IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-リッド構造 図1
  • 特開-リッド構造 図2
  • 特開-リッド構造 図3
  • 特開-リッド構造 図4
  • 特開-リッド構造 図5
  • 特開-リッド構造 図6
  • 特開-リッド構造 図7
  • 特開-リッド構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176231
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】リッド構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 35/00 20060101AFI20241212BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B62J35/00 D
B62J23/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094636
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡島 弘起
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でロック解除時に大きな開度でリッドを半開きする。
【解決手段】鞍乗型車両(1)には燃料タンク(31)が収容されている。この鞍乗型車両のリッド構造には、燃料タンクの給油口(33)の周囲を覆うトレイ(36)と、給油口を露出したトレイの開口を開閉するリッド(41)と、リッドを開方向に2段階で押し上げる第1の操作(68)部及び第2の操作部(72)と、が設けられている。リッドがロック状態から解除されると、第1の操作部によってリッドが第1の開度まで押し上げられた後、第2の操作部によってリッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク又はバッテリが収容された鞍乗型車両のリッド構造であって、
前記燃料タンクの給油口又は前記バッテリの充電口の周囲を覆うトレイと、
前記給油口又は前記充電口を露出した前記トレイの開口を開閉するリッドと、
前記リッドを開方向に2段階で押し上げる第1の操作部及び第2の操作部と、を備え、
前記リッドがロック状態から解除されると、前記第1の操作部によって前記リッドが第1の開度まで押し上げられた後、前記第2の操作部によって前記リッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられることを特徴とするリッド構造。
【請求項2】
前記リッドの内面から突出部が突き出しており、
前記第1の操作部は前記突出部の先端部に下方から突き当たり、
前記第2の操作部は前記突出部の先端部に側方から突き当たることを特徴とする請求項1に記載のリッド構造。
【請求項3】
前記突出部の先端部及び前記第2の操作部の先端部のいずれか一方には、前記第2の操作部の押し込み力を前記リッドに対する押し上げ力に変換する斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリッド構造。
【請求項4】
前記第1の操作部は前記リッドの閉状態で当該リッドに対して反発力を付与するプッシュピンであり、
前記第2の操作部は前記リッドの閉状態で反発力に抗して当該リッドをロックするロックピンであることを特徴とする請求項2に記載のリッド構造。
【請求項5】
前記ロックピンが前記リッドを掛け止めする突出位置から退避して前記リッドのロック状態が解除され、前記プッシュピンによって前記リッドが第1の開度に押し上げられた後、前記ロックピンが突出位置に復帰して、前記ロックピンによって前記リッドが第2の開度に押し上げられることを特徴とする請求項4に記載のリッド構造。
【請求項6】
前記プッシュピンが前記トレイの底面から沈み込み可能に突き出し、
前記ロックピンが前記トレイの内周面から沈み込み可能に突き出していることを特徴とする請求項5に記載のリッド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両等では、ケーブルを用いてフューエルリッドをロックするリッド構造を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のリッド構造では、フューエルトレイに揺動片が揺動可能に支持され、揺動片にはケーブルを介してキーシリンダが接続されている。揺動片には掛止爪が形成され、フューエルリッドの裏面にはリッドフックが設けられている。フューエルリッドが閉じられて、リッドフックが揺動片の掛止爪に掛け止めされることでフューエルリッドがロックされ、キーシリンダによってケーブルを介して揺動片が操作されることでフューエルリッドのロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-047904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリッド構造では、フューエルリッドのロックが解除されたときに、自重等によって再びロックされない程度にフューエルリッドを開いておく必要がある。