(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176233
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】収納ボックスの保持構造
(51)【国際特許分類】
B62J 9/14 20200101AFI20241212BHJP
【FI】
B62J9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094638
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡島 弘起
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 征耶
(57)【要約】
【課題】収納ボックスの着脱作業の作業性を向上させる。
【解決手段】収納ボックス(41)の保持構造には、収納ボックスと、収納ボックスに連結された蓋体(15)と、収納ボックスを周囲から覆うカバー(14)と、が設けられている。カバーは、収納ボックスと蓋体の連結側に対向する一壁部(31)と、収納ボックスを挟んで対向する一対の対向壁部(32)と、を有している。一対の対向壁部に一対の掛止部(34)が形成され、収納ボックスに一対の被掛止部(45)が形成され、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも広くなっている。蓋体が開かれた状態で固定部材(56、57)が取り外されると、収納ボックスの連結側が一壁部に受け止められ、一壁部に作用する押圧力によって一対の対向壁部が内向きに撓んで、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも狭くなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに固定部材で固定される収納ボックスの保持構造であって、
荷物を出し入れするための開口が形成された収納ボックスと、
前記収納ボックスに連結されて前記開口を開閉可能な蓋体と、
前記蓋体の下方で前記収納ボックスを周囲から覆うカバーと、を備え、
前記カバーは、前記収納ボックスと前記蓋体の連結側に対向する一壁部と、前記収納ボックスを挟んで対向する一対の対向壁部と、を有し、
前記一対の対向壁部には一対の掛止部が形成され、前記収納ボックスには一対の被掛止部が形成され、前記一対の掛止部の間隔が前記一対の被掛止部の間隔よりも広く、
前記蓋体が開かれた状態で前記固定部材が取り外されていると、前記収納ボックスの連結側が前記一壁部に受け止められ、前記一壁部に作用する押圧力によって前記一対の対向壁部が内向きに撓んで、前記一対の掛止部の間隔が前記一対の被掛止部の間隔よりも狭まることを特徴とする収納ボックスの保持構造。
【請求項2】
前記一対の対向壁部の対向方向に延びる前記収納ボックスの中心線を挟んで、前記一壁部とは反対側に前記一対の掛止部が位置していることを特徴とする請求項1に記載の収納ボックスの保持構造。
【請求項3】
前記収納ボックスの前端に前記蓋体が上開き可能に連結されており、
前記一壁部が前壁部であり、前記一対の対向壁部が一対の側壁部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の収納ボックスの保持構造。
【請求項4】
前記蓋体がシートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の収納ボックスの保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納ボックスの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、シート下方に収納ボックスを設置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の収納ボックスは車両後方のリアフレームに固定され、リアフレームの外側の車体カバーによって収納ボックスが周囲から覆われている。収納ボックスの前端にヒンジを介してシートが連結され、ヒンジを中心にしてシートが開閉可能に構成されている。シートが収納ボックスの蓋として機能しており、シートが上開きされることで収納ボックスの内部が露出されて、収納ボックス内に対してヘルメット等の荷物が出し入れされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の収納ボックスの底面がリアフレームにボルトで固定されている。収納ボックスを着脱するためには、シートを開いた状態でボルトを締めたり緩めたりする必要がある。このとき、収納ボックスの前端にシートの荷重が集中するため、シートや収納ボックスを支えながら着脱作業を行わなければならない。収納ボックスの上縁に被さるように、車体カバーの上縁に掛止部を形成することも考えられるが、掛止部に収納ボックスの組付け作業が妨げられて作業性が悪化する。