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特開2024-176217手首関節ユニットおよびそれを備えた作業装置
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  • 特開-手首関節ユニットおよびそれを備えた作業装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176217
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】手首関節ユニットおよびそれを備えた作業装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B25J17/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094601
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】三宅 透
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智昭
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博明
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS03
3C707BS15
3C707BT05
3C707CY36
3C707HT24
(57)【要約】
【課題】小型化および軽量化を図ることができる手首関節ユニットおよびそれを備えた作業装置を提供する。
【解決手段】手首関節ユニットHUは、アーム5と、第1回転軸C1回りに回転可能に設けられる第1の回転部材6と、第1回転軸C1と直交する第2回転軸C2回りに回転可能に設けられる第2の回転部材である傘歯車7と、アーム5に支持され第1の回転部材6を回転駆動する第1モータ9と、アーム5に支持され傘歯車7を回転駆動する第2モータとを備える。第1の回転部材6はアーム5に片持ち支持され、第2の回転部材である傘歯車7は、第1の回転部材6に片持ち支持される。前記傘歯車7には、エンドエフェクタ11が取付け可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、
前記アームに片持ち支持され、第1回転軸回りに回転可能に設けられる第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に片持ち支持され、第1回転軸と直交する第2回転軸回りに回転可能に設けられる第2の回転部材である傘歯車と、
前記アームに支持され前記第1の回転部材を回転駆動する第1モータと、
前記アームに支持され前記傘歯車を回転駆動する第2モータと、を備え、
前記傘歯車は、エンドエフェクタが取付け可能な手首関節ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の手首関節ユニットにおいて、前記傘歯車と噛合う傘歯車と、この傘歯車が固定され、且つ前記アームおよび前記第1の回転部材に対して軸受(2,4)を介して回転支持される歯車軸と、をさらに備え、
前記アームに対して前記第1の回転部材が軸受(1)を介して回転支持され、この軸受(1)と、前記アームに対して前記歯車軸を回転支持する軸受(4)とが同軸に設けられている手首関節ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の手首関節ユニットにおいて、前記第2の回転部材である傘歯車のボス外径Dは、常用するはめあいの軸で用いる寸法許容差における公差域クラスがh7以下またはg6以下であり、且つ前記ボス外径Dは、軸受(3)を嵌合する前記傘歯車のボス内径dに対する同軸度が0.03mm以下である手首関節ユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の手首関節ユニットにおいて、前記第2の回転部材である傘歯車のボス端面は、軸受(3)を嵌合する前記傘歯車のボス内径dに対する直角度が0.05mm以下である手首関節ユニット。