと炭素数1~30のカルボン酸とのアミド化物としては、酢酸N-メチルオクチルアミド、酢酸N-メチルヘキサコシルアミド、酢酸N-オクチルヘキサコシルアミド、酢酸N-ジヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N-メチルオクチルアミド、ヘプタコサン酸N-メチルヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N-オクチルヘキサコシルアミド及びヘプタコサン酸N-ジヘキサコシルアミド等が挙げられる。
【0047】
炭素数1~7の脂肪族炭化水素基を2個有する二級アミンと炭素数8~30の長鎖脂肪酸とのアミド化物としては、ノナン酸N-ジメチルアミド、ノナン酸N-メチルヘプチルアミド、ノナン酸N-ジヘプチルアミド、ヘプタコサン酸N-ジメチルアミド、ヘプタコサン酸N-メチルヘプチルアミド及びヘプタコサン酸N-ジヘプチルアミド等が挙げられる。
【0048】
フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する疎水性物質(C2)としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルケン、パーフルオロアリール、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルアルコール及びこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0049】
ポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(C3)としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン{ポリオキシエチレン変性ポリシロキサン及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)変性ポリシロキサン等}、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン等及びこれらの混合物等が含まれる。
【0050】
疎水性物質(C)は、グリフィン法によるHLB値が好ましくは1~10であり、さらに好ましくは2~8、特に好ましくは3~7である。この範囲であると、初期膨潤時の耐ブロッキング性がさらに良好となる。グリフィン法によるHLB値は、界面活性剤の疎水性と親水性とのバランスを示す値であり、1~20までの値をとり、数値が小さいほど疎水性が強く、数値が大きいほど親水性が強いことを示す。なお、グリフィン法によるHLB値は下記式1より求められる値であり、下記式1において「親水基の式量の総和/分子量」とは、親水基の重量%を意味する。
式1) グリフィン法:HLB値=20×(親水基の式量の総和/分子量)
【0051】
前記疎水性物質(C)のうち、初期膨潤時の耐ブロッキング性の観点から、炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)が好ましく、より好ましくは長鎖脂肪酸エステル、及び長鎖脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物であり、さらに好ましくはショ糖脂肪酸エステル、オレイルアルコールのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB=4)、及びペンタデシルアルコールのエチレンオキサイド4モル付加物(HLB=9)である。
【0052】
ショ糖脂肪酸エステルのなかでも、HLBが10以下であるショ糖脂肪酸エステルが好ましく、ジ・トリ・ポリエステル体を50%以上含むショ糖ステアリン酸エステル[商品名:リョートーシュガーエステルS-970(HLB=9)、リョートーシュガーエステルS-370(HLB=3)、リョートーシュガーエステルS-070(HLB=1以下)等]が特に好ましい。
【0053】
疎水性物質(C)の使用量(重量%)は、吸収性能及び初期膨潤時の耐ブロッキング性の観点から架橋重合体(A)の重量に基づいて、0.001~1が好ましく、0.005~0.5がより好ましく、0.01~0.3が更に好ましい。
【0054】
前記吸水性樹脂組成物の0.9重量%生理食塩水に対する保水量(g/g)(以下、保水量ともいう)は、39以上55未満であることが好ましく、40以上50未満であることがより好ましく、41以上46未満が更に好ましい。この範囲であると、吸収体とした場合の液漏れが生じ難くなる。前記保水量は、前記内部架橋剤(b)及び前記表面架橋剤(c)の種類と量で適宜調整することができる。前記保水量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0055】
前記吸水性樹脂組成物は、ボルテックス法による吸収速度が、吸収性物品の漏れ抑制および表面ドライ性の観点から30(秒)以下が好ましく、28(秒)以下が更に好ましく、25(秒)以下が特に好ましい。ボルテックス法による吸水速度は、は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0056】
吸水性樹脂組成物のゲル通液速度(ml/分)は、オムツの吸収速度の観点から、5~300が好ましく、10~280がより好ましく、15~250が更に好ましい。吸水性樹脂組成物のゲル通液速度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0057】
