(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176210
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水貯留槽用の構造部材及び堆砂滞留板
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20241212BHJP
E03B 11/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03F1/00 Z
E03B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094589
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川島 昭洋
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA01
2D063AA11
(57)【要約】
【課題】装着した堆砂滞留板が外れにくい水貯留槽用の構造部材を提供する。
【解決手段】基台21と該基台21に立設された複数の脚部22とを備え、複数個を並置しつつ積層した状態にすることによって水貯留槽の貯留空間を確保して並置積層構造体を構成する水貯留槽用の構造部材20であって、複数の脚部22のうち隣接する脚部22の側面221間に堆砂滞留板40Aを装着可能であり、隣接する脚部22の側面221には、堆砂滞留板40Aを挿入する挿入溝222を形成した。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と該基台に立設された複数の脚部とを備え、複数個を並置しつつ積層した状態にすることによって水貯留槽の貯留空間を確保して並置積層構造体を構成する水貯留槽用の構造部材であって、
前記複数の脚部のうち隣接する脚部の対向面間に堆砂滞留板を装着可能であり、
前記隣接する脚部の対向面には、前記堆砂滞留板を挿入する挿入溝を形成した水貯留槽用の構造部材。
【請求項2】
前記挿入溝にはその底面から前記底面に直交する方向に向かって延びる当接片が形成されている請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項3】
前記各脚部は四方向に側面を有し、前記挿入溝は前記各側面に形成されている請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項4】
前記隣接する脚部の対向面間の長さは、前記脚部の先端に向かうほど長くなっている請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項5】
基台と該基台に立設された複数の脚部とを備え、複数個を並置しつつ積層した状態にすることによって水貯留槽の貯留空間を確保して並置積層構造体を構成する水貯留槽用の構造部材における隣接する脚部の対向面間に装着可能な堆砂滞留板であって、
前記堆砂滞留板は、前記脚部の対向面に形成された挿入溝に挿入可能な挿入部を有する堆砂滞留板。
【請求項6】
前記挿入部は、前記挿入溝に挿入可能なリブ部となっている請求項5に記載の堆砂滞留板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水貯留槽用の構造部材及び堆砂滞留板に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水貯留施設は雨水を貯留させるための施設である。雨水貯留施設の設置には、道路、公園、駐車場等又はその予定地等にピットを掘り、複数の構造部材を、水平方向及び鉛直方向に配置して構成する。そして、その周囲を透水性または遮水性のシートで覆いさらに土で埋め戻す。この雨水貯留施設は内部に大きな空隙を有するため雨水を貯留することができる。また、配置した構造部材により上方に建設等された施設の荷重を支えることができる。このような構造部材として基台と該基台に立設された複数の脚部とを備えた構成があり、さらに構造部材の内部に土砂等が侵入しないように隣接する脚部間に堆砂滞留板を備えた構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の堆砂滞留板は、両側の脚部の周面を抱え込むように湾曲した鍔部を有しており、この側部形状により脚部の側部と堆砂滞留板の側部との接触面積を広く確保している。