(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176234
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094639
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲哉
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA03
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA32
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB28
2H033BB33
2H033BB39
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA02
(57)【要約】
【課題】定着動作に伴う定着ベルトの温度変化を、より応答性よく検出できるようにすること。
【解決手段】定着部18は、記録媒体に転写された現像剤像をその記録媒体に定着させるために前記現像剤像を加熱する定着ベルト120と、定着ベルト120の内側に配置され、発熱するヒータ121と、ヒータ121からの熱を定着ベルト120に伝導する熱拡散部材124と、定着ベルト120の温度を特定するために、熱拡散部材124の温度を検出する温度センサ122A~122Cとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に転写された現像剤像を前記記録媒体に定着させるために、前記現像剤像を加熱する定着ベルトと、
前記定着ベルトの内側に配置され、発熱する熱源と、
前記熱源からの熱を前記定着ベルトに伝導する熱拡散部材と、
前記定着ベルトの温度を特定するために、前記熱拡散部材の温度を検出する温度検出部と、を備えること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記熱拡散部材は、前記熱源と、前記定着ベルトとの間に配置されていること
を特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記熱拡散部材は、前記定着ベルトに接触されていること
を特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記熱拡散部材は、前記定着ベルト及び前記熱源に接触する板状部材と、前記板状部材から、前記定着ベルトとは反対方向に延びる延伸部材とを備え、
前記温度検出部は、前記延伸部材に取り付けられていること
を特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記熱拡散部材は、アルミニウムで構成されていること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記熱源は、基板と、前記基板に形成され、前記基板から電圧が印加されることで発熱する発熱体とを備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトの外側から前記定着ベルトの方向に前記記録媒体を加圧する加圧ローラをさらに備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記温度検出部は、前記定着ベルトと、前記加圧ローラとの間に形成されるニップ部における前記定着ベルトの温度を特定するために、前記熱拡散部材の温度を検出すること
を特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1から4の何れか一項に記載の定着装置を備えること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項5に記載の定着装置を備えること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項6に記載の定着装置を備えること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項7に記載の定着装置を備えること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項8に記載の定着装置を備えること
を特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式の画像形成装置においては、定着装置において現像剤としてのトナーを加熱して、媒体に定着させている。定着装置においては、ヒータにより定着ベルトが加熱されている。トナーを媒体に確実に定着させるためには、定着ベルトの温度を正確に検出する必要がある。