吸水性樹脂組成物は、荷重下吸収量が10g/g以上であることが好ましく、13以上がより好ましい。この範囲であると、おむつの荷重下での吸収や液戻りが良好になる。吸水性樹脂組成物の加重下吸収量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0058】
前記吸水性樹脂組成物の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等の粒子が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状の粒子が好ましい。
【0059】
前記吸水性樹脂組成物の見掛け密度(g/ml)は、0.54~0.70が好ましく、0.56~0.68がより好ましく、0.58~0.66が更に好ましい。0.54~0.70の範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。なお、見掛け密度は、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される。
【0060】
<吸水性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の製造方法は、前記吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)及びそのカリウム塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、前記内部架橋剤(b)と、を含む単量体組成物を重合して前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程と、
前記含水ゲルを乾燥する乾燥工程と、
前記多価水酸基含有化合物(B)及び前記表面架橋剤(c)を含有する表面架橋剤組成物と、前記架橋重合体(A)と、を混合し、加熱して前記架橋重合体(A)を前記表面架橋剤(c)で表面架橋する表面架橋工程と、を有する。
【0061】
〔重合工程〕
本実施形態の製造方法は、前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)及びそのカリウム塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、前記内部架橋剤(b)と、を含む単量体組成物を重合して前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程を有する。
【0062】
[モノマー(a2)]
加水分解により前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)となるモノマー(a2)を前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)とともに、あるいはその代わりに使用することができる。前記モノマー(a2)は特に限定はなく、加水分解によりカルボキシ基となる加水分解性置換基を1個有するモノマー等が例示できる。前記加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基(1,3-オキソ-1-オキサプロピレン基、-COO-CO-)、エステル結合を含む基(アルキルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はプロペニルオキシカルボニル、-COOR)及びシアノ基等が挙げられる。なお、Rは炭素数1~3のアルキル基(メチル、エチル及びプロピル)、ビニル、アリル及びプロペニルである。
【0063】
なお、本明細書において、前記モノマー(a2)における加水分解性とは、水及び必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により加水分解され、水溶性になる性質を意味する。前記モノマー(a2)の加水分解は、重合中、重合後及びこれらの両方のいずれで行っても良いが、得られる吸水性樹脂組成物の吸収性能の観点から、重合後が好ましい。
【0064】
前記単量体組成物の重合方法として好ましい方法としては、重合溶媒を用いる溶液重合や逆相懸濁重合が挙げられる。前記単量体組成物の重合方法のなかでも、好ましいのは溶液重合法であり、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、特に好ましいのは水を重合溶媒として用いる水溶液重合法であり、保水量が大きく、且つ水可溶性成分量の少ない吸水性樹脂組成物が得られ、重合時の温度コントロールが不要である点から、水溶液断熱重合法が最も好ましい。
【0065】
重合方法として逆相懸濁重合法をとる場合、キシレン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタン等の炭化水素系溶媒を使用して重合を行うことができ、必要に応じて、従来公知の分散剤又は界面活性剤の存在下に重合を行っても良い。
【0066】
前記単量体組成物を水溶液重合で重合する場合、水と有機溶媒とを含む混合溶媒を重合溶媒として使用することができ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの2種以上の混合物を挙げられる。前記単量体組成物を水溶液重合で重合する場合、有機溶媒の使用量(重量%)は、水の重量を基準として40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0067】
