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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176184
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】受信装置および通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20241212BHJP
   H04B 10/11 20130101ALI20241212BHJP
【FI】
H04B10/67
H04B10/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094528
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
(72)【発明者】
【氏名】鴨居 敦
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA26
5K102AD01
5K102AH02
5K102AL21
5K102MA02
5K102MB20
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH22
5K102PB01
5K102PC12
5K102PC16
5K102PH01
5K102PH31
5K102RB02
5K102RB03
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】360度の通信角を実現できる受信装置等を提供する。
【解決手段】受信装置は、ボールレンズと、少なくとも一つの受光器と、ボールレンズの周囲において受光器を移動可能に支持する支柱と、を備える受信装置とする。受光器は、ボールレンズに向けられた第1面と、第1面に対向する第2面とを有し、第1面と第2面とを貫通する貫通口が開けられた基板と、ボールレンズに受光部を向けて、基板の第1面における貫通口の周囲に配置された複数の積分用受光素子と、貫通口に合わせられた第1開口端と、第1開口端に対向する第2開口端とを含み、貫通口に対応付けられた第2面の側に配置された導光筒と、ボールレンズに受光部を向けて、導光筒の第2開口端に配置された通信用受光素子と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールレンズと、
少なくとも一つの受光器と、
前記ボールレンズの周囲において前記受光器を移動可能に支持する支柱と、
を備え、
前記受光器は、
前記ボールレンズに向けられた第1面と、前記第1面に対向する第2面とを有し、前記第1面と前記第2面とを貫通する貫通口が開けられた基板と、
前記ボールレンズに受光部を向けて、前記基板の前記第1面における前記貫通口の周囲に配置された複数の積分用受光素子と、
前記貫通口に対応付けられる第1開口端と、前記第1開口端に対向する第2開口端とを含み、前記貫通口に合わせて前記基板の前記第2面の側に配置された導光筒と、
前記ボールレンズに受光部を向けて、前記導光筒の前記第2開口端に配置された通信用受光素子と、を有する受信装置。
【請求項2】
複数の前記積分用受光素子は、前記貫通口の中心に対して点対称の位置関係で配置され、
前記通信用受光素子の受光部は、前記ボールレンズの集光点に合わせて配置される請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
複数の前記積分用受光素子および前記通信用受光素子によって受信された信号光に基づく電気信号を受信し、受信した電気信号に応じて前記受光器の受光面の角度と支柱の位置とを調整する制御部を備え、
前記制御部は、
複数の前記積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、前記受光器の受光面の角度と前記支柱の位置とを調整して、前記ボールレンズによって集光された信号光の集光位置に合わせて前記通信用受光素子の受光部の位置を調整する請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
複数の前記積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、受信強度が大きい前記積分用受光素子の方向に向けて、前記受光器の受光面の角度と前記支柱の位置とを移動させる請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
複数の前記積分用受光素子および前記通信用受光素子の受光部に対応付けて、受信対象である空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させるフィルタが配置される請求項1に記載の受信装置。
【請求項6】
前記積分用受光素子と前記通信用受光素子とは、異なる波長帯の光に感度を有する受光素子である請求項1に記載の受信装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の受信装置と、
空間光信号を送信する送信装置と、
前記受信装置の受光器による空間光信号の受光位置に応じて、前記受光器の位置および角度と、前記送信装置から送信される空間光信号の送信方向とを制御する通信制御装置と、を備える通信装置。
【請求項8】
前記通信制御装置は、
空間光信号の送信方向に応じて異なる変調周波数と信号パターンとが組み合わせられた送信パターンのサーチ用空間光信号を、送信方向に対応付けて前記送信装置に送信させ、
通信対象から送信されたサーチ用空間光信号の前記受信装置による受信に応じて、受信されたサーチ用空間光信号の送信パターンが追加された空間光信号を、送信方向に対応付けて前記送信装置に送信させる請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記通信制御装置は、
前記通信対象から送信されたサーチ用空間光信号の前記受信装置による受信に応じて、
前記受信装置が備える複数の積分用受光素子の各々によって受信されたサーチ用空間光信号に基づく信号光の強度に応じて、前記受光器の位置を前記受信装置に変更させ、
サーチ用空間光信号の送信条件の変更指示を前記送信装置に送信する請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信制御装置は、
前記通信対象との間で互いの方向が特定されると、サーチ範囲およびビーム径が狭められたサーチ用空間光信号を前記送信装置に送信させ、
前記積分用受光素子を用いた前記受光器の位置調整の終了に応じて、前記通信用受光素子を用いた詳細スキャンを実行する請求項9に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受信装置および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自由空間における空間光通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する信号光(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。無線通信で用いられる電波と比べて、光空間通信で用いられる空間光信号は、指向性が高い。また、空間光信号は、電波と干渉しない。空間光通信の分野においては、互いに対向する光通信装置を用いて、光通信ネットワークを構築できる。空間光信号は、指向性が高いため、遮蔽物によって物理的に空間光信号が遮られると通信が断絶してしまう。そのため、空間光通信においては、安定した光通信環境を実現するために、同時多方向接続により冗長化された光通信ネットワークが求められる。
【0003】
特許文献1には、親機と子機(通信対象)との間で信号光を送受信する光無線装置について開示されている。親機は、複数の送受信素子と、指定手段とを有する。複数の送受信素子は、互いに近接配置される。複数の送受信素子は、子機との間で信号光を送受信する。指定手段は、子機からの信号光に基づいて、最適な送受信素子を指定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-191696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法では、複数の送受信素子によって受信された信号光に基づいて、子機との通信に用いられる送受信素子が指定される。特許文献1の手法によれば、通信対象との間の信号光の送受信によって、通信が確立される。しかし、特許文献1の手法では、送受信素子の受光面に対する信号光の入射方向によっては、十分な強度の信号光が送受信素子に受信されず、通信対象との間で通信を確立できなかった。すなわち、特許文献1の手法では、360度の通信角を実現できなかった。
【0006】
本開示の目的は、360度の通信角を実現できる受信装置、受信装置および通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の受信装置は、ボールレンズと、少なくとも一つの受光器と、ボールレンズの周囲において受光器を移動可能に支持する支柱と、を備える。受光器は、ボールレンズに向けられた第1面と、第1面に対向する第2面とを有し、第1面と第2面とを貫通する貫通口が開けられた基板と、ボールレンズに受光部を向けて、基板の第1面における貫通口の周囲に配置された複数の積分用受光素子と、貫通口に合わせられた第1開口端と、第1開口端に対向する第2開口端とを含み、貫通口に対応付けられた第2面の側に配置された導光筒と、ボールレンズに受光部を向けて、導光筒の第2開口端に配置された通信用受光素子と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、360度の通信角を実現できる受信装置および通信装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示における受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図2】本開示における受信装置が備える受光器の構成の一例を示す側面図である。