【0003】
従来の技術では、例えば、特許文献1に記載されているように、定着ベルトに接触されているヒータの裏側(言い換えると、定着ベルトとは反対側)に、ヒータの熱を蓄積するための蓄熱部材が設けられている。そして、その蓄熱部材の裏側、言い換えると、ヒータの裏側から、温度が検出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒータの裏側で温度を検出する場合、定着動作に伴う定着ベルトの温度変化への応答性が不十分であった。
【0006】
そこで、本開示の一又は複数の態様は、定着動作に伴う定着ベルトの温度変化を、より応答性よく検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る定着装置は、記録媒体に転写された現像剤像を前記記録媒体に定着させるために、前記現像剤像を加熱する定着ベルトと、前記定着ベルトの内側に配置され、発熱する熱源と、前記熱源からの熱を前記定着ベルトに伝導する熱拡散部材と、前記定着ベルトの温度を特定するために、前記熱拡散部材の温度を検出する温度検出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様に係る画像形成装置は、記録媒体に転写された現像剤像を前記記録媒体に定着させるために、前記現像剤像を加熱する定着ベルトと、前記定着ベルトの内側に配置され、発熱する熱源と、前記熱源からの熱を前記定着ベルトに伝導する熱拡散部材と、前記定着ベルトの温度を特定するために、前記熱拡散部材の温度を検出する温度検出部と、を備える定着装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一又は複数の態様によれば、定着動作に伴う定着ベルトの温度変化を、より応答性よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタの構成を概略的に示す断面側方図である。
【
図2】(A)及び(B)は、定着ベルト及びヒータを説明するための概略図である。
【
図3】加圧ローラ及び定着ベルトを側方から見た第1の概略図である。
【
図4】(A)及び(B)は、熱拡散部材、抵抗体、温度センサ及びサーモスタットの配置を説明するための概略図である。
【
図5】加圧ローラ及び定着ベルトを側方から見た第2の概略図である。
【
図6】(A)及び(B)は、定着部の動作に伴い、温度が変化する様子を説明するための概略図である。
【
図7】カラープリンタの制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図8】抵抗体の構成を説明するための概略図である。
【
図9】(A)及び(B)は、ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタ100の概略構成を示す断面側方図である。
カラープリンタ100は、本体部1と、本体部1に対して開閉可能なトップカバー2とから構成されている。
【0012】
記録媒体格納部3は、記録を行うための媒体である記録媒体4を格納する。記録媒体4は、カラープリンタ100により印刷される用紙等である。
【0013】
給紙ローラ5は、記録媒体格納部3から記録媒体4を1枚ずつ給紙するためのローラである。
第1レジストローラ7及び第2レジストローラ9は、記録媒体格納部3から給紙ローラ5により給紙された記録媒体4を、画像形成部13Y、13M、13C、13Kまで搬送する搬送ローラである。
【0014】
第1のINセンサ6は、記録媒体4が到達したことを検知する走行系センサであり、第1レジストローラ7の手前に設置されている。
第2のINセンサ8は、記録媒体4が到達したことを検知する走行系センサであり、第2レジストローラ9の手前に設置されている。
【0015】
WRセンサ10は、記録媒体4を検知する走行系センサであり、第2レジストローラ9の後ろに設置されている。WRセンサ10により、記録媒体4が画像形成部13Y、13M、13C、13Kに到達するタイミングを検知することができる。
【0016】
搬送ベルト11は、給紙されてきた記録媒体4を画像形成部13Y、13M、13C、13Kの下流側へ搬送する無端ベルトである。
【0017】
搬送ベルト11の上方には、LEDヘッド12Y、12M、12C、12K及び画像形成部13Y、13M、13C、13Kが設けられている。
ここで、
図1では、Yellow、Magenta、Cyan及びblacKの色に関連する構成を、それぞれ符号の最後に付された大文字Y、M、C及びKで示している。なお、以下では、特に色を特定する必要がない場合には、符号の最後に付された大文字Y、M、C及びKを省略する場合がある。
【0018】
