(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176213
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】樹脂製品及び樹脂部品の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20241212BHJP
B29C 45/44 20060101ALI20241212BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241212BHJP
F02M 35/104 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/44
B29C45/17
F02M35/104 N
F02M35/104 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094593
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嶺介
(72)【発明者】
【氏名】吉本 智栄
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AF01
4F202AG24
4F202AG28
4F202AH16
4F202AM35
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK32
4F202CK42
4F206AF01
4F206AG24
4F206AG28
4F206AH16
4F206AM35
4F206AR12
4F206JA07
4F206JL02
4F206JN41
4F206JQ81
4F206JW50
(57)【要約】
【課題】第1部品の離型性を高めることができるとともに、第1部品と第2部品との接合強度を高めることができる。また、第1部品に要する樹脂量を低減できる。
【解決手段】樹脂製品は、樹脂製の第1部品10と、樹脂製の第2部品20とを備える。第1部品10は、第1接合面13を有する。第2部品20は、第1接合面13に接合された第2接合面21を有する。第1部品10は、対向方向Zにおいて第1接合面13とは反対側に位置し、第1部品10と第2部品20とを接合する際に第1部品10を拘束する治具が当接する当接面14を有する。当接面14は、一般部と、一般部よりも対向方向Zに突出する突出部16とを有する。第1部品10のうち突出部16が設けられている部分における第1接合面13と当接面14との間に位置する外側面17には、当該外側面17に開口する凹部18が設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の第1部品と、
樹脂製の第2部品と、を備え、
前記第1部品は、第1接合面を有し、
前記第2部品は、前記第1接合面に接合された第2接合面を有し、
前記第1接合面と前記第2接合面とが対向する方向を対向方向とするとき、
前記第1部品は、前記対向方向において前記第1接合面とは反対側に位置し、前記第1部品と前記第2部品とを接合する際に前記第1部品を拘束する治具が当接する当接面を有し、
前記当接面は、一般部と、前記一般部よりも前記対向方向に突出する突出部と、を有し、
前記第1部品のうち前記突出部が設けられている部分における前記第1接合面と前記当接面との間に位置する外側面には、当該外側面に開口する凹部が設けられている、
樹脂製品。
【請求項2】
前記第1部品は、前記対向方向に対して直交する長さ方向に長い長尺状をなし、
前記凹部は、前記長さ方向に延在する前記外側面に設けられている、
請求項1に記載の樹脂製品。
【請求項3】
前記凹部は、前記対向方向及び前記長さ方向の双方に直交する幅方向の両側に位置する前記外側面にそれぞれ設けられている、
請求項2に記載の樹脂製品。
【請求項4】
前記第1部品の外面には、突部が設けられており、
前記突部は、筒状のボスを含み、
前記凹部は、前記対向方向及び前記長さ方向の双方に直交する幅方向において前記ボスと重なる位置に設けられている、
請求項2に記載の樹脂製品。
【請求項5】
前記凹部の内面は、前記対向方向において前記第2部品側に位置し、前記対向方向及び前記長さ方向の双方に直交する幅方向及び前記長さ方向の双方に沿って延在する平面状の係止面を有する、
請求項2に記載の樹脂製品。
【請求項6】
前記第1部品及び前記第2部品は、それぞれ内燃機関の吸気マニホールドを構成する分岐管の半割体である、
請求項2に記載の樹脂製品。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の樹脂製品を構成する前記第1部品を成形する方法であって、
前記第1部品の内面を成形する第1成形面を有する固定型と、