図3】本開示における受信装置が備える受光器の構成の一例を示す斜視図である。
図4】本開示における受信装置が備えるボールレンズによって集光された信号光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図5】本開示における受信装置が備えるボールレンズによって集光された信号光が受光器に入射する様子の一例について説明するための概念図である。
図6】本開示における受信装置が備えるボールレンズによって集光された信号光が受光器に入射する様子の別の一例について説明するための概念図である。
図7】本開示における受信装置の通信対象から送信されたワイドスキャン用の空間光信号の受信例を示す概念図である。
図8】本開示における受信装置が備えるボールレンズによって集光された信号光の集光範囲の一例を示す概念図である。
図9】本開示における受信装置の通信対象から送信されたナロースキャン用の空間光信号の受信例を示す概念図である。
図10】本開示における受信装置が備えるボールレンズによって集光された信号光の集光範囲の一例を示す概念図である。
図11】本開示における受信装置が備える受光器の受光面をボールレンズの視座から見た概念図である。
図12】本開示における受信装置が備える受光器の受光面をボールレンズの視座から見た概念図である。
図13】本開示における受信装置が備える受光器に含まれる積分用受光素子の数を増やした例を示す概念図である。
図14】本開示における受信装置が備える受光器に含まれる積分用受光素子を大きくした例を示す概念図である。
図15】本開示における受信装置が備える受光器の一例を示す斜視図である。
図16】本開示における受信装置が備える受光器の一例を示す側面図である。
図17】本開示における受信装置が備える受光器の一例を示す斜視図である。
図18】本開示における通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図19】本開示における通信装置が備える送信装置の内部構成の斜視図である。
図20】本開示における通信装置が備える送信装置の内部構成の側面図である。
図21】本開示における通信装置が備える送信装置から送信されるサーチ用空間光信号の送信パターンについて説明するための概念図である。
図22】本開示における通信装置が備える受信装置に含まれる制御部の構成の一例を示すブロック図である。
図23】本開示における通信装置が備える受信装置に含まれる複数の積分用受光素子によって受信された信号光の強度に応じて、受光器の位置を変更する一例を示す概念図である。
図24】本開示における通信装置が備える送信装置から送信される空間光信号の送信方向を変更する一例を示す概念図である。
図25】本開示における通信装置が備える送信装置によるスキャン用空間光信号の送信例について説明するための概念図である。
図26】本開示における通信装置が備える送信装置から送信される空間光信号の送信パターンの一例について説明するための図である。
図27】本開示における通信装置の間における通信確立の一例について説明するための概念図である。
図28】本開示における通信装置が備える送信装置から送信される空間光信号の送信方向を最適化する処理について説明するための概念図である。
図29】本開示における通信装置が備える送信装置から送信された通信光を用いた通信対象の位置特定の一例について説明するための概念図である。
図30】本開示における通信装置が備える通信制御装置による受信装置の制御例について説明するためのフローチャートである。
図31】本開示における通信装置が備える通信制御装置による送信装置の制御例について説明するためのフローチャートである。
図32】本開示における受信装置の構成の一例を示す概念図である。
図33】本開示における受信装置が備える受光器の構成の一例を示す側面図である。
図34】本開示における受信装置が備える受光器の構成の一例を示す斜視図である。
図35】本開示における制御や処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0011】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。また、光の経路の一例を図示したり、構成が込み合ったりする等の理由により、断面にハッチングを施さない場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、空間を伝播する信号光(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の通信装置は、空間を伝播する光を送受光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。なお、本実施形態の説明で用いられる図面は、概念的なものであり、実際の構造を正確に描写したものではない。
【0013】
(構成)
図1は、本開示における受信装置10の構成の一例を示す概念図である。図1は、斜め上方の視座から受信装置10を見下ろした概念図である。受信装置10は、ボールレンズ11、受光器12、支柱18、制御部19、および土台180を備える。また、受信装置10は、受光器12の受光面の角度や、支柱18の位置を変更させる駆動器(図示しない)を有する。例えば、駆動器は、マイクロステッピングモータなどの小型のモータによって実現される。
【0014】
土台180の上面には、円軌道Rが配置される。円軌道Rには、支柱18の下端が移動可能に配置される。円軌道Rに沿って支柱18を移動させることによって、水平面内における受光器12の位置を調整できる。円軌道Rに沿った支柱18は、制御部19による駆動器(図示しない)の駆動制御によって調整される。
【0015】
支柱18の上端には、受光器12が配置される。受光器12の受光面は、ボールレンズ11に向けられる。例えば、垂直方向における受光器12の位置は、ボールレンズ11の周に沿って変更できるように、受信装置10が構成される。例えば、受光器12の受光面は、ボールレンズ11の周に沿って変更できるように、配置されることが好ましい。例えば、支柱18を伸縮させることによって、垂直方向における受光器12の位置が変更されるように、受信装置10が構成されてもよい。
【0016】
ボールレンズ11は、球形のレンズである。ボールレンズ11は、外部から到来した空間光信号(通信光、通知光)を集光する光学素子である。ボールレンズ11は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ11は、入射される空間光信号を集光する。ボールレンズ11によって集光された空間光信号に由来する光(信号光とも呼ぶ)は、そのボールレンズ11の集光領域に向けて集光される。ボールレンズ11は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ11は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。ボールレンズ11に入射した光は、ボールレンズ11の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ11の内部を進行する光は、ボールレンズ11の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ11から出射される光の大部分は、集光領域に向けて集光される。
【0017】
例えば、ボールレンズ11は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料が、ボールレンズ11に適用できる。例えば、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスが、ボールレンズ11に適用できる。例えば、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスが、ボールレンズ11に適用できる。例えば、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスが、ボールレンズ11に適用できる。例えば、石英ガラスが、ボールレンズ11に適用できる。例えば、サファイア等の結晶が、ボールレンズ11に適用できる。例えば、アクリル等の透明樹脂が、ボールレンズ11に適用できる。
【0018】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ11には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ11には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ11には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ11には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ11の材質には限定を加えない。ボールレンズ11の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0019】
