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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176190
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094539
(22)【出願日】2023-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】390039837
【氏名又は名称】東フロコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】川本 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】天野 洋義
(72)【発明者】
【氏名】馬場 太一
(72)【発明者】
【氏名】知野 来美
【テーマコード(参考)】
5H307
【Fターム(参考)】
5H307AA12
5H307BB06
5H307CC12
5H307DD03
5H307DD17
5H307EE02
5H307EE06
5H307EE17
5H307EE20
5H307ES02
5H307FF04
5H307GG01
5H307HH12
(57)【要約】
【課題】設定流量の変更による供給圧の変動を抑え、二次側の圧力損失の影響とキャビテーションを抑制することが可能な流量制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る流量制御装置18は、流路を流れる流体の流量を調節する流量調節弁19と、流路を流れる流体の流量を測定する流量計20と、流量計20の測定結果に基づき流量調節弁19の開度を制御する制御部21と、を備え、流量調節弁19は、流入ポート24から流入した流体を第一流出ポート25と第二流出ポート26とに分流調整する三方弁であり、第二流出ポート26側に流量計20が接続され、第一流出ポート25側に流体の圧力を段階的に減圧する多段オリフィス22が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体の流量を調節する流量調節弁と、
前記流路を流れる流体の流量を測定する流量計と、
前記流量計の測定結果に基づき前記流量調節弁の開度を制御する制御部と、を備え、
前記流量調節弁は、流入ポートから流入した流体を第一流出ポートと第二流出ポートとに分流調整する三方弁であり、前記第二流出ポート側に前記流量計が接続され、前記第一流出ポート側に流体の圧力を段階的に減圧する多段オリフィスが設けられている
ことを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記多段オリフィスは、前記三方弁のバルブアダプタに内蔵されている
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記多段オリフィスは、入口から出口に向かって口径が狭くなるテーパ状オリフィスを有するリングプレートが複数枚並べて配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定流量の変更による供給圧の変動を抑え、二次側の圧力損失の影響とキャビテーションを抑制することが可能な流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、金型温度を制御する際に、冷却水の瞬時流量を制御する流量制御装置を利用したシステムが開示されている。この流量制御装置は、流量調節弁、流量計及びコントローラを備えており、流量調節弁に二方弁を用い、一方向に流れる冷却水の瞬時流量を流量計で測定し、その測定結果に基づいてコントローラが流量調節弁の開度をフィードバック制御するように構成されている。
【0003】
ところで、特許文献1の金型温度制御システムのように、ダイカスト金型等の配管系統数が多い用途では、配管系統毎にポンプを設置するとコストや設置スペースの問題等、デメリットが多いため、ポンプ1台で複数の配管系統に分岐させて使用することが多い。この場合、設定流量を変動させると、ポンプのQ-H曲線に沿って供給圧が変動してしまうという問題があった。また、配管系統毎に設定流量の変更を行うと、設定流量に応じて元圧が変動してしまい、配管系統毎の相互干渉や、期待通りの応答速度で瞬時流量を制御することができないという問題があった。
【0004】
