(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176191
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バイアスタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20241212BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20241212BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20241212BHJP
B60C 9/06 20060101ALI20241212BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C9/00 A
B60C15/00 G
B60C9/06 M
B60C15/06 B
B60C9/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094541
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 琢也
(72)【発明者】
【氏名】山副 彰平
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
(72)【発明者】
【氏名】大滝 理恵
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA34
3D131BB03
3D131BC31
3D131DA03
3D131DA09
3D131DA13
3D131EC18U
3D131HA36
3D131HA54
3D131LA20
3D131LA24
(57)【要約】
【課題】RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できる、バイアスタイヤ2の提供。
【解決手段】バイアスタイヤ2は、一対のビード8、カーカス10及びRFIDタグ32を含むタグ部材12を備える。カーカス10はカーカス本体44とカーカスジャケット46とを備える。カーカス本体44は少なくとも2枚の巻上プライ40を含む。各巻上プライ40は一対の折り返し部40tを備える。隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teが、他方の折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置する。タグ部材12はカーカスジャケット46の外側に積層される。RFIDタグ32は、カーカス10の最大幅位置PWの径方向内側に位置し、軸方向において各折り返し部40tの端40teと重複しない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、
RFIDタグを含むタグ部材と
を備え、
前記カーカスが、並列した多数のカーカスコードを含む、少なくとも3枚のカーカスプライで構成され、各前記カーカスプライにおいて、各カーカスコードが赤道面に対して傾斜し、
前記カーカスが、カーカス本体と、前記カーカス本体をその外側から覆うカーカスジャケットとを備え、
前記カーカス本体が少なくとも2枚の前記カーカスプライを含み、少なくとも2枚の前記カーカスプライが各前記ビードで折り返される巻上プライであり、
各前記巻上プライが、プライ本体と一対の折り返し部とを備え、
前記プライ本体が一対の前記ビードの間を架け渡し、一対の前記折り返し部がそれぞれ前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返され、
各前記ビードの軸方向外側において、複数の前記折り返し部が軸方向に並び、
複数の前記折り返し部のうち、隣り合う2枚の折り返し部の間において、一方の折り返し部の端が、他方の折り返し部の端の、径方向外側に位置し、
前記カーカスジャケットが少なくとも1枚の前記カーカスプライを含み、少なくとも1枚の前記カーカスプライが各前記ビードで折り返されないハンガープライであり、
前記タグ部材が、前記カーカスジャケットの外側に積層され、
前記RFIDタグが、前記カーカスの最大幅位置の径方向内側に位置し、軸方向において各前記折り返し部の端と重複しない、
バイアスタイヤ。
【請求項2】
前記ハンガープライに含まれる前記カーカスコードが、有機繊維からなるコードである、
請求項1に記載のバイアスタイヤ。
【請求項3】
軸方向に並ぶ、複数の前記折り返し部のうち、一の前記折り返し部の端が前記カーカスの最大幅位置の径方向外側に位置する、
請求項1に記載のバイアスタイヤ。
【請求項4】
リムに組んだ状態において、前記RFIDタグが前記リムの径方向外端の径方向外側に位置する、
請求項1に記載のバイアスタイヤ。
【請求項5】
前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備え、
前記エイペックスが前記ビードの径方向外端を含み、
前記エイペックスが前記径方向外端に向かって先細りであり、
前記RFIDタグが、前記径方向外端の径方向外側に位置する、
請求項4に記載のバイアスタイヤ。
【請求項6】
産業車両用タイヤである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のバイアスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイアスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造管理、顧客情報、走行履歴等のデータを管理するために、RFID(Radio Frequency Identification)タグをタイヤに内蔵することが検討されている。
タイヤには、トラック及びバス用タイヤや乗用車用タイヤ等、様々なタイヤが存在する。下記の特許文献1は、RFIDタグを内蔵した、乗用車用タイヤとしての安全タイヤを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できる、バイアスタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るバイアスタイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、RFIDタグを含むタグ部材とを備える。前記カーカスは、並列した多数のカーカスコードを含む、少なくとも3枚のカーカスプライで構成される。各前記カーカスプライにおいて、各カーカスコードは赤道面に対して傾斜する。前記カーカスは、カーカス本体と、前記カーカス本体をその外側から覆うカーカスジャケットとを備える。前記カーカス本体は少なくとも2枚の前記カーカスプライを含み、少なくとも2枚の前記カーカスプライは、各前記ビードで折り返される巻上プライである。