前記固定型に対して前記対向方向に沿って進退可能に設けられ、前記第1部品の外面のうち前記凹部を含まない部分を成形する第2成形面を有する可動型と、
前記固定型及び前記可動型に対してスライド移動可能に設けられ、前記第1部品の外面のうち前記凹部を含む部分を成形する第3成形面を有するスライド型と、を備える成形型を用いて前記第1成形面、前記第2成形面、及び前記第3成形面により形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記固定型及び前記スライド型に対して前記可動型を退避させる可動型退避工程と、
前記可動型退避工程の後に、前記固定型に対して前記スライド型を退避させるスライド型退避工程と、を備える、
樹脂部品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品及び樹脂部品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の第1部品と、樹脂製の第2部品とを備え、互いに接合された樹脂製品がある。
こうした樹脂製品としては、例えば特許文献1に開示の内燃機関の吸気マニホールドがある。特許文献1に開示の吸気マニホールドは、サージタンクと、サージタンクから延びる4つの分岐管とを備える。吸気マニホールドは、サージタンクの上側部分及び4つの分岐管の上側部分を有する第1部品と、サージタンクの下側部分及び4つの分岐管の下側部分を有する第2部品とを備える。第1部品は、第1接合面を有する。第2部品は、第1接合面に接合された第2接合面を有する。第1部品及び第2部品は、射出成形により形成される。第1部品は、第1部品と第2部品との対向方向において第1接合面とは反対側に位置し、第1部品と第2部品とを振動溶着法により接合する際に第1部品を拘束する治具が当接する当接面をする。
【0003】
また従来、第1部品の外面に、筒状のボスやリブなどの突部を有する吸気マニホールドがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1部品を射出成形する際には、第1部品の内面を成形する成形面を有する固定型と、固定型に対して進退可能に設けられ、第1部品の外面を成形する成形面を有する可動型とを備える成形型を用いてキャビティに溶融樹脂が射出される。第1部品の外面にボスやリブなどの突部が設けられていたり、外面の形状が複雑であったりする場合には、型開きを行う際に、固定型から退避する可動型に第1部品が抱きつくことで可動型からの第1部品の離型性が悪くなりやすい。その結果、可動型から第1部品を取り外しにくくなる。この場合、可動型から第1部品を無理に取り外そうとすると、第1部品が傷付くおそれがある。また、第1部品の離型性を高めるために離型剤を塗布する場合には、コストが増大することとなる。
【0006】
さらに、樹脂製品においては、第1部品と第2部品との接合強度を高めること、また樹脂量を低減することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための樹脂製品は、樹脂製の第1部品と、樹脂製の第2部品と、を備え、前記第1部品は、第1接合面を有し、前記第2部品は、前記第1接合面に接合された第2接合面を有し、前記第1接合面と前記第2接合面とが対向する方向を対向方向とするとき、前記第1部品は、前記対向方向において前記第1接合面とは反対側に位置し、前記第1部品と前記第2部品とを接合する際に前記第1部品を拘束する治具が当接する当接面を有し、前記当接面は、一般部と、前記一般部よりも前記対向方向に突出する突出部と、を有し、前記第1部品のうち前記突出部が設けられている部分における前記第1接合面と前記当接面との間に位置する外側面には、当該外側面に開口する凹部が設けられている。
【0008】
同構成によれば、第1部品の外側面には、当該外側面に開口する凹部が設けられている。このため、固定型及び可動型に対してスライド移動可能に設けられ、第1部品の外面のうち上記凹部を含む部分をスライド型の成形面によって成形するとともに、以下の手順で型開きを行うことで、上述した不都合の発生を抑制できる。すなわち、固定型及びスライド型に対して可動型を退避させた後に、固定型に対してスライド型を退避させる。可動型を退避させる際には、スライド型の成形面の凸部が第1部品の凹部に係止されるので、可動型に第1部品が抱きつくことで可動型から第1部品を取り外すことができなくなることを抑制できる。
【0009】
ところで、振動溶着法によって第1部品と第2部品とを接合する際に、第1部品に対して治具が滑ると、治具によって第1部品を効率よく振動させることが難しい。その結果、接合面同士の間に発生する摩擦熱が少なくなることで第1部品と第2部品との接合強度が不足しやすい。こうした問題は、特に、第1部品の当接面が、湾曲面や傾斜面などを多く含む場合に顕著となる。
