(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176212
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】半導体記憶装置及び半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 53/00 20230101AFI20241212BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H10B53/00
H01L29/78 371
H01L21/314 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094592
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】王 文生
【テーマコード(参考)】
5F058
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F058BA11
5F058BB05
5F058BC20
5F058BD18
5F058BF47
5F058BH02
5F058BH04
5F058BH20
5F058BJ04
5F083GA21
5F083JA02
5F083JA15
5F083JA35
5F083JA38
5F083JA39
5F083PR34
5F101BA62
5F101BD02
5F101BD20
5F101BF01
5F101BF03
(57)【要約】
【課題】疲労特性及びインプリント特性を向上することができる半導体記憶装置及び半導体記憶装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、トランジスタと、前記トランジスタに接続された強誘電体キャパシタと、を有し、前記強誘電体キャパシタは、一方が前記トランジスタに接続された第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたPZT系の第1強誘電体膜と、前記第1電極と前記第1強誘電体膜との間に設けられたPZT系の第2強誘電体膜と、を有し、前記第2強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第2強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い。半導体記憶装置は、例えば不揮発性メモリとして使用することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、
前記トランジスタに接続された強誘電体キャパシタと、
を有し、
前記強誘電体キャパシタは、
一方が前記トランジスタに接続された第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたPZT系の第1強誘電体膜と、
前記第1電極と前記第1強誘電体膜との間に設けられたPZT系の第2強誘電体膜と、
を有し、
前記第2強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第2強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第2強誘電体膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下である請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比は、前記第2強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比よりも大きい請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2電極と前記第1強誘電体膜との間に設けられたPZT系の第3強誘電体膜を有し、
前記第3強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第3強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第3強誘電体膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下である請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比は、前記第2強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比よりも大きい請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第1強誘電体膜は、La、Ca、Ir、Ru及びSrを含まない請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
トランジスタを形成する工程と、
前記トランジスタに接続される強誘電体キャパシタを形成する工程と、
を有し、
前記強誘電体キャパシタを形成する工程は、
一方が前記トランジスタに接続される第1電極及び第2電極を形成する工程と、
前記第1電極と前記第2電極との間にPZT系の第1強誘電体膜を形成する工程と、
前記第1電極と前記第1強誘電体膜との間にPZT系の第2強誘電体膜を形成する工程と、
を有し、
前記第2強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第2強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い半導体記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記強誘電体キャパシタを形成する工程において、
前記第1電極が前記トランジスタに接続され、
前記第1電極が形成された後に、前記第1電極の上に前記第2強誘電体膜がアモルファス状に形成され、
前記第2強誘電体膜がアモルファス状に形成された後に、アニールにより前記第2強誘電体膜が結晶化され、
前記第2強誘電体膜が結晶化された後に、前記第2強誘電体膜の上に前記第1強誘電体膜が形成され、
前記第1強誘電体膜が形成された後に、前記第1強誘電体膜の上に前記第2電極が形成される請求項8に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記強誘電体キャパシタを形成する工程において、
前記第1電極が前記トランジスタに接続され、