通常、ロック解除時にスプリングの反力によってフューエルリッドが持ち上げられるが、リッドの開度を大きくとるためには反発力が大きなスプリングを用いなければならない。このような不具合は、電動車両においても生じる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でロック解除時に大きな開度でリッドを半開きすることができるリッド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のリッド構造は、燃料タンク又はバッテリが収容された鞍乗型車両のリッド構造であって、前記燃料タンクの給油口又は前記バッテリの充電口の周囲を覆うトレイと、前記給油口又は前記充電口を露出した前記トレイの開口を開閉するリッドと、前記リッドを開方向に2段階で押し上げる第1の操作部及び第2の操作部と、を備え、前記リッドがロック状態から解除されると、前記第1の操作部によって前記リッドが第1の開度まで押し上げられた後、前記第2の操作部によって前記リッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のリッド構造によれば、リッドのロックが解除されると、第1の操作部によってリッドが第1の開度に押し上げられ、第2の操作部によってリッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられて、リッドが半開き状態で第2の操作部に支持される。リッドの開き方向に関わらず、リッドの開度が十分に確保されて指が掛けやすくなる。リッドに指を掛けるための窪み等が不要になってデザインの自由度が向上される。また、リッドが自重等によって再びロックされることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の側面図である。
図2】本実施例の鞍乗型車両のリッド構造の斜視図である。
図3】本実施例の鞍乗型車両のリッド構造の後面図である。
図4図3のリッド構造をA-A線に沿って切断した断面図である。
図5】本実施例の鞍乗型車両のリッド構造の上面図である。
図6】本実施例のリッド構造の断面図である。
図7】本実施例のフューエルリッドのロック動作の動作遷移図である。
図8】本実施例のフューエルリッドの解除動作の動作遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両には燃料タンク又はバッテリが収容されている。燃料タンクの給油口又はバッテリの充電口の周囲がトレイによって覆われており、給油口又は充電口を露出したトレイの開口がリッドによって開閉される。リッドは第1の操作部及び第2の操作部によって開方向に2段階で押し上げられる。リッドがロック状態から解除されると、第1の操作部によってリッドが第1の開度まで押し上げられた後、第2の操作部によってリッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられてリッドが半開き状態で第2の操作部に支持される。リッドの開き方向に関わらず、リッドの開度が十分に確保されて指が掛けやすくなる。リッドに指を掛けるための窪み等が不要になってデザインの自由度が向上される。また、リッドが自重等によって再びロックされることがない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、実施例の鞍乗型車両について説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム(不図示)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントカバー11が設けられており、フロントカバー11の後側にはライダーの足回りを保護するフロントレッグシールド12が設けられている。フロントレッグシールド12の下端から後方にフートボード13が延在しており、フートボード13の後方にはサイドカバー14が設けられている。フロントレッグシールド12とフートボード13によってシート15の前方にライダーの足置き空間が形成されている。
【0012】
フロントカバー11の上側にはハンドル16が設けられ、フロントカバー11の下側には一対のフロントフォーク17を介して前輪18が回転可能に支持されている。サイドカバー14の上側にはシート15が設けられており、サイドカバー14の下側にはユニットスイング式のエンジン21が設けられている。エンジン21は車体フレームに揺動可能に連結されており、エンジン21の後部には後輪19が回転可能に支持されている。エンジン21のクランクケースの左側面がCVTカバー22に覆われており、CVTカバー22の上方にエアクリーナ23が設けられている。
【0013】