水溶液重合を行う場合、重合溶液中に含まれるモノマー(A1)、及び前記内部架橋剤(b)を含む単量体組成物の濃度、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)、前記ビニルモノマー(A2)、及び前記内部架橋剤(b)を含む単量体組成物の濃度は、重合溶液の合計重量に基づいて10~50重量%が好ましく、15~40重量%がより好ましい。
【0068】
重合に触媒を用いる場合、従来公知のラジカル重合用触媒が使用可能であり、例えば、アゾ化合物[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物(過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等)、有機過酸化物[過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド及びジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等]及びレドックス触媒(アルカリ金属の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム及びアスコルビン酸等の還元剤とアルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素及び有機過酸化物等の酸化剤との組み合わせよりなるもの)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用してもよく、これらの2種以上を併用しても良い。
【0069】
ラジカル重合触媒の使用量(重量%)は、前記モノマー(A1)及びモノマー(A1)のアルカリ金属塩の合計重量に基づいて、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)、モノマー(A1)のアルカリ金属塩及び前記ビニルモノマー(A2)の合計重量に基づいて、0.0005~5が好ましく、0.001~2がより好ましい。
【0070】
重合時には、必要に応じて連鎖移動剤等の重合コントロール剤を併用しても良く、これらの具体例としては、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、アルキルメルカプタン、ハロゲン化アルキル、チオカルボニル化合物等が挙げられる。これらの重合コントロール剤は、単独で使用してもよく、これらの2種以上を併用しても良い。
【0071】
重合コントロール剤の使用量(重量%)は、前記モノマー(A1)及びモノマー(A1)のアルカリ金属塩の合計重量に基づいて、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)、モノマー(A1)のアルカリ金属塩及び前記ビニルモノマー(A2)の合計重量に基づいて、0.0005~5が好ましく、0.001~2がより好ましい。
【0072】
重合開始温度は、使用する触媒の種類によって適宜調整することができるが、0~100℃が好ましく、2~80℃がより好ましい。重合時の到達温度は、反応性の観点から50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
【0073】
重合に溶媒(有機溶媒及び水等)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することが好ましい。溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有量(重量%)は、前記架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~10が好ましく、0~5がより好ましく、0~3が更に好ましく、0~1がより更に好ましい。この範囲であると、吸水性樹脂組成物の吸収性能が更に良好となる。
【0074】
溶媒に水を含む場合、留去後の水分(重量%)は、前記架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~20が好ましく、1~10がより好ましく、2~9が更に好ましく、3~8がより更に好ましい。この範囲であると、吸収性能が更に良好となる。
【0075】
溶媒の含有量又は水分は、赤外水分測定器[(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W]により加熱したときの測定試料の重量減量から求められる。
【0076】
前記の重合方法により前記架橋重合体(A)が水を含んだ含水ゲル状物(以下、含水ゲルともいう)を得ることができる。
【0077】
〔細断工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、必要に応じて、前記含水ゲルを細断する細断工程を有してもよい。細断後のゲルの大きさ(最長径)は50μm~10cmが好ましく、100μm~2cmがより好ましく、1mm~1cmが更に好ましい。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性が更に良好となる。
【0078】
細断は、公知の方法で行うことができ、細断装置(例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機)等を使用して細断できる。
【0079】
