(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176237
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】リガチャー付メタル製マウスピース
(51)【国際特許分類】
G10D 9/02 20200101AFI20241212BHJP
【FI】
G10D9/02 200
G10D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094645
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】705000640
【氏名又は名称】後藤 将彦
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 将彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】演奏者自身の表現力を存分に引き出すことが可能なリガチャー付メタル製マウスピースを提供する。
【解決手段】メタル製マウスピースと、リードRをメタル製マウスピースに固定するサキソフォン用リガチャーLGとの組み合わせからなるリガチャー付メタル製マウスピースMPであって、メタル製マウスピースの直胴部の内径に対する、ティップとチャンバー直胴部の中心との高低差の割合が、第1所定値以上に設定され、バッフル面の最大傾斜角度が、第2所定値以上に設定され、サキソフォン用リガチャー押付プレート部は、マウスピースのベース部12が設けられる位置において、ベース部の上方に位置し、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、押付プレート部が押付部20を介してリードをマウスピースに対して、点または線接触態様で押付け可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタル製マウスピースと、リードをメタル製マウスピースに固定するサキソフォン用リガチャーとの組み合わせからなるリガチャー付メタル製マウスピースであって、
該メタル製マウスピースは、
一端部において、リードとの間にティップオープニングを構成するティップを備えた真鍮製中空本体部と、真鍮製中空本体部に嵌め込まれた純銀製中空シャンク部とを有し、
該真鍮製中空本体部は、互いに対向して長手方向に延び、両者の間にウィンドウを形成する一対のサイドレールと、一対のサイドレールの一端に連結して長手方向に純銀製中空シャンク部側に延びるテーブル面とを有し、
該純銀製中空シャンク部は、一端開口が、木管楽器のネック部の端開口に、絞まり嵌めで外嵌可能な径であり、
該真鍮製中空本体部と該純銀製中空シャンク部とにより、ティップから長手方向に前記一端開口まで延びるチャンバーが内部に構成されるとともに、
該真鍮製中空本体部は、前記ウィンドウに臨む位置において、前記チャンバーの一部を構成し、前記ティップから長手方向に前記一対のサイドレールから離れる向きに、滑らかに段差なく傾斜するバッフル面を有し、
ネック側の前記チャンバー直胴部の内径に対する、前記ティップと前記チャンバー直胴部の中心との高低差の割合が、第1所定値以上に設定され、
前記バッフル面の最大傾斜角度が、第2所定値以上に設定され、
前記サキソフォン用リガチャーは、
前記テーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部と、リードをマウスピースのテーブル面に対して押付ける押付プレート部とを有し、
前記押付プレート部は、長手方向に間隔を隔てた少なくとも2つの押付部を有し、
前記押付プレート部は、マウスピースの前記ベース部が設けられる位置において、前記ベース部の上方に位置し、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、前記押付プレート部が前記押付部を介してリードをマウスピースに対して、点または線接触態様で押付け可能とする、ことを特徴とする、リガチャー付メタル製マウスピース。
【請求項2】
前記真鍮製中空本体部は、外表面が金メッキされている、請求項1に記載のリガチャー付メタル製マウスピース。
【請求項3】