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、収納ボックスの着脱作業の作業性を向上させることができる収納ボックスの保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の収納ボックスの保持構造は、車体フレームに固定部材で固定される収納ボックスの保持構造であって、荷物を出し入れするための開口が形成された収納ボックスと、前記収納ボックスに連結されて前記開口を開閉可能な蓋体と、前記蓋体の下方で前記収納ボックスを周囲から覆うカバーと、を備え、前記カバーは、前記収納ボックスと前記蓋体の連結側に対向する一壁部と、前記収納ボックスを挟んで対向する一対の対向壁部と、を有し、前記一対の対向壁部には一対の掛止部が形成され、前記収納ボックスには一対の被掛止部が形成され、前記一対の掛止部の間隔が前記一対の被掛止部の間隔よりも広く、前記蓋体が開かれた状態で前記固定部材が取り外されていると、前記収納ボックスの連結側が前記一壁部に受け止められ、前記一壁部に作用する押圧力によって前記一対の対向壁部が内向きに撓んで、前記一対の掛止部の間隔が前記一対の被掛止部の間隔よりも狭まることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の収納ボックスの保持構造によれば、蓋体が開かれた状態で固定部材が取り外されていると、収納ボックスの連結側に蓋体の荷重が集中して収納ボックスが傾けられる。収納ボックスの連結側がカバーの一壁部で受け止められ、一壁部に作用する押圧力に一対の対向壁部が引っ張られて内向きに撓んで、一対の掛止部の間隔が収納ボックスの一対の被掛止部の間隔よりも狭められる。一壁部に収納ボックスが受け止められると共に、一対の掛止部に収納ボックスが掛け止めされ、収納ボックスを安定させた姿勢で収納ボックスの着脱作業を実施できる。また、一壁部に押圧力が作用しない状態では、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも広いため、一対の掛止部によって収納ボックスの組付け作業が妨げられることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施例のシートを開いた状態の車両後部の上面図である。
【
図3】本実施例の収納ボックスを取り外した車両後部の上面図である。
【
図4】本実施例の収納ボックスの受け止め状態を示す図である。
【
図5】本実施例の収納ボックスの掛け止め状態を示す図である。
【
図6】本実施例の収納ボックスの掛け止め状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の収納ボックスの保持構造は、車体フレームに固定部材で収納ボックスが固定される。収納ボックスには荷物を出し入れするための開口が形成され、収納ボックスには蓋体が連結されて蓋体によって開口が開閉される。蓋体の下方ではカバーによって収納ボックスが周囲から覆われている。カバーの一壁部は収納ボックスと蓋体の連結側に対向し、カバーの一対の対向壁は収納ボックスを挟んで対向している。一対の対向壁には一対の掛止部が形成され、収納ボックスには被掛止部が形成されており、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも広くなっている。蓋体が開かれた状態で固定部材が取り外されていると、収納ボックスの連結側に蓋体の荷重が集中して収納ボックスが傾けられる。収納ボックスの連結側がカバーの一壁部で受け止められ、一壁部に作用する押圧力に一対の対向壁部が引っ張られて内向きに撓んで、一対の掛止部の間隔が収納ボックスの一対の被掛止部の間隔よりも狭められる。一壁部に収納ボックスが受け止められると共に、一対の掛止部に収納ボックスが掛け止めされ、収納ボックスを安定させた姿勢で収納ボックスの着脱作業を実施できる。また、一壁部に押圧力が作用しない状態では、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも広いため、一対の掛止部によって収納ボックスの組付け作業が妨げられることがない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレームに車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントカバー11が設けられており、フロントカバー11の後側にはライダーの足回りを保護するフロントレッグシールド12が設けられている。フロントレッグシールド12の下端から後方にフートボード13が延在しており、フートボード13の後方にはセンターカバー31及び一対のサイドカバー32から成るリアカバー(カバー)14が設けられている。リアカバー14の上部にはシート15が設置されている。
【0012】
フロントカバー11の上側にはハンドル16が設けられ、フロントカバー11の下側には一対のフロントフォーク17を介して前輪18が回転可能に支持されている。リアカバー14の下側にはユニットスイング式のエンジン21が設けられている。エンジン21は車体フレームに揺動可能に連結されており、エンジン21の後部には後輪19が回転可能に支持されている。エンジン21のクランクケースの左側面がCVTカバー22に覆われており、CVTカバー22の上方にエアクリーナ23が設けられている。リアカバー14の内側にはシート15を蓋体とした収納ボックス41(
図2参照)が設置されている。
【0013】
