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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176199
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】パイプ加工装置及びパイプ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 41/04 20060101AFI20241212BHJP
   B21D 19/00 20060101ALI20241212BHJP
   B21C 37/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B21D41/04 C
B21D19/00 A
B21C37/16
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094560
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】323005094
【氏名又は名称】有限会社後藤工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】後藤 栄彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 充
【テーマコード(参考)】
4E028
【Fターム(参考)】
4E028FA02
4E028FA07
(57)【要約】
【課題】コストを抑えて容易にパイプを直線状に接続するために、パイプの端部を加工するパイプ加工装置を提供する。
【解決手段】円筒パイプの端部を相対的に圧入させる成形型1を備えるパイプ加工装置であり、成形型1は、内径が一定の単径筒部11、及び、単径筒部11から有底円筒形の開端Eに向かって内径が漸次拡大している案内部12を有している有底円筒形の型本体10と、型本体10の底部15から開端E側に、型本体10と同一の軸方向に延びている円柱状部材20とを備えており、円柱状部材20は、型本体10の開端Eより外方に位置し、単径筒部11の内径より小さい外径を有している大径部22と、大径部22より小さい外径を有し、型本体10の底部15に対して大径部22を支持している小径軸部21とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒パイプの端部を相対的に圧入させる成形型を備えるパイプ加工装置であり、
前記成形型は、
内径が一定の単径筒部、及び、該単径筒部から内径が漸次拡大している案内部を有している、有底円筒形の型本体と、
該型本体の底部から開端側に、前記型本体と同一の軸方向に延びている円柱状部材と、を備え、
該円柱状部材は、
前記型本体の開端より外方に位置し、前記単径筒部の内径より小さい外径を有している大径部と、
該大径部より小さい外径を有し、前記型本体の底部に対して前記大径部を支持している小径軸部と、を備えている
ことを特徴とするパイプ加工装置。
【請求項2】
前記円柱状部材は、前記大径部とは反対側の端部に、前記単径筒部の内径と略等しい外径を有している基底部を有していると共に、前記型本体に対して着脱される
ことを特徴とする請求項1に記載のパイプ加工装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記単径筒部との境界に円弧状のアール部を有している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパイプ加工装置。
【請求項4】
請求項1に記載のパイプ加工装置を使用したパイプ加工方法であり、
外径が前記案内部の最小径より大きく最大径以下である円筒パイプの端部を、前記案内部に当接させた状態から前記成形型の内部に相対的に圧入することにより、前記円筒パイプの端部を外周面側から押圧した後、
前記円筒パイプの端部を、前記成形型から相対的に引き抜くことにより、前記円筒パイプの端部を内周面側から前記大径部によって押圧することにより、
前記円筒パイプの端部に、外径が前記単径筒部の内径と略等しく、内径が前記大径部の外径と略等しい縮径加工部を形成する
