(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017621
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/135 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61B17/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120379
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河本 有真
(72)【発明者】
【氏名】前田 遼介
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD33
4C160DD35
(57)【要約】
【課題】医療器具(例えばシースイントロデューサー)の位置ずれを抑制しつつ、医療器具を抜去した後に、迅速かつ好適に穿刺部位を止血することのできる止血器具を提供する。
【解決手段】止血器具1は、肢体に形成された穿刺部位を止血するための止血部材10と、肢体に巻き付けることが可能な帯体20と、帯体に接続されるとともに、止血部材が配置され、帯体が肢体に巻き付けられた状態で、穿刺部位に対する止血部材の位置合わせを可能にする止血帯体30と、帯体に配置され、穿刺部位に挿入される医療器具を帯体に対して着脱可能に固定する固定部40と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢体に形成された穿刺部位を止血するための止血部材と、
前記肢体に巻き付けることが可能な帯体と、
前記帯体に接続されるとともに、前記止血部材が配置され、前記帯体が前記肢体に巻き付けられた状態で、前記穿刺部位に対する前記止血部材の位置合わせを可能にする止血帯体と、
前記帯体に配置され、前記穿刺部位に挿入される医療器具を前記帯体に対して着脱可能に固定する固定部と、を有する止血器具。
【請求項2】
前記帯体は、前記肢体に巻き付けられた状態で前記穿刺部位を露出する露出部を有し、
前記止血帯体は、前記止血部材を前記露出部に位置合わせ可能となるように構成される、請求項1に記載の止血器具。
【請求項3】
前記露出部は、貫通孔または切り欠きである、請求項2に記載の止血器具。
【請求項4】
前記帯体は、前記穿刺部位に対して近位側または遠位側となるように、前記肢体に巻き付けられ、
前記止血帯体は、前記止血部材を前記穿刺部位に位置合わせ可能となるように構成される、請求項1に記載の止血器具。
【請求項5】
前記止血帯体は、当該止血帯体の長軸方向が前記帯体の長軸方向に対して傾斜する方向に沿うように、固定的にまたは伸縮自在に構成されている、請求項1に記載の止血器具。
【請求項6】
前記固定部は帯状である、請求項1に記載の止血器具。
【請求項7】
前記固定部は帯状であり、前記医療器具を前記帯体に対して固定する際に前記露出部と前記固定部が重ならないように配置されている、請求項2に記載の止血器具。
【請求項8】
前記固定部は、前記帯体と着脱可能である、請求項6または7に記載の止血器具。
【請求項9】
前記固定部は、
帯状に構成される本体部と、
前記本体部に設けられ、前記医療器具に設けられた第1連結部に連結可能な第2連結部と、を有する、請求項1に記載の止血器具。
【請求項10】
前記固定部は、前記帯体に設けられるとともに前記医療器具に嵌合可能な嵌合部材である、請求項1に記載の止血器具。
【請求項11】
前記固定部は、前記医療器具に設けられた第3連結部に連結可能であって前記帯体に設けられる第4連結部である、請求項1に記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル手技の1つとして、医療用長尺体に相当するシースイントロデューサーを、手首の動脈(橈骨動脈)から導入するTRI(Trans Radial intervention)がある。
【0003】
TRIの治療において、シースイントロデューサーの穿刺部位の位置ずれが生じることによって、手技遅延・中断が生じる可能性がある。また、TRIの治療終了後に、止血器具を準備して、開封して、肢体に装着するのに時間を要する場合がある。このため、シースイントロデューサーの穿刺部位の位置ずれの抑制や、止血器具の迅速な装着が求められる。
