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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176224
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】蓄熱パネル
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B65D81/38 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094620
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 秋彦
(72)【発明者】
【氏名】大河 政文
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 秀司
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067GA02
3E067GA03
(57)【要約】
【課題】蓄熱パックの破損を抑制しつつ、蓄熱剤の凍結に要する時間の短縮化を図ることができる蓄熱パネルを提供する。
【解決手段】蓄熱パネル40は、フィルムで構成された充填袋41bに蓄熱剤41aが充填された蓄熱パック41と、前記蓄熱パックを収容する収容容器42と、を備え、前記収容容器は、前記フィルムの厚みよりも厚みが大きく且つ前記蓄熱パックを収容する空間を形成する壁を有し、前記壁と前記蓄熱パックとの間には空気の流路40iが設けられ、前記壁には前記流路と前記収容容器の外部とを連通する第1貫通孔42cが設けられている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムで構成された充填袋に蓄熱剤が充填された蓄熱パックと、
前記蓄熱パックを収容する収容容器と、を備え、
前記収容容器は、前記フィルムの厚みよりも厚みが大きく且つ前記蓄熱パックを収容する空間を形成する壁を有し、前記壁と前記蓄熱パックとの間には空気の流路が設けられ、前記壁には前記流路と前記収容容器の外部とを連通する第1貫通孔が設けられている、
蓄熱パネル。
【請求項2】
前記収容容器は、
第1面と、
前記第1面に対して直交する厚み方向において前記蓄熱パックを挟んで前記第1面の反対に位置する面である第2面と、
前記第1面から前記第2面へ向かって前記厚み方向に対して直交する断面積が大きくなるように、前記厚み方向に対して傾斜する傾斜面と、を有し、
前記第1貫通孔は前記傾斜面に設けられている、
請求項1に記載の蓄熱パネル。
【請求項3】
前記収容容器は、
前記厚み方向に対して直交する方向における前記蓄熱パックの中央に対応する中央領域と、
前記中央領域の周囲を取り囲む外周領域と、
前記外周領域において前記第1面から窪む複数の凹部と、を有し、
互いに隣接する前記凹部同士の間の空気の流路は、前記第1貫通孔、及び、前記中央領域の前記壁と前記蓄熱パックとの間の空気の流路、に連通している、
請求項2に記載の蓄熱パネル。
【請求項4】
前記蓄熱剤の凍結を判定する判定マークを備え、
前記収容容器は、
第1面と、
前記第1面に対して直交する厚み方向において前記判定マークとの間に前記蓄熱剤を挟むように配置された第2貫通孔を有し、
前記蓄熱パックは、前記蓄熱剤が凍結していない状態よりも凍結した状態の方が透明度が低下する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱パネル。
【請求項5】
前記判定マークは、前記収容容器又は前記充填袋において前記厚み方向に沿って見て前記第2貫通孔と重なる領域のうち一部分に設けられている、
請求項4に記載の蓄熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱箱の内部の温度を長時間に亘って維持する蓄熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を保冷する蓄熱パネルとして、特許文献1に開示されているような蓄冷剤充填容器が知られている。この蓄冷剤充填容器は、中空部を有する容器、及び、中空部に充填された蓄冷剤を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-334813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容器は、ブロー成形により造られた樹脂成形品であり、保冷配送可能なように、その中空部を取り囲む容器の壁が厚い。このため、容器内の蓄冷剤の凍結に長時間を要するため、凍結されてから保冷搬送に使用されている蓄冷剤充填容器に加えて、使用前の蓄冷材充填容器を凍結するために余剰の蓄冷剤充填容器が必要になるという課題がある。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、蓄熱パックの破損を抑制しつつ、蓄熱剤の凍結に要する時間の短縮化を図ることができる蓄熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る蓄熱パネルは、フィルムで構成された充填袋に蓄熱剤が充填された蓄熱パックと、前記蓄熱パックを収容する収容容器と、を備え、前記収容容器は、前記フィルムの厚みよりも厚みが大きく且つ前記蓄熱パックを収容する空間を形成する壁を有し、前記壁と前記蓄熱パックとの間には空気の流路が設けられ、前記壁には前記流路と前記収容容器の外部とを連通する第1貫通孔が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、収容容器はその壁の厚みが大きいことにより剛性を有し、収容容器内の蓄熱パックを外力から保護することにより、蓄熱パックの破損を抑制することができる。また、収容容器の壁に設けられた第1貫通孔を介して収容容器内の空気の流路に流入した冷気によって、薄い充填袋内の蓄熱剤が冷却されるため、蓄熱パックの凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係る断熱箱を示す斜視図である。
図2図2は、断熱箱の分解斜視図である。
図3図3は、断熱箱の一部の断面図である。
図4図4は、真空断熱パネルの分解斜視図である。
図5図5Aは、圧縮永久歪み試験に用いられる封止材を示す図である。図5Bは、圧縮板による圧縮状態の封止材を示す図である。図5Cは、圧縮状態から解放された封止材を示す図である。
図6図6Aは、4つの芯材部分により形成された芯材を示す図である。図6Bは、6つの芯材部分により形成された芯材を示す図である。図6Cは、図6A及び図6Bの芯材に用いられる芯材部分の基材を示す図である。図6Dは、図6Bの芯材に用いられる芯材部分の基材を示す図である。
図7図7は、変形例2に係る真空断熱パネルの一部を示す断面図である。
図8図8は、本開示の実施の形態2に係る断熱箱を示す分解斜視図である。
図9図9は、断熱箱の断面図である。
図10図10は、蓄熱パネルを厚み方向の内側から見た図である。
図11図11は、蓄熱パネルの分解斜視図である。
図12図12Aは、蓄熱パネルの断面図である。図12Bは、蓄熱パネルの一部の断面図である。
図13図13は、変形例の蓄熱パネルの断面図である。
図14図14Aは、判定マークが充填袋に設けられた蓄熱パネルの一部の断面図である。図14Bは、凍結していない蓄熱剤を介して第2貫通孔から判定マークを見た図である。図14Cは、凍結した蓄熱剤を第2貫通孔を見た図である。図14Dは、判定マークが収容容器に設けられた蓄熱パネルの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下ではすべての図面を通じて同一または対応する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明は省略する。
【0010】
<実施の形態1>
<断熱箱>
実施の形態1に係る断熱箱10は、図1に示すように、その断熱空間10aに医薬品、検体、食品等の物品を収容して、輸送したり保管したりするために用いられる保温容器である。以下では、断熱箱10を、例えば1200Lの収納容積の大型のコンテナに適用した場合について説明するが、断熱箱10はこれに限定されず、例えば、携帯可能な保温箱であってもよい。また、図1の例では断熱箱10はパレット11に取り付けられているが、断熱箱10はパレット11に取り付けられていなくてもよい。
【0011】
断熱箱10は、例えば直方体形状であって、複数(例えば、6枚)の断熱板20、及び、これらの断熱板20により取り囲まれた内部空間である断熱空間10aを備えている。断熱板20は矩形平板状である。複数の断熱板20は、上側断熱板20a、下側断熱板20b(図2)及び4枚の側壁断熱板20c1~20c4を含んでいる。側壁断熱板20c1~20c4は、前側断熱板20c1、後側断熱板20c2、左側断熱板20c3及び右側断熱板20c4を含んでおり、上部開口及び下部開口を有する角筒形の側壁を成している。下側断熱板20bは、この側壁の下部開口を覆う断熱箱10の底を成している。また、上側断熱板20aは、側壁の上部開口を開閉可能に覆う断熱箱10の蓋を成している。
【0012】
<断熱板>