テナーサキソフォンの場合、第1所定値および第2所定値それぞれは、0.31および18.2°であり、アルトサキソフォンの場合、第1所定値および第2所定値それぞれは、0.33および16.5°である、請求項1または請求項2に記載のリガチャー付メタル製マウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガチャー付メタル製マウスピースに関し、より詳細には、低バッフルでありながら、演奏者のレベルを問わず吹奏感良好に、メタル製マウスピース特有のエッジの立つ発音を利用しつつ、演奏者自身の表現力を存分に引き出すことが可能なリガチャー付メタル製マウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サキソフォン、クラリネット等の木管楽器は、クラシック演奏だけでなく、ジャズ、ポップス、演歌演奏においても多用されている。
このような木管楽器は、通常、リガチャーによりリードをマウスピースに締め付け固定し、リードの振動音を楽器で増幅させて演奏される。
より詳細には、マウスピースは、リードの裏面の一方の端部側を当接固定するテーブル面と、テーブル面からティップに向かって傾斜状に延びるフェイシングとを有し、くわえ部側において、裏面の他方の端部との間にティップオープニングを形成することにより、ティップオープニングに息を吹き込むことにより、リードを片持ち梁状に上下振動させて発音可能とする。
【0003】
木管楽器の中でもサキソフォン向けのマウスピースには、メタル製、ラバー製、木製、陶器製等多種材質があるとともに、リガチャーも材質、構造において多種用いられ、クラシック、ジャズ等音楽ジャンルに応じて、使い分けられている。
このようなシングルリード向け木管楽器のリガチャーとして、たとえば、特許文献1に開示のようなタイプがある。
【0004】
このリガチャーは、リードが動かないように、リードとマウスピースとを締め付けるためのリガチャーであって、リードとマウスピースとを巻回するための金属製、たとえば、真鍮製の薄板部と、マウスピースを挟んでリードに対向する位置で薄板部の両端の締め付けを行なう締め付け部と、リードに対して突出し、その先端でリードに接触する突出部と、突出部の近傍における薄板部の曲げ強度を補強することでリードと薄板部との接触を回避するために、突出部が設けられた薄板部の面と対向する面に設けられ、歌口側からみて横手方向に、突出部の最外端よりも両側に張り出した形状の補強材と、を備え、補強材は、薄板部のリード側の面に設けられた穴の周囲に付加され、補強材を取り付ける薄板部の面を略平面に形成し、締め付け部は、ねじ穴と円筒部とねじとで、マウスピースを挟んでリードに対向する位置で薄板部の両端の締め付けを行なう。
このような構成のリガチャーによれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことができると記載されているが、リガチャーがリードに対して、リードの長手方向にリガチャーの幅方向全体に亘って面接触し、敢えて点接触を排除している。
【0005】
しかしながら、特許文献2、特許文献3に記載されているように、楽器の演奏の際の音量ではなく、音質の観点からは、リガチャーのリードに対する接触面積は小さいほど好ましく、この点において、面接触でなく、線接触または点接触がよい。
この点、特許文献4には、別のリガチャーが開示されている。
【0006】
このリガチャーは、マウスピースのテーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部と、リードをマウスピースのテーブル面に対して押付ける押付プレート部と、ベース部に螺合する締付ネジ部とを有し、押付プレート部は、締付ネジ部が厚み方向に貫通するバカ穴部と、バカ穴部を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部とを有し、ベース部は、締付ネジ部が螺合可能なネジ穴部を有し、押付プレート部は、リードとベース部の間のスペースに設けられ、リードの表皮部の湾曲おもて面に対してテーブル面の延び方向に面接触するように設けられ、締付ネジ部がネジ穴部に対して締め付けられることにより、押付プレート部がリードをマウスピースに対して押付け可能とするようになっている。
【0007】
