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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176221
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】布製品
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/00 20060101AFI20241212BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20241212BHJP
   A41D 27/02 20060101ALI20241212BHJP
   A44B 99/00 20100101ALI20241212BHJP
【FI】
A41D27/00 C
A41D27/20 F
A41D27/02
A44B99/00 611N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094608
(22)【出願日】2023-06-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示会名 アウトドア/アスレチック総合展示会 展示日 令和4年12月5日
(71)【出願人】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】シュウ プユ
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 翔吾
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA02
3B035AA06
3B035AA17
3B035AA18
3B035AA23
3B035AB01
3B035AB02
3B035AB09
3B035AB12
3B035AB14
(57)【要約】
【課題】長さ調節する領域を絞るための長尺体の長さ調節操作が、表側と裏側の両面のポケットの内側で可能なリバーシブル構造の布製品を提供する。
【解決手段】長さ調節する筒状の径路32に長尺体30を備える。長尺体30は、環部30aを作るストッパー54を有する。表生地22には表ポケット袋38を有し、表ポケット袋38には表ポケット挿通口44を備える。裏生地24には、表ポケット袋38に対応する位置に裏ポケット袋48を備える。裏ポケット袋48には裏ポケット挿通口50を備える。径路32には、径路用透孔40を有し、長尺体30の環部30aが、径路用透孔40から表ポケット挿通口44と裏ポケット挿通口50に挿通されている。長尺体30は、表ポケット袋38の内側と、裏ポケット袋48の内側に位置する。ストッパー54は、径路用透孔40と、表ポケット挿通口44と裏ポケット挿通口50との間に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ねられた表生地と裏生地と、前記表生地と前記裏生地の間の内部空間を有する布製品であり、長さ調節する領域を絞るための長尺体を備え、前記長尺体は、前記内部空間に形成され長さ調節する領域である筒状の径路に挿通され、
前記長尺体には、前記長尺体の任意の2か所を保持して環部を作るストッパーが摺動可能に取り付けられ、前記ストッパーは前記長尺体に対する係止と係止解除の切り替えが可能であり、前記環部を形成する前記長尺体の長さを変えて前記径路の長さ調節が可能であり、
前記表生地には表ポケットが設けられ、前記表ポケットには前記内側空間に連通する表ポケット挿通口が一対設けられ、前記裏生地には、前記表ポケットに対応する位置に裏ポケットが設けられ、前記裏ポケットには前記内側空間に連通する裏ポケット挿通口が一対設けられ、前記径路には、前記内部空間に連通する径路用透孔が設けられ、
前記長尺体の、前記ストッパーにより作られた前記環部は、前記径路用透孔から前記内部空間に引き出され、前記一対の表ポケット挿通口と前記一対の裏ポケット挿通口に挿通され、前記一対の表ポケット挿通口の間の長尺体は前記表ポケットの内側に位置し、前記一対の裏ポケット挿通口の間の前記長尺体は前記裏ポケットの内側に位置し、前記ストッパーは、前記径路用透孔と、前記表ポケット挿通口と前記裏ポケット挿通口との間の前記内部空間に位置し、
前記表ポケットまたは前記裏ポケットの内側に位置する前記長尺体を操作して、前記環部の大きさを変えて前記径路の長さを調節可能にしたことを特徴とする布製品。