一般的なスクータ型の鞍乗型車両では、エンジンの真上に収納ボックスが位置しているため、プラグ交換等のメンテナンス時には車体フレームに対して収納ボックスが着脱される。このとき、シートが収納ボックスの前端に取り付けられていることが多く、シートと一緒に収納ボックスを着脱する必要がある。収納ボックスの底面がボルトで車体フレームに固定されおり、収納ボックスの着脱作業をするためにシートを開く必要がある。収納ボックスとシートの重心が前側に偏り、ボルトが取り外された状態だと収納ボックスが大きく前傾して作業性が悪化する。
【0014】
収納ボックスからシートを取り外した状態で、車体フレームに収納ボックスを着脱すれば収納ボックスの前傾を抑えることができるが、収納ボックスに対するシートの着脱作業が増える分だけ作業効率が低下する。収納ボックスが前傾しないようにリアカバーで収納ボックスを掛止構造も考えられるが、リアカバーから内方に突き出た掛止構造によって収納ボックスを上方からリアカバー内に入れ込み難い。そこで、本実施例の収納ボックス41の保持構造では、収納ボックス41が傾きに応じてリアカバー14を内向きに撓ませて収納ボックス41を掛止可能にしている。
【0015】
図2及び
図3を参照して、収納ボックスの保持構造について説明する。
図2は本実施例のシートを開いた状態の車両後部の上面図である。
図3は本実施例の収納ボックスを取り外した車両後部の上面図である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、車体後部には一対のリアフレーム51を覆うようにリアカバー14が設置されている。リアカバー14の前面はセンターカバー(一壁部)31によって形成され、リアカバー14の両側面は一対のサイドカバー(対向壁部)32によって形成されている。リアカバー14の上面は略楕円状に開口しており、リアカバー14の内側には収納ボックス41が設置されている。収納ボックス41の前端側にはヒンジ49を介してシート15が上開き可能に連結されている。シート15の下方に収納ボックス41が設置され、リアカバー14によって収納ボックス41が周囲から覆われている。
【0017】
センターカバー31は収納ボックス41の前端側に対向しており、一対のサイドカバー32は収納ボックス41を挟んで対向している。センターカバー31と一対のサイドカバー32が連結して、円弧を描くようにセンターカバー31の上縁と一対のサイドカバー32の上縁が連なっている。一対のサイドカバー32の後側は車幅方向内側に固定部33が広がっており、一対の固定部33がグラブバー24と共に一対のリアフレーム51にボルト55で固定されている。また、一対の固定部33の前側では、一対のサイドカバー32の上縁から車幅方向内側に一対の掛止部34が突き出している。
【0018】
収納ボックス41の有底の収納部42には、ヘルメット等の荷物を出し入れするための開口43が形成されている。収納部42の上縁から外方にフランジ部44が広がっており、フランジ部44の後端側には一対の被掛止部45が形成されている。上面視にてフランジ部44は一対の被掛止部45を除いて全体的にリアカバー14の上縁に被さっている。一対の被掛止部45は一対のサイドカバー32の掛止部34に対応した箇所に設けられている。一対の被掛止部45の間隔よりも一対の掛止部34の間隔が広く形成されており、一対の掛止部34の内側に一対の被掛止部45は位置している。
【0019】
収納ボックス41の前側では、フランジ部44の前端側がセンターカバー31にネジ止めされ、収納部42の底面が一対のリアフレーム51の固定部52にボルト(固定部材)56で固定されている。収納ボックス41の後側では、フランジ部44の後端側が一対のリアフレーム51の固定部53にボルト(固定部材)57で固定されている。フランジ部44の前端側にはヒンジ49の一方の羽根が固定されており、ヒンジ49の他方の羽根にシート15が固定されている。シート15がヒンジ49のピンを支点にして揺動されることで、シート15が起立姿勢と倒伏姿勢に切り換えられて収納ボックス41の開口43が開閉される。
【0020】
シート15が開かれた状態では、シート15が起立姿勢になってヒンジ49の回転中心Xよりも前方側にシート15の重心Oが位置付けられる。収納ボックス41の前側にシート15の荷重が集中しており、収納ボックス41には前斜め下方に向けて押圧力が作用している。この状態では、収納ボックス41からボルト56、57やネジが取り外されると、シート15の荷重によって収納ボックス41が前傾する。収納ボックス41の前端側はセンターカバー31に受け止められ、センターカバー31に作用する押圧力によって一対のサイドカバー32が内向きに撓んで一対の掛止部34の間隔が狭められる。
【0021】
一対の掛止部34の間隔が一対の被掛止部45の間隔よりも狭まることで、収納ボックス41の後端側の一対の被掛止部45が一対の掛止部34に掛け止めされる。このとき、車幅方向(一対のサイドカバー32の対向方向)に延びる収納ボックス41の中心線L1を挟んで、センターカバー31やヒンジ49とは反対側に一対の掛止部34及び一対の被掛止部45が位置している。収納ボックス41とセンターカバー31の当接位置から十分に離れた箇所で収納ボックス41が掛け止めされるため、収納ボックス41の傾きが小さく抑えられて収納ボックス41の着脱作業の作業性が向上されている。
