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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176187
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241212BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241212BHJP
   H01G 11/72 20130101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/86
H01G11/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094533
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】大畑 耕太
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
【テーマコード(参考)】
5E078
5H028
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB02
5E078FA15
5E078FA22
5E078FA24
5E078LA02
5E078LA08
5H028AA08
5H028BB05
5H028BB11
5H028BB17
5H028CC01
5H028CC08
5H028CC19
5H028CC22
5H028CC26
5H028EE06
5H028HH05
5H028HH09
5H028HH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】密封性が良好な蓄電モジュールを得ることができる、蓄電モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、集電体1および活物質層を有する電極と、集電体1の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体5とを有する電極シートを備え、かつ複数の電極シートが厚さ方向に積層された積層体10を準備する工程と、厚さ方向から見て積層体10における枠体5と重複する位置に一対の拘束部材20を配置し、一対の拘束部材20により枠体5を厚さ方向において拘束する拘束工程と、拘束された枠体5において、厚さ方向に延在する枠体5の側面を放射加熱器30により放射加熱し、厚さ方向において隣り合う枠体5を溶着させ、溶着部を形成する加熱工程とを有し、加熱工程において放射加熱を行いつつ、外観検査装置40により枠体5の側面における発煙又は焦げの発生を検査し、外観検査装置40による発煙又は焦げの発生の検知に基づいて放射加熱を終了する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体および活物質層を有する電極と、前記集電体の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する電極シートを備え、かつ、複数の前記電極シートが厚さ方向に積層された積層体を準備する準備工程と、
前記厚さ方向から見て、前記積層体における前記枠体と重複する位置に、一対の拘束部材を配置し、前記一対の拘束部材により前記枠体を前記厚さ方向において拘束する拘束工程と、
前記拘束された前記枠体において、前記厚さ方向に延在する、前記枠体の側面を、放射加熱器により放射加熱し、前記厚さ方向において隣り合う前記枠体を溶着させ、溶着部を形成する加熱工程と、
を有し、
前記加熱工程において、前記放射加熱を行いつつ、外観検査装置により、前記枠体の前記側面における発煙または焦げの発生を検査し、
前記外観検査装置による前記発煙または前記焦げの発生の検知に基づいて、前記放射加熱を終了する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記放射加熱器は、定格出力が2.8kW以上5.6kW以下である赤外線ヒータであり、前記枠体の側面と前記放射加熱器との距離は、40mm以上60mm以下であり、前記拘束部材により前記枠体に付与される拘束圧は、3MPa以上32MPa以下である、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記枠体を構成する樹脂が、ポリエチレンである、請求項1または請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記電極シートは、前記電極として、バイポーラ電極を有する、請求項1または請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法
【請求項5】
前記厚さ方向から見た前記積層体の形状は、四角形であり、