【0004】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、シースイントロデューサーを着脱自在に取り付けて保持する保持部を備えるとともに、肢体に巻き付けることで穿刺部位を圧迫して止血する止血バンドを有するシースイントロデューサー組立体が開示されている。この構成によれば、シースイントロデューサーの穿刺部位の位置ずれを抑制するとともに、止血器具を肢体に装着するまでに要する時間を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したシースイントロデューサー組立体では、シースイントロデューサーを着脱自在に取り付けて保持する保持部が止血バンドに設けられている。すなわち、上述したシースイントロデューサー組立体では、止血バンドを肢体に巻回した状態で、シースイントロデューサーを保持している。このため、シースイントロデューサーを抜去した後に、止血バンドおよび穿刺部位の間に、シースイントロデューサーに起因する隙間が発生するため、止血バンドの巻き直しや圧迫不足などの不具合を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、医療器具(例えばシースイントロデューサー)の位置ずれを抑制しつつ、医療器具を抜去した後に、迅速かつ好適に穿刺部位を止血することのできる止血器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る止血器具は、肢体に形成された穿刺部位を止血するための止血部材と、前記肢体に巻き付けることが可能な帯体と、前記帯体に接続されるとともに、前記止血部材が配置され、前記帯体が前記肢体に巻き付けられた状態で、前記穿刺部位に対する前記止血部材の位置合わせを可能にする止血帯体と、前記帯体に配置され、前記穿刺部位に挿入される医療器具を前記帯体に対して着脱可能に固定する固定部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した止血器具によれば、固定部によって医療器具を帯体に対して固定するため、医療器具の位置ずれを抑制できる。また、穿刺部位に対する止血部材の位置合わせが可能な止血帯体、および医療器具を帯体に対して着脱可能に固定する固定部がそれぞれ別個に設けられているため、固定部による固定を解除して医療器具を抜去した後に止血帯体を肢体に巻き付けることから、圧迫不足が生じることなく、好適に穿刺部位を止血できる。さらに、止血帯体が帯体に接続されているため、医療器具を抜去した後に、迅速に穿刺部位を止血できる。以上から、医療器具の位置ずれを抑制しつつ、医療器具を抜去した後に、迅速かつ好適に穿刺部位を止血することのできる止血器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る止血器具を示す概略図である。
【
図2】シースイントロデューサーを示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図3に続く図である。
【
図5】本実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図4に続く図である。
【
図6】本実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図5に続く図である。
【
図7】本実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図6に続く図である。
【
図8】本実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図7に続く図である。
【
図9】変形例1に係る固定部の
図6に対応する図である。
【
図10】変形例2に係る固定部の
図6に対応する図である。
【
図11】変形例に係る露出部の
図1に対応する図である。
【
図12】第2実施形態に係る止血器具を示す概略図である。
【
図13】第2実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図である。
【
図14】第2実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図13に続く図である。
【
図15】第2実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図14に続く図である。
【
図16】第2実施形態に係る止血器具の使用方法を説明するための図であって、
図15に続く図である。
【
図17】変形例に係る止血器具を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