図2に示すように、断熱板20は、真空断熱パネル30、及び、真空断熱パネル30を保護する保護板21を有している。断熱板20において、保護板21よりも真空断熱パネル30側を内と称し、その反対側を外と称する。この保護板21の外面は断熱板20の外面を成し、真空断熱パネル30の内面である第1内面30aは断熱板20の内面を成している。6枚の断熱板20の真空断熱パネル30の第1内面30aにより、断熱箱10の断熱空間10aの周囲が取り囲まれる。これにより、第1内面30aは断熱空間10aを形成する。
【0013】
下側断熱板20bの外面及び取り付け枠12が矩形平板状のパレット11の上面に取り付けられている。取り付け枠12は、L字状に接続された矩形平板状の下枠12a及び矩形平板状の外枠12bを有している。下枠12aは、その内縁が下側断熱板20bの外周縁に沿うようにパレット11の上面に取り付けられている。外枠12bは下枠12aの外縁から立ち上がっている。側壁断熱板20c1~20c4の下端部が下側断熱板20bと外枠12bとの間に差し入れられることにより、側壁断熱板20c1~20c4は、下側断熱板20bに組み合わされて、下枠12aから上方に立ち上がる。
【0014】
側壁断熱板20c1~20c4の保護板21の外面には、例えば、2つの窪みである取っ手21aが設けられている。また、これらの側壁断熱板20c1~20c4の上に配置されている上側断熱板20aの保護板21の外面には、例えば、4つの取っ手21aが設けられている。これにより、断熱箱10がコンテナであってその断熱板20が大きい場合であっても、ユーザは取っ手21aを用いることにより、断熱板20を容易に運んだり組み立てたりすることができる。
【0015】
また、前側断熱板20c1及び後側断熱板20c2のそれぞれの保護板21の外面には、例えば2つのロック22の係合部22aが取り付けられている。また、上側断熱板20aの保護板21の前端及び後端のそれぞれには、例えば2つのロック22の係合部22bが取り付けられている。前側断熱板20c1の係合部22aと上側断熱板20aの前端の係合部22bが係合され、後側断熱板20c2の係合部22aと上側断熱板20aの後端の係合部22bが係合されることにより、上側断熱板20aが前側断熱板20c1及び後側断熱板20c2に固定される。
【0016】
図3に示すように、断熱板20は、真空断熱パネル30及び保護板21に加えて、断熱体23及び保護枠24を有している。断熱体23は、矩形平板状であって、ポリエチレンフォーム等の発泡材から成る。断熱体23は、真空断熱パネル30の第1内面30aに対して直交する厚み方向において真空断熱パネル30と保護板21との間に配置されている。厚み方向に対して直交する直交方向において、断熱体23のサイズは真空断熱パネル30のサイズよりも大きく、保護板21のサイズは断熱体23のサイズよりも大きい。このため、断熱体23の内面は真空断熱パネル30の外面である第1外面30bの全体を覆い、保護板21の内面は断熱体23の外面の全体を覆っている。これにより、真空断熱パネル30は断熱体23及び保護板21により外力から保護される。
【0017】
真空断熱パネル30は、その第1外面30bの外周縁に接続された第1面取り面30d、及び、第1外面30bの外周縁から直交方向に突出する第1フランジ31を有している。第1フランジ31は、厚み方向に沿って断熱体23に重ねられて、保護枠24により覆われている。この保護枠24は、保護板21の内面に固定されていることにより、真空断熱パネル30及び断熱体23を保護板21に取り付ける。さらに、保護枠24は、断熱体23の側面の周囲及び第1面取り面30dの周囲を取り囲んでおり、断熱体23の側面及び真空断熱パネル30の第1面取り面30dを保護している。
【0018】
<真空断熱パネル>
図4に示すように、真空断熱パネル30は、内部空間を有する外被材32と、外被材32の内部空間に収容された芯材33を有している。外被材32は、ガスバリア性を有する材料の成形体であって、その内部空間は大気圧よりも低い所定の圧力に減圧され、密封されている。この外被材32は、例えば、その厚みが1.0mmであって、熱溶着可能な熱可塑性樹脂層と、エチレン-ビニルアルコール共重合体又はポリビニルアルコール重合体等の空気バリア層と、ポリプロピレン等の水蒸気バリア層とによる積層構造を採用することができる。
【0019】
外被材32は、例えば第1内壁32a及び第1外壁32bを有している。第1内壁32aは、四角錐台状等の角錐台状であって、矩形状の開口、開口の周囲を取り囲む第1内壁フランジ部32a1、及び、第1内壁フランジ部32a1から厚み方向の内側に窪んだ第1内壁窪み部32a2を有している。また、第1外壁32bは、矩形平板状であって、第1内壁32aの開口を覆う第1被覆部32b1、及び、第1被覆部32b1の周囲を取り囲む第1外壁フランジ部32b2を有している。この第1外壁フランジ部32b2は、第1内壁フランジ部32a1と同一形状及び同一サイズを有している。この第1内壁32aは、例えば真空成形により形成されることにより、ブロー成形及び射出成形等の高価な成形金型を用いずに、外被材32を低コストで製造することができる。
【0020】
このような外被材32において第1内壁32aの開口から第1内壁窪み部32a2内に芯材33が挿入され、第1内壁32aの開口が第1外壁32bの第1被覆部32b1により被覆されることによって、外被材32の内部空間に芯材33が収容される。そして、第1内壁フランジ部32a1と第1外壁フランジ部32b2とが重ねられて熱溶着される。この熱溶着された第1内壁フランジ部32a1と第1外壁フランジ部32b2により、第1フランジ31が形成される。また、第1内壁32aの第1内壁窪み部32a2の表面のうち、厚み方向において第1外壁32bに対向する面とは反対の面により真空断熱パネル30の第1内面30a、第1傾斜面30c及び第1面取り面30dが形成される。また、第1外壁32bの第1被覆部32b1の表面のうち、厚み方向において第1内壁32aと対向する面とは反対の面により真空断熱パネル30の第1外面30bが形成される。それから、第1内壁32a又は第1外壁32bに設けられた吸引口から外被材32の内部空間の空気が吸引されて、外被材32の内部空間が減圧される。それから、吸引口が封止部材により封止されることにより、外被材32の内部空間が密封される。
【0021】
芯材33は、熱伝導性の低い多孔質材料で形成されており、真空断熱パネル30の骨格となって外被材32の内部空間を形成する。芯材33は、グラスウールから成る第1芯材層33a、及び、連続気泡構造のポリウレタンフォーム等の連続気泡体から成る第2芯材層33bを有している。第2芯材層33bは、四角錐台状等の角錐台状であって、内面、及び、内面から窪んだ芯材窪み33b1を有している。第1芯材層33aは、矩形平板状であって、第2芯材層33bの芯材窪み33b1に収容されて、四角錐台状等の角錐台状の芯材33が形成される。
【0022】
このように、芯材33は、厚み方向において積層された2つの芯材層33a、33bにより構成されているが、1つの芯材33により構成されていてもよく、又は、厚み方向において積層された3つ以上の芯材層により構成されていてもよい。また、芯材33は、グラスウール及び連続気泡構造のポリウレタンフォームに限定されず、ガラス繊維の集合体、及び、無機微粒子の集合体等の多孔質体から成ってもよい。
【0023】
さらに、図2に示すように、真空断熱パネル30の外被材32の内部空間には、気体吸着材34が収容されていてもよい。例えば、真空断熱パネル30の芯材33の内面から厚み方向の外側に窪んでおり、この窪みに気体吸着材34が配置されて外被材32により覆われている。気体吸着材34は、外被材32の内部空間に残存又は侵入する水蒸気及び空気等の気体を吸着する。これにより、外被材32の内部空間の圧力を低く維持することができる。
【0024】
さらに、真空断熱パネル30の外被材32の内部空間には圧力センサ35が収容されていてもよい。圧力センサ35は、検圧部35a、送信部35b、給電部35c及びこれらを収容するセンサケース35dを有している。このような圧力センサ35が外被材32に収容される場合には、外被材32は、合成樹脂等、無線通信の電波が透過可能な非金属材料から成る。これにより、圧力センサ35により検出された圧力が、外被材32の外部と無線通信可能になる。
【0025】
検圧部35aは、例えばヒータ及び熱電対を備え、ヒータを加熱したときに熱電対で検出される温度から周囲の熱伝導特性を測定することで外被材32の内部空間における気圧(真空度)を測定する。ただし、検圧部35aの構成はこれに限られず、例えばピエゾ式、静電容量式、あるいは振動式等の微小電気機械システム(MEMS)を採用してもよい。
【0026】
送信部35bは、検圧部35aと電気的に接続されており、検圧部35aが検出した圧力に関する情報を無線通信により外被材32の外部へ送信する。そのために、送信部35bは、通信制御IC、メモリ、およびアンテナ等を有している。例えば送信部35bは、13.56MHz帯の周波数を使った近距離無線通信装置であって、NFC(Near Field Communication)によって情報を送信する。
【0027】
給電部35cは、検圧部35aおよび送信部35bと電気的に接続されており、これらに電力を供給する。例えば給電部35cは、給電制御ICおよび磁気共鳴方式のワイヤレス給電の受電部を有している。この受電部は、外被材32の外部の1次側コイル(送電コイル)から無接触受電する2次側コイル(受電コイル)を含む。受電コイルは、送電コイルから伝送された電力を受け、給電制御ICはこの電力を検圧部35aおよび送信部35bに供給する。
