(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176227
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】三次元形状測定システム及び三次元形状測定システムの設定方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094630
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】594124993
【氏名又は名称】東京貿易テクノシステム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】藤野 真司
(72)【発明者】
【氏名】三谷 一貴
(57)【要約】
【課題】三次元形状測定器を車両の荷室部に設けた状態で、基準点計測器を基準とした三次元形状測定器の位置を取得する。
【解決手段】三次元形状測定システムは、車両において、基準点計測器から視認可能な位置に配置された第1の基準器と、三次元形状測定器を、車両の荷室内に収容した収容位置と、対象物に対する測定光の照射が可能な測定位置で位置決め可能とする位置決め機構と、三次元形状測定器の測定データと、基準点計測器を基準とした第1の基準器の座標データが入力される処理装置と、を有し、処理装置は、三次元形状測定器を基準とした第1の基準器の座標データであって予め取得した座標データと、基準点計測器で測定した第1の基準器の座標データであって、基準点計測器を基準とした第1の基準器の座標データと、に基づいて、三次元形状測定器の測定データを、基準点計測器を基準とした測定データに変換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対する測定光の照射により、前記対象物の三次元形状を測定する三次元形状測定器と、
車両において、基準点計測器から視認可能な位置に配置された第1の基準器と、
前記三次元形状測定器を、前記車両の荷室内に収容した収容位置と、前記対象物に対する測定光の照射が可能で、前記第1の基準器の座標データを取得不能な測定位置で位置決め可能とする位置決め機構と、
前記三次元形状測定器の測定データと、前記基準点計測器が取得した座標データであって、前記基準点計測器を基準とした前記第1の基準器の座標データが入力される処理装置と、を有し、
前記処理装置は、前記三次元形状測定器を基準とした前記第1の基準器の座標データであって予め取得した座標データと、前記基準点計測器で測定した前記第1の基準器の座標データであって、前記基準点計測器を基準とした前記第1の基準器の座標データと、に基づいて、前記三次元形状測定器の測定データを、前記基準点計測器を基準とした測定データに変換することを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の基準器は、前記車両のルーフ部に複数設けられており、
前記三次元形状測定器を基準とした前記第1の基準器の座標データは、前記第1の基準器毎に用意されており、
前記第1の基準器は、前記車両の幅方向と、前記車両の前後方向に間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記三次元形状測定器を基準とした前記第1の基準器の座標データは、前記処理装置の記憶部又は、外部サーバのうちの少なくとも一方に記憶されていることを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記位置決め機構は、前記三次元形状測定器を支持する支持台を、前記収容位置と前記測定位置の間でスライド移動させるスライド機構と、
前記支持台を、少なくとも前記測定位置に固定するロック機構と、を有することを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記スライド機構は、前記車両の幅方向における前記支持台の両端部に設けられた一対のスライドレールを有することを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項6】
請求項4において、
前記ロック機構は、前記荷室に設けられた係合部と、前記支持台に設けられていると共に、前記係合部が係合する被係合部と、を有し、
前記被係合部は、少なくとも前記車両の前後方向における前記支持台の前方側端部に設けられていることを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記三次元形状測定器は、レーザートラッカーであることを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7の内の何れか一項において、
前記処理装置は、
前記車両から離間した位置に配置した第2の基準器の座標データであって、前記車両から離間した位置に配置した他の三次元形状測定器を基準とした座標データと、
前記第2の基準器の座標データであって、前記車両に搭載した前記三次元形状測定器を基準とした座標データが入力されると、
前記他の三次元形状測定器を基準とした前記第2の基準器の座標データと、前記車両に搭載した前記三次元形状測定器を基準とした前記第2の基準器の座標データとの差分を算出し、
前記他の三次元形状測定器を基準とした前記第1の基準器の座標データから、前記差分を用いて、前記車両に搭載した前記三次元形状測定器を基準とした前記第1の基準器の座標データを算出することを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項9】
請求項7に記載の三次元形状測定システムの設定方法であって、
前記車両から離間した位置に前記レーザートラッカーと第2の基準器とを配置して、前記第1の基準器と前記第2の基準器に前記レーザートラッカーからレーザー光を照射して、前記第1の基準器及び前記第2の基準器の座標データを取得する第1取得ステップと、
前記レーザートラッカーを前記測定位置に配置して、前記第2の基準器に前記レーザートラッカーからレーザー光を照射して、前記第2の基準器の座標データを取得する第2取得ステップと、を有し
前記処理装置は、前記第1取得ステップで取得した前記第2の基準器の座標データと、前記第2取得ステップで取得した前記第2の基準器の座標データと、に基づいて前記レーザートラッカーの移動量を算出し、