各前記巻上プライは、プライ本体と一対の折り返し部とを備える。前記プライ本体は一対の前記ビードの間を架け渡す。一対の前記折り返し部はそれぞれ、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される。各前記ビードの軸方向外側において、複数の前記折り返し部が軸方向に並び、複数の前記折り返し部のうち、隣り合う2枚の折り返し部の間において、一方の折り返し部の端が、他方の折り返し部の端の、径方向外側に位置する。前記カーカスジャケットは少なくとも1枚の前記カーカスプライを含み、少なくとも1枚の前記カーカスプライは各前記ビードで折り返されないハンガープライである。前記タグ部材は、前記カーカスジャケットの外側に積層される。前記RFIDタグは、前記カーカスの最大幅位置の径方向内側に位置し、軸方向において各前記折り返し部の端と重複しない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できる、バイアスタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0009】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と呼ばれる。
【0010】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0011】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0012】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0013】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0014】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
ビード部及びサイドウォール部からなる部分はサイド部とも呼ばれる。
【0015】
[本発明の基礎となった知見]
タイヤのカーカスは並列した多数のカーカスコードを含む。各カーカスコードは、一対のビードの間を架け渡す。カーカスコードは赤道面と交差する。
タイヤのカーカスには、ラジアル構造のカーカスとバイアス構造のカーカスとがある。
ラジアル構造では、カーカスコードの交差角度は70~90度の範囲で設定される。カーカスコードは赤道面に対してほぼ垂直に交わる。タイヤのサイド部においてカーカスコードは、タイヤの略径方向にのびる。そのため、例えば、2枚のカーカスプライでカーカスを構成しても、一方のカーカスプライに含まれるカーカスコードと、他方のカーカスプライに含まれるカーカスコードとが互いに拘束し合うことはない。ラジアル構造では、トレッド部の変形に追従してサイド部が変形するようなことは生じにくい。
これに対してバイアス構造では、カーカスコードは赤道面に対して斜めに交差する。タイヤのサイド部においてカーカスコードは、タイヤの径方向に対して傾斜する。そのため、例えば、カーカスコードの傾斜の向きが異なる、2枚のカーカスプライでカーカスを構成すると、一方のカーカスプライに含まれるカーカスコードと、他方のカーカスプライに含まれるカーカスコードとが交差するので、一方のカーカスプライのカーカスコードと他方のカーカスプライのカーカスコードとは互いに拘束し合う。サイド部の剛性は、ラジアル構造のそれに比べて高い。しかしトレッド部が変形すれば、サイド部の径方向外側部分も変形する。
バイアス構造のタイヤ(以下、バイアスタイヤ)の場合、ラジアル構造のタイヤ(以下、ラジアルタイヤ)に比べて、変形が広範囲に及ぶ。そのため、ラジアルタイヤと同じような考え方でRFIDタグを配置すると、耐久性を損なう恐れがある。
そこで、本発明者らは、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できるバイアスタイヤを得るために、バイアス構造のカーカスの特性を考慮し、RFIDタグを内蔵する位置について検討し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0016】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るバイアスタイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、RFIDタグを含むタグ部材とを備え、前記カーカスが、並列した多数のカーカスコードを含む、少なくとも3枚のカーカスプライで構成され、各前記カーカスプライにおいて、各カーカスコードが赤道面に対して傾斜し、前記カーカスが、カーカス本体と、前記カーカス本体をその外側から覆うカーカスジャケットとを備え、前記カーカス本体が少なくとも2枚の前記カーカスプライを含み、少なくとも2枚の前記カーカスプライが各前記ビードで折り返される巻上プライであり、各前記巻上プライが、プライ本体と一対の折り返し部とを備え、前記プライ本体が一対の前記ビードの間を架け渡し、一対の前記折り返し部がそれぞれ前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返され、各前記ビードの軸方向外側において、複数の前記折り返し部が軸方向に並び、複数の前記折り返し部のうち、隣り合う2枚の折り返し部の間において、一方の折り返し部の端が、他方の折り返し部の端の、径方向外側に位置し、前記カーカスジャケットが少なくとも1枚の前記カーカスプライを含み、少なくとも1枚の前記カーカスプライが各前記ビードで折り返されないハンガープライであり、前記タグ部材が、前記カーカスジャケットの外側に積層され、前記RFIDタグが、前記カーカスの最大幅位置の径方向内側に位置し、軸方向において各前記折り返し部の端と重複しない。
【0017】
このようにバイアスタイヤを整えることにより、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下が抑制される。
【0018】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のバイアスタイヤにおいて、前記ハンガープライに含まれる前記カーカスコードが、有機繊維からなるコードである。
【0019】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のバイアスタイヤにおいて、軸方向に並ぶ、複数の前記折り返し部のうち、一の前記折り返し部の端が前記カーカスの最大幅位置の径方向外側に位置する。
【0020】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のバイアスタイヤをリムに組んだ状態において、前記RFIDタグが前記リムの径方向外端の径方向外側に位置する。