このリガチャーの場合、押圧プレートによりリードとの接触面積を小さくすることが可能であるが、押圧プレートがベース部とリードとの間のスペース、すなわち、ベース部の下方に設けられることから、全体構造が大型でやぼったく、重く、マウスピースにリードを当てた状態での装着が不便で、演奏中にマウスピースの楽器に対する差し込み深さを調整するのに、指でリガチャーを握ってマウスピースの長手方向を中心に回転すると、リガチャーのリードに固定位置がずれて、演奏に支障が生じることがある。
【0008】
さらに、押圧プレートがリガチャーとリードとの間の狭いスペースに設けられ、構造が複雑であることに起因して、雌ネジがリガチャー本体に対してロウ付けされており、リガチャー自体の分解性、および分解して洗浄等のメインテナンス性も不便であるとともに、リガチャー本体がロウ付けによる熱の影響で、柔らかくなってしまい、音質に対する悪影響を引き起こすことがある。
【0009】
一方、従来のメタル製マウスピースには、いわゆるハイバッフル構造で、エッジが立ち、派手な音色を出すことが可能である反面、簡易な吹奏感が得られにくく、プロまたは上級者のみが吹奏可能であり、初級者またはアンブシャーが確立してない演奏者には、使いこなすことが困難であり、リードミスを誘発しやすく、このような吹奏感を従来のリガチャーにより解決するのも困難であった。
より詳細には、サキソフォーン向けメタル製マウスピースは、中空本体部と、楽器接続側に中空シャンク部とを有するところ、中空本体部は、互いに対向して長手方向に延び、両者の間にウィンドウを形成する一対のサイドレールと、一対のサイドレールの一端に連結して長手方向に中空シャンク部側に延びるテーブル面とを有し、ティップから長手方向に中空本体部の楽器接続側端開口まで延びるチャンバーを内部に構成し、ウィンドウ相当位置で、ティップから、一対のサイドレールから離れる向きに傾斜し、不連続な段差のあるバッフル面を有するが、いわゆるハイバッフル構造は、バッフル面に関し、フロア容積が小さい、すなわち、ティップからチャンバー直胴部を形成する中空本体部の楽器接続側に向かう下方傾斜角度が小さく、かつ、チャンバー直胴部の内径に対する、ティップとチャンバー直胴部の中心との高低差の割合が、小さいものであった。
これに起因して、高音領域と、低音領域とにおいて、高音領域については、エッジが立ち、派手な音色を出すことが可能である反面、低音領域については、段差に起因して相当な吹奏テクニックを要求され、この点を、リードをマウスピースに固定するリガチャーの選択、または、リードの先端とマウスピースの先端との間隔、いわゆるティップオープニングの広狭の選択によって、解決するのは困難であり、音域の制限なく、演奏者の表現力を発揮するのは困難であった。
【特許文献1】特許第4695225号
【特許文献2】US 2004/0177743 A1
【特許文献3】米国特許第5000073号
【特許文献4】US 2014/0305279 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上より、本発明の目的は、低バッフルでありながら、演奏者のレベルを問わず吹奏感良好に、メタル製マウスピース特有のエッジの立つ発音を利用しつつ、演奏者自身の表現力を存分に引き出すことが可能なリガチャー付メタル製マウスピースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明のリガチャー付メタル製マウスピースは、
メタル製マウスピースと、リードをメタル製マウスピースに固定するサキソフォン用リガチャーとの組み合わせからなるリガチャー付メタル製マウスピースであって、
該メタル製マウスピースは、
一端部において、リードとの間にティップオープニングを構成するティップを備えた真鍮製中空本体部と、真鍮製中空本体部に嵌め込まれた純銀製中空シャンク部とを有し、
該真鍮製中空本体部は、互いに対向して長手方向に延び、両者の間にウィンドウを形成する一対のサイドレールと、一対のサイドレールの一端に連結して長手方向に純銀製中空シャンク部側に延びるテーブル面とを有し、
該純銀製中空シャンク部は、一端開口が、木管楽器のネック部の端開口に、絞まり嵌めで外嵌可能な径であり、
該真鍮製中空本体部と該純銀製中空シャンク部とにより、ティップから長手方向に前記一端開口まで延びるチャンバーが内部に構成されるとともに、
該真鍮製中空本体部は、前記ウィンドウに臨む位置において、前記チャンバーの一部を構成し、前記ティップから長手方向に前記一対のサイドレールから離れる向きに滑らかに段差なく傾斜するバッフル面を有し、