受光器12は、支柱18に支持された状態で、ボールレンズ11の集光点を含む集光領域に配置される。ボールレンズ11の集光点は、一意に定まらない。そのため、受光器12は、ボールレンズ11の集光点を含む集光領域に配置される。図1の例の場合、受光器12は、ボールレンズ11の側方に配置される。受光器12の受光面は、ボールレンズ11の中心に向けて、配置される。
【0020】
図2図3は、受光器12の構成の一例を示す概念図である。図2は、受光器12を側方の視座から見た側面図である。図3は、受光器12の受光面を斜め上方から見た斜視図である。受光器12は、基板121、積分用受光素子122、導光筒124、通信用受光素子125、およびフィルタ127を有する。受光器12は、複数の積分用受光素子122を有する。図2図3の例において、受光器12は、4つの積分用受光素子122を有する。積分用受光素子122の数は、4つに限定されない。
【0021】
基板121は、プリント基板に用いられる基板である。基板121には、貫通口Aが形成される。貫通口Aの開口径は、導光筒124の第1開口端(図2の左側の開口端)の大きさに合わせて形成される。基板121の第1面(図2の左側の面)において、貫通口Aの周囲には、複数の積分用受光素子122が配置される。図2図3の例では、4つの積分用受光素子122が、貫通口Aの周囲に配置される。
【0022】
複数の積分用受光素子122は、基板121の第1面(図2の左側の面)に配置される。複数の積分用受光素子122は、基板121の貫通口Aの中心に対して点対称の位置関係で配置される。積分用受光素子122の受光部123は、フィルタ127を介して、ボールレンズ11に向けられる。積分用受光素子122は、通信対象である空間光信号の波長帯の光に対して感度を有する。例えば、積分用受光素子122は、赤外線に対して感度を有するフォトダイオードによって実現される。例えば、積分用受光素子122は、インジウムガリウムヒ素InGaAs系のフォトダイオードによって実現される。例えば、通信用受光素子125は、InGaAs系のフォトダイオードによって実現される。積分用受光素子122は、空間光信号を検知できればよいので、通信用受光素子125と比べて感度が小さくてもよい。そのため、積分用受光素子122は、ゲルマニウムGe系やシリコンSi系のフォトダイオードによって実現されてもよい。積分用受光素子122によって受光された空間光信号は、電気信号に変換される。変換後の電気信号は、制御部19に出力される。変換後の電気信号は、制御部19に含まれる積分器(図示しない)に供給される。積分器に供給された電気信号は、制御部19によって検出できるレベルまで積分される。
【0023】
通信用受光素子125は、導光筒124の第2開口端(図2の右側の開口端)に配置される。通信用受光素子125の受光部126は、フィルタ127を介して、ボールレンズ11に向けられる。通信用受光素子125は、通信対象である空間光信号の波長帯の光に対して感度を有する。例えば、通信用受光素子125は、赤外線に対して感度を有するフォトダイオードによって実現される。例えば、通信用受光素子125は、インジウムガリウムヒ素InGaAs系のフォトダイオードによって実現される通信用受光素子125によって受光された空間光信号は、電気信号に変換される。変換後の電気信号は、制御部19に出力される。
【0024】
フィルタ127は、受信対象である空間光信号の波長帯の光が通過する波長フィルタである。フィルタ127は、後段に配置された積分用受光素子122または通信用受光素子125の受信対象である空間光信号の波長帯の光を通過させる。フィルタ127は、受信対象ではない光を遮断する。フィルタ127の主な目的は、太陽光の影響を軽減することである。太陽光や外光の影響の少ない環境においては、フィルタ127が省略されてもよい。
【0025】
図4は、ボールレンズ11によって集光された光の軌跡の一例について説明するための概念図である。図4は、ボールレンズ11の一部を側方の視座から見た概念図である。ボールレンズ11の集光領域における光の強度は、ボールレンズ11からの位置に応じて変化する。位置aと比べると、位置b(集光点とも呼ぶ)の方が、光束密度が大きい。そのため、位置bの方が、受光される光の強度が大きい。通信用受光素子125の受光部126は、位置bの近傍に配置される。そのため、通信用受光素子125による信号光の受光効率が向上する。言い換えると、通信用受光素子125の受光部126は、位置bに合わせて配置される。それに対し、通信用受光素子125と比べて、積分用受光素子122は、ボールレンズ11に近い位置に配置される。
【0026】
図5は、ボールレンズ11によって集光された信号光が受光器12に入射する様子の一例を示す概念図である。図5は、受光器12を側方の視座から見た断面図を示す。図5の例の場合、ボールレンズ11によって集光された信号光は、通信用受光素子125の受光部126に照射される。図5の例の場合、通信用受光素子125によって受信された信号光に基づく電気信号は、制御部19によって処理される。
【0027】
制御部19は、複数の積分用受光素子122および通信用受光素子125によって受信された信号光に基づく電気信号を受信する。制御部19は、受信した電気信号をデコードする。例えば、制御部19は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御部19は、受信した電気信号に応じて、受光器12の受光面の角度を変更する第1駆動器(図示しない)と、支柱18の位置を変更させる第2駆動器(図示しない)とを駆動させて、受光器12の受光面の角度と支柱18の位置とを調整する。例えば、第1駆動器および第2駆動器は、マイクロステッピングモータなどの小型モータによって実現される。
【0028】
制御部19は、複数の積分用受光素子122の各々によって受信された信号光の強度に応じて、受光器12の受光面の角度と支柱18の位置とを調整する。制御部19は、ボールレンズ11によって集光された信号光の集光点の位置に、通信用受光素子125の受光部126の位置を合わせる。そのために、制御部19は、複数の積分用受光素子122の各々によって受信された信号光の強度に応じて、受信強度が大きい積分用受光素子122の方向に向けて、受光器12の受光面の角度と支柱18の位置とを移動させる。
【0029】
図6は、ボールレンズ11によって集光された信号光が受光器12に入射する様子の別の一例を示す概念図である。図6は、受光器12を側方の視座から見た断面図を示す。図6の例の場合、ボールレンズ11によって集光された信号光は、通信用受光素子125の受光部126に照射されず、積分用受光素子122の受光部123によって照射される。図6の例の場合、受光器12の位置を変更する必要がある。制御部19は、信号光を受信した積分用受光素子122の一に応じて、受光器12の位置を変更する。図6の例の場合、制御部19は、受光器12を上方に移動させる。
【0030】
図7は、通信対象Tから送信されたワイドスキャン用の空間光信号の受信例を示す概念図である。図7は、通信対象Tからワイドスキャン用の空間光信号が送信された例である。図8は、図7の例において、ボールレンズ11によって集光された信号光の集光範囲R1を示す。図8においては、複数の積分用受光素子122の受光部123を表す符号の末尾に番号(1~4)を付して、それぞれを区別する。図8の例では、受光部123-2および受光部123-3が集光範囲R1に含まれる。
【0031】
図9は、通信対象Tから送信されたナロースキャン用の空間光信号の受信例を示す概念図である。図9は、通信対象Tからナロースキャン用の空間光信号が送信された例である。図10は、図9の例において、ボールレンズ11によって集光された信号光の集光範囲R1を示す。図10においては、複数の積分用受光素子122の受光部123を表す符号の末尾に番号(1~4)を付して、それぞれを区別する。図8の例と同様に、図10の例では、受光部123-2および受光部123-3が集光範囲R1に含まれる。このように、2つの装置の位置関係が決まったら、信号光の集光範囲の位置は一意に決まる。なお、ワイドスキャンと比べて、ナロースキャンの方が、空間光信号のサーチ範囲が絞り込まれているため、ボールレンズ11によって集光された信号光の強度が強い。
【0032】
図11は、受光器12の受光面をボールレンズ11の視座から見た概念図である。図11には、積分用受光素子122の受光部123と、通信用受光素子125の受光部126との位置関係を示す。図11においては、複数の積分用受光素子122の受光部123を表す符号の末尾に番号(1~4)を付して、それぞれを区別する。また、図11には、導光筒124の内部を示す。複数の受光部123-1~4は、通信用受光素子125の受光部126を中心とする円周上に配置される。図11には、ボールレンズ11によって集光された光の集光範囲の一例を円で示す。
【0033】
集光範囲R2(破線)に照射された信号光は、通信用受光素子125の受光部126と、受光部123-3および受光部123-4によって受光される。受光部126、受光部123-3、および受光部123-4によって受信された信号光の強度に応じて、制御部19は、受光器12の位置を左下に移動させる。
【0034】
集光範囲R3(一点鎖線)に照射された信号光は、受光部123-4によって受光される。受光部123-4によって受信された信号光の強度に応じて、制御部19は、受光器12の位置を左向きに移動させる。
【0035】
集光範囲R4(二点鎖線)に照射された信号光は、受光部123-2および受光部123-3によって受光される。受光部123-2および受光部123-3によって受信された信号光の強度に応じて、制御部19は、受光器12の位置を右下に移動させる。