エンジン21から鞍乗型車両1の右側方を通って排気管(不図示)が延びており、排気管の下流端には排気ガスを排出するマフラー24が接続されている。鞍乗型車両1の左側には、車体を傾けて自立させるサイドスタンド25が設けられている。サイドカバー14の内側には燃料タンク31(図4参照)が設置されている。シート15よりも後方に燃料タンク31の給油口が位置付けられ、ライダーが鞍乗型車両1から降りることなく第三者が給油作業を実施することができる。また、燃料タンク31の給油口の露出を抑えるために、車両後部にはフューエルリッド(リッド)41が取り付けられている。
【0014】
ところで、一般的な鞍乗型車両では、フューエルリッドが勝手に開かないようにロックされている。リッドのロックが解除されると、スプリングによってフューエルリッドが押し上げられる。フューエルリッドのヒンジ付近にスプリングが設置された構成ではフューエルリッドの開度が大きくなる。この場合、バネ力が強いスプリングが使用されており、バネ力によって変形しないようにフューエルリッドの剛性を高める必要がある。フューエルリッドの剛性が低いと、フューエルリッドに撓み等が生じてサイドカバー等の周辺部品との合わせが悪くなる。
【0015】
フューエルリッドの開放端付近にスプリングが設置される構成ではフューエルリッドの半開き状態で開度が小さく、フューエルリッドに指を引っ掛けて手動で開かなければならない。このため、フューエルリッドの開放端に指を掛けるための窪み等が必要になる。また、フューエルリッドの開度が小さいと、再びフューエルリッドがロックされるおそれもある。そこで、本実施例のリッド構造では、フューエルリッドのロックが解除されると、2段階でフューエルリッドが押し上げられて、開度が大きな半開き状態でフューエルリッドが支持されるように構成されている。
【0016】
図2から図5を参照して、鞍乗型車両のリッド構造について説明する。図2は本実施例の鞍乗型車両のリッド構造の斜視図である。図3は本実施例の鞍乗型車両のリッド構造の後面図である。図4図3のリッド構造をA-A線に沿って切断した断面図である。図5は本実施例の鞍乗型車両のリッド構造の上面図である。図6は本実施例のリッド構造の断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、車両後部の両側面が一対のサイドカバー14によって形成され、車両後部の後面がフューエルトレイ36及びテールランプ26によって形成されている。一対のサイドカバー14の後部、フューエルトレイ(トレイ)36、テールランプ26の内側には燃料タンク31(図4参照)の収容スペースが形成され、燃料タンク31の収容スペースがシート15の後部によって上方から覆われている。シート15の後部と一対のサイドカバー14の後部の間にはグラブバー27が設けられており、一対のサイドカバー14及びテールランプ26の下側にはリアフェンダ28が設けられている。
【0018】
車両後部の後面上側にフューエルトレイ36が位置付けられ、車両後部の後面下側にテールランプ26が位置付けられている。フューエルトレイ36によって燃料タンク31が後斜め上方から覆われ、テールランプ26によって燃料タンク31が後方から覆われている。フューエルトレイ36が凹状に窪んでおり、フューエルトレイ36から燃料タンク31のタンクキャップ34が露出している。タンクキャップ34が取り外されることで、燃料タンク31の給油口33が外部に露出される。給油口33の周囲がフューエルトレイ36に覆われており、給油口33から漏出した燃料が給油口33の周囲でフューエルトレイ36に受け止められる。
【0019】
フューエルトレイ36の開口からタンクキャップ34(給油口33)が露出され、フューエルトレイ36の側方にはフューエルトレイ36の開口を後斜め上方から覆うフューエルリッド41が設けられている。フューエルリッド41はフューエルトレイ36の側壁に横開き可能、本実施例では右開き可能に連結されている。フューエルリッド41の上方にグラブバー27が位置しているが、グラブバー27等によってフューエルリッド41の開き角度が制限されることがない。フューエルリッド41が広く開かれることで、給油作業時にタンクキャップ34や給油口33が視認し易くなっている。
【0020】
図3及び図4に示すように、シート15の後部下側には燃料タンク31が設置されている。燃料タンク31の後部からフューエルトレイ36に向かって給油管32が延びており、フューエルトレイ36の底面から給油管32が突き出している。フューエルトレイ36の内側で給油管32の先端の給油口33にタンクキャップ34が装着されている。給油口33は後斜め上方に向けられており、給油口33に給油ノズルが挿し込み易くなっている。フューエルトレイ36の中央は車体内側に窪んでおり、フューエルトレイ36の周壁によって給油口33に装着されたタンクキャップ34が囲まれている。
【0021】
フューエルトレイ36の右側壁にはフューエルリッド41が取り付けられている。フューエルリッド41は、フューエルトレイ36の窪みに対応したリッド本体42と、リッド本体42の背面に設けられたリッドカバー43と、を有している。リッド本体42の右側部からリッドアーム44がC字状に延びており、前傾した連結軸59を介してリッドアーム44の先端部がフューエルトレイ36の右側壁に連結されている。フューエルリッド41は連結軸59を支点にしてフューエルトレイ36を覆う倒伏姿勢とフューエルトレイ36を開放する起立姿勢をとるように左右に揺動される。