ネック側の前記チャンバー直胴部の内径に対する、前記ティップと前記チャンバー直胴部の中心との高低差の割合が、第1所定値以上に設定され、
前記バッフル面の最大傾斜角度が、第2所定値以上に設定され、
前記サキソフォン用リガチャーは、
前記テーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部と、リードをマウスピースのテーブル面に対して押付ける押付プレート部とを有し、
前記押付プレート部は、長手方向に間隔を隔てた少なくとも2つの押付部を有し、
前記押付プレート部は、マウスピースの前記ベース部が設けられる位置において、前記ベース部の上方に位置し、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、前記押付プレート部が前記押付部を介してリードをマウスピースに対して点または線接触態様で押付け可能とする、構成としている。
【0012】
以上の構成を有するリガチャー付メタル製マウスピースによれば、楽器ネック部に直接接続されるマウスピースの部分を、固有振動数を有しない材質の純銀製である中空シャンク部により構成するとともに、真鍮製中空本体部に設けるサキソフォン用リガチャーにより、マウスピースの長手方向に間隔を隔てた位置の2か所で、リードをマウスピースに対して点または線接触態様で押付け可能とすることにより、バッフル面として、ウィンドウに臨む位置において、チャンバーの一部を構成し、ティップから長手方向に一対のサイドレールから離れる向きに滑らかに段差なく傾斜し、ネック側のチャンバー直胴部の内径に対する、前記ティップと前記チャンバー直胴部の中心との高さ差の割合が、第1所定値以上に設定され、バッフル面の最大傾斜角度が、第2所定値以上に設定される、いわゆる低バッフルでありながら、演奏者のレベルを問わず吹奏感良好に、メタル製マウスピース特有のエッジの立つ発音を利用しつつ、演奏者自身の表現力を存分に引き出すことが可能である。
【0013】
また、前記真鍮製中空本体部は、外表面が金メッキされているのがよい。
さらに、テナーサキソフォンの場合、第1所定値および第2所定値それぞれは、0.31および18.2°であり、アルトサキソフォンの場合、第1所定値および第2所定値それぞれは、0.33および16.5°であるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図を参照しながら、本発明のリガチャー付メタル製マウスピース10を用いる場合を説明する。
【0015】
図1および
図2に示すように、リガチャー付メタル製マウスピース10は、メタル製であり、リードRの裏面の一方の端部側を当接固定するテーブル面Tと、テーブル面Tからティップに向かって傾斜状に延びるフェイシングFとを有し、くわえ部側において、裏面の他方の端部との間にティップオープニングOを形成することにより、リードRを片持ち梁状に上下振動させて発音可能とする。リガチャー付メタル製マウスピース10は、ソプラノサキソフォン、アルトサキソフォン、テナーサキソフォン、またはバリトンサキソフォン用のリガチャー付メタル製マウスピース10である。
【0016】
リガチャー付メタル製マウスピース10は、一端部において、リードR との間にティップオープニングOを構成するティップTPを備えた真鍮製中空本体部70と、真鍮製中空本体部70に嵌め込まれた純銀製中空シャンク部72とを有する。
真鍮製中空本体部70は、互いに対向して長手方向に延び、両者の間にウィンドウW を形成する一対のサイドレールSRと、一対のサイドレールSRの一端に連結して長手方向に純銀製中空シャンク部72側に延びるテーブル面T とを有する。
真鍮製中空本体部70は、外表面が金メッキされているのがよく、これにより、リガチャー付メタル製マウスピース10の音質を際立たせることが可能である。
純銀製中空シャンク部72は、一端開口79が、サキソフォンのネック部の端開口に、絞まり嵌めで外嵌可能な径である。
真鍮製中空本体部70と純銀製中空シャンク部72とにより、ティップTPから長手方向に一端開口79まで延びるチャンバーCHが内部に構成され、ティップオープニングOから吹きこまれ息の楽器への流路を構成する。
