(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176208
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
F25B 5/02 20060101AFI20241212BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F25B5/02 B
F25B1/00 399Y
F25B5/02 530Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094583
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 優
(57)【要約】
【課題】エアコン冷媒流路がエバポレータに向かう第1流路とチラーに向かう第2流路を有する場合であっても、コンデンサの放熱量を低減するためにエバポレータの温度が上げられる際にコンデンサ放熱量の上昇を抑制できる、冷却システムの提供。
【解決手段】第1流路30にエアコン冷媒が流れる冷房運転モードで、かつ、第2流路40にもエアコン冷媒が流れる冷房電池モードである場合に、エバポレータ32の温度を上げ、第2膨張弁41の開度の上限を固定する。エバポレータ32の温度を上げるため、エアコン負荷を低減させることができ、コンデンサ22の放熱量を低減させることができる。第2膨張弁41の開度の上限を固定するため、第2膨張弁41を流れるエアコン冷媒の流量の上限を固定することができ、それによって、エアコン冷媒がチラー42へ流れる量を抑えてチラー42での熱交換率を抑えることができ、コンデンサ22の放熱量の上昇を抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン冷媒が流れる冷媒流路が、第1膨張弁およびエバポレータに向かう第1流路と、前記第1流路と並列に配置されており第2膨張弁およびチラーに向かう第2流路と、を有しており、前記エアコン冷媒を用いて電池冷却水を前記チラーで冷却することで電池冷却を実施可能な冷却システムであって、
前記第1流路に前記エアコン冷媒が流れる冷房運転モードであり、かつ、前記第2流路にも前記エアコン冷媒が流れる冷房電池モードである場合に、前記エバポレータの温度を上げるとともに、前記第2膨張弁の開度の上限を固定することを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の冷房と電池冷却水の冷却をエアコン冷媒を用いて行う、車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン冷却水の水温(以下、エンジン水温ともいう)や、モータやPCU(Power Control Unit)などの冷却水の水温(以下、HV水温ともいう)が高い場合に、エアコン冷媒が流れる流路に設けられるエバポレータの温度を上げてエアコン負荷を下げ、エアコン冷媒流路に設けられるコンデンサの放熱量を低減させる技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、二次電池を有するPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)やBEV(Battery Electric Vehicle)では、エアコン冷媒流路が、エバポレータに向かう第1流路と、第1流路と並列に配置されており電池冷却水を冷却するチラーに向かう第2流路と、を有するものがある。これに上記従来技術を適用させて、エンジン水温やHV水温が高い場合にエバポレータの温度を上げても、第2流路にエアコン冷媒を流す冷房電池モードでは、エバポレータの温度を上げた分相対的にチラーの方で熱交換能力が上がってしまい、結局コンデンサの放熱量がさほど変わらないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、エアコン冷媒流路がエバポレータに向かう第1流路とチラーに向かう第2流路を有する場合であっても、コンデンサの放熱量を低減するためにエバポレータの温度が上げられる際にコンデンサ放熱量の上昇を抑制できる、冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) エアコン冷媒が流れる冷媒流路が、第1膨張弁およびエバポレータに向かう第1流路と、前記第1流路と並列に配置されており第2膨張弁およびチラーに向かう第2流路と、を有しており、前記エアコン冷媒を用いて電池冷却水を前記チラーで冷却することで電池冷却を実施可能な冷却システムであって、