【0010】
この点、上記構成によれば、振動溶着法によって第1部品と第2部品とを接合する際に、第1部品の当接面に治具を当接させることで第1部品が治具により拘束される。ここで、当接面には一般部よりも上記対向方向に突出する突出部が設けられているので、治具を突出部に係合させるようにすることで、治具を振動させる際に、第1部品に対して治具が滑ることを抑制できる。これにより、第1部品を効率良く振動させることができるので、接合面同士の間に、より多くの摩擦熱を発生させることができる。したがって、第1部品と第2部品との接合強度を高めることができる。
【0011】
更に、上記構成によれば、第1部品のうち突出部が設けられている部分の第1接合面と当接面との間に位置する外側面に、上記凹部が設けられている。凹部が設けられる外側面は、第1接合面と当接面との間の間隔が他の部分に比べて大きい。このため、凹部を設けることに伴う第1部品の強度低下が他の部分に比べて小さくなる。また、こうした強度低下を抑制するために樹脂量を増やす必要がないため、第1部品に要する樹脂量を低減できる。
【0012】
また、上記課題を解決するための樹脂部品の成形方法は、前記樹脂製品を構成する前記第1部品を成形する方法であって、前記第1部品の内面を成形する第1成形面を有する固定型と、前記固定型に対して前記対向方向に沿って進退可能に設けられ、前記第1部品の外面のうち前記凹部を含まない部分を成形する第2成形面を有する可動型と、前記固定型及び前記可動型に対してスライド移動可能に設けられ、前記第1部品の外面のうち前記凹部を含む部分を成形する第3成形面を有するスライド型と、を備える成形型を用いて前記第1成形面、前記第2成形面、及び前記第3成形面により形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出工程と、前記固定型及び前記スライド型に対して前記可動型を退避させる可動型退避工程と、前記可動型退避工程の後に、前記固定型に対して前記スライド型を退避させるスライド型退避工程と、を備える。
【0013】
同方法によれば、固定型及びスライド型に対して可動型が退避された後に、固定型に対してスライド型が退避される。可動型を退避させる際には、スライド型の成形面の凸部が第1部品の凹部に係止されているので、可動型に第1部品が抱きつくことで可動型から第1部品を取り出しにくくなることを抑制できる。
【0014】
更に、上記方法によれば、第1部品のうち突出部が設けられている部分の第1接合面と当接面との間に位置する外側面に、上記凹部が設けられている。凹部が設けられる外側面は、第1接合面と当接面との間の間隔が他の部分に比べて大きい。このため、凹部を設けることに伴う第1部品の強度低下を抑制できる。また、こうした強度低下を抑制するために樹脂量を増やす必要がないため、第1部品に要する樹脂量を低減できる。
【0015】
以上のことから、上記構成及び上記方法によれば、第1部品の離型性を高めることができるとともに、第1部品と第2部品との接合強度を高めることができる。また、第1部品に要する樹脂量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る吸気マニホールドの正面図である。
【
図3】
図3は、
図1の吸気マニホールドを構成する第1部品の平面図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は、一実施形態に係る第1部品の成形方法を示す断面図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る第1部品の要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図9を参照して、樹脂製品及び樹脂部品の成形方法の一実施形態について説明する。本実施形態では、樹脂製品を内燃機関の吸気マニホールドとして具体化している。また、樹脂部品を、吸気マニホールドを構成する第1部品10として具体化している。
【0018】
図1及び
図2に示すように、吸気マニホールドは、内燃機関の吸気通路に設けられるものである。
吸気マニホールドは、サージタンク100と、サージタンク100からそれぞれ分岐して延在する第1分岐管101、第2分岐管102、第3分岐管103、及び第4分岐管104を有する。
【0019】
第1分岐管101及び第3分岐管103は、サージタンク100から
図1の左側に延在するとともに屈曲して
図1の下側に延在している。第3分岐管103は、第1分岐管101よりも
図1の下側に位置する。
【0020】
第2分岐管102及び第4分岐管104は、サージタンク100から
図1の右側に延在するとともに屈曲して
図1の下側に延在している。第4分岐管104は、第2分岐管102よりも