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の手首関節ユニットにおいて、前記第2の回転部材である傘歯車のボス側面および端面には、前記エンドエフェクタを取付けるためのねじ孔が設けられている手首関節ユニット。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の手首関節ユニットにおいて、前記第2の回転部材である傘歯車のボス端面には、前記エンドエフェクタの取付け再現性と、回転方向のずれ防止を図るピンを設置可能な取付け孔が設けられている手首関節ユニット。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の手首関節ユニットにおいて、前記第2の回転部材である傘歯車のボス外径Dには、前記エンドエフェクタにおける第2回転軸方向の取付け位置を規制する肩が設けられ、前記肩の隅の半径Rが0.2mm以下、または前記肩の隅にぬすみが設けられている手首関節ユニット。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の手首関節ユニットを備えた作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手首関節ユニットおよびそれを備えた作業装置に関し、例えば、スカラーロボット、直交ロボット、垂直多関節ロボット等に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットのアームの先端部には、手首関節ユニットが回転可能に連結されている。この手首関節ユニットは、互いに直交する2軸の回転軸を有し、一方の軸のまわりに回転する第1部材と、他方の軸のまわりに回転するように、第1部材に連結された第2部材とを備える。第2部材には、所定の作業が行えるようにエンドエフェクタが設置されている。
手首関節ユニットは、ロボットのアーム先端部に備えられることから、軽量であることが好ましく、また手首関節ユニットに設置されたエンドエフェクタで所定の作業を行うことから、周囲との干渉を避けるため小型であることが好ましい。
【0003】
特許文献1には、手首ユニットが開示されている。この手首ユニットでは、2つの駆動モータを有し、これら駆動モータと、これら駆動モータによって揺動および回転可能に設けられた手首との間に複数段のプーリ・ベルト機構を設置し、波動歯車減速機等の減速機を使用せずに必要な減速比を確保することで、大型化と高コスト化を回避できるとしている。
【0004】
特許文献2には、垂直多関節ロボットが開示されている。この垂直多関節ロボットでは、AアームにBアームが回動可能に片持ち支持されている。前記Aアームを駆動する減速機には貫通孔が設けられ、前記Bアームを駆動する伝達機構が、前記貫通孔を挿通することにより、小型化、軽量化を図れるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-226028号公報
【特許文献2】特許第7009929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の手首ユニットでは、揺動中心軸が両端で支持されているため、手首の幅が大きくなり、所定の作業を行っているときに、手首部が周辺と干渉する恐れがある。また、構造上、回動範囲が制限される。
【0007】
特許文献2に記載の垂直多関節ロボットでは、先端側のアームが片持ち支持されていることから、一定の小型化は実現できているが、減速機等が回動部に搭載されているため、これ以上の小型化、軽量化には限界がある。
【0008】
本発明の目的は、小型化および軽量化を図ることができる手首関節ユニットおよびそれを備えた作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の手首関節ユニットは、アームと、
前記アームに片持ち支持され、第1回転軸回りに回転可能に設けられる第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に片持ち支持され、第1回転軸と直交する第2回転軸回りに回転可能に設けられる第2の回転部材である傘歯車と、
前記アームに支持され前記第1の回転部材を回転駆動する第1モータと、