【0022】
以下、
図4から
図6を参照して、収納ボックスの取外作業について説明する。
図4は本実施例の収納ボックスの受け止め状態を示す図である。
図5は本実施例の収納ボックスの掛け止め状態を示す図である。
図6は本実施例の収納ボックスの掛け止め状態を示す図である。なお、
図4(A)、
図5(A)、
図6(A)は収納ボックスのボルトが固定された状態を示し、
図4(B)、
図5(B)、
図6(B)は収納ボックスのボルトが取り外された状態を示している。なお、収納ボックスの取付作業は取外作業とは逆の手順によって実施され、ここでは取付作業については説明を省略する。
【0023】
図4(A)に示すように、収納ボックス41の取り外し作業では、シート15が開かれて収納ボックス41の上方が開放されている。シート15の荷重が収納ボックス41の前端に集中しているが、収納ボックス41のボルト56、57(
図2参照)やネジがリアフレーム51に固定されているため、収納ボックス41が前方に押し下げられて傾くことがない。この場合、収納ボックス41の前面がリアカバー14のセンターカバー31から離間しており、収納ボックス41の前面とセンターカバー31が隙間を空けて対向している。このため、センターカバー31には収納ボックス41からの押圧力が作用していない。
【0024】
図5(A)及び
図6(A)に示すように、収納ボックス41のフランジ部44には車幅方向外側に屈曲した引掛部46が形成されており、引掛部46よりも後側には引掛部46から一段下がって被掛止部45が形成されている。サイドカバー32の上縁には収納ボックス41の引掛部46が被さっているが、サイドカバー32における引掛部46からの露出箇所から掛止部34が車幅方向内側に突き出している。車長方向ではサイドカバー32の掛止部34は収納ボックス41の被掛止部45に対応した箇所に設けられているが、車幅方向ではサイドカバー32の掛止部34と収納ボックス41の被掛止部45に隙間Cが空けられている。
【0025】
収納ボックス41の引掛部46はサイドカバー32の上縁よりも上方に位置付けられているが、収納ボックス41の被掛止部45はサイドカバー32の掛止部34よりも下方に位置付けられている。このように、収納ボックス41の被掛止部45はサイドカバー32の掛止部34から車幅方向及び上下方向において離間している。
図5及び
図6では車両左側の構造について説明しているが、車両右側の構造も同様である。なお、一対の掛止部34の内側に一対の被掛止部45が位置しているため、一対のサイドカバー32の間に収納ボックス41を上方から設置する際に一対の掛止部34が一対の被掛止部45に干渉することがない。
【0026】
図4(B)に示すように、シート15が開かれた状態で、収納ボックス41のボルト56、57(
図2参照)やネジが取り外されると、起立姿勢のシート15の荷重によって収納ボックス41の前端が前斜め前方に押し下げられる。収納ボックス41が前斜め前方に傾けられると、収納ボックス41の前面がセンターカバー31に接触して、センターカバー31によって収納ボックス41の前面が受け止められる。このため、シート15の荷重が収納ボックス41を介してセンターカバー31に押圧力として作用して、収納ボックス41の前面によってセンターカバー31が前方に向けて強く押し込まれる。
【0027】
図5(B)及び
図6(B)に示すように、センターカバー31が前方に押し込まれると、センターカバー31によってサイドカバー32が前方に引っ張られる。サイドカバー32の上縁が外向きに膨らんだ円弧状であり、サイドカバー32の後側の固定部33(
図3参照)よりも前方のサイドカバー32の上縁が引き延ばされる。上面視にて、サイドカバー32の円弧状の上縁が直線に近づくように変形して、サイドカバー32の上縁が撓んで掛止部34が車幅方向内側に動かされる。サイドカバー32の掛止部34が収納ボックス41の被掛止部45に近づけられて掛止部34が被掛止部45の上方に位置付けられる。
【0028】
シート15の荷重を受けて収納ボックス41が前傾しても、サイドカバー32の掛止部34に収納ボックス41の被掛止部45が突き当たる。収納ボックス41の前面がセンターカバー31に受け止められ、サイドカバー32の掛止部34に収納ボックス41の被掛止部45が掛け止めされることで収納ボックス41が保持される。収納ボックス41が前面側を支点にして揺動しようとするが、収納ボックス41が前面から十分に離れた箇所が掛け止めされることで、収納ボックス41の傾きが小さく抑えられている。このため、サイドカバー32の内側から収納ボックス41が容易に取り外される。
【0029】
以上、本実施例の収納ボックス41の保持構造によれば、シート15が開かれた状態でボルト56、57やネジが取り外されていると、収納ボックス41の前側にシート15の荷重が集中して収納ボックス41が傾けられる。収納ボックス41の前側がセンターカバー31で受け止められ、センターカバー31に作用する押圧力に一対のサイドカバー32が引っ張られて内向きに撓んで、一対の掛止部34の間隔が収納ボックス41の一対の被掛止部45の間隔よりも狭められる。センターカバー31に収納ボックス41が受け止められると共に、一対の掛止部34に収納ボックス41が掛け止めされ、収納ボックス41を安定させた姿勢で収納ボックス41の着脱作業を実施できる。また、センターカバー31に押圧力が作用しない状態では、一対の掛止部34の間隔が一対の被掛止部45の間隔よりも広いため、一対の掛止部34によって収納ボックス41の組付け作業が妨げられることがない。