LEDヘッド12Y、12M、12C、12Kのそれぞれは、画像形成データとしての印刷データに応じて光を照射する露光部である。LEDヘッド12Y、12M、12C、12Kは、それぞれの色に対応して、開閉可能なトップカバー2に移設可能なホルダに支持されている。
LEDヘッド12Y、12M、12C、12Kのそれぞれは、トップカバー2が閉じられると、露光可能となる。LEDヘッド12Y、12M、12C、12Kのそれぞれは、ケーブルを介して、カラープリンタ100の本体部1に接続される。
【0019】
画像形成部13Y、13M、13C、13Kのそれぞれは、それぞれの色の現像剤であるトナーを用いて、現像剤像であるトナー像を形成する。
なお、画像形成部13Y、13M、13C、13Kのそれぞれは、同様に構成されているため、以下では、画像形成部13Yについてのみ説明する。
【0020】
画像形成部13Yは、トナーカートリッジ14Yの内部に格納されているトナーを、LEDヘッド12Yにより静電潜像が形成された感光ドラム15Yに付着させることで、トナー像を形成する。
ここで、トナーカートリッジ14Yは、トナーが消失すると交換が必要な為、カラープリンタ100内部から着脱可能なメカ構造を備えている。
感光ドラム15Yは、静電気力によりドラム表面に印刷データに応じた静電潜像を作成可能な感光体である。
【0021】
転写ローラ16Y、16M、16C、16Kは、搬送ベルト11を挟んで、感光ドラム15Y、15M、15C、15Kと対峙して配設されているローラである。転写ローラ16Y、16M、16C、16Kは、感光ドラム15Y、15M、15C、15Kの表面上に形成されたトナー像を記録媒体4上に転写する転写部である。
【0022】
感光ドラム15Y、15M、15C、15K及び転写ローラ16Y、16M、16C、16Kは、後述する高圧電源22から高圧を印加されることにより、静電気的に帯電、現像及び転写といった電子写真プロセスを可能にする。
【0023】
FUSER-INセンサ17は、記録媒体4を検知する走行系センサであり、定着部18の直前に設置されている。
【0024】
定着部18は、記録媒体4上に転写されたトナー像を、熱と圧力とにより定着させる定着装置である。定着部18は、加圧ローラ110と、定着ベルト120とを備える。
【0025】
EXITセンサ19は、記録媒体4を検知する走行系センサであり、定着部18の後ろに設置されている。EXITセンサ19は、定着部18から記録媒体4が排出されたことを検知する。
【0026】
排出スタッカ20は、記録媒体4が最終的に排出されてくるスタッカである。
【0027】
濃度センサ21は、濃度補正等の印字品位保持動作をするために、搬送ベルト11上に作成される特殊なパターンを読み取る光学式センサである。
高圧電源22は、感光ドラム15Y、15M、15C、15K及び転写ローラ16Y、16M、16C、16Kに印加する高圧電圧を発生する電源である。
低圧電源23は、商用のAC電源をDC電源に変換するAC-DC電源である。低圧電源23は、図示しない各基板に3.3V、5V、24V等のDCを供給する。また、定着部18の熱源にトライアックを介してAC100Vを供給する。
【0028】
ここで、上記した、第1のINセンサ6、第2のINセンサ8、WRセンサ10、FUSER-INセンサ17及びEXITセンサ19といった走行系センサは、ケーブルを介してコントローラ131(
図7参照)に接続されている。
また、給紙ローラ5、第1レジストローラ7、第2レジストローラ9、感光ドラム15、転写ローラ16及び加圧ローラ110といったローラは、図示しないアクチュエータによりメカ的に駆動され、記録媒体4を下流方向へ搬送することが可能である。
【0029】
表示入力部24は、液晶表示パネル及びスイッチ等により構成されるプリント基板であり、カラープリンタ100の状態を表示する表示部及びユーザによる入力操作を受ける入力部として機能する。表示入力部24は、ケーブルを介してコントローラ131に接続される。液晶表示パネルは例えば、24文字×2行のキャラクタ(文字)を表示可能である。
【0030】
ここで、
図2及び
図3を用いて、定着部18の内部の構成を説明する。
図2(A)は、定着ベルト120を上方から見た概略図であり、
図2(B)は、定着ベルト120内のヒータ121の概略図である。
図3は、加圧ローラ110及び定着ベルト120を側方から見た概略図である。
【0031】
図2(A)及び
図3に示されているように定着ベルト120の内部には、ヒータ121と、温度センサ122A、122B、122Cと、サーモスタット123A、123Bと、熱拡散部材124と、熱伝導部材125とが備えられている。
また、図示されてはいないが、定着ベルト120の内部には、ヒータ121を固定するためのヒータホルダ及び定着ベルト120を支持するための固定支持部材が設けられている。
【0032】