前記処理装置は、前記第1取得ステップで取得した前記第1の基準器の座標データに、前記移動量を加算して、前記測定位置に配置された前記レーザートラッカーを基準とした前記第1の基準器の座標データを算出することを特徴とする三次元形状測定システムの設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状測定システム及び三次元形状測定システムの設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の三次元形状測定システムは、対象物の形状を測定する三次元形状測定器と、当該三次元形状測定器の位置を特定する際のターゲットとなる基準器と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の三次元形状測定器と基準器は、車両のルーフ部に配置されている。
特許文献1では、三次元形状測定器から基準器にレーザー光を照射して、三次元形状測定器から見た基準器の座標データを取得する。また、車両から離間した位置に配置された基準点計測器から基準器にレーザー光を照射して、基準点計測器から見た基準器の座標データを取得する。そして、三次元形状測定器を基準とした基準器の座標データと、基準点計測器を基準とした基準器の座標データと、に基づいて、基準点計測器を基準とした三次元形状測定器の座標データが特定される。
【0005】
ここで、特許文献1では、重量物である三次元形状測定器を車両のルーフ部に持ち上げる必要があるため作業負担が大きい。
この場合において、作業負担を軽減するために三次元形状測定器をルーフ部よりも下側の荷室部に配置することが考えられる。しかしながら、三次元形状測定器を荷室部に配置すると、三次元形状測定器から照射されるレーザー光がルーフ部で遮られて基準器に届かないことがある。そうすると、三次元形状測定器を基準とした基準器の座標データを取得できず、基準点計測器を基準とした三次元形状測定器の座標データを取得できなくなることがある。
【0006】
そこで、三次元形状測定器を車両の荷室部に設けた状態で、基準点計測器を基準とした三次元形状測定器の座標データを取得できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る三次元形状測定システムは、
対象物に対する測定光の照射により、前記対象物の三次元形状を測定する三次元形状測定器と、
車両において、基準点計測器から視認可能な位置に配置された第1の基準器と、
前記三次元形状測定器を、前記車両の荷室内に収容した収容位置と、前記対象物に対する測定光の照射が可能で、前記第1の基準器の座標データを取得不能な測定位置で位置決め可能とする位置決め機構と、
前記三次元形状測定器の測定データと、前記基準点計測器が取得した座標データであって、前記基準点計測器を基準とした前記第1の基準器の座標データが入力される処理装置と、を有し、
前記処理装置は、前記三次元形状測定器を基準とした前記第1の基準器の座標データであって予め取得した座標データと、前記基準点計測器で測定した前記第1の基準器の座標データであって、前記基準点計測器を基準とした前記第1の基準器の座標データと、に基づいて、前記三次元形状測定器の測定データを、前記基準点計測器を基準とした測定データに変換する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、三次元形状測定器を車両の荷室部に設けた状態で、基準点計測器を基準とした三次元形状測定器の座標データを取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】三次元形状測定システムの概略構成図である。
【
図7】レーザートラッカーを基準とした測量プリズムの座標データの取得方法を説明する図である。
【
図8】トータルステーションを基準としたレーザートラッカーの座標データの取得方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態をトンネル掘削時の切羽面の形状測定に用いる三次元形状測定システム1に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、三次元形状測定システム1を説明する図である。
図1の(a)は、車両6の側方から見た三次元形状測定システム1を説明する図である。
図1の(b)は、車両6の上方から見た三次元形状測定システム1を説明する図である。
【0011】
図1の(a)に示すように、三次元形状測定システム1は、車両6に搭載されたレーザートラッカー2(三次元形状測定器)及び測量プリズム3(第1の基準器)と、トンネルT内で車両6から離れた位置に配置されたトータルステーションTS(基準点計測器)と、コンピュータ5(処理装置)とを有する。
【0012】
以下の説明では、三次元形状測定システム1に含まれる構成要素の位置関係や、各構成要素の構成部品などの位置関係を説明する際に、必要に応じて、
図1の(a)、(b)における上下方向、車両前後方向、車幅方向、車両前後方向に沿う直線Lx方向を基準として説明をする。
【0013】
レーザートラッカー2は、レーザー光L1(測定光)を照射するヘッド部21(
図5参照)と、対象物の表面や後記するリフレクターR(
図7参照)で反射したレーザー光L1を受光する受光部(図示せず)を有する。
レーザートラッカー2は、ダイレクトスキャン機能と、リフレクター測定機能を持つ測定器である。
ダイレクトスキャン機能では、対象物の表面で反射したレーザー光L1が受光部で受光される。そして、レーザートラッカー2から対象物の表面までの距離と、レーザートラッカー2を基準とした座標系(測定器座標系)における対象物の表面の形状データが取得される。
リフレクター測定機能では、リフレクターRで反射したレーザー光L1が受光部で受光される。そして、レーザートラッカー2からリフレクターRの中心までの距離と、レーザートラッカー2を基準とした座標系(測定器座標系)におけるリフレクターの中心の座標データが取得される。
【0014】
ここで、本実施形態の場合、トンネルTの切羽面Taが、対象物の表面に相当する。
レーザートラッカー2は、トンネルTの切羽面Taの形状を測定する際に、トンネルTの切羽面Taに向けてレーザー光L1を照射して、切羽面Taの三次元形状を測定する。