前記四角形を構成する各辺の長さは、それぞれ、30cm以上である、請求項1または請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の蓄電モジュールの製造方法において、積層された複数の電極の外縁にシール部材を設け、積層された複数の電極を密封することが知られている。例えば、特許文献1には、電極積層体と、電極積層体を取り囲むシール部材と、を備えた蓄電モジュールであって、シール部材は、集電体の周縁部に設けられた一次シールと、一次シールを覆う二次シールと、を有する蓄電モジュールが開示されている。さらに、特許文献1には、積層方向に沿って互いに隣り合う一次シール同士が溶着されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-22534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一次シール、二次シール等のシール部材は、良好な密封性を有することが必要である。特許文献1では、第1方向(厚さ方向)に沿って積層された一次シール(樹脂製の枠体)同士を溶着させている。良好な密封性を得るためには、樹脂製の枠体同士を溶着させた溶着部が、十分な溶着深さを有することが必要であるが、溶着深さを実際に観察することは困難である。そのため、溶着深さが不十分な箇所が存在すると、蓄電モジュールの密封性が低くなる場合がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、密封性が良好な蓄電モジュールを得ることができる、蓄電モジュールの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
集電体および活物質層を有する電極と、上記集電体の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する電極シートを備え、かつ、複数の上記電極シートが厚さ方向に積層された積層体を準備する準備工程と、
上記厚さ方向から見て、上記積層体における上記枠体と重複する位置に、一対の拘束部材を配置し、上記一対の拘束部材により上記枠体を上記厚さ方向において拘束する拘束工程と、
上記拘束された上記枠体において、上記厚さ方向に延在する、上記枠体の側面を、放射加熱器により放射加熱し、上記厚さ方向において隣り合う上記枠体を溶着させ、溶着部を形成する加熱工程と、
を有し、
上記加熱工程において、上記放射加熱を行いつつ、外観検査装置により、上記枠体の上記側面における発煙または焦げの発生を検査し、
上記外観検査装置による上記発煙または上記焦げの発生の検知に基づいて、上記放射加熱を終了する、蓄電モジュールの製造方法。
【0007】
[2]
上記放射加熱器は、定格出力が2.8kW以上5.6kW以下である赤外線ヒータであり、上記枠体の側面と上記放射加熱器との距離は、40mm以上60mm以下であり、上記拘束部材により上記枠体に付与される拘束圧は、3MPa以上32MPa以下である、[1]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0008】
[3]
上記枠体を構成する樹脂が、ポリエチレンである、[1]または[2]に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0009】
[4]
上記電極シートは、上記電極として、バイポーラ電極を有する、[1]から[4]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【0010】
[5]
上記厚さ方向から見た上記積層体の形状は、四角形であり、
上記四角形を構成する各辺の長さは、それぞれ、30cm以上である、[1]から[4]までのいずれかに記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、密封性が良好な蓄電モジュールを得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示における積層体を例示する概略平面図および概略断面図である。
図2】本開示における拘束工程および加熱工程を例示する概略断面図である。
図3】本開示における枠体(加熱工程後)を例示する概略断面図である。
図4】本開示における積層体を例示する概略平面図である。
図5】本開示における準備工程を例示する概略断面図である。
図6】本開示における加熱工程を例示する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における蓄電モジュールの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0014】
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、集電体および活物質層を有する電極と、上記集電体の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する電極シートを備え、かつ、複数の上記電極シートが厚さ方向に積層された積層体を準備する準備工程と、上記厚さ方向から見て、上記積層体における上記枠体と重複する位置に、一対の拘束部材を配置し、上記一対の拘束部材により上記枠体を上記厚さ方向において拘束する拘束工程と、上記拘束された上記枠体において、上記厚さ方向に延在する、上記枠体の側面を、放射加熱器により放射加熱し、上記厚さ方向において隣り合う上記枠体を溶着させ、溶着部を形成する加熱工程と、を有し、上記加熱工程において、上記放射加熱を行いつつ、外観検査装置により、上記枠体の上記側面における発煙または焦げの発生を検査し、上記外観検査装置による上記発煙または上記焦げの発生の検知に基づいて、上記放射加熱を終了する。
【0015】