しかし、特許文献1の堆砂滞留板は脚部に面接触させる構成であるため、成形品の収縮やソリなどの変形や組み付け後に堆砂滞留板に水圧等の応力が作用した場合に堆砂滞留板が脚部から外れるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、装着した堆砂滞留板が外れにくい水貯留槽用の構造部材及び水貯留槽用の構造部材に装着可能な堆砂滞留板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、基台と該基台に立設された複数の脚部とを備え、複数個を並置しつつ積層した状態にすることによって水貯留槽の貯留空間を確保して並置積層構造体を構成する水貯留槽用の構造部材であって、前記複数の脚部のうち隣接する脚部の対向面間に堆砂滞留板を装着可能であり、前記隣接する脚部の対向面には、前記堆砂滞留板を挿入する挿入溝を形成した。
【0007】
前記挿入溝にはその底面から前記底面に直交する方向に向かって延びる当接片が形成されている。
前記各脚部は四方向に側面を有し、前記挿入溝は前記各側面に形成されている。
【0008】
前記隣接する脚部の対向面間の長さは、前記脚部の先端に向かうほど長くなっている。
また、基台と該基台に立設された複数の脚部とを備え、複数個を並置しつつ積層した状態にすることによって水貯留槽の貯留空間を確保して並置積層構造体を構成する水貯留槽用の構造部材における隣接する脚部の対向面間に装着可能な堆砂滞留板であって、前記堆砂滞留板は、前記脚部の対向面に形成された挿入溝に挿入可能な挿入部を有する。
【0009】
前記挿入部は、前記挿入溝に挿入可能なリブ部となっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水貯留槽用の構造部材に堆砂滞留板を装着した場合でも、堆砂滞留板が外れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】
図6(a)は第1堆砂滞留板の斜視図、
図6(b)は同側面図、
図6(c)は同正面図、
図6(d)は第2堆砂滞留板の正面図、
図6(e)は第3堆砂滞留板の正面図、
図6(f)は第4堆砂滞留板の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した並置積層構造体10、及び並置積層構造体10を構成する構造部材20の一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。なお、説明の便宜上、並置積層構造体10及び構造部材20は、水平に形成された床面、例えばコンクリートを打設した床面に設置されているものとして各構成の方向等を説明する。また、構成が複数ある場合にはその一部にのみ符号を入れることがある。
【0013】
図1に並置積層構造体10の斜視図を示す。並置積層構造体10は、複数個の構造部材20を水平方向に並置し、また各構造部材20の上に反転させた構造部材20を嵌合、積層して構成したものである。このうち、構造部材20を上下対に積層したものをユニット部材30という。構造部材20の内部に水貯留槽の貯留空間を確保し、ひいては並置積層構造体10の内部に水貯留槽の貯留空間を確保している。
図1では、構造部材20を上下対に積層したユニット部材30を3段積層した構成を図示している。また、下段及び中段のユニット部材30はそれぞれ堆砂滞留板40を装着している。
【0014】
図2に、
図1に示す並置積層構造体10のうち下段角部に位置するユニット部材30とこれに装着されている堆砂滞留板40とを抜き出した分解斜視図を示す。
図2に示すように、1つのユニット部材30は2つの構造部材20を上下に対向させて嵌合することにより積層した構成である。上下2つの構造部材20はいずれも同一形状をなしており、上側の構造部材20は下側の構造部材20を上下反転させたものである。このため、以下、下側の構造部材20を説明するが、その説明は使用時の上下の向き反転させた上側の構造部材20にも当てはまる。
【0015】
(構造部材20)
図3に構造部材20の平面図、
図4に構造部材20の側面図を示す。
図3、
図4に示すように、構造部材20は平面視略矩形状をなす基台21と基台21の四隅から上方に向けて立設された4本の脚部22とを有する。構造部材20はポリプロピレンなどの合成樹脂(再生材を含む)にて基台21と脚部22とが一体成形されている。