前記第1電極が形成された後に、前記第1電極の上に前記第1強誘電体膜が形成され、
前記第1強誘電体膜が形成された後に、前記第1強誘電体膜の上に前記第2強誘電体膜がアモルファス状に形成され、
前記第2強誘電体膜が形成された後に、前記第2強誘電体膜の上に前記第2電極が形成され、
前記第2電極が形成された後に、アニールにより前記第2強誘電体膜が結晶化される請求項8に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2強誘電体膜はスパッタ法により形成され、
前記第1強誘電体膜は有機金属化学気相成長法により形成される請求項8又は9に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体記憶装置及び半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置の一つとして、強誘電体キャパシタを備えた強誘電体メモリが知られている。強誘電体キャパシタの一例では、上部電極と下部電極との間に、添加物を含まないPZT膜と、La等の添加物を含むPZT系膜とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-335596号公報
【特許文献2】特開2007-103722号公報
【特許文献3】特表2008-522426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、強誘電体キャパシタに対して疲労特性及びインプリント特性の向上の要請が高まっている。
【0005】
本開示の目的は、疲労特性及びインプリント特性を向上することができる半導体記憶装置及び半導体記憶装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、トランジスタと、前記トランジスタに接続された強誘電体キャパシタと、を有し、前記強誘電体キャパシタは、一方が前記トランジスタに接続された第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたPZT系の第1強誘電体膜と、前記第1電極と前記第1強誘電体膜との間に設けられたPZT系の第2強誘電体膜と、を有し、前記第2強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第2強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い半導体記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、疲労特性及びインプリント特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図5】第2実施形態に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図7】第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図8】第3実施形態に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【
図9】第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図10】第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図13】第1試験における分極特性の測定結果を示す図である。
【
図14】ヒステリシスループの一例を示す図である。
【
図15】第1試験における疲労特性の測定結果を示す図である。
【
図16】第1試験におけるインプリント特性の測定結果を示す図である。
【
図17】第1試験におけるリーク電流の測定結果を示す図である。
【
図18】第2試験における分極特性の測定結果を示す図である。
【
図19】第2試験における疲労特性の測定結果を示す図である。
【
図20】第2試験におけるインプリント特性の測定結果を示す図である。
【
図21】第3試験における分極特性の測定結果を示す図(その1)である。
【
図22】第3試験における分極特性の測定結果を示す図(その2)である。
【
図23】第3試験におけるインプリント特性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は、強誘電体キャパシタを備えた半導体記憶装置、すなわち強誘電体メモリに関する。
図1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態に係る半導体記憶装置100は、トランジスタTr1と、トランジスタTr2と、強誘電体キャパシタCap1と、強誘電体キャパシタCap2とを有する。強誘電体キャパシタCap1はトランジスタTr1に接続されており、強誘電体キャパシタCap2はトランジスタTr2に接続されている。
【0012】
半導体記憶装置100は、半導体基板1と、p型のウェル2と、2つのn型のソース領域15と、n型のドレイン領域16とを有する。半導体基板1は、例えばシリコン(Si)基板である。ウェル2に素子分離絶縁膜3が形成されており、素子分離絶縁膜3により素子活性領域が画定されている。ソース領域15及びドレイン領域16は素子活性領域内に設けられている。ソース領域15及びドレイン領域16はウェル2の表層部に設けられており、ドレイン領域16は2つソース領域15の間に設けられている。一方のソース領域15がトランジスタTr1に含まれ、他方のソース領域15がトランジスタTr2に含まれ、ドレイン領域16はトランジスタTr1及びTr2に共有されている。ソース領域15の上面にシリサイド層17が形成され、ドレイン領域16の上面にシリサイド層18が形成されている。
【0013】
トランジスタTr1及びTr2は、いずれも、ゲート絶縁膜11と、ゲート電極12と、シリサイド層13と、サイドウォール絶縁膜14とを有する。ゲート絶縁膜11は、ソース領域15とドレイン領域16との間のチャネルの上に設けられ、ゲート電極12はゲート絶縁膜11の上に設けられ、シリサイド層13はゲート電極の上面に形成されている。サイドウォール絶縁膜14は、ゲート絶縁膜11、ゲート電極12及びシリサイド層13の積層体の側面を覆う。ゲート絶縁膜11及びサイドウォール絶縁膜14は酸化シリコン(SiO2)膜等の絶縁膜である。ゲート電極12は、例えば多結晶シリコン(ポリシリコン)膜である。
【0014】