加圧ローラ110は、定着ベルト120に対向して配設され、定着ベルト120との間にニップ部を形成する。これにより、加圧ローラ110は、定着ベルト120の外側から定着ベルト120の方向に記録媒体4を加圧する。
【0033】
ここでは、加圧ローラ110は、金属材料からなる円筒状の部材周面がゴム弾性層で覆われている。ゴム弾性層は、例えば、シリコンゴム等の材質である。ここでは、定着ベルト120と、加圧ローラ110との間にニップ部が形成されているため、後述するメインモータ25(
図7)で加圧ローラ110を回転させることによって、定着ベルト120も回転する。
【0034】
定着ベルト120は、無端の帯状体であり、内部より固定支持部材により支持されている。定着ベルト120は、記録媒体4に転写されたトナー像を記録媒体4に定着させるために、前記トナー像を加熱する。
定着ベルト120は、内側より基材、ゴム層及び離型層を備えている。例えば、基材は、ポリイミド等の耐熱性の樹脂又はステンレス鋼であるSUS(Stainless Used Steel)等で構成されている。ゴム層は、シリコンゴム等で構成されている。離型層は、フッ素系樹脂であるPFA(Perfluoroalkosy alkane)等で構成されている。
【0035】
ヒータ121は、定着ベルト120の内側に配置された熱源である。ここでは、ヒータ121は、長手方向に延び、発熱する面状発熱体である。例えば、ヒータ121は、SUS基板上に電気絶縁層、抵抗発熱層、電極及び保護層を順に積層することにより構成された基板の上に形成された抵抗体126A、126B、126Cが、その基板からの電圧を受けて発熱する。SUSの代わりに、絶縁性に優れたセラミックが用いられてもよい。
【0036】
図2(B)に示されているように、ヒータ121内には、中央部の抵抗体126Aと、端部の抵抗体126B、126Cとが分割して形成されている。
中央部の抵抗体126Aは、幅狭サイズ(例えば、A5サイズ)の記録媒体を加熱できる幅である。中央部の抵抗体126Aと、両端部の抵抗体126B、126Cとを合わせて、幅広サイズ(例えば、A4サイズ)の記録媒体を加熱できる幅となっている。抵抗体126Aと、抵抗体126Bと、抵抗体126Cとは、後述するトライアック等でON制御又はOFF制御されることにより交流商用電源PWからの電力が夫々独立に供給されて、発熱する発熱体である。
【0037】
図3に示されているように、熱拡散部材124は、ヒータ121からの熱を定着ベルト120に伝導する。ここでは、熱拡散部材124は、ヒータ121の熱を、その長手方向及び幅方向に温度を均一に拡散する目的で、ヒータ121と、定着ベルト120との間に配置される。幅方向は、例えば、
図3の矢印ARが示す方向であり、記録媒体4が搬送される方向である。熱拡散部材124は、熱を伝導するため、ヒータ121及び定着ベルト120に接触されている。なお、熱拡散部材124と、ヒータ121及び定着ベルト120の何れか一方との間に、摺動グリス等の潤滑剤が塗布されている場合でも、接触されているものとする。
【0038】
ここで、熱拡散部材124は、ヒータ121により加熱されるとともに、記録媒体4等により熱が奪われる定着ベルト120の温度を、精度良く及び応答性良く検出するために、熱伝導率が高いアルミニウム等の材質で形成される。
【0039】
熱伝導部材125は、ヒータ121に接触するように配設される。熱伝導部材125が設けられる目的は、熱拡散部材124と同じで、その材質は、例えば、熱伝導率が高いアルミニウム等である。
なお、熱拡散部材124による熱拡散が十分である場合は、熱伝導部材125は、ステンレス鋼等で形成されてもよく、また、熱伝導部材125が設けられていなくてもよい。
【0040】
温度センサ122A、122B、122Cは、定着ベルト120の温度を特定するために、熱拡散部材124の温度を検出する温度検出部である。ここでは、温度センサ122A、122B、122Cは、熱拡散部材124に接触されている。特に、温度センサ122A、122B、122Cは、定着ベルト120と、加圧ローラ110との間に形成されるニップ部における定着ベルト120の温度を特定するために、熱拡散部材124の温度を検出する。
【0041】
温度センサ122Aは、通紙領域の中央部、温度センサ122B、122Cは、通紙領域の端部に配設される。ここでは、
図2(B)に示されている右側の抵抗体126Bで加熱される温度を計測するために、温度センサ122Bが設けられ、
図2(B)に示されている左側の抵抗体126Cで加熱される温度を計測するために、温度センサ122Cが設けられている。なお、抵抗体126B、126Cは同時に加熱されるため、温度センサ122B、122Cの片方のみが設けられていてもよい。
【0042】