【請求項2】
前記表ポケット及び/又は前記裏ポケットは、前記表生地及び/又は前記裏生地を貫通するポケット開口部と、前記内側空間に位置し前記ポケット開口部に連続するポケット袋から成り、前記表ポケット挿通口及び/又は前記裏ポケット挿通口は前記ポケット袋に形成されている請求項1記載の布製品。
【請求項3】
前記表ポケット及び/又は前記裏ポケットは、前記表生地及び/又は前記裏生地の外側面にポケット布が取り付けられ、前記表ポケット挿通口は前記表生地に形成され、前記裏ポケット挿通口は前記裏生地に形成されている請求項1記載の布製品。
【請求項4】
前記布製品には、互いに離れた2か所に、前記表ポケットと前記裏ポケットが設けられ、一つの前記長尺体に、2つの前記ストッパーが取り付けられて2つの前記環部が作られ、2か所で長さ調節可能である請求項1記載の布製品。
【請求項5】
前記表生地と前記裏生地の一方は撥水性を有し他方は保温性を有し、前記布製品は前記表生地側と前記裏生地側で着用が可能なリバーシブル構造の上着であり、前記径路は前記上着の裾に設けられている請求項1,2,3又は4記載の布製品。
【請求項6】
前記長尺体には、前記表ポケット又は前記裏ポケットの内側に位置する引手が取り付けられ、前記引手は、前記長尺体の長手方向に摺動可能である請求項1,2,3又は4記載の布製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長さ調節する領域を絞るための長尺体を備えた布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部が着用者にフィットするように長さ調節する領域を有する布製品がある。このような布製品には、長さ調節する長尺体が設けられ、長尺体をポケット内で操作するものがある。引用文献1に開示されている絞り機構付き製品は、製品生地の長さ調節する領域を絞るための絞り機構を備える。製品生地にはポケットが形成され、絞り機構は、長さ調節する領域の内側に形成された収納部内に一部が収納されると共に、収納部から延出した端部がポケット内に至る長尺体と、収納部内に固定されるとともに、長尺体の任意の箇所で長尺体を解放及び係止可能である係止具が設けられている。ポケットには、長尺体入口の他に手を入れることが可能な入口を有している。この絞り機構付き製品の長さ調節する領域を絞る時は、ポケットに手を入れて、長尺体を掴んで引っ張り、長尺物を係止具によってその位置で係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―206969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、製品の生地の一方の面に設けられたポケットから、操作するものであり、生地の裏側で、ポケットとは反対側の面から操作することは考えられていない。製品が、表側と裏側で使用可能なリバーシブル構造の場合、ポケットを内側にして使用した時、長尺体の操作がやりづらいという問題があり、リバーシブル構造の製品に使用することは考えられていない。
【0005】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、表側と裏側で使用可能なリバーシブル構造であり、長さ調節する領域を絞るための長尺体の長さ調節操作が、表側と裏側の両面のポケットの内側で可能な布製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに重ねられた表生地と裏生地と、前記表生地と前記裏生地の間の内部空間を有する布製品であり、長さ調節する領域を絞るための長尺体を備え、前記長尺体は、前記内部空間に形成され長さ調節する領域である筒状の径路に挿通され、前記長尺体には、前記長尺体の任意の2か所を保持して環部を作るストッパーが摺動可能に取り付けられ、前記ストッパーは前記長尺体に対する係止と係止解除の切り替えが可能であり、前記環部を形成する前記長尺体の長さを変えて前記径路の長さ調節が可能であり、前記表生地には表ポケットが設けられ、前記表ポケットには前記内側空間に連通する表ポケット挿通口が一対設けられ、前記裏生地には、前記表ポケットに対応する位置に裏ポケットが設けられ、前記裏ポケットには前記内側空間に連通する裏ポケット挿通口が一対設けられ、前記径路には、前記内部空間に連通する径路用透孔が設けられ、前記長尺体の、前記ストッパーにより作られた前記環部は、前記径路用透孔から前記内部空間に引き出され、前記一対の表ポケット挿通口と前記一対の裏ポケット挿通口に挿通され、前記一対の表ポケット挿通口の間の長尺体は前記表ポケットの内側に位置し、前記一対の裏ポケット挿通口の間の前記長尺体は前記裏ポケットの内側に位置し、前記ストッパーは、前記径路用透孔と、前記表ポケット挿通口と前記裏ポケット挿通口との間の前記内部空間に位置し、前記表ポケットまたは前記裏ポケットの内側に位置する前記長尺体を操作して、前記環部の大きさを変えて前記径路の長さを調節可能にした布製品である。