半導体記憶装置100は、カバー膜21と、層間絶縁膜22と、エッチングストッパ膜23と、層間絶縁膜24と、酸化抑制膜25と、層間絶縁膜26とを有する。カバー膜21はトランジスタTr1及びTr2を覆う。カバー膜21は窒化シリコン(SiN)膜等の絶縁膜である。層間絶縁膜22はカバー膜21の上に設けられている。層間絶縁膜22はSiO2膜等の絶縁膜である。エッチングストッパ膜23は層間絶縁膜22の上に設けられている。エッチングストッパ膜23はSiN膜等の絶縁膜である。層間絶縁膜24はエッチングストッパ膜23の上に設けられている。層間絶縁膜24はSiO2膜等の絶縁膜である。酸化抑制膜25は層間絶縁膜24の上に設けられている。酸化抑制膜25はSiN膜等の絶縁膜である。層間絶縁膜26は酸化抑制膜25の上に設けられている。層間絶縁膜26はSiO2膜等の絶縁膜である。
【0015】
半導体記憶装置100は、2つの導電プラグ31と、導電プラグ32とを有する。一方の導電プラグ31は、層間絶縁膜22及びカバー膜21を貫通して、トランジスタTr1のシリサイド層17に接し、トランジスタTr1のソース領域15に電気的に接続されている。他方の導電プラグ31は、層間絶縁膜22及びカバー膜21を貫通して、トランジスタTr2のシリサイド層17に接し、トランジスタTr2のソース領域15に電気的に接続されている。導電プラグ32は、層間絶縁膜22及びカバー膜21を貫通して、シリサイド層18に接し、ドレイン領域16に電気的に接続されている。導電プラグ31及び32はタングステン(W)膜等の導電膜を有する。
【0016】
半導体記憶装置100は、配線33と、2つの導電プラグ34とを有する。配線33は、層間絶縁膜24及びエッチングストッパ膜23を貫通して、導電プラグ32に接し、ドレイン領域16に電気的に接続されている。配線33は酸化抑制膜25により覆われている。一方の導電プラグ34は、層間絶縁膜26、酸化抑制膜25、層間絶縁膜24及びエッチングストッパ膜23を貫通して、一方の導電プラグ31に接し、トランジスタTr1のソース領域15に電気的に接続されている。他方の導電プラグ34は、層間絶縁膜26、酸化抑制膜25、層間絶縁膜24及びエッチングストッパ膜23を貫通して、他方の導電プラグ31に接し、トランジスタTr2のソース領域15に電気的に接続されている。配線33及び導電プラグ34はW膜等の導電膜を有する。配線33はビット線として用いられる。
【0017】
強誘電体キャパシタCap1及びCap2は、いずれも、下部電極41と、強誘電体膜42と、強誘電体膜43と、上部電極45とを有する。
【0018】
強誘電体キャパシタCap1の下部電極41は一方の導電プラグ34に接し、トランジスタTr1のソース領域15に電気的に接続されている。強誘電体キャパシタCap2の下部電極41は一方の導電プラグ34に接し、トランジスタTr2のソース領域15に電気的に接続されている。下部電極41は、例えばイリジウム(Ir)膜を含む。下部電極41の厚さは、例えば50nm~200nm程度である。本実施形態において、下部電極41は第1電極の一例である。
【0019】
強誘電体膜42は下部電極41の上に設けられている。強誘電体膜42は下部電極41に直接接する。強誘電体膜42は、添加物を含むチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の強誘電体膜である。強誘電体膜42は、ランタン(La)、カルシウム(Ca)、イリジウム(Ir)若しくはルテニウム(Ru)又はこれらの任意の組み合わせと、ストロンチウム(Sr)とを添加物として含む。強誘電体膜42の厚さは、例えば0.5nm以上10nm以下である。本実施形態において、強誘電体膜42は第2強誘電体膜の一例である。
【0020】
例えば、強誘電体膜42は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせを合計で0.1mol%以上の濃度で含み、Srを0.5mol%以上5mol%以下の濃度で含む。例えば、強誘電体膜42におけるLaの濃度は5mol%以下であり、Caの濃度は8%以下であり、Irの濃度は1%以下であり、Ruの濃度は1%以下である。
【0021】
強誘電体膜43は強誘電体膜42の上に設けられている。強誘電体膜43は強誘電体膜42に直接接する。強誘電体膜43は、PZT系の強誘電体膜である。強誘電体膜43は添加物を含まない。強誘電体膜43の厚さは、例えば40nm以上70nm以下である。本実施形態において、強誘電体膜43は第1強誘電体膜の一例である。
【0022】
上部電極45は強誘電体膜43の上に設けられている。上部電極45は強誘電体膜43に直接接する。上部電極45は、例えばIr膜を含む。上部電極45の厚さは、例えば50nm~200nm程度である。本実施形態において、上部電極45は第2電極の一例である。
【0023】
次に、第1実施形態に係る半導体記憶装置100の製造方法について説明する。
図2~
図4は、第1実施形態に係る半導体記憶装置100の製造方法を示す断面図である。
【0024】
まず、
図2に示すように、半導体基板1に素子分離絶縁膜3と、トランジスタTr1及びTr2を形成する。次いで、カバー膜21及び層間絶縁膜22を形成し、導電プラグ31及び32を形成し、エッチングストッパ膜23及び層間絶縁膜24を形成し、配線33を形成し、酸化抑制膜25及び層間絶縁膜26を形成し、導電プラグ34を形成する。
【0025】
その後、
図3に示すように、層間絶縁膜26及び導電プラグ34の上に下部電極41Aを形成し、下部電極41Aの上に強誘電体膜42Aを形成し、強誘電体膜42Aの上に強誘電体膜43Aを形成し、強誘電体膜42Aの上に上部電極45Aを形成する。後に、下部電極41Aから下部電極41が形成され、強誘電体膜42Aから強誘電体膜42が形成され、強誘電体膜43Aから強誘電体膜43が形成され、上部電極45Aから上部電極45が形成される。例えば、下部電極41A、強誘電体膜42A及び上部電極45Aはスパッタ法により形成でき、強誘電体膜43Aは有機金属化学気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法により形成できる。スパッタ法により形成された強誘電体膜42Aはアモルファス状である。このため、強誘電体膜42Aの形成と強誘電体膜43Aの形成との間に、アニールを行って強誘電体膜42Aを結晶化させる。この熱処理としては、例えば不活性ガスと酸素(O
2)ガスとの混合ガス雰囲気中で、例えば400℃~800℃の温度での急速加熱処理(rapid thermal annealing:RTA)を行う。不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)ガス又は窒素(N