吸水性樹脂組成物の製造において、含水ゲル状物を中和する場合、裁断工程において塩基と含水ゲル状物を混合して中和する方法が好ましい。
【0080】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を通常使用できる。
【0081】
〔乾燥工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記含水ゲルを乾燥し、含水ゲル中の溶媒(水を含む)を留去する吸水性樹脂組成物を得る乾燥工程を有する。
【0082】
前記乾燥工程において、含水ゲル中の溶媒を留去する方法としては、80~230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100~230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0083】
〔粉砕工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記乾燥工程で得られた吸水性樹脂組成物を粉砕し、前記架橋重合体(A)を含有する粒子状の吸水性樹脂組成物を得る粉砕工程を有していてもよい。
【0084】
前記粉砕工程において、前記架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物を粉砕する方法については、特に限定はなく、粉砕装置(例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機)等が使用できる。粉砕された吸水性樹脂組成物は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0085】
〔表面架橋工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記多価水酸基含有化合物(B)及び前記表面架橋剤(c)を含有する表面架橋剤組成物と、前記架橋重合体(A)と、を混合し、加熱して前記架橋重合体(A)を前記表面架橋剤(c)で表面架橋する表面架橋工程を有する。
【0086】
前記表面架橋工程を経て得られた吸水性樹脂組成物は、前記架橋重合体(A)の表面が前記表面架橋剤(c)により架橋された構造を有する。前記架橋重合体(A)の表面を架橋することにより前記吸水性樹脂組成物のゲル強度を向上させることができ、前記吸水性樹脂組成物の望ましい保水量と荷重下における吸収量とを満足させることができる。また、前記架橋重合体(A)を前記表面架橋剤(c)で表面架橋する際に、前記表面架橋剤(c)を前記多価水酸基含有化合物(B)で希釈して用いることで表面架橋の均一性が向上し、吸水性樹脂組成物の望ましい保水量とゲル強度向上による微粉発生量の低下とを満足させることができる。
【0087】
前記表面架橋剤(c)を前記多価水酸基含有化合物(B)で希釈して用いることで前記架橋重合体(A)の表面架橋の均一性が向上する理由は定かではないが、溶媒として前記多価水酸基含有化合物(B)を使用することで、前記架橋重合体(A)が前記表面架橋剤組成物を吸収する速度をコントロールし、その結果、均一な表面架橋を実現できると推察できる。
【0088】
前記表面架橋剤組成物における前記多価水酸基含有化合物(B)の含有量は、前記架橋重合体(A)が前記表面架橋剤を吸収する速度をコントロールする観点から、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上が更に好ましく、表面架橋剤(c)の反応性および前記表面架橋剤組成物添加後の前記架橋重合体(A)のハンドリング性の観点から、60重量%以下が好ましく、55重量%以下がより好ましく、50重量%以下が更に好ましい。
【0089】
前記表面架橋剤組成物における前記表面架橋剤(c)の含有量は、架橋剤組成物添加後の架橋重合体のハンドリング性の観点から、0.4重量%以上が好ましく、0.8重量%以上がより好ましく、1.2重量%以上が更に好ましく、架橋剤組成物を均一に添加する観点から、5.0重量%以下が好ましく、4.5重量%以下がより好ましく、3.5重量%以下が更に好ましい。
【0090】
前記架橋重合体(A)の表面架橋は、前記架橋重合体(A)と、前記表面架橋剤組成物とを混合し、加熱することで行うことができる。前記架橋重合体(A)と前記表面架橋剤(c)及び前記多価水酸基含有化合物(B)との混合方法としては、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、ミンチ混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等の混合装置を用いて前記架橋重合体(A)と前記表面架橋剤(c)及び前記有多価水酸基含有化合物(B)とを均一混合する方法が挙げられる。
【0091】
前記架橋重合体(A)と、前記表面架橋剤組成物とを混合した後、加熱処理を行う。加熱温度は、吸水性樹脂組成物の耐壊れ性の観点から好ましくは100~180℃、より好ましくは110~170℃、更に好ましくは120~160℃である。180℃以下の加熱であれば蒸気を利用した間接加熱が可能であり設備上有利であり、100℃未満の加熱温度では吸収性能が悪くなる場合がある。また、加熱時間は加熱温度により適宜設定することができるが、吸収性能の観点から、好ましくは5~60分、より好ましくは10~40分である。
【0092】