【0021】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載のバイアスタイヤにおいて、前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備え、前記エイペックスが前記ビードの径方向外端を含み、前記エイペックスが前記径方向外端に向かって先細りであり、前記RFIDタグが、前記径方向外端の径方向外側に位置する。
【0022】
[構成6]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成5]のいずれかに記載のバイアスタイヤは、 産業車両用タイヤである。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るバイアスタイヤ2(以下、タイヤ2)の一部を示す。このタイヤ2は、フォークリフト等の産業車両に装着される。
【0025】
図1は、タイヤ2の回転軸(図示されず)を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。
図1に示された断面は子午線断面とも呼ばれる。両矢印ADで示される方向は、タイヤ2の軸方向である。タイヤ2の軸方向とはタイヤ2の回転軸に平行な方向を意味する。両矢印RDで示される方向は、タイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において径方向にのびる一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
図2に示された断面は、
図1に示された子午線断面の一部である。
図2は、サイドウォール部の一部とビード部とを示す。
【0026】
タイヤ2はリムRに組まれる。タイヤ2の内部に例えば空気が充填され、内圧が調整される。詳述しないが、リムRは正規リムである。
図示されないが、このタイヤ2の内部にはチューブが挿入され、このチューブの内部に空気が充填される。このタイヤ2はチューブタイプである。このタイヤ2がチューブレスタイプであってもよい。
【0027】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道とも呼ばれる。
【0028】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10及びタグ部材12を備える。
【0029】
トレッド4はカーカス10の径方向外側に位置する。トレッド4は周方向にのびる。タイヤ2はトレッド面14において路面と接地する。トレッド4の外面は路面と接地するトレッド面14を含む。トレッド面14は前述の赤道PCを含む。
トレッド4は架橋ゴムからなる。トレッド4のうち、トレッド面14を含む部分は、グリップ性能を考慮した架橋ゴムからなる。トレッド4はトレッド部の主たる要素である。
詳述しないが、このトレッド4は、バイアスタイヤのトレッドのための架橋ゴムとして一般的に用いられる架橋ゴムで構成される。
【0030】
詳述しないが、このタイヤ2のトレッド4には複数のラグ溝18が刻まれる。このトレッド4は複数のラグ溝18を備える。
複数のラグ溝18はそれぞれ、赤道面側から軸方向外側に向かってのびる。ラグ溝18は横溝とも呼ばれる。
図示されないが、このタイヤ2のトレッド4には、複数のラグ溝18が周方向に並ぶラグ溝列20が2列、構成される。赤道面を挟んで左側の領域に一方のラグ溝列20(以下、第一ラグ溝列20a)が構成される。右側の領域に他方のラグ溝列20(以下、第二ラグ溝列20b)が構成される。第一ラグ溝列20aのラグ溝18と、第二ラグ溝列20bのラグ溝18とは、周方向に交互に配置される。
【0031】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス10の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は架橋ゴムからなる。サイドウォール6はトレッド4よりも軟質である。サイドウォール6はサイドウォール部の主たる要素である。サイドウォール6はタイヤ2の側面を構成する。
詳述しないが、このサイドウォール6は、バイアスタイヤのサイドウォールのための架橋ゴムとして一般的に用いられる架橋ゴムで構成される。
一対のサイドウォール6は赤道面を挟んで配置される。
図1において赤道面の左側に位置するサイドウォール6は第一サイドウォール6aとも呼ばれる。右側に位置するサイドウォール6は第二サイドウォール6bとも呼ばれる。
【0032】
それぞれのビード8は、サイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8はビード部の主たる要素である。ビード8はコア22とエイペックス24とを備える。
コア22は周方向にのびる。図示されないが、コア22はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス24はコア22の径方向外側に位置する。エイペックス24は、ビード8の径方向外端PAを含む。このタイヤ2では、ビード8の径方向外端PAは、リムRの径方向外端PGの径方向外側に位置する。エイペックス24は、径方向外端PAに向かって先細りである。エイペックス24は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
一対のビード8は赤道面を挟んで配置される。
図1において赤道面の左側に位置するビード8は第一ビード8aとも呼ばれる。右側に位置するビード8は第二ビード8bとも呼ばれる。
【0033】
カーカス10は、トレッド4及び一対のサイドウォール6の内側に位置する。カーカス10は一対のビード8の間を架け渡す。カーカス10はタイヤ2の骨格を構成する。
図1において符号PWで示される位置は、カーカス10の軸方向外端である。軸方向外端PWは、カーカス10の最大幅位置(以下、カーカス最大幅位置)とも呼ばれる。
【0034】
カーカス最大幅位置PWは、正規状態のタイヤ2において特定される。なお、リムRにタイヤ2を組んだ状態でカーカス最大幅位置PWを特定できない場合は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤ2を切断することにより得られる、タイヤ2の切断面において、カーカス最大幅位置PWが特定される。この特定では、左右のビード8間の距離が、リムRに組んだタイヤ2におけるビード8間の距離に一致するように、タイヤ2はセットされる。
【0035】
このタイヤ2のカーカス10は、少なくとも3枚のカーカスプライ26で構成される。
図1に示されたカーカス10は6枚のカーカスプライ26で構成される。
【0036】
図3はカーカス10の構成を示す。両矢印ADで示される方向は、タイヤ2の軸方向である。両矢印CDで示される方向は、タイヤ2の周方向である。
図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図3に示されるカーカス10の構成は、トレッド4の径方向内側でのカーカス10の構成である。