また、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、体腔内へ挿通される側を「先端側」と称する。
【0013】
以下、
図1、
図2を参照して、本実施形態に係る止血器具1を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る止血器具1を示す概略図である。
図2は、シースイントロデューサー90を示す概略図である。以下、シースイントロデューサー90の穿刺部位として手首の動脈を例に挙げて説明する。
【0014】
本実施形態に係る止血器具1は、
図1に示すように、手首に形成された穿刺部位を止血するための止血部材10と、手首に巻き付けることが可能な帯体20と、帯体20に接続されるとともに止血部材10が配置される止血帯体30と、シースイントロデューサー(医療器具に相当)90を帯体20に対して着脱可能に固定する固定部40と、を有する。
【0015】
止血部材10は、例えば流体を注入することによって拡張するバルーンである。バルーンは、可撓性を有する材料から形成され、流体(空気等の気体または液体)を注入することによって拡張する。
【0016】
止血部材10は、止血の状況を判別でき、止血部材10の位置合わせを好適に行う観点から、透明であることが好ましい。バルーンを構成する材料としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0017】
なお、止血部材は、バルーンに加えて補助バルーンをさらに有する構成であってもよい。また、止血部材はバルーンに代えて、発泡材や、シリコーンゴムや透明アクリルの固形物から構成されてもよい。
【0018】
止血部材10の表面には、表面が不潔になることを防止するために、例えば絆創膏のようなシール部材を配置しておき、止血時にシール部材を剥離することが好ましい。
【0019】
帯体20は、手首に巻き付けることが可能な可撓性を有する帯状の部材である。帯体20は、手首に巻き付けられ、その両端付近の部分を互いに重ね合わせるようにして装着される。
【0020】
帯体20は、
図1に示すように、
図1の左側の端部の下面に設けられる面ファスナーの雄側22と、
図1の右側の端部の上面に設けられる面ファスナーの雌側23と、帯体20の中央部よりも左方の上面に設けられる面ファスナーの雄側24と、面ファスナーの雄側24の右方に設けられる露出部25と、を有する。面ファスナーは、一般にマジックテープ(登録商標)と呼ばれる。
【0021】
帯体20の面ファスナーの雄側22および雌側23が接合することによって、帯体20が手首に巻き付けられる。また、面ファスナーの雄側24および後述する固定部40に設けられる面ファスナーの雌側42が接合することによって、固定部40の一端(
図1の左側)を帯体20に対して固定することができる。さらに、帯体20の面ファスナーの雌側23および後述する固定部40に設けられる面ファスナーの雄側43が接合することによって、固定部40の他端(
図1の右側)を帯体20に対して固定することができる。
【0022】
露出部25は、帯体20が手首に巻き付けられた状態で、穿刺部位を露出する。露出部25は略円形の貫通孔から形成される。後述するように、止血帯体30は止血部材10を露出部25に対して位置合わせ可能となるように構成される(
図8参照)。すなわち、止血部材10の中心位置から帯体20と止血帯体30の固定部までの距離Laと、露出部25の中心位置から帯体20と止血帯体30の固定部までの距離Lbがほぼ等しいように配置する。止血部材10の中心位置は、
図1のように止血部材や露出部が略円形の場合はその円の中心点、矩形の場合は対角線の交点とする。露出部25の大きさは特に限定されないが、例えば半径が0.25~2.5cmである。なお、露出部25は略円形の代わりに略矩形状であってもよい。
【0023】
帯体20は、穿刺部位を外側から確実に視認することができ、止血の状況を判別でき、帯体20の位置合わせをすることができる観点から、透明であることが好ましい。帯体20を構成する材料としては、バルーンの構成材料と同様のものを用いることができる。
【0024】
帯体20の幅方向の長さ(
図1の上下方向の長さL1)は、特に限定されないが、例えば2.0~8.0cmである。
【0025】
止血帯体30は、
図1に示すように、
図1の右側の端部において、帯体20に接続されている。止血帯体30の帯体20に対する接続方法は、特に限定されない。止血帯体30は、止血部材10を備える。止血帯体30は、帯体20が手首に巻き付けられた状態で、穿刺部位に対する止血部材10の位置合わせを可能にするように構成されている。すなわち、本実施形態では、帯体20が手首に巻き付けられた状態で、止血帯体30は、止血部材10を露出部25に位置合わせ可能となるように構成されている。本実施形態では、止血帯体30は、帯体20に重なるように、手首に巻き付けられる。