前記第1流路に前記エアコン冷媒が流れる冷房運転モードであり、かつ、前記第2流路にも前記エアコン冷媒が流れる冷房電池モードである場合に、前記エバポレータの温度を上げるとともに、前記第2膨張弁の開度の上限を固定することを特徴とする冷却システム。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の冷却システムでは、第1流路にエアコン冷媒が流れる冷房運転モードであり、かつ、第2流路にもエアコン冷媒が流れる冷房電池モードである場合に、エバポレータの温度を上げるとともに、第2膨張弁の開度の上限を固定するため、つぎの効果を得ることができる。
エバポレータの温度を上げるため、エアコン負荷(冷房負荷)を低減させることができ、コンデンサの放熱量を低減させることができる。また、第2膨張弁の開度の上限を固定するため、第2膨張弁を流れるエアコン冷媒の流量の上限を固定することができ、それによって、エアコン冷媒がチラーへ流れる量を抑えコンデンサの放熱量が上昇することを抑制できる。よって、エアコン冷媒の流路が、エバポレータに向かう第1流路と、第1流路と並列に配置されておりチラーに向かう第2流路と、を有する場合であっても、コンデンサの放熱量を低減するためにエバポレータの温度が上げられる際に、コンデンサ放熱量の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明実施例の冷却システムの構成図である。
【
図2】本発明実施例の冷却システムの制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の冷却システム10を説明する。
【0010】
冷却システム10が搭載される車両は、PHEVである。ただし、BEVであってもよい。
【0011】
冷却システム10は、
図1に示すように、エアコン冷媒が流れる冷媒流路P1が、第1膨張弁31およびエバポレータ32に向かう第1流路30と、第1流路30と並列に配置されており第2膨張弁41およびチラー42に向かう第2流路40と、を有しており、エアコン冷媒を用いて電池冷却水をチラー42で冷却することで電池(バッテリ)Vの冷却を実施可能な冷却システムである。
【0012】
エアコン冷媒は、冷凍サイクル50によって冷媒流路P1を循環可能となっている。冷凍サイクル50は、エアコン冷媒が流れる冷媒流路P1として、共通流路20と、第1流路30と、第2流路40と、を有する。
【0013】
共通流路20には、コンプレッサ21とコンデンサ22が配置されている。コンプレッサ21は、冷凍サイクル50を循環するエアコン冷媒を圧縮して吐出する。この吐出圧はコンプレッサ21の下流側でコンデンサ22の上流側に配置される圧力センサ23で検知可能となっている。コンデンサ22は、コンプレッサ21から吐出されるエアコン冷媒と車室外空気との間で熱交換してエアコン冷媒を冷却する。コンプレッサ21とコンデンサ22は、冷凍サイクル50にそれぞれ1つのみ設けられている。
【0014】
第1流路30は、コンデンサ22の下流側にある分岐部24より下流側で、コンプレッサ21の上流側にある合流部25より上流側にあり、第1膨張弁31およびエバポレータ32が配置されている流路である。第1膨張弁31は、電気式の膨張弁である。なお、図中の符号33は、エバポレータ32の下流側のエアコン冷媒温度を検知するための温度センサであり、符号34は、エバポレータ32の下流側でコンプレッサ21の上流側に配置されてコンプレッサ21の吸込み圧力が一定値以下になるように調節する蒸発圧力調整弁(EPR)である。
【0015】
冷房運転モードにあるときには、共通流路20を流れてきたエアコン冷媒が第1流路30に流れる。そして、第1流路30に流れるエアコン冷媒は、第1膨張弁31によって減圧されるとともに流量調整された後、エバポレータ32に流れる。エバポレータ32では、エアコン冷媒が周囲の空気から熱を奪い、エバポレータ32の周囲の空気が冷やされる。この空気を車室内に流出させることにより、車室内冷房が実施される。
【0016】
第2流路40は、第1流路30と並列に配置される流路であり、分岐部24より下流側で合流部25より上流側にあり、第2膨張弁41およびチラー42が配置されている流路である。第2膨張弁41は、電気式の膨張弁である。なお、図中の符号43は、チラー42の下流側のエアコン冷媒温度を検知するための温度センサである。
【0017】
第2流路40は、電池Vの温度が上昇した際に、エアコン冷媒を用いて電池冷却水を冷却させることで電池Vを冷却するための流路である。電池冷却水が循環する冷却水回路P2には、電池Vとチラー42に加えて、電池冷却水を圧縮して吐出するウォータポンプ60が配置されており、このウォータポンプ60の作用により電池冷却水が冷却水回路P2を循環可能となっている。なお、電池Vの温度は、電池Vに取付けられる図示略の温度センサで検知可能とされている。ただし、電池Vの温度は、冷却水回路P2に電池Vの下流側でウォータポンプ60の上流側に配置される水温センサ61を用いて検知可能とされていてもよい。