真鍮製中空本体部70と純銀製中空シャンク部72それぞれの径、厚みおよび長さは、適宜設定すればよいが、ラバー製マウスピースに比べて、金属製で重量があることから、なるべく縮径で薄いのがよく、真鍮製中空本体部70と純銀製中空シャンク部72とにより構成されるティップTPからネック側端までの長さは、たとえば、XXミリないしXXミリである。
図9および
図10に示すように、真鍮製中空本体部70と純銀製中空シャンク部72との嵌合部について、純銀製中空シャンク部72の一端部側の外周面は、一端部に向かって下方に傾斜する環状傾斜外周面47に形成される一方、真鍮製中空本体部70の一端部側の内周面は、一端部に向かって上方に傾斜する環状傾斜内周面49に形成され、互いに相補形状とされ、純銀製中空シャンク部72の一端部側を真鍮製中空本体部70の一端部側に内嵌することにより、嵌合するように構成している。傾斜角度は適宜設定すればよく、純銀製中空シャンク部72 は、熱により材質変化し、それが、音質に影響を与えることから、互いの環状傾斜面同士を接着するのがよい。
【0017】
真鍮製中空本体部70と純銀製中空シャンク部72との嵌合部の内周面71、73は、面一または若干の段差が形成される。
より詳細には、テナーサキソフォンの場合、楽器のネック部は、湾曲状であり、吹奏感における抵抗感が強いことから、マウスピースにおける息の通り道であるチャンバーCHは、逆に流れ抵抗を小さくすることが要望され、一方、ソプラノサキソフォンの場合、楽器のネック部は、直線状であり、吹奏感における抵抗感が弱いことから、マウスピースにおける息の通り道であるチャンバーCHは、逆に流れ抵抗を大きくすることが要望され、アルトサキソフォンの場合、テナーサキソフォンとソプラノサキソフォンとの中間に位置付けられる。
このような要求を充足するために、マウスピースのチャンバーCHの内径が定められ、真鍮製中空本体部70 の内径と純銀製中空シャンク部72 の内径とが若干異なり、アルトサキソフォン、テナーサキソフォン、ソプラノサキソフォンに応じて、両者の境界部に1ミリ未満の段差が設けられる。
【0018】
純銀製中空シャンク部72は、真鍮製中空本体部70の厚みと同じで、2ミリないし3ミリの純銀製平板鍛造により多面部46を形成し、純銀製平板を環状に曲げ加工し、真鍮製中空本体部70の端部に締まり嵌め(内嵌または外嵌)される。
このような平板鍛造により、純銀製中空シャンク部72の外周面に凹凸状の不規則模様PNを設けることにより、種々の振動数に対して分散的に呼応するので、複数倍音を含む音の豊かさとともに、音の響き、または伸び感に優れる効果を有するとともに、さらに、特に暗い屋内でライトの光に対して不規則模様PNの多面部46が種々の方向にキラキラ反射して、リガチャー付メタル製マウスピース10が装着される木管楽器のデザイン性を向上することが可能である。
【0019】
図9および
図10に示すように、真鍮製中空本体部70は、ウィンドウWに相当する位置において、チャンバーCHの一部を構成し、ティップTPから長手方向に一対のサイドレールSRから離れる向きに滑らかに段差なく傾斜するバッフル面75を有する。
ネック側のチャンバーCH直胴部の内径Diに対する、ティップTPとチャンバーCHの直胴部の中心XXとの高低差Δhの割合が、第1所定値以上に設定され、バッフル面75の最大傾斜角度Θmaxが、第2所定値以上に設定され、いわゆるローバッフル構造である。
最大傾斜角度Θmaxに関し、バッフル面75は、リガチャー付メタル製マウスピース10の長手方向に、平面状の傾斜面でなく、湾曲状の傾斜面であり、長手方向位置に応じて傾斜角度は変動するところ、そのうちの最大傾斜角度を意味する。なお、同じタイプのリガチャー付メタル製マウスピース10には、チャンバーCH直胴部の内径Diが一定のもとで、数種のティップオープニングOが準備されるところ、ティップオープニングOの広狭は、フェイシングFの傾斜角度により調整され、バッフル面75の傾斜角度Θおよび高低差Δhは、一定である。
なお、バッフル面75のリガチャー付メタル製マウスピース10の長手方向に直交する断面は、チャンバーCHの中心軸線を中心とする円弧状である。
【0020】
図9および
図10に示すように、テナーサキソフォンの場合、内径Diが17.04ミリ、高低差Δhが5.446ミリであることから、第1所定値および第2所定値それぞれは、0.31および18.2°であり、アルトサキソフォンの場合、内径Diが15.96ミリ、高低差Δhが5.418ミリであることから、第1所定値および第2所定値それぞれは、0.33および16.5°である。なお、