【0026】
止血部材10は、止血帯体30に対して固定されている。止血部材10の止血帯体30に対する固定方法は特に限定されないが、例えば接着剤による接着である。
【0027】
止血帯体30には、
図1に示すように、
図1の左側の端部の右側面に設けられる面ファスナーの雄側31が形成されている。帯体20が手首に巻き付けられた状態で、止血帯体30の面ファスナーの雄側31および帯体20の面ファスナーの雌側23が接合することによって、止血部材10を穿刺部位に対して圧着して、圧迫止血することができる(
図8参照)。
【0028】
止血帯体30は、穿刺部位を外側から確実に視認することができ、止血の状況を判別でき、止血帯体30の位置合わせをすることができる観点から、透明であることが好ましい。止血帯体30を構成する材料としては、バルーンの構成材料と同様のものを用いることができる。
【0029】
止血帯体30の幅方向の長さL2は、帯体20の幅方向の長さL1と同一とすることができるが、これに限定されない。
【0030】
固定部40は、
図1に示すように、帯状に構成される。固定部40は、帯体20に対して着脱可能に配置される。固定部40は、穿刺部位に挿入されるシースイントロデューサー90を帯体20に対して着脱可能に固定する。
【0031】
固定部40は、
図1に示すように、帯状に構成される本体部41と、
図1の左側の端部の下面に設けられる面ファスナーの雌側42と、
図1の右側の端部の下面に設けられる面ファスナーの雄側43と、本体部41の中央部近傍の下面に設けられ面ファスナーの雄側(第2連結部に相当)44と、を有する。
【0032】
固定部40の面ファスナーの雌側42および帯体20の面ファスナーの雄側24、ならびに固定部40の面ファスナーの雄側43および帯体20の面ファスナーの雌側23が互いに接続されることによって、固定部40は、帯体20に対して固定される。
【0033】
固定部40の面ファスナーの雄側44は、
図2に示すシースイントロデューサー90に取り付けられた連結部材92の面ファスナーの雌側(第1連結部に相当)92Aと接続されることによって、シースイントロデューサー90を帯体20に対して固定することができる。
【0034】
固定部40は、穿刺部位を外側から確実に視認することができ、固定部40の位置合わせをすることができる観点から、透明であることが好ましい。固定部40を構成する材料としては、バルーンの構成材料と同様のものを用いることができる。
【0035】
固定部40の幅方向の長さL3は、特に限定されないが、例えば0.5~4.0cmである。
【0036】
次に、
図2を参照して、医療器具であるシースイントロデューサー90の構成について説明する。シースイントロデューサー90は、
図2に示すように、手首の穿刺部位に導入されるシースチューブ93と、シースチューブ93の基端側に取り付けられるシースハブ94と、シースハブ94に固定された連結部材92と、を有する。連結部材92のシースハブ94に対する固定方法は特に限定されないが、例えば接着剤による接着である。
【0037】
シースチューブ93を穿刺部位に導入する際には、シースチューブ93にダイレータ(不図示)を挿通した状態で、シースイントロデューサー90を穿刺部位に導入する。
【0038】
シースイントロデューサー90は、例えば、カテーテル、ガイドワイヤ等を挿通して、体腔内へ導入するためのものである。
【0039】
シースチューブ93は、経皮的に体腔内へ導入される。シースチューブ93の構成材料としては、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0040】
シースハブ94には、シースチューブ93の内部と連通するサイドポートが形成されている。サイドポートには、例えばポリ塩化ビニル製の可撓性を有するチューブの一端が液密に接続されている。チューブの他端は、例えば三方活栓95が装着されている。この三方活栓95のポートからチューブを介してシースイントロデューサー90内に、例えば生理食塩水のような液体を注入する。
【0041】
次に、
図3~
図8を参照して、本実施形態に係る止血器具1の使用方法について説明する。
図3~
図8は、本実施形態に係る止血器具1の使用方法の説明に供する図である。以下の説明において、穿刺する前の部位を穿刺予定部位Rと称し、穿刺した後の部位を穿刺部位Rと称する。
【0042】