本開示における準備工程は、特定の積層体を準備する工程である。図1(a)は本開示における積層体を例示する概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A断面図である。図1(a)、(b)に示す積層体10は、複数の電極シートESが、厚さ方向Dに積層された構造を有する。電極シートESは、集電体1と、集電体1上に配置された活物質層(正極活物質層2および負極活物質層3の少なくとも一方)と、を有する電極Eを備える。図1(b)に示す積層体10は、電極シートESとして、(i)バイポーラ電極BPを有する電極シート、(ii)正極側端部電極CAを有する電極シート、および、(iii)負極側端部電極ANを有する電極シートを有する。また、図1(a)、(b)に示すように、電極シートESは、集電体1の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体5を有する。
【0016】
本開示における拘束工程および加熱工程について、図2を用いて説明する。図2においては、厚さ方向Dから見て、積層体10における枠体5と重複する位置に、一対の拘束部材20(20a、20b)を配置し、一対の拘束部材20(20a、20b)により枠体5を厚さ方向Dにおいて拘束する。次に、拘束された枠体5において、厚さ方向Dに延在する、枠体5の側面SSを、放射加熱器30により放射加熱する。これにより、図3に示すように、厚さ方向Dにおいて隣り合う枠体5を溶着させ、溶着部51を形成する。加熱工程後の枠体5は、溶着部51と、溶着部51よりも電極E側に位置する未溶着部52と、を有する。本開示においては、図2に示すように、放射加熱器30による放射加熱を行いつつ、外観検査装置40により、枠体5の側面SSにおける発煙または焦げの発生を検査する。外観検査装置40による発煙または焦げの発生の検知に基づいて、放射加熱器30による放射加熱を終了する。
【0017】
本開示によれば、放射加熱の開始後、外観検査装置による発煙または焦げの発生の検知に基づいて放射加熱を終了することで、十分な溶着深さを有する溶着部を形成することができ、密封性が良好な蓄電モジュールを得ることができる。
【0018】
上述したように、良好な密封性を得るためには、樹脂製の枠体同士を溶着させた溶着部が、十分な溶着深さを有することが必要であるが、溶着深さを実際に観察することは困難である。例えば、溶着に伴う枠体の色(樹脂色)の変化に基づいて、溶着深さを観察することが想定される。しかしながら、枠体の積層方向の両端部には、一対の拘束部材が配置されているため、放射加熱を行いながら、枠体の積層方向より枠体の色の変化を観察して溶着深さを判断することは困難である。
【0019】
また、溶着深さを観察する代わりに、枠体の側面の表面温度を計測し、表面温度から溶着深さを推定する方法が想定される。しかしながら、放射加熱を行っている状態では、枠体の側面が放射加熱の影響を受けているため、枠体の側面の表面温度を正確に計測することが困難である。また、放射加熱の終了直後に、枠体の側面の表面温度を測定した場合であっても、加熱工程における雰囲気(特に温度)の影響を受けやすく、枠体の側面の表面温度を正確に計測することは困難である。
【0020】
これに対して、本開示においては、放射加熱を行いつつ、外観検査装置により、枠体の側面における発煙または焦げの発生を検査し、外観検査装置による発煙または焦げの発生の検知に基づいて、放射加熱を終了する。例えば、放射加熱条件と、拘束部材により枠体に付与される拘束圧と、を制御することで、発煙または焦げの発生のタイミング(すなわち、枠体の側面の表面温度が閾値以上になったタイミング)における、溶着深さ方向の温度を制御できる。そのため、外観検査装置による発煙または焦げの発生の検知に基づいて、放射加熱を終了することで、十分な溶着深さを有する溶着部が形成されたと判断でき、密封性が良好な蓄電モジュールを得ることができる。また、放射加熱の終了後ではなく、放射加熱を行いつつ、十分な溶着深さを有する溶着部が形成されたこと判断できるため、生産性が良好である。
【0021】
1.準備工程
本開示における準備工程は、集電体および活物質層を有する電極と、上記集電体の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する電極シートを備え、かつ、複数の上記電極シートが厚さ方向に積層された積層体を準備する工程である。
【0022】
(1)電極シート
電極シートは、集電体および活物質層を有する電極と、上記集電体の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体と、を有する。電極は、集電体と、集電体の一方の表面に形成された活物質層と、を少なくとも有する。活物質層は、正極活物質層であってもよく、負極活物質層であってもよい。また、電極は、集電体の両面に、それぞれ活物質層を有していてもよい。
【0023】
図1(b)に示すように、電極シートESは、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面に配置された正極活物質層と、集電体1の一方の面に配置された負極活物質層と、を有するバイポーラ電極を有していてもよい。また、特に図示しないが、電極シートは、電極として、集電体の両面に、それぞれ正極活物質層が配置された電極を有していてもよく、集電体の両面に、それぞれ負極活物質層が配置された電極を有していてもよい。
【0024】
図1(b)に示すように、電極シートESは、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面に配置された正極活物質層2と、を有する正極側端部電極CAを有していてもよい。また、電極シートESは、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面に配置された負極活物質層3と、を有する負極側端部電極ANを有していてもよい。