前記架橋重合体(A)の表面を前記表面架橋剤(c)により架橋した後、必要により篩別して粒度調整する。得られた粒子の平均粒経は、好ましくは100~600μm、より好ましくは200~500μmである。微粒子の含有量は少ない方が好ましく、100μm以下の粒子の含有量は3重量%以下であることが好ましく、150μm以下の粒子の含有量が3重量%以下であることがより好ましい。
【0093】
<吸収体>
前記吸水性樹脂組成物を用いて吸収体を得ることができる。吸収体としては、前記吸水性樹脂組成物を単独で用いても良く、他の材料と共に用いて吸収体としても良い。当該他の材料としては繊維状物等が挙げられる。繊維状物と共に用いた場合の吸収体の構造及び製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131
767号公報及び特開2005-097569号公報等)と同様である。
【0094】
上記繊維状物として好ましいのは、セルロース系繊維、有機系合成繊維及びセルロース系繊維と有機系合成繊維との混合物である。
【0095】
セルロース系繊維としては、例えばフラッフパルプ等の天然繊維、ビスコースレーヨン、アセテート及びキュプラ等のセルロース系化学繊維が挙げられる。このセルロース系天然繊維の原料(針葉樹及び広葉樹等)、製造方法(ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ
、メカニカルパルプ及びCTMP等)及び漂白方法等は特に限定されない。
【0096】
有機系合成繊維としては、例えばポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン系繊維及び熱融着性複合繊維(融点の異なる上記繊維の少なくとも2種を鞘芯型、偏芯型、並列型等に複合化された繊維、上記繊維の少なくとも2種をブレンドした繊維及び上記繊維の表層を改質した繊維等)が挙げられる。
【0097】
これらの繊維状物の内で好ましいのは、セルロース系天然繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリエステル系繊維、熱融着性複合繊維及びこれらの混合繊維であり、更に好ましいのは、得られた吸水剤の吸水後の形状保持性に優れるという点で、フラッフパルプ、熱融着性複合繊維及びこれらの混合繊維である。
【0098】
上記繊維状物の長さ、太さについては特に限定されず、長さは1~200mm、太さは0.1~100デニールの範囲であれば好適に使用することができる。形状についても繊維状であれば特に限定されず、細い円筒状、スプリットヤーン状、ステープル状、フィラメント状及びウェブ状等が例示される。
【0099】
前記吸水性樹脂粒子を、繊維状物と共に吸収体とする場合、前記吸水性樹脂粒子と繊維の重量比率(吸水性樹脂粒子の重量/繊維状物の重量)は40/60~90/10が好ましく、70/30~80/20がより好ましい。
【0100】
<吸収性物品>
前記吸水性樹脂組成物を用いて吸収性物品を得ることができる。具体的には、上記吸収体を用いる。吸収性物品としては、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生用品のみならず、結露防止剤、農業・園芸用保水剤、廃血液固化剤、使い捨てカイロ等の各種産業分野用における各種水性液体の吸収や保持剤用途、ゲル化剤用途等の各種用途に使用されるものとして適用可能である。吸収性物品の製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等に記載のもの)と同様である。
【実施例0101】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に定めない限り、部は重量部を示す。なお、吸水性樹脂組成物の保水量、ボルテックス法による吸収速度、ゲル通液速度、及び荷重下吸水量は以下の方法により、25±2℃、50±5RH%の室内で測定した。なお、使用する0.9重量%生理食塩水の温度は予め25℃±2℃に調整して使用した。
【0102】
<粘度の測定方法>
25.0℃に設定した恒温槽に、測定試料を投入したHARIO製200mLトールビーカーを静置し試料温度が25.0±0.5℃になるまで放置した。その後、測定試料が入ったトールビーカーを恒温槽に入れたまま、TV-10M(東機産業社製)を用いてMガードおよびM1ローターを取り付け回転数60rpmで測定した。
粘度が測定可能範囲を超える場合は、適時回転数やローターの種類を調整し測定した。
【0103】
<保水量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロンメッシュで作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に吸水性樹脂組成物1.00gを入れ、0.9重量%生理食塩水1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後引き上げて、15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。
保水量(g/g)=(h1)-(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
【0104】
<ボルテックス法による吸収速度>
標準ふるいを用いて吸水性樹脂組成物を300~600μmの範囲にふるい分けして測定用試料とした。JIS R 3503に規定する底面が平らな100mlのトールビーカー内で毎分600回の回転数で撹拌されている生理食塩水50gを、2.000gの測定用試料が、吸収し終わるまでに必要とした時間(単位:秒)をJIS K7224-1996に準拠して測定し、ボルテックス法で測定される吸収速度とした。
