(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176206
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】高出力レーザ用反射ミラー
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20241212BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241212BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B5/00 B
G02B7/182
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094579
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翼
(72)【発明者】
【氏名】秋野 陽介
【テーマコード(参考)】
2H042
2H043
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA09
2H042DA01
2H042DA08
2H042DA09
2H043CB01
2H043CB03
(57)【要約】
【課題】ミラーに接する保持機構での熱吸収を軽減することができる高出力レーザ用反射ミラーを得ること。
【解決手段】高出力レーザ用反射ミラー10は、ウェッジ基板1と、ウェッジ基板1の光が入射する側の面に形成されていて任意の波長のレーザ光を反射し特定の反射率入射角特性を持つ第1のコーティング膜2と、ウェッジ基板1の光が入射する側の面と反対側の面に形成されていて任意の波長のレーザ光を反射する第2のコーティング膜3とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェッジ基板と、
前記ウェッジ基板の光が入射する側の面に形成されていて任意の波長のレーザ光を反射し特定の反射率入射角特性を持つ第1のコーティング膜と、
前記ウェッジ基板の前記光が入射する側の面と反対側の面に形成されていて任意の波長のレーザ光を反射する第2のコーティング膜と
を備えることを特徴とする高出力レーザ用反射ミラー。
【請求項2】
前記ウェッジ基板は、不要光を任意の方向へ反射する
ことを特徴とする請求項1に記載の高出力レーザ用反射ミラー。
【請求項3】
チップチルトミラーマウントと、
不要な反射光を吸収するビームダンパと
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の高出力レーザ用反射ミラー。
【請求項4】
前記ビームダンパは、前記第1のコーティング膜の前面に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の高出力レーザ用反射ミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高出力レーザ用反射ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップチルトミラーは、一般的に、ミラーとチップチルトマウントとで構成される。ミラーの入射面には、全反射膜が施されている。通常、ミラーの裏面は、粗し面又は研磨面となっており、この裏面とチップチルトマウントとは接着されている。このため、裏面からの透過光は裏面とチップチルトマウントとの接着面に入射し、殆どの光は熱に変換される。特許文献1は、誘電多層膜構造を有する赤外遮蔽フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のチップチルトミラーの全反射膜の透過量は約1000ppmであって、全反射膜の吸収量は10ppm以下であるので、全反射膜の透過量は全反射膜の吸収量に対して約2桁大きい。そのため、全反射膜を透過した全ての光が接着面で吸収されると、反射面に大きな熱歪みが発生し、レーザ光のビーム品質が劣化することが懸念される。また、チップチルトマウントの中心部を空洞化することは難しく、ミラーに入射した光を裏面側から抜き出す従来の熱歪み軽減方法を使用することは困難である。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ミラーに接する保持機構での熱吸収を軽減することができる高出力レーザ用反射ミラーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る高出力レーザ用反射ミラーは、ウェッジ基板と、ウェッジ基板の光が入射する側の面に形成されていて任意の波長のレーザ光を反射し特定の反射率入射角特性を持つ第1のコーティング膜と、ウェッジ基板の光が入射する側の面と反対側の面に形成されていて任意の波長のレーザ光を反射する第2のコーティング膜とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る高出力レーザ用反射ミラーは、ミラーに接する保持機構での熱吸収を軽減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラーの外観を模式的に示す図
【
図2】実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラーが有する第1のコーティング膜の反射率入射角特性の例を示す図
【