2)ガスを用いることができる。
【0026】
その後、上部電極45A、強誘電体膜43A、強誘電体膜42A及び下部電極41Aの積層体をエッチングする。この結果、
図4に示すように、上部電極45、強誘電体膜43、強誘電体膜42及び下部電極41を有する強誘電体キャパシタCap1及びCap2が形成される。続いて、強誘電体キャパシタCap1及びCap2を覆う保護膜48を形成する。
【0027】
次いで、層間絶縁膜27、導電プラグ35、配線50及び層間絶縁膜28を形成する(
図1参照)。
【0028】
このようにして、第1実施形態に係る半導体記憶装置100を製造することができる。
【0029】
第1実施形態に係る半導体記憶装置100では、強誘電体膜42が添加物を含むPZT系膜であるため、疲労特性及びインプリント特性を向上することができる。特にSrが疲労特性及びインプリント特性の向上に寄与する。但し、Srが含まれるだけでは、反転電荷量の低下を抑制しながら疲労特性及びインプリント特性を十分に向上することは困難である。半導体記憶装置100では、更に、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせが含まれるため、反転電荷量の低下を抑制しながら疲労特性及びインプリント特性を更に向上することができる。また、下部電極41と上部電極45との間の強誘電体膜が強誘電体膜42のみであると、反転電荷量が低下するおそれがあるが、半導体記憶装置100は、添加物を含まないPZT膜である強誘電体膜43を有するため、反転電荷量の低下を抑制できる。
【0030】
強誘電体膜42におけるSrの濃度は、好ましくは0.5mol%以上5%以下である。Srの濃度が0.5mol%より低い場合、十分な疲労特性及びインプリント特性が得られないおそれがあり、Srの濃度が5mol%より高い場合、反転電荷量が低下しやすくなるためである。強誘電体膜42におけるSrの濃度は、より好ましくは1mol%以上4mol%以下であり、更に好ましくは2mol%以上3mol%以下である。
【0031】
強誘電体膜42におけるLa、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせの濃度は、好ましくは合計で0.1mol%以上である。この濃度が0.1mol%より低い場合、十分な疲労特性及びインプリント特性が得られないおそれがあるためである。強誘電体膜42におけるLa、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせの濃度は、より好ましくは0.5mol%以上であり、更に好ましくは1mol%以上である。例えば、Laは疲労特性の向上及び反転電荷量の向上に寄与しやすく、Caは疲労特性及びインプリント特性の向上に寄与しやすく、Ir及びRuは反転電荷量の向上に寄与しやすい。強誘電体膜42がIr及びRuを含む場合、疲労特性及びインプリント特性を高くするためにSrの濃度が高めであっても、反転電荷量の低下を抑制できる。
【0032】
強誘電体膜43は若干の添加物を含むPZT系膜であってもよく、強誘電体膜43におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度が、強誘電体膜42におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低ければ、反転電荷量の低下を抑制する効果が得られる。
【0033】
強誘電体膜43におけるTi含有量に対するZr含有量の比と、強誘電体膜42におけるTi含有量に対するZr含有量の比とが相違していてもよい。例えば、強誘電体膜43におけるTi含有量に対するZr含有量の比(Zr/Ti比)が強誘電体膜42におけるZr/Ti比よりも大きくてもよい。一例として、mol比で、強誘電体膜43におけるZr/Ti比が45/55であり、強誘電体膜42におけるZr/Ti比が40/60であってもよい。一般に、Zr/Ti比が高いほど、印加電圧に対して分極量が急峻に立ち上がりやすく、インプリント特性を向上しやすく、リーク電流を低減しやすい。また、Zr/Ti比が低いほど、飽和反転電荷量を向上しやすい。強誘電体膜42と強誘電体膜43との間でZr/Ti比を異ならせることで、バランスよく、印加電圧に対して分極量を急峻に立ち上がりやすくし、インプリント特性を向上し、リーク電流を低減し、飽和反転電荷量を向上することができる。強誘電体膜43におけるZr/Ti比が、強誘電体膜42におけるZr/Ti比よりも小さくてもよい。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として、強誘電体キャパシタの構成の点で第1実施形態と相違する。
図5は、第2実施形態に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【0035】
図5に示すように、第2実施形態に係る半導体記憶装置200では、強誘電体キャパシタCap1及びCap2が、いずれも、下部電極41と、強誘電体膜43と、強誘電体膜44と、上部電極45とを有する。
【0036】
半導体記憶装置200では、強誘電体膜43が下部電極41の上に設けられている。強誘電体膜43は下部電極41に直接接する。
【0037】
強誘電体膜44は強誘電体膜43の上に設けられている。強誘電体膜44は強誘電体膜43に直接接する。強誘電体膜44は、添加物を含むPZT系の強誘電体膜である。強誘電体膜44は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含む。強誘電体膜44の厚さは、例えば0.5nm以上10nm以下である。
【0038】
例えば、強誘電体膜44は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせを合計で0.1mol%以上の濃度で含み、Srを0.5mol%以上5mol%以下の濃度で含む。例えば、強誘電体膜44におけるLaの濃度は5mol%以下であり、Caの濃度は8%以下であり、Irの濃度は1%以下であり、Ruの濃度は1%以下である。
【0039】
上部電極45が強誘電体膜44の上に設けられている。上部電極45は強誘電体膜44に直接接する。
【0040】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同様である。
【0041】
本実施形態において、下部電極41は第2電極の一例であり、強誘電体膜43は第1強誘電体膜の一例であり、強誘電体膜44は第2強誘電体膜の一例であり、上部電極45は第1電極の一例である。