【0037】
図3に示されるように、各カーカスプライ26は、並列した多数のカーカスコード28を含む。説明の便宜のために、カーカスコード28は実線で表されるが、カーカスプライ26においてカーカスコード28はトッピングゴム30で覆われる。
各カーカスプライ26において、カーカスコード28は、赤道面に対して垂直に交差するのではなく、赤道面に対して斜めに交差する。カーカスコード28は赤道面に対して傾斜する。このカーカス10はバイアス構造を有する。このカーカス10はバイアス構造のカーカスである。
【0038】
図3に示されるように、径方向において隣り合う2枚のカーカスプライ26の間において、一方のカーカスプライ26に含まれるカーカスコード28の傾斜の向きは、他方のカーカスプライ26に含まれるカーカスコード28の傾斜の向きと逆向きである。一方のカーカスプライ26に含まれるカーカスコード28は、他方のカーカスプライ26に含まれるカーカスコード28と交差する。
【0039】
タグ部材12はビード8の軸方向外側に位置する。このタイヤ2では、一つのタグ部材12が、第二サイドウォール6b側にのみ、設けられる。第一サイドウォール6a側と、第二サイドウォール6b側との両方に、タグ部材12が設けられてもよい。損傷リスクの低減の観点から、第一サイドウォール6a及び第二サイドウォール6bのいずれかのサイドウォール6の側、つまり、一対のサイドウォール6のうち、一方のサイドウォール6の側にのみ、タグ部材12が設けられるのが好ましい。周方向に間隔をあけて複数のタグ部材12が設けられてもよいが、損傷リスクの低減の観点から、一方のサイドウォール6の側にタグ部材12は一つ、設けられればよい。
【0040】
図4はタグ部材12の平面図である。
図5は
図4のV-V線に沿った断面図である。
タグ部材12はプレート状である。タグ部材12は長さ方向に長く、幅方向に短い。
図1に示されるように、タイヤ2においてタグ部材12は、その幅方向の第一端12sがタイヤ2の径方向外側に、第二端12uが内側に位置するように配置される。このタイヤ2では、第一端12sが外端とも呼ばれ、第二端12uが内端とも呼ばれる。
【0041】
タグ部材12はRFIDタグ32を含む。
図4においてRFIDタグ32は、説明の便宜のために実線で示されるが、その全体が保護体34で覆われる。タグ部材12は、RFIDタグ32と保護体34とを備える。RFIDタグ32はタグ部材12の中心に位置する。保護体34は架橋ゴムで構成される。保護体34はサイドウォール6の剛性と同程度の剛性を有する。このタイヤ2では、良好な通信環境の形成が考慮され、保護体34には高い電気抵抗を有する架橋ゴムが用いられる。保護体34は絶縁性の高いゴムからなる。
【0042】
詳述しないが、RFIDタグ32は、送受信回路、制御回路、メモリ等をチップ化した半導体チップ36と、アンテナ38とから構成される小型軽量の電子部品である。RFIDタグ32は、質問電波を受信すると、これを電気エネルギーとして使用し、メモリ内の諸データを応答電波として発信する。このRFIDタグ32は、受動式無線周波数識別トランスポンダの一種である。
【0043】
タグ部材12は、RFIDタグ32が架橋ゴムで被覆されたプレート状の部材である。RFIDタグ32の損傷リスクの低減と、良好な通信環境の形成の観点から、タイヤ2の子午線断面におけるタグ部材12の厚さは、好ましくは1.0mm以上2.5mm以下である。このタイヤ2におけるタグ部材12の厚さは、RFIDタグ32の半導体チップ36におけるタグ部材12の最大厚さで表される。
なお、タイヤ2に埋め込む前のタグ部材12の長さTLは60mm以上80mm以下である。幅TWは10mm以上20mm以下である。
【0044】
図2において符号TUで示される位置は、RFIDタグ32(具体的には、半導体チップ36)の径方向内端である。符号TSで示される位置は、半導体チップ36の径方向外端、すなわち、RFIDタグ32の径方向外端である。
本発明においては、タイヤ2におけるRFIDタグ32の内端TUが、基準とする位置(以下、基準位置)の径方向外側に位置する場合が、RFIDタグ32が基準位置に対して径方向外側に位置する場合である。タイヤ2におけるRFIDタグ32の外端TSが基準位置の径方向内側に位置する場合が、RFIDタグ32が基準位置に対して径方向内側に位置する場合である。
【0045】
前述したように、カーカス10は少なくとも3枚のカーカスプライで構成される。このタイヤ2のカーカス10は、タイプが異なる、2種類のカーカスプライ26を含む。
一つめのタイプのカーカスプライ26は、各ビード8で折り返されるタイプのカーカスプライ26である。各ビード8で折り返されるカーカスプライ26は、巻上プライとも呼ばれる。
二つめのタイプのカーカスプライ26は、各ビード8で折り返されないタイプのカーカスプライ26である。各ビード8で折り返されないカーカスプライ26は、ハンガープライとも呼ばれる。
【0046】
本発明において、巻上プライとは、カーカスプライ26の端がビード8のコア22の径方向外側に位置するように、それぞれのビード8で折り返されたカーカスプライ26を意味する。カーカスプライ26をビード8で折り返した結果、カーカスプライ26の端がコア22の径方向外側に位置していなければ、このカーカスプライ26は巻上プライではなく、ハンガープライである。
【0047】
前述したように、このタイヤ2のカーカス10は6枚のカーカスプライ26で構成される。6枚のカーカスプライ26のうち、内側に位置する4枚のカーカスプライ26はそれぞれ、各ビード8で折り返される。内側に位置する4枚のカーカスプライ26は、巻上プライ40である。
【0048】
4枚の巻上プライ40はそれぞれ、各ビード8で折り返される。各巻上プライ40は、プライ本体40mと、一対の折り返し部40tとを備える。プライ本体40mは一対のビード8の間を架け渡す。一対の折り返し部40tはそれぞれ、プライ本体40mに連なりビード8で折り返される。このタイヤ2の折り返し部40tは、軸方向内側から外側に向かってビード8で折り返される。
【0049】
ビード8の軸方向外側において、各巻上プライ40の折り返し部40tが軸方向に並ぶ。このタイヤ2のカーカス10は4枚の巻上プライ40を含むので、4枚の折り返し部40tが軸方向に並ぶ。このタイヤ2では、軸方向において最も外側に位置する折り返し部40tが第一折り返し部40t1である。第一折り返し部40t1の軸方向内側に位置する折り返し部40tが第二折り返し部40t2である。第二折り返し部40t2の軸方向内側に位置する折り返し部40tが第三折り返し部40t3である。第三折り返し部40t3の軸方向内側に位置する折り返し部40tが第四折り返し部40t4である。このタイヤ2では、第四折り返し部40t4が、4枚の折り返し部40tのうち、最も軸方向内側に位置する折り返し部40tである。
【0050】