ことを特徴とするパイプ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ端部を加工するためのパイプ加工装置、及び、該パイプ加工装置を使用したパイプ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプ同士を直線状に接続する手段として、従前より、パイプの端部同士を溶接により接続する、パイプの端部にフランジを形成し、重ね合わせたフランジ同士をボルトで接続する、という手段が採られている。また、パイプが円筒パイプの場合、パイプの端部にねじ山を形成し、ネジ溝を有するジョイント部材で接続する、パイプの外径と略等しい内径を有する筒状のジョイント部材の両端に、それぞれパイプを嵌入させて接続する、中央部分の外径がパイプの内径以上で、両端に向かって外径が徐々に小さくなっているジョイント部材の両端から、それぞれパイプを外嵌させて接続する、等の手段が採られている。
【0003】
しかしながら、これらは何れも、接続のために手間がかかるという問題がある。また、ジョイント部材を使用する場合は、部品点数が増え、コストが嵩むという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、コストを抑えて容易にパイプを直線状に接続するために、パイプの端部を加工するパイプ加工装置、及び、該パイプ加工装置を使用したパイプ加工方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるパイプ加工装置は、
「円筒パイプの端部を相対的に圧入させる成形型を備えるパイプ加工装置であり、
前記成形型は、
内径が一定の単径筒部、及び、該単径筒部から内径が漸次拡大している案内部を有している、有底円筒形の型本体と、
該型本体の底部から開端側に、前記型本体と同一の軸方向に延びている円柱状部材と、を備え、
該円柱状部材は、
前記型本体の開端より外方に位置し、前記単径筒部の内径より小さい外径を有している大径部と、
該大径部より小さい外径を有し、前記型本体の底部に対して前記大径部を支持している小径軸部と、を備えている」ものである。
【0006】
本構成のパイプ加工装置は、円筒パイプの端部に縮径加工部を形成する装置である。本構成のパイプ加工装置を使用することにより、次のようなパイプ加工方法で円筒パイプの端部に縮径加工部を形成することができる。すなわち、
「外径が前記案内部の最小径より大きく最大径以下である円筒パイプの端部を、前記案内部に当接させた状態から前記成形型の内部に相対的に圧入することにより、前記円筒パイプの端部を外周面側から押圧した後、
前記円筒パイプの端部を、前記成形型から相対的に引き抜くことにより、前記円筒パイプの端部を内周面側から前記大径部によって押圧することにより、
前記円筒パイプの端部に、外径が前記単径筒部の内径と略等しく、内径が前記大径部の外径と略等しい縮径加工部を形成する」パイプ加工方法である。
【0007】
詳細は後述するように、円筒パイプの外径より小さな内径を有している成形型の内部に、円筒パイプの端部を相対的に圧入するだけでは、外径及び内径が均一な縮径加工部を形成することはできず、不均一な変形が生じてしまう。これに対し、本発明のパイプ加工装置の成形型は、有底円筒形の型本体の内部に、大径部を有する円柱状部材を備えている。成形型の内部に圧入された円筒パイプの端部が、成形体から相対的に引き抜かれる際に、大径部によってパイプ端部を内周面側から押圧することにより、パイプ端部の不均一な変形を修正し、外径及び内径が均一な縮径加工部を形成することができる。
【0008】
縮径加工部を端部に有する円筒パイプは、同一径の円筒パイプの非加工部に縮径加工部を差し込むだけで接続することができるため、接続の作業が容易である。また、接続のためのジョイント部材を必要としないため、コストを抑えることができる。
【0009】
本発明にかかるパイプ加工装置は、上記構成に加え、
「前記円柱状部材は、前記大径部とは反対側の端部に、前記単径筒部の内径と略等しい外径を有する基底部を有していると共に、前記型本体に対して着脱される」ものとすることができる。
【0010】
本構成では、円柱状部材が型本体に対して着脱式であるため、摩耗するなど損傷を受けた場合に、交換することができる。更に、本構成では円柱状部材が基底部を有している。成形型に円筒パイプの端部を圧入する際、成形型の内部における奥端面はパイプの先端で強く押圧されて損傷を受けやすい。これに対し、円柱状部材が単径筒部の内径と外径が略等しい基底部を有している本構成では、基底部の開端側の面が奥端面を構成することとなるため、円柱状部材を交換することにより、損傷を受けやすい奥端面を容易に交換することができる。