【0042】
次に、第2実施形態に係る半導体記憶装置200の製造方法について説明する。
図6~
図7は、第2実施形態に係る半導体記憶装置200の製造方法を示す断面図である。
【0043】
まず、
図6に示すように、第1実施形態と同様に、半導体基板1に素子分離絶縁膜3と、トランジスタTr1及びTr2を形成する。次いで、カバー膜21及び層間絶縁膜22を形成し、導電プラグ31及び32を形成し、エッチングストッパ膜23及び層間絶縁膜24を形成し、配線33を形成し、酸化抑制膜25及び層間絶縁膜26を形成し、導電プラグ34を形成する。
【0044】
その後、同じく
図6に示すように、層間絶縁膜26及び導電プラグ34の上に下部電極41Aを形成し、下部電極41Aの上に強誘電体膜43Aを形成し、強誘電体膜43Aの上に強誘電体膜44Aを形成し、強誘電体膜44Aの上に上部電極45Aを形成する。後に、下部電極41Aから下部電極41が形成され、強誘電体膜43Aから強誘電体膜43が形成され、強誘電体膜44Aから強誘電体膜44が形成され、上部電極45Aから上部電極45が形成される。例えば、下部電極41A、強誘電体膜44A及び上部電極45Aはスパッタ法により形成でき、強誘電体膜43AはMOCVD法により形成できる。スパッタ法により形成された強誘電体膜44Aはアモルファス状である。このため、上部電極45Aの形成の後に、アニールを行って強誘電体膜44Aを結晶化させる。この熱処理としては、例えば不活性ガスとO
2ガスとの混合ガス雰囲気中で、例えば400℃~800℃の温度でのRTAを行う。不活性ガスとしては、Arガス又はN
2ガスを用いることができる。
【0045】
その後、上部電極45A、強誘電体膜44A、強誘電体膜43A及び下部電極41Aの積層体をエッチングする。この結果、
図7に示すように、上部電極45、強誘電体膜44、強誘電体膜43及び下部電極41を有する強誘電体キャパシタCap1及びCap2が形成される。続いて、強誘電体キャパシタCap1及びCap2を覆う保護膜48を形成する。
【0046】
次いで、層間絶縁膜27、導電プラグ35、配線50及び層間絶縁膜28を形成する(
図5参照)。
【0047】
このようにして、第2実施形態に係る半導体記憶装置200を製造することができる。
【0048】
第2実施形態に係る半導体記憶装置200では、強誘電体膜44が添加物を含むPZT系膜であるため、第1実施形態と同様に、疲労特性及びインプリント特性を向上することができる。また、下部電極41と上部電極45との間の強誘電体膜が強誘電体膜44のみであると、反転電荷量が低下するおそれがあるが、半導体記憶装置200は、添加物を含まないPZT膜である強誘電体膜43を有するため、反転電荷量の低下を抑制できる。
【0049】
更に、第2実施形態では、製造過程において、スパッタ法によりアモルファス状の強誘電体膜44Aを形成し、上部電極45Aの形成後にアニールを行って強誘電体膜44Aを結晶化させているため、上部電極45Aから強誘電体膜44Aへの元素の拡散を抑制しやすい。従って、リーク電流を低減することもできる。
【0050】
強誘電体膜43におけるZr/Ti比と、強誘電体膜44におけるZr/Ti比とが相違していてもよい。例えば、強誘電体膜43におけるZr/Ti比が強誘電体膜44におけるZr/Ti比よりも大きくてもよい。一例として、mol比で、強誘電体膜43におけるZr/Ti比が45/55であり、強誘電体膜44におけるZr/Ti比が40/60であってもよい。強誘電体膜44と強誘電体膜43との間でZr/Ti比を異ならせることで、バランスよく、電圧に対して分極量を急峻に立ち上がりやすくし、インプリント特性を向上し、リーク電流を低減し、飽和反転電荷量を向上することができる。強誘電体膜43におけるZr/Ti比が強誘電体膜44におけるZr/Ti比よりも小さくてもよい。
【0051】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として、強誘電体キャパシタの構成の点で第1実施形態と相違する。
図8は、第3実施形態に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【0052】
図8に示すように、第3実施形態に係る半導体記憶装置300では、強誘電体キャパシタCap1及びCap2が、いずれも、下部電極41と、強誘電体膜42と、強誘電体膜43と、強誘電体膜44と、上部電極45とを有する。
【0053】
半導体記憶装置300では、強誘電体膜42が下部電極41の上に設けられている。強誘電体膜42は下部電極41に直接接する。強誘電体膜43が強誘電体膜42の上に設けられている。強誘電体膜43は強誘電体膜42に直接接する。強誘電体膜44が強誘電体膜43の上に設けられている。強誘電体膜44は強誘電体膜43に直接接する。上部電極45が強誘電体膜44の上に設けられている。上部電極45は強誘電体膜44に直接接する。
【0054】
第3実施形態の他の構成は第1実施形態と同様である。すなわち、第3実施形態は、第1実施形態に第2実施形態を組み合わせた構成を有する。
【0055】
本実施形態において、下部電極41は第1電極又は第2電極の一方の一例であり、強誘電体膜42は第2強誘電体膜又は第3強誘電体膜の一方の一例であり、強誘電体膜43は第1強誘電体膜の一例であり、強誘電体膜44は第2強誘電体膜又は第3強誘電体膜の他方の一例であり、上部電極45は第1電極又は第2電極の他方の一例である。
【0056】
次に、第3実施形態に係る半導体記憶装置300の製造方法について説明する。
図9~
図10は、第3実施形態に係る半導体記憶装置300の製造方法を示す断面図である。
【0057】
まず、
図9に示すように、第1実施形態と同様に、半導体基板1に素子分離絶縁膜3と、トランジスタTr1及びTr2を形成する。次いで、カバー膜21及び層間絶縁膜22を形成し、導電プラグ31及び32を形成し、エッチングストッパ膜23及び層間絶縁膜24を形成し、配線33を形成し、酸化抑制膜25及び層間絶縁膜26を形成し、導電プラグ34を形成する。
【0058】
その後、同じく