【0028】
センサケース35dは、樹脂などの非金属材料で形成されており、例えば厚み方向において扁平な平板形状を成し、複数の貫通孔により内外を連通させる。このような圧力センサ35は、断熱箱10のそれぞれの真空断熱パネル30に設けられている。この真空断熱パネル30の外被材32の内部空間において芯材33の内面から厚み方向の外側に窪んでおり、この窪みに圧力センサ35が配置されて外被材32により覆われている。これにより、圧力センサ35は、厚み方向において第1外面30bよりも第1内面30aの近くに配置される。
【0029】
図2に示すように、このような真空断熱パネル30の断熱性能は、テスター13を用いて検査される。テスター13は、受信部13a及び送電部13bを有し、コンピュータ13dに接続されている。受信部13aは、例えば通信制御IC、メモリ、およびアンテナ等を備えており、真空断熱パネル30の圧力センサ35が有する送信部35bとの間で、例えばNFC等によって通信可能である。また、送電部13bは、1次コイルを成す送電コイルを含み、電源からの給電により磁界を発生させる。
【0030】
このテスター13による真空断熱パネル30の断熱性能の検査では、ユーザは、真空断熱パネル30の外被材32を介して圧力センサ35に対向するようにテスター13を真空断熱パネル30の第1内面30aに接触させる。この状態で、ユーザはテスター13の送電部13bに給電すると、送電部13bが磁界を発生し、真空断熱パネル30の給電部35cが有する2次側コイル(受電コイル)に電磁誘導が生じ、圧力センサ35は給電される。このようにして供給された電力により、圧力センサ35は、検圧部35aにて圧力を検知し、検知した圧力に関する情報を、送信部35bにより送信する。送信された情報はテスター13の受信部13aにて受信され、コンピュータ13dへ送られる。コンピュータ13dは、入力された情報に基づき、真空断熱パネル30の断熱性能が許容し得るか否かを判断し、その結果を出力(例えば、表示)する。このように、ユーザは、真空断熱パネル30の断熱性能を検査することができる。
【0031】
なお、保護板21のうち、少なくとも圧力センサ35に対向する部分が樹脂などの無線通信の電波を透過する素材で構成されていてもよい。この場合、ユーザは、テスター13を保護板21の樹脂部分の外面に接触させる。これにより、テスター13は、保護板21の樹脂部分及び真空断熱パネル30の外被材32を介して圧力センサ35に対向して圧力センサ35と無線通信可能になる。このため、テスター13は、圧力センサ35による検知圧力を受信することにより、真空断熱パネル30の断熱性能の検査を行うことも可能である。
【0032】
図2及び図3に示すように、真空断熱パネル30は、四角錐台状等の角錐台状であって、第1内面30a、第1外面30b、第1傾斜面30c及び第1面取り面30dを有している。第1内面30a及び第1外面30bは、矩形状であって、厚み方向に対して直交している。真空断熱パネル30の第1内面30aは外被材32の第1内壁32aにより形成されており、断熱板20の内面を成している。真空断熱パネル30の第1外面30bは、外被材32の第1外壁32bの第1被覆部32b1(図4)により形成されており、厚み方向において芯材33を挟んで第1内面30aの反対に位置する面であって、断熱板20において断熱体23の内面に対向している。第1外面30bの面積は第1内面30aの面積よりも大きい。真空断熱パネル30の第1外面30bの周囲を取り囲むように、第1外面30bの外周縁から第1フランジ31が広がっている。
【0033】
第1面取り面30dは、その外端が第1外面30bの外周縁に接続されており、第1外面30bの外周縁から厚み方向の内側に延びている。第1傾斜面30cは、その外端が第1面取り面30dの内端に接続されており、その内端が第1内面30aの外周縁に接続されている。第1傾斜面30cは、厚み方向及び直交方向に対して傾斜しており、厚み方向に対する傾斜角度θは45度である。この第1傾斜面30cによって、厚み方向に対して直交する真空断熱パネル30の断面積は、厚み方向において第1内面30aから第1外面30bへ向かって、つまり、厚み方向の外側ほど大きくなる。
【0034】
このような真空断熱パネル30を含む断熱板20により断熱箱10を形成する場合、互いに隣接する真空断熱パネル30において第1傾斜面30c同士が対向している。図3の例では、下側断熱板20bの真空断熱パネル30と左側断熱板20c3の真空断熱パネル30とは、互いに隣接しており、下側断熱板20bの第1傾斜面30cと左側断熱板20c3の第1傾斜面30cとが対向している。これらの対向する第1傾斜面30c同士は、互いに平行に設けられている。
【0035】
この下側断熱板20b及び左側断熱板20c3と同様に、図2に示す下側断熱板20bの真空断熱パネル30は前側断熱板20c1、後側断熱板20c2及び右側断熱板20c4のそれぞれの真空断熱パネル30と隣接し、下側断熱板20bの真空断熱パネル30の第1傾斜面30cは断熱板20c1、20c2、20c4の真空断熱パネル30の第1傾斜面30cと対向している。また、上側断熱板20aの真空断熱パネル30は側壁断熱板20c1~20c4と隣接し、上側断熱板20aの真空断熱パネル30の第1傾斜面30cは側壁断熱板20c1~20c4の第1傾斜面30cと対向している。
【0036】
さらに、前側断熱板20c1の真空断熱パネル30は左側断熱板20c3及び右側断熱板20c4のそれぞれの真空断熱パネル30と隣接し、前側断熱板20c1の真空断熱パネル30の第1傾斜面30cは断熱板20c3、20c4の真空断熱パネル30の第1傾斜面30cと対向している。また、後側断熱板20c2の真空断熱パネル30は左側断熱板20c3及び右側断熱板20c4のそれぞれの真空断熱パネル30と隣接し、後側断熱板20c2の真空断熱パネル30の第1傾斜面30cは断熱板20c3、20c4の真空断熱パネル30の第1傾斜面30cと対向している。
【0037】
この第1傾斜面30cが、図3に示すように、第1内面30a及び第1面取り面30dに対して傾斜することにより、第1内面30aと第1傾斜面30cとの角、及び、第1傾斜面30cと第1面取り面30dとの角について角度が90度よりも大きくなる。このため、第1傾斜面30c同士を対向させて真空断熱パネル30を組み立てる際に、仮に一方の真空断熱パネル30の角が他方の真空断熱パネル30に当たっても、その真空断熱パネル30の損傷を抑制することができる。従って、真空断熱パネル30による断熱箱10の組み立て作業を容易に実施することができる。
【0038】
また、下側断熱板20bの第1傾斜面30cと外枠12bとの間隔は上方ほど大きくなる。このため、仮に側壁断熱板20c1~20c4が傾いていても、下側断熱板20bに当たることなく、側壁断熱板20c1~20c4の下端部をこの間隔に差し入れ易い。このため、真空断熱パネル30による断熱箱10の組み立て作業を容易に実施することができる。さらに、コンテナ等のサイズが大きい断熱箱10では、真空断熱パネル30が大きく傾き易い場合であっても、角による真空断熱パネル30の損傷の抑制によって断熱箱10の組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0039】
また、上方ほど厚み方向の外側に傾くように側壁断熱板20c1~20c4を傾けた状態で、側壁断熱板20c1~20c4の下端部を下側断熱板20bの第1傾斜面30cと外枠12bとの間隔に差し入れながら、側壁断熱板20c1~20c4が上下方向に平行になるように傾きを調整することができる。このように、真空断熱パネル30の下端部を差し入れつつ真空断熱パネル30の傾きを調整することによって断熱箱10の組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0040】
厚み方向における第1面取り面30dの寸法h1は、厚み方向における真空断熱パネル30の寸法H1についての式:h1<(1-√2/2)H1を満たす。この寸法H1は、厚み方向における真空断熱パネル30の第1内面30aと第1外面30bとの間の寸法である。これにより、第1傾斜面30cの外端と内端との間の寸法L1が真空断熱パネル30の寸法H1よりも大きくなる。このため、真空断熱パネル30により取り囲まれた断熱空間10aとこの外部との間において、対向する第1傾斜面30c同士の間隙である伝熱経路14の寸法L1が寸法H1よりも長くなる。よって、伝熱経路14を介した断熱空間10aとこの外部との間の伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0041】
また、隣接した真空断熱パネル30同士において、第1面取り面30dにより第1フランジ31同士の接触を抑制することができる。すなわち、図3の例では、真空断熱パネル30の第1外面30bと第1傾斜面30cとの角が面取りされて、第1外面30bと第1傾斜面30cとの間の第1面取り面30d、及び、この第1面取り面30dと第1外面30bの延長面と第1傾斜面30cの延長面との間の第1面取り空間30eが形成される。下側断熱板20bでは、その第1面取り空間30eに、第1外面30bから左に突出する第1フランジ31が収まる。また、左側断熱板20c3では、その第1面取り空間30eに、第1外面30bから下に突出する第1フランジ31が収まる。これにより、下側断熱板20bの第1フランジ31と左側断熱板20c3の第1フランジ31とは当たらずに、下側断熱板20bの第1傾斜面30cと左側断熱板20c3の第1傾斜面30cとを対向させた状態でこの間隙をできるだけ小さくすることができる。このため、互いに対向する第1傾斜面30c同士の伝熱経路14の寸法Wを小さく抑え、伝熱経路14を介した伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0042】