【0007】
前記表ポケット及び/又は前記裏ポケットは、前記表生地及び/又は前記裏生地を貫通するポケット開口部と、前記内側空間に位置し前記ポケット開口部に連続するポケット袋から成り、前記表ポケット挿通口及び/又は前記裏ポケット挿通口は前記ポケット袋に形成されている。
【0008】
前記表ポケット及び/又は前記裏ポケットは、前記表生地及び/又は前記裏生地の外側面にポケット布が取り付けられ、前記表ポケット挿通口は前記表生地に形成され、前記裏ポケット挿通口は前記裏生地に形成されている。
【0009】
前記布製品には、互いに離れた2か所に、前記表ポケットと前記裏ポケットが設けられ、一つの前記長尺体に、2つの前記ストッパーが取り付けられて2つの前記環部が作られ、2か所で長さ調節可能である。
【0010】
前記表生地と前記裏生地の一方は撥水性を有し他方は保温性を有し、前記布製品は前記表生地側と前記裏生地側で着用が可能なリバーシブル構造の上着であり、前記径路は前記上着の裾に設けられている。さらに、前記長尺体には、前記表ポケット又は前記裏ポケットの内側に位置する引手が取り付けられ、前記引手は、前記長尺体の長手方向に摺動可能であると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の布製品は、表側と裏側で使用可能なリバーシブル構造であり、長さ調節する領域を絞るための長尺体の長さ調節操作が、表側と裏側の両面のポケットの内側で容易に正確に可能である。しかも構造がシンプルで、かさばらないものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態の上着の表生地側を示す正面図(a)と右前身頃を開いた状態を示す正面図(b)である。
図2】この実施形態の上着の裏生地側を示す正面図(a)と表生地側の左前身頃を開いた状態を示す正面図(b)である。
図3】この実施形態の上着の表生地側を示す部分拡大正面図(a)と(a)のA-A線縦断面図である。
図4】この実施形態の上着の表生地側で裾を絞った状態を示す部分拡大正面図(a)と裏生地側で裾を絞った状態を示す部分拡大正面図(b)である。
図5】この実施形態の上着の表生地側を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図5はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の布製品は、防寒用の上着10であり、上半身の前部分を覆う前身頃12と、上半身の後部分を覆う後見頃14と、腕を覆う一対の袖16から成る。前身頃12は、着用者の身体の前中心で左前見頃12aと右前身頃12bに分かれ、前中心はファスナー18で開閉される。そして前身頃12と後見頃14の襟刳りには、襟部20が縫い合わされて設けられている。
【0014】
前身頃12と後見頃14の表側は、撥水性や防風性等を有する表生地22で作られ、裏側は、防寒性を有する裏生地24で作られ、表生地22と裏生地24が縫い合わされて設けられている。上着10は、表生地22側と裏生地24側のいずれでも着用が可能なリバーシブル構造である。裏生地24は、例えば合成繊維を軽い布地に折り込ませて起毛処理されたフリースである。表生地22と裏生地24の間には、内部空間26が設けられている。前身頃12と後見頃14の裾28は、着用者のウエストに密着するように、長さ調節する領域であり、裾28を絞るための長尺体であるゴム紐30を有し、ゴム紐30を挿通する径路32が、裾28に沿って設けられている。径路32は、左前見頃12a、後見頃14、右前身頃12bに連通し、一本のゴム紐30が挿通されている。
【0015】
図1は、上着10の表生地22側を示す正面図であり、図2は、上着10の裏生地24側を示す正面図である。図2は、図1を裏返しているため、図1の左前見頃12aと右前身頃12bの左右が逆になっている。径路32の、前中心に近い位置には、ゴム紐30の途中部分を輪にして径路32から内部空間26に引き出す径路用透孔40が設けられている。径路用透孔40は、ゴム紐30の輪を引き出すため、互に近傍に位置する2つの孔で設けられてもよい。