【0011】
加えて、基底部を備える円柱状部材が着脱式であることにより、基底部の高さ(軸方向の長さ)の異なる複数の円柱状部材を備えていれば、同一の型本体を使用しても、軸方向の長さの異なる縮径加工部を形成することができる利点がある。
【0012】
本発明にかかるパイプ加工装置は、上記構成に加え、
「前記案内部は、前記単径筒部との境界に円弧状のアール部を有している」ものとすることができる。
【0013】
本構成では、案内部が単径筒部との境界にアール部を備えているため、案内部の傾斜に沿って内方に曲がるように変形した円筒パイプの端部が、案内部を越えて、単径筒部の内周面と小径軸部の外周面との間の空間に進入しやすい。これにより、円筒パイプの端部を、成形型の内部空間の奥まで十分に圧入することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、コストを抑えて容易にパイプを直線状に接続するために、パイプの端部を加工するパイプ加工装置、及び、該パイプ加工装置を使用したパイプ加工方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態であるパイプ加工装置が備える成形型の構成を示す断面図である。
図2図2(a),図2(b-1),図2(c-1),及び図2(d)は、パイプ加工方法においてパイプを位置決めする工程の説明図であり、図2(b-2)はX-X線断面図であり、図2(c-2)はY-Y線断面図である。
図3図3(a)~図3(c)は、円筒パイプの端部を相対的に成形型に圧入する工程の説明図である。
図4図4(a)~図4(c)は、円筒パイプの端部を相対的に成形型から引き抜く工程の説明図である。
図5図5は、円筒パイプの端部の加工の説明図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、円筒パイプの縮径加工部と非加工部との接続の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態であるパイプ加工装置Ap、及び、このパイプ加工装置Apを使用したパイプ加工方法について、図面を用いて説明する。
【0017】
パイプ加工装置Apは、図5に示すように、外径が単一(一定)である非加工部90aのみからなる円筒パイプ90の端部に、外径が非加工部90aより小さい縮径加工部91bを形成することにより、縮径加工部91bを端部に有する円筒パイプ91とする加工装置である。
【0018】
図6(a)及び図6(b)に示すように、円筒パイプ91の縮径加工部91bを、円筒パイプ90または円筒パイプ91の非加工部90aの内部に挿入することにより、別個のジョイント部材を要することなく、極めて容易に、同一径の円筒パイプ同士を直線状に接続することができる。
【0019】
パイプ加工装置Apは、成形型1と、成形型1を支持する型支持体51と、加工対象の円筒パイプ90を保持させる保持装置60と、加工対象の円筒パイプ90の位置決めをする位置決め装置70と、型支持体51を保持装置60に対して相対的に離隔接近させる移動装置と、を備えている。
【0020】
成形型1は、図1に示すように、型本体10と、円柱状部材20と、型基部19と、を備えている。型本体10は、全体形状が有底円筒形であり、内径が単一(一定)の単径筒部11と、単径筒部11から有底円筒形の開端Eに向かって内径が漸次拡大している案内部12と、を有している。案内部12の径は、加工対象の円筒90のサイズによって設定される。すなわち、加工対象の円筒パイプ90の外径(非加工部90aの外径)が、案内部12の最小径より大きく、案内部12の最大径以下となるように、案内部12の径が設定される。
【0021】
更に、案内部12は、単径筒部11との境界に円弧状のアール部13を備えている。より具体的に、本実施形態ではアール部13を除く案内部12は、開端Eを延長した面に対して45度の角度をなしている。
【0022】