<封止材>
図3に示すように、さらに、断熱箱10は、第1傾斜面30c同士の間に配置された封止材25を備えている。封止材25は、例えば多孔質体から成り、厚みが薄いシート状を有し、第1傾斜面30cに接着剤等により取り付けられている。真空断熱パネル30の寸法誤差や断熱板20の組付け誤差によって第1傾斜面30c同士に間隙が設けられる。このような場合であっても、封止材25は、第1傾斜面30c同士の間に介在することによって、この間隙である伝熱経路14における空気の流通を低減する。これにより、この空気の流通による断熱空間10aへの伝熱を抑制し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0043】
この封止材25の圧縮永久歪みが60%以下である。この圧縮永久歪みは、例えば、図5Aの封止材25を用いて以下の圧縮歪み試験にて測定される。この封止材25は、その厚みd1が10mmであって、直交方向におけるサイズが50mm角である。図5Bに示すように、この封止材25は、5℃にて、その厚みd2が1mmになるように、2枚のアルミニウム製の圧縮板Bに挟まれて圧縮される。この圧縮状態で、封止材25は、5℃の雰囲気温度に保たれた恒温槽にて、2時間、5時間、22時間、72時間及び220時間のそれぞれの時間、放置される。この恒温試験後に、図5Cに示すように、封止材25は、5℃にて2枚の圧縮板Bの間から取り出され、その圧縮状態から解放されてから24時間の放置後に、封止材25の厚みd3が測定される。
【0044】
なお、多くの場合において断熱箱10は5℃の倉庫内で保管され、断熱箱10の開閉作業も5℃倉庫内で行われるため、上記封止材25の圧縮歪み試験は5℃で行なわれた。ただし、封止材25の圧縮歪み試験の温度はこれに限定されず、封止材25が使用される温度域に応じて定められる。例えば、20℃で断熱箱10の開閉作業が行なわれる場合には、封止材25の圧縮歪み試験は20℃で行なわれてもよい。
【0045】
このような圧縮歪み試験が行われた封止材25の圧縮永久歪みは、下記の式にて算出される。この式では、d1が、図5Aに示すように圧縮前の封止材25の厚みであり、d2が、図5Bに示すように恒温試験前の圧縮状態の封止材25の厚みであり、d3が、図5Cに示すように恒温試験後に圧縮状態から解放されてから30分間放置後の封止材25の厚みである。上記圧縮歪み試験では厚みd1が10mmであり、厚みd2が1mmであるため、測定された厚みd3により封止材25の圧縮永久歪みが算出される。
圧縮永久歪み(%)=(d1-d3)/(d1-d2)×100
【0046】
このように算出される圧縮永久歪みが60%以下であることにより、封止材25は真空断熱パネル30の第1傾斜面30c同士の間隙を封止することができる。すなわち、例えば、真空断熱パネル30の寸法誤差により設計精度は、設計中心値から±1mmである。また、断熱板20の組付け誤差による組付け精度は、設計中心値から±1mmである。この場合、真空断熱パネル30の第1傾斜面30c同士の間隙の設計値は、3mm±2mmである。これにより、間隙の最大値は5mmであり、最小値は1mmである。
【0047】
例えば、第1傾斜面30c同士の間隙が最小値の1mmである場合、この間隙に配置された封止材25が最も圧縮された状態の封止材25の厚みd2=1mmである。この封止材25の圧縮永久歪みが60%以下であるため、圧縮解放後の封止材25の厚みd3は5.4mm以上の厚さに復元する。この厚みは間隙の最大値よりも大きいため、次に第1傾斜面30c同士の間隙が最大値の5mmで組み立てられた場合であっても、この間隙に配置された封止材25は間隙を封止することができる。これにより、間隙である伝熱経路14における空気の流通による断熱空間10aへの伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0048】
また、封止材25の厚みd1は、気密性の確保のために、その圧縮率が50%以上で使用されるため、10mm以上である。このような封止材25の圧縮永久歪みが60%以下であって、さらに好ましくは55.6%以下である。このため、1mm以上且つ5mm以下の間隙においても封止材25の圧縮率が50%以上になるため、圧縮された封止材25は、間隙において気密性を確保し、間隙を封止することができる。これにより、間隙である伝熱経路14における空気の流通による断熱空間10aへの伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0049】
なお、上記構成では、第1傾斜面30c同士の間隙の最大値は5mmであるため、封止材25の厚みを10mm以上としたが、封止材25の厚みはこれに限定されない。さらに、互いに対向する第1傾斜面30c同士のうち一方のみに、厚み10mm以上の封止材25を設置してもよい。また、互いに対向する第1傾斜面30c同士の両方に、厚み5mm以上の封止材25を設置してよい。この場合、互いに対向する第1傾斜面30c同士の間隙には、2枚の封止材25が配置され、その封止材25の合計厚みは10mm以上としてもよい。
【0050】
また、封止材25の圧縮永久歪みが60%以下と小さいことにより、封止材25の回復率が大きい。例えば断熱板20の組み立て及び解体を繰り返すような断熱箱10では、対向する第1傾斜面30c同士の間隙の寸法Wは断熱箱10の組み立て毎に変化する。このように間隙の寸法Wにバラツキがあるような場合であっても、封止材25は断熱箱10の解体毎に回復するため、最大寸法の間隙も封止することができる。
【0051】
また、封止材25は、50%の圧縮時の圧縮強度が3N/cm以下である。図1に示すように、上側断熱板20aは前側断熱板20c1及び後側断熱板20c2のそれぞれとロック22により固定されている。この場合、ロック22の引張荷重F、ロック22の個数n、上側断熱板20aの重量X、及び、上側断熱板20aと封止材25の接触面積Aについて、50%の圧縮時の封止材25の圧縮強度Pは、下記の式に表される。
P≦(F・n+X・9.8)・cos45°/A
【0052】
例えば、ロック22の引張荷重Fが1500(N)であり、ロック22の個数nが4つであり、上側断熱板20aの重量Xが16.8(kg)であり、上側断熱板20aと封止材25の接触面積Aが1503(cm)である。この場合、50%の圧縮時の封止材25の圧縮強度Pは、3N/cm以下であって、より好ましくは2.9(N/cm)以下である。これにより、封止材25の圧縮率が50%以上になることにより、封止材25は間隙において気密性を確保し、間隙を封止することができる。これにより、間隙である伝熱経路14における空気の流通による断熱空間10aへの伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0053】
また、封止材25は、発泡ゴムから成り、より好ましくは発泡エチレンプロピレンゴムから成る。この発泡エチレンプロピレンゴム製の封止材25によれば、圧縮永久歪みが60%以下であり、且つ、50%の圧縮時の圧縮強度が3N/cm以下である。これにより、封止材25は回復率が大きく、且つ、第1傾斜面30c同士の間隙にて50%以上に圧縮される。このため、間隙の寸法にバラツキがあるような場合であっても、封止材25は間隙を封止することにより、間隙である伝熱経路14における空気の流通による断熱空間10aへの伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0054】
<変形例1>
図6A及び図6Bに示すように、真空断熱パネル30の芯材33は、直交方向に並べられた複数の芯材部分33cにより形成されていてもよい。図6Aの例の芯材33では、直交方向のうちの一方向(横方向)に沿って2枚の芯材部分33cが並び、この横方向に直交する縦方向に沿って2枚の芯材部分33cが並んでいる。図6Bの例の芯材33では、直交方向の横方向に沿って3枚の芯材部分33cが並び、直交方向の縦方向に沿って2枚の芯材部分33cが並んでいる。この芯材部分33c及び芯材33のサイズが大きくなるほど、これらの反りが大きくなる。よって、複数の小さい芯材部分33cにより形成された芯材33の反りは、1枚の大きな芯材33の反りよりも小さくなるため、複数の芯材部分33cにより形成されることによって芯材33の反りを低減することができる。
【0055】
図6Aの例の芯材部分33cは、例えば、図6Cに示す1枚の角錐台状の芯材部分33cの基材33dにおいて、横方向に延びる1対の辺のうちの一辺、及び、縦方向に延びる一対の辺のうちの一辺が切断されて形成される。そして、この芯材部分33cの切断面同士が対向するように、2枚の芯材部分33cが横方向及び縦方向のそれぞれの方向に並べられて、角錐台状の芯材33が形成される。
【0056】