図9において、テナーサキソフォン向けのバッフル面75として、ティップTP近傍に傾斜角度の小さい部分77を有するいわゆるロールオーバータイプが示され、
図10において、アルトサキソフォン向けのバッフル面75として、ティップTP近傍に傾斜角度の小さい部分77を有しないいわゆるストレートタイプが示されている。
【0021】
サキソフォン用リガチャーLGは、テーブル面T に沿って設けられるリードR の幅方向に跨り、リガチャー付メタル製マウスピース10に対して固定されるベース部12と、リードR をリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対して押付ける押付プレート部14とを有し、押付プレート部14は、長手方向に間隔Dを隔てた少なくとも2つの押付部20を有し、押付プレート部14は、リガチャー付メタル製マウスピース10のベース部12が設けられる位置において、ベース部12の上方に位置し、テーブル面Tの延び方向に沿って設けられ、押付プレート部14が押付部20を介してリードR をリガチャー付メタル製マウスピース10に対して押付け可能となるように構成されている。
以下に説明するように、このようなローバッフル構造でありながら、ハイブリッド材質のリガチャー付メタル製マウスピース10とリガチャーLGにより、吹奏感と音質との両立を達成可能としている。
【0022】
より詳細には、リガチャー付メタル製マウスピース10は、リガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に沿って設けられるリードR の幅方向に跨り、リガチャー付メタル製マウスピース10に対して固定されるベース部12と、リードR をリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対して押付ける押付プレート部14と、ベース部12に螺合する締付ネジ部16とから概略構成される。
【0023】
ベース部12は、リガチャー付メタル製マウスピース10の周面全体を覆わず、リガチャー付メタル製マウスピース10の上部のみを覆うアーチ状である。
より具体的には、べース部12は、リガチャー付メタル製マウスピース10より半径の小さいアーチ状断面が長手方向に一定に形成され、対向する長手方向縁部48それぞれには、他方に向かう凸状部50が設けられ、リガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T の下方近傍の外周面には、凸状部50が嵌合可能な長溝52が、設けられる。長溝52は略断面コの字状で、テーブル面T と平行に略水平に設けられ、深さは、数ミリ程度であり、リガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T から下方数ミリの位置に設けるのがよい。
長溝52の長さは、押付プレート部14によるリードR の固定位置を調整可能な観点から定めればよく、リガチャー付メタル製マウスピース10のウィンドウW とテーブル面T との境界からリガチャー付メタル製マウスピース10の楽器側開口端面まで延びるのが好ましい。
特に、長溝52は、リガチャー付メタル製マウスピース10の楽器側端部に抜けるように設けることにより、ベース部12をリガチャー付メタル製マウスピース10に装着する際、楽器側端部からティップTP側に向かって差し込み可能とするのがよい。
ベース部12をリガチャー付メタル製マウスピース10に装着し、締付ネジ部16により押付プレート部14をリードR に対して押付固定後に、リガチャー付メタル製マウスピース10のリガチャー付メタル製マウスピース10の長手方向位置を調整する場合には、ベース部12の凸状部50を長溝52に沿って、単に長手方向に摺動させるだけでよい。
【0024】
また、アーチ状ベース部12自体に、厚み方向を貫通するネジ穴部22を幅方向の中心部に設け、締付ネジ部16をアーチ状ベース部12のネジ穴部22に直接螺合させることにより、後述のように、アーチ状ベース部12の上方に位置する押付プレート部14を下方に押し付け可能としている。