図9に示すように、層間絶縁膜26及び導電プラグ34の上に下部電極41Aを形成し、下部電極41Aの上に強誘電体膜42Aを形成し、強誘電体膜42Aの上に強誘電体膜43Aを形成し、強誘電体膜43Aの上に強誘電体膜44Aを形成し、強誘電体膜44Aの上に上部電極45Aを形成する。後に、下部電極41Aから下部電極41が形成され、強誘電体膜42Aから強誘電体膜42が形成され、強誘電体膜43Aから強誘電体膜43が形成され、強誘電体膜44Aから強誘電体膜44が形成され、上部電極45Aから上部電極45が形成される。例えば、下部電極41A、強誘電体膜42A、強誘電体膜44A及び上部電極45Aはスパッタ法により形成でき、強誘電体膜43AはMOCVD法により形成できる。スパッタ法により形成された強誘電体膜42A及び強誘電体膜44Aはアモルファス状である。このため、強誘電体膜42Aの形成と強誘電体膜43Aの形成との間に、アニールを行って強誘電体膜42Aを結晶化させ、上部電極45Aの形成の後に、アニールを行って強誘電体膜44Aを結晶化させる。これらの熱処理としては、例えば不活性ガスとO
2ガスとの混合ガス雰囲気中で、例えば400℃~800℃の温度でのRTAを行う。不活性ガスとしては、Arガス又はN
2ガスを用いることができる。
【0059】
その後、上部電極45A、強誘電体膜44A、強誘電体膜43A、強誘電体膜42A及び下部電極41Aの積層体をエッチングする。この結果、
図10に示すように、上部電極45、強誘電体膜44、強誘電体膜43、強誘電体膜42及び下部電極41を有する強誘電体キャパシタCap1及びCap2が形成される。続いて、強誘電体キャパシタCap1及びCap2を覆う保護膜48を形成する。
【0060】
次いで、層間絶縁膜27、導電プラグ35、配線50及び層間絶縁膜28を形成する(
図8参照)。
【0061】
このようにして、第3実施形態に係る半導体記憶装置300を製造することができる。
【0062】
第3実施形態に係る半導体記憶装置300では、強誘電体膜42及び強誘電体膜44が添加物を含むPZT系膜であるため、第1実施形態と同様に、疲労特性及びインプリント特性を向上することができる。また、下部電極41と上部電極45との間の強誘電体膜が強誘電体膜42及び強誘電体膜44のみであると、反転電荷量が低下するおそれがあるが、半導体記憶装置300は、添加物を含まないPZT膜である強誘電体膜43を有するため、反転電荷量の低下を抑制できる。
【0063】
更に、第3実施形態によっても、第2実施形態と同様にリーク電流を低減することができる。
【0064】
次に、本願発明者が実際に行った試験の結果について説明する。
【0065】
(第1試験)
第1試験では、2種類の強誘電体キャパシタの試料(試料No.1及び試料No.2)を作製し、分極特性、インプリント特性、疲労特性及びリーク電流を測定した。
図11は、試料No.1の構成を示す断面図である。
図12は、試料No.2の構成を示す断面図である。
【0066】
図11に示すように、試料No.1は、下部電極61と、強誘電体膜63と、強誘電体膜64と、上部電極65とを有する。下部電極61はIr電極である。強誘電体膜63は添加物を含まないPZT膜であり、強誘電体膜63の厚さは65nmである。強誘電体膜64は添加物として、Srを2.5mol%、Laを2mol%、Caを5mol%含有するPZT系膜であり、強誘電体膜64の厚さは10nmである。上部電極65はIr電極である。試料No.1は、第2実施形態の強誘電体キャパシタCap1及びCap2に倣った試料である。試料No.1の作製にあたっては、強誘電体膜63をMOCVD法により形成し、下部電極61、強誘電体膜64及び上部電極65をスパッタ法により形成した。また、上部電極65の形成後に、強誘電体膜64を結晶化させるアニールを行った。
【0067】
図12に示すように、試料No.2は、下部電極61と、強誘電体膜66と、上部電極65とを有する。下部電極61はIr電極である。強誘電体膜66は添加物を含まないPZT膜であり、強誘電体膜66の厚さは75nmである。上部電極65はIr電極である。試料No.2の作製にあたっては、強誘電体膜66をMOCVD法により形成し、下部電極61及び上部電極65をスパッタ法により形成した。
【0068】
分極特性の測定では、試料No.1及び試料No.2において、印加電圧Vを変化させながら分極量Qを測定し、ヒステリシスループを取得した。この結果を
図13に示す。
図13において、横軸は印加電圧Vを示し、縦軸は分極量Qを示す。
図13に示すように、試料No.1においても試料No.2とで同等の分極特性が得られた。
【0069】
疲労特性の測定では、試料No.1及び試料No.2にストレスを印加しながらヒステリシスループを取得し、ヒステリシスループから反転電荷量Qswを算出した。反転電荷量Qswは、
図14に示すヒステリシスループから得られる値P、U、N及びDを用いて、下記の数式(1)により求めた値である。
図14において、Pはプラス方向に電圧を印加した際の強誘電体キャパシタの最大分極反転量の値であり、Uはプラス方向に電圧を印加した際の強誘電体キャパシタの分極非反転量の値である。また、Nはマイナス方向に電圧を印加した際の強誘電体キャパシタの最大分極反転量の値であり、Dはマイナス方向に電圧を印加した際の強誘電体キャパシタの分極非反転量の値である。
Qsw=((P-U)+(N-D))/2 ・・・(1)
【0070】
ストレスとしては、125℃の温度で4.5Vの電圧を20n秒間、10MHzの周波数で印加した。測定電圧は1.8Vとした。疲労特性の測定結果を
図15に示す。
図15において、横軸はストレスの印加の繰り返し数を示し、縦軸は最大値で規格化した反転電荷量Qswを示す。
図15に示すように、試料No.1では、試料No.2よりもストレスの印加の繰り返し数が多くなっても安定した反転電荷量Qswが得られた。
【0071】
インプリント特性の測定では、Q123テストを行った。
【0072】
ここで、Q123テストについて説明する。Q123テストでは、2T2C型のメモリのセルキャパシタとして強誘電体キャパシタを用いる。以下、隣接する二つのセルキャパシタをCap-A及びCap-Bと記載する。Q123テストに際しては、Cap-A及びCap-Bにおいて分極の向きが反対となるようにこれらのキャパシタにデータが書き込まれる。
【0073】
まず、Cap-A及びCap-Bにそれぞれ+1.8V、-1.8Vで「0」のデータを書き込んだ後、加速のためこれらのキャパシタを150℃でベークする。ベーク中は、Cap-A及びCap-Bに電圧を印加しない。そして、ベークしたまま種々の時間を経過した各時点でCap-A及びCap-Bの各々に+1.8Vのパルスを印加して読み出しを行う。このときのCap-A及びCap-Bの分極変化量の差をQ2とする。
【0074】
Q2の測定に続いて、Cap-A及びCap-Bの各々にベーク前とは逆向きのデータ「1」を書き込む。この例では、その書き込みのためにCap-Aに-1.8V、Cap-Bに+1.8Vのパルスを印加して30秒間放置する。
【0075】