【0036】
図12図14は、積分用受光素子122の数や大きさに応じた信号光の受光状況の一例を示す概念図である。図12図14は、ボールレンズ11の側の視座から見た図である。図12図14の例では、ボールレンズ11によって集光された信号光が、集光範囲R5に照射される。
【0037】
図12は、これまで説明してきた受光器12の構成を示す。図12には、積分用受光素子122の受光部123、通信用受光素子125の受光部126、および導光筒124の内部を示す。図12の例では、受光部123が4つである。図12においては、複数の積分用受光素子122の受光部123を表す符号の末尾に番号(1~4)を付して、それぞれを区別する。図12の例の場合、集光範囲R5に照射された信号光は、左側に配置された一つの受光部123-4によって受信される。
【0038】
図13は、積分用受光素子122の数を増やした例である。図13には、積分用受光素子122の受光部123-1~8、通信用受光素子125の受光部126、および導光筒124の内部を示す。図13の例は、積分用受光素子122が8つの例である。図13においては、複数の受光部123を表す符号の末尾に番号(1~8)を付して、それぞれを区別する。図13の例の場合、集光範囲R5に照射された信号光は、受光部123-4および受光部123-8によって受信される。図13の構成の場合、図12と同じ集光範囲R5に照射された信号光を、二つの積分用受光素子122で受光できる。
【0039】
図14は、積分用受光素子122の代わりに、積分用受光素子128が配置された例である。積分用受光素子122に比べて、積分用受光素子128は、受光面積が大きい素子である。図14においては、複数の積分用受光素子128を表す符号の末尾に番号(1~8)を付して、それぞれを区別する。図14の例の場合、図12と同じ集光範囲R5に照射された信号光を、二つの積分用受光素子128-1および積分用受光素子128-4で受光できる。また、図14の例の場合、図13と同じ集光範囲R5に照射された信号光を、より広い面積で受光できる。
【0040】
(変形例)
次に、本開示における受信装置10が備える受光器12の変形例について説明する。以下においては、二つの変形例をあげる。
【0041】
〔変形例1〕
図15は、変形例1に係る受光器12-1の一例を示す概念図である。図15は、受光器12-1の受光面を斜め上方の視座から見た図である。受光器12-1には、積分用受光素子122の代わりに、積分用受光素子122-1が配置される。例えば、積分用受光素子122-1には、ゲルマニウムフォトダイオードを適用できる。InGaAsフォトダイオードと比較して、ゲルマニウムフォトダイオードは、より低コストで、受光面積を大きく設定できる。また、受光器12-1には、InGaAsフォトダイオードおよびゲルマニウムフォトダイオードが感度を有する波長帯の光を選択的に通過させるフィルタ127-1が配置される。本変形例によれば、積分用受光素子122-1の受光面積を増大できる。
【0042】
〔変形例2〕
図16図17は、変形例2に係る受光器12-2の一例を示す概念図である。図16は、受光器12-2を側方の視座から見た側面図である。図17は、受光器12-2の受光面を斜め上方の視座から見た図である。受光器12-2には、積分用受光素子122の代わりに、積分用受光素子122-2が配置される。積分用受光素子122-2と通信用受光素子125とは、感度を有する波長帯が異なる。例えば、積分用受光素子122-2には、シリコンフォトダイオードを適用できる。シリコンフォトダイオードは、850ナノメートル(nm)近傍の波長帯に感度を有する。一方、InGaAsフォトダイオードおよびゲルマニウムフォトダイオードは、1550nm近傍の波長帯に感度を有する。受光器12-2には、シリコンフォトダイオードが感度を有する波長帯の光を選択的に通過させるフィルタ127-2が配置される。フィルタ127-2は、受光器12-2の受光面に合わせた形状および大きさに設定される。また、受光器12-2には、InGaAsフォトダイオードが感度を有する波長帯の光を選択的に通過させるフィルタ127-3が配置される。フィルタ127-3は、導光筒124の第1開口端に合わせた形状および大きさに設定される。本変形例によれば、積分用受光素子122-2と通信用受光素子125とに、異なる波長帯に感度するフォトダイオードを適用できる。
【0043】
以上のように、本実施形態の受信装置は、ボールレンズ、少なくとも一つの受光器、支柱、および制御部を備える。受光器は、基板、複数の積分用受光素子、導光筒、および通信用受光素子を有する。基板は、ボールレンズに向けられた第1面と、第1面に対向する第2面とを有する。基板には、第1面と第2面とを貫通する貫通口が開けられる。複数の積分用受光素子は、ボールレンズに受光部を向けて、基板の第1面における貫通口の周囲に配置される。導光筒は、貫通口に対応付けられた第1開口端と、第1開口端に対向する第2開口端とを含む。導光筒は、貫通口に合わせて、基板の第2面の側に配置される。通信用受光素子は、ボールレンズに受光部を向けて、導光筒の第2開口端に配置される。支柱、ボールレンズの周囲において受光器を移動可能に支持する。制御部は、複数の積分用受光素子および通信用受光素子によって受信された信号光に基づく電気信号を受信する。制御部は、受信した電気信号に応じて受光器の受光面の角度と支柱の位置とを調整する。制御部は、複数の積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、受光器の受光面の角度と支柱の位置とを調整して、ボールレンズによって集光された信号光の集光位置に合わせて通信用受光素子の受光部の位置を調整する。
【0044】
本実施形態の受信装置によれば、ボールレンズの周囲において受光器を移動させることによって、受光器の受光面を360度の方位に向けることができる。本実施形態の受信装置は、複数の積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、ボールレンズによって集光された信号光の集光位置に合わせて、通信用受光素子の受光部の位置を調整する。すなわち、本実施形態によれば、360度の通信角を実現できる。
【0045】
本実施形態の一態様において、複数の前記積分用受光素子は、貫通口の中心に対して点対称の位置関係で配置される。通信用受光素子の受光部は、ボールレンズの集光点に合わせて配置される。本態様によれば、ボールレンズによって集光された信号光の強度が強い集光点の位置に通信用受光素子が配置されるため、通信用受光素子による信号光の受光効率が向上する。
【0046】
本実施形態の一態様において、複数の積分用受光素子は、貫通口の中心に対して点対称の位置関係で配置される。制御部は、複数の積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、受信強度が大きい積分用受光素子の方向に向けて、受光器の受光面の角度と支柱の位置とを移動させる。本態様によれば、複数の積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、ボールレンズによる集光領域の中心に向けて、通信用受光素子の位置を移動させることができる。そのため、本態様によれば、通信用受光素子による信号光の受光効率を向上できる。
【0047】
本実施形態の一態様において、複数の積分用受光素子および通信用受光素子の受光部に対応付けて、受信対象である空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させるフィルタが配置される。本態様によれば、複数の積分用受光素子および通信用受光素子の受光部に、それぞれの受光素子が感度を有する波長帯の信号光を選択的に供給できる。本態様によれば、太陽光などの攪乱光が削除された光信号が供給されるため、積分用受光素子および通信用受光素子の受光効率を向上できる。
【0048】
本実施形態の一態様において、積分用受光素子と通信用受光素子とは、異なる波長帯の光に感度を有する受光素子である。例えば、比較的安価なシリコン系やゲルマニウム系のフォトダイオードを積分用受光素子に適用し、高性能のInGaAs系のフォトダイオードを通信用受光素子に適用できる。このように構成されれば、受光器のコストを低減できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第1実施形態に係る受信装置を備える。以下においては、本実施形態の通信装置が、空間光変調器を有する送信装置を備える例をあげる。本実施形態の通信装置は、空間光変調器ではない送光機能を有してもよい。
【0050】
(構成)
図18は、本開示における通信装置2の構成の一例を示すブロック図である。通信装置2は、受信装置20、送信装置27、および通信制御装置28を備える。受信装置20は、第1実施形態の受信装置10と同様の構成である。そのため、以下においては、受信装置20に関する説明を簡略化する。
【0051】
図19図20は、送信装置27の構成の一例を示す概念図である。図19は、送信装置27の内部構成を斜め上方の視座から見た図である。図20は、送信装置27の筐体270の内部を側方の視座から見た図である。送信装置27は、光源271、空間光変調器272、および送光ミラー273を有する。筐体270の側面の一部には、投射光203が通過する開口が形成される。開口の部分には、送信対象である空間光信号の波長帯の光が透過する素材の窓が形成されてもよい。図19図20は、送信装置27を概念的に示す図であって、送信装置27に含まれる構成要素の配置や位置関係を正確に示すものではない。
【0052】