【0022】
フューエルリッド41の閉状態では、ロック機構71(図6参照)によってフューエルリッド41が倒伏姿勢でロックされる。フューエルリッド41のリッドカバー43によってフューエルトレイ36、タンクキャップ34が覆われて意匠性が向上されている。フューエルリッド41の開状態では、保持機構(不図示)によってフューエルリッド41が起立姿勢で保持されている。リッド本体42の内面には凹状のキャップ置き場45が形成されており、フューエルリッド41が開かれた状態で、キャップ置き場45にタンクキャップ34が置かれることで給油作業の作業性が向上される。
【0023】
図5に示すように、フューエルリッド41はフューエルトレイ36の開口を開閉しており、リッド本体42の開放端側の内面から突出部53が突き出している。フューエルリッド41の突出部53は、フューエルリッド41の閉状態でフューエルトレイ36の左側面に沿った壁状に形成されている。突出部53の先端部には、フューエルリッド41の閉状態でフューエルトレイ36の底面に対向する平坦面54と、フューエルリッド41の閉状態でフューエルトレイ36の内周面に対して傾いた斜面55と、が形成されている。突出部53には斜面55よりも基端側にロック穴56が形成されている。
【0024】
フューエルトレイ36の左側部では、フューエルトレイ36の底面からプッシュピン68が沈み込み可能に突き出し、フューエルトレイ36の内周面からロックピン72が沈み込み可能に突き出している。プッシュピン68は突出部53の平坦面54に接触可能な位置に設置され、ロックピン72は突出部53の斜面55に接触可能な位置に設置されている。突出部53の平坦面54にプッシュピン68が当って沈み込み、突出部53の斜面55にロックピン72が当って沈み込むことで、プッシュピン68及びロックピン72がフューエルトレイ36内に突き出ていても突出部53の進入を妨げることがない。
【0025】
図6に示すように、フューエルリッド41が閉状態でロックされると、突出部53の平坦面54にプッシュピン68が下方から付き当たり、突出部53のロック穴56にロックピン72が側方から入り込んでいる。プッシュピン68の下部はフューエルトレイ36の裏側の収容部69に入り込んでおり、収容部69内の反発バネ(不図示)によってプッシュピン68が突出部53に押し付けられている。ロックピン72の基端部はフューエルトレイ36の左側面に設けたロック機構71に入り込んでおり、ロック機構71内のトーションバネ(不図示)によってロックピン72が突出部53のロック穴56に押し込まれている。
【0026】
フューエルリッド41の閉状態では、プッシュピン68によってフューエルリッド41に対して反発力が付与され、ロックピン72によって反発力に抗してフューエルリッド41がロックされている。ロック機構71にはケーブル74を介してキーシリンダ等が接続されており、ケーブル操作によってフューエルリッド41のロックが解除可能になっている。詳細は後述するが、フューエルリッド41のロックが解除されると、プッシュピン68及びロックピン72によってフューエルリッド41が2段階で押し上げられて、フューエルリッド41の開度が十分に確保されている。
【0027】
この場合、プッシュピン68の最大突出長よりも上方にロックピン72が位置している。プッシュピン68が最大突出長まで突き出し、プッシュピン68からロックピン72にフューエルリッド41が受け渡される。突出部53の斜面55は、先端に向かってフューエルトレイ36の内周面(ロック機構71)から離れるように傾斜し、ロックピン72の押し込み力が斜面55によってフューエルリッド41に対する押し上げ力に変換される。プッシュピン68によってフューエルリッド41が第1の開度まで押し上げられ、ロックピン72によってフューエルリッド41が第1の開度から第2の開度まで押し上げられる。
【0028】
このように、フューエルリッド41は、突出部53の平坦面54に下方から突き当たるプッシュピン68と、突出部53の斜面55に側方から突き当たるロックピン72とによって押し上げられている。プッシュピン68とロックピン72がフューエルトレイ36の底面と内周面に分けて設置されているため、プッシュピン68とロックピン72を小型化して効率的にフューエルリッド41が半開される。プッシュピン68とロックピン72がフューエルトレイ36の左側に集約されてコンパクトに設置されている。また、ロック機構71のロックピン72を利用して、フューエルリッド41が開かれることで部品点数が低減される。
【0029】
図7及び図8を参照して、フューエルリッドのロック動作及び解除動作について説明する。図7は本実施例のフューエルリッドのロック動作の動作遷移図である。図8は本実施例のフューエルリッドの解除動作の動作遷移図である。
【0030】