第一折り返し部40t1を含む巻上プライ40は第一巻上プライ40aとも呼ばれ、第一巻上プライ40aのプライ本体40mは第一プライ本体40m1とも呼ばれる。第一巻上プライ40aは、第一プライ本体40m1と、一対の第一折り返し部40t1とを備える。
【0051】
第二折り返し部40t2を含む巻上プライ40は第二巻上プライ40bとも呼ばれ、第二巻上プライ40bのプライ本体40mは第二プライ本体40m2とも呼ばれる。第二巻上プライ40bは、第二プライ本体40m2と、一対の第二折り返し部40t2とを備える。
【0052】
第三折り返し部40t3を含む巻上プライ40は第三巻上プライ40cとも呼ばれ、第三巻上プライ40cのプライ本体40mは第三プライ本体40m3とも呼ばれる。第三巻上プライ40cは、第三プライ本体40m3と、一対の第三折り返し部40t3とを備える。
【0053】
第四折り返し部40t4を含む巻上プライ40は第四巻上プライ40dとも呼ばれ、第四巻上プライ40dのプライ本体40mは第四プライ本体40m4とも呼ばれる。第四巻上プライ40dは、第四プライ本体40m4と、一対の第四折り返し部40t4とを備える。
【0054】
このタイヤ2では、カーカス10に含まれる4枚のプライ本体40mのうち、第一プライ本体40m1がタイヤ2の内面側に位置し、第四プライ本体40m4がタイヤ2の外面側に位置する。
【0055】
このタイヤ2では、カーカス10のうち、巻上プライ40で構成される部分はカーカス本体44とも呼ばれる。前述したように、6枚のカーカスプライ26のうち、内側に位置する4枚のカーカスプライ26が巻上プライ40である。このタイヤ2のカーカス本体44は4枚の巻上プライ40を含む。カーカス本体44は少なくとも2枚の巻上プライ40で構成されればよく、このカーカス本体44が3枚の巻上プライ40で構成されてもよく、5枚以上の巻上プライ40で構成されてもよい。つまり、このタイヤ2のカーカス10はカーカス本体44を備える。カーカス本体44は、少なくとも2枚のカーカスプライ26を含む。そして、このカーカス本体44に含まれる少なくとも2枚のカーカスプライ26は、各ビード8で折り返される巻上プライ40である。
【0056】
このタイヤ2では、カーカス10を構成する6枚のカーカスプライ26のうち、外側に位置する2枚のカーカスプライ26は、各ビード8で折り返されない。外側に位置する2枚のカーカスプライ26は、ハンガープライ42である。
【0057】
2枚のハンガープライ42はそれぞれ、ビード8で折り返されない。各ハンガープライ42は、赤道面からそれぞれのビード8に向かってのびる。各ハンガープライ42の端42eは、ビード8の径方向内側に位置する。
【0058】
このタイヤ2のカーカス10は2枚のハンガープライ42を含む。2枚のハンガープライのうち、カーカス本体44の外側に積層されるハンガープライ42が第一ハンガープライ42aである。第一ハンガープライ42aの外側に積層されるハンガープライ42が第二ハンガープライ42bである。
【0059】
このタイヤ2では、カーカス10のうち、ハンガープライ42で構成される部分はカーカスジャケット46とも呼ばれる。前述したように、このタイヤ2のカーカス10では、第一ハンガープライ42aがカーカス本体44の外側に積層され、第二ハンガープライ42bが第一ハンガープライ42aのさらに外側に積層される。カーカスジャケット46は、カーカス本体44をその外側から覆う。
前述したように、6枚のカーカスプライ26のうち、外側に位置する2枚のカーカスプライ26がハンガープライ42である。このタイヤ2のカーカスジャケット46は2枚のハンガープライ42を含む。このカーカスジャケット46は少なくとも1枚のハンガープライ42で構成されればよく、このカーカスジャケットが3枚以上のハンガープライ42で構成されてもよい。つまり、このタイヤ2のカーカス10は、前述のカーカス本体44と、このカーカス本体44をその外側から覆うカーカスジャケット46とを備える。このカーカスジャケット46は、少なくとも1枚のカーカスプライ26を含む。そして、このカーカスジャケット46に含まれる少なくとも1枚のカーカスプライ26は、各ビード8で折り返されないハンガープライ42である。
【0060】
図3において、符号α1で示される角度は、第一巻上プライ40aに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度である。符号α2で示される角度は、第二巻上プライ40bに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度である。符号α3で示される角度は、第三巻上プライ40cに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度である。符号α4で示される角度は、第四巻上プライ40dに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度である。
図3において、符号β1で示される角度は、第一ハンガープライ42aに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度である。符号β2で示される角度は、第二ハンガープライ42bに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度である。
【0061】
前述したように、このタイヤ2のカーカス10はバイアス構造を有する。第一巻上プライ40aに含まれるカーカスコード28が赤道面に対してなす角度α1、すなわち、第一巻上プライ40aに含まれるカーカスコード28の傾斜角度α1は、好ましくは、25度以上45度以下である。第二巻上プライ40bに含まれるカーカスコード28の傾斜角度α2は、好ましくは、25度以上45度以下である。第三巻上プライ40cに含まれるカーカスコード28の傾斜角度α3は、好ましくは、25度以上45度以下である。第四巻上プライ40dに含まれるカーカスコード28の傾斜角度α4は、好ましくは、25度以上45度以下である。
第一ハンガープライ42aに含まれるカーカスコード28の傾斜角度β1は、好ましくは、25度以上45度以下である。第二ハンガープライ42bに含まれるカーカスコード28の傾斜角度β2は、好ましくは、25度以上45度以下である。
【0062】
図2に示されたカーカス10では、第三折り返し部40t3の端40t3eは、この第三折り返し部40t3の隣に位置する第四折り返し部40t4の端40t4eの径方向外側に位置する。このタイヤ2では、第四折り返し部40t4の端40t4eが、第三折り返し部40t3の端40t3eの径方向外側に配置されてもよい。
このカーカス10では、第二折り返し部40t2の端40t2eは、この第二折り返し部40t2の隣に位置する第三折り返し部40t3の端40t3eの径方向外側に位置する。このタイヤ2では、第三折り返し部40t3の端40t3eが、第二折り返し部40t2の端40t2eの径方向外側に配置されてもよい。