光源271は、出射面を下方に向けて、筐体270の上部に配置された天板276の下面に配置される。光源271の出射面は、下方に配置された空間光変調器272の変調部2720に向けられる。光源271は、天板276に形成された貫通口(図示しない)の内部に配置されてもよい。光源271は、天板276に形成された貫通口の上方に配置されてもよい。
【0053】
光源271は、少なく一つの出射器(図示しない)を含む。少なくとも一つの出射器は、通信制御装置28の制御に応じて、照明光201を出射する。光源271から出射された照明光201は、空間光変調器272の変調部2720に照射される。例えば、複数の出射器の各々は、空間光変調器272の変調部2720に設定された複数の変調領域のうちいずれか少なくともいずれかに対応付けられる。複数の出射器の各々から出射された照明光201は、対応付けられた変調領域に向けて進行する。
【0054】
例えば、光源271は、同じ波長帯の照明光201を出射する複数の出射器を含む。例えば、光源271は、複数の出射器がアレイ状に配列されたレーザアレイによって実現されてもよい。例えば、レーザアレイは、4行×2列で配列された複数の出射器を有する。例えば、光源271は、同一の波長帯の照明光を出射する複数の出射器と、それらの出射器とは異なる波長帯の照明光を出射する出射器とが組み合わされてもよい。例えば、光源271は、通信対象との通信に用いられる波長帯の照明光201を出射する出射器と、照明光201とは異なる波長帯の光を出射する出射器とが組み合わされた構成であってもよい。例えば、レーザアレイを構成する複数の出射器のうち、1つをサーチ用出射器とし、その他を通信用出射器とする。例えば、サーチ用出射器が850nmの波長帯の光を出射し、通信用出射器が1550nmの波長帯の光を出射する。そのようにレーザアレイが構成されれば、サーチ用出射器(850nm)を用いてサーチを行い、サーチが完了したら通信用出射器(1550nm)を用いた通信に切り替えることができる。
【0055】
例えば、光源271に含まれる出射器は、所定の波長帯のレーザ光を出射する。出射器から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、出射器は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~1000nmの近赤外線であれば、可視光と比べてレーザクラスをあげられるので、可視光よりも感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、800~1000nmの近赤外線よりも、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線を出射するレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。例えば、出射器は、PCSEL(Photonic Crystal Surface Emitting Laser)型レーザなどの面発光素子によって実現されてもよい。
【0056】
空間光変調器272は、位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器272は、変調部2720を有する。空間光変調器272は、光源271の下方に配置される。図19の例では、空間光変調器272は、底板277の上面に配置される。空間光変調器272は、光源271から出射された照明光201を変調した変調光202が、送光ミラー273の反射面2730に向けて反射される位置に配置される。変調光202の進行方向は、変調部2720の設定されたパターン(位相画像)に応じて制御される。
【0057】
例えば、空間光変調器272は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器272は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器272は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器272では、投射光203の投射に用いられる箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器272を用いる場合、光源271に含まれる出射器の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0058】
空間光変調器272の変調部2720には、少なくとも一つの変調領域が設定される。変調部2720に設定される変調領域の数は、光源271に含まれる出射器の数に合わせて設定される。複数の変調領域の各々は、光源271に含まれる複数の出射器のいずれかに対応付けられる。複数の変調領域の各々には、対応付けられた出射器から出射されたレーザ光に由来する照明光201が照射される。ただし、出射器から出射されたレーザ光に由来する照明光201が、変調領域の変調面に対して入射されれば、変調領域と出射器との対応関係は、特に限定されない。また、変調部2720に設定される変調領域の数は、光源271に含まれる出射器の数と異なっていてもよい。
【0059】
変調領域は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。複数のタイルの各々には、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。変調領域に割り当てられた複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調領域に照明光201が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光202が出射される。変調領域に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調領域に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0060】
複数の変調領域の各々には、通信制御装置の制御に応じて、投射光203によって表示される像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。複数の変調領域の各々には、パターン(位相画像)が設定される。複数の変調領域の各々に照射された照明光201は、変調領域に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域の各々で変調された変調光202は、送光ミラー273の反射面2730に向けて進行する。
【0061】
例えば、空間光変調器272の後段に、遮蔽器(図示しない)が配置されてもよい。遮蔽器は、変調光202に含まれる不要な光成分を遮蔽し、投射光203の表示領域の外縁を規定する枠体である。例えば、遮蔽器は、アパーチャである。そのようなアパーチャには、所望の画像を形成する光(所望光)を通過させる部分に、スリット状の開口が形成される。所望光は、1次の回折光である。遮蔽器は、所望光を通過させ、不要な光成分を遮蔽する。例えば、遮蔽器は、変調光202に含まれる0次光や、0次光を中心として所望光に対して点対称の位置に表れる不要な1次光、2次以上の高次光を含むゴースト像を遮蔽する。遮蔽器の詳細については、説明を省略する。
【0062】
送光ミラー273は、反射面2730を有する反射体である。反射面2730は、平面であってもよいし、投射光203の投射角に応じた曲率を有してもよい。例えば、反射面2730は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。送光ミラー273は、空間光変調器272の後段に配置される。送光ミラー273は、天板276から吊り下げられた吊柱274の下端に配置される。送光ミラー273は、移動機構(図示しない)によって、水平面内において移動可能に設置される。また、送光ミラー273の反射面2730は、角度調整機構(図示しない)によって、角度が変更可能に設置される。送光ミラー273の位置や、反射面2730の角度は、通信制御装置28の制御に応じて、変更される。通信制御装置28は、通信対象から送信された空間光信号の到来方向に反射面2730が向かうように、送光ミラー273の位置および反射面2730の角度を変更する。
【0063】
送光ミラー273は、空間光変調器272の変調部2720に対して、反射面2730を斜めに向けて配置される。送光ミラー273は、変調光202の光路に配置される。送光ミラー273の反射面2730には、変調光202が照射される。反射面2730で反射された光(投射光203)は、空間光信号として投射される。投射光203は、送光ミラー273の反射面2730における変調光202の照射位置に応じた方向に投射される。反射面2730で反射された光(投射光203)は、その反射面2730の曲率に応じた拡大率で拡大投射される。例えば、投射光203の広がりを調整するために、送光ミラー273の後段にレンズ(図示しない)が配置されてもよい。
【0064】
送光ミラー273の反射面2730は、その送光ミラー273を保持する吊柱274の位置に応じて、水平面内における任意の方向(360度)に向けられる。そのため、送信装置27は、空間光変調器272の変調部2720に設定されたパターン(位相画像)を制御することによって、水平面内における360度の方向に向けて、投射光203を投射できる。また、送信装置27は、変調部2720に設定された複数の変調領域を異なる方向に対応付けることによって、複数の方向に配置された通信対象に向けて、同時に投射光203(空間光信号)を送信できる。また、通信制御装置28は、反射面2730の角度を調整することによって、垂直方向における投射光203の投射方向を制御する。