具体的には、レーザー光L1の照射から、反射したレーザー光L1の受光までの時間と、レーザー光L1の照射方向に基づいて、切羽面Taの表面形状を示す三次元形状データを生成して出力する。生成される三次元形状データは、切羽面Taの表面の座標データを含んで構成される。
【0015】
図1の(b)に示すように、測量プリズム3は、図示しない固定具(例えばブラケット)を介して、車両6のルーフ部61に固定されている。本実施形態では、測量プリズム3はルーフ部61上の4か所に配置されている。具体的には、車両6の前方側に2つの測量プリズム31、32が配置され、車両6の後方側に2つの測量プリズム33、34が配置されている。
【0016】
測量プリズム31、32は、上面視において直線Lxを挟んだ一方側と他方側に配置されている。測量プリズム33、34は、上面視において直線Lxを挟んだ一方側と他方側に配置されている。なお、測量プリズム3の数及び配置箇所は適宜変更可能である。
【0017】
図1の(a)に示すように、上下方向において、測量プリズム3の下側にはレーザートラッカー2が設けられている。レーザートラッカー2は後記する位置決め機構4を介して車両6の荷室部60(図中、破線参照)に設けられている。荷室部60は車両後方側に開口している。車両6の後方側には、荷室部60の開口を塞ぐバックドア62が設けられている。
【0018】
トータルステーションTSは、当該トータルステーションTSを基準とした座標系(トンネル座標系)における測量プリズム3の座標データを取得する。
トータルステーションTSは、トンネルTの切羽面Taの形状を測定するために、レーザートラッカー2を搭載した車両6をトンネルT内に配置した際に、ターゲットとなる測量プリズム3に向けてレーザー光L2を照射する。
トータルステーションTSは、測量プリズム3で反射したレーザー光を受光して、トータルステーションTSを基準とした座標系(トンネル座標系)における測量プリズム3の座標データを取得する。測量プリズム3は、レーザー光を反射する反射材を備えた公知のものが利用可能である。
【0019】
コンピュータ5は、レーザートラッカー2およびトータルステーションTSと、有線又は無線で接続した情報処理端末である。コンピュータ5は、インターネットNTを介して外部サーバSVと無線又は有線で通信可能になっている(
図1の(a)参照)。
【0020】
コンピュータ5は、トータルステーションTSの測定データを取得する。詳細は後記するが、コンピュータ5の記憶部50(
図1の(a)参照)には、レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データが記憶されている。なお、レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データは外部サーバSVに記憶されていてもよい。
【0021】
コンピュータ5は、トータルステーションTSで取得された測量プリズム3の座標データと、レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データとに基づいて、トータルステーションTSを基準としたレーザートラッカー2の座標データを算出する。また、コンピュータ5は、レーザートラッカー2の測定データを取得し、切羽面Taの形状を解析する。
【0022】
図1の(b)に示すように、車両6は、トンネルTの切羽面Taの形状を測定する際に、切羽面TaとトータルステーションTSとの間に駐車される。この際に、車両6の前後方向が、直線Lxに沿う向きで配置される。直線Lxは、トンネルTの掘削方向に沿う直線である。この状態において、車両6の前端部6aは、直線Lx方向でトータルステーションTSと間隔を空けて対向している。車両6の後端部6bは、直線Lx方向で切羽面Taと間隔を空けて対向している。
【0023】
本実施形態の三次元形状測定システム1は、車両6のバックドア62を開けて、レーザートラッカー2を荷室部60から車両後方側に引き出した状態で、切羽面Taに向けてレーザー光L1を照射する。
【0024】
図2は、位置決め機構4を説明する図であり、車両6を後方側から見たものを示している。
図2の(a)は、測定位置に配置されたレーザートラッカー2を示している。
図2の(b)は、収容位置に配置されたレーザートラッカー2を示している。
図3は、位置決め機構4を説明する図である。
図3は、
図2の(a)の位置決め機構4を上方から見た図である。なお、
図3では、位置関係を把握し易くするために、スライドレール73及び荷室部60の底壁601にハッチングを付し、可動板71にクロスハッチングを付してある。
図4は、スライド機構7を説明する図である。
図4は、
図3のA-A矢視図である。
なお、
図3、
図4では、収容位置に配置されたレーザートラッカー2を仮想線で示している。
図5は、レベル調整機構8を説明する図である。
図5は、
図4の要部拡大図である。
図6は、ロック機構9を説明する図である。
図6の(a)は、ロック機構9の斜視図である。
図6の(b)は、ロック機構9を車幅方向に沿って切断した切断面の模式図である。
【0025】
図2の(a)に示すように、上下方向におけるレーザートラッカー2と車両6の荷室部60との間には、位置決め機構4が介在している。位置決め機構4は、レーザートラッカー2をスライド移動させるスライド機構7と、レーザートラッカー2の位置を固定するロック機構9と、を備えている。
【0026】
スライド機構7は、荷室部60の底壁601に固定された固定板70と、固定板70の上側に設けられた可動板71(支持台)と、上下方向で固定板70と可動板71に跨って設けられたスライドレール73と、を有する。
【0027】
図3に示すように、固定板70は、上面視において略矩形形状を成している。
固定板70は、直線Lxに沿う長辺701、702と、これら長辺701、702の車両前方側の端部同士を接続する短辺703と、車両後方側の端部同士を接続する短辺704と、を有する。固定板70の4つの角部近傍にはブラケットB1が設けられている。
【0028】
図2の(a)の拡大領域に示すように、ブラケットB1は、帯状の金属片をL字形状に折り曲げて形成されたものであり、固定板70と荷室部60の底壁601に跨って設けられている。ブラケットB1は、ボルトBaにより固定板70に固定され、ボルトBbによって底壁601に固定されている。