円柱状部材20は、型本体10の底部15から開端E側に、型本体10と同一の軸方向に延びており、外径の異なる三つの部分である基底部23、小径軸部21、及び、大径部22からなる。基底部23は外径が単径筒部11の内径と略等しく、型本体10の内部において型本体10の底部15に当接させた状態で固定されている。大径部22は外径が単径筒部11の内径より小さい。単径筒部11の内径と大径部22の外径との差は、円筒パイプ90の厚さの略二倍に設定されている。小径軸部21は外径が大径部22の外径より小さく、大径部22が開端Eより外方に位置するように、大径部22を基底部23に固定している。すなわち、小径軸部21は、基底部23を介して型本体10の底部15に対して大径部22を支持している。基底部23、小径軸部21、大径部22は何れも軸方向を同一とする円柱状であるが、小径軸部21は外径より軸方向の長さの方が大きな細長い円柱状であり、基底部23及び大径部22はそれぞれ、外径より軸方向の長さの方が小さな平たい円柱状である。
【0023】
本実施形態では、円柱状部材20は型本体10に対して着脱式である。
【0024】
型本体10の内周面と小径軸部21の外周面との間の空間は、円筒パイプの端部の加工に使用される空間であるが、そのうち、単径筒部11の内周面と小径軸部21の外周面との間の空間を、ここでは「筒部内空間S」と称する。基底部23の外径は単径筒部11の内径と略等しいため、基底部23の開端E側の面が、筒部内空間Sの奥端面25を構成している。
【0025】
型基部19は、型本体10の底部15から円柱状部材20とは反対側に突出している。成形型1は、この型基部19によって型支持体51に固定されている。型支持体51はブロック状であり、成形型1は、型本体10及び円柱状部材20の軸方向が水平方向となるように、型支持体51に支持されている。本実施形態では、型基部19を介して型本体10は型支持体51に対して着脱式である。
【0026】
保持装置60は、架台(図示を省略)に固定された下ホルダ61と、下ホルダ61と共に円筒パイプ90を保持させる上ホルダ62と、下ホルダ61に対して上ホルダ62を昇降させるホルダ昇降装置(図示を省略)を備えている。下ホルダ61は、断面における外形が半円弧である凹部61rを有するブロック状の部材であり、この半円弧の直径は円筒パイプ90の外径と略同一である。この下ホルダ61は、凹部61rの開口を上方に向けている。上ホルダ62は、下ホルダ61を上下反転させた形状であり、凹部61rと同一形状の凹部62rの開口を下方に向けている(図2(b-2)を参照)。このような下ホルダ61と上ホルダ62により、円筒パイプ90は軸方向を水平方向とした状態で保持される。
【0027】
ホルダ昇降装置としては、エアやオイルによってピストンロッドを進退させ、ピストンロッドの進退により上ホルダ62を昇降させるシリンダ装置を使用することができる。
【0028】
位置決め装置70は、鉛直な平面であるストッパ71と、ストッパ71を支持するストッパ支持体72と、ストッパ支持体72を昇降させるストッパ昇降装置(図示を省略)を備えている。ストッパ昇降装置としては、エアやオイルによってピストンロッドを進退させ、ピストンロッドの進退によりストッパ支持体72を昇降させるシリンダ装置を使用することができる。
【0029】
移動装置(図示を省略)は、円筒パイプを保持している保持装置に対して型支持体を離隔接近させる装置であっても、円筒パイプを保持している保持装置を型支持体に対して離隔接近させる装置であっても良いが、本実施形態では上記のように保持装置60の下ホルダ61を架台に固定する一方で、型支持体51を保持装置60に対して離隔接近させる。また、上記のように保持装置60は円筒パイプ90を軸方向が水平方向となるように保持するため、移動装置は型支持体51を水平方向に往復動させる。移動装置としては、エアやオイルによってピストンロッドを進退させ、ピストンロッドの進退により型支持体51を往復動させるシリンダ装置を使用することができる。以下では、成形型1の保持装置60に接近する方向への移動を「前進」と称し、離隔する方向への移動を「後退」と称することがある。
【0030】
次に、上記構成のパイプ加工装置Apを使用したパイプ加工方法について、説明する。まず、図2(a)に示すように、成形型1を保持装置60から離隔させ、且つ、円筒パイプ90を保持していない保持装置60において上ホルダ62を上昇させた状態とする。成形型1と下ホルダ61は、成形型1における有底円筒形の型本体10及び円柱状部材20それぞれの軸方向と、下ホルダ61の断面半円弧の凹部61rの上端(凹部61rに載置された状態の円筒パイプ90の中心軸)とが、同一線上(図示、仮想の線L上)となるように配置される。また、位置決め装置70は、保持装置60から離隔している成形型1と保持装置60との間で、ストッパ支持体72を介してストッパ71を昇降させる位置に配置される。位置決め装置70のストッパ昇降装置の駆動により、ストッパ71が上記の線L上に位置するように、ストッパ支持体72を下降させる。