前記アームに支持され前記傘歯車を回転駆動する第2モータと、を備え、
前記傘歯車には、エンドエフェクタを取付け可能である。
【0010】
この構成によると、第1の回転部材はアームに片持ち支持され、第2の回転部材である傘歯車は第1の回転部材に片持ち支持されているため、第1,第2の回転部材は、第1,第2モータおよび支持部材等に干渉することなく回転運動の自由度を高めることが可能となる。また第1,第2の回転部材が片持ち支持されているため、これら第1,第2の回転部材が両持ち支持される構造よりも小型化および軽量化を図ることができる。第1,第2モータは、回転運動する回転部材ではなく、ベースとなるアームに支持されているため、モータ本体が動くことがない。これにより軽量でコンパクトな第1,第2の回転部材を実現できる。さらに第2の回転部材である傘歯車に、エンドエフェクタが取付け可能なため、部品点数が少なく、コンパクトかつ軽量な手首関節ユニットを実現できる。
【0011】
前記傘歯車と噛合う傘歯車と、この傘歯車が固定され、且つ前記アームおよび前記第1の回転部材に対して軸受(2,4)を介して回転支持される歯車軸と、をさらに備え、
前記アームに対して前記第1の回転部材が軸受(1)を介して回転支持され、この軸受(1)と、前記アームに対して前記歯車軸を回転支持する軸受(4)とが同軸に設けられていてもよい。
この場合、第1および第2モータの両者を適切な関係で回転させることにより、第2の回転部材である傘歯車を、第1回転軸回りのみに回転駆動することが可能である。第1モータを回転させず第2モータのみを回転することで、第2の回転部材である傘歯車を、第2回転軸回りのみに回転駆動し得る。
【0012】
前記第2の回転部材である傘歯車のボス外径Dは、常用するはめあいの軸で用いる寸法許容差における公差域クラスがh7以下またはg6以下であり、且つ前記ボス外径Dは、軸受(3)を嵌合する前記傘歯車のボス内径dに対する同軸度が0.03mm以下であってもよい。この場合、前記傘歯車に取り付けられるエンドエフェクタの動作の精度を、傘歯車のボス外径Dがh7を超える構造、または傘歯車のボス内径dに対するボス外径Dの同軸度が0.03mmを超える構造に対して、向上することができる。
【0013】
前記第2の回転部材である傘歯車のボス端面は、軸受(3)を嵌合する前記傘歯車のボス内径dに対する直角度が0.05mm以下であってもよい。この場合、傘歯車に対しエンドエフェクタを精度良く適切に取り付けることが可能となる。
【0014】
前記第2の回転部材である傘歯車のボス側面および端面には、前記エンドエフェクタを取付けるためのねじ孔が設けられていてもよい。この場合、エンドエフェクタを傘歯車に対し容易に脱着することができる。
【0015】
前記第2の回転部材である傘歯車のボス端面には、前記エンドエフェクタの取付け再現性と、回転方向のずれ防止を図るピンを設置可能な取付け孔が設けられていてもよい。この場合、傘歯車のボス端面の取付け孔にピンを設置しておくことで、エンドエフェクタの取付け再現性と、回転方向のずれ防止を図り、エンドエフェクタを傘歯車に対し容易に脱着し得る。
【0016】
前記第2の回転部材である傘歯車のボス外径Dには、前記エンドエフェクタにおける第2回転軸方向の取付け位置を規制する肩が設けられ、前記肩の隅の半径Rが0.2mm以下、または前記肩の隅にぬすみが設けられていてもよい。この場合、エンドエフェクタを傘歯車のボス外径に嵌め込んだとき、エンドエフェクタが肩に確実に当接しエンドエフェクタにおける第2回転軸方向の取付け位置の再現性を担保することができる。
【0017】
本発明の作業装置は、いずれかの手首関節ユニットを備えている。この作業装置によると、従来の手首関節ユニットを使用した作業装置より狭い場所での作業、壁際での作業、または狭い間隔で複数台並べて作業することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の手首関節ユニットは、第1,第2の回転部材が片持ち支持されているため、小型化および軽量化を図ることができる。第1,第2モータは、ベースとなるアームに支持されているため、モータ本体が動くことがなく軽量でコンパクトな第1,第2の回転部材を実現できる。第2の回転部材である傘歯車に、エンドエフェクタが取付け可能なため、部品点数が少なく、コンパクトかつ軽量な手首関節ユニットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る手首関節ユニットの縦断面図である。