【0029】
図3に示すように、固定板70には、車両前方側の短辺703に沿って側板705が設けられている。側板705は固定板70から上下方向上側に延びている(
図4参照)。側板705には、レーザートラッカー2を駆動するためのバッテリー28、制御装置29が取り付けられている。バッテリー28と制御装置29は図示しない配線でレーザートラッカー2に電気的に接続されている。また、レーザートラッカー2は、制御装置29を介してコンピュータ5とのデータ通信を行う。
【0030】
固定板70には、直線Lx方向における車両後方側で側板705と隣り合う位置にストッパ706が設けられている。ストッパ706は、可動板71が側板705に衝突することを防止する。
【0031】
図4に示すように、可動板71は固定板70の上側に配置されている。上下方向において、可動板71の下面71bと固定板70の上面70aとの間には、隙間が設けられている。可動板71の上面71aには、後記するレベル調整機構8を介してレーザートラッカー2が設けられている。可動板71は、レーザートラッカー2を支持する支持台を構成する。
【0032】
図3に示すように、可動板71は、上面視において略矩形形状を成している。
可動板71は、直線Lxに沿う長辺711、712と、これら長辺711、712の車両前方側の端部同士を接続する短辺713と、長辺711、712の車両後方側の端部同士を接続する短辺714と、を有する。
【0033】
図3に示すように、車幅方向において、固定板70の長辺701と可動板71の長辺711との間、及び固定板70の長辺702と可動板71の長辺712との間には、それぞれスライドレール73、73(一対のスライドレール)が設けられている。スライドレール73は、直線Lxに沿う向きに設けられている。
【0034】
図4に示すように、スライドレール73は、ブラケットB2を介して固定板70に固定されたアウタレール731と、可動板71に固定されたインナレール732と、アウタレール731とインナレール732との間に設けられた中間レール733と、を有する。アウタレール731、インナレール732及び中間レール733は、直線Lx方向において、可動板71の長辺712と略同じ長さを有する(
図3参照)。
【0035】
ブラケットB2は、直線Lx方向に沿う向きに設けられた帯状の基部B21と、当該基部B21から下側に延びる脚部B22と、を有する。脚部B22は、直線Lx方向に間隔を空けて複数設けられている。ブラケットB2は、基部B21がボルトBcによりアウタレール731に固定され、脚部B22がボルトBdにより固定板70に固定されている。
【0036】
図4に示すように、インナレール732は、ボルトBeによって可動板71に固定されている。アウタレール731と中間レール733との間、及びインナレール732と中間レール733との間には、ボール(図示せず)と当該ボールを保持するリテーナ(図示せず)が介在している。これにより、可動板71は、固定板70に対してスライドレール73に沿って直線Lx方向に相対移動可能になっている。スライド機構7では、可動板71が、荷室部60の内部と外部とを往復移動できる(
図2の(a)、(b)参照)。
【0037】
可動板71は、固定板70より小さい面積で形成されている。
図3に示すように、平面視において、可動板71をストッパ706に当接する位置に配置すると、可動板71は固定板70が設けられた範囲内に収まるようになっている(図中、仮想線参照)。
【0038】
可動板71の車両後方側の短辺714には、車幅方向における略中間位置に把持部715が設けられている(
図3参照)。そのため、作業者は、把持部716を把持しながら可動板71を荷室部60から引き出したり、荷室部60内に収容したりすることができる。
【0039】
図6の(a)に示すように、ロック機構9は、係合部91と、当該係合部91が係合する被係合部95(95F、95R)と、を有する。係合部91は固定板70に設けられている。被係合部95は可動板71に設けられている。
【0040】
図3に示すように、係合部91は、固定板70における車両後方側の角部近傍に2つ設けられている。
図6の(a)の拡大領域に示すように、係合部91は、ボルトBfで固定板70の上面70aに固定された固定部材93を有する。
図6の(b)に示すように、固定部材93には、直線Ly方向に貫通する貫通孔931が形成されている。直線Ly方向は車幅方向に沿う直線である。貫通孔931の内周にはネジが形成されている。貫通孔931には、ネジ92の軸部922が螺合している。ネジ92を直線Ly回りに回転させることで、ネジ92が直線Ly方向に往復移動する(
図6の(b)における矢印方向)。
なお、ネジ92の軸部922は、少なくとも頭部921が固定部材93に当接した際に、後記する被係合部95の貫通孔953を貫通する長さを有していればよい(
図6の(b)参照)。
【0041】
図3に示すように、被係合部95は、可動板71における角部近傍に4つ設けられている。以下の説明では、被係合部95について、車両前方側のものを被係合部95Fとも表記し、車両後方側のものを被係合部95Rとも表記する。被係合部95は、少なくとも車両前後方向における可動板71の車両前方側に設けられていればよい。
【0042】
以下、被係合部95の形状について、
図3における車幅方向の一方側(図中下側)の被係合部95Rを例に挙げて説明する。
図6の(a)に示すように、被係合部95Rは、板状の金属片を折り曲げて形成したものである。被係合部95Rは、ボルトBgで可動板71の短辺714に固定される固定片951と、固定片951から車両後方側に突出する突出片952と、を有する。
突出片952は、可動板71の長辺712と面一に設けられている(
図3の拡大領域参照)。
【0043】
図6の(a)に示すように、突出片952は、上下方向において可動板71よりも下側まで延びている。突出片952における可動板71よりも下側に延びた領域には、貫通孔953が形成されている。貫通孔953は、突出片952を車幅方向に貫通している。貫通孔953は、係合部91のネジ92の軸部922を挿通可能な孔径を有している。
【0044】