この問題を解決する方法として、一般的にはポンプにインバータと圧力センサを設置して、圧力が一定になるようにポンプの回転数を制御する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、ポンプが調整できる周波数範囲はある程度限られているため、流量制御装置の設定流量を完全閉止(設定流量0L)する場合や、設定流量を極端に小さくした場合には、圧力調整が対応しきれないという問題がある。例えば、金型の温調開始や待機状態から加温させる際には、加温速度の向上や省エネ効果を発揮するために、加温中は冷却水の流量を可能な限り少なく設定して運用することが多く、上記の方法ではこのような用途への対応が難しい。
【0005】
また、応答に関しても、ポンプの急激な回転数変化は故障の原因になるため、回転数を緩やかに変化させる必要があり、流量の急激な変化に対応できないという問題もある。設定流量がワイドレンジになると、ポンプの回転周波数もワイドになり、結果的に応答が遅れるからである。なお、ポンプの圧力制御と流量制御装置との相互干渉が発生するため、これを防ぐためにはポンプの応答速度よりも流量制御装置の応答速度を遅くする必要があり、本来の応答性能が発揮できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6844938号公報
【特許文献2】特開2005-194970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、前記のような圧力変動の干渉を防ぐ方法として、例えば特許文献1の金型温度制御システムにおいて、流量調節弁として二方弁に代えて三方弁を用いて流量制御を行う方法が考えられる。二方弁の一般的な流量特性は、図7に示すように、開度に応じて流量が変化するため、それに伴ってポンプの供給圧がQ-H曲線に沿って変動してしまう。これに対し、三方弁の一般的な流量特性は、図8に示すように、開度に応じてAポートとBポートに流れる流量は変化するが、Cポートに流れる合計の流量が概ね一定になることから、ポンプの供給圧は開度を変更しても概ね一定となる。この特性を利用して、三方弁を用いた流量制御装置にすることにより、設定流量を変動させても元圧変動や配管系統毎の相互干渉の発生を抑制することができる。ただし、この構造においても次のような課題がある。
【0008】
第一の課題は、圧力損失の影響である。例えば、ターゲットとなる金型の冷却流路が狭く、圧力損失が高い場合は、流量特性に大きな変化が生じ、流量特性バランスが悪くなってしまう。この場合、図9に示すように、流量特性がAポート側とBポート側で左右対称ではなくなり、期待通りの流量制御ができなくなるだけでなく、左右対称でないことに伴いCポートに流れる合計流量が開度に応じて大きく変化する傾向となる。これを解決するためには、図10に示すように、Bポート側と同じ損失となるようにAポート側にオリフィス(絞り)を設ける。これにより、流量特性が左右対称となり、開度を変更してもCポートに流れる合計流量は概ね一定になり、圧力変動の発生を抑制することができる。ただし、Cポートの合計流量が低下するため、流量が不足する場合にはポンプ圧を高めて供給量を増加させる必要がある。
【0009】
第二の課題は、キャビテーションの発生である。前記のようにポンプの供給圧が高い状態でAポート側のバルブの開度を大きくすると、Aポートの二次側に設けたオリフィスの前後の差圧が高くなる。また、オリフィスで急激に絞られた流体の流速が極めて速くなり、その二次側に背圧がほとんど無いことから、急激な圧力降下によってキャビテーションが発生し易くなる。キャビテーションは振動の発生だけでなく、局所的な気泡の発生によって気液混合となるため、背圧が変動し、それに伴い差圧が変動することから、結果的に流量制御が不安定になる、配管内部の損傷に繋がる、等の悪影響がある。このキャビテーションを抑制するためには、流速を抑え、圧力が飽和水蒸気圧以下にならないようにする必要がある。しかしながら、オリフィスの二次側はタンクへの戻り配管であり、背圧がほとんど無く、飽和水蒸気圧以下になり易いため、キャビテーションが極めて発生し易い環境であるといえる。
【0010】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、設定流量の変更による供給圧の変動を抑え、二次側の圧力損失の影響とキャビテーションを抑制することが可能な流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
設定流量の変更による供給圧の変動を抑制するため、本発明では流量調節弁として二方弁に代えて三方弁を用いて流量制御を行う構造を採用した。また、二次側の圧力損失の影響を抑制するため、本発明では三方弁のAポート(第一流出ポート)側の流量特性がBポート(第二流出ポート)側と同じ圧力損失となるようにAポート(第一流出ポート)側にオリフィスを設ける構造を採用した。更に、オリフィスの二次側に発生するキャビテーションを抑制するため、本発明ではオリフィスを一段ではなく、段階的に減圧する多段にする構造を採用した。