【0016】
前身頃12の表生地22には、表生地22の厚みを貫通してポケットを形成する表ポケット開口部34が設けられ、表ポケット開口部34は、左前見頃12aと右前身頃12bに各々設けられ、各々、裾28に近い位置に、着用者の上下方向に沿う直線で形成され、上方の端部は下方の端部よりも少し前中心に近く、傾斜している。表ポケット開口部34は、ファスナー18が取り付けられて開閉可能であり、ファスナー18を外側から覆う玉縁布36が取り付けられている。
【0017】
内部空間26には、図3(b)に示すように、表ポケット開口部34に連続する表ポケット袋38が設けられている。表ポケット袋38は、例えば略矩形であり、着用者の腹部に対向する位置に設けられ、2枚のポケット布を互いに重ねて、上端部と下端部は縫い合わせ又は輪にして閉鎖され、前中心は、前身頃の前中心に縫い合わされて閉鎖され、前中心と反対側の端部は開口し、表ポケット開口部34に連続し、表ポケット袋38に小物を出し入れする開口部となる。表ポケット袋38の下端部は裾28の径路32とは連結されず、離間している。下端部の、表ポケット開口部34に近い部分には、ポケット端係止片42が設けられ、裾28の径路32近傍に縫い付けられ、表ポケット袋38が捲れたり大きく移動したりすることを防いでいる。
【0018】
表ポケット袋38の、2枚のポケット布のうち、表生地22とは反対に位置するポケット布38aには、ポケット布38aの厚みを貫通する表ポケット挿通口44が一対設けられている。表ポケット挿通口44は、前中心近傍で径路32に近い位置に設けられ、一対の表ポケット挿通口44が上下に並んで設けられている。
【0019】
前身頃12の裏生地24には、表ポケット開口部28に対向する位置に、裏生地24の厚みを貫通してポケットを形成する裏ポケット開口部46が設けられ、裏ポケット開口部46は、左前見頃12aと右前身頃12bに各々設けられ、各々、裾28に近い位置に、着用者の上下方向に沿う直線で形成され、上方の端部は下方の端部よりも少し前中心に近く、傾斜している。裏ポケット開口部46は、表ポケット開口部34とほぼ同じ長さで、ほぼ表ポケット開口部34に対向する位置に設けられ、ほぼ同じ角度で傾斜している。裏ポケット開口部46は、ファスナー18が取り付けられて開閉が可能である。
【0020】
内部空間26には、図3(b)に示すように、裏ポケット開口部46に連続する裏ポケット袋48が設けられている。裏ポケット袋48は、表ポケット袋38と裏生地24の間に設けられ、表ポケット袋38とほぼ同じ略矩形であり、着用者の腹部に対向する位置に設けられ、2枚のポケット布を互いに重ねて、上端部と下端部は縫い合わせ又は輪にして閉鎖され、前中心は、前身頃の前中心に縫い合わされて閉鎖され、前中心と反対側の端部は開口し、裏ポケット開口部46に連続し、裏ポケット袋48に小物を出し入れする開口部となる。裏ポケット袋48の下端部は裾28の径路32とは連結されず、離間している。
【0021】
裏ポケット袋48の、2枚のポケット布のうち、裏生地24とは反対に位置するポケット布48aには、ポケット布48aの厚みを貫通する裏ポケット挿通口50が一対設けられている。裏ポケット袋48のポケット布48aは、表ポケット袋38のポケット布38aと対面している。裏ポケット挿通口50は、前中心近傍で径路32に近い位置に設けられ、表ポケット挿通口44に対向して、一対の裏ポケット挿通口50が上下に並んで設けられている。図1図2図3(a)では、見やすいように表ポケット挿通口44と裏ポケット挿通口50を、水平方向にずらして示している。実際は図3(b)に示すように、表ポケット挿通口44と裏ポケット挿通口50は、ほぼ互いに対向している。
【0022】
表ポケット袋38と裏ポケット袋48は、表ポケット挿通口44と裏ポケット挿通口50よりも上の部分で、短いポケット固定ステッチ52で縫い合わされ、互いに移動することを防いでいる。なお、上着10は、袖16と襟部20も、前身頃12と後見頃14と同じように表生地22と裏生地24で作られてもよい。
【0023】