【0025】
図1(a)、(b)に示すように、電極シートESは、集電体1の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体5を有する。枠体5に用いられる樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。高密度ポリエチレンの密度は、例えば、0.94g/cm以上、0.973g/cm以下である。熱可塑性樹脂の融点は、例えば、120℃以上、140℃以下である。
【0026】
電極シートESを厚さ方向から見た場合に、枠体5は、通常、集電体1の外縁全周に沿って配置される。枠体5は、後述する溶着部(シール部)を形成するために用いられ、溶着部により、電解液の漏れを防止する。例えば、集電体1の外縁形状が四角形である場合、その四角形の外縁全周に沿って、枠体5が配置される。また、後述する図5に示すように、枠体5は、集電体1の一方の主面pの一部と、集電体1の他方の主面qの一部と、集電体1の外縁を構成する側面rの全体と、を覆うことが好ましい。
【0027】
(2)積層体
図1(a)、(b)に示すように、積層体10は、厚さ方向Dに積層された、複数の電極シートESを有する。また、図1(b)に示すように、積層体10は、厚さ方向Dに積層された、複数の発電単位U(U、U、U)を有していてもよい。発電単位は、通常、正極活物質層、セパレータおよび負極活物質層を有する単位である。後述するように、発電単位に電解液が供給されることで、電池として機能する。図1(b)に示すように、複数の発電単位U(U、U、U)は、互いに、直列接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。
【0028】
図1(b)において、発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。また、発電単位Uは、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。このように、隣り合う2つのバイポーラ電極により、一つの発電単位が構成されていてもよい。また、発電単位Uは、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2と、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。
【0029】
厚さ方向から見た積層体の形状(平面視形状)は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形が挙げられる。例えば、図1に示す積層体10の平面視形状は、四角形である。積層体の平面視形状を構成する各辺の長さは、特に限定されないが、それぞれ、例えば30cm以上であり、50cm以上であってもよく、100cm以上であってもよい。一方、上記各辺の長さは、それぞれ、例えば200cm以下である。積層体が大型化するほど、密封性の管理が難しくなる。本開示においては、積層体が大型化した場合であっても、後述する加熱工程を行うことで、密封性が良好な蓄電モジュールが得られる。
【0030】
図4に示すように、積層体10は、入れ子6を有していてもよい。入れ子6の一方の端部t1は、積層体10の内部に存在し、入れ子6の他方の端部t2は、積層体10の外部に存在している。また、入れ子6は、厚さ方向に直交する方向に延在するように配置される。後述する加熱工程の後に、入れ子6を抜くことで、各発電単位に電解液を供給するための貫通孔が形成される。また、特に図示しないが、積層体は、厚さ方向に直交する方向に延在し、各発電単位の電圧を検出するための電圧検出用端子を有していてもよい。
【0031】
積層体の作製方法は、特に限定されない。図5に示すように、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BPにおける枠体5と、バイポーラ電極BPにおける枠体5との間に、別の枠体5(スペーサ51)を配置する。同様に、バイポーラ電極BPにおける正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BPにおける枠体5と、負極側端部電極ANにおける枠体5との間に、別の枠体5(スペーサ51)を配置する。同様に、バイポーラ電極BPにおける負極活物質層3と、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BPにおける枠体5と、正極側端部電極CAにおける枠体5との間に、別の枠体5(スペーサ51)を配置する。このようにして、積層体10が得られる。
【0032】
2.拘束工程
本開示における拘束工程は、上記厚さ方向から見て、上記積層体における上記枠体と重複する位置に、一対の拘束部材を配置し、上記一対の拘束部材により上記枠体を上記厚さ方向において拘束する工程である。
【0033】
図2に示すように、厚さ方向Dから見て、積層体10における枠体5と重複する位置に、一対の拘束部材20(20a、20b)を配置し、一対の拘束部材20(20a、20b)により枠体5を厚さ方向Dにおいて拘束する。一対の拘束部材20(20a、20b)により枠体5を拘束することで、後述する加熱工程において、隣り合う枠体5を、密封性良く溶着できる。拘束部材により枠体に付与される拘束圧は、特に限定されないが、例えば3MPa以上32MPa以下であり、5MPa以上30MPa以下であってもよい。
【0034】
3.加熱工程