【0031】
この状態で、図2(b-1)及び図2(b-2)に示すように、保持装置60に対してストッパ71が位置している側とは反対側から、円筒パイプ90を水平方向に進入させ、その先端をストッパ71に当接させた状態で、円筒パイプ90を下ホルダ61の凹部61rに載置する。
【0032】
次に、図2(c-1)及び図2(c-2)に示すように、上ホルダ62を下降させ、下ホルダ61の凹部61rの開口縁と上ホルダ62の凹部62rの開口縁とを突き合わせる。これにより、円筒パイプが上下から挟持され、しっかりと保持される。
【0033】
その後、図2(d)に示すように、位置決め装置70のストッパ昇降装置の駆動により、ストッパ支持体72を介してストッパ71を上昇させる。これにより、保持装置60に保持された円筒パイプ90の先端側が、成形型1に向かって所定の長さ分だけ露出している状態となる。このように保持装置60から成形型1に向かって円筒パイプが露出している部分の長さは、形成しようとしている縮径加工部91bの軸方向の長さより若干長くなるように(例えば、縮径加工部91bの軸方向の長さの1.2倍~1.6倍となるように)、保持装置60に対するストッパ71の位置を設定する。
【0034】
次に、移動装置の駆動により、型支持体51を介して成形型1を前進させ、円筒パイプ90の端部を相対的に成形型1に圧入させる。この動作は一気に行われるが、ここでは、その過程を図3(a)~図3(c)を用いて順に説明する。以下では、円筒パイプ90の端部を、単に「パイプ端部」と称することがある。
【0035】
成形型1の前進に伴い円筒パイプ90の先端が成形型1に当接したとき、図3(a)に示すように、その当接位置は案内部12の表面上である。上述したように、円筒パイプ90の非加工部90aの外径は、案内部12の最小径より大きく、案内部12の最大径以下であるからである。
【0036】
この状態から更に成形型1が前進すると、図3(b)に示すように、パイプ端部は案内部12の傾斜に案内されて内方に向かって曲がりつつ、成形型1の内部に圧入される。案内部12において単径筒部11との境界には、円弧状のアール部13が形成されているため、パイプ端部はアール部13を越えて、単径筒部11の内周面と小径軸部21の外周面との間の空間である筒部内空間Sに進入しやすい。このようにしてパイプ端部が成形型1の内部に圧入される際、パイプ端部は外周面側から押圧されて、変形する。
【0037】
このような圧入に伴うパイプ端部の変形は、案内部12ではその傾斜に沿った変形であるが、筒部内空間Sでは、必ずしも単径筒部11の内周面にぴったりと沿うような変形ではない。パイプ端部が案内部12を通過した直後は、案内部12の傾斜の方向に慣性力が作用することにより単径筒部11の内周面から離れやすく、そのまま進行すれば小径軸部21の外周面に接触して押し戻されるような力が作用するためである。そのため、筒部内空間Sにおいては、パイプ端部はややうねるように不均一に変形する。なお、図面では筒部内空間Sにおける不均一な変形を、模式的に誇張して示している。
【0038】
移動装置の駆動により成形型1が移動する距離は、成形型1が最も保持装置60に接近したときに、図3(c)に示すように、パイプ端部が筒部内空間Sの奥端面25まで達する距離に設定されている。具体的には、円筒パイプ90の先端が成形型1に当接する位置から更に成形型1が前進する距離は、成形型1における開端Eの延長面と奥端面25との間の距離より、少し短く設定されている。
【0039】
図3(c)に示すように、成形型1の内部へのパイプ端部の圧入が終了した時点では、上述した理由により、変形したパイプ端部は案内部12の傾斜には沿っているが、それより先端側では必ずしも単径筒部11の内周面に沿ってはおらず、不均一に変形した部分を有している。
【0040】
本実施形態のパイプ加工装置Apでは、成形型1が後退する際、すなわち、保持装置60から離隔するように移動する際に、上記の不均一な変形が修正される。移動装置の駆動により、型支持体51を介して成形型1を後退させると、パイプ端部は成形型1から相対的に引き抜かれる。この動作は一気に行われるが、ここでは、その過程を図4(a)~図4(c)を用いて順に説明する。
【0041】