次に、ゴム紐30について説明する。ゴム紐30は、径路32の長手方向よりも長く設けられ、径路32に挿通され、ゴム紐30の両方の端部30aは、左前見頃12aと右前身頃12bの、前中心近傍に縫い付けられて固定されている。ゴム紐30の、左前見頃12aと右前身頃12bに位置する左右一対の径路用透孔40の付近に位置する部分は、径路用透孔40に各々挿通されて内部空間26に引き出されている。径路用透孔40から引き出されたゴム紐30は、図3(b)に示すように環部30bとなり、環部30bの大きさを変えることで径路32内のゴム紐30の長さ調節が可能である。
【0024】
内部空間26には、径路用透孔40から内部空間26に引き出されたゴム紐30を、環部30bを作るように径路用透孔40近傍で束ねるストッパー54が設けられている。ストッパー54は、ゴム紐30の任意の2か所を挿通し、2か所を保持して環部30bを作る。ゴム紐30に対する係止と係止解除の切り替えが可能であり、環部30bの大きさを変えてゴム紐30の長さ調節が可能である。係止と係止解除の切り替えはシンプルな動作で行われるものであり、例えばストッパー54の一部を押圧した状態では係止解除され、押圧をやめると係止されるもの等である。ストッパー54は、内部空間26内の、径路用透孔40の近傍に固定されている。
【0025】
ゴム紐30の、ストッパー54により作られた環部30bは、ゴム紐30が一対の表ポケット挿通口44と一対の裏ポケット挿通口50に挿通されている。ゴム紐30の、一対の表ポケット挿通口44の間の部分は表ポケット袋38の内側に位置し、この部分を表ポケット袋38の内側で引いて径路32内に位置するゴム紐30を短くするものであり、この部分には、ゴム紐30を引く時に保持する引手56が設けられている。ゴム紐30の、一対の裏ポケット挿通口50の間の部分は裏ポケット袋48の内側に位置し、この部分も裏ポケット袋48の内側で引いて径路32内に位置するゴム紐30を短くするものであり、この部分には、ゴム紐30を引く時に保持する引手58が設けられている。
【0026】
次に、上着10の使用方法について説明する。図1に示すように、例えば上着10の表生地22を外側にして着用する時は、表ポケット開口部34のファスナー18を開いて、表ポケット開口部34から表ポケット袋38に小物を入れて携帯する。裾28を着用者のウエストに密着させる時は、引手56を引いて、環部30bを大きくし裾28を絞る。逆に裾28を緩めるときは、まずストッパー54を表生地22越しに操作してゴム紐30に対して係止解除する。そして表ポケット開口部34から表ポケット袋38に手を入れて、表ポケット袋38の内側に位置する一対の表ポケット挿通口44の間のゴム紐30に取り付けられた引手56を引くと環部30bが小さくなり裾28を緩めることができる。
【0027】
一対の表ポケット挿通口44の間のゴム紐30は、一方の端部30aが表ポケット挿通口44とストッパー54、径路用透孔40を通過して、径路32の前中心に固定されている。他方の端部は、表ポケット挿通口44と一対の裏ポケット挿通口50、ストッパー54、径路用透孔40を通過して径路32の後見頃14へとつながっている。つまり、表ポケット袋38の内側に位置するゴム紐30を引いて環部30bを大きくすることにより、ゴム紐30の径路32に挿通された部分を短くし、図4(a)に示すように裾28の絞り量を増やし、着用者のウエストに密着させる。この後、所望の長さの時にストッパー54を表生地22越しに操作してゴム紐30に対して係止させ、その絞り量を維持する。ゴム紐30の環部30bが大きくなっても、表ポケット袋38の内側に収容されているため、邪魔にならず、他の物に引っ掛かるおそれがない。
【0028】
なお、ゴム紐30は、一方の端部30aが表ポケット挿通口44と一対の裏ポケット挿通口50、ストッパー54、径路用透孔40を通過して、径路32の前中心に固定され、他方の端部は、表ポケット挿通口44とストッパー54、径路用透孔40を通過して径路32の後見頃14へとつながっていてもよい。さらに、ゴム紐30の端部が固定されていない構造でも良い。
【0029】
裾28を、着用者のウエストからゆるめる時は、ストッパー54を表生地22越しに操作してゴム紐30に対して係止解除し、裾28の径路32に挿通されているゴム紐30を表生地22または裏生地24越しに引いて長くし、径路用透孔40から引き出されている環部30bを小さくする。裾28の絞り量を減らし、所望の長さの時にストッパー54を表生地22越しに操作してゴム紐30に対して係止させる。
【0030】