本開示における加熱工程は、上記拘束された上記枠体において、上記厚さ方向に延在する、上記枠体の側面を、放射加熱器により放射加熱し、上記厚さ方向において隣り合う上記枠体を溶着させ、溶着部を形成する工程である。
【0035】
放射加熱器としては、例えば、赤外線ヒータ(IRヒータ)が挙げられる。放射加熱器における加熱体の表面温度は、特に限定されないが、例えば、1200℃以上2100℃以下である。放射加熱器における最大エネルギー波長は、特に限定されないが、例えば、1.2μm以上1.7μm以下である。また、赤外線ヒータの定格出力は、2.8kW以上5.6kW以下であることが好ましい。赤外線ヒータの使用電圧は、200Vであってもよい。また、赤外線ヒータは、単相ヒータであってもよく、三相ヒータであってもよい。三相ヒータにおける結線方法としては、例えば、デルタ結線、スター結線、V結線が挙げられる。赤外線ヒータにおける電流値は、ヒータの種類(単相ヒータまたは三相ヒータ)や、三相ヒータにおける結線方法によって異なるが、例えば、8A以上12V以下である。
【0036】
図2に示すように、放射加熱器30は、枠体5の側面SSに対して、空間を設けて配置される。枠体5の側面SSと、放射加熱器30との距離は、特に限定されないが、例えば、40mm以上60mm以下である。また、図6に示すように、厚さ方向Dから見て、複数の放射加熱器30が、枠体5の側面SSの法線方向Dに直交する方向Dに沿って配置されていることが好ましい。
【0037】
加熱工程では、放射加熱を行いつつ、外観検査装置により、枠体の側面における発煙または焦げの発生を検査する。枠体の側面に放射加熱を行うと、枠体の側面の表面温度が徐々に上昇し、その後、枠体の側面の表面温度が発煙温度に達すると、枠体の側面の表面から発煙が生じる。枠体の側面の表面温度がさらに上昇すると、枠体の側面の表面に焦げが発生する。例えば、枠体を構成する樹脂が、高密度ポリエチレン(HDPE)である場合、枠体の側面の表面温度が246℃に達すると、発煙が生じる。本開示においては、拘束条件および加熱条件を制御することで、表面温度が発煙発生する温度になったときの溶着深さ方向の温度が制御できる。また、発煙検知で溶着終了した際に狙いの溶着深さが達成できていることを事前の実験で確認できる。
【0038】
外観検査装置は、例えば、枠体の側面を撮影するカメラと、上記カメラが撮影した画像を処理する画像センサと、を含む。画像センサは、枠体の側面において、発煙が生じたか否か、または、焦げが発生したか否かを判定するように構成されている。また、図2に示すように、外観検査装置40は、放射加熱器30による放射加熱を干渉しない位置に配置され、枠体5の側面SSを撮影する。また、図6に示すように、厚さ方向Dから見て、複数の外観検査装置40が、枠体5の側面SSの法線方向Dに直交する方向Dに沿って配置されていることが好ましい。
【0039】
加熱工程では、外観検査装置による発煙または焦げの発生の検知に基づいて、放射加熱を終了する。中でも、発煙を検知した後、かつ、焦げの発生を検知する前に、放射加熱を終了することが好ましい。焦げによる外観不良が生じることを防止できるからである。また、焦げの発生の検知に基づいて、放射加熱を終了する場合、加熱工程後に、例えば研磨により、焦げを除去してもよい。
【0040】
加熱工程は、通常、積層体における外縁全周に対して、行われる。例えば、厚さ方向から見て、積層体の外縁形状が四角形である場合、通常、4つの辺の全てに対して、加熱工程が行われる。また、図3に示すように、また、枠体5の側面SSの法線方向Dにおける溶着深さをWとする。本開示においては、溶着深さWが1mm以上であることが好ましい。
【0041】
4.その他の工程
図4に示すように、積層体10が入れ子6を有する場合、本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上述した加熱工程後に、積層体10から入れ子6を除くことにより、積層体10の内部および外部を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程を有していてもよい。
【0042】
本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上述した貫通孔形成工程の後に、上記貫通孔を介して、上記積層体の内部に、電解液を供給する電解液供給工程を有していてもよい。電解液の供給方法は、特に限定されず、公知の方法が用いられる。また、本開示における蓄電モジュールの製造方法は、上述した電解液供給工程の後に、上記貫通孔を封止する封止工程を有していてもよい。貫通孔の封止方法は特に限定されないが、例えば、フィルムを用いて貫通孔を封止する方法が挙げられる。
【0043】
5.蓄電モジュール
本開示における蓄電モジュールの具体例としては、二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)、電気二重層キャパシタが挙げられる。また、蓄電デバイスの用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における蓄電デバイスは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0044】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
1…集電体
2…正極活物質層
3…負極活物質層
4…セパレータ
5…枠体
10…積層体
20…拘束部材
30…放射加熱器
40…外観検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6