【0012】
図11に示すように、Aポート(第一流出ポート)側に多段オリフィスを設けることにより、流体の圧力が段階的に減圧されるため、オリフィス径を大きくすることができ、結果的に流速を下げることができる。また、各段の二次側には背圧が加わるため、飽和水蒸気圧以下になり難く、キャビテーションの発生を抑制することができる。なお、多段オリフィスの枚数を減らしたい場合には、飽和水蒸気圧以下になり難い、上流側のオリフィスを小さくする方法が考えられる。
【0013】
ここで、多段オリフィスについて、圧力バランスを整えるオリフィスとしての機能を兼ねれば、低コストに製造することが可能になるが、オリフィスを一つずつ配管で多段に接続すると、シール部位も増え、多くのスペースが必要となる。そこで、本発明では、図12に示すように、オリフィスを有するリングプレートを多段に並べて配置することで、コンパクトでシール部位を大幅に削減することが可能になる。また、図13に示すように、この多段オリフィスを三方弁のバルブアダプタに内蔵することにより、更なるコンパクト化とシール部位及び製造コストの削減を図ることができる。実際には、図14に示すように、多段オリフィスを含む三方弁からなる流量調節弁と、流量計と、コントローラ(制御部)を備えた流量制御装置が本発明である。
【0014】
すなわち、本発明に係る流量制御装置は、流路を流れる流体の流量を調節する流量調節弁と、前記流路を流れる流体の流量を測定する流量計と、前記流量計の測定結果に基づき前記流量調節弁の開度を制御する制御部と、を備え、前記流量調節弁は、流入ポートから流入した流体を第一流出ポートと第二流出ポートとに分流調整する三方弁であり、前記第二流出ポート側に前記流量計が接続され、前記第一流出ポート側に流体の圧力を段階的に減圧する多段オリフィスが設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る流量制御装置において、前記多段オリフィスは、前記三方弁のバルブアダプタに内蔵されている構造を採用することができる。
【0016】
更に、本発明に係る流量制御装置において、前記多段オリフィスは、入口から出口に向かって口径が狭くなるテーパ状オリフィスを有するリングプレートが複数枚並べて配置されている構造を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る流量制御装置によれば、流量調節弁について、流入ポートから流入した流体を第一流出ポートと第二流出ポートとに分流調整する三方弁とする構造を採用したことにより、設定流量の変更によるポンプ供給圧の変動を抑制することができる。また、三方弁の第一流出ポート側の流量特性が、流量制御対象である第二流出ポート側と同じ圧力損失となるように第一流出ポート側にオリフィスを設ける構造を採用したことにより、二次側の圧力損失の影響を抑制することができる。更に、第一流出ポート側に流体の圧力を段階的に減圧する多段オリフィスを設ける構造を採用したことにより、二次側の背圧が低くなることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る流量制御装置を金型温度制御システムに適用した例を示す全体図
図2】本発明に係る流量制御装置の構造を示す部分断面図
図3】本発明に係る流量制御装置における流量調節弁の切替フォームを示す模式図
図4】本発明に係る流量制御装置における多段オリフィスの構造を示す拡大分解図
図5】本発明に係る流量制御装置の変形例を示す部分断面図
図6】本発明に係る流量制御装置の変形例を示す部分断面図
図7】二方弁の一般的な流量特性を示す説明図
図8】三方弁の一般的な流量特性を示す説明図
図9】三方弁のBポート側に圧力損失がある場合の流量特性を示す説明図
図10】三方弁のAポート側にオリフィスを設けた場合の流量特性を示す説明図
図11】三方弁のAポート側に多段オリフィスを設けた構造を示す説明図
図12】三方弁のAポート側にリングプレートを並べて多段オリフィスを設けた構造を示す説明図
図13】三方弁のAポート側のバルブアダプタに多段オリフィスを内蔵した構造を示す説明図
図14】多段オリフィスを含む三方弁からなる流量調節弁と、流量計と、コントローラ(制御部)を備えた流量制御装置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る流量制御装置を利用して、金型温度制御システムを構築した実施形態を示したものである。本実施形態の金型温度制御システム1は、アルミダイカスト製品を生産(鋳造)するダイカスト機2において、生産時に一定流量で制御していた冷却水の流量を変更することにより、金型3の温度を制御するシステムである。金型3はダイカスト機2の一部を構成しており、射出装置に設けられる固定型4と、型締装置に設けられる可動型5とから構成されている。