図3に示すように、車幅方向における他方側(図中上側)の被係合部95Rは、直線Lxを挟んで、車幅方向における一方側(図中下側)の被係合部95Rと対称に設けられている。また、車両前方側の被係合部95F、95Fは、可動板71を挟んで被係合部95R、95Rと対称に設けられている。
被係合部95F、95Rは、可動板71を車両前後方向に移動させた際に、それぞれ係合部91と車幅方向で重なる位置に配置されるようになっている。
【0045】
例えば
図6の(b)に示すように、被係合部95Fの貫通孔953をネジ92と同心となる位置に配置したうえで、係合部91のネジ92を締める方向に回転させる。そして、ネジ92が直線Ly方向に移動して、軸部922の先端が被係合部95Fの貫通孔953を越えると、ネジ92を介して可動板71が固定板70に移動不能に固定される。
【0046】
この状態において、可動板71は、荷室部60の外部に露出した状態で位置決めされる。可動板71で支持されたレーザートラッカー2は、荷室部60の開口60aから車両後方側に所定の距離D1だけ離れた位置(測定位置PA)で位置決めされる(
図4参照)。
【0047】
一方で、被係合部95Rの貫通孔953をネジ92と同心となる位置に配置したうえで、ネジ92を締める方向に回転させる。そして、軸部922の先端が被係合部95Rの貫通孔953を越えると、可動板71は、荷室部60内に収容された状態で位置決めされる。
可動板71で支持されたレーザートラッカー2は、荷室部60の開口60aから車両前方側に所定の距離D2だけ離れた位置(収容位置PB)で位置決めされる(
図4の仮想線参照)。
【0048】
図4に示すように、レーザートラッカー2は、レベル調整機構8を介して可動板71で支持されている。レベル調整機構8は、レーザートラッカー2の水平出しを行う。
【0049】
図3に示すように、レベル調整機構8は、上面視において略三角形形状を成すレベル台80と、レベル台80の3つの頂部に設けられたレベリングボルト81、81、81と、を有する。
【0050】
図5に示すように、レベリングボルト81は、レベル台80を上下方向に貫通する軸部811と、軸部811の上端部に設けられた頭部812と、を有する。軸部811の外周にはネジが形成されており、レベル台80の下面80bに固定されたナットNに螺合している。軸部811の下端部は、レベリングプレート83で支持されている。レベリングプレート83は、可動板71の上面71aに移動不能に固定されている。
【0051】
レベル台80は、3つのレベリングボルト81及びレベリングプレート83によって3点支持されている。ねじを締める方向にレベリングボルト81を回すと、レベル台80は上側に変位する。ねじを緩める方向にレベリングボルト81を回すと、レベル台80が下側に変位する。これにより、レベル台80の傾きを調整することができる。
【0052】
レベル台80の上面80aには、レーザートラッカー2と水準器85が設けられている。作業者は、水準器85の表示を確認しつつ、レベリングボルト81を操作することで、レベル台80の傾きを調整して、レーザートラッカー2の水平出しをすることができる。
【0053】
図5に示すように、本実施形態では、車両後方側に位置する2つレベリングボルト81(
図3参照)にハンドル813を設けている。ハンドル813は、レベリングボルト81の頭部812に外嵌して設けられている。これにより、作業者は、工具を用いることなく手締めでレベリングボルト81を操作でき、簡単にレーザートラッカー2の水平出しをできるようになっている。
【0054】
ここで、レーザートラッカー2は、レーザー光を照射するヘッド部21と、ヘッド部21を支持する本体部22と、本体部22をレベル台80に接続するマウント部23と、を有する。
【0055】
図3に示すように、本体部22には、駆動モータM1が内蔵されている。駆動モータM1の出力軸Maは、上下方向に直交する直線Lp(
図2の(a)参照)に沿う向きに設けられている。
【0056】
ヘッド部21は、出力軸Maを介して本体部22に支持されている。ヘッド部21は、出力軸Maに相対回転不能に接続されている。駆動モータM1が駆動すると、ヘッド部21は、出力軸Maと共に直線Lp回りに回動する。これにより、ヘッド部21は、トンネルTの切羽面Taの上端から下端までレーザー光L1を照射できるようになっている(
図1の(a)参照)。
【0057】
また、
図5に示すように、本体部22は、上下方向の下側でマウント部23に支持されている。マウント部23は、嵌合部K(例えば平行キーとキー溝による嵌合)を介してレベル台80に位置決めされている。
【0058】
マウント部23には、駆動モータM2が内蔵されている。駆動モータM2の出力軸Mbは、直線Lqに沿う向きに設けられている。直線Lqは、上下方向に沿う直線であり、直線Lpと直交する。出力軸Mbは、駆動モータM2から上向きに延びている。
【0059】
本体部22は、出力軸Mbを介してマウント部23に支持されている。本体部22は、出力軸Mbに相対回転不能に接続されている。駆動モータM2が駆動すると、本体部22は、ヘッド部21を支持しつつ出力軸Mbと共に直線Lq回りに回動する。これにより、ヘッド部21は、車幅方向におけるトンネルTの切羽面Taの一端から他端までレーザー光L1を照射できるようになっている(
図1の(b)参照)。
【0060】
ここで、
図1の(a)に示すように、本実施形態に係る三次元形状測定システム1では、レーザートラッカー2を測定位置PA(
図4参照)に配置してトンネルTの切羽面Taの測定を行う。なお、レーザートラッカー2を収容位置PBに配置して測定を行うこともできるが、レーザートラッカー2の照射範囲(直線Lp、Lq回りの回動範囲)を広く確保する点から、レーザートラッカー2は、測定位置PAに配置して形状データの測定を行うことが好ましい。
【0061】
本実施形態の三次元形状測定システム1では、レーザートラッカー2が測定した切羽面Taの測定データ(測定器座標系)を、トータルステーションTSの原点P2を基準とした測定データ(トンネル座標系)に変換する。
そのために、トータルステーションTSを基準としたレーザートラッカー2の座標データを取得する(
図1の(a)参照)。
【0062】
具体的には、トータルステーションTSの原点P2を基準とした測量プリズム3の座標データと、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データと、に基づいて、トータルステーションTSの原点P2を基準としたレーザートラッカー2の原点P1の座標データを取得する。