図1の下側に位置する。
【0021】
分岐管101~104の下流側の端部には、図示しない内燃機関の吸気ポートがそれぞれ接続される。
第1分岐管101は、いずれも樹脂製の第1部品10A及び第2部品20により構成される。第1部品10A及び第2部品20は、第1分岐管101の半割体である(
図6及び
図7参照)。
【0022】
第2分岐管102は、いずれも樹脂製の第1部品10B及び第2部品20により構成される。第1部品10B及び第2部品20は、第2分岐管102の半割体である。
第3分岐管103及び第4分岐管104は、いずれも第2部品20及び第3部品30により構成される。第2部品20は、第2分岐管102の半割体と第3部品30の半割体とが一体になった形状を有する。
【0023】
吸気マニホールドは、
図1の左右方向において基本的に対称な形状を有する。このため、以降においては、
図1の左側の構成について説明することで右側の構成についての説明を省略する。また、第1部品10Aを単に第1部品10として説明する。
【0024】
<第1部品10,第2部品20>
図5に示すように、第1部品10は、環状の第1接合面13を有する。
図2に示すように、第2部品20は、第1接合面13に接合された環状の第2接合面21を有する。
【0025】
以降において、第1接合面13と第2接合面21とが対向する方向を対向方向Zとする。
図1~
図5に示すように、第1部品10は、対向方向Zに対して直交する長さ方向Xに長い長尺状をなしている。
【0026】
第1部品10の外面11には、突部12が設けられている。突部12は、ボス12aとリブ12b,12cとを含む。
ボス12aは、筒状であり、対向方向Zに沿って突出している。本実施形態では、複数のボス12aが長さ方向Xにおいて互いに間隔をあけて設けられている。
【0027】
リブ12b,12cは、対向方向Zに沿って突出している。本実施形態では、複数のリブ12bが、対向方向Z及び長さ方向Xの双方に直交する幅方向Yに沿って延在するとともに、長さ方向Xにおいて互いに間隔をあけて設けられている(
図3参照)。また、複数のリブ12cが、長さ方向Xに延在するとともに、幅方向Yにおいて互いに間隔をあけて設けられている。
【0028】
図3、
図4、
図6、及び
図7に示すように、第1部品10は、対向方向Zにおいて第1接合面13とは反対側に位置する当接面14を有する。当接面14は、第1接合面13に沿って略環状に延在している。当接面14は、第1部品10と第2部品20とを振動溶着法にて接合する際に第1部品10を拘束する治具90が当接される面である。当接面14は、一般部15と、一般部15よりも対向方向Zに突出する突出部16とを有する。突出部16は、突出部16と隣り合う一般部15よりも対向方向Zに突出している。
【0029】
突出部16は、幅方向Yの両側にそれぞれ位置している。本実施形態では、2つの突出部16が長さ方向Xにおける同一の位置に設けられている。詳しくは、2つの突出部16は、幅方向Yにおいて1つのボス12aと重なる位置に設けられている。本実施形態では、2つの突出部16が、
図3における一番右側に位置するボス12aと幅方向Yにおいて重なる位置に設けられている。
【0030】
図10及び
図11に拡大して示すように、突出部16は、突出部16と隣り合う一般部15の延在方向、すなわち長さ方向Xに延在している。詳しくは、突出部16は、長さ方向X及び幅方向Yの双方に沿う平面状の突端面16aと、長さ方向Xにおける突端面16aの両端と、突出部16と隣り合う一般部15との間に位置する一対の側面16bとを有する。側面16b全体が、突端面16aから一般部15にかけて円弧状に湾曲している。
【0031】
図3、
図4、
図6、及び
図7に示すように、第1部品10のうち突出部16が設けられている部分における第1接合面13と当接面14との間に位置する外側面17には、当該外側面17に開口する凹部18が設けられている。すなわち、凹部18は、長さ方向Xに延在する外側面17に設けられている。凹部18は、幅方向Yの両側に位置する外側面17にそれぞれ設けられている。凹部18は、幅方向Yにおいてボス12aと重なる位置に設けられている。本実施形態では、2つの凹部18が、
図3における一番右側に位置するボス12aと幅方向Yにおいて重なる位置に設けられている。
【0032】
図9、
図10、及び
図11に拡大して示すように、凹部18は、突出部16の延在方向、すなわち長さ方向Xに延在している。
詳しくは、凹部18における幅方向Yに直交する断面形状は、長さ方向Xに長い略長方形状である。長さ方向Xにおける凹部18の長さは、長さ方向Xにおける突出部16の長さよりも小さい。凹部18全体が、長さ方向Xにおける突出部16の両端の間に位置している。
【0033】
図6及び
