(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176230
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の後部構造
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20241212BHJP
B62H 1/02 20060101ALI20241212BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B62J35/00 D
B62H1/02 E
B62J23/00 D
B62J23/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094635
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡島 弘起
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でユーザの給油作業の作業性を向上させる。
【解決手段】鞍乗型車両(1)の後部構造には、燃料タンクが収容されている。鞍乗型車両の後部構造には、燃料タンクの給油口の周囲を覆うトレイ(36)と、給油口を露出させるトレイの開口を覆うリッド(41)と、が設けられている。トレイが車両後部に位置付けられ、リッドが車両後部に横開き可能に連結されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク又はバッテリが収容された鞍乗型車両の後部構造であって、
前記燃料タンクの給油口又は前記バッテリの充電口の周囲を覆うトレイと、
前記給油口又は前記充電口を露出させる前記トレイの開口を覆うリッドと、を備え、
前記トレイが車両後部に位置付けられ、前記リッドが車両後部に横開き可能に連結されていることを特徴とする鞍乗型車両の後部構造。
【請求項2】
車体を傾けて自立させるサイドスタンドが車幅方向一方側に位置付けられ、前記リッドが車幅方向他方側に横開き可能であることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両の後部構造。
【請求項3】
前記サイドスタンドによって車体が自立した状態で、前記リッドの連結軸よりも前記リッドの重心が車幅方向他方側に位置付けられていることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両の後部構造。
【請求項4】
前記鞍乗型車両には前記燃料タンクが収容されており、
排気ガスを排出するマフラーが車幅方向他方側に位置付けられ、前記リッドが車幅方向他方側に横開き可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の後部構造。
【請求項5】
前記リッドの一側部が連結軸を介して前記トレイに連結され、
前記トレイには前記リッドの一側部に対向する保持壁が形成され、
前記トレイの保持壁及び前記リッドの一側部のいずれか一方には、いずれか他方に接して前記リッドを横開き状態で保持する保持部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両の後部構造。
【請求項6】
前記保持壁に形成された保持部が前記リッドの一側部に形成された凸部を掛け止めし、
前記保持壁及び前記リッドの一側部の少なくとも一方が弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スクータタイプの鞍乗型車両等では、車両後部のサイドカバーの内側に燃料タンクがレイアウトされることが多い。この種の鞍乗型車両として、燃料タンクの収容スペースをリッドによって上方から覆ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の収容スペースには、タンクキャップを上方に向けた状態で燃料タンクが設置されている。燃料タンクのタンクキャップが外装部品であるリッドに覆われて、鞍乗型車両の後部の意匠性が向上されている。リッドが開かれてタンクキャップが取り外されることで、給油口に給油ノズルが挿し込まれて給油される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の鞍乗型車両では車両後部に給油口が位置付けられるため、シート下やフートボードに給油口が位置付けられる場合とは異なり、ライダーが鞍乗型車両から降りることなく第三者が給油することができる。