【0065】
送信装置27は、サーチ用空間光信号の送信方向に応じて、少なくとも2つの送信パターンが組み合わされた空間光信号を送信する。図21は、送信装置27から送信されるサーチ用空間光信号の送信パターンについて説明するための概念図である。送信パターンは、変調周波数と信号パターンとの組み合わせで設定される。図21の例の場合、2つの送信パターンで空間光信号が送信される。1つ目の送信パターンは、変調周波数f1、信号パターンP1である。2つ目の送信パターンは、変調周波数f2、信号パターンP2である。送信パターンは、2つに限定されず、任意の数に設定される。
【0066】
図22は、受信装置20に含まれる制御部29の構成の一例を示すブロック図である。制御部29は、複数の検出器230と、制御回路240とを有する。複数の検出器230の各々は、複数の積分用受光素子222の各々に対応付けられる。複数の検出器230は、制御回路240に接続される。複数の検出器230は、同様の構成である。図22においては、最上段の検出器230の内部構成を示す。制御部29は、通信制御装置28に構成されてもよい。
【0067】
検出器230は、増幅器231、複数の検出ユニット232、およびアナログーデジタル変換回路ADC237を含む(ADC:Analog-to-Digital Converter)。複数の検出ユニット232は、受信対象である周波数帯に対応したバンドパスフィルタBPF(Band Path Filter)を含む。BPFは、太陽光などの環境光に由来する信号をカットする。
【0068】
増幅器231は、積分用受光素子222に接続される。増幅器231には、積分用受光素子222によって受信された信号光に応じた電気信号が入力される。増幅器231は、入力された電気信号を、設定された増幅率で増幅する。増幅器231の増幅率は、任意に設定できる。増幅器231によって増幅された電気信号は、複数の検出ユニット232の各々に出力される。
【0069】
複数の検出ユニット232は、受信対象である周波数帯に対応する。検出器230は、変調周波数f1、変調周波数f2、・・・、および変調周波数fnの各々に対応した検出ユニット232-1~nを含む(nは自然数)。検出ユニット232-1~nの各々は、変調周波数f1~fnの信号の各々を検出する。検出ユニット232-1~nの各々によって検出された変調周波数f1~fnの信号の各々は、ADC237に供給される。
【0070】
検出ユニット232-1は、変調周波数f1の信号を選択的に通過させるBPF(f1_BPF233-1)、検波器234、および積分器235を含む。検出ユニット232-2は、変調周波数f2の信号を選択的に通過させるBPF(図示しない)、検波器234、および積分器235を含む。検出ユニット232-nは、変調周波数fnの信号を選択的に通過させるBPF(図示しない)、検波器234、および積分器235を含む。以下においては、検出ユニット232-1~nのうち、検出ユニット232-2~nについては説明を省略し、検出ユニット232-1について説明する。
【0071】
1_BPF233-1は、変調周波数f1の周波数帯の信号を選択的に通過させるフィルタである。f1_BPF233-1を通過した信号は、検波器234に供給される。
【0072】
検波器234には、f1_BPF233-1を通過した変調周波数f1の信号が入力される。検波器234は、変調周波数f1の信号を検波する。検波器234によって検波された信号は、積分器235に供給される。
【0073】
積分器235は、検波器234から出力された信号を取得する。積分器235は、取得された信号を積分する。積分器235は、積分された信号をADC237に出力する。通信用空間光信号(通信光)と比べて、スキャン用空間光信号(スキャン光)は、ビーム径が大きく広がっているために強度が微弱である。そのため、増幅器231のみで増幅された信号の電圧測定は困難である。積分器235を用いれば、例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒の期間の信号を積分することによって、測定可能なレベルまで信号の電圧を大きくすることができる。
【0074】
ADC237には、検出ユニット232-1~nの各々によって検出された変調周波数f1~fnの信号の各々が入力される。ADC237は、入力された信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。変換後のデジタル信号は、制御回路240に出力される。
【0075】
制御回路240は、複数の検出器230の各々から出力されたデジタル信号を取得する。制御回路240は、取得したデジタル信号を通信制御装置28に出力する。なお、後述する受光器の制御は、制御回路240によって実行されるように構成されてもよい。
【0076】
通信制御装置28は、制御回路240から出力されたデジタル信号を取得する。通信制御装置28は、取得したデジタル信号に関して、積分用受光素子222ごとに空間光信号の受信強度を計算する。通信制御装置28は、複数の積分用受光素子222ごとの受信強度が等しくなるように、複数の積分用受光素子222を含む受光器(図示しない)の受光面の位置を変更させる。このような制御によって、ボールレンズによって集光された信号光の集光位置が、複数の積分用受光素子222の中心に近づく。複数の積分用受光素子222の中心あたりに照射された信号光は、通信用受光素子(図示しない)によって受信される。
【0077】
図23は、複数の積分用受光素子222によって受信された信号光の強度に応じて、受光器22の位置を変更する一例を示す概念図である。図23には、ボールレンズによって集光された信号光の集光範囲RIに対する受光器22の相対的な位置の変化を、時系列で示す。以下において、紙面における位置関係に基づいて、受光器22の位置を最適化する例について説明する。図23においては、複数の積分用受光素子222を表す符号の末尾に番号(1~4)を付して、それぞれを区別する。
【0078】
タイミングT11においては、積分用受光素子222-4によって、信号光が受信される。この状態では、受光器22の位置を左側に移動させれば、集光範囲RIの中心に通信用受光素子225が近づく。そのため、通信制御装置28は、通信用受光素子225に信号光が照射されるように、受光器22の位置を左側に移動させる。
【0079】
タイミングT12においては、受光器22の位置の変化に応じて、積分用受光素子222-1、積分用受光素子222-4、および通信用受光素子225によって、信号光が受信される。この状態では、受光器22の位置を左斜め上に移動させれば、集光範囲RIの中心に通信用受光素子225が近づく。そのため、通信制御装置28は、通信用受光素子225に信号光が照射されるように、受光器22の位置を左斜め上に移動させる。
【0080】
タイミングT13においては、受光器22の位置の変化に応じて、積分用受光素子222-2、積分用受光素子222-3、および通信用受光素子225によって、信号光が受信される。この状態では、受光器22の位置を右斜め下に移動させれば、集光範囲RIの中心に通信用受光素子225が近づく。そのため、通信制御装置28は、通信用受光素子225に信号光が照射されるように、受光器22の位置を右斜め下に移動させる。このとき、通信制御装置28は、タイミングT12からタイミングT13への遷移と比べて、受光器22の移動距離を短くする。
【0081】
タイミングT14においては、受光器22の位置の変化に応じて、全ての積分用受光素子222-1~4および通信用受光素子225によって、信号光が受信される。この状態は、集光範囲RIの中心に通信用受光素子225がほぼ一致した状態である。この状態になれば、通信対象から送信されてきた空間光信号を通信用受光素子225によって効率よく受信できる。
【0082】
図24は、送信装置27から送信される空間光信号の送信方向を変更する一例を示す概念図である。図24は、受光器22の受光面の向きと、空間光信号の送信方向との関係を求めるキャリブレーションを予め行っておき、受光器22の移動に合わせて、空間光信号の送信方向を最適化する例である。図24に示す時系列変化は、図23に示した時系列変化に対応付けられる。通信制御装置28は、複数の積分用受光素子222-1~4の各々によって受信された信号光の強度に応じて、集光範囲RIの中心に向けて通信用受光素子225を移動させる。通信制御装置28は、通信用受光素子225の移動に合わせて、送信装置27から送信される空間光信号の送信方向を変更する。
このように、集光範囲RIの中心に向けた通信用受光素子225の移動に合わせて空間光信号の送信方向を変更していけば、空間光信号の送信方向を通信対象Tに向けてより的確に合わせることができる。図24には、送信装置27から送信される空間光信号の集光範囲RTにおける、空間光信号の照射位置PSの相対的な位置の変化を、時系列で示す。以下において、紙面における位置関係に基づいて、空間光信号の送信方向を最適化する例について説明する。
【0083】
タイミングT21は、タイミングT11に先行するタイミングである。空間光信号の照射位置PSは、通信対象Tに対して左側である。タイミングT11における信号光の受信状況に応じて、通信制御装置28は、通信対象Tに空間光信号が受信されるように、空間光信号の送信方向を右側に移動させる。
【0084】
タイミングT22は、タイミングT11に後続するタイミングである。空間光信号の照射位置PSは、通信対象Tに対して左斜め上である。タイミングT12における信号光の受信状況に応じて、通信制御装置28は、通信対象Tに空間光信号が受信されるように、空間光信号の送信方向を右斜め下に移動させる。
【0085】