図9に示すように、凹部18の内面は、対向方向Zにおいて第2部品20側に位置し、幅方向Y及び長さ方向Xの双方に沿って延在する平面状の係止面18aを有する。凹部18の内面は、係止面18aと対向する対向面18bを有する。対向面18bは、対向方向Zにおいて突出部16の突端面16aと、突出部16と隣り合う一般部15との間に位置している(
図9参照)。
【0034】
図6及び
図7に示すように、第2部品20は、第3部品30の接合面31に接合される接合面22を有する。接合面22は、対向方向Zにおいて第2接合面21とは反対側に設けられている。
【0035】
<第3部品30>
図2に示すように、第3部品30は、環状の接合面31を有する。
<第1部品10の成形方法>
次に、
図8を参照して、第1部品10を成形する成形型50及び成形型50を用いた第1部品10の成形方法について説明する。
【0036】
<成形型50>
図8(a)に示すように、成形型50は、固定型60と、固定型60に対して対向方向Zに沿って進退可能に設けられた可動型70と、固定型60及び可動型70に対してスライド移動可能に設けられたスライド型80とを備える。
【0037】
固定型60は、第1部品10の内面19を成形する第1成形面61を有する。
可動型70は、第1部品10の外面11のうち突部12を含むとともに凹部18を含まない部分を成形する第2成形面71を有する。
【0038】
スライド型80は、幅方向Yに沿ってスライド移動可能に設けられている。スライド型80は、第1部品10の外面11のうち凹部18を含むとともに突部12を含まない部分を成形する第3成形面81を有する。第3成形面81は、凹部18を成形する凸部82を有する。凸部82は、凹部18の係止面18aを成形する平面部分82aを有する(
図8(b)参照)。
【0039】
第1部品10の成形に際しては、まず、型閉じされた成形型50の第1成形面61、第2成形面71、及び第3成形面81により形成されるキャビティ51に対して射出装置からランナ(いずれも図示略)を通じて溶融樹脂を射出する(以上、射出工程)。
【0040】
続いて、
図8(b)に示すように、固定型60及びスライド型80に対して可動型70を退避させる(以上、可動型退避工程)。
図8(c)に示すように、可動型退避工程の後に、固定型60に対してスライド型80を退避させる(以上、スライド型退避工程)。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
固定型60及びスライド型80に対して可動型70を退避させた後に、固定型60に対してスライド型80を退避させる。可動型70を退避させる際には、スライド型80の第3成形面81の凸部82が第1部品10の凹部18に係止されるので、可動型70に突部12が抱きつくことで可動型70から第1部品10を取り外すことができなくなることを抑制できる。
【0042】
ところで、振動溶着法によって第1部品10と第2部品20とを接合する際に、第1部品10に対して治具90が滑ると、治具90によって第1部品10を効率よく振動させることが難しい。その結果、接合面13,21同士の間に発生する摩擦熱が少なくなることで第1部品10と第2部品20との接合強度が不足しやすい。こうした問題は、特に、第1部品10の当接面14が、
図9に示すように、湾曲面や傾斜面などを多く含む場合に顕著となる。
【0043】
この点、上記構成によれば、振動溶着法によって第1部品10と第2部品20とを接合する際に、第1部品10の当接面14に治具90を当接させることで第1部品10が治具90により拘束される。ここで、当接面14には一般部15よりも対向方向Zに突出する突出部16が設けられているので、治具90を突出部16に係合させるようにすることで、治具90を振動させる際に、第1部品10に対して治具90が滑ることを抑制できる。これにより、第1部品10を効率良く振動させることができるので、接合面13,21同士の間に、より多くの摩擦熱を発生させることができる。したがって、第1部品10と第2部品20との接合強度を高めることができる。
【0044】
更に、上記構成によれば、第1部品10のうち突出部16が設けられている部分の第1接合面13と当接面14との間に位置する外側面17に、上記凹部18が設けられている。凹部18が設けられる外側面17は、第1接合面13と当接面14との間の間隔が他の部分に比べて大きい。このため、凹部18を設けることに伴う第1部品10の強度低下を抑制できる。また、こうした強度低下を抑制するために樹脂量を増やす必要がないため、第1部品10に要する樹脂量を低減できる。