しかしながら、上開きのリッドが採用された場合、リッドの開き角度が浅いとタンクキャップや給油口が視認し難くなって、タンクキャップの着脱性や給油作業の作業性が悪化する。一方、下開きのリッドが採用された場合、給油作業時に給油ノズル等が開状態のリッドに乗せられることがあり、給油ノズル等の重さに耐えるためにリッドの強度を確保する必要がある。このような不具合は、電動車両の充電作業時にも生じる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でユーザの給油作業や充電作業の作業性を向上させることができる鞍乗型車両の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の鞍乗型車両の後部構造は、燃料タンク又はバッテリが収容された鞍乗型車両の後部構造であって、前記燃料タンクの給油口又は前記バッテリの充電口の周囲を覆うトレイと、前記給油口又は前記充電口を露出させる前記トレイの開口を覆うリッドと、を備え、前記トレイが車両後部に位置付けられ、前記リッドが車両後部に横開き可能に連結されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の鞍乗型車両の後部構造によれば、車両後部に給油口又は充電口が位置しているため、ライダーが鞍乗型車両から降りることなく第三者が給油作業又は充電作業を実施することができる。リッドが横開きであるため、リッドの開き角度が広く取り易くなり、キャップ、給油口、充電口が視認し易くなって、キャップの着脱性、給油作業、充電作業の作業性が向上する。また、下開きのリッドとは異なり、給油ノズルや充電コネクタが開状態のリッドに乗せられることがなくリッドの強度を高める必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施例の鞍乗型車両の後部構造の斜視図である。
【
図3】本実施例の鞍乗型車両の後部構造の後面図である。
【
図4】
図3の後部構造をA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図5】本実施例の鞍乗型車両の停車時の後部構造の後面図である。
【
図6】本実施例のフューエルリッドの連結構造の断面図である。
【
図7】本実施例のフューエルリッドの保持構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両の後部構造には燃料タンク又はバッテリが収容されている。燃料タンクの給油口又はバッテリの充電口の周囲がトレイによって覆われており、給油口又は充電口を露出させるトレイの開口がリッドに覆われている。トレイが車両後部に位置付けられ、リッドが車両後部に横開き可能に連結されている。これにより、車両後部に給油口又は充電口が位置しているため、ライダーが鞍乗型車両から降りることなく第三者が給油作業又は充電作業を実施することができる。リッドが横開きであるため、リッドの開き角度が広く取り易くなり、キャップ、給油口、充電口が視認し易くなって、キャップの着脱性、給油作業、充電作業の作業性が向上する。また、下開きのリッドとは異なり、給油ノズルや充電コネクタが開状態のリッドに乗せられることがなくリッドの強度を高める必要がない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム(不図示)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントカバー11が設けられており、フロントカバー11の後側にはライダーの足回りを保護するフロントレッグシールド12が設けられている。フロントレッグシールド12の下端から後方にフートボード13が延在しており、フートボード13の後方にはサイドカバー14が設けられている。フロントレッグシールド12とフートボード13によってシート15の前方にライダーの足置き空間が形成されている。
【0012】
フロントカバー11の上側にはハンドル16が設けられ、フロントカバー11の下側には一対のフロントフォーク17を介して前輪18が回転可能に支持されている。サイドカバー14の上側にはシート15が設けられており、サイドカバー14の下側にはユニットスイング式のエンジン21が設けられている。エンジン21は車体フレームに揺動可能に連結されており、エンジン21の後部には後輪19が回転可能に支持されている。エンジン21のクランクケースの左側面がCVTカバー22に覆われており、CVTカバー22の上方にエアクリーナ23が設けられている。