【0021】
金型3(固定型4と可動型5)の各部位には、熱電対または測温抵抗体からなる温度センサ6(…6n)が取り付けられている。温度センサ6は、生産サイクル内での金型3の最高温度、最低温度、平均温度、現在温度をリアルタイムで検出する。検出された金型3の温度情報は、電気信号に変換され、後述の演算処理を行う制御装置7に出力される。
【0022】
ダイカスト機2の外部には、金型3の温度を調節する手段として、冷却水を循環させる冷却水循環装置8が設けられている。冷却水循環装置8は、クーリングタワー9、熱交換器10、タンク11、ポンプ12を備えて構成されている。タンク11内の水は、クーリングタワー9により熱交換器10を介して冷却される。その冷却水は、ポンプ12によって給水配管13と金型配管14を通って金型3の各部位に設けられた冷却水孔に供給され、戻り配管15を通ってタンク11へと循環する。
【0023】
金型3(固定型4と可動型5)には、それぞれ流量制御ユニット16が取り付けられている。流量制御ユニット16は、給水配管13に接続されるマニホールド17と、マニホールド17に連装される複数個のフローコントローラ18(…18n)の集合体からなる。マニホールド17には、給水配管13からの冷却水がストレーナ(図示略)を経由してキャビティ内に導入され、複数個のポートで分岐して個々のフローコントローラ18(…18n)に供給される。
【0024】
フローコントローラ18は、金型3(固定型4と可動型5)の各部位を冷却する冷却水の瞬時流量を制御する流量制御装置である。フローコントローラ18は、図2に示すように、流量調節弁19と、流量計20と、コントローラ(制御部)21と、多段オリフィス22を備えて構成されており、アダプタ23を介してマニホールド17のポートに接続されている。
【0025】
流量調節弁19は、流入ポート24から流入した流体を第一流出ポート25と第二流出ポート26とに分流し、両流出ポートから流れ出る流量比率を調整する分流タイプの三方弁である。流入ポート24はポンプ12からの冷却水を供給する給水配管13に接続され、第一流出ポート25は冷却水をタンク11へと戻す戻り配管15に接続されている。また、第二流出ポート26は冷却水を金型3の冷却水孔に供給する金型配管14に接続され、この第二流出ポート26側(片側)の配管系統が流量制御対象である。
【0026】
本実施形態の流量調節弁19は電動回転式バルブ機構を採用しており、バルブボディ27に内蔵された弁体28をアクチュエータ29の電動力で駆動し、その電動力によって弁開度を調節する。アクチュエータ29は、ステッピングモータ30を内蔵し、モータブラケット31を介してバルブボディ27に取り付けられている。弁体28は、バルブシャフト32とその先端に設けられたバルブ33とからなり、ステッピングモータ30の回転軸に連結されている。なお、34は摺動Oリング、35はバルブシャフト32を押さえてオリフィスの役割を担うシャフトパッキンであり、36はシャフトパッキン35を押さえて固定するリテーナロックである。
【0027】
三方弁からなる流量調節弁19は、図3に示すように、第二流出ポート(Bポート)26の開口部を全閉状態(開度0%)から全開状態(開度100%)に切り替えると、それに伴って第一流出ポート(Aポート)25の開口部が全開状態から全閉状態に切り替わり、両流出ポート(A,Bポート)から流れ出る冷却水の流量比率を調整できるように構成されている。なお、弁体28のバルブ33が回転して第一流出ポート(Aポート)25と第二流出ポート(Bポート)26から流れ出る冷却水の流量比率が変化しても、流入ポート(Cポート)24から流れ込む冷却水の流量(合計流量)は略一定である。
【0028】
流量計20は、第二流出ポート26から流れ出る流体の流量を測定するものであり、本実施形態では羽根車式流量計を採用している。この羽根車式流量計は、流路内で回転可能に支持されたスクリュー37と、スクリュー37の羽根部に密封されたマグネット38を検知する磁気センサ39を備えて構成されている。磁気センサ39は、ホール素子、電源回路、増幅器等からなるホールIC40を内蔵した非接触式センサであり、ホールIC40でマグネット38の磁界を検知して電気信号をコントローラ21に出力する。なお、41は分流後に流路内に流れ込んだ流体の乱流を防いで整流させる整流板であり、この整流板41はスクリュー37の軸受も兼ねている。また、42はガタツキ防止のために整流板41を押し付けるウェーブワッシャーである。
【0029】