【0030】
なお、本実施例においては、センターカバーと一対のサイドカバーが別体に形成されているが、センターカバーと一対のサイドカバーが一体に形成されていてもよい。
【0031】
また、本実施例においては、収納ボックスの蓋体としてシートを例示したが、蓋体は収納ボックスの開口を開閉するものであればよい。すなわち、鞍乗型車両にはシートとは別に蓋体が設けられていてもよい。
【0032】
また、本実施例においては、リアカバーが上方に向けて開口されているが、リアカバーが斜め上方、斜め下方、側方に向けて開口されていてもよい。
【0033】
また、本実施例においては、一対の掛止部が一対のサイドカバーの上縁から車幅方向内側に突き出しているが、一対の掛止部の形成箇所は特に限定されない。
【0034】
また、本実施例においては、一対の被掛止部が収納ボックスのフランジ部の後側に形成されているが、一対の被掛止部は一対の掛止部に対応する位置であれば、一対の被掛止部の形成箇所は特に限定されない。
【0035】
また、本実施例においては、上面視にて一対のサイドカバーが外向きに膨らんだ円弧状に形成されているが、前後の引張力を受けて内向きに撓む形状であれば一対のサイドカバーの形状は限定されない。
【0036】
また、本実施例においては、一対のサイドカバーの材質は引張力を受けて撓み、引張力が取り除かれたときに弾性復帰可能な可撓性材料で形成されていればよい。
【0037】
また、本実施例の収納ボックスの保持構造は上記の鞍乗型車両に限らず、他タイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0038】
以上の通り、第1態様は、車体フレーム(リアフレーム51)に固定部材(ボルト56、57)で固定される収納ボックス(41)の保持構造であって、荷物を出し入れするための開口(43)が形成された収納ボックスと、収納ボックスに連結されて開口を開閉可能な蓋体(シート15)と、蓋体の下方で収納ボックスを周囲から覆うカバー(リアカバー14)と、を備え、カバーは、収納ボックスと蓋体の連結側に対向する一壁部(センターカバー31)と、収納ボックスを挟んで対向する一対の対向壁部(サイドカバー32)と、を有し、一対の対向壁部には一対の掛止部(34)が形成され、収納ボックスには一対の被掛止部(45)が形成され、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも広く、蓋体が開かれた状態で固定部材が取り外されていると、収納ボックスの連結側が一壁部に受け止められ、一壁部に作用する押圧力によって一対の対向壁部が内向きに撓んで、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも狭まる。この構成によれば、蓋体が開かれた状態で固定部材が取り外されていると、収納ボックスの連結側に蓋体の荷重が集中して収納ボックスが傾けられる。収納ボックスの連結側がカバーの一壁部で受け止められ、一壁部に作用する押圧力に一対の対向壁部が引っ張られて内向きに撓んで、一対の掛止部の間隔が収納ボックスの一対の被掛止部の間隔よりも狭められる。一壁部に収納ボックスが受け止められると共に、一対の掛止部に収納ボックスが掛け止めされ、収納ボックスを安定させた姿勢で収納ボックスの着脱作業を実施できる。また、一壁部に押圧力が作用しない状態では、一対の掛止部の間隔が一対の被掛止部の間隔よりも広いため、一対の掛止部によって収納ボックスの組付け作業が妨げられることがない。
【0039】
第2態様は、第1態様において、一対の対向壁部の対向方向に延びる収納ボックスの中心線(L)を挟んで、一壁部とは反対側に一対の掛止部が位置している。この構成によれば、収納ボックスと一壁部の当接位置から十分に離れた箇所で収納ボックスが掛け止めされるため、収納ボックスの傾きを小さく抑えて収納ボックスの着脱作業の作業性を向上させることができる。
【0040】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、収納ボックスの前端に蓋体が上開き可能に連結されており、一壁部が前壁部であり、一対の対向壁部が一対の側壁部である。この構成によれば、収納ボックスの連結箇所が受け止められる前壁部と、収納ボックスを掛け止めする一対の掛止部が前後に離間される。このため、鞍乗型車両に適した前後長が大きな収納ボックスの傾きを効果的に抑えて収納ボックスの着脱作業の作業性を向上させることができる。
【0041】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、蓋体がシートである。この構成によれば、シートを収納ボックスの蓋体として機能させることができる。
【0042】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0043】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。