なお、レーザートラッカー2の原点P1は、直線Lp(
図3参照)と、直線Lq(
図5参照)の交点とすることができる。また、図示は省略するが、トータルステーションTSの原点P2は、レーザー光L2の照射部の中心点とすることができる。
【0063】
図1の(a)に示すように、測定位置に配置されたレーザートラッカー2と測量プリズム3の間は、ルーフ部61とバックドア62で隔てられている。そのため、レーザートラッカー2からレーザー光L1を照射しても、測量プリズム3に届かないことがある。
そうすると、レーザートラッカー2から測量プリズム3の座標データを直接取得することはできない。
【0064】
そこで、本実施形態では、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データを予め取得して、コンピュータ5の記憶部50に記憶させている。
【0065】
(測定器座標系における測量プリズム3の座標データの取得方法)
以下、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データ(測定器座標系)の取得方法を説明する。
図7は、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データの取得方法を説明する模式図である。
図7の(a)は、第1取得ステップを説明する図である。
図7の(b)は、第2取得ステップを説明する図である。
図7の(c)は、レーザートラッカー2の移動量Dを説明する図である。
【0066】
レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データの取得は、トンネルT外で行うことができる。例えば車両6に位置決め機構4を取り付ける作業等の事前準備の際に行うことができる。
【0067】
(第1取得ステップ)
図7の(a)に示すように、レーザートラッカー2は、車両6から離間した位置に設置される。レーザートラッカー2は三脚Wで地面Gに支持されている。この状態におけるレーザートラッカー2の原点をP1’とする。なお、
図7の(a)は、レーザートラッカー2を車両6よりも紙面奥側に配置したものを示している。
【0068】
また、車両6及びレーザートラッカー2から離間した位置に、ターゲットとなるリフレクターR(第2の基準器)が配置される。リフレクターRは、例えば建物の壁など位置が固定されているものに取り付けられている。なお、
図7の(a)~(c)では、4つのリフレクターRを記載してあるが、リフレクターRの数は任意である。また、リフレクターRは、レーザー光を反射する反射材を備えた公知のものであって良い。
【0069】
図7の(a)に示すように、レーザートラッカー2は、車両6に設けられた測量プリズム3と、リフレクターRに向けてレーザー光L1を照射する。これにより、レーザートラッカー2の原点P1’を基準とした測量プリズム3(測量プリズム31~34:
図1の(b)参照)の各座標データと、リフレクターRの各座標データを取得する(第1取得ステップ)。
【0070】
例えば、第1取得ステップによって、原点P1’を基準とした測量プリズム31の座標データ(X1、Y1、Z1)と、原点P1’を基準としたリフレクターR1の座標データ(X11、Y11、Z11)が取得される。以下、車両前方側に配置された測量プリズム31と、4つのリフレクターRのうちの1つ(リフレクターR1)を例に挙げて説明する。
【0071】
(第2取得ステップ)
次に、
図7の(b)に示すように、車両6のバックドア62を開けて、スライド機構7の可動板71を荷室部60から車両後方側に引き出す。そして、可動板71を測定位置PAまで引き出したのち、ロック機構9の係合部91を被係合部95Fに係合させる(
図6の(a)参照)。
【0072】
そして、レーザートラッカー2を三脚W(
図7の(a)参照)から、可動板71上のレベル台80に乗せ換える。これにより、レーザートラッカー2が測定位置PAに配置される。測定位置PAにおけるレーザートラッカー2の原点をP1とする。
【0073】
レーザートラッカー2は、リフレクターRに向けてレーザー光L1を照射する。これにより、レーザートラッカー2の原点P1を基準としたリフレクターRの各座標データが取得される(第2取得ステップ)。第2取得ステップによって、原点P1を基準としたリフレクターR1の座標データ(X21、Y21、Z21)が取得される。
【0074】
第2取得ステップで測定したリフレクターR1の座標データ(X21、Y21、Z21)と、第1取得ステップで測定したリフレクターR1の座標データ(X11、Y11、Z11)との差分(X21-X11、Y21-Y11、Z21-Z11)を求める。
この差分が、レーザートラッカー2の移動量(原点P1’から原点P1への移動量D(Dx、Dy、Dz))に対応する(
図7の(c)参照)。
【0075】
第1取得ステップで測定した測量プリズム31の座標データ(X1、Y1、Z1)に、移動量D(Dx、Dy、Dz)を加算することで、原点P1を基準とした測量プリズム31の座標データ(X2、Y2、Z2)が算出される((X2、Y2、Z2)=(X1+Dx、Y1+Dy、Z1+Dz))。
【0076】
これにより、測定位置PAに配置されたレーザートラッカー2から測量プリズム31にレーザー光L1を直接照射して測定したもの(
図7の(c)の仮想線参照)と同様の結果が得られる。
【0077】
(トンネル座標系におけるレーザートラッカー2の座標データの取得方法)
図8は、トータルステーションTSを基準としたレーザートラッカー2の座標データ(トンネル座標系)の取得方法を説明する図である。
【0078】
本実施形態では、原点P1を基準とした測量プリズム31の座標データ(X2、Y2、Z2)をコンピュータ5の記憶部50に記憶させている。そのうえで、
図8に示すように、トンネルT内においてトータルステーションTSを基準としたレーザートラッカー2の座標データを取得する。
【0079】
具体的には、トータルステーションTSから測量プリズム31にレーザー光L2を照射する。これにより、トータルステーションTSの原点P2を基準とした測量プリズム31の座標(X4、Y4、Z4)が取得される。
【0080】