図2】同手首関節ユニットの各2モータと平歯車との関係を概略示す図である。
図3】同手首関節ユニットの第2の回転部材付近を拡大して示す部分断面図である。
図4図3のIV-IV線矢視図である。
図5A図3のVA部の部分拡大図である。
図5B図5Aの肩の隅を部分的に変更した変形例を示す部分拡大図である。
図6A】いずれかの実施形態に係る手首関節ユニットを搭載した作業装置の例1を示す図である。
図6B】いずれかの実施形態に係る手首関節ユニットを搭載した作業装置の例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る手首関節ユニットを図1ないし図5Aと共に説明する。手首関節ユニットを備えた後述の作業装置は、例えば、医療機器または産業機器等に用いられる。
<手首関節ユニットの全体構成>
図1のように、手首関節ユニットHUは、アーム5と、アーム5に片持ち支持され第1回転軸C1回りに回転可能に設けられる第1の回転部材6と、第1の回転部材6に片持ち支持され第1回転軸C1と直交する第2回転軸C2回りに回転可能に設けられる第2の回転部材7を含む減速機構8と、駆動源である第1,第2モータ9,10とを備える。第2の回転部材である傘歯車7に、エンドエフェクタ11が取付けられる。前記作業装置は、傘歯車7に取付けられたエンドエフェクタ11を、ワークに対し位置決めして作業を行う。
【0021】
<アーム>
ベースとなるアーム5は、基端側アーム5bと、基端側アーム5bに連結される先端側アーム5aとを有する。先端側アーム5aは有底筒状に形成され、先端側アーム5aの筒部における開口周縁部に基端側アーム5bが連結されている。基端側アーム5bと先端側アーム5aで囲まれた空間S1に、後述する減速機構8の一部が設けられる。
【0022】
<第1の回転部材>
第1の回転部材6は、先端側アーム5aに片持ち支持され、軸受1により第1回転軸C1回りに回転可能に設けられる。第1の回転部材6は、中空円筒状の基端側回転台6aと、基端側回転台6aに固定される先端側回転台6bとを有する。この例では、基端側回転台6aと先端側回転台6bとが別部材に設けられ互いに連結されているが、基端側回転台6aと先端側回転台6bとが一体に設けられてもよい。前記「一体に設けられ」とは、基端側回転台6aと先端側回転台6bとが、複数の要素を結合したものではなく単一の材料から例えば機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。前記第1,第2回転軸C1,C2は、実体のない回転軸心を意味する。
【0023】
有底筒状となる先端側アーム5aの底部に軸受1の外輪外周面が嵌合固定され、軸受1の内輪内周面に基端側回転台6aの外周面が嵌合固定されている。基端側回転台6aの一側面に、例えば、角筒状の先端側回転台6bが繋がり、この先端側回転台6bが第1回転軸方向一方つまり図1上側に突出するように設けられている。先端側回転台6bには、傘歯車7,12との干渉を防ぐ空間S2が形成されると共に、傘歯車7を回転支持する歯車軸13を嵌合固定する孔6baが形成されている。先端側回転台6bの一側面には、前記空間S2に異物が侵入することを防ぐと共にグリースの漏洩を防ぐカバー14が設けられている。
【0024】
<駆動源>
図1および図2のように、第1,第2モータ9,10は、それぞれアーム5の基端側アーム5bに支持される。第1モータ9は第1回転部材5を回転駆動する駆動源であり、第2モータ10は、第2の回転部材である傘歯車7を回転駆動する駆動源である。図1のように、基端側アーム5bには、第1モータ9のモータ本体を支持する孔5baが形成され、モータ軸がアーム5内の前記空間S1に収容される。前記モータ軸の回転軸心は、第1回転軸C1に平行に配置される。基端側アーム5bには、第2モータ10(図2)のモータ本体を支持する孔も形成され、第2モータ10(図2)のモータ軸もアーム5内の前記空間S1に収容される。前記モータ軸の回転軸心も、第1回転軸C1に平行に配置される。