図7(A)に示すように、フューエルリッド41の半開状態では、ロックピン72がフューエルトレイ36内に突き出しており、ロックピン72によってフューエルリッド41の突出部53が下方から支持されている。このとき、プッシュピン68の最大突出長よりもロックピン72が高く位置しており、フューエルリッド41の突出部53がプッシュピン68から上方に離間している。このフューエルリッド41の半開状態からフューエルリッド41が押し下げられると、突出部53の斜面55にロックピン72が突出位置から退避方向に押し込まれながら、突出部53の平坦面54がプッシュピン68の先端に近づけられる。
【0031】
図7(B)に示すように、突出部53の斜面55にロックピン72が押し込まれている途中で、突出部53の平坦面54がプッシュピン68に接触して、突出部53の平坦面54によってプッシュピン68が下方に押し込まれる。そして、図7(C)に示すように、プッシュピン68の反発力に抗してフューエルリッド41がさらに押し下げられると、突出部53の斜面55からロックピン72が外れて、ロックピン72が突出位置に復帰して突出部53のロック穴56に入り込む。これにより、プッシュピン68の反発力に抗して、ロックピン72によってフューエルリッド41が閉状態でロックされる。
【0032】
図8(A)に示すように、フューエルリッド41の閉状態では、プッシュピン68が突出部53の平坦面54に押し付けられ、ロックピン72が突出部53のロック穴56に入り込んでフューエルリッド41が掛け止めされている。図8(B)に示すように、フューエルリッド41のロック解除操作が実施されると、ロックピン72がフューエルリッド41を掛け止めする突出位置から退避してフューエルリッド41のロック状態が解除される。プッシュピン68の反発力によってフューエルリッド41が閉状態から第1の開度に押し上げられ、突出部53の斜面55がロックピン72の高さに合わせられる。
【0033】
図8(C)に示すように、プッシュピン68によってフューエルリッド41が第1の開度に押し上げられた後、ロックピン72が突出位置に復帰してロックピン72の先端が突出部53の斜面55に突き当てられる。突出部53の斜面55によってロックピン72の押し込みが押し上げ力に変換されて、ロックピン72によってフューエルリッド41が第2の開度に押し上げられる。このように、フューエルリッド41のロック解除に連動してフューエルリッド41が2段階で押し上げられる。また、プッシュピン68はロックピン72の高さまで押し上げればよいのでプッシュピン68のストロークを短くできる。
【0034】
以上、本実施例の鞍乗型車両1のリッド構造によれば、フューエルリッド41のロックが解除されると、プッシュピン68によってフューエルリッド41が第1の開度に押し上げられる。そして、ロックピン72によってフューエルリッド41が第1の開度から第2の開度まで押し上げられて、フューエルリッド41が半開き状態でロックピン72に支持される。フューエルリッド41の開き方向に関わらず、フューエルリッド41の開度が十分に確保されて指が掛けやすくなる。フューエルリッド41に指を掛けるための窪み等が不要になってデザインの自由度が向上される。また、フューエルリッド41が自重等によって再びロックされることがない。
【0035】
なお、本実施例においては、前傾した連結軸を支点にしてフューエルリッドが横開きする構成にしたが、フューエルリッドの開閉方向は特に限定されない。例えば、フューエルリッドが縦開きされてもよい。
【0036】
また、本実施例においては、給油口がシート後方に設置されているが、給油口の位置は特に限定されない。例えば、給油口がシート前方や車体側方に設置されていてもよい。
【0037】
また、本実施例においては、ケーブル操作によってロックピンが操作されたが、ロックピンを操作する操作子は特に限定されない。例えば、ロック機構に操作子が設けられていてもよい。
【0038】
また、本実施例においては、ロックピンがトーションバネの反発力によって突出位置に復帰されているが、操作子の戻し操作によってロックピンが突出位置に復帰されてもよい。
【0039】
また、本実施例においては、第1の操作部としてプッシュピンを例示し、第2の操作部としてロックピンを例示したが、第1、第2の操作部はフューエルリッドを開方向に2段階で押し上げ可能に構成されていれば特に限定されない。特に、ロックピンが第2の操作部として機能しているが、ロックピンとは別に第2の操作部が設けられていてもよい。
【0040】
また、本実施例においては、第1の操作部としてのプッシュピンが突出部の先端部に下方から突き当たり、第2の操作部としてのロックピンが突出部の先端に側方から突き当たっているが、突出部の先端に対する第1、第2の操作部の当接方向は限定されない。例えば、第1、第2の操作部の両方が突出部の先端に下方から突き当たってもよいし、第1、第2の操作部の両方が突出部の先端に側方から突き当たってもよい。
【0041】