次に、図2に示すように、上着10の裏生地24を外側にして着用する時は、裏ポケット開口部46のファスナー18を開いて裏ポケット袋48に小物を入れて携帯する。裾28を絞って、着用者のウエストに密着させる際は、まずストッパー54を裏生地24越しに操作してゴム紐30に対して係止解除する。そして裏ポケット開口部46から裏ポケット袋48に手を入れて、裏ポケット袋48の内側に位置する一対の裏ポケット挿通口50の間のゴム紐30を操作して、環部30bを大きくする。
【0031】
一対の裏ポケット挿通口50の間のゴム紐30は、一方の端部30aが裏ポケット挿通口50とストッパー54、径路用透孔40を通過して、径路32の前中心に固定されている。他方の端部は、裏ポケット挿通口50と一対の表ポケット挿通口44、ストッパー54、径路用透孔40を通過して径路32の後見頃14へとつながっている。つまり、裏ポケット袋48の内側に位置するゴム紐30を引いて環部30bを大きくすることにより、ゴム紐30の径路32に挿通された部分を短くし、図4(b)に示すように、裾28の絞り量を増やし、着用者のウエストに密着させる。この後、所望の長さの時にストッパー54を裏生地24越しに操作してゴム紐30に対して係止させ、その絞り量を維持する。ゴム紐30の環部30bが大きくなっても、裏ポケット袋48の内側に収容されているため、邪魔にならず、他の物に引っ掛かるおそれがない。
【0032】
なお、ゴム紐30は、一方の端部30aが裏ポケット挿通口50と一対の表ポケット挿通口44、ストッパー54、径路用透孔40を通過して、径路32の前中心に固定され、他方の端部は裏ポケット挿通口50とストッパー54、径路用透孔40を通過して径路32の後見頃14へとつながっていてもよい。
【0033】
裾28をウエストからゆるめる際は、表生地22を外側にして着用する場合と同様である。このように、上着10の裾28の長さ調節は、表生地22を外側にして着用した時は表ポケット袋38内側で行い、裏生地24を外側にして着用した時は裏ポケット袋48内側で行う。
【0034】
この実施形態の上着10によれば、表生地22と裏生地24を縫い合わせて形成され表生地22側と裏生地24側で着用が可能なリバーシブル構造で便利であり、裾28を絞るためのゴム紐30の長さ調節操作が、表生地22側と裏生地24側のいずれを着用しても容易である。一本のゴム紐30をストッパー54により環部30bにして、環部30bの大きさを変えることで裾28の絞り量を調節することができ、構造がシンプルで、かさばらない。ゴム紐30の環部30bは、表生地22と裏生地24の間の内部空間26に位置し、環部30bの一部は表生地22側の表ポケット袋38内側と裏生地24側の裏ポケット袋48内側に位置し、表ポケット袋38と裏ポケット袋48の両方から環部30bの操作が可能であり、外の他の物に引っ掛かる恐れがなく、安全である。操作するゴム紐30の環部30bには、表ポケット袋38と裏ポケット袋48の内側に位置する部分に引手56,58が取り付けられ、裾28を絞る際に保持して引くだけで環部30bを大きくすることができる。表ポケット袋38と裏ポケット袋48は、前身頃12の前中心に縫い付けられ、またポケット固定ステッチ52で互いに連結され、さらにポケット端係止片42で裾28付近に連結されているため、大きく移動することが無く、安定してゴム紐30の操作を行うことができる。
【0035】
なお、この発明の布製品は、上記実施形態以外でも良く、上着の裾以外に、ポケット状の空間を設けることにより襟や袖口を絞るものでも可能なであり、フード付きの上着のフード周りを絞るものでも良い。ポケットは、表生地と裏生地に表ポケット開口部と裏ポケット開口部を設けるもの以外に、表生地と裏生地の外面にポケット布が設けられ、表生地と裏生地に、長尺物を挿通する挿通口を設けても良い。布製品としては、上着の他に、ズボンや寝袋、バッグ等の鞄など、色々な製品に応用することができる。布製品の材料は、織物や編み物、不織布、フィルム等がラミネートされた素材も含むものであり、表生地と裏生地の種類や機能は自由に選択可能である。長尺物はゴム紐以外に、伸縮性のない紐等でも良い。ストッパーや引手の構造や材料は、自由に選択可能である。引手は不要であればなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 上着
22 表生地
24 裏生地
26 内部空間
28 裾
30 ゴム紐(長尺体)
30a 端部
30b 環部
32 径路
34 表ポケット開口部
38 表ポケット袋
40 径路用透孔
44 表ポケット挿通口
46 裏ポケット開口部
48 裏ポケット袋
50 裏ポケット挿通口
54 ストッパー
56,58 引手
図1
図2
図3
図4
図5