【0016】
(基台21)
図3に示すように、基台21は平面視で略正方形状をなしており、外周に4つの辺23を備えている。各辺23の長さは同じであり、隣接する辺23のなす角は平面視で直角、対向する辺23は平面視で平行である。各辺23の角部は面取りされている。
図3、
図4に示すように、基台21は正方形枠状の枠部24とこの枠部24の内側に一体形成された基台本体25とからなり、基台本体25の上面25aは枠部24よりも高い位置にある。また、基台21は複数の縦リブ211及び複数の横リブ212を備えている。基台21のうち枠部24の外縁が構造部材20の辺23を構成する。
【0017】
基台21のうち、縦リブ211及び横リブ212によって囲まれる矩形部分には上下方向に貫通する肉抜孔213が形成されている。この肉抜孔213は構造部材20の軽量化及び構造部材20の内部における水の流通の確保を目的としている。なお、肉抜孔213は略矩形状を基本とするが、一部、
図3において図中上下に延びる辺23に隣接して基台本体25に位置するものは、それぞれ枠部24の外方(図中左右方向)に先端が向く五角形状に形成された目印用肉抜孔214となっている。これは構造部材20を上下に嵌合させてユニット部材30とする際の構造部材20の向きを揃える目印となる。
【0018】
図3及び
図4に示すように、基台21における枠部24の内側であって基台本体25の四隅には、それぞれ上方に向けて立設された脚部22が形成されている。これら4本の脚部22はいずれも同一形状をなしており、基台21上の位置が異なるだけである。このため、1つの脚部22を具体的に説明し、この説明は他の3本の脚部22にも当てはまる。
【0019】
(脚部22)
脚部22は内部が中空であり、四角錐台(方錐台)状を基本形状とする。脚部22は四方向にそれぞれ側面221を有する。脚部22に形成されている4つの側面221は先端形状を除き同一形状であり、以下1つの側面221を説明するが、その説明は脚部22の他の3つの側面221にも当てはまる。
【0020】
図4、
図5に示すように、脚部22の側面221は上方に向かうほど幅(
図5の左右)が狭くなる台形であり、かつ、脚部22は四角錐台状であるため、側面221は鉛直方向に対して一定角度で脚部22の中心側に傾斜している。また、側面221には横断面凹状の挿入溝222が脚部22の高さ方向全体にわたって形成されている。挿入溝222は平行な2つの側壁223とこれら側壁223に連続する底面224とを有している。
【0021】
図5(a)、(b)、(c)に示すように、挿入溝222の幅(
図5の左右)は脚部22の高さ方向全体にわたって一定である。なお、挿入溝222の幅は2つの側壁223間の長さであり、かつ底面224の幅でもある。また、挿入溝222は側面221の幅方向中心に形成されており、挿入溝222の幅方向中心は脚部22の側面221の幅方向中心と一致する。挿入溝222の深さは脚部22の高さ方向全体にわたって一定であり挿入溝222の幅より短い。なお、挿入溝222の深さは、2つの側壁223の奥行きであり、側面221から底面224までの長さでもある。すなわち、
図5(a)、
図5(b)に脚部22の端面を示すように脚部22の側面221の幅は上方が狭くなるが、挿入溝222は高さ方向において幅及び深さともに一定である。
【0022】
図3ないし
図5に示すように、挿入溝222の底面224には底面224の幅方向中心から底面224に直交かつ側壁223に平行に延びる薄板状の当接片225が挿入溝222の高さ方向全体にわたって形成されている。当接片225の下端は基台21につながっている。当接片225の底面224と垂直方向となる突出長さは高さ方向全体にわたって一定であり、挿入溝222の深さの1/3倍程度となっている。
【0023】
図4、
図5(c)に示すように、脚部22の上端となる先端には嵌合部226が形成されている。この嵌合部226は2つの構造部材20を上下に対向させて嵌合する際に上下の脚部22同士を嵌合する部分となる。これまで説明したとおり、1つの脚部22は4つの側面221を有しており、これら4つの各側面221に挿入溝222が形成されている。そして、脚部22の先端では、脚部22における4つの角のうち
図5(c)中、左下の角と右上の角の2つの角を含む部分が、他の2つの角よりも上方に一定高さ延長形成されている。具体的には、