インプリントが進行した状態ではこの間に分極が元の状態に戻ろうとして大きな減極が起こる。30秒放置後に再び+1.8Vのパルスを印加してデータ「1」の読み出しを行い、その読み出しにより測定されたCap-A及びCap-Bの分極の変化量の差をQ3とする。Q3は、インプリントが原因で減極した後に分極がどれだけ残るかを表し、Cap-A及びCap-Bからデータを読み出すことができるかどうかの指標となる。
【0076】
この結果を
図16に示す。
図16において、横軸は加熱時間を示し、縦軸はQ3の値を示す。
図16に示すように、試料No.1では、試料No.2よりもQ3の変化が小さく、良好なインプリント耐性が得られた。
【0077】
リーク電流の測定では、試料No.1及び試料No.2において、下部電極61と上部電極65との間に2Vの電圧を印加した。リーク電流の測定結果を
図17に示す。
図17において、横軸はリーク電流を示し、縦軸は累積確率を示す。
図17に示すように、試料No.1では、試料No.2よりもリーク電流が低く抑えられた。
【0078】
(第2試験)
第2試験では、2種類の強誘電体キャパシタの試料(試料No.3及び試料No.4)を作製し、分極特性、インプリント特性及び疲労特性及びリーク電流を測定した。試料No.3は、下部電極と上部電極との間に、厚さが75nmで、添加物としてSrを2.5mol%、Laを2mol%、Caを5mol%含有するPZT系膜のみを有する。試料No.4は、下部電極と上部電極との間に、厚さが75nmで、添加物としてLaを2mol%含有するPZT系膜のみを有する。
【0079】
分極特性の測定では、試料No.3及び試料No.4において、25℃で読み出し電圧を変化させながら反転電荷量Qswを測定した。この結果を
図18に示す。
図18において、横軸は読み出し電圧を示し、縦軸は反転電荷量Qswを示す。そして、反転電荷量Qswが飽和反転電荷量の50%になる読み出し電圧V50を試料No.3及び試料No.4について特定した。試料No.4において読み出し電圧V50は約0.7Vであるのに対し、試料No.3における読み出し電圧V50は約0.5Vであった。すなわち、試料No.3において試料No.4よりも印加電圧Vに対して反転電荷量Qswが急峻に立ち上がりやすかった。このことは、試料No.3が試料No.4よりも低電圧動作に好適であることを示す。
【0080】
疲労特性の測定では、試料No.3及び試料No.4にストレスを印加しながらヒステリシスループを取得し、ヒステリシスループから反転電荷量Qswを算出した。ストレスとしては、85℃の温度で7Vの電圧を10MHzの周波数で印加した。測定電圧は1.8Vとした。疲労特性の測定結果を
図19に示す。
図19において、横軸はストレスの印加の繰り返し数を示し、縦軸は反転電荷量Qswを示す。
図19に示すように、試料No.3では、試料No.4よりもストレスの印加の繰り返し数が多くなっても安定した反転電荷量Qswが得られた。このことは、試料No.3が試料No.4よりも反転電荷量Qswの向上に好適であることを示す。
【0081】
インプリント特性の測定では、第1試験と同じくQ123テストを行った。この結果を
図20に示す。
図20において、横軸は加熱時間を示し、縦軸はQ3の値を示す。
図20に示すように、試料No.3では、試料No.4よりもQ3の変化が小さかった。すなわち、
図20のグラフの傾きであるQ3レートは、試料No.3で-5.9であり、試料No.4で-12.0であった。このことは、試料No.3のインプリント耐性が試料No.4のインプリント耐性よりも高いことを示す。
【0082】
(第3試験)
第3試験では、3種類の強誘電体キャパシタの試料(試料No.5、試料No.6及び試料No.7)を作製し、分極特性及びインプリント特性を測定した。試料No.5は、下部電極と上部電極との間に、厚さが85nmで、添加物を含まず、Zr/Ti比が45/55のPZT膜のみを有する。試料No.6は、下部電極と上部電極との間に、厚さが85nmで、添加物を含まず、Zr/Ti比が40/60のPZT膜のみを有する。試料No.7は、下部電極と上部電極との間に、厚さが85nmで、添加物を含まず、Zr/Ti比が35/65のPZT膜のみを有する。
【0083】
分極特性の測定では、試料No.5、試料No.6及び試料No.7において、印加電圧Vを変化させながら分極量Qを測定し、ヒステリシスループを取得した。この結果を
図21に示す。
図21において、横軸は印加電圧Vを示し、縦軸は分極量Qを示す。また、
図22に、印加電圧Vと分極量Q1との関係を示す。
図22において、横軸は印加電圧Vを示し、縦軸は分極量Q1を示す。分極量Q1は
図14における「P-U」に相当する値である。そして、反転電荷量Qswが飽和反転電荷量の50%になる読み出し電圧V50を比較した。この結果、試料No.5の読み出し電圧V50は試料No.6の読み出し電圧V50よりも低く、試料No.6の読み出し電圧V50は試料No.7の読み出し電圧V50よりも低かった。すなわち、試料No.6において試料No.7よりも印加電圧Vに対して分極量Q1が急峻に立ち上がりやすく、試料No.5において試料No.6よりも印加電圧Vに対して分極量Q1が急峻に立ち上がりやすかった。このことは、試料No.6が試料No.7よりも低電圧動作に好適であり、試料No.5が試料No.6よりも低電圧動作に好適であることを示す。
【0084】
インプリント特性の測定では、150℃での加熱を行い、種々の加熱時間においてプラス側の抗電圧及びマイナス側の抗電圧の変化量の平均値(シフト量Vshift)を測定した。この結果を
図23に示す。
図23において、横軸は加熱時間を示し、縦軸はシフト量Vshiftを示す。
図23に示すように、試料No.6では、試料No.7よりもシフト量Vshiftが小さく、試料No.5では、試料No.6よりもシフト量Vshiftが小さかった。このことは、試料No.6のインプリント耐性が試料No.7のインプリント耐性よりも高く、試料No.5のインプリント耐性が試料No.6のインプリント耐性よりも高いことを示す。
【0085】
半導体記憶装置は、例えば不揮発性メモリとして使用することができる。
【0086】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0087】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0088】
(付記1)
トランジスタと、
前記トランジスタに接続された強誘電体キャパシタと、
を有し、
前記強誘電体キャパシタは、