最終安全装置としてのサーモスタット123A、123Bは、温度センサ122A、122B、122Cと同様に定着ベルト120内の熱拡散部材124に接触するように設けられる。
ここでは、
図2(B)に示されている右側の抵抗体126Bで加熱される温度を検出するために、サーモスタット123Bが設けられているが、左側の抵抗体126Cで加熱される温度を検出するために、サーモスタット123Bの代わりに、又は、サーモスタット123Bとともに、図示しないサーモスタットが設けられてもよい。
【0043】
温度センサ122A、122B、122C及びサーモスタット123A、123Bは、検出温度の誤差低減及び応答性向上のため、図示しないスプリングによって熱拡散部材124に予め定められた力で押し当てられている。
【0044】
交流商用電源PWは、AC入力電圧を供給する。AC入力電圧は、ここではAC100Vである。
【0045】
トライアック127A、127Bは、ヒータ121の電力制御に用いられる半導体スイッチング素子である。トライアック127A、127Bは、それぞれ、定着制御部148(
図7参照)からON制御又はOFF制御を受ける。定着制御部148の詳細は後述するが、定着制御部148は、各温度センサ122A、122B、122Cの検出結果に基づいて、ヒータ121内の発熱する抵抗体126A、126B、126Cを用いて加熱制御し、定着ベルト120の温度が最適となるように制御する。
【0046】
ヒータ121と、熱拡散部材124との間、及び、ヒータ121と、熱伝導部材125との間には部材間の熱伝導性向上のために図示しない熱伝導グリスが塗布されている。熱伝導グリスは、酸化亜鉛とシリコーンオイルを主成分とする。また、熱拡散部材124と、定着ベルト120との間には、図示しない摺動グリスが塗布されている。摺動グリスは、PTFE(Perfuluoropolyether)を主成分とする。なお、摺動グリス等の潤滑剤は、熱拡散部材124と、定着ベルト120とが接触することを前提とするものであるため、潤滑剤が塗布されていても、熱拡散部材124及び定着ベルト120は、接触していると解釈されるものとする。
【0047】
図4(A)及び(B)は、熱拡散部材124と、抵抗体126A、126B、126Cと、温度センサ122A、122B、122Cと、サーモスタット123A、123Bとの配置を説明するための概略図である。
図4(A)は、斜視図であり、
図4(B)は、上面図である。
【0048】
熱拡散部材124は、抵抗体126A、又は、抵抗体126A及び抵抗体126B、126Cからの熱を定着ベルト120に与えるために、定着ベルト120に接触する板状部材としての底面124aを備えている。
また、熱拡散部材124は、抵抗体126A、又は、抵抗体126A及び抵抗体126B、126Cからの熱、並びに、記録媒体4が通紙して冷却された熱を、温度センサ122A、122B、122C及びサーモスタット123A、123Bで検出するため、
図4(A)及び(B)に示されているように、温度センサ122A、122B、122C及びサーモスタット123A、123Bが配置されている箇所のみ、底面124aから上方に延びる延伸部材としての壁部124bを備えている。言い換えるとの、壁部124bは、温度を検出する箇所に設けられており、温度を検出しない箇所には設けられていない。
図4(A)及び(B)に示されているように、壁部124bは、定着ベルト120とは反対方向に延びている。
【0049】
温度センサ122A、122B、122C及びサーモスタット123A、123Bは、壁部124bに取り付けられている。壁部124bは、温度センサ122A、122B、122C及びサーモスタット123A、123Bを接触させて、これらで温度を検出することのできるサイズを備えていればよい。これは、温度を検出しない箇所も上方に延ばしてしまうと、延ばした分だけの熱容量が増え、無駄に熱量を供給する必要が生ずるためである。
【0050】
次に、定着部18における温度の特性について説明する。
図5は、
図3と同様に、加圧ローラ110及び定着ベルト120を側方から見た概略図であるが、サーモスタット123A、123Bについては、図示を省略している。
【0051】
図5において、定着ベルト120の記録媒体4の入り口側の表面温度である入口側温度をH1、温度センサ122A、122B、122Cの何れかで検出される熱拡散部材124の温度をH2とし、従来技術で検出されている、熱伝導部材125の裏側の温度をH3とする。
【0052】
図6(A)は、定着部18の動作に伴い、
図5に示されている各温度が変化する様子を示すタイムチャートである。
図6(B)は、
図6(A)に示されているタイムチャートにおける各温度をまとめた表である。
【0053】
まず、時間t1では、定着制御部148は、ヒータ121に対する加熱許可を行い、ヒータ121を加熱する。