まず、術者は、
図3に示すように、手首の穿刺予定部位Rを消毒する。
【0043】
次に、術者は、
図4に示すように、帯体20の面ファスナーの雄側22および雌側23を接合させることによって、帯体20を手首に巻き付ける。このとき、露出部25が、穿刺予定部位Rを露出するように、帯体20を手首に巻き付ける。また、このとき、止血帯体30は、
図4に示すように、手技の邪魔にならないように、巻回させた状態で手首の側面に固定しておくことが好ましい。固定手段は特に限定されないが、例えばクリップ等による固定である。また、上述したように、止血部材10の表面にはシール部材が貼付されている。
【0044】
次に、術者は、
図5に示すように、シースイントロデューサー90を穿刺予定部位Rに導入する。このとき、ダイレーター(図示せず)をシースイントロデューサー90と一体にした状態で、シースイントロデューサー90を導入する。シースチューブ93を穿刺部位Rに導入したときには、シースチューブ93が血管内に留置され、シースハブ94が皮膚より上に出ている。
【0045】
次に、術者は、
図6に示すように、シースイントロデューサー90を帯体20に対して固定する。具体的には、固定部40の面ファスナーの雌側42および帯体20の面ファスナーの雄側24、ならびに固定部40面ファスナーの雄側43および帯体20の面ファスナーの雌側23が互いに接続されるとともに、固定部40の面ファスナーの雄側44は、シースイントロデューサー90に取り付けられた連結部材92の面ファスナーの雌側92Aと接続されることによって、シースイントロデューサー90を帯体20に対して固定することができる。
【0046】
図6に示すシースイントロデューサー90の固定が終了すると、術者は、ダイレーターを抜き取ってシースイントロデューサー90のみを残す。そして、術者は、このシースイントロデューサー90を通じて、カテーテル等の器具を血管内へ挿入して所定の治療を行う。この工程において、固定部40の面ファスナーの雄側44は、シースイントロデューサー90に取り付けられた連結部材92の面ファスナーの雌側92Aと接続されるため、シースイントロデューサー90の位置ずれを好適に抑制することができる。
【0047】
次に、術者は、所定の治療を行った後に、
図7に示すように、固定部40を帯体20から取り外すとともに、シースイントロデューサー90を穿刺部位Rから抜去する。さらに、術者は、
図7に示すように、止血帯体30の巻回状態を解除する。
【0048】
次に、術者は、
図8に示すように、止血帯体30を手首に巻き付ける。このとき、止血帯体30の止血部材10を、帯体20の露出部25から露出している穿刺部位Rに対して圧着させる。このように、予め帯体20を手首に巻き付けた状態で、治療を行い、治療終了後に、止血帯体30を手首に巻き付けるため、すぐに止血することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る止血器具1は、手首に形成された穿刺部位Rを止血するための止血部材10と、手首に巻き付けることが可能な帯体20と、帯体20に接続されるとともに、止血部材10が配置され、帯体20が手首に巻き付けられた状態で、穿刺部位Rに対する止血部材10の位置合わせを可能にする止血帯体30と、帯体20に配置され、穿刺部位Rに挿入されるシースイントロデューサー90を帯体20に対して着脱可能に固定する固定部40と、を有する。このように構成された止血器具1によれば、固定部40によってシースイントロデューサー90を帯体20に対して固定するため、シースイントロデューサー90の位置ずれを抑制できる。また、穿刺部位に対する止血部材10の位置合わせが可能な止血帯体30、およびシースイントロデューサー90を帯体20に対して着脱可能に固定する固定部40がそれぞれ別個に設けられているため、固定部40による固定を解除してシースイントロデューサー90を抜去した後に、止血帯体30を肢体に巻き付けることから、圧迫不足が生じることなく、好適に穿刺部位を止血できる。さらに、止血帯体30が帯体20に接続されているため、シースイントロデューサー90を抜去した後に、迅速に穿刺部位を止血できる。以上から、シースイントロデューサー90の位置ずれを抑制しつつ、シースイントロデューサー90を抜去した後に、迅速かつ好適に穿刺部位を止血することのできる止血器具1を提供することができる。
【0050】
また、帯体20は、手首に巻き付けられた状態で穿刺部位Rを露出する露出部25を有し、止血帯体30は、止血部材10を露出部25に位置合わせ可能となるように構成される。このように構成された止血器具1によれば、止血部材10を露出部25に位置合わせするように、止血帯体30を手首に巻き付けるため、止血帯体30の巻き直しが不要なので手技が容易となる。