【0025】
<減速機構>
減速機構8は、第1モータ9の回転を減速する第1減速機構部8Aと、第2モータ10(図2)の回転を減速する第2減速機構部8Bとを含む。第1減速機構部8Aは、第1モータ9のモータ軸に固定された平歯車15と、基端側回転台6aの他側面に固定され前記平歯車15に噛合う平歯車16と、アーム5に対し第1の回転部材6を回転支持する軸受1とを有する。前記平歯車16は第1回転軸C1回りに回転可能であり、平歯車15,16はアーム5内の前記空間S1に収容される。軸受1としては、ラジアル荷重およびアキシアル荷重を受けることができる深溝玉軸受が適用されている。第1モータ9を回転駆動することで、第1回転部材6は、第1減速機構部8Aにより所定の減速比で第1回転軸C1回りに回転駆動される。
【0026】
第2減速機構部8Bは、平歯車17,18(図2)、軸受2,4、基端側の歯車軸19、傘歯車12,7、軸受3および先端側の歯車軸13を有する。平歯車17(図2)は、第2モータ10(図2)のモータ軸に固定される。基端側の歯車軸19は、基端側アーム5bおよび基端側回転台6aに対して軸受4,2を介して回転支持される。軸受2,4は軸受1と同軸に設けられている。基端側の歯車軸19の基端部に平歯車18が固定され、前記歯車軸19の先端部に傘歯車12が固定されている。前記平歯車18はアーム5内の前記空間S1に収容され、前記傘歯車12は、先端側回転台6bの空間S2に収容され、第2の回転部材である傘歯車7と噛み合う。
【0027】
図3のように、先端側の歯車軸13は第2回転軸C2方向に延びる。先端側の歯車軸13は、長手方向先端部に位置する小径部13aと、この小径部13aに対し同軸に繋がる大径部13bとを有する。先端側回転台6bの孔6baに、大径部13bの大部分が嵌合固定され、前記孔6baから小径部13aが突出するように設けられる。歯車軸13の小径部13aには、複数(この例では2個)の軸受3,3を介して、傘歯車7が固定されている。
【0028】
歯車軸13の小径部13aに各軸受3の内輪が嵌合固定され、各軸受3の外輪に傘歯車7のボス内径dが嵌合固定されている。図1の軸受2,3,4についても、軸受1と同様に、ラジアル荷重およびアキシアル荷重を受けることができる深溝玉軸受が適用されている。図2の第2モータ10を回転駆動することで、図1に示す傘歯車7は、第2減速機構部8Bにより所定の減速比で第2回転軸C2回りに回転駆動される。
【0029】
但し、先端側アーム5aに軸受1を介して基端側回転台6aが回転支持され、この基端側回転台6aに軸受2を介して基端側の歯車軸19が固定され、軸受1,2が同軸に配置されるため、第1モータ9を回転駆動すると、基端側の歯車軸19が連れ回る。これにより傘歯車7は第2回転軸C2回りに回転する。
このとき傘歯車7が第2回転軸C2回りに回転せず、第1回転軸C1回りのみ回転駆動するには、第1の回転部材5の回転駆動に対して基端側の歯車軸19にも適切な回転駆動を行う必要がある。
【0030】
第1モータ9および第2モータ10(図2)の両者を適切な関係で回転させることにより、傘歯車7を第1回転軸C1回りのみに回転駆動することが可能である。第1モータ9を回転させず、第2モータ10(図2)を適切に回転することで、傘歯車7を第2回転軸C2回りのみに回転駆動することが可能である。
また第1モータ9および第2モータ10(図2)の両者を適切な関係で回転させることにより、傘歯車7を、第1,第2回転軸C1,C2回りにそれぞれ所望の速度で同時に回転駆動することが可能である。
【0031】
<パラメータ等について>
図3のように、第2の回転部材である傘歯車7は、エンドエフェクタ11(図1)が適切に取付けられるように、傘歯車7のボス外径Dは、常用するはめあいの軸で用いる寸法許容差における公差域クラスがh7以下またはg6以下である。具体的には、ボス外径Dの寸法許容差はh7、h6、h5、g6等の締嵌めの公差域クラスが用いられる。且つボス外径Dは、軸受3を嵌合する傘歯車7のボス内径dに対する同軸度が0.03mm以下である。
【0032】
この場合、傘歯車7に取り付けられるエンドエフェクタの動作の精度を、傘歯車7のボス外径Dがh7を超える構造、または傘歯車7のボス内径dに対するボス外径Dの同軸度が0.03mmを超える構造に対して、向上することができる。