【0054】
時間t2では、定着制御部148は、定着ベルト120のニップ部の温度が予め定められた温度に到達するまで加熱して、その温度が予め定められた温度に到達したら、
図7に示されているメインモータ25を回転させる。これは、熱拡散部材124と、定着ベルト120との間に塗布した摺動剤が軟化する温度にまで上昇させる必要があるためである。ここでは、予め定められた温度は、80℃とし、熱拡散部材124の温度H2が80℃以上となった場合に、メインモータ25が回転する。
【0055】
時間t3では、定着制御部148は、定着ベルト120の温度が予め定められた温度に到達するまで加熱して、予め定められた温度に到達したら、記録媒体4の通紙を始めて、印刷を行う。ここでは、予め定められた温度は、160℃とし、定着ベルト120の入り口側温度H1が160℃に到達したら、通紙が行われる。
【0056】
時間t4は、記録媒体4が10枚通紙した時点とする。
【0057】
次に、
図6(B)を用いて、定着ベルト120の温度を検出するために、熱拡散部材124を用いて検出する方式が優れている点について説明する。
【0058】
まず、時間t2において、定着ベルト120の入り口側温度H1は、定着ベルト120が回転していないため、室温(25℃)となっている。このため、定着ベルト120の入り口側では、定着ベルト120及び定着ベルト120のニップ部の温度を検出することができない。
【0059】
熱拡散部材124の温度H2は、
図6(B)に示されているように、定着ベルト120のニップ部の温度を検出することができている。
【0060】
なお、熱伝導部材125の裏側の温度H3も検出することができているが、
図6(B)に示されているように、温度H3は、定着ベルト120のニップ部の温度よりも高くなっている。
図3に示されているように、ヒータ121位置を基準としたとき、ニップ部への方向に対する熱容量と、ニップ部とは反対の方向に対する熱容量とが異なり、ニップ部とは反対の方向に対する熱容量が、ニップ部の方向に対する熱容量に比べて軽いため、熱伝導部材125の温度H3は、定着ベルト120のニップ部の温度よりも高くなっている。また、ヒータ121では、SUS基板が用いられているため、アルミで構成された熱拡散部材124よりも熱伝導率が低い。このため、ニップ部の温度変化が伝わりづらい構成になっているためである。
【0061】
以上から、メインモータ25が停止状態で加熱する際において、熱拡散部材124を用いて温度を検出することが好適である。
【0062】
次に、時間t3~時間t4及び時間t4以降において、定着ベルト120の入り口側温度H1と、熱拡散部材124の温度H2とは、温度差はあるが、変動幅としては同等となっている。
【0063】
一方、熱伝導部材125の裏側の温度H3は、記録媒体4の印刷枚数が増えると、温度が上昇していく。これは前記の通り、ヒータ121の位置を基準としたとき、ニップ部への方向に対する熱容量と、ニップ部とは反対の方向に対する熱容量とが異なり、ニップ部とは反対の方向に対する熱容量が、ニップ部への方向に対する熱容量に比べて軽いため、熱伝導部材125の温度H3が、定着ベルト120のニップ部の温度よりも高くなっているためである。また、ヒータ121では、SUS基板が用いられているため、アルミで構成された熱拡散部材124よりも熱伝導率が低く、ニップ部の温度変化が伝わりづらい構成になっているためである。
【0064】
よって、メインモータ25が回転状態及び記録媒体通紙状態で加熱する際において、定着ベルト120の入り口側及び熱拡散部材124を用いて温度を検出することが好適である。
【0065】
定着ベルト120の入り口側温度H1では、停止状態での定着ベルト120のニップ部の温度が検出できないため、定着ベルト120の入り口側温度H1で制御を行うためには、さらに熱伝導部材125の温度H3を検出する必要がある。このため、必要な温度センサの数が増加する。
【0066】
また、印刷速度が遅い印刷を行う場合、記録媒体4をニップした、定着ベルト120の部分が、温度を検出する入り口側に到達するまでに時間がかかる。このため、定着ベルト120のその部分の熱が、定着部18内の空気への放熱等によって低下し、急峻な温度変化が平坦化されてしまう。このように、印刷速度が遅い場合には、定着ベルト120の入り口側温度H1では、定着ベルト120のニップ部の温度を検出する精度が低くなってしまう。
【0067】
熱拡散部材124を用いて温度を検出する場合、メインモータ25が停止状態でも回転状態でも定着ベルト120のニップ部の温度を検出することができ、他の温度センサを増やすことなく定着ベルト120の温度を状態によらず精度良く検出することができる。
【0068】