図6Bの例の横方向に並ぶ3つの芯材部分33cのうち、中央の芯材部分33c2は、図6Dに示す1枚の角錐台状の基材33dにおいて、横方向に延びる1対の辺のうちの一辺、及び、縦方向に延びる一対の辺の両辺が切断されて形成される。また、3つの芯材部分33cのうち、この芯材部分33c2を互いの間に挟む2つの芯材部分33c1は、図6Aの芯材部分33cと同様に、図6Cのように基材33dを切断することにより形成することができる。ここで、縦方向に並ぶ芯材部分33cのうち、一方の芯材部分33cのサイズは、他方の芯材部分33cよりも小さく形成される。そして、芯材部分33c1、33c2の切断面同士が対向するように、3枚の芯材部分33c1、33c2が横方向に並べられ、2枚の芯材部分33c1、33c2が縦方向に並べられて、角錐台状の芯材33が形成される。
【0057】
このように、芯材部分33cの数及びサイズを調整することにより、複数種類の形状及びサイズの芯材33を形成することができる。ここで、基材33dよりも小さい複数の芯材部分33cによって、基材33dよりも大きい芯材33を形成することにより、基材33dの金型のサイズが芯材33の金型のサイズよりも小さく、金型のコストを抑えることができる。また、複数種類の芯材部分33cは1種類の基材33dを切断して形成されることにより、芯材部分33c毎に金型を形成するよりも、基材33dの金型の数が少なく、金型のコストを抑えることができる。このように、芯材33を安く製造することができる。
【0058】
この芯材部分33cは、連続気泡構造のポリウレタンフォームから成る。連続気泡構造のポリウレタンフォームは、互いに連通した複数の気泡を含んでいる。この複数の気泡が連通することにより、外被材32内に収容された芯材部分33cの気泡から排気することができる。これにより、外被材32内の真空度を高め、真空断熱パネル30の断熱性を高めることができる。
【0059】
また、連続気泡構造のポリウレタンフォームは、気泡を含ませて多孔質にした合成樹脂発泡体であって一体的に形成されているため、ガラス繊維及びシリカ粉末等の集積体よりも切断し易い。よって、連続気泡構造のポリウレタンフォームから成る基材33dを切断して、芯材部分33cを容易に形成することができる。
【0060】
なお、上記構成では、外被材32に収容される1つの芯材33を複数の芯材部分33cで形成した。但し、図4の例のように、芯材33は、厚み方向に積層された第1芯材層33a及び第2芯材層33bを有していてもよい。この場合、第1芯材層33a及び第2芯材層33bの少なくともいずれか一方が、直交方向に並んだ複数の芯材部分33cにより形成されていてもよい。
【0061】
<変形例2>
図7に示すように、真空断熱パネル30は、第1面取り面30d(図3)を有していなくてもよい。この場合、真空断熱パネル30は、第1内面30a、第1外面30b及び第1傾斜面30cを有している。第1傾斜面30cは、その外端が第1外面30bの外周縁に接続されており、その内端が第1内面30aの外周縁に接続されている。第1傾斜面30cは、厚み方向及び直交方向に対して傾斜しており、厚み方向に対する傾斜角度θは45度である。この真空断熱パネル30を含む断熱板20により断熱箱10を形成する場合、互いに隣接する真空断熱パネル30において第1傾斜面30c同士を対向させることにより、真空断熱パネル30の損傷を抑制し、真空断熱パネル30による断熱箱10の組み立て作業を容易に実施することができる。
【0062】
また、真空断熱パネル30の外被材32は、例えばブロー成形等により形成され、第1フランジ31が設けられない。このため、第1面取り面30dが真空断熱パネル30に設けられていなくても、互いに隣接する真空断熱パネル30において第1フランジ31同士が衝突しないため、第1傾斜面30c同士を対向することができる。この真空断熱パネル30は、第1面取り面30dが設けられた真空断熱パネル30よりも第1傾斜面30c同士の間の伝熱経路14を長いため、さらに伝熱経路14を介した伝熱を低減し、断熱空間10aの温度変化を低減することができる。
【0063】
<実施の形態2>
<断熱箱>
実施の形態2に係る断熱箱10は、図8及び図9に示すように、その断熱空間10aに配置され且つ保冷材又は保温材として用いられる複数(例えば、10枚)の蓄熱パネル40、及び、断熱箱10の底面10b上に配置された伝熱体50を備えている。以下では、蓄熱パネル40は、断熱箱10の外気温及び常温(例えば、23度)等の所定温度よりも低い温度に断熱空間10aの温度を維持する保冷材として用いられる場合について説明するが、所定温度よりも高い温度に断熱空間10aの温度を維持する保温材として用いられてもよい。蓄熱パネル40は、断熱箱10に収容される医薬品等の物品の管理温度に応じて、例えば管理温度以下の5度に冷凍機で凍結されてから断熱空間10aに配置される。
【0064】
蓄熱パネル40は、断熱箱10を形成する断熱板20の真空断熱パネル30よりも小さく、真空断熱パネル30よりも厚み方向の内側に配置されている。蓄熱パネル40は、断熱箱10において断熱板20aの真空断熱パネル30の第1内面30aに対向する外面である第2外面40bを有している。複数の蓄熱パネル40は、例えば、2枚の上側の蓄熱パネル40、2枚の前側の蓄熱パネル40、2枚の後側の蓄熱パネル40、2枚の左側の蓄熱パネル40及び2枚の右側の蓄熱パネル40を含んでいる。
【0065】
2枚の上側の蓄熱パネル40は左右方向に間隔を空けて並び、上側の蓄熱パネル40の第2外面40bは上側断熱板20aの真空断熱パネル30の第1内面30aに対向して接触している。2枚の前側の蓄熱パネル40は左右方向に間隔を空けて並び、前側の蓄熱パネル40の第2外面40bは前側断熱板20c1の真空断熱パネル30の第1内面30aに対向して接触している。2枚の後側の蓄熱パネル40は左右方向に間隔を空けて並び、後側の蓄熱パネル40の第2外面40bは後側断熱板20c2の真空断熱パネル30の第1内面30aに対向して接触している。2枚の左側の蓄熱パネル40は前後方向に間隔を空けて並び、左側の蓄熱パネル40の第2外面40bは左側断熱板20c3の真空断熱パネル30の第1内面30aに対向して接触している。2枚の右側の蓄熱パネル40は前後方向に間隔を空けて並び、右側の蓄熱パネル40の第2外面40bは右側断熱板20c4の真空断熱パネル30の第1内面30aに対向して接触している。
【0066】
<伝熱体>
伝熱体50は、アルミニウム等の金属、及び樹脂等、高い熱伝導率を有する材料から成る。このうち、アルミニウム製の伝熱体50によれば、伝熱体50の軽量化及び良好な熱伝導性が図られる。なお、このアルミニウムには他の金属が含まれていてもよく、つまり、アルミニウムはその合金も含んでいてもよい。また、伝熱体50は、枠体51、支持部52及び載置板53を有している。枠体51は、断熱箱10の底面10bを成す下側断熱板20bの第1内面30a上に配置されている。載置板53は、矩形平板状であって、枠体51上に配置されている。
【0067】
枠体51は、左右方向に延びる角柱状の複数(図8の例では2本)の第1延伸部51a、及び、前後方向に延びる角柱状の複数(図8の例では6本)の第2延伸部51bを有している。2本の第1延伸部51aは、前後方向において間隔を空けて配置されている。6本の第2延伸部51bは、2本の第1延伸部51aの間において左右方向に間隔を空けながら配置されている。第2延伸部51bの端は第1延伸部51aに接続されている。これにより、枠体51には、第1延伸部51a及び第2延伸部51bにより囲まれたスペース51cが設けられることにより、伝熱体50の軽量化及び低コスト化が図られる。
【0068】
複数の支持部52が、枠体51の外周縁に取り付けられている。支持部52は平板状であり、2枚の支持部52が対を成している。例えば、4対の支持部52が第1延伸部51aに沿って間隔を空けながら第1延伸部51aの外周縁に取り付けられている。また、4対の支持部52が、6本の第2延伸部51bのうちの端に配置された第2延伸部51bに沿って間隔を空けながら第2延伸部51bの外周縁に取り付けられている。
【0069】
支持部52は、例えば直角三角形状であって、下方ほど枠体51から突出する寸法が大きい。この支持部52の一方の隣辺が上下方向に延びて枠体51の外周縁に取り付けられ、他方の隣辺が左右方向又は前後方向に延びて断熱箱10の底面10bに対向している。支持部52の斜辺52aは、隣辺に対して45度で傾斜しており、上方ほど厚み方向の内側に傾斜している。支持部52の斜辺52aは、断熱箱10の側面10cを成す側壁断熱板20c1~20c4の第1内面30aに対向し、この側面10cとの間隔は上方ほど大きくなる。この間隔に、蓄熱パネル40のうち、第2外面40bが断熱箱10の側面10cに対向する前側の蓄熱パネル40、後側の蓄熱パネル40、左側の蓄熱パネル40及び右側の蓄熱パネル40のそれぞれの下端部を差し込まれる。これにより、これらの蓄熱パネル40を断熱箱10に容易に固定することができる。
【0070】
また、伝熱体50は、前後方向において前側の蓄熱パネル40と後側の蓄熱パネル40との間に挟まれ、左右方向において左側の蓄熱パネル40と右側の蓄熱パネル40との間に挟まれる。これにより、2本の第1延伸部51aは、左側の蓄熱パネル40及び右側の蓄熱パネル40の厚み方向である左右方向に延び、その直交方向である前後方向において間隔を空けて並べられている。また、6本の第2延伸部51bは、前側の蓄熱パネル40及び後側の蓄熱パネル40の厚み方向である前後方向に延び、その直交方向である左右方向において間隔を空けて並べられている。