傘歯車7のボス端面7aは、軸受3を嵌合する傘歯車7のボス内径dに対する直角度が0.05mm以下である。このため、傘歯車7に対しエンドエフェクタを精度良く適切に取り付けることが可能となる。
【0033】
図3および図4のように、傘歯車7のボス側面7bおよび端面7aには、エンドエフェクタを取付けるためのねじ孔20が設けられている。ボス端面7aに複数のねじ孔20が円周等配に設けられ、各ねじ孔20はそれぞれ第2回転軸方向に平行に延びるように形成されている。ボス側面7bに設けられるねじ孔20は、第2回転軸方向に直交する径方向に延びるように形成されている。この場合、エンドエフェクタを傘歯車7に対し容易に脱着し得る。
【0034】
第2の回転部材である傘歯車7のボス端面7aには、エンドエフェクタの取付け再現性と、回転方向のずれ防止を図るピン21を設置可能な取付け孔22が設けられている。取付け孔22は、第2回転軸方向に平行に延びる。ピン21として、例えば、ノックピン等が適用される。この場合、傘歯車7のボス端面7aの取付け孔22にピン21を設置しておくことで、エンドエフェクタの取付け再現性と、回転方向のずれ防止を図り、エンドエフェクタを傘歯車7に対し容易に脱着し得る。
【0035】
図5Aのように、エンドエフェクタの取付け再現性を担保できるように、第2の回転部材である傘歯車7のボス外径Dには、エンドエフェクタにおける第2回転軸方向の取付け位置を規制する肩23が設けられている。さらに肩23の隅23aの半径Rが0.2mm以下、または図5Bのように、肩23の隅にぬすみ24が設けられている。この場合、エンドエフェクタを傘歯車7のボス外径Dに嵌め込んだとき、エンドエフェクタが肩23に確実に当接しエンドエフェクタにおける第2回転軸方向の取付け位置の再現性を担保し得る。
【0036】
<作用効果>
以上説明した図1の手首関節ユニットHUによると、第1の回転部材6はアーム5に片持ち支持され、第2の回転部材である傘歯車7は第1の回転部材6に片持ち支持されているため、第1,第2の回転部材6,7は、第1,第2モータ9,10(図2)および支持部材等に干渉することなく回転運動の自由度を高めることが可能となる。また第1,第2の回転部材6,7が片持ち支持されているため、これら第1,第2の回転部材6,7が両持ち支持される構造よりも小型化および軽量化を図ることができる。第1,第2モータ9,10(図2)は、回転運動する回転部材ではなく、ベースとなるアーム5に支持されているため、モータ本体が動くことがない。これにより軽量でコンパクトな第1,第2の回転部材6,7を実現できる。さらに第2の回転部材である傘歯車7に、エンドエフェクタ11が取付けられているため、部品点数が少なく、コンパクトかつ軽量な手首関節ユニットHUを実現できる。
【0037】
手首関節ユニットHUは、傘歯車7と噛合う傘歯車12と、この傘歯車12が固定され、且つアーム5および第1の回転部材6に対して軸受4,2を介して回転支持される歯車軸19とをさらに備える。アーム5に対して第1の回転部材6が軸受1を介して回転支持され、この軸受1と、アーム5に対して歯車軸19を回転支持する軸受4とが同軸に設けられている。このため、第1および第2モータ9,10(図2)の両者を適切な関係で回転させることにより、第2の回転部材である傘歯車7を、第1回転軸C1回りのみに回転駆動することが可能である。第1モータ9を回転させず第2モータ10(図2)のみを回転することで、第2の回転部材である傘歯車7を、第2回転軸C2回りのみに回転駆動し得る。
【0038】
<他の実施形態について>
軸受1,2,3,4のうち少なくともいずれか1つを、深溝玉軸受以外の転がり軸受に代えてもよい。但し、ラジアル荷重およびアキシアル荷重を受けることができる転がり軸受を適用する。このような転がり軸受として、例えば、アンギュラ玉軸受、4点接触玉軸受、円すいころ軸受、クロスローラー軸受等が適用可能である。また転がり軸受に代えて滑り軸受を適用することも可能である。
第2の回転部材である傘歯車に、ツールチェンジャー等の中間部材を介してエンドエフェクタが取付けられてもよい。
【0039】
<作業装置>
<直交ロボット:図6A