図5(c)中、左下の角と右上の角についてこれらの角を挟む2つの側面221の各挿入溝222に形成された各当接片225の手前同士を円弧状に結ぶ範囲が上方に延長形成されている。これにより、脚部22の先端に嵌合部226は対角関係にある2つの角を含む部分が上方に延長形成された嵌合凸部226aとなり、他の対角関係にある2つの角を含む部分が嵌合凸部226aに対して相対的に低い嵌合凹部226bとなる。構造部材20を上下対向させた場合に脚部22同士も対向し、それぞれの嵌合凸部226aと嵌合凹部226bとが互いに嵌合してユニット部材30を構成する。なお、嵌合凸部226a同士の干渉を防止するため平面視における嵌合凹部226bの面積を嵌合凸部226aより大きく形成している。また、脚部22の先端上面には各角の内側に円孔226cが形成されており、この円孔226cを介して脚部22の内外が連通されている。
【0024】
(構造部材20における4本の脚部22の関係)
図4に示すように、脚部22は四角錐台状であり隣接する2本の脚部22の対向面である側面221間(
図4の左右)の長さは脚部22の先端に向かうほど長くなる。そして、対向する側面221にそれぞれ形成されている両挿入溝222の底面224間の長さ、さらに対向する当接片225間の長さも脚部22の先端に向かうほど長くなる。
【0025】
図3に示すように、基台21に形成された4本の脚部22は、基台21の辺23に平行な方向に隣接する脚部22間の間隔が等間隔となるように形成されている。また、基台21の辺23に平行な方向に隣接する2つの脚部22においてその辺23と平行に位置する2つの側面221は同一平面上に位置する。
【0026】
(堆砂滞留板40)
図6(a)に堆砂滞留板40としての第1堆砂滞留板40Aの斜視図、
図6(b)に同側面図、
図6(c)に同正面図をそれぞれ示す。これらの図に示すように、第1堆砂滞留板40Aは正面視で高さ方向の中央が最も幅広の六角形状をなしている。第1堆砂滞留板40Aは、上下及び表裏の区別がないため、
図6(c)の状態から上下又は表裏に反転させても同じ形状である。
【0027】
第1堆砂滞留板40Aは六角板状の面板41A(41)とこの面板41Aの周囲を囲う六角枠状の挿入部としてのリブ部42A(42)とがポリプロピレンなどの合成樹脂(再生材を含む)により一体形成されている。リブ部42Aは挿入溝222に挿入可能となっている。なお、第1堆砂滞留板40A、面板41A及びリブ部42Aにいう高さとは
図6(a)ないし(c)の上下方向をいう。また幅とは
図6(c)にいう左右方向をいい、厚みとは
図6(b)の左右方向をいう。面板41Aは一定肉厚で六角形に形成された板状をなす。また、面板41Aの表面は平坦に形成されていて貫通孔は形成されていない。面板41Aの最も幅広となる高さ方向の中央位置には両幅端同士を結ぶ凸線43A(43)が形成されている。
【0028】
リブ部42Aは面板41Aに垂直に形成された帯状部である。リブ部42Aは、面板41Aの外周縁に沿って一周する形で面板41Aを外嵌しており、両者は一体に形成されている。リブ部42Aは、上下端に位置して水平方向に延びる上下片44A(44)を有するとともに、両上下片44Aの両端にそれぞれ連結するく字状の傾斜片45A(45)とを有する。このためリブ部42Aは正面視で全体として六角枠状をなす。リブ部42Aは一定厚みに形成されており、その厚みは脚部22に形成された挿入溝222の幅よりもわずかに短い。また、リブ部42Aの厚み方向中心に面板41Aが連結されている。
【0029】
第1堆砂滞留板40Aの高さ、すなわち両上下片44Aの高さは、2つの構造部材20を上下に嵌合してユニット部材30とした場合の基台本体25の上面間の鉛直方向の長さと同じである。また、第1堆砂滞留板40Aの幅すなわち一対の傾斜片45Aの左右両外端間の長さは、
図6(c)に示すように高さ方向により異なる。ただし、第1堆砂滞留板40Aを隣接する脚部22間に装着すると、一対の傾斜片45Aがそれぞれ対向する挿入溝222に挿入される。すなわち、一対の傾斜片45Aの左右両外端間の長さは、隣接する脚部22間に第1堆砂滞留板40Aが装着された状態で対向する側面221間の長さよりも長く、対向する当接片225間の長さよりも短い。傾斜片45Aの鉛直方向に対する傾斜角度は脚部22の側面221に形成された挿入溝222の鉛直方向に対する傾斜角度と同じである。
【0030】