コンピュータ5は、トータルステーションTSの原点P2を基準とした測量プリズム31の座標データ(X4、Y4、Z4)に、原点P1を基準とした測量プリズム31の座標データ(X2、Y2、Z2;図中仮想線参照)を加算する。これにより、トータルステーションTSの原点P2を基準としたレーザートラッカー2の原点P1の座標データ(X4+X2、Y4+Y2、Z4+Z2)が取得される。
【0081】
このように、本実施形態の三次元形状測定システム1は、レーザートラッカー2を車両6の荷室部60に設けた状態で、トータルステーションTSを基準としたレーザートラッカー2の座標を特定できる。
これにより、レーザートラッカー2が測定した切羽面Taの形状データを、トータルステーションTSを基準とした測定データに変換することができる。
【0082】
以上の通り、本実施形態に係る三次元形状測定システム1は、以下の構成を有している。
(1)(7)三次元形状測定システム1は、
トンネルTの切羽面Ta(対象物)に対するレーザー光L1(測定光)の照射により、切羽面Taの三次元形状を測定するレーザートラッカー2(三次元形状測定器)を有する。
車両6において、トータルステーションTS(基準点計測器)から視認可能な位置に配置された測量プリズム3(第1の基準器)を有する。
レーザートラッカー2を、車両6の荷室部60(荷室)内に収容した収容位置PBと、切羽面Taに対するレーザー光L2の照射が可能で、測量プリズム3の座標データを取得不能な測定位置PAで位置決め可能とする位置決め機構4を有する。
レーザートラッカー2の測定データと、トータルステーションTSが取得した座標データであって、トータルステーションTSを基準とした測量プリズム3の座標データが入力されるコンピュータ5(処理装置)を有する。
コンピュータ5は、レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データであって予め取得した座標データと、トータルステーションTSで測定した測量プリズム3の座標データであって、トータルステーションTSを基準とした測量プリズムの座標データと、に基づいて、レーザートラッカー2の測定データを、トータルステーションTSを基準とした測定データに変換する。
【0083】
ここで、測量プリズム3は、トータルステーションTSから視認可能とするために車両6の上部であるルーフ部61に設けられることが多い。そうすると、レーザートラッカー2を荷室部60内に収容すると、レーザートラッカー2を測定位置PAに配置しても、レーザートラッカー2から測量プリズム3を視認できないために、測量プリズム3の座標データを直接取得できない場合がある。
【0084】
そこで、上記のように構成することで、レーザートラッカー2の測定データを、トータルステーションTSを基準とした測定データに変換できるので、車両6におけるレーザートラッカー2の測定位置を、測量プリズム3の座標データを取得不能な位置(測定位置PA)に設定できる。
これにより、レーザートラッカー2の設置の自由度が大きくなり、レーザートラッカー2を車両6のルーフ部61に持ち上げて設置する必要も無い。よって、レーザートラッカー2を用いた形状測定にあたり、準備にかかる作業負担を低減できる。
【0085】
また、レーザートラッカー2は、ダイレクトスキャン機能と、リフレクター測定機能を持つ測定器である。リフレクター測定機能を用いて取得した測量プリズム3の座標データは、精度の高いものとなる。そのため、ダイレクトスキャン機能で取得した切羽面Taの測定データを、より高い精度で、トータルステーションTSを基準とした測定データに変換できる。
【0086】
(2)測量プリズム3(31~34)は、車両6のルーフ部61に複数設けられている。
レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データは、複数の測量プリズム3(31~34)毎に用意されている。
測量プリズム3(31~34)は、車両6の車幅方向(幅方向)と、車両6の前後方向に間隔を空けて配置されている。
【0087】
車両6の上部に位置するルーフ部61は、車両6の周囲に障害物があっても、比較的に視認されやすい領域である。
そこで、上記のように測量プリズム3を配置すると、トータルステーションTSと車両6との相対的な位置関係を変更しても、少なくとも1つの測量プリズム3を、トータルステーションTSから視認することが可能となる。
これにより、トータルステーションTSにより測定した測量プリズム3の座標データと、レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データとを用いて、レーザートラッカー2の測定データを、トータルステーションTSを基準とした測定データに変換できる。よって、三次元形状測定における歩留まりの向上が期待できる。
【0088】
(3)レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データは、コンピュータ5の記憶部50又は、外部サーバSVのうちの少なくとも一方に記憶されている。
【0089】
このように構成すると、レーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データの取得の冗長性を確保できる。
【0090】
(4)位置決め機構4は、レーザートラッカー2を支持する可動板71(支持台)を、収容位置PBと測定位置PAでスライド移動させるスライド機構7を有する。
また、位置決め機構4は、可動板71を少なくとも測定位置PAに固定するロック機構9と、を有する。
【0091】
このように構成すると、レーザートラッカー2の測定位置PAへの配置及び固定が容易になる。測定位置PAは、レーザー光L1が車両6側の部品(例えばバックドア62)などと干渉することがない荷室部60の外側の領域である。この測定位置PAにレーザートラッカー2に配置することで、レーザー光L1の照射範囲を確保できる。これにより、切羽面Taに対するレーザー光L1の照射範囲を確保できるので、切羽面Taの測定データの取得に要する時間の短縮が期待できる。
また、ロック機構9でレーザートラッカー2を測定位置PAに固定することで、レーザートラッカー2が直接Lp、Lq回りに回動する際の反力よって、レーザートラッカー2が測定中に測定位置PAからズレてしまうことを防止できる。また、車両前方側が後方側よりも低くなる向きに地面が傾斜していた場合、レーザートラッカー2の自重によって、レーザートラッカー2が測定中に収容位置PB側に移動してしまうことも防止できる。