一方が前記トランジスタに接続された第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたPZT系の第1強誘電体膜と、
前記第1電極と前記第1強誘電体膜との間に設けられたPZT系の第2強誘電体膜と、
を有し、
前記第2強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第2強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い半導体記憶装置。
(付記2)
前記第2強誘電体膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下である付記1に記載の半導体記憶装置。
(付記3)
前記第1強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比は、前記第2強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比よりも大きい付記1又は2に記載の半導体記憶装置。
(付記4)
前記第1強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比と、前記第2強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比とが相違する付記1又は2に記載の半導体記憶装置。
(付記5)
前記第2電極と前記第1強誘電体膜との間に設けられたPZT系の第3強誘電体膜を有し、
前記第3強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第3強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
(付記6)
前記第3強誘電体膜の厚さは、0.5nm以上10nm以下である付記5に記載の半導体記憶装置。
(付記7)
前記第1強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比は、前記第2強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比よりも大きい付記5又は6に記載の半導体記憶装置。
(付記8)
前記第1強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比と、前記第2強誘電体膜におけるTi含有量に対するZr含有量の比とが相違する付記5又は6に記載の半導体記憶装置。
(付記9)
前記第1強誘電体膜は、La、Ca、Ir、Ru及びSrを含まない付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
(付記10)
トランジスタを形成する工程と、
前記トランジスタに接続される強誘電体キャパシタを形成する工程と、
を有し、
前記強誘電体キャパシタを形成する工程は、
一方が前記トランジスタに接続される第1電極及び第2電極を形成する工程と、
前記第1電極と前記第2電極との間にPZT系の第1強誘電体膜を形成する工程と、
前記第1電極と前記第1強誘電体膜との間にPZT系の第2強誘電体膜を形成する工程と、
を有し、
前記第2強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第2強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い半導体記憶装置の製造方法。
(付記11)
前記強誘電体キャパシタを形成する工程において、
前記第1電極が前記トランジスタに接続され、
前記第1電極が形成された後に、前記第1電極の上に前記第2強誘電体膜がアモルファス状に形成され、
前記第2強誘電体膜がアモルファス状に形成された後に、アニールにより前記第2強誘電体膜が結晶化され、
前記第2強誘電体膜が結晶化された後に、前記第2強誘電体膜の上に前記第1強誘電体膜が形成され、
前記第1強誘電体膜が形成された後に、前記第1強誘電体膜の上に前記第2電極が形成される付記10に記載の半導体記憶装置の製造方法。
(付記12)
前記強誘電体キャパシタを形成する工程において、
前記第1電極が前記トランジスタに接続され、
前記第1電極が形成された後に、前記第1電極の上に前記第1強誘電体膜が形成され、
前記第1強誘電体膜が形成された後に、前記第1強誘電体膜の上に前記第2強誘電体膜がアモルファス状に形成され、
前記第2強誘電体膜が形成された後に、前記第2強誘電体膜の上に前記第2電極が形成され、
前記第2電極が形成された後に、アニールにより前記第2強誘電体膜が結晶化される付記10に記載の半導体記憶装置の製造方法。
(付記13)
前記強誘電体キャパシタを形成する工程は、前記第2電極と前記第1強誘電体膜との間にPZT系の第3強誘電体膜を形成する工程を有し、
前記第3強誘電体膜は、La、Ca、Ir若しくはRu又はこれらの任意の組み合わせと、Srとを添加物として含み、
前記第1強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度は、前記第3強誘電体膜におけるLa、Ca、Ir、Ru及びSrの各々の濃度よりも低い付記10に記載の半導体記憶装置の製造方法。
(付記14)
前記強誘電体キャパシタを形成する工程において、
前記第1電極が前記トランジスタに接続され、
前記第1電極が形成された後に、前記第1電極の上に前記第2強誘電体膜が形成され、
前記第2強誘電体膜が形成された後に、前記第2強誘電体膜の上に前記第1強誘電体膜が形成され、
前記第1強誘電体膜が形成された後に、前記第1強誘電体膜の上に前記第3強誘電体膜がアモルファス状に形成され、
前記第3強誘電体膜が形成された後に、前記第3強誘電体膜の上に前記第2電極が形成され、
前記第2電極が形成された後に、アニールにより前記第3強誘電体膜が結晶化される付記13に記載の半導体記憶装置の製造方法。
(付記15)
前記第3強誘電体膜はスパッタ法により形成される付記13又は14に記載の半導体記憶装置の製造方法。
(付記16)
前記第2強誘電体膜はスパッタ法により形成され、
前記第1強誘電体膜は有機金属化学気相成長法により形成される付記10乃至15のいずれか1項に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【符号の説明】
【0089】
1:半導体基板
41、41A、61:下部電極
42、42A、43、43A、44、44A、63、64:強誘電体膜
45、45A、65:上部電極
100、200、300:半導体記憶装置