【0105】
<ゲル通液速度>
図1及び
図2で示される器具を用いて以下の操作により測定した。
標準ふるいを用いて300~600μmの範囲にふるい分けした吸水性樹脂組成物0.32gを150ml生理食塩水1(食塩濃度0.9%)に30分間浸漬して膨潤ゲル粒子2を調製した。そして、垂直に立てた円筒3{直径(内径)25.4mm、長さ40cm、底部から60mlの位置及び40mlの位置にそれぞれ目盛り線4及び目盛り線5が設けてある。}の底部に、金網6(目開き106μm、JIS Z8801-1:2006)と、開閉自在のコック7(通液部の内径5mm)とを有する濾過円筒管内に、コック7を閉鎖した状態で、調製した膨潤ゲル粒子2を生理食塩水と共に移した後、この膨潤ゲル粒子2の上に円形金網8(目開き150μm、直径25mm)が金網面に対して垂直に結合する加圧軸9(重さ22g、長さ47cm)を金網と膨潤ゲル粒子とが接触するように載せ、更に加圧軸9におもり10(88.5g)を載せ、1分間静置した。引き続き、コック7を開き、濾過円筒管内の液面が60ml目盛り線4から40ml目盛り線5になるのに要する時間(T1;秒)を計測し、次式よりゲル通液速度(ml/min)を求めた。
ゲル通液速度(ml/min)=20ml×60/(T1-T2)
なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃で行い、T2は測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測した時間である。
【0106】
<荷重下吸収量>
吸水性樹脂組成物を30メッシュふるいと60メッシュふるいを用いて300~600μmの範囲にふるい分けし測定用試料とした。目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、当該測定用試料0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定用試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この測定用試料の上に分銅(重量:310.6g、外径:24.5mm、)を乗せた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定用試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾けて底部に付着した水を一箇所に集めて水滴として垂らすことで余分な水を除去した後、測定用試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から加圧下吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
荷重下吸収量(g/g)={(M2)-(M1)}/0.16
【0107】
<実施例1>
アクリル酸(a1){三菱化学製 純度100%}270部、内部架橋剤(b){ダイソー製 ペンタエリスリトールトリアリルエーテル}1.148部及びイオン交換水716部を撹拌し混合物を得た。混合物を3℃に保ちながら、混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.648部、2%アスコルビン酸水溶液1.215部及び2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液9.45部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が80℃に達した後、80±2℃で約5時間熟成することにより含水ゲルを得た。
【0108】
次に、この含水ゲルに48%水酸化カリウム水溶液315.56部を添加し、ミンチ機(ROYAL製 12VR-400K)に入れて、ゲル温度80℃で細断しながら、さらに疎水性物質(c)としてのショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.41部を添加して混合し、含水ゲルの中和と疎水性物質の混合を行った。中和混合した含水ゲルを通気型乾燥機(井上金属工業製)にて、供給温度150℃、風速2m/秒の条件下で30分間通気乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster製 OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、篩分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整して、架橋重合体(A-1)を得た。
【0109】
架橋重合体(A-1)100部を高速攪拌(ホソカワミクロン製 高速攪拌タービュライザー、回転数:2000rpm)しながら、コロダルシリカ[Klebosol30cal25(メルク社製コロイダルシリカ、固形分30%)]1.0部、表面架橋剤(c)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部、多価水酸基含有化合物(B)としてのエチレングリコール(25℃における粘度=21mPa・s)0.8部、及び水1.4部を混合して得られた表面架橋剤組成物3.3部と、硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物0.6部、多価水酸基含有化合物(B)としてのエチレングリコール(25℃における粘度=21mPa・s)0.8部及び水1.7部を混合して得られた混合液とを同時に添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱し、室温まで冷却して、吸水性樹脂組成物(P-1)を得た。