図6(d)に堆砂滞留板40としての第2堆砂滞留板40Bの正面図を示す。第2堆砂滞留板40Bの面板41Bには肉厚方向に貫通する水流通孔46B(46)が複数形成されている点が第1堆砂滞留板40Aと異なるのみであり、他の説明は省略する。なお、説明の便宜上、第2堆砂滞留板40Bの構成には番号の末尾にBを付すが、特に説明がない限り第1堆砂滞留板40Aの末尾にAを付けた構成と変わるものではない。第2堆砂滞留板40Bは面板41Bの凸線43Bに対して線対称に上下に複数の水流通孔46Bが貫通形成されている。各水流通孔46Bは第2堆砂滞留板40Bを挟んで厚み方向に水を流通させるものであり、水平方向に長い長孔に形成されている。なお、水流通孔46Bの1つあたりの開口面積、及び第2堆砂滞留板40Bに形成された水流通孔46Bの合計開口面積は特に規定はない。本実施形態では水流通孔46Bの1つあたりの開口面積は最も大きな肉抜孔213の開口面積よりも小さい。また、第2堆砂滞留板40Bに形成された水流通孔46Bの合計開口面積は基台本体25に形成された肉抜孔213の合計開口面積よりも小さい。
【0031】
図6(e)に堆砂滞留板40としての第3堆砂滞留板40Cの正面図を示す。第3堆砂滞留板40Cは幅が第1堆砂滞留板40Aと異なるのみであり、他の説明は省略する。第3堆砂滞留板40Cの構成には番号の末尾にCを付すが、特に説明がない限り他の構成と変わるものではない。第3堆砂滞留板40Cは構造部材20を水平方向に隣接して配置した場合に隣接する2つの構造部材20間に対向して立設されている脚部22間(
図1参照)に配置されるものである。リブ部42Cの上下片44Cの幅(
図6(e)の左右)は2つの構造部材20を当接させて並置した場合の2つの構造部材20を挟んで隣接する2つの脚部22の対向する側面221間よりも長く、対向する当接片225間の長さよりも短い。このため、第3堆砂滞留板40Cを隣接する2つの構造部材20間に装着すると、第3堆砂滞留板40Cのリブ部42Cの一対の傾斜片45Cは、隣接する2つの構造部材20間の対向する脚部22にそれぞれ形成された挿入溝222に挿入される。
【0032】
さらに、
図6(f)に堆砂滞留板40としての第4堆砂滞留板40Dの正面図を示す。第4堆砂滞留板40Dは面板41Dに肉厚方向に貫通する水流通孔46Dが複数形成されている点が第3堆砂滞留板40Cと異なるのみであり、他は同じである。第4堆砂滞留板40Dの構成には番号の末尾にDを付すが、特に説明がない限り他の構成と変わるものではない。
【0033】
(並置積層構造体10の形成)
次に、本実施形態の構造部材20及び堆砂滞留板40を組み付けて並置積層構造体10を形成する手順について説明する。
【0034】
図7(a)に示すように、1つの構造部材20の脚部22を上向きとして基台21を床面に設置する。続けて
図7(b)に示すように基台21の手前側の角に立設されている脚部22とこれに隣接する脚部22との対向する側面221間に上からそれぞれ第1堆砂滞留板40Aを装着する。各第1堆砂滞留板40Aは高さ方向の下半分が脚部22に装着される。
【0035】
続けて、
図7(c)に示すように、上下反転した構造部材20を下の構造部材20に上から被せる形で脚部22同士を嵌合させるとともに第1堆砂滞留板40Aの上半分に上側の構造部材20における2つの脚部22間を上から装着させる。なお、構造部材20を上から被せる際には、
図3に示す目印用肉抜孔214の向きを下側の構造部材20の目印用肉抜孔214の向きと合わせる。そうすると、上下対向する脚部22にそれぞれ形成された嵌合凸部226aと嵌合凹部226b(
図4参照)とが互いに嵌合する。これにより、ユニット部材30の側面4面のうち2面を第1堆砂滞留板40Aで塞いだ構成とすることができる。
【0036】
この状態では、
図8に示すように、第1堆砂滞留板40Aのリブ部42Aにおける傾斜片45Aが各脚部22の挿入溝222内に挿入されている。なお、
図8では脚部22の内部の図示は省略している。第1堆砂滞留板40Aのリブ部42Aの幅(
図6(c)の左右)は、同位置における対向する当接片225間の長さよりも短い。このため、リブ部42Aは対向する当接片225の双方ともに当接しないか対向する当接片225の一方にのみ当接した状態となる。
図8では対向する双方の当接片225に当接しない状態を図示している。そして、第1堆砂滞留板40Aを装着したユニット部材30を