【0013】
エンジン21から鞍乗型車両1の右側方を通って排気管(不図示)が延びており、排気管の下流端には排気ガスを排出するマフラー24が接続されている。鞍乗型車両1の左側には、車体を傾けて自立させるサイドスタンド25が設けられている。サイドカバー14の内側には燃料タンク31(
図4参照)が設置されている。シート15よりも後方に燃料タンク31の給油口が位置付けられ、ライダーが鞍乗型車両1から降りることなく第三者が給油作業を実施することができる。また、燃料タンク31の給油口の露出を抑えるために、車両後部にはフューエルリッド(リッド)41が取り付けられている。
【0014】
ところで、一般にフューエルリッドは車両後部の側面や後面等に取り付けられている。車両後部の側面にフューエルリッドが取り付けられた構造では、開いたフューエルリッドに給油ノズルや給油ホースが当たり易くなって給油作業の邪魔になる。車両後部の後面に上開きのフューエルリッドが取り付けられた構造では、車両後部のグラブバーやキャリア等によってフューエルリッドの開き角度が制限される。フューエルリッドの開き角度が浅いとタンクキャップや給油口が視認し難くなって、タンクキャップの着脱し難くなると共に給油ノズルを給油口に差し込み難くなって作業性が悪化する。
【0015】
車両後部の後面に下開きのフューエルリッドが取り付けられた構造では、給油作業時に給油ノズル等がフューエルリッドに乗せられることがあり、給油ノズル等の重さに耐えるようにフューエルリッドの強度を高めなければならない。そこで、本実施例の鞍乗型車両1では、給油作業の作業性やフューエルリッド41の強度を考慮して、車両後部の後面に横開きのフューエルリッド41が取り付けられている。また、給油口から引き抜いた給油ノズルからマフラー24に燃料が滴下しないように注意する必要があるが、フューエルリッド41が右開き可能であるため、給油ノズルから車両右側のマフラー24への燃料の滴下も抑えられる。
【0016】
図2から
図5を参照して、鞍乗型車両の後部構造について説明する。
図2は本実施例の鞍乗型車両の後部構造の斜視図である。
図3は本実施例の鞍乗型車両の後部構造の後面図である。
図4は
図3の後部構造をA-A線に沿って切断した断面図である。
図5は本実施例の鞍乗型車両の停車時の後部構造の後面図である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、車両後部の両側面が一対のサイドカバー14によって形成され、車両後部の後面がフューエルトレイ(トレイ)36及びテールランプ26によって形成されている。一対のサイドカバー14の後部、フューエルトレイ36、テールランプ26の内側には燃料タンク31(
図4参照)の収容スペースが形成され、燃料タンク31の収容スペースがシート15の後部によって上方から覆われている。シート15の後部と一対のサイドカバー14の後部の間にはグラブバー27が設けられており、一対のサイドカバー14及びテールランプ26の下側にはリアフェンダ28が設けられている。
【0018】
車両後部の後面上側にフューエルトレイ36が位置付けられ、車両後部の後面下側にテールランプ26が位置付けられている。フューエルトレイ36によって燃料タンク31が後斜め上方から覆われ、テールランプ26によって燃料タンク31が後方から覆われている。フューエルトレイ36が凹状に窪んでおり、フューエルトレイ36から燃料タンク31のタンクキャップ34が露出している。タンクキャップ34が取り外されることで、燃料タンク31の給油口33(
図4参照)が外部に露出される。給油口33の周囲がフューエルトレイ36に覆われており、給油口33から漏出した燃料が給油口33の周囲でフューエルトレイ36に受け止められる。
【0019】
フューエルトレイ36の開口からタンクキャップ34(給油口33)が露出され、フューエルトレイ36の側方にはフューエルトレイ36の開口を後斜め上方から覆うフューエルリッド41が設けられている。フューエルリッド41はフューエルトレイ36の側壁に横開き可能、本実施例では右開き可能に連結されている。フューエルリッド41の上方にグラブバー27が位置しているが、グラブバー27等によってフューエルリッド41の開き角度が制限されることがない。フューエルリッド41が広く開かれることで、給油作業時にタンクキャップ34や給油口33が視認し易くなっている。
【0020】
図3及び