このカーカス10では、第一折り返し部40t1の端40t1eは、この第一折り返し部40t1の隣に位置する第二折り返し部40t2の端40t2eの径方向外側に位置する。このタイヤ2では、第二折り返し部40t2の端40t2eが、第一折り返し部40t1の端40t1eの径方向外側に配置されてもよい。
つまり、このタイヤ2では、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teが、他方の折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置する。
【0063】
このタイヤ2では、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teの径方向位置と、他方の折り返し部40tの端40teの径方向位置とが一致することが防止される。言い換えれば、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teと、他方の折り返し部40tの端40teとは軸方向において重複しない。このタイヤ2では、一方の折り返し部40tの端40teと、他方の折り返し部40tの端40teとが重複することによる、歪の集中が抑制される。
【0064】
このタイヤ2では、軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、第一折り返し部40t1の端40t1eが径方向において最も外側に位置する。隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teが、他方の折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置するのであれば、第二折り返し部40t2の端40t2eが径方向において最も外側に配置されてもよい。第三折り返し部40t3の端40t3eが径方向において最も外側に配置されてもよい。第四折り返し部40t4の端40t4eが径方向において最も外側に配置されてもよい。
【0065】
図2に示されるように、第一折り返し部40t1の端40t1eの径方向位置は、他の折り返し部40tの端40teの径方向位置と一致していない。第二折り返し部40t2の端40t2eの径方向位置も、他の折り返し部40tの端40teの径方向位置と一致していない。第三折り返し部40t3の端40t3eの径方向位置も、他の折り返し部40tの端40teの径方向位置と一致していない。第四折り返し部40t4の端40t4eの径方向位置も、他の折り返し部40tの端40teの径方向位置と一致していない。このタイヤ2では、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tの端40teは、径方向において分散して配置される。このタイヤ2では、折り返し部40tの端40teへの歪みの集中が効果的に抑制される。このタイヤ2では、折り返し部40tの端40teへの歪みの集中を抑制しながら、この折り返し部40tがビード部を効果的に補強できる。このタイヤ2は、耐久性を確保しながら剛性を高めることができる。この観点から、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tの端40teは、径方向において分散して配置されるのが好ましい。この場合、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teから他方の折り返し部40tの端40teまでの径方向距離は10mm以上50mm以下であるのがより好ましい。
【0066】
前述したように、このタイヤ2のカーカス10はバイアス構造を有する。サイド部の剛性は、ラジアル構造のそれに比べて高い。しかしトレッド部が変形すれば、サイド部の径方向外側部分も変形する。
このタイヤ2では、RFIDタグ32はカーカス10の最大幅位置PWの径方向内側に位置する。RFIDタグ32が最大幅位置PWの径方向外側に配置される場合に比べて、このタイヤ2のRFIDタグ32は、トレッド部から離して配置される。このタイヤ2のRFIDタグ32は、トレッド部の変形による影響を受けにくい。このタイヤ2は、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を抑制できる。
【0067】
前述したように、このタイヤ2のカーカス10は、カーカス本体44をその外側から覆うカーカスジャケット46を備える。カーカスジャケット46は、各ビード8で折り返されないハンガープライ42で構成される。カーカスジャケット46はそれ自体が、折り返し部を含まない。カーカスジャケット46は、カーカス本体44に含まれる折り返し部40tの端40teを覆う。カーカスジャケット46は、折り返し部40tの端40teへの歪みの集中を抑制する。しかもこのタイヤ2では、タグ部材12は、折り返し部を含まないカーカスジャケット46の外側に積層される。言い換えれば、タグ部材12は、カーカスジャケット46の外側においてこのカーカスジャケット46に隣接する。タグ部材12とカーカス本体44との間には、カーカスジャケット46が介在する。タグ部材12に含まれるRFIDタグ32が折り返し部40tの端40teから離して配置される。RFIDタグ32と折り返し部40tの端40teとが互いに干渉し合うことが抑制されるので、RFIDタグ32に歪みが集中することが抑制される。このタイヤ2は、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を抑制できる。
【0068】
さらにこのタイヤ2では、
図2に示されるように、RFIDタグ32は、軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、径方向において最も外側に位置する、第一折り返し部40t1の端40t1eの径方向外側に位置する。言い換えれば、RFIDタグ32は、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ各折り返し部40tの端40teと軸方向において重複しない。RFIDタグ32と折り返し部40tの端40teとが互いに干渉し合うことが効果的に抑制されるので、RFIDタグ32に歪みは集中しにくい。このタイヤ2は、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を抑制できる。
【0069】
このタイヤ2では、RFIDタグ32の径方向位置が折り返し部40tの端40teの径方向位置と一致していなければよいので、第一折り返し部40t1の端40t1eと、この第一折り返し部40t1の端40t1eの次に径方向外側に位置する第二折り返し部40t2の端40t2eとの間に、RFIDタグ32が配置されてもよい。第二折り返し部40t2の端40t2eと、この第二折り返し部40t2の端40t2eの次に径方向外側に位置する第三折り返し部40t3の端40t3eとの間に、RFIDタグ32が配置されてもよい。第三折り返し部40t3の端40t3eと、この第三折り返し部40t3の端40t3eの次に径方向外側に位置する第四折り返し部40t4の端40t4e、言い換えれば、軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、径方向において最も内側に位置する折り返し部40tの端40teとの間に、RFIDタグ32が配置されてもよい。