【0110】
<実施例2>
実施例1において、表面架橋剤組成物と混合液とにそれぞれ含まれるエチレングリコールをプロピレングリコール(25℃における粘度=48mPa・s)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(P-2)を得た。
【0111】
<実施例3>
実施例1において表面架橋剤組成物と混合液とにそれぞれ含まれるエチレングリコールを1,4-ブタンジオール(25℃における粘度=65mPa・s)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(P-3)を得た。
【0112】
<実施例4>
実施例1において、48%水酸化カリウム水溶液315.56部を48%水酸化カリウム水溶液219.14部に変更し、表面架橋剤組成物と混合液とにそれぞれ含まれるエチレングリコールをプロピレングリコールに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(P-4)を得た。
【0113】
<実施例5>
実施例1において、48%水酸化カリウム水溶液315.56部を48%水酸化カリウム水溶液394.45部に変更し、表面架橋剤組成物と混合液とにそれぞれ含まれるエチレングリコールをプロピレングリコールに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(P-5)を得た。
【0114】
<実施例6>
実施例1において、48%水酸化カリウム水溶液315.56部を48%水酸化カリウム水溶液157.78部と48%水酸化ナトリウム水溶液112.5部との混合物に変更し、表面架橋剤(c)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部を0.12部に、表面架橋剤組成物に含まれるエチレングリコール0.8部をプロピレングリコール1.0部に、表面架橋剤組成物に含まれる水1.4部を1.7部に、混合液に含まれるエチレングリコール0.8部をプロピレングリコール1.0部に、混合液に含まれる水1.7部を1.9部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(P-6)を得た。
【0115】
<実施例7>
実施例1において、疎水性物質(c)としてのショ糖ステアリン酸エステル0.41部をポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋化成工業株式会社製ナロアクティーCL-40、HLB=9)0.54部に変更し、表面架橋剤組成物と混合液とにそれぞれ含まれるエチレングリコール0.8部をプロピレングリコール0.8部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(P-7)を得た。
【0116】
<比較例1>
実施例1において、48%水酸化カリウム水溶液315.56部を48%水酸化ナトリウム水溶液225.0部に変更し、表面架橋剤(c)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部を0.15部に、表面架橋剤組成物と混合液とにそれぞれ含まれるエチレングリコール0.8部をプロピレングリコール1.1部に、表面架橋剤組成物に含まれる水1.4部を2.0部に、混合液に含まれる水1.7部を2.0部に変更したこと以外は、実施例1同様の操作を行い、比較用の吸水性樹脂組成物(R-1)を得た。
【0117】
<比較例2>
実施例1において、多価水酸基含有化合物(B)であるエチレングリコールをグリセリン(25℃における粘度=950mPa・s)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較用の吸水性樹脂組成物(R-2)を得た。
【0118】
実施例1~7の吸水性樹脂組成物(P-1)~(P-7)及び比較例1~2の比較用の吸水性樹脂組成物(R-1)ボルテックス法~(R-2)の保水量、ボルテックス法による吸収速度、ゲル通液速度、及び荷重下吸水量を測定した結果を表1に示す。
【0119】
【0120】
表1に示す結果から、本発明の吸水性樹脂組成物(実施例1~7)は、ボルテックス法による吸収速度が早い、すなわちSAPの吸収速度が早く、さらに保水量と荷重下における吸収量が優れることがわかる。
本発明の吸水性樹脂組成物は、各種の吸収体に適用することにより、吸収量が多く、逆戻り性や表面ドライ感に優れた吸収性物品にすることができることから、紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、紙タオル、パッド(失禁者用パッド及び手術用アンダーパッド等)及びペットシート(ペット尿吸収シート)等の衛生用品に好適に用いられ、特に紙おむつに最適である。なお、本発明の吸水性樹脂組成物は衛生用品のみならず、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤、青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物及び土壌等の保水剤、結露防止剤、止水材やパッキング材並びに人工雪等、種々の用途にも有用である。