【0051】
また、露出部25は、貫通孔である。このように構成された止血器具1によれば、後述の切欠き形状である露出部と比較して、帯体20の強度の低下を抑制することができる。
【0052】
また、固定部40は帯状である。このように構成された止血器具1によれば、シースイントロデューサー90の帯体20に対する固定力を、術者によって好適に調整することができる。
【0053】
また、固定部40は、帯体20と着脱可能である。このように構成された止血器具1によれば、
図7、
図8で示したように、止血帯体30を手首に巻き付ける際に、固定部40を帯体20から取り外しておくことができるため、手技の邪魔にならない。
【0054】
また、固定部40は、帯状に構成される本体部41と、本体部41に設けられ、シースイントロデューサー90に設けられた連結部材92の雌側92Aに連結可能な面ファスナーの雄側44と、を有する。このように構成された止血器具1によれば、固定部40の面ファスナーの雄側44は、シースイントロデューサー90に取り付けられた連結部材92の面ファスナーの雌側92Aと接続されるため、シースイントロデューサー90の位置ずれをより好適に抑制することができる。
【0055】
<固定部の変形例1>
次に、
図9を参照して、変形例1に係る固定部140の構成について説明する。
図9は、変形例1に係る固定部140の
図6に対応する図である。変形例1に係る固定部140は、
図9に示すように、帯体20に固定されるとともに、シースイントロデューサー90のシースハブ94に嵌合可能な嵌合部材である。より具体的には、固定部140は、シースハブ94の外周に嵌合可能となるように凹部141を備える嵌合部材である。この構成によれば、シースイントロデューサー90を確実に帯体20に対して固定することができる。
【0056】
<固定部の変形例2>
次に、
図10を参照して、変形例2に係る固定部240の構成について説明する。
図10は、変形例2に係る固定部240の
図6に対応する図である。変形例2に係る固定部240は、シースイントロデューサー90のシースハブ94の下面に設けられた面ファスナーの雄側(第3連結部)94Aに連結可能であって、帯体20に設けられる面ファスナーの雌側(第4連結部)である。この構成によれば、実施形態で説明したような帯状の本体部41は不要となるため、手技の容易性がより向上する。
【0057】
<露出部の変形例>
次に、
図11を参照して、変形例に係る露出部125の構成について説明する。
図11は、変形例に係る露出部125の
図1に対応する図である。変形例に係る露出部125は、
図11に示すように、切り欠きである。この構成によれば、露出する面積をより大きくとることができ、穿刺部位Rの視認性を向上することができる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、
図12を参照して、第2実施形態に係る止血器具2の構成について説明する。
図12は第2実施形態に係る止血器具2を示す概略図である。
【0059】
第1実施形態と共通する部分は説明を省略し、第2実施形態のみに特徴のある箇所について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付して説明し、重複した説明は省略する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、帯体120に露出部が設けられない点などが異なる。
【0060】
第2実施形態に係る止血器具2は、手首に形成された穿刺部位を止血するための止血部材10と、手首に巻き付けることが可能な帯体120と、帯体120に接続されるとともに止血部材10が配置される止血帯体130と、シースイントロデューサー90を帯体20に対して着脱可能に固定する固定部40と、を有する。止血部材10および固定部40の構成は、第1実施形態と同一であるため、説明は省略する。
【0061】
帯体120は、第1実施形態に係る止血器具1の帯体20と異なり、露出部が設けられない。帯体120は、
図13に示すように、穿刺部位Rに対して遠位側(すなわち、指側)となるように、手首に巻き付けられる。帯体120の面ファスナーの構成については、第1実施形態に係る止血器具1の帯体20と同一である。
【0062】
帯体120の幅方向の長さ(
図12の上下方向の長さL4)は、特に限定されないが、例えば0.5~6.0cmである。
【0063】