【0070】
一方で、RFIDタグ32がリムRに近づくと、電波に乱れが生じ、RFIDタグ32と通信機器(図示されず)との間に良好な通信環境を構築できない恐れがある。電波に乱れが生じることが抑制され、良好な通信環境が形成されるとの観点から、タイヤ2をリムRに組んだ状態において、RFIDタグ32はリムRの径方向外端PGの径方向外側に位置するのが好ましい。
前述したように、ビード8の径方向外端PAはリムRの径方向外端PGの径方向外側に位置する。RFIDタグ32をリムRから遠ざけることができ、良好な通信環境が効果的に形成される観点から、前記RFIDタグ32はビード8の径方向外端PAの径方向外側に位置するのがより好ましい。
【0071】
このタイヤ2では、第四折り返し部40t4の端40t4eはリムRの径方向外端PGの径方向内側に位置するが、第三折り返し部40t3の端40t3eはリムRの径方向外端PGの径方向外側に位置する。RFIDタグ32をリムRから遠ざけて配置するほど、電波に乱れが生じることが抑制され、良好な通信環境が形成される。この観点から、リムRの径方向外端PGの径方向外側に位置する折り返し部40tの端40teの径方向外側にRFIDタグ32は位置するのが好ましい。良好な通信環境を形成しながら、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を抑制できるとの観点から、カーカス10の最大幅位置PWと、この最大幅位置PWの径方向内側に位置し、この最大幅位置PWに最も近い折り返し部40tの端40teとの間に、RFIDタグ32が位置するのがより好ましい。
【0072】
前述したように、カーカスプライ26はカーカスコード28を含む。このタイヤ2のカーカス10は、カーカスプライ26として、巻上プライ40及びハンガープライ42を含む。巻上プライ40及びハンガープライ42はそれぞれカーカスコード28を含む。
このタイヤ2では、少なくとも1枚のハンガープライ42で構成されるカーカスジャケット46にタグ部材12が積層される。ハンガープライ42に含まれるカーカスコード28は、RFIDタグ32の近くに位置する。
【0073】
このタイヤ2では、ハンガープライ42に含まれるカーカスコード28は、スチールコードでなく、有機繊維からなるコードである。このタイヤ2では、電波に乱れが生じることが抑制され、良好な通信環境が形成される。前述したように、このタイヤ2は、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できる。したがって、このタイヤ2は、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制でき、内蔵するRFIDタグと良好に通信できる。この観点から、ハンガープライ42に含まれるカーカスコード28は、有機繊維からなるコードであるのが好ましい。同様の観点から、巻上プライ40に含まれるカーカスコード28も、有機繊維からなるコードであるのがより好ましい。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。カーカスコード28としては、有機繊維からなるコードの中でも、ナイロン繊維からなるコードが好適に用いられる。
【0074】
第三折り返し部40t3は第四折り返し部40t4の軸方向外側に位置する。そして、この第四折り返し部40t4の軸方向外側に位置する第三折り返し部40t3の端40t3eが、第四折り返し部40t4の端40t4eの径方向外側に位置する。
さらに第二折り返し部40t2は第三折り返し部40t3の軸方向外側に位置する。そして、第三折り返し部40t3の軸方向外側に位置する第二折り返し部40t2の端40t2eが、第三折り返し部40t3の端40t3eの径方向外側に位置する。
そして第一折り返し部40t1は第二折り返し部40t2の軸方向外側に位置する。そして、第二折り返し部40t2の軸方向外側に位置する第一折り返し部40t1の端40t1eが、第二折り返し部40t2の端40t2eの径方向外側に位置する。
【0075】
このタイヤ2では、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、軸方向外側に位置する折り返し部40tの端40teが、軸方向内側に位置する折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置する。軸方向において内側に位置する折り返し部40tの端40teが、軸方向において外側に位置する折り返し部40tにより覆われる。そのため、外側に位置する折り返し部40tが、その内側に位置する折り返し部40tの端40teへの歪みの集中を抑制しながら、ビード部を効果的に補強できる。このタイヤ2は、耐久性を確保しながら剛性を高めることができる。この観点から、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、軸方向外側に位置する折り返し部40tの端40teが、軸方向内側に位置する折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置するのが好ましい。
【0076】
カーカスジャケット46はカーカス10の外側を構成する。タイヤ2が撓むと、ハンガープライ42に含まれるカーカスコード28の張力が高まる。
前述したように、このタイヤ2では、カーカスジャケット46を構成するハンガープライ42の端42eは、ビード8の径方向内側に位置する。そのため、例えば
図2に示されるように、タイヤ2がリムRに組まれると、ハンガープライ42の端42eの部分が、ビード8のコア22とリムRとの間に挟まれる。コア22は、リムRを締め付ける。これにより、ハンガープライ42の端42eの部分が拘束される。そのため、タイヤ2が撓むと、ハンガープライ42に含まれるカーカスコード28の張力が効果的に高まる。サイド部の剛性が高められるので、カーカス10の最大幅位置PWの径方向内側に配置されたRFIDタグ32には歪みが集中しにくい。このタイヤ2は、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を抑制できる。この観点から、ハンガープライ42の端42eは、ビード8の径方向内側に位置するのが好ましい。
【0077】
図6は、本発明の他の実施形態に係るバイアスタイヤ52(以下、タイヤ52)の一部を示す。このタイヤ52も、フォークリフト等の産業車両に装着される。
【0078】
図6は、タイヤ52の子午線断面の一部を示す。この
図6は、