また、本実施例においては、突出部の先端部に斜面が形成されているが、ロックピンの先端部に斜面が形成されていてもよい。この場合、ロックピンの斜面は、先端に向かってフューエルトレイの底面に近づくように傾斜している。このように、突出部の先端部及びロックピンの先端部のいずれか一方に、ロックピンの押し込み力をフューエルリッドに対する押し上げ力に変換する斜面が形成されていればよい。
【0042】
また、本実施例においては、鞍乗型車両の後部に燃料タンクが収容される構成について説明したが、鞍乗型車両の後部にバッテリが設置されていてもよい。この場合、車両後部の収容スペースにバッテリが設置され、バッテリの後部からトレイに向かってバッテリケーブルが延びている。バッテリケーブルの先端の充電口がトレイの底面から突き出しており、充電口には防水キャップが着脱可能に装着されている。燃料タンクの代わりにバッテリが設置された構成であっても、大きな開度でリッドを半開きすることができる。
【0043】
また、本実施例においては、燃料タンクとして燃料油が給油されるタンクを例示したが、燃料タンクは水素等の他の燃料が充填されるタンクでもよい。
【0044】
また、本実施例の鞍乗型車両のリッド構造は上記の鞍乗型車両に限らず、自動四輪車等の他の乗り物に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0045】
以上の通り、第1態様は、燃料タンク(31)又はバッテリが収容された鞍乗型車両(1)のリッド構造であって、燃料タンクの給油口(33)又はバッテリの充電口の周囲を覆うトレイ(フューエルトレイ36)と、給油口又は充電口を露出したトレイの開口を開閉するリッド(フューエルリッド41)と、リッドを開方向に2段階で押し上げる第1の操作部(プッシュピン68)及び第2の操作部(ロックピン72)と、を備え、リッドがロック状態から解除されると、第1の操作部によってリッドが第1の開度まで押し上げられた後、第2の操作部によってリッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられる。この構成によれば、リッドのロックが解除されると、第1の操作部によってリッドが第1の開度に押し上げられ、第2の操作部によってリッドが第1の開度から第2の開度まで押し上げられて、リッドが半開き状態で第2の操作部に支持される。リッドの開き方向に関わらず、リッドの開度が十分に確保されて指が掛けやすくなる。リッドに指を掛けるための窪み等が不要になってデザインの自由度が向上される。また、リッドが自重等によって再びロックされることがない。
【0046】
第2態様は、第1態様において、リッドの内面から突出部(53)が突き出しており、第1の操作部は突出部の先端部に下方から突き当たり、第2の操作部は突出部の先端部に側方から突き当たる。この構成によれば、第1、第2の操作部をトレイの底面と内周面に分けて設置されるため、第1、第2の操作部を小型化して効率的にリッドを開くことができる。
【0047】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、突出部の先端部及び第2の操作部の先端部のいずれか一方には、第2の操作部の押し込み力をリッドに対する押し上げ力に変換する斜面(55)が形成されている。この構成によれば、簡易な構成で第2の操作部の横向きの押し込み力を縦向きの押し上げ力に変換してリッドを押し上げることができる。
【0048】
第4態様は、第2態様又は第3態様において、第1の操作部はリッドの閉状態で当該リッドに対して反発力を付与するプッシュピンであり、第2の操作部はリッドの閉状態で反発力に抗して当該リッドをロックするロックピンである。この構成によれば、ロックピンを利用してリッドを開くことで部品点数を低減することができる。
【0049】
第5態様は、第4態様において、ロックピンがリッドを掛け止めする突出位置から退避してリッドのロック状態が解除され、プッシュピンによってリッドが第1の開度に押し上げられた後、ロックピンが突出位置に復帰して、ロックピンによってリッドが第2の開度に押し上げられる。この構成によれば、リッドのロック解除に連動して、プッシュピンとロックピンによってリッドを2段階で押し上げることができる。また、プッシュピンはロックピンの高さまで押し上げればよいため、プッシュピンのストロークを短くできる。
【0050】
第6態様は、第4態様又は第5態様において、プッシュピンがトレイの底面から沈み込み可能に突き出し、ロックピンがトレイの内周面から沈み込み可能に突き出している。この構成によれば、プッシュピン及びロックピンが沈み込み可能であるため、プッシュピン及びロックピンが突き出ていてもフューエルリッドの突出部の進入を妨げることがない。
【0051】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0053】
1 :鞍乗型車両
31 :燃料タンク
33 :給油口
36 :フューエルトレイ(トレイ)
41 :フューエルリッド(リッド)
53 :突出部
55 :斜面
68 :プッシュピン(第1の操作部)
72 :ロックピン(第2の操作部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8