図1に示すように水平方向及び鉛直方向に複数、互いに当接させた状態で配置して並置積層構造体10を形成することができる。なお、上記手順では下側の構造部材20を1つ設置して第1堆砂滞留板40Aを装着した後に、上から反転させた構造部材20を被せている。すなわち、ユニット部材30を一つずつ形成して水平方向に並べて並置積層構造体10を形成している。しかし、この手順に限られない。例えば、まず下側の構造部材20を水平方向に複数個並置しておき、次にこれら構造部材20に第1堆砂滞留板40Aを装着して、さらに各構造部材20に上から反転させた構造部材20を被せる。このように複数のユニット部材30をいわば同時に形成することにより並置積層構造体10を形成してもよく、手順は限定されない。
【0037】
図1では、上下3段のユニット部材30のうち下段には土砂の流入を防止するため面板41Aに貫通孔が形成されていない第1堆砂滞留板40Aを使用している。また、中段は土砂の流入が比較的少ないため水流通孔46Bが形成された第2堆砂滞留板40Bを使用している。さらに、上段に設置したユニット部材30は堆砂滞留板40を装着していない。また、
図1では、上下3段の下段の水平方向に隣接する2つのユニット部材30間に対向して立設されている脚部22間には第3堆砂滞留板40Cを使用している。また、中段の同じ箇所には第4堆砂滞留板40Dを装着している。さらに、上段の同箇所には堆砂滞留板40を装着していない。
【0038】
これらは、複数種類の堆砂滞留板40の使用例を示すものであって、ユニット部材30のどの箇所にどのような堆砂滞留板40を使用するか、あるいはしないかは使用状況に応じて適宜決めればよい。
【0039】
上記実施形態の並置積層構造体10によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、隣接する脚部22の対向する側面221にそれぞれ挿入溝222を形成し、第1堆砂滞留板40Aのリブ部42Aを挿入溝222に挿入して構造部材20及びユニット部材30に対して堆砂滞留板40を装着している。挿入溝222に第1堆砂滞留板40Aのリブ部42Aを挿入する構成としたため、構造部材20又は第1堆砂滞留板40Aの変形による組付け不良が発生しにくい。また、第1堆砂滞留板40Aに水圧が掛かって面板41A等が変形した場合でもリブ部42Aが挿入溝222から外れにくく、構造部材20及びユニット部材30と第1堆砂滞留板40Aとの装着が解除されにくい。
【0040】
(2)挿入溝222には当接片225が形成されている。挿入溝222内に挿入された第1堆砂滞留板40Aのリブ部42Aが挿入溝222に挿入されるとき、あるいはリブ部42Aが挿入溝222内で移動する場合でも挿入溝222の底面224には接触せずに当接片225に当接する。第1堆砂滞留板40Aのリブ部42Aが挿入溝222の底面224に接触すると面接触になり抵抗が大きくなるが、当接片225とは線接触となって接触抵抗は小さくなる。このため、挿入溝222内へのリブ部42Aの挿入時あるいは挿入後のリブ部42Aの挿入溝222内での移動が容易となる。
【0041】
(3)構造部材20は4本の脚部22を矩形状に等間隔で配置している。そして、脚部22は四角錐台状である。また、脚部22は四方向に側面221を有しており、挿入溝222は各側面221に形成されている。1つの構造部材20において隣接する脚部22間に堆砂滞留板40を装着可能な箇所が4箇所あり、いずれも共通の堆砂滞留板40を使用することができるため、構造部材20の向きの制限が少なくなる。
【0042】
(4)堆砂滞留板40は上下表裏反転させても同形状となる対称形状に形成している。このため、堆砂滞留板40の使用時に上下表裏の向きの制限がなくなり使い勝手がよくなる。
【0043】
(5)堆砂滞留板40はリブ部42を有しており、このリブ部42が挿入溝222に挿入される。このため、堆砂滞留板40の挿入溝222への装着が容易となる。
(6)堆砂滞留板40の幅は装着状態で対向する側面221間の長さよりも長く、対向する当接片225間の長さよりも短い。また、堆砂滞留板40のリブ部42の厚みは脚部22に形成された挿入溝222の幅よりもわずかに短い。このため、堆砂滞留板40のリブ部42と挿入溝222及び当接片225との間には隙間があり水の流れを許容することとなる。これにより構造部材20に堆砂滞留板40を装着しても水の流れが完全に遮断されることにはならない。
【0044】