図4に示すように、シート15の後部下側には燃料タンク31が設置されている。燃料タンク31の後部からフューエルトレイ36に向かって給油管32が延びており、フューエルトレイ36の底面から給油管32が突き出している。フューエルトレイ36の内側で給油管32の先端の給油口33にタンクキャップ34が装着されている。給油口33は後斜め上方に向けられており、給油口33に給油ノズルが挿し込み易くなっている。フューエルトレイ36の中央は車体内側に窪んでおり、フューエルトレイ36の周壁によって給油口33に装着されたタンクキャップ34が囲まれている。
【0021】
フューエルトレイ36の右側壁にはフューエルリッド41が取り付けられている。フューエルリッド41は、フューエルトレイ36の窪みに対応したリッド本体42と、リッド本体42の背面に設けられたリッドカバー43と、を有している。リッド本体42の右側部からリッドアーム44がC字状に延びており、前傾した連結軸59を介してリッドアーム44の先端部がフューエルトレイ36の右側壁に連結されている。フューエルリッド41は連結軸59を支点にしてフューエルトレイ36を覆う倒伏姿勢とフューエルトレイ36を開放する起立姿勢をとるように左右に揺動される。
【0022】
フューエルリッド41の閉状態では、ロック機構(不図示)によってフューエルリッド41が倒伏姿勢でロックされる。フューエルリッド41のリッドカバー43によってフューエルトレイ36、タンクキャップ34が覆われて意匠性が向上されている。フューエルリッド41の開状態では、後述する保持機構61(
図6参照)によってフューエルリッド41が起立姿勢で保持されている。リッド本体42の内面には凹状のキャップ置き場45が形成されており、フューエルリッド41が開かれた状態で、キャップ置き場45にタンクキャップ34が置かれることで給油作業の作業性が向上される。
【0023】
図5に示すように、鞍乗型車両1の左側(車幅方向一方側)にはサイドスタンド25が設けられており、サイドスタンド25によって鞍乗型車両1が左側に傾いた姿勢で自立している。フューエルリッド41は右側(車幅方向他方側)に横開き可能であり、給油作業時には鞍乗型車両1の傾きとは逆側に開かれる。このような場合には、鞍乗型車両1にはライダーが左側から乗降して、ライダーが鞍乗型車両1の左側に立って給油作業が実施される。フューエルリッド41が右側に開かれるため、ライダーが給油作業を実施する際にフューエルリッド41が邪魔になり難くなっている。
【0024】
サイドスタンド25によって鞍乗型車両1が自立した状態で、後面視にてフューエルリッド41の連結軸59(
図6参照)の位置Xよりもフューエルリッド41の重心Oが右側に位置付けられている。後面視にてフューエルリッド41の連結軸59が略上下方向に延びており、側面視にてフューエルリッド41の連結軸59は斜め前方に傾けられている(
図4参照)。フューエルリッド41が僅かに右側に傾けられて起立しており、後面視にてフューエルリッド41には連結軸59よりも左側に向かう力が作用していない。このため、鞍乗型車両1が左側に傾けられていても、フューエルリッド41が自重によって閉方向に倒れることが防止される。
【0025】
また、鞍乗型車両1の右側にはマフラー24が設けられており、マフラー24と同じ側にフューエルリッド41が開かれる。フューエルリッド41が右側に開かれることで、鞍乗型車両1の左側からの給油作業を促すことができる。鞍乗型車両1の左側に立って給油作業が実施されることで、給油ノズルからマフラー24への燃料滴下のリスクを低減することができる。また、給油口33(
図4参照)から燃料が飛散しても、フューエルリッド41に給油口33の右側方が覆われることで、フューエルリッド41によって燃料液滴からマフラー24が保護され、マフラー24への燃料液滴の付着が抑えられる。
【0026】
図6及び
図7を参照して、フューエルリッドの連結構造について説明する。
図6は本実施例のフューエルリッドの連結構造の断面図である。
図7は本実施例のフューエルリッドの保持構造の断面図である。なお、
図6(A)及び
図7(A)はフューエルリッドの閉状態、
図6(B)及び
図7(B)はフューエルリッドの開状態をそれぞれ示している。
【0027】
図6(A)及び
図7(A)に示すように、フューエルリッド41の一側部にはリッドアーム44が形成されており、リッドアーム44が連結軸59を介してフューエルトレイ36に連結されている。フューエルリッド41とフューエルトレイ36の連結部分はサイドカバー14の内側に隠されており、フューエルリッド41の開閉時にサイドカバー14に干渉しないようにリッドアーム44が断面視C字状に湾曲している。リッドアーム44の先端部から車両内側にストッパ62が突き出しており、リッドアーム44の先端部からアームの延在方向に凸部63が突き出している。