【0045】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)樹脂製品は、樹脂製の第1部品10と、樹脂製の第2部品20とを備える。第1部品10は、対向方向Zにおいて第1接合面13とは反対側に位置し、第1部品10と第2部品20とを接合する際に第1部品10を拘束する治具90が当接する当接面14を有する。当接面14は、一般部15と、一般部15よりも対向方向Zに突出する突出部16とを有する。第1部品10のうち突出部16が設けられている部分における第1接合面13と当接面14との間に位置する外側面17には、当該外側面17に開口する凹部18が設けられている。
【0046】
こうした構成によれば、上述した作用を奏するので、第1部品10の離型性を高めることができるとともに、第1部品10と第2部品20との接合強度を高めることができる。また、第1部品10に要する樹脂量を低減できる。
【0047】
(2)第1部品10は、長さ方向Xに長い長尺状をなす。凹部18は、長さ方向Xに延在する外側面17に設けられている。
こうした構成によれば、長さ方向Xに延在する外側面17に突部12が形成されるので、突部12から近い位置に凹部18を設けることができる。したがって、可動型70に突部12が抱きつくことで可動型70から第1部品10を取り外しにくくなることを効果的に抑制できる。
【0048】
(3)凹部18は、対向方向Z及び長さ方向Xの双方に直交する幅方向Yの両側に位置する外側面17にそれぞれ設けられている。
こうした構成によれば、可動型70を退避させる際に、2つのスライド型80の第3成形面81の凸部82が第1部品10の2つの凹部18にそれぞれ係止される。このため、可動型70に突部12が抱きつくことで可動型70から第1部品10を取り外しにくくなることを効果的に抑制できる。
【0049】
(4)突部12は、筒状のボス12aを含む。凹部18は、対向方向Z及び長さ方向Xの双方に直交する幅方向Yにおいてボス12aと重なる位置に設けられている。
こうした構成によれば、幅方向Yにおいてボス12aと重なる位置、すなわち型開きを行う際に、固定型60から退避する可動型70に抱きつきやすいボス12aの近くに凹部18が設けられている。このため、可動型70にボス12aが抱きつくことで可動型70から第1部品10を取り外しにくくなることを効果的に抑制できる。
【0050】
(5)凹部18の内面は、対向方向Zにおいて第2部品20側に位置し、幅方向Y及び長さ方向Xの双方に沿って延在する平面状の係止面18aを有する。
こうした構成によれば、可動型70を退避させる際に、平面状の係止面18aに対してスライド型80の第3成形面81の凸部82の平面部分82aが接触するようになる。これにより、可動型70を退避させる際に、凸部82の平面部分82aが凹部18の係止面18aに的確に係止されるので、可動型70に突部12が抱きつくことで可動型70から第1部品10を取り外しにくくなることを効果的に抑制できる。
【0051】
(6)第1部品10及び第2部品20は、それぞれ内燃機関の吸気マニホールドを構成する分岐管101,102の半割体である。
内燃機関の吸気マニホールドを構成する分岐管101,102は、2つの半割体同士を振動溶着によって接合することにより形成される。こうした半割体においては、外面11にボス12aやリブ12b,12cなどの突部12が設けられている。このため、型開きを行う際に、固定型60から退避する可動型70に突部12が抱きつくことで可動型70から第1部品10である半割体を取り出しにくくなるという問題が生じやすい。
【0052】
この点、上記構成によれば、可動型70にボス12aやリブ12b,12cなどの突部12が抱きつくことで可動型70から第1部品10である半割体を取り出しにくくなることを抑制できる。また、凹部18を設けることに伴う第1部品10の強度低下を抑制できる。
【0053】
(7)第1部品10の成形方法は、成形型50を用いて第1成形面61、第2成形面71、及び第3成形面81により形成されるキャビティ51に溶融樹脂を射出する射出工程を備える。第1部品10の成形方法は、固定型60及びスライド型80に対して可動型70を退避させる可動型退避工程と、可動型退避工程の後に、固定型60に対してスライド型80を退避させるスライド型退避工程とを備える。
【0054】
こうした方法によれば、上記(1)と同様な効果を奏することができる。
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
突出部16の形状は、上記実施形態において例示したものに限定されない。例えば、
図12及び
図13に拡大して示すように、一対の側面16bが一般部15から対向方向Zに沿って起立するものであってもよい。この場合、振動溶着法によって第1部品10と第2部品20とを接合する際に、治具が突出部16に係合しやすくなる。このため、治具を振動させる際に、第1部品10に対して治具が滑ることを一層抑制できる。
【0056】
・係止面18aは、幅方向Y及び長さ方向Xの双方に沿って延在する平面状のものに限定されず、湾曲面状や傾斜面状であってもよい。