【0071】
これらの蓄熱パネル40は、断熱箱10の側面10cに対向する第2外面40bと、第2外面40bに対して傾斜する第2傾斜面40cと、を有している。蓄熱パネル40の下端部が断熱箱10の側面10cと伝熱体50との間隔に差し込まれると、蓄熱パネル40の第2傾斜面40cが伝熱体50の支持部52の斜辺52aに対向して接触する。これにより、蓄熱パネル40は、支持部52によって支えられると共に、断熱箱10の側面10cに押されるため、伝熱体50及び断熱箱10に安定的に固定される。
【0072】
また、伝熱体50から蓄熱パネル40への熱伝導によって伝熱体50が冷却される。これにより、蓄熱パネル40及び伝熱体50が配置された断熱空間10aは、蓄熱パネル40及び伝熱体50により冷却される。また、伝熱体50では、蓄熱パネル40により冷却された枠体51において、第1延伸部51a及び第2延伸部51bで囲まれたスペース51cで対流が生じる。このため、枠体51のスペース51cを覆っている載置板53は、スペース51cにおける対流、枠体51の熱伝導によって均一に冷却される。
【0073】
この載置板53上に物品が載置されるため、物品の断熱箱10への収納作業性の向上が図られる。すなわち、例えば蓄熱パネル40が冷凍機で-25℃に凍結されてから更に5℃の調温庫で調温される場合、その凍結と調温により蓄熱パネル40が5℃になるには、例えば48時間の長時間を要する。また、蓄熱パネル40は5℃の倉庫内に長時間静置されることにより凍結と調温が同時に行なわれる場合、その静置(凍結と調温)により蓄熱パネル40が5℃になるには、例えば120時間の更なる長時間を要する。これに対し、伝熱体50は蓄熱パネル40により冷却される。このため、蓄熱パネル40の凍結と調温後に物品を伝熱体50の載置板53上に載置してもよいし、蓄熱パネル40を凍結と調温している間に物品を載置板53上に載置してもよい。このように、蓄熱パネル40の凍結と調温を待たずに物品を断熱箱10に収納することができるため、物品の断熱箱10への収納作業性を向上することができる。
【0074】
なお、上記構成では、断熱箱10の底面10b上に伝熱体50が配置されたが、伝熱体50に代えて蓄熱パネル40が断熱箱10の底面10b上に配置されていてもよい。この蓄熱パネル40によって、断熱空間10aは下方からも冷却されるため、断熱空間10aの温度を均一にすることができる。
【0075】
<蓄熱パネル>
図10及び図11に示すように、蓄熱パネル40は、四角錐台状等の角錐台状であって、第2内面40a、第2外面40b、第2傾斜面40c及び第2面取り面40dを有している。第2内面40aは蓄熱パネル40の第1面であり、第2外面40bは、蓄熱パネル40の第2面であって、第1面に対して直交する厚み方向において蓄熱パック41を挟んで第1面の反対に位置する面である。
【0076】
第2内面40a及び第2外面40bは、矩形状であって、厚み方向に対して直交している。第2外面40bの面積は第2内面40aの面積よりも大きい。第2外面40bは、蓄熱パネル40の表面のうち厚み方向において第2内面40aとは反対の面であり、断熱箱10の断熱空間10aにおいて真空断熱パネル30の第1内面30aに対向し接触している。なお、第2外面40bが第1内面30aに対向するように蓄熱パネル40が配置されている場合には、蓄熱パネル40の厚み方向は、真空断熱パネル30の厚み方向と平行であって同じ方向である。
【0077】
第2面取り面40dは、その外端が第2外面40bの外周縁に接続されており、第2外面40bの外周縁から厚み方向の内側に延びている。第2フランジ40eは、第2外面40bの外周縁から直交方向に延びている。第2傾斜面40cは、その外端が第2面取り面40dの内端に接続されており、その内端が第2内面40aの外周縁に接続されている。第2傾斜面40cは、厚み方向及び直交方向に対して傾斜しており、厚み方向に対する傾斜角度θ(図12B)は45度である。この第2傾斜面40cによって、厚み方向に対して直交する蓄熱パネル40の断面積は、厚み方向において第2内面40aから第2外面40bへ向かって大きくなる。
【0078】
この蓄熱パネル40が断熱箱10の断熱空間10aに収容された状態では、互いに隣接する蓄熱パネル40において第2傾斜面40c同士が対向している。ここで、上側の蓄熱パネル40は前側の蓄熱パネル40、後側の蓄熱パネル40、左側の蓄熱パネル40及び右側の蓄熱パネル40のそれぞれと隣接し、これらの蓄熱パネル40の第2傾斜面40cと上側の蓄熱パネル40の第2傾斜面40cは対向している。また、前側の蓄熱パネル40は左側の蓄熱パネル40及び右側の蓄熱パネル40のそれぞれと隣接し、これらの蓄熱パネル40の第2傾斜面40cと前側の蓄熱パネル40の第2傾斜面40cは対向している。さらに、後側の蓄熱パネル40は左側の蓄熱パネル40及び右側の蓄熱パネル40のそれぞれと隣接し、これらの蓄熱パネル40の第2傾斜面40cと後側の蓄熱パネル40の第2傾斜面40cは対向している。これらの対向する第2傾斜面40c同士は互いに接触して、これらの蓄熱パネル40が支え合って断熱箱10に固定される。
【0079】
このように蓄熱パネル40が第2傾斜面40cを有することにより、第2内面40aと第2傾斜面40cとの角、及び、第2傾斜面40cと第2面取り面40dとの角について角度が90度よりも大きくなる。このため、蓄熱パネル40同士を組み立てる際に、仮に一方の蓄熱パネル40の角が他方の蓄熱パネル40に当たっても、その蓄熱パネル40の損傷を抑制することができる。
【0080】
図12Bに示すように、厚み方向における第2面取り面40dの寸法h2は、厚み方向における蓄熱パネル40の寸法H2についての式:h2<(1-√2/2)H2を満たしていてもよい。この寸法H2は、厚み方向における蓄熱パネル40の第2内面40aと第2外面40bとの間の寸法である。これにより、第2傾斜面40cの外端と内端との間の寸法L2が蓄熱パネル40の寸法H2よりも大きくなる。これにより、隣接している蓄熱パネル40同士は安定的に支え合うことができる。
【0081】
また、隣接した蓄熱パネル40同士において、第2面取り面40dにより第2フランジ40e同士の接触を抑制することができる。すなわち、蓄熱パネル40の第2外面40bと第2傾斜面40cとの角が面取りされて、第2外面40bと第2傾斜面40cとの間の第2面取り面40d、及び、この第2面取り面40dと第2外面40bの延長面と第2傾斜面40cの延長面との間の第2面取り空間40fが形成されている。例えば、図9及び図12Bに示すように、上側の蓄熱パネル40では、その第2面取り空間40fに、第2外面40bから左に突出する第2フランジ40eが収まる。また、左側の蓄熱パネル40では、その第2面取り空間40fに、第2外面40bから上に突出する第2フランジ40eが収まる。これにより、上側の蓄熱パネル40の第2フランジ40eと左側の蓄熱パネル40の第2フランジ40eとは当たらず、上側の蓄熱パネル40の第2傾斜面40cと左側の蓄熱パネル40の第2傾斜面40cとを接触させ、これらの蓄熱パネル40を組み立てることができる。
【0082】
図11に示すように、蓄熱パネル40は、2つの蓄熱パック41、及び、2つの蓄熱パック41を収容する収容容器42を備えている。なお、収容容器42に収容される蓄熱パック41は、2つに限定されず、1つでもよく、又は、3つ以上であってもよい。
【0083】
蓄熱パック41は、蓄熱剤41a、及び、蓄熱剤41aが充填される充填袋41bを有している。蓄熱剤41aは、ゲル状であって、パラフィン、塩水和物、有機化合物、水、又はこれらの組み合わせ等の蓄熱材料を含んでいる。蓄熱剤41aはゲル状であるため、充填袋41bからの漏れを抑制することができる。
【0084】
充填袋41bは樹脂製のフィルムにより形成されており、フィルムの厚みは、例えば0.1mmと薄く、柔軟性を有している。収容容器42は樹脂製の壁を有し、その壁の厚みは充填袋41bの厚みよりも厚く、例えば2mm以上且つ3mm以下であって、剛性を有している。充填袋41bは、収容容器42の内部空間である収容空間に収容されているため、収容空間を形成する収容容器42の壁により保護されている。このため、充填袋41bが薄くても、充填袋41bの損傷が防がれ、充填袋41bからの蓄熱剤41aの漏れを抑制することができる。
【0085】
収容容器42の壁は、例えば第2内壁42a及び第2外壁42bを有している。第2内壁42aは、四角錐台状等の角錐台状であって、矩形状の開口、開口の周囲を取り囲む第2内壁フランジ部42a1、及び、第2内壁フランジ部42a1から厚み方向の内側に窪んだ第2内壁窪み部42a2を有している。また、第2外壁42bは、矩形平板状であって、第2内壁42aの開口を覆う第2被覆部42b1、及び、第2被覆部42b1の周囲を取り囲む第2外壁フランジ部42b2を有している。この第2外壁フランジ部42b2は、第2内壁フランジ部42a1と同一形状及び同一サイズを有している。この第2内壁42aは、例えば真空成形により形成されることにより、ブロー成形及び射出成形等の高価な成形金型を用いずに、収容容器42を低コストで製造することができる。
【0086】