図2と同様、サイドウォール部の一部とビード部とを示す。
【0079】
このタイヤ52は、
図1に示されたタイヤ2が有する要素と同じ要素を有する。
図1に示されたタイヤ2が有する要素と同じ要素には、この
図1に示されたタイヤ2が有する要素の符号と同じ符号を付している。以下に、
図1に示されたタイヤ2の構成と異なる構成が説明され、同じ構成についてはその説明が省略される。
【0080】
このタイヤ52においても、カーカス本体44は4枚の巻上プライ40を含む。第一巻上プライ40aは、第一プライ本体40m1と、一対の第一折り返し部40t1とを備える。第二巻上プライ40bは、第二プライ本体40m2と、一対の第二折り返し部40t2とを備える。第三巻上プライ40cは、第三プライ本体40m3と、一対の第三折り返し部40t3とを備える。第四巻上プライ40dは、第四プライ本体40m4と、一対の第四折り返し部40t4とを備える。
ビード8の軸方向外側においては、各巻上プライ40の折り返し部40tが軸方向に並ぶ。このタイヤ52のカーカス10も4枚の巻上プライ40を含むので、4枚の折り返し部40tが軸方向に並ぶ。軸方向において最も外側に位置する折り返し部40tが第一折り返し部40t1である。軸方向において最も内側に位置する折り返し部40tが第四折り返し部40t4である。
【0081】
第三折り返し部40t3は第四折り返し部40t4の軸方向外側に位置する。そして、この第三折り返し部40t3の端40t3eは、第四折り返し部40t4の端40t4eの径方向外側に位置する。
第二折り返し部40t2は第三折り返し部40t3の軸方向外側に位置する。そして、この第二折り返し部40t2の端40t2eは、第三折り返し部40t3の端40t3eの径方向外側に位置する。
第一折り返し部40t1は第二折り返し部40t2の軸方向外側に位置する。そして、この第一折り返し部40t1の端40t1eは、第二折り返し部40t2の端40t2eの径方向外側に位置する。
【0082】
図6に示されるように、軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、第一折り返し部40t1の端40t1eが径方向において最も外側に位置する。第一折り返し部40t1の端40t1eは、カーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に位置する。
【0083】
このタイヤ52では、
図1に示されたタイヤ2と同様、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、一方の折り返し部40tの端40teが、他方の折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置するのであれば、第二折り返し部40t2の端40t2eが径方向において最も外側に配置されてもよい。第三折り返し部40t3の端40t3eが径方向において最も外側に配置されてもよい。第四折り返し部40t4の端40t4eが径方向において最も外側に配置されてもよい。したがって、第二折り返し部40t2の端40t2eが、カーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に配置されてもよいし、第三折り返し部40t3の端40t3eが、カーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に配置されてもよいし、第四折り返し部40t4の端40t4eが、カーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に配置されてもよい。つまり、このタイヤ52では、軸方向に並ぶ、複数の折り返し部40tのうち、一の折り返し部40tの端40teがカーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に位置する。
【0084】
このタイヤ2では、タイヤ52の撓みの中心となる、最大幅位置PWに、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、一の折り返し部40tが位置する。カーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に位置する端40teを有する折り返し部40tは、サイド部の剛性を効果的に高める。サイド部における撓み量を小さく抑制できるので、カーカス10の最大幅位置PWの径方向内側に配置されたRFIDタグ32に、歪みは集中しにくい。このタイヤ2は、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を抑制できる。この観点から、軸方向に並ぶ、複数の折り返し部40tのうち、一の折り返し部40tの端40teがカーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に位置するのが好ましい。
【0085】
サイド部の剛性を効果的に高めて、RFIDタグ32を内蔵したことによる耐久性の低下を効果的に抑制できる観点から、軸方向に並ぶ、複数の折り返し部40tのうち、軸方向において最も外側に位置する折り返し部40tの端40te、すなわち、第一折り返し部40t1の端40t1eがカーカス10の最大幅位置PWの径方向外側に位置するのがより好ましい。この場合、最大幅位置PWからビード8側に向かってサイド部の剛性を徐々に高めることができる観点から、ビード8の軸方向外側において軸方向に並ぶ複数の折り返し部40tのうち、隣り合う2枚の折り返し部40tの間において、軸方向外側に位置する折り返し部40tの端40teが、軸方向内側に位置する折り返し部40tの端40teの、径方向外側に位置するのがさらに好ましい。
【0086】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できる、バイアスタイヤが得られる。本発明は、産業車両用タイヤにおいて、顕著な効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明された、RFIDタグを内蔵することによる耐久性の低下を抑制できる技術は、種々のバイアスタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0088】
2、52・・・タイヤ
4・・・トレッド
6、6a、6b・・・サイドウォール
8、8a、8b・・・ビード
10 カーカス
12 タグ部材
22 コア
24 エイペックス
26 カーカスプライ
28 カーカスコード
32 RFIDタグ
34 保護体
36 半導体チップ
38 アンテナ
40、40a、40b、40c、40d・・・巻上プライ
40m、40m1、40m2、40m3、40m4・・・プライ本体
40t、40t1、40t2、40t3、40t4・・・折り返し部
42、42a、42b・・・ハンガープライ
44 カーカス本体
46 カーカスジャケット