図6Aのように、手首関節ユニットHUを備えた直交ロボット(作業装置)25としてもよい。この例の直交ロボット25には、X軸、Z軸の直交2軸方向に移動するXZステージが適用されている。この直交ロボット25は、互いに直交するX軸、Z軸にそれぞれ対応するX軸電動アクチュエータ26およびZ軸電動アクチュエータ27を含む。Z軸電動アクチュエータ27は、支持台28上において図6Aの上下方向であるZ軸方向に延びる柱部29と、柱部29の一側面に固定されるガイド部30と、ガイド部30に沿って摺動するZ軸ステージ31と、Z軸ステージ31の駆動源であるZ軸モータ32と、Z軸モータ32の回転をZ軸に沿う直線往復動作に変換する図示外のボールねじ等の変換機構とを有する。
【0040】
X軸電動アクチュエータ26は、Z軸ステージ31に支持され同図6Aの左右方向であるX軸方向に沿って延びるガイド部33と、ガイド部33に沿って摺動するX軸ステージ34と、X軸ステージ34の駆動源であるX軸モータ35と、X軸モータ35の回転をX軸に沿う直線往復動作に変換する図示外のボールねじ等の変換機構とを有する。X軸ステージ34にブラケット36等を介して手首関節ユニットHUが連結されている。この手首関節ユニットHUの第1回転軸C1は、例えば、前記Z軸に平行に配置される。
【0041】
支持台28上には、X軸、Z軸にそれぞれ直交するY軸方向のY軸電動アクチュエータ37が設けられている。Y軸電動アクチュエータ37は、支持台28上でY軸方向に沿って延びるガイド部38と、ガイド部38に沿って摺動するY軸ステージ39と、Y軸ステージ39の駆動源であるY軸モータ40と、Y軸モータ40の回転をY軸に沿う直線往復動作に変換する図示外のボールねじ等の変換機構とを有する。Y軸ステージ40上にワークWが設置される。
【0042】
直交ロボット25、Y軸電動アクチュエータ37および手首関節ユニットHUの各モータは、図示外の制御装置により協働して制御される。これにより直交ロボット25は、手首関節ユニットHUの先端に取付けられたエンドエフェクタ11をワークWに対し位置決めして所望の作業を行う。
この作業装置によると、従来の手首関節ユニットを使用した作業装置より狭い場所での作業、壁際での作業、または狭い間隔で複数台並べて作業することができる。
【0043】
<スカラーロボット:図6B
図6Bのように、手首関節ユニットHUを備えたスカラーロボット(作業装置)41としてもよい。このスカラーロボット41は、ベースユニット42に設けられた回転駆動源に、回転機構43を介して基端側の第1のアーム44がZ軸方向回りに回転可能に設けられている。第1のアーム44の先端部に、回転機構45を介して第2のアーム46がZ軸方向回りに回転可能に設けられている。第2のアーム45の先端部に、Z軸方向に移動駆動可能な直動案内機構47を介して手首関節ユニットHUが連結されている。この手首関節ユニットHUの第1回転軸C1も、前記Z軸に平行に配置される。ワークWは支持台28上に載置支持されている。
【0044】
スカラーロボット41、手首関節ユニットHUの各モータは、図示外の制御装置により協働して制御される。これによりスカラーロボット41は、手首関節ユニットHUの先端に取付けられたエンドエフェクタ11をワークWに対し位置決めして所望の作業を行う。この作業装置においても、従来の手首関節ユニットを使用した作業装置より狭い場所での作業、壁際での作業、または狭い間隔で複数台並べて作業することができる。
【0045】
図示しないが、例えば、4軸以下の垂直多関節ロボットの先端部に手首関節ユニットを備えてもよい。勿論、5軸または6軸の垂直多関節ロボットの先端部に手首関節ユニットを備えることも可能である。この場合にも前述の同様の作用効果を奏する。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1~4…軸受、5…アーム、6…第1の回転部材、7…傘歯車(第2の回転部材)、9…第1モータ、10…第2モータ、11…エンドエフェクタ、12…傘歯車、19…歯車軸、20…ねじ孔、21…ピン、22…取付け孔、23…肩、24…ぬすみ、25…直交ロボット(作業装置)、26…スカラーロボット(作業装置)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B