【0092】
(5)スライド機構7は、車両6の車幅方向における可動板71の長辺711、712(両端部)に設けられた一対のスライドレール73、73を有する。
【0093】
このように構成すると、直線Lx方向に可動板71を移動させる際のガタつきが低減される。これにより、軽い力でスムーズにレーザートラッカー2を収容位置PBまたは測定位置PAに配置することができる。
【0094】
(6)ロック機構9は、固定板70に設けられた係合部91と、可動板71に設けられていると共に、係合部91が係合する被係合部95(95F、95R)と、を有する。
被係合部95Fは、少なくとも車両前後方向における可動板71の短辺703(前方側端部)に設けられている。
【0095】
このように構成すると、係合部91を被係合部95Fに係合させるだけで、レーザートラッカー2は測定位置PAに位置決めされる。
これにより、レーザートラッカー2を測定位置PAへの位置決めが容易になる。
【0096】
(8)コンピュータ5は、
車両6から離間した位置に配置したリフレクターR(第2の基準器)の座標データであって、車両6から離間した位置に配置したレーザートラッカー2(他の三次元形状測定器)の原点P1’を基準とした座標データと、
リフレクターRの座標データであって、車両6に搭載したレーザートラッカー2の原点P1を基準とした座標データが入力されると、
レーザートラッカー2の原点P1’を基準としたリフレクターRの座標データと、レーザートラッカー2の原点P1を基準としたリフレクターRの座標データとの差分を算出する。
コンピュータ5は、レーザートラッカー2の原点P1’を基準とした測量プリズム3の座標データから、差分を用いて、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データを算出する。
【0097】
このように構成すると、レーザートラッカー2と測量プリズム31との間にルーフ部61やバックドア62等の遮蔽物がある場合でも、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム31の座標データを取得することができる。
【0098】
また、本発明は、三次元形状測定システム1の設定方法としても特定できる。
具体的には、
(9)車両6から離間した位置にレーザートラッカー2とリフレクターR(第2の基準器)とを配置して、測量プリズム3とリフレクターRにレーザートラッカー2からレーザー光L1を照射して、測量プリズム3の座標データ及び、リフレクターRの座標データを取得する第1取得ステップと、
レーザートラッカー2を測定位置PAに配置して、リフレクターRにレーザートラッカー2からレーザー光L1を照射して、リフレクターRの座標データを取得する第2取得ステップと、を有する。
コンピュータ5は、第2取得ステップで取得したリフレクターRの座標データと、第1取得ステップで取得したリフレクターRの座標とに基づいてレーザートラッカー2の移動量Dを算出する。
移動量Dは、第2取得ステップで取得したリフレクターRの座標データと、第1取得ステップで取得したリフレクターRの座標データとの差分である。
コンピュータ5は、第1取得ステップで取得した測量プリズム3の座標データから、移動量Dを加算して、測定位置PAに配置されたレーザートラッカー2を基準とした測量プリズム31の座標データを算出する。
【0099】
このように構成すると、荷室部60に設けられたレーザートラッカー2において、レーザートラッカー2と測量プリズム3との間にルーフ部61やバックドア62等の遮蔽物がある場合でも、レーザートラッカー2の原点P1を基準とした測量プリズム3の座標データを取得することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、レーザートラッカー2を車両6の荷室部60に配置したものを例示したが、この態様に限定されない。例えば、レーザートラッカー2をトラックの荷台に配置してもよい。荷台に配置されたレーザートラッカー2は、ルーフ部61よりも下側に位置することが考えられる。そのため、レーザートラッカー2から測量プリズム3の座標データを直接取得することはできない。
このような場合であっても、荷台上のレーザートラッカー2を基準とした測量プリズム3の座標データを予め取得しておくことで、レーザートラッカー2の測定データを、トータルステーションTSを基準とした測定データに変換することができる。
【0101】
なお、本実施形態では、1つのリフレクターR1に基づいて、移動量D(Dx、Dy、Dz)を算出した。しかしながらこの態様に限定されない。例えば、第1取得ステップと第2取得ステップにおいて、複数のリフレクターRにレーザー光L1を照射してもよい。この場合、移動量D(Dx、Dy、Dz)は、第1取得ステップと第2取得ステップで測定した複数のリフレクターRの各座標データの差分の平均値とすればよい。
【0102】
また、本実施形態では、ロック機構9において、係合部91のネジ92を回転させることで軸部922が被係合部95の貫通孔953に係合するものを例示した。しかしながら、この態様に限定されない。例えば、スプリングを備える係合部91として、当該スプリングの付勢力によって軸部922が貫通孔953に係合するものであってもよい。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 :三次元形状測定システム
2 :レーザートラッカー(三次元形状測定器)
3(31~34) :測量プリズム(第1の基準器)
4 :位置決め機構
5 :コンピュータ(処理装置)
6 :車両
7 :スライド機構
8 :レベル調整機構
9 :ロック機構
60 :荷室部
61 :ルーフ部
70 :固定板
71 :可動板
73 :スライドレール
80 :レベル台
85 :水準器
91 :係合部
95 :被係合部
L1 :レーザー光(測定光)
L2 :レーザー光
Lx :直線
R、R1 :リフレクター(第2の基準器)
T :トンネル
Ta :切羽面
TS :トータルステーション(基準点計測器)
P1、P1’ :レーザートラッカーの原点
P2 :トータルステーションの原点
PA :測定位置
PB :収容位置