止血帯体130は、止血部材10を穿刺部位Rに位置合わせ可能となるように構成される(
図15参照)。また、止血帯体130は、止血帯体130の長軸方向D1が帯体120の長軸方向D2に対して傾斜する方向に沿うように、固定されて構成されている(
図15参照)。止血帯体130の長軸方向D1が帯体120の長軸方向D2に対して傾斜する角度は、特に限定されないが、例えば10~40度である。止血帯体130の面ファスナーの構成については、第1実施形態に係る止血器具1の止血帯体30と同一である。
【0064】
次に、
図13~
図16を参照して、第2実施形態に係る止血器具2の使用方法について説明する。
図13~
図16は、第2実施形態に係る止血器具2の使用方法の説明に供する図である。
【0065】
まず、術者は、手首の穿刺予定部位Rを消毒する。そして、術者は、
図13に示すように、帯体120を、穿刺予定部位に対して遠位側となるように手首に巻き付けて固定する。
【0066】
次に、術者は、
図14に示すように、シースイントロデューサー90を穿刺予定部位Rに導入する。次に、術者は、図示は省略するが、固定部40を用いてシースイントロデューサー90を帯体120に対して固定する。
【0067】
次に、術者は、所定の治療を行った後に、固定部40を帯体120から取り外すとともに、シースイントロデューサー90を穿刺部位Rから抜去する。
【0068】
次に、術者は、
図15に示すように、止血帯体130を手首に巻き付ける。このとき、止血帯体130の長軸方向D1が帯体120の長軸方向D2に対して傾斜する方向に巻き付ける。そして、術者は、
図16に示すように、止血帯体130を手首に巻き付けた後に、所定のテープ部材で止血帯体130同士を固定する。
【0069】
以上説明したように、帯体120は、穿刺部位Rに対して遠位側となるように、手首に巻き付けられ、止血帯体130は、止血部材10を穿刺部位Rに位置合わせ可能となるように構成される。このように構成された止血器具2によれば、帯体120および止血帯体130が重なる領域を低減できるため、止血器具2の装着時の違和感を低減することができる。
【0070】
また、止血帯体130は、止血帯体130の長軸方向D1が帯体120の長軸方向D2に対して傾斜する方向に沿うように、固定的に構成されている。このように構成された止血器具2によれば、帯体120におよび止血帯体130が重なる領域を低減できるため、止血器具2の装着時の違和感を低減することができる。
【0071】
以上、実施形態を通じて本発明に係る止血器具1、2を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0072】
例えば、
図17に示すように、帯体220の幅を10とした時に、上の3割の領域を固定部40用の領域として、下の7割の領域を止血帯体30用の領域とする構成であってもよい。このとき、帯体220の露出部225に止血部材10が来るように、止血帯体30を手首に巻回してもよいし、露出部225と重ならない帯体220の近位側に、止血部材10が来るように、止血帯体30を手首に巻回してもよい。このとき、止血帯体30は伸縮自在に構成されることが好ましい。この構成によれば、術者が適宜所望の位置に、止血帯体30を巻き付けることができるため、止血器具の汎用性が向上する。
【0073】
また、上述した面ファスナーの雄側および雌側は一例であって、それぞれ雄側および雌側が逆に構成されてもよい。
【0074】
また、上述した各部材は、それぞれ面ファスナーによって連結されたが、機械的に連結される構成であれば、特に限定されない。
【0075】
なお、本発明の用途はTRIにて説明したが、TRIに限定されない。本発明は、TFI(Trans Femoral Intervention)やTBI(Trans Brachial Intervention)、dTRI(distal Trans Radial Intervention)などに応用可能である。
【0076】
また、上述した第2実施形態では、帯体は、穿刺部位Rに対して遠位側となるように巻き付けた。しかしながら、上記用途のうちシースイントロデューサーを血流の下流側に向けて穿刺する場合には、帯体が、穿刺部位Rに対して近位側となるように巻き付けてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1、2 止血器具、
10 止血部材、
20、120、220 帯体、
25、125、225 露出部、
30、130 止血帯体、
40、140、240 固定部、
90 シースイントロデューサー、
D1 止血帯体の長軸方向、
D2 帯体の長軸方向、
R 穿刺部位。