・凹部18における幅方向Yに直交する断面形状は、円形や楕円形であってもよい。
【0057】
・凹部18は、幅方向Yにおいてボス12aと重ならない位置に設けられていてもよい。
・第1部品10は、ボス12aを有していないものであってもよい。また、第1部品10は、リブ12b,12cの少なくとも一方を有していないものであってもよい。
【0058】
・凹部18は、幅方向Yの片側の外側面17にのみ設けられていてもよい。
・凹部18を長さ方向Xにおいて複数設けるようにしてもよい。この場合、凹部18の数に応じて突出部16の数を変更することが好ましい。
【0059】
・凹部18は、長さ方向Xの端部に位置する外側面17に設けられていてもよい。
・第1部品10は、長尺状をなすものに限定されず、例えば平面視多角形状や円形状をなすものであってもよい。
【0060】
・第1部品10及び第2部品20は、吸気マニホールドの分岐管101,102の半割体に限定されない。例えば、第1部品及び第2部品は、内燃機関のインレットダクトなどの他の吸気管を構成するものであってもよいし、内燃機関の吸気管以外の樹脂製品として具体化してもよい。
【0061】
<付記>
[付記1]
樹脂製の第1部品と、樹脂製の第2部品と、を備え、前記第1部品は、第1接合面を有し、前記第2部品は、前記第1接合面に接合された第2接合面を有し、前記第1接合面と前記第2接合面とが対向する方向を対向方向とするとき、前記第1部品は、前記対向方向において前記第1接合面とは反対側に位置し、前記第1部品と前記第2部品とを接合する際に前記第1部品を拘束する治具が当接する当接面を有し、前記当接面は、一般部と、前記一般部よりも前記対向方向に突出する突出部と、を有し、前記第1部品のうち前記突出部が設けられている部分における前記第1接合面と前記当接面との間に位置する外側面には、当該外側面に開口する凹部が設けられている、樹脂製品。
【0062】
[付記2]
前記第1部品は、前記対向方向に対して直交する長さ方向に長い長尺状をなし、前記凹部は、前記長さ方向に延在する前記外側面に設けられている、付記1に記載の樹脂製品。
【0063】
[付記3]
前記凹部は、前記対向方向及び前記長さ方向の双方に直交する幅方向の両側に位置する前記外側面にそれぞれ設けられている、付記2に記載の樹脂製品。
【0064】
[付記4]
前記第1部品の外面には、突部が設けられており、
前記突部は、筒状のボスを含み、前記凹部は、前記対向方向及び前記長さ方向の双方に直交する幅方向において前記ボスと重なる位置に設けられている、付記2または付記3に記載の樹脂製品。
【0065】
[付記5]
前記凹部の内面は、前記対向方向において前記第2部品側に位置し、前記対向方向及び前記長さ方向の双方に直交する幅方向及び前記長さ方向の双方に沿って延在する平面状の係止面を有する、付記2から付記4のいずれか一項に記載の樹脂製品。
【0066】
[付記6]
前記第1部品及び前記第2部品は、それぞれ内燃機関の吸気マニホールドを構成する分岐管の半割体である、付記2から付記5のいずれか一項に記載の樹脂製品。
【0067】
[付記7]
付記1から付記6のいずれか一項に記載の樹脂製品を構成する前記第1部品を成形する方法であって、前記第1部品の内面を成形する第1成形面を有する固定型と、前記固定型に対して前記対向方向に沿って進退可能に設けられ、前記第1部品の外面のうち前記凹部を含まない部分を成形する第2成形面を有する可動型と、前記固定型及び前記可動型に対してスライド移動可能に設けられ、前記第1部品の外面のうち前記凹部を含む部分を成形する第3成形面を有するスライド型と、を備える成形型を用いて前記第1成形面、前記第2成形面、及び前記第3成形面により形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出工程と、前記固定型及び前記スライド型に対して前記可動型を退避させる可動型退避工程と、前記可動型退避工程の後に、前記固定型に対して前記スライド型を退避させるスライド型退避工程と、を備える、樹脂部品の成形方法。
【符号の説明】
【0068】
10,10A,10B…第1部品
11…外面
12…突部
12a…ボス
12b,12c…リブ
13…第1接合面
14…当接面
15…一般部
16…突出部
16a…突端面
16b…側面
17…外側面
18…凹部
18a…係止面
18b…対向面
19…内面
20…第2部品
21…第2接合面
22…接合面
30…第3部品
31…接合面
50…成形型
51…キャビティ
60…固定型
61…第1成形面
70…可動型
71…第2成形面
80…スライド型
81…第3成形面
82…凸部
82a…平面部分
90…治具
100…サージタンク
101…第1分岐管
102…第2分岐管
103…第3分岐管
104…第4分岐管
X…長さ方向
Y…幅方向
Z…対向方向