【0028】
フューエルトレイ36には、リッドアーム44の先端部に対向する断面視円弧状の保持壁64が形成されている。連結軸59の中心から保持壁64の内周面までの距離L1よりも、連結軸59の中心からリッドアーム44のストッパ62の先端までの距離L2が大きく形成されている。ストッパ62が保持壁64の一端に突き当たる位置で、フューエルリッド41の開方向への揺動が規制される。ストッパ62が保持壁64の一端に当たったときに、フューエルリッド41によって給油口33の右側方が覆われるような角度に、フューエルリッド41の開き角度が調整されている。
【0029】
保持壁64の内周面はフューエルリッド41の開閉時に凸部63が描く揺動軌跡Tに沿っており、保持壁64の他端側の内周面から揺動軌跡Tを遮るように山状の保持部65が設けられている。保持壁64は樹脂等の弾性材料によって形成されており、保持部65の斜面が緩斜面になっている。フューエルリッド41の操作時には、凸部63が保持部65の斜面に当たって保持壁64が僅かに撓むことで、凸部63が保持部65を乗り越えることが可能になっている。凸部63が保持部65よりも開方向に位置付けられることで、フューエルトレイ36によってフューエルリッド41が開き状態で保持される。
【0030】
続いて、フューエルリッド41の開動作について説明する。フューエルリッド41が閉状態では、フューエルトレイ36にリッドカバー43が被されており、フューエルトレイ36内のタンクキャップ34の露出が抑えられている。この場合、リッドアーム44のストッパ62が左斜め前方に向けられており、リッドアーム44の凸部63が左斜め後方に向けられており、ストッパ62及び凸部63がフューエルトレイ36の保持壁64から外れている。フューエルリッド41の閉状態で、ロック機構(不図示)が解除されることでフューエルリッド41が半開きされて指掛け用の隙間が空けられる。
【0031】
図6(B)及び
図7(B)に示すように、フューエルリッド41が右方向に開かれると、リッドアーム44のストッパ62と凸部63が時計回りに移動する。ストッパ62が保持壁64の一端に近づけられ、凸部63が保持壁64の内周面に沿って移動する。凸部63が保持部65に当たって保持壁64が撓むと、凸部63が保持部65を乗り越えて時計回りに移動する。ストッパ62が保持壁64の一端に突き当たってフューエルリッド41の揺動が規制され、凸部63が保持部65に掛け止めされてフューエルリッド41が開状態で保持される。そして、給油口33からタンクキャップ34が外されて給油作業が実施される。
【0032】
以上、本実施例の鞍乗型車両1の後部構造によれば、車両後部に給油口が位置しているため、ライダーが鞍乗型車両1から降りることなく第三者が給油作業を実施することができる。フューエルリッド41が横開きであるため、フューエルリッド41の開き角度が広く取り易くなり、タンクキャップ34及び給油口33が視認し易くなって、タンクキャップ34の着脱性が向上すると共に給油作業の作業性が向上する。また、下開きのフューエルリッド41とは異なり、給油ノズルが開状態のフューエルリッド41に乗せられることがなくフューエルリッド41の強度を高める必要がない。
【0033】
なお、本実施例においては、鞍乗型車両の後部に燃料タンクが収容される構成について説明したが、鞍乗型車両の後部にバッテリが設置されていてもよい。この場合、車両後部の収容スペースにバッテリが設置され、バッテリの後部からトレイに向かってバッテリケーブルが延びている。バッテリケーブルの先端の充電口がトレイの底面から突き出しており、充電口には防水キャップが着脱可能に装着されている。燃料タンクの代わりにバッテリが設置された構成であっても、リッドが横開きされることでリッドの開き角度が広くとられて防水キャップの着脱性が向上すると共に充電作業の作業性が向上する。
【0034】
また、本実施例においては、燃料タンクとして燃料油が給油されるタンクを例示したが、燃料タンクは水素等の他の燃料が充填されるタンクでもよい。
【0035】
また、本実施例においては、フューエルトレイの保持壁の保持部とフューエルリッドのリッドアームの凸部によって保持構造が形成されたが、保持構造は特に限定されない。フューエルトレイの保持壁及びフューエルリッドの一側部のいずれか一方には、いずれか他方に接してフューエルリッドを横開き状態で保持する保持部が形成されていればよい。