タイミングT23は、タイミングT12に後続するタイミングである。空間光信号の照射位置PSは、通信対象Tの少し下側である。タイミングT13における信号光の受信状況に応じて、通信制御装置28は、通信対象Tに空間光信号が受信されるように、空間光信号の送信方向を少し上側に移動させる。
【0086】
タイミングT24は、タイミングT13に後続するタイミングである。この状態は、空間光信号の照射位置PSが通信対象Tにほぼ一致した状態である。この状態になれば、送信装置27から送信された空間光信号が通信対象によって効率よく受信される。
【0087】
図25は、スキャン用空間光信号(スキャン光)の送信例について説明するための概念図である。送信装置27は、空間光変調器272の変調部2720に設定される位相画像を制御することによって、スキャン光の送信方向を制御する。送信装置27は、通信対象のサーチ範囲をいくつかのサブ領域に分割して、スキャン光を送信する。図25の例では、サーチ範囲9つのサブ領域に分割され、サブ領域ごとにスキャン光が送信される。単一のサブ領域に関して、送信装置27は、サブ領域の中心から渦巻状に送信方向を変化させながら、スキャン光を送信する。なお、渦巻状にスキャン光を送信するのは、一例であって、スキャン光を送信方法を限定するわけではない。サブ領域の境界に到達すると、送信装置27は、他のサブ領域に関しても同様に、スキャン光を送信する。例えば、送信装置27は、サーチ範囲に含まれる複数のサブ領域に関して、中央、左、右、上、下、左上、右上、左下、右下といった順番で、スキャン光を送信する。スキャン光を送信する段階においては、通信対象が位置すると想定される方向に向けてスキャン光が送信される。そのため、サーチエリアの中心に近い位置に、通信対象が確率が高い。そのため、スキャン光の送信方向は、中央のサブ領域から始めて、周辺のサブ領域に順次切り替えられる。なお、スキャン光が送信されるサブ領域の順番は、任意に設定されてもよい。
【0088】
図26は、送信装置27から送信される空間光信号の送信パターンの一例について説明するための図である。図26は、送信装置27から送信されるスキャン光のサーチ範囲を示す。図26において、サーチ範囲は、9つのサブ領域に分割される。9つのサブ領域の各々は、さらに4つの小領域に分割される。すなわち、サーチ範囲は、36個の小領域に分割される。小領域は、行記号と列記号との組み合わせで表現される。例えば、行R1列C1の位置の小領域は、小領域R1C1と表記される。
【0089】
複数の小領域の各々には、固有の変調周波数と信号パターンとが組み合わされた送信パターンが設定される。行R1および行R2には、変調周波数f2が設定される。行R3および行R4には、変調周波数f1が設定される。行R5および行R6には、変調周波数f3が設定される。例えば、小領域R1C1には、変調周波数f2と信号パターンP6とが組み合わされた送信パターンの空間光信号が送信される。複数の小領域に送信される空間光信号の送信パターンは、小領域ごとに固有のパターンに設定される。サーチ範囲の範囲内に位置する通信対象は、小領域に対応付けられた送信パターンの空間光信号を受信する。図26においては、小領域R2C3の位置に通信対象が位置するものとする。
【0090】
図27は、通信装置2Aと通信装置2Bとの間における通信確立の一例について説明するための概念図である。図27には、時間変化に応じた空間光信号の送信方向の変化を時系列で示す。
【0091】
タイミングT1において、通信装置2Aは、変調周波数fmで変調された信号パターンpnの空間光信号を送信する。通信装置2Bは、変調周波数f2で変調された信号パターンp3の空間光信号を送信する。タイミングT1において、通信装置2Aは、通信装置2Bから送信された空間光信号を受信する。通信装置2Aは、変調周波数f2で変調された信号パターンp3の空間光信号を受信する。
【0092】
タイミングT2において、通信装置2Aは、変調周波数fmで変調された信号パターンpn+1と、変調周波数f2で変調された信号パターンp3とが組み合わされた空間光信号を送信する。通信装置2Bは、変調周波数f2で変調された信号パターンp4の空間光信号を送信している。
【0093】
タイミングT3において、通信装置2Aは、変調周波数fmで変調された信号パターンpn+2と、変調周波数f2で変調された信号パターンp3とが組み合わされた空間光信号を送信する。通信装置2Bは、変調周波数f2で変調された信号パターンp11の空間光信号を送信している。タイミングT3において、通信装置2Bは、通信装置2Aから送信された空間光信号を受信する。通信装置2Bは、変調周波数fmで変調された信号パターンpn+2と、変調周波数f2で変調された信号パターンp3とが組み合わされた空間光信号を受信する。この時点において、通信装置2Bは、小領域R2C3に向けて送信した空間光信号が通信装置2Bによって受信されたことを特定する。通信装置2Bは、特定された小領域R2C3に向けて、変調周波数f2で変調された信号パターンp3と、変調周波数fmで変調された信号パターンpn+2とが組み合わされた空間光信号を送信する。変調周波数f2で変調された信号パターンp3と、変調周波数fmで変調された信号パターンpn+2とが組み合わされた空間光信号が通信装置2Aに受信された段階で、通信装置2Aと通信装置2Bとは、互いの位置関係を共有する。
【0094】
図28は、通信装置2Aに向けて通信装置2Bから送信される空間光信号の送信方向を最適化する処理について説明するための概念図である。図26図27の例において、通信装置2Bは、小領域R2C3の方向に通信装置2Aが位置すると特定すると、小領域R2C3をさらなる小領域に分割する。図28の例において、小領域R2C3は、4つの小領域に分割される。通信装置2Bは、ビーム径が縮小された空間光信号を、4つの小領域の各々に異なる信号パターンで送信する。図28の段階においては、通信装置2Aの列方向の位置が特定されているので、通信装置2Bは、空間光信号の変調周波数を変化させなくてよい。例えば、通信装置2Bは、変調周波数f4で変調された空間光信号を送信する。図28の例においては、小領域R22C31の方向に、通信装置2Aが位置する。
【0095】
通信装置2Bは、小領域R22C31の方向に通信装置2Aが位置すると特定すると、小領域R22C31をさらなる小領域に分割する。図28の例において、小領域R22C31は、4つの小領域に分割される。通信装置2Bは、ビーム径がさらに縮小された空間光信号を、4つの小領域の各々に異なる信号パターンで送信する。例えば、通信装置2Bは、変調周波数f4で変調された空間光信号を送信する。図28の例においては、小領域R221C311の方向に、通信装置2Aが位置する。このように、小領域の分割を繰り返していけば、通信対象の方向をより正確に特定できる。
【0096】
図29は、スキャン光によって通信装置2Aの位置が特定された後に、通信光を用いて、通信装置2Bが正確な位置特定を行うについて説明するための概念図である。図29の例では、ハッチングをかけたビームが通信装置2Aによって受信される。図29の段階では、ビーム径の小さい通信光を用いて、通信装置2Aをスキャンできる。通信光を用いれば、より多くの情報を送受信できる。そのため、通信装置2Bは、通信光を用いて、通信装置2Aの位置を正確に特定できる。
【0097】
(動作)
次に、通信装置2の動作の一例について図面を参照しながら説明する。以下においては、通信制御装置28による受信装置20および送信装置27の制御例について例示する。以下の説明においては、通信制御装置28を動作主体とする。
【0098】
〔受信装置〕
図30は、通信制御装置28による受信装置20の制御例の一例について説明するためのフローチャートである。
【0099】
図30において、通信対象からのスキャン光を受信すると(ステップS211でYes)、通信制御装置28は、通信対象からのスキャン光の受信位置に応じて、受光器の位置を変更する(ステップS212)。通信対象からのスキャン光を受信していない場合(ステップS211でNo)、通信制御装置28は、スキャン光の受信を待機する。
【0100】
ステップS212の次に、通信制御装置28は、通信対象からのスキャン光の受信位置に応じて、スキャン光の送信条件の変更指示を送信装置に送信する(ステップS213)。
【0101】
スキャン光を用いた受光器の位置調整が完了していない場合(ステップS214でNo)、ステップS211に戻る。スキャン光を用いた受光器の位置調整が完了した場合(ステップS214でYes)、通信制御装置28は、通信光の送信指示を送信装置に送信する(ステップS215)。
【0102】
次に、通信制御装置28は、通信光を用いた位置調整を行う(ステップS216)。
【0103】
通信光を用いた受光器の位置調整が完了していない場合(ステップS217でNo)、ステップS215に戻る。通信光を用いた受光器の位置調整が完了した場合(ステップS217でYes)、図30のフローチャートに沿った処理は終了である。
【0104】
〔送信装置〕
図31は、通信制御装置28による送信装置27の制御例の一例について説明するためのフローチャートである。
【0105】
図31において、まず、通信制御装置28は、送信方向に応じた変調周波数・信号パターンを設定する(ステップS221)。
【0106】
次に、通信制御装置28は、設定された変調周波数・信号パターンのスキャン光を送信する(ステップS222)。
【0107】
スキャン光の送信条件の変更指示を受信すると(ステップS223でYes)、通信制御装置28は、変更指示に応じて、スキャン光の送信条件を変更する(ステップS224)。ステップS224の次は、ステップS221に処理が戻る。
【0108】