図4(a)に示すように、パイプ端部が成形型1から少し引き抜かれると、それまでは非加工部90aの内部に位置して、どこにも接触していなかった大径部22が、不均一に変形したパイプ端部の内周面に接触する。
【0042】
成形型1の後退に伴い、大径部22は不均一に変形したパイプ端部を内周面側から押圧しながらパイプの先端に向かって移動する。パイプ端部において大径部22によって押圧されている部分の近傍の部分にも、引き摺られるように押圧力が作用するが、その部分の外側には単径筒部11が存在するため、大径部22の外周面と単径筒部11の内周面との間に挟まれた状態で押圧される。これにより、図4(b)に示すように、成形型1の後退に伴って大径部22が通過した後には、外径が単径筒部11の内径と略等しく、内径が大径部22の外径と略等しい縮径加工部91bが形成される。
【0043】
図4(c)に示すように、パイプ端部が完全に成形型1から引き抜かれた時点では、パイプ端部の不均一な変形は修正され、端部に均一な縮径加工部91bを有する円筒パイプ91が得られる。
【0044】
なお、縮径加工部91bの外径が非加工部90aの内径以下であれば両者の接続は可能であるが、縮径加工部91bの外径を非加工部90aの内径と略等しくすれば、両者をガタツキなく接続することができ、また、外部から接続部分にゴミや水が入りにくいため、望ましい。
【0045】
以上のように、本実施形態のパイプ加工装置Apによれば、円筒パイプ90の端部に外径が小さい縮径加工部91bを形成することができる。縮径加工部91bを有する円筒パイプ91は、同一径の円筒パイプ90,91の非加工部90aに縮径加工部91bを差し込むだけで接続することができるため、接続の作業が容易である。また、接続のためのジョイント部材を必要としないため、コストを抑えることができる。
【0046】
また、円柱状部材20は型本体10に対して着脱式であるため、摩耗するなど損傷を受けた場合に、交換することができる。更に、本実施形態では円柱状部材20が基底部23を有している。成形型1にパイプ端部を圧入する際、筒部内空間Sの奥端面25は円筒パイプ90の先端で強く押圧されて損傷を受けやすいところ、本実施形態では基底部23の開端E側の面が奥端面25を構成している。従って、円柱状部材20を交換することにより、損傷を受けやすい奥端面25を容易に交換することができる。
【0047】
加えて、基底部23の高さ(軸方向の長さ)の異なる複数の円柱状部材20を備えていれば、同一の型本体10を使用しても、軸方向の長さの異なる縮径加工部91bを形成することができる。なお、円柱状部材20を型本体10に対して着脱式とすると共に、基底部23を小径軸部21に対して着脱式とすれば、高さの異なる基底部23を備えていることにより、上記と同様に、同一の型本体10を使用して軸方向の長さの異なる縮径加工部91bを形成することができる。
【0048】
また、本実施形態では、型基部19を介して型本体10も型支持体51に対して着脱式であるため、摩耗するなど損傷を受けた場合に、容易に型本体10を交換することができる。
【0049】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記では、成形型1を支持している型支持体51が保持装置60に対して離隔接近する場合を例示したが、型支持体51を不動の構成とし、円筒パイプ90を保持した保持装置60を成形型1に対して離隔接近させてもよい。
【0051】
また、上記では、加工対象の円筒パイプ90の軸方向を水平方向として端部を加工する場合を例示したが、円筒パイプ90の軸方向を鉛直方向としても同様の加工は可能である。この場合、保持装置60に保持された円筒パイプ90に対して相対的に成形型1を離隔接近させる移動の方向も、鉛直方向となる。
【0052】
更に、上記では、円柱状部材20が基底部23を備える場合を例示したが、基底部23を備えることなく、小径軸部21と大径部22のみからなる円柱状部材であってもよい。この場合、型本体10の底部15の開端E側の面が、筒部内空間Sの奥端面を構成する。
【符号の説明】
【0053】
1 成形型
10 型本体
11 単径筒部
12 案内部
13 アール部
15 底部
20 円柱状部材
21 小径軸部
22 大径部
23 基底部
Ap パイプ加工装置
E 開端
S 筒部内空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6