図3】実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラーのウェッジ角度と光線の進行角度とを説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラーを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラー10の外観を模式的に示す図である。高出力レーザ用反射ミラー10は、ウェッジミラーである。高出力レーザ用反射ミラー10は、ウェッジ基板1と、ウェッジ基板1の光が入射する側の面に形成されている第1のコーティング膜2とを有する。第1のコーティング膜2は、任意の波長のレーザ光を反射し特定の反射率入射角特性を持つ。高出力レーザ用反射ミラー10は、ウェッジ基板1の光が入射する側の面と反対側の面に形成されている第2のコーティング膜3を更に有する。第2のコーティング膜3は、任意の波長のレーザ光を反射する。ウェッジ基板1は、不要光を任意の方向へ反射する。
【0011】
第2のコーティング膜3は、高い反射率を持ち、入射光を全反射する。第1のコーティング膜2は、レーザ光の主要な入射角において相対的に高い反射率を持つが、第1のコーティング膜2を透過して第2のコーティング膜3で反射されたレーザ光の入射角において相対的に低い反射率を持つ。第1のコーティング膜2は、前者の入射角において100%に近い透過率を持ち、後者の入射角において0%に近い透過率を持つ。
【0012】
図2は、実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラー10が有する第1のコーティング膜2の反射率入射角特性の例を示す図である。
図2は、前者の入射角を45°とし、後者の入射角を0°とした場合の第1のコーティング膜2の反射率入射角特性の例を示している。
図2の例では、第1のコーティング膜2の反射率入射角特性は、20°から30°までの範囲において変化点を持つ。
【0013】
ウェッジミラーである高出力レーザ用反射ミラー10のウェッジ角度θ
wと光線の進行角度とについて
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る高出力レーザ用反射ミラー10のウェッジ角度θ
wと光線の進行角度とを説明するための図である。説明の便宜上、
図3には第1のコーティング膜2及び第2のコーティング膜3は示されていない。θ
inは第1のコーティング膜2に対する入射レーザ光の入射角を示している。θ’
inは第1のコーティング膜2に対する入射レーザ光の屈折角を示している。θ’
outは第1のコーティング膜2に対する第2のコーティング膜3で反射されたレーザ光の入射角を示している。θ
outは第1のコーティング膜2に対する第2のコーティング膜3で反射されたレーザ光の屈折角を示している。
【0014】
ウェッジ基板1の屈折率がnである場合、スネルの法則より、θinとθ’inとの関係は下記の式(1)で表され、θoutとθ’outとの関係は下記の式(2)で表される。
【0015】
【0016】
【0017】
幾何計算から、ウェッジ角度θwは下記の式(3)で表される。
【0018】
【0019】
上記の例の場合、θin=45°、θout=0°となり、n=1.2のとき、θw=18.052°であれば良いことがわかる。
【0020】
なお、n≒1のとき、式(3)は近似的に下記の式(4)と表すことができ、式(4)を変形することにより、θin、θout及びθwの関係は下記の式(5)で表すことができる。
【0021】
【0022】
【0023】
第1のコーティング膜2については、誘電体多層膜のHR(High Reflective)コーティングなどを用いることで、反射率が高められ、特定の反射率入射角特性が実現される。第2のコーティング膜3については、誘電体多層膜のHRコーティング又は金属膜ミラーコーティングなどを用いることで全反射面が実現される。
【実施例0024】
実施例について
図4を用いて説明する。
図4は、実施例を説明するための図である。ウェッジミラーである高出力レーザ用反射ミラー10では、レーザ光に対するウェッジ基板1の入射面に第1のコーティング膜2が形成されており、反対側の面に第2のコーティング膜3が形成されている。第2のコーティング膜3はくさび型機構部品4によってチップチルトミラーマウント5と接続され、第1のコーティング膜2の前面には不要な反射光を吸収するビームダンパ6が配置される。
【0025】
入射レーザ光7の大部分は、第1のコーティング膜2で全反射される。第1のコーティング膜2を透過したレーザ光8は、第2のコーティング膜3で全反射され、第1のコーティング膜2を透過し、ビームダンパ6で熱に変換される。通常、チップチルトミラーマウント5の可動角は数度程度であり、ビームダンパ6のサイズを大きくすることでチップチルトミラーマウント5を傾けた場合でも、不要な入射光をビームダンパ6で吸収することが可能である。
【0026】
このように、ウェッジミラーでは、入射レーザ光7のうちの第1のコーティング膜2を透過した光は、第2のコーティング膜3で反射され、第1のコーティング膜2を再度透過してウェッジミラーの外部へ放出される。そのため、実施例のウェッジミラーは、ウェッジミラーに接する保持機構での熱吸収を軽減することができる。
【0027】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
1 ウェッジ基板、2 第1のコーティング膜、3 第2のコーティング膜、4 くさび型機構部品、5 チップチルトミラーマウント、6 ビームダンパ、7 入射レーザ光、8 レーザ光、10 高出力レーザ用反射ミラー。