(7)また、第1堆砂滞留板40Aの面板41Aが水圧を受けて撓んだ場合には面板41Aが湾曲する。これにより面板41Aと一体形成されているリブ部42Aも挿入溝222の底面224に対して傾斜するため、リブ部42Aと挿入溝222及び当接片225との隙間が大きくなり、水が流れやすくなる。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・構造部材20について辺23に平行に2本の脚部22を有する構成としたがこれに限られない。例えば辺23に平行に3本の脚部22を等間隔で配置してもよい。この場合、基台21が平面視正方形状とすると1つの辺23に平行な3本の脚部22があるため、基台21上には3本×3本の9本の脚部22が形成されることとなって、隣接する脚部22間として堆砂滞留板40を設置可能な箇所は12箇所となる。なお、1つの辺23に平行に4本以上脚部22を形成してもよい。
【0046】
・また、基台21を平面視矩形状に形成する場合には辺23の長さが同じでなくてもよい。例えば短辺と長辺とからなる平面視長方形状として、短辺に平行な方向に2本の脚部22、長辺に平行な方向に3本の脚部22を設置してもよい。
【0047】
・
図9(a)に示すように、上記実施形態の構造部材20を2つ連結した形状の1つの構造部材20Aとしてもよい。この場合、構造部材20Aの長辺23aは上記実施形態の構造部材20の辺23の2倍の長さとなり、かつ長辺23aに平行な方向にそれぞれ4本の脚部22が形成される。そして、この4本の脚部22のうち内側の2本の脚部22の間隔は他の脚部22の間隔とは異なることになる。このため、内側の2本の脚部22間には
図6(e)又は
図6(f)に示す第3堆砂滞留板40C又は第4堆砂滞留板40Dを使用する。
【0048】
・
図9(b)に示すように、上記実施形態の構造部材20を2つ連結した形状の1つの構造部材20Bとする場合、
図9(a)とは別の辺を上記実施形態の2倍の長さの長辺23bとし、かつ長辺23bに平行な方向にそれぞれ4本の脚部22を形成してもよい。この場合も4本のうち内側の2本の脚部22間には
図6(e)又は
図6(f)に示す第3堆砂滞留板40C又は第4堆砂滞留板40Dを使用する。
【0049】
・
図9(c)に示すように、上記実施形態の構造部材20を4つ田の字状に連結した形状の1つの構造部材20Cとしてもよい。この場合、構造部材20Cは各辺23cに平行な4本の脚部22を有する。このうち内側の2本の脚部22には
図6(e)又は
図6(f)に示す第3堆砂滞留板40C又は第4堆砂滞留板40Dを使用する。
【0050】
・1つの挿入溝222に1本の当接片225を形成したが、当接片225は2本以上としてもよく、また挿入溝222の高さ方向において当接片225を連続せず間欠的に形成してもよい。
【0051】
・各側面221に形成した挿入溝222を1つの凹状としたが、2本の平行な凹状としてもよい。この場合、堆砂滞留板40の装着部42もこの挿入溝222の形状にあわせた形状に変更する。
【0052】
・堆砂滞留板40の脚部22間への装着方法として堆砂滞留板40を脚部22の先端から装着したが、堆砂滞留板40の弾性を利用して他の方向から装着しても良い。例えば、堆砂滞留板40を幅方向に湾曲させて見かけ上の幅を小さくしておき、脚部22間の側方(
図4の紙面に直交する方向)から挿入溝222間に挿入する。そして、その後に堆砂滞留板40の湾曲を解除して形状を弾性により復元させてもよい。
【0053】
・堆砂滞留板40のリブ部42は面板41に垂直に形成された帯状部であり、面板41の外周縁に沿って一周する形としているがこれに限られない。たとえば、面板41の外周縁の一部に形成されていてもよく、厚みは周方向で変化してもよい。また、上下片44を形成せず全部又は一部を省略してもよい。
【0054】
・挿入溝222の幅(
図5の左右)を脚部22の高さ方向全体にわたって一定としたが、高さ方向に幅が変化する構成としてもよい。
・挿入溝222は側面221の幅方向中心に形成したが、幅方向中心からずれた位置に形成してもよい。
【0055】
・当接片225を挿入溝222の高さ方向全体にわたって形成したが、高さ方向全体でなくとも例えば高さ方向の半分や2/3に長さにわたって形成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…並置積層構造体
20…構造部材
21…基台
22…脚部
30…ユニット部材
40(40A、40B、40C、40D)…堆砂滞留板
42…リブ部(装着部)
221…側面(対向面)
222…挿入溝
224…底面
225…当接片