【0036】
また、本実施例においては、フューエルトレイの保持壁が弾性材料によって形成されているが、フューエルトレイの保持壁とフューエルリッドのリッドアームの少なくとも一方が弾性材料によって形成されていればよい。
【0037】
また、本実施例においては、フューエルリッドのリッドアームを介してフューエルトレイに連結されたが、フューエルリッドの一側部がフューエルトレイに連結されていればよい。また、フューエルリッドはフューエルトレイではなくサイドカバーに連結されてもよい。
【0038】
また、本実施例においては、フューエルリッドが右開き可能に車両後部に連結されているが、フューエルリッドが左開き可能に車両後部に連結されていてもよい。
【0039】
また、本実施例の鞍乗型車両の後部構造は上記の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0040】
以上の通り、第1態様は、燃料タンク(31)又はバッテリが収容された鞍乗型車両(1)の後部構造であって、燃料タンクの給油口(33)又はバッテリの充電口の周囲を覆うトレイ(フューエルトレイ36)と、給油口又は充電口を露出させるトレイの開口を覆うリッド(フューエルリッド41)と、を備え、トレイが車両後部に位置付けられ、リッドが車両後部に横開き可能に連結されている。この構成によれば、車両後部に給油口又は充電口が位置しているため、ライダーが鞍乗型車両から降りることなく第三者が給油作業又は充電作業を実施することができる。リッドが横開きであるため、リッドの開き角度が広く取り易くなり、キャップ、給油口、充電口が視認し易くなって、キャップの着脱性、給油作業、充電作業の作業性が向上する。また、下開きのリッドとは異なり、給油ノズルや充電コネクタが開状態のリッドに乗せられることがなくリッドの強度を高める必要がない。
【0041】
第2態様は、第1態様において、車体を傾けて自立させるサイドスタンド(25)が車幅方向一方側に位置付けられ、リッドが車幅方向他方側に横開き可能である。この構成によれば、サイドスタンドを用いて駐車した場合には鞍乗型車両がサイドスタンド側に傾くので、通常はライダーがサイドスタンド側から乗降することになる。リッドがサイドスタンド側とは逆側に開くことで、サイドスタンド側からライダーが給油作業及び充電作業する際にリッドが邪魔になり難くなって作業性が向上される。
【0042】
第3態様は、第2態様において、サイドスタンドによって車体が自立した状態で、リッドの連結軸(59)よりもリッドの重心が車幅方向他方側に位置付けられている。この構成によれば、サイドスタンド側に鞍乗型車両が傾けられていても、リッドが自重によって閉方向に倒れることが防止することができる。
【0043】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、鞍乗型車両には燃料タンクが収容されており、排気ガスを排出するマフラー(24)が車幅方向他方側に位置付けられ、リッドが車幅方向他方側に横開き可能である。この構成によれば、リッドによってマフラー側から給油され難くなり、マフラーへの燃料滴下のリスクを低減することができる。また、給油口から燃料が飛散しても、リッドに給油口の側方が覆われることで、リッドによって燃料液滴からマフラーを保護することができる。
【0044】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、リッドの一側部(リッドアーム44)が連結軸を介してトレイに連結され、トレイにはリッドの一側部に対向する保持壁(64)が形成され、トレイの保持壁及びリッドの一側部のいずれか一方には、いずれか他方に接してリッドを横開き状態で保持する保持部(65)が形成されている。この構成によれば、保持面によってリッドが横開き状態で保持され、リッドが閉方向に自然に倒れることが防止される。
【0045】
第6態様は、第5態様において、保持壁に形成された保持部がリッドの一側部に形成された凸部(63)を掛け止めし、保持壁及びリッドの一側部の少なくとも一方が弾性材料で形成されている。この構成によれば、凸部に保持面が掛け止めされることでリッドが開状態で保持される。また、リッドの操作に応じて掛け止めが解除されてリッドを開閉することができる。
【0046】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0047】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。