このような収容容器42において第2内壁42aの開口から第2内壁窪み部42a2内に蓄熱パック41が収容される。ここで、収容容器42が、例えば直交方向のうちの一方向(横方向)の寸法よりも他方向(縦方向)の寸法が大きい場合、2つの蓄熱パック41は縦方向に並べられる。そして、第2内壁42aの開口が第2外壁42bの第2被覆部42b1により被覆され、第2内壁フランジ部42a1と第2外壁フランジ部42b2とが重ねられて熱溶着される。この熱溶着された第2内壁フランジ部42a1と第2外壁フランジ部42b2により、蓄熱パネル40の第2フランジ40eが形成される。また、第2内壁42aの第2内壁窪み部42a2の表面のうち、厚み方向において第2外壁42bと対向する面とは反対の面により蓄熱パネル40の第2内面40a、第2傾斜面40c及び第2面取り面40dが形成される。また、第2外壁42bの第2被覆部42b1の表面のうち、厚み方向において第2内壁42aと対向する面とは反対の面により蓄熱パネル40の第2外面40bが形成される。
【0087】
収容容器42には、第2内壁42aを貫通する複数の第1貫通孔42cが設けられ、第2外壁42bを貫通する第2貫通孔42dが設けられている。第1貫通孔42c及び第2貫通孔42dにより、収容容器42の壁により囲まれた収容空間と収容容器42の外部とを連通されている。この第1貫通孔42cは第2貫通孔42dよりも小さいことにより、第1貫通孔42cを介してユーザの指や断熱箱10内の物品等が収容容器42内の蓄熱パック41に当たり難いため、蓄熱パック41の損傷を抑制することができる。
【0088】
また、図12A及び図12Bに示すように、収容容器42の第2内壁42a及び/又は第2外壁42bと蓄熱パック41との間に間隙が空気の流路40iとして設けられている。第1貫通孔42cは、この流路40iに連通している。このため、蓄熱パック41を冷凍機にて凍結する際には、この冷気が第1貫通孔42cから流路40iを通り蓄熱パック41に至り、蓄熱パック41を冷却する。このように冷気が蓄熱パック41に接触することにより、蓄熱パック41の凍結に要する時間の短縮化が図られる。さらに、この蓄熱パック41の充填袋41bのフィルムの厚みは収容容器42の第2内壁42a及び第2外壁42bよりも薄いことにより、充填袋41bのフィルムは収容容器42の第2内壁42a及び第2外壁42bよりも熱伝導性が良く、蓄熱パック41の凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0089】
蓄熱パック41は、冷凍庫における凍結後、調温庫にて調温される。この蓄熱パック41の調温についても、凍結と同様に、収容容器42に第1貫通孔42c及び流路40iを設けることで時間短縮化が図られる。また、蓄熱パック41が5℃の倉庫内に長時間静置されることでその凍結と調温が同時に行なわれる場合、蓄熱パック41が5℃になるには、収容容器42に第1貫通孔42cがないと例えば、120時間の長時間を要するのに対し、収容容器42に第1貫通孔42c及び流路40iを設けることで48時間まで大幅に短縮することが可能となる。
【0090】
また、第1貫通孔42cが第2傾斜面40cに設けられている。これにより、第1貫通孔42cが第2内面40aに設けられているよりも、ユーザの指や物品等が第1貫通孔42cを通して収容容器42内の蓄熱パック41に接触し難い。このため、蓄熱パック41の充填袋41bが薄くても、充填袋41bの損傷が防がれ、充填袋41bからの蓄熱剤41aの漏れを抑制することができる。
【0091】
図11に示すように、第2貫通孔42dが収容容器42の第2外壁42bの第2外面40bに設けられている。第2貫通孔42dは、直交方向における蓄熱パック41の中央に対向するように配置されている。この第2貫通孔42dは収容容器42の第2外壁42bを貫通することにより、第2貫通孔42dを通して収容容器42内の蓄熱パック41を見て蓄熱パック41の凍結状態を容易に確認することができる。
【0092】
さらに、第2貫通孔42dは第1貫通孔42cよりも大きいことにより、第2貫通孔42dを介して蓄熱パック41を見易い。また、断熱箱10内では第2貫通孔42dが設けられた第2外面40bは断熱箱10の第2内面40aに対向するため、第2貫通孔42dが大きくても、第2貫通孔42dを介してユーザの指や物品等が蓄熱パック41に当たり難く、蓄熱パック41の損傷を抑制することができる。
【0093】
なお、図13に示すように、蓄熱パネル40は、第2面取り面40dを有していなくてもよい。この場合、蓄熱パネル40は、第2内面40a、第2外面40b及び第2傾斜面40cを有している。第2傾斜面40cは、その外端が第2外面40bの外周縁に接続されており、その内端が第2内面40aの外周縁に接続されている。また、蓄熱パネル40の収容容器42の壁は、例えばブロー成形等により形成され、第2フランジ40eが第2傾斜面40cと第2外面40bとの間に設けられない。このため、第2面取り面40dが蓄熱パネル40に設けられていなくても、このような蓄熱パネル40を組み立てる場合、互いに隣接する蓄熱パネル40において第2傾斜面40c同士を対向することができる。
【0094】
<第2凹部>
さらに、図11及び図12Aに示すように、収容容器42の第2内壁42aには第2内面40aから厚み方向の外側に窪んだ第1凹部42f及び第2凹部42gが設けている。厚み方向において、第2内面40aと第2凹部42gの底との間の寸法D2は、第2内面40aと第1凹部42fの底と間の寸法D1よりも大きい。また、第2凹部42gは、縦方向における収容容器42の中央に配置されており、横方向に延びている。この第2凹部42gは、蓄熱パネル40の取っ手として用いられるため、蓄熱パネル40を運び易い。
【0095】
また、収容容器42では、縦方向において第2凹部42gを挟むように2つの蓄熱パック41が収容されているため、第2凹部42gにより蓄熱パック41に移動及び変形が抑制される。これにより、蓄熱パック41が厚くなる変形が抑制され、蓄熱パック41の凍結時間の長期化が抑えられる。また、蓄熱パック41の移動により第1貫通孔42cが蓄熱パック41により塞がれることが抑制され、蓄熱パック41の凍結時間の長期化が抑えられる。
【0096】
さらに、図10に示すように、第2凹部42gは、横方向における収容容器42の中央に配置され、横方向において第2凹部42gの寸法は収容容器42の寸法よりも小さい。このため、横方向において第2凹部42gを挟むように2つの空気の流路40iが収容容器42内に設けられる。この流路40iは、収容容器42の第2内壁42aと第2外壁42bとの間、及び、第2内壁42aと蓄熱パック41との間に設けられる。この流路40iによって、縦方向において第2凹部42gよりも一方側の収容容器42の領域である第1収容領域42h1の収容空間と、第2凹部42gよりも他方側の収容容器42の領域である第2収容領域42h2の収容空間は連通される。これにより、収容容器42内の収容空間に冷気が円滑に流れ、収容容器42内の蓄熱パック41の凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0097】
<第1凹部>
図12Aに示すように、厚み方向において収容容器42の第2内壁42aと第2外壁42bとの間に挟まれた蓄熱パック41は、第2内壁42aの第2内面40aから窪む第1凹部42fにより第2外壁42b側へ押されて、蓄熱パック41の移動及び変形が抑制される。これにより、蓄熱パック41の変形により蓄熱パック41が厚くなるのが抑制され、蓄熱パック41の凍結時間の長期化が抑えられる。また、蓄熱パック41の移動により第1貫通孔42cが蓄熱パック41により塞がれることが抑制され、蓄熱パック41の凍結時間の長期化が抑えられる。
【0098】
また、図10に示すように、収容容器42の第1収容領域42h1及び第2収容領域42h2のそれぞれは、中央領域42e1、中央領域42e1の周囲を取り囲む第1外周領域42e2、及び、第1外周領域42e2の周囲を取り囲む第2外周領域42e3を有している。中央領域42e1は、直交方向における収容領域42h1、42h2の中央位置を含み、円形状である。この中央領域42e1の第2内壁42aは蓄熱パック41の中央に対向し、中央領域42e1の第2内壁42aに第1凹部42fが設けられずに、中央領域42e1の第2内壁42aと蓄熱パック41との間に空気の流路40iが設けられる。蓄熱パック41の中央ほど凍結し難いが、この蓄熱パック41の中央に対応する中央領域42e1の流路40iを流れる冷気によって、蓄熱パック41の凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0099】
また、第2外周領域42e3は、直交方向において第1外周領域42e2と第2傾斜面40cとの間に配置されている。この第2外周領域42e3の第2内壁42aに第1凹部42fが設けられずに、第2外周領域42e3の第2内壁42aと蓄熱パック41との間に空気の流路40iが設けられる。この流路40iは第2傾斜面40cに沿って収容容器42内の全周に亘っている。また、第1貫通孔42cは、この第2傾斜面40cの内端に沿って間隔を空けながら並んで、第2傾斜面40cに設けられており、第2外周領域42e3の流路40iに連通されている。このため、冷気は第1貫通孔42cから第2外周領域42e3の流路40iに流入し、この流路40iを通り収容容器42内の全周に亘って流れ、収容容器42内の蓄熱パック41の凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0100】