図7は、カラープリンタ100の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図示しないPC(Personal Computer)等で生成された印刷データは、USB(Universal Serial Bus)又はLAN(Local Area Network)等の通信I/Fで構成される通信部130を介して、カラープリンタ100で受信される。
【0069】
コントローラ131は、カラープリンタ100での動作の全般を制御する。
コントローラ131は、CPU(Central Processing Unit)132と、ROM(Read Only Memory)133と、RAM(Random Access Memory)134とを備え、これらは、図示しない内部バスで接続されている。
【0070】
CPU132は、ROM133に記憶されている印刷処理プログラムに従って、RAM134及びプロセス制御部140を制御する。
【0071】
ROM133は、印刷処理プログラムを記憶するための領域であり、カラープリンタ100の電源が切れてもデータを保持可能な不揮発性メモリである。
【0072】
RAM134は、受信された印刷データを記憶し、カラープリンタ100の電源が切られるとデータが消去される揮発性メモリである。
【0073】
プロセス制御部140は、高圧制御部141と、露光制御部146と、モータ制御部147と、定着制御部148とを備え、記録媒体4の搬送、帯電、現像、転写及び定着等の画像形成プロセスである印刷プロセスを制御する。
【0074】
高圧制御部141は、トナー像を形成し、そのトナー像を記録媒体4に転写するために、各種ローラに印加する電圧を制御する。
高圧制御部141は、供給電圧制御部142と、現像電圧制御部143と、帯電電圧制御部144と、転写制御部145とを備える。
【0075】
供給電圧制御部142は、画像形成部13Y、13M、13C、13K内の供給ローラ27Y、27M、27C、27Kに印加する供給電圧を制御する。
現像電圧制御部143は、画像形成部13Y、13M、13C、13K内の現像ローラ28Y、28M、28C、28Kに印加する現像電圧を制御する。
帯電電圧制御部144は、画像形成部13Y、13M、13C、13K内の帯電ローラ29Y、29M、29C、29Kに印加する帯電電圧を制御する。
転写制御部145は、転写ローラ16Y、16M、16C、16Kに印加する転写電圧を制御する。
【0076】
露光制御部146は、LEDヘッド12Y、12M、12C、12Kの露光を制御する。
モータ制御部147は、カラープリンタ100内のメインモータ25を制御し、回転駆動させる。具体的には、メインモータ25は、感光ドラム15Y、15M、15C、15Kと、定着部18の加圧ローラ110と、給紙ローラ5と、第1レジストローラ7と、第2レジストローラ9とを駆動する。ここでは、モータをメインモータ25のみとしているが、複数のモータが設けられていてもよい。
【0077】
定着制御部148は、定着ベルト120のニップ部の温度を制御する。例えば、定着制御部148は、温度センサ122A、122B、122Cの検出結果に基づいて低圧電源23のトライアック等の熱源駆動部30をON制御及びFF制御することにより交流商用電源PWから熱源26としてのヒータ121に電力を供給し、定着ベルト120のニップ部の温度を制御する。定着制御部148は、設定温度、ON Dutyパラメータ等を格納したテーブルを保持し、それらによって定着制御を行う。なお、ON Dutyは、予め定められた時間当たりの抵抗体126A、126B、126Cへの電圧の印加時間比率を表している。
【0078】
次に、
図2及び
図8を用いて、抵抗体126A、126B、126CのON Duty補正について説明する。
ここでは、カラープリンタ100の基本動作の説明は割愛し、主に定着動作に関して説明する。
【0079】
定着部18は、記録媒体4上に形成されたトナー像を、熱と圧力とにより定着させる。熱拡散部材124の中央部に配置された温度センサ122Aは、定着ベルト120のニップ部の中央の温度を検出する。
【0080】
定着制御部148は、低圧電源23から熱源26に供給される電力を、トライアック127A、127Bを介してON及びOFF駆動することにより、予め定められた温度となるように制御する。予め定められた設定温度は、各媒体により決められた設定温度である。
【0081】
熱源26としてのヒータ121は、中央部の抵抗体126Aと、両端部の抵抗体126B、126Cとに分割されており、交流商用電源PWとトライアック127A、127Bを介して接続されている。
【0082】
トライアック127Aは中央部の抵抗体126Aに接続され、トライアック127Bは両端部の抵抗体126B、126Cに接続されており、夫々独立に制御可能となっている。
【0083】