コントローラ(制御部)21は、流量測定、モータ制御、PID流量制御等の機能を備えたマイクロコンピュータである。コントローラ21は、磁気センサ39から出力された電気信号により、スクリュー37の回転数に基づいて算出された流量値を測定する。また、コントローラ21は、測定した流量値と、制御装置7から入力された設定流量値とに基づいてアクチュエータ29のステッピングモータ30を制御し、流量調節弁19の開度をフィードバック制御(PID制御)する。
【0030】
多段オリフィス22は、第一流出ポート25から流出する流体の圧力を段階的に減圧するものであり、圧力バランスを整える機能と、キャビテーションを抑制する機能を備えている。本実施形態の多段オリフィス22は、バルブボディ27に接続されたバルブアダプタ43に内蔵されており、コンパクト化とシール部位の削減を図ったものである。また、この多段オリフィス22は、図4に拡大して示すように、複数枚(本実施形態では5枚)のリングプレート44,…が厚さ方向に並べて配置されており、コンパクトでゴミ詰まりし難い構造になっている。個々のリングプレート44には、片側(入口側)に入口から出口に向かって口径が徐々に狭くなるテーパ状オリフィス45が設けられている。
【0031】
以上のとおり、本実施形態のフローコントローラ18によれば、流量調節弁19に三方弁を用いて第一流出ポート25と第二流出ポート26の分配量を制御することにより、流れる冷却水の流量に応じてポンプ12の供給圧の変動を抑え、配管系統毎の相互干渉を抑制することができる。また、バルブアダプタ43内にテーパ状オリフィス45が設けられており、第一流出ポート25側と第二流出ポート26側の背圧の差によって生じる流量特性バランスの悪化を防ぐことにより、精密な流量制御が可能になる。更に、テーパ状オリフィス45を有するリングプレート44を複数枚並べて配置した多段オリフィス22を採用することにより、第一流出ポート25から流出する流体の圧力を段階的に減圧し、背圧が低くなることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0032】
なお、上述した実施形態では、フローコントローラ18を構成する流量調節弁19としてT字型の三方弁を採用したが、図5図6に示すような変形例を採用しても良い。流量計20の入口には流量調節弁19のバルブの絞りがあるため、バルブからの乱流によって生じる流量特性への悪影響が考えられる。そこで、このような悪影響を防ぐ目的で、図5に示すフローコントローラ18Aはバルブボディ27にL字型エルボ46を介在させて流量計20を連結したものであり、図6に示すフローコントローラ18Bは更にバルブボディ27にL字型エルボ46を介在させて多段オリフィス22を連結したものである。このようにL字型エルボ46で配管を折り曲げることにより、流路を流れる流体が内壁に衝突するので、短い距離で極端な乱流を抑制することができる。また、流量計20の取付姿勢が垂直になることにより、本実施形態のような羽根車式流量計の場合、スクリュー37のシャフトの摺動抵抗が減少するので、低流量特性が向上し、ワイドレンジで流量測定が可能になるという効果もある。
【0033】
以上説明した実施形態では、本発明に係る流量制御装置を利用して、ダイカスト機の金型温度制御システムを構築したものであるが、本発明の適用例はこれに限られない。例えば、冷却水を使用する射出成形機や切削油を使用する工作機械等が複数台設置された配管系統において、機械の稼働台数の変化に応じて、冷却水や冷媒液、切削油等の流体の供給量を変化させる用途に本発明を適用することができる。なお、上述の金型温度制御システムにおいて、フローコントローラで冷却水の瞬時流量を制御するようにしたが、瞬時流量で制御して積算値をカウントし、積算流量を制御するようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
1:金型温度制御システム
2:ダイカスト機
3:金型
4:固定型
5:可動型
6:温度センサ
7:制御装置
8:冷却水循環装置
9:クーリングタワー
10:熱交換器
11:タンク
12:ポンプ
13:給水配管
14:金型配管
15:戻り配管
16:流量制御ユニット
17:マニホールド
18:フローコントローラ
19:流量調節弁
20:流量計
21:コントローラ
22:多段オリフィス
23:アダプタ
24:流入ポート
25:第一流出ポート
26:第二流出ポート
27:バルブボディ
28:弁体
29:アクチュエータ
30:ステッピングモータ
31:モータブラケット
32:バルブシャフト
33:バルブ
34:摺動Oリング
35:シャフトパッキン
36:リテーナロック
37:スクリュー
38:マグネット
39:磁気センサ
40:ホールIC
41:整流板
42:ウェーブワッシャー
43:バルブアダプタ
44:リングプレート
45:テーパ状オリフィス
46:L字型エルボ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14