【0018】
電池冷却水を冷却させて電池Vを冷却させる冷房電池モードにあるときには、共通流路20を流れてきたエアコン冷媒が第2流路40に流れる。そして、第2流路40に流れるエアコン冷媒は、第2膨張弁41によって減圧されるとともに流量調整された後、チラー42に流れる。チラー42では、エアコン冷媒と電池冷却水との間で熱交換が行われ、電池冷却水が冷やされる。この冷やされた電池冷却水を電池Vに流すことで電池Vの冷却が実施される。なお、冷却水回路P2には、チラー42の下流側で電池Vの上流側に水温センサ62が配置されており、この水温センサ62を用いてチラー42の下流側の電池冷却水温を検知可能とされている。
【0019】
本発明では、従来と同様に、冷房運転モードにあるときであって図示略のエンジン水温もしくは図示略のHV水温が高い場合に、第1流路30にあるエバポレータ32の目標温度を上げてエアコン負荷を下げ、コンデンサ22の放熱量を低減させるようになっている。
しかし、電池Vの温度が高く第2流路40にもエアコン冷媒が流れる冷房電池モードにあるときには、エバポレータ32の温度を上げた分相対的にチラー42の方で熱交換能力が上がってしまい、結局コンデンサ22の放熱量がさほど変わらないシーンが発生するおそれがある。
そこで、本発明では、第1流路30にエアコン冷媒が流れる冷房運転モードであり、かつ、第2流路40にもエアコン冷媒が流れる冷房電池モードである場合に、エバポレータ32の温度を上げるとともに、第2膨張弁41の開度の上限を固定するようになっている。
この制御は、冷却システム10の構成要素である制御装置70にて実行可能となっている。制御装置70には、出力側に、エバポレータ32と第2膨張弁41が接続されている。
【0020】
なお、第2膨張弁41の開度の上限を固定するのは、第2膨張弁41を流れるエアコン冷媒の流量の上限を固定することができ、それによって、エアコン冷媒がチラー42へ流れる量を抑えコンデンサ22の放熱量が上昇することを抑制できるからである。
【0021】
図2は、本発明の冷却システム10における制御装置70の制御フローチャートである。
図2に示す制御は、第1流路30にエアコン冷媒が流れる冷房運転モードにあるときに、所定時間間隔で実行される。
【0022】
まず、ステップS1で、制御装置70で、エンジン水温もしくはHV水温が所定値より高いか否かを判定する。そして、ステップS1で所定値以下であると判定した場合には、ステップS5に進み、何もせずそのままエンドステップに進む。一方、ステップS1で所定値より高いと判定した場合には、ステップS2に進む。
【0023】
ステップS2では、第2流路40にエアコン冷媒が流れる冷房電池モードにあるか否かを判定する。そして、ステップS2で冷房電池モードには無いと判定した場合には、ステップS4に進み、エバポレータ32の目標温度を所定量上げる信号をエバポレータ32に出力し、エンドステップに進む。一方、ステップS2で冷房電池モードにあると判定した場合には、ステップS3に進み、エバポレータ32の目標温度を所定量上げる信号をエバポレータ32に出力するとともに、第2膨張弁41の開度の上限を所定値(%)に固定する信号を第2膨張弁41に出力し、エンドステップに進む。
【0024】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
本発明実施例では、第1流路30にエアコン冷媒が流れる冷房運転モードであり、かつ、第2流路40にもエアコン冷媒が流れる冷房電池モードである場合に、エバポレータ32の温度を上げるとともに、第2膨張弁41の開度の上限を固定するため、つぎの効果を得ることができる。
エバポレータ32の温度を上げるため、エアコン負荷(冷房負荷)を低減させることができ、コンデンサ22の放熱量を低減させることができる。また、第2膨張弁41の開度の上限を固定するため、第2膨張弁41を流れるエアコン冷媒の流量の上限を固定することができ、それによって、エアコン冷媒がチラー42へ流れる量を抑えてチラー42での熱交換率を抑えることができ、コンデンサ22の放熱量が上昇することを抑制できる。よって、エアコン冷媒の流路が、エバポレータ32に向かう第1流路30と、第1流路30と並列に配置されておりチラー42に向かう第2流路40と、を有する場合であっても、コンデンサ22の放熱量を低減するためにエバポレータ32の温度が上げられる際に、コンデンサ22の放熱量の上昇を抑制できる。
【符号の説明】
【0025】
10 冷却システム
20 共通流路
21 コンプレッサ
22 コンデンサ
24 分岐部
25 合流部
30 第1流路
31 第1膨張弁
32 エバポレータ
40 第2流路
41 第2膨張弁
42 チラー
50 冷凍サイクル
60 ウォータポンプ
70 制御装置
P1 冷媒流路
P2 冷却水回路
V 電池