図8に示されているように、抵抗体126A、126B、126Cの分割位置は、ターゲットにする記録媒体のサイズにより決められており、ここでは、中央部の抵抗体126Aの長さがA5サイズ幅となるようにし、両端部の抵抗体126B、126Cを使用することで、最大でA4サイズ幅をサポートできるようにしている。
【0084】
抵抗体126Aは、温度センサ122Aで検出される温度が設定温度となるようなON Dutyで駆動される。一方、抵抗体126B、126Cは、中央部の抵抗体126AのON Dutyを基準に、記録媒体4のサイズにより異なる係数が乗じられたON Dutyで駆動される。
【0085】
ここでは、抵抗体126B、126CのON Dutyは、抵抗体126B、126CのON DutyをODとし、抵抗体126AのON DutyをRDとすると、以下の(1)式で決定される。
OD=RD×用紙サイズによる係数CO (1)
【0086】
ここで、用紙サイズによる係数COは、例えば、記録媒体4がA4サイズのときはCO1、記録媒体4がB5サイズのときはCO2、記録媒体4がA5サイズのときはCO3であり、これらの関係は、1≧CO1>CO2>CO3である。
【0087】
以上のような制御を行うことで、記録媒体4のサイズが異なった場合でも定着ベルト120のニップ部の温度を精度よく検出できるため、温度センサが少ない場合であっても安定した印刷品質が確保できる。
【0088】
なお、この実施の形態においては、B5サイズの記録媒体4を印刷する需要があり、抵抗体126B、126Cにおいて通紙する箇所と、通紙しない箇所が混在したため、抵抗体126B、126Cを、抵抗体126AのON Dutyの係数RDに基づいて温度制御するようにしているが、この実施の形態は、このような例に限定されない。例えば、通紙する箇所と、通紙しない箇所とが混在しない場合は、抵抗体126Aと同様に、温度センサ122B又は温度センサ122Cが検出する温度が設定温度となるように、抵抗体126B、126CをON Dutyで駆動してもよい。
【0089】
また、この実施の形態では、ヒータ121は、通紙方向に分割されているが、この実施の形態はこのような例に限定されない。例えば、長手方向に配熱を付与したヒータが使用されても、上記と同様に制御することができる。
【0090】
以上に記載されたプロセス制御部140の一部又は全部は、例えば、
図9(A)に示されているように、メモリ31と、メモリ31に格納されているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ32とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0091】
また、プロセス制御部140の一部又は全部は、例えば、
図9(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラムで動作するプロセッサ、プログラムで動作する並列プロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路33で構成することもできる。
以上のように、プロセス制御部140は、処理回路網により実現することができる。
【0092】
以上のように、この実施の形態によれば、ニップ部の温度を、熱拡散部材124を用いて精度良く検出することができるため、印刷品質の安定化することができる。また、停止時も回転時もニップ部の温度を精度よく検出することができるため、定着ベルト入口の温度検出が必要なくなり、サーミスタの個数を減らすことができる。このため、コストダウン及び定着部18の小型化という効果が期待できる。
【0093】
以上に記載された実施の形態は、カラープリンタ100を例に説明したが、この実施の形態は、電子写真方式のプリンタ、コピー機、ファクシミリ、及びこれらの機能を複数兼ね備えたマルチファンクションプリンタ等の画像形成装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
100 カラープリンタ、 1 本体部、 2 トップカバー、 3 記録媒体格納部、 4 記録媒体、 5 給紙ローラ、 6 第1のINセンサ、 7 第1レジストローラ、 8 第2のINセンサ、 9 第2レジストローラ、 10 WRセンサ、 11 搬送ベルト、 12 LEDヘッド、 13 画像形成部、 14 トナーカートリッジ、 15 感光ドラム、 16 転写ローラ、 17 FUSER-INセンサ、 18 定着部、 19 EXITセンサ、 20 排出スタッカ、 21 濃度センサ、 22 高圧電源、 23 低圧電源、 110 加圧ローラ、 120 定着ベルト、 121 ヒータ、 122 温度センサ、 123 サーモスタット、 124 熱拡散部材、 125 熱伝導部材、 126 抵抗体、 127 トライアック。