また、第1外周領域42e2は、円環状であって、複数(図10の例では6本)の第1凹部42fが設けられている。6本の第1凹部42fは、中央領域42e1から第2外周領域42e3に向かって放射状に延びている。この互いに隣接する第1凹部42fの間において、第1外周領域42e2の第2内壁42aと蓄熱パック41との間に空気の流路40iが設けられている。この第1外周領域42e2の流路40iは、中央領域42e1の流路40iに連通すると共に、第2外周領域42e3の流路40iを介して第1貫通孔42cに連通している。このため、冷気は、第1貫通孔42cから第2外周領域42e3の流路40iに流入し、第1外周領域42e2の流路40iを通り中央領域42e1の流路40iに流れるため、凍結し難い蓄熱パック41の中央の凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0101】
<判定マーク>
図14Aに示すように、蓄熱パネル40には、蓄熱剤41aの凍結状態を判定するための判定マーク43が設けられている。判定マーク43は、蓄熱パネル40において厚み方向に沿って見て第2貫通孔42dに重なる領域である重なり領域42d1のうち、蓄熱剤41aよりも厚み方向の内側の充填袋41bに設けられている。判定マーク43は、例えば、充填袋41bに印刷された画像、及び、充填袋41bに貼り付けられたテープ等であって、視認性が良い色、例えば黒色等である。また、充填袋41bは、透明又は半透明である。蓄熱剤41aの透明度は、凍結状態により変化し、例えば、蓄熱剤41aが凍結されていない状態では透明又は半透明であって、蓄熱剤41aが凍結するに伴いその透明度が低下し、蓄熱剤41aが凍結すると白色等の不透明になる。
【0102】
この蓄熱剤41aが、厚み方向において判定マーク43と第2貫通孔42dとの間に配置されている。このため、図14Bに示すように、蓄熱剤41aが凍結していない状態では第2貫通孔42dから蓄熱剤41aを介して判定マーク43を視認することができる。これに対し、図14Cに示すように蓄熱剤41aが凍結した状態では第2貫通孔42dから蓄熱剤41aを介して判定マーク43を視認することが難しい又はできなくなる。このような判定マーク43の視認性によって、蓄熱剤41aが凍結しているか否かを容易に判定することができる。このため、蓄熱剤41aが未凍結な状態で断熱空間10aに収容されることを防ぎ、蓄熱剤41aによる断熱空間10aの保冷時間が所定時間よりも短くなってしまうことを防止することができる。
【0103】
また、図14Aに示すように、判定マーク43は、重なり領域42d1のうちの一部(図14Bの例では、半分)の領域に設けられており、その色が収容容器42の壁の色と異なる。このため、蓄熱剤41aが凍結していない状態では第2貫通孔42dから蓄熱剤41aを介して判定マーク43及び収容容器42を視認することができる。この判定マーク43と収容容器42との色の対比によって、判定マーク43が重なり領域42d1の一部に設けられている場合の方が、判定マーク43が重なり領域42d1の全部に設けられている場合よりも、蓄熱剤41aの透明度の低下に伴う判定マーク43の視認性の低下を容易に判定することができる。よって、この判定結果に基づいて蓄熱剤41aが凍結したか否かを容易に判定することができる。
【0104】
なお、判定マーク43は、第2貫通孔42dから蓄熱剤41aを介して視認可能な位置であれば、充填袋41bに限定されない。例えば、図14Dに示すように、収容容器42の第2内壁42aのうち、蓄熱パック41と対向する面であって、厚み方向に沿って見て第2貫通孔42dに重なる重なり領域42d1に判定マーク43が設けられてもよい。この場合も、厚み方向において判定マーク43と第2貫通孔42dとの間に蓄熱剤41aが配置されているため、判定マーク43を視認性に基づいて、蓄熱剤41aが凍結したか否かを容易に判定することができる。
【0105】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0106】
<付記>
以上の実施の形態及び変形例の記載により、下記の技術が開示される。
技術1は、フィルムで構成された充填袋に蓄熱剤が充填された蓄熱パックと、前記蓄熱パックを収容する収容容器と、を備え、前記収容容器は、前記フィルムの厚みよりも厚みが大きく且つ前記蓄熱パックを収容する空間を形成する壁を有し、前記壁と前記蓄熱パックとの間には空気の流路が設けられ、前記壁には前記流路と前記収容容器の外部とを連通する第1貫通孔が設けられている、蓄熱パネルである。
【0107】
この構成によれば、収容容器はその壁の厚みが大きいことにより剛性を有し、収容容器内の蓄熱パックを外力から保護することにより、蓄熱パックの破損を抑制することができる。また、収容容器の壁に設けられた第1貫通孔を介して収容容器内の空気の流路に流入した冷気によって、薄い充填袋内の蓄熱剤が冷却されるため、蓄熱パックの凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0108】
第2技術は、前記収容容器は、第1面と、前記第1面に対して直交する厚み方向において前記蓄熱パックを挟んで前記第1面の反対に位置する面である第2面と、前記第1面から前記第2面へ向かって前記厚み方向に対して直交する断面積が大きくなるように、前記厚み方向に対して傾斜する傾斜面と、を有し、前記第1貫通孔は前記傾斜面に設けられている、技術1に記載の蓄熱パネルである。
【0109】
この構成によれば、第1貫通孔が傾斜面に設けられていることにより、第1面及び第2面に設けられるよりも、ユーザの指や物品等が第1貫通孔を介して収容容器内の蓄熱パックに接触することが抑制される。これにより、蓄熱パックの破損を抑制することができる。また、例えば蓄熱パネルの第2面が断熱箱の内面に対向するように蓄熱パネルが断熱箱内に収容された場合、第1貫通孔が傾斜面に設けられていることにより、第2面に設けられるよりも、冷気が第1貫通孔を介して収容容器内に流入し易い。このため、冷気による収容容器内の蓄熱パックの凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0110】
技術3は、前記収容容器は、前記厚み方向に対して直交する方向における前記蓄熱パックの中央に対応する中央領域と、前記中央領域の周囲を取り囲む外周領域と、前記外周領域において前記第1面から窪む複数の凹部と、を有し、互いに隣接する前記凹部同士の間の空気の流路は、前記第1貫通孔、及び、前記中央領域の前記壁と前記蓄熱パックとの間の空気の流路、に連通している、技術2に記載の蓄熱パネルである。
【0111】
この構成によれば、収容容器の凹部により収容容器内の蓄熱パックが押えられて、蓄熱パックの変形及び移動が抑制される。これにより、蓄熱パックが厚くなることが抑えられたり、蓄熱パックにより第1貫通孔が塞がれることが防がれたりするため、蓄熱パックの凍結時間の長期化を抑制することができる。また、蓄熱パックがより広く広がり、蓄熱パックによる冷却効果をより均一化することができる。
【0112】
また、互いに隣接する凹部同士の間の空気の流路は、第1貫通孔、及び、中央領域における空気の流路に連通している。このため、冷気が第1貫通孔から収容容器内に流入し、凹部同士の間の流路、及び、中央領域の流路を順に通る。この冷気により、中央領域における凍結し難い蓄熱パックの中央が冷却されるため、蓄熱パックの凍結に要する時間の短縮化が図られる。
【0113】
技術4は、前記蓄熱剤の凍結を判定する判定マークを備え、前記収容容器は、第1面と、前記第1面に対して直交する厚み方向において前記判定マークとの間に前記蓄熱剤を挟むように配置された第2貫通孔を有し、前記蓄熱パックは、前記蓄熱剤が凍結していない状態よりも凍結した状態の方が透明度が低下する、技術1~3のいずれかに記載の蓄熱パネルである。
【0114】
この構成によれば、厚み方向において蓄熱剤は第2貫通孔と判定マークとの間に配置されている。この蓄熱剤が凍結するに伴い透明度が低下するため、判定マークが視認し難くなる。このような、判定マークを視認性によって蓄熱剤の凍結状態を容易に判定することができる。
【0115】
技術5は、前記判定マークは、前記収容容器又は前記充填袋において前記厚み方向に沿って見て前記第2貫通孔と重なる領域のうち一部分に設けられている、技術4に記載の蓄熱パネルである。
【0116】
この構成によれば、蓄熱剤が凍結していない状態では、第2貫通孔から蓄熱剤を通して判定マーク及び収容容器の壁が見え、判定マークの色と収容容器の壁の色とのコントラストにより判定マークを判別し易い。これにより、蓄熱剤が凍結するに伴い、その判定マークが見えない又は見え難くなるため、蓄熱剤の凍結状態を容易に判定することができる。
【符号の説明】
【0117】
40 :蓄熱パネル
40a :第2内面(第1面)
40b :第2外面(第2面)
40c :第2傾斜面(傾斜面)
40i :流路
41 :蓄熱パック
41a :蓄熱剤
41b :充填袋
42 :収容容器
42c :第1貫通孔
42d :第2貫通孔
42d1 :領域
42e1 :中央領域
42e2 :第1外周領域(外周領域)
42f :第1凹部(凹部)
43 :判定マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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