スキャン光の送信条件の変更指示を受信していない場合(ステップS223でNo)、通信制御装置28は、通信光の送信を指示する信号の受信の有無に応じた処理(ステップS225)を実行する。通信光の送信指示を受信していない場合(ステップS225でNo)、ステップS221に処理が戻る。
【0109】
通信光の送信指示を受信した場合(ステップS225でYes)、通信制御装置28は、送信装置27に通信光を送信させる(ステップS226)。
【0110】
通信光を用いた受光器の位置調整が完了していない場合(ステップS227でNo)、通信制御装置28は、送信装置27による通信光の送信を継続させる(ステップS226)。通信光を用いた受光器の位置調整が完了した場合(ステップS227でYes)、図31のフローチャートに沿った処理は終了である。
【0111】
図30図31の処理の結果、通信装置2と通信対象との間の通信が確立される。通信装置2と通信対象との間の通信については、説明を省略する。
【0112】
以上のように、本実施形態の通信装置は、受信装置、送信装置、および通信制御装置を備える。受信装置は、第1実施形態の構成である。送信装置は、空間光信号を送信する。通信制御装置は、受信装置の受光器による空間光信号の受光位置に応じて、受光器の位置および角度と、送信装置から送信される空間光信号の送信方向とを制御する。本態様によれば、空間光信号の受光位置に応じて、受信装置の受光器の位置および角度と、送信装置から送信される空間光信号の送信方向とを制御することによって、360度の通信角を実現できる。
【0113】
本態様の一態様において、通信制御装置は、空間光信号の送信方向に応じて異なる変調周波数と信号パターンとが組み合わせられた送信パターンのサーチ用空間光信号を、送信方向に対応付けて送信装置に送信させる。通信制御装置は、通信対象から送信されたサーチ用空間光信号の受信装置による受信に応じて、受信されたサーチ用空間光信号の送信パターンが追加された空間光信号を、送信方向に対応付けて送信装置に送信させる。本態様の通信装置は、通信対象から送信されたサーチ用空間光信号の送信パターンを取得する。本態様の通信装置は、受信されたサーチ用空間光信号の送信パターンを通信対象に返すことによって、どの方向に送信された空間光信号が通信装置によって受信されたのかを通信対象が特定できる。特定された方向に向けて通信対象が空間光信号を送信すれば、通信装置と通信対象との間で、通信確立の処理を実行できる。
【0114】
本態様の一態様において、通信制御装置は、通信対象から送信されたサーチ用空間光信号の受信装置による受信に応じて、受光器の位置を受信装置に変更させる。通信制御装置は、受信装置が備える複数の積分用受光素子の各々によって受信されたサーチ用空間光信号に基づく信号光の強度に応じて、受光器の位置を受信装置に変更させる。通信制御装置は、サーチ用空間光信号の送信条件の変更指示を送信装置に送信する。本態様によれば、複数の積分用受光素子の各々によって受信された信号光の強度に応じて、受光器の位置と、サーチ用空間光信号の送信方向とを調整できる。
【0115】
本態様の一態様において、通信制御装置は、積分用受光素子を用いた受光器の位置調整の終了に応じて、通信用受光素子を用いた詳細スキャンを実行する。通信制御装置は、通信対象との間で互いの方向が特定されると、サーチ範囲およびビーム径が狭められたサーチ用空間光信号を送信装置に送信させる。本態様によれば、通信対象との間で送受信されるサーチ用空間光信号のサーチ範囲およびビーム径を狭めることによって、通信対象の位置を正確に特定できる。さらに、本態様によれば、通信用受光素子を用いた詳細スキャンを実行することによって、通信用受光素子による光信号の受光効率を最適化できる。
【0116】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る受信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信装置は、第1~第2の実施形態の受信装置を簡略化した構成である。
【0117】
図32は、本開示における受信装置30の構成の一例を示す概念図である。図32は、斜め上方の視座から受信装置30を見下ろした概念図である。図33図34は、受信装置30が備える受光器32の構成の一例を示す側面図である。図33は、受光器32を側方の視座から見た側面図である。図34は、受光器32の受光面を斜め上方から見た斜視図である。
【0118】
受信装置30は、ボールレンズ31、少なくとも一つの受光器32、および支柱38を備える。受光器32は、基板321、複数の積分用受光素子322、導光筒324、および通信用受光素子325を有する。基板321は、ボールレンズ31に向けられた第1面と、第1面に対向する第2面とを有する。基板321には、第1面と第2面とを貫通する貫通口Aが開けられる。複数の積分用受光素子322は、ボールレンズ31に受光部323を向けて、基板321の第1面における貫通口Aの周囲に配置される。導光筒324は、貫通口Aに対応付けられた第1開口端と、第1開口端に対向する第2開口端とを含む。導光筒324は、貫通口Aに合わせて、基板321の第2面の側に配置される。通信用受光素子325は、ボールレンズ31に受光部326を向けて、導光筒324の第2開口端に配置される。支柱38、ボールレンズ31の周囲において受光器を移動可能に支持する。図32の例では、支柱38の上端に受光器32が配置される。また、支柱38の下端は、円環状の円軌道Rに沿って移動可能に配置される。
【0119】
本実施形態の受信装置によれば、ボールレンズの周囲において受光器を移動させることによって、受光器の受光面を360度の方位に向けることができる。すなわち、本実施形態によれば、360度の通信角を実現できる。
【0120】
(ハードウェア)
次に、本開示における制御や処理を実行するハードウェア構成について、図面を参照しながら説明する。ここでは、そのようなハードウェア構成の一例として、図35の情報処理装置90(コンピュータ)をあげる。図35の情報処理装置90は、本開示における制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0121】
図35のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図35においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0122】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、本開示における制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、本開示における制御や処理を実行する。
【0123】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0124】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0125】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0126】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0127】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0128】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0129】
以上が、本開示における係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。図35のハードウェア構成は、本開示における制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本開示の範囲を限定するものではない。本開示における制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも、本開示の範囲に含まれる。
【0130】
本開示におけるプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本開示の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0131】
本開示における構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。本開示における構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。本開示における構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0132】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0133】
2 通信装置
10、20、30 受信装置
11、31 ボールレンズ
12、32 受光器
18、38 支柱
19、29 制御部
27 送信装置
28 通信制御装置
121、321 基板
122、128、222、322 積分用受光素子
124、324 導光筒
125、325 通信用受光素子
127 フィルタ
180 土台
230 検出器
231 増幅器
233 BPF
234 検波器
235 積分器
237 ADC
240 制御回路
271 光源
272 空間光変調器
273 送光ミラー
274 吊柱
276 天板
277 底板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35