より具体的には、 アーチ状ベース部12の上面には、幅方向の中心部に、断面非円形の上方に突出し、上面41を有する凸部40が設けられ、凸部40の内部には、厚み方向を貫通するネジ穴部22が設けられ、凸部40の外形は、後述する押付プレート部14の下面に設けられる凹部36と相補形状であり、押付プレート部14が上方からアーチ状ベース部12に対して、相対回転不能に外嵌するように構成している。
なお、ベース部12のアーチ形状を調整することにより、ベース部12がリードR の幅方向エッジ部E上隅に当たるようにしつつ、ベース部12を銀製として、外表面に不規則模様PNを設けることにより、音質向上に役立てるのでもよい。
【0025】
図4に示すように、押付プレート部14は、締付ネジ部16が厚み方向に貫通するバカ穴部18と、バカ穴部18を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部20とを有する。バカ穴部18の径は、締付ネジ部16のシャンク部54(後に説明)が貫通可能な大きさである。
より詳細には、押付プレート部14の上面には、上面が平面状の環状突起部31が設けられ、環状突起部31の上面には、バカ穴部18が設けられている。
押付プレート部14は、リガチャー付メタル製マウスピース10のベース部12が設けられる位置において、ベース部12の上方に位置し、ベース部12の幅w1を上方から跨ぐように、テーブル面T の延び方向に沿って設けられ、押付プレート部14は、側断面が略コの字状である。
【0026】
一対の押付部20はそれぞれ、互いにリードR の幅方向に間隔を隔てた2つの押付面24を有する。
より具体的には、押付プレート部14には、バカ穴部18が設けられ、かつベース部12の幅w1より長い中央部26を有し、一対の押付部20はそれぞれ、中央部26の対応する端部から下方に延在する脚部30を有し、脚部30の下端に、押付面24が設けられる。
押付面24は、リードR の表皮部SSの湾曲面に沿うように、リードR の幅方向にアーチ状である。
【0027】
押付面24について、リードR の表皮部SSのおもて面の湾曲程度に応じて、締付ネジ部16の締付による押付プレート部14のリードR に対する押付力により、押付面24の表皮部SSのおもて面に対する接触面積の調整が可能である。
より詳細には、押付面24のリードR の長手方向の断面は、中央部26側から長手方向先端部に下方に傾斜する形状である。より具体的には、一対の押付プレート部14のうち、中央部26からティップTP側に設けられる押付面24は、中央部26側から長手方向ティップTP側先端部に下方に傾斜する形状であり、中央部26から楽器側に設けられる押付面24は、中央部26側から長手方向楽器側先端部に下方に傾斜する形状である。
いずれも、まず長手方向先端部がリードR の表皮部SSのおもて面に接触し、押付力の増大により、長手方向先端部から中央部側に接触部が増大するように、脚部30の剛性、特に厚みを設定しておく。
【0028】
一方、押付面24のリードR の幅方向の断面は、リードR の幅方向中心から幅方向先端部に亘って湾曲形状である。より具体的には、一対の押付プレート部14いずれも、一方の脚部30の押付面24は、リードR の幅方向中心から幅方向先端部に亘って湾曲形状であり、他方の脚部30の押付面24は、リードR の幅方向中心から、幅方向逆向きの先端部に亘って湾曲形状である。この場合、まず幅方向先端部がリードR の表皮部SSのおもて面に接触し、押付力の増大により、幅方向先端部からリードR の幅方向中心に向かって接触部が増大するように、脚部30の剛性、特に厚みを設定しておき、リードR の表皮部SSのおもて面の湾曲形状には、リードR の種類に応じて種々あるところ、押付力の調整により、長手方向および幅方向の接触部の増減により、接触面積の調整が可能であり、リードR の種類に対して汎用性を確保可能である。
以上、
図5に示すように、本リガチャー付メタル製マウスピース10は、従来のベース部の下方、すなわち、ベース部とリードR との間に設置されていた場合に比して、リガチャーLG自体が低重心構成となるとともに、押付面24によるリードR の表皮部SSのおもて面への接触は、リードR の長手方向に間隔を隔てた2か所の位置で、各位置においては、各押付面24は表皮部SSのおもて面に対して、線接触であり、かつ、締付ネジ部16の締付程度により押付力を通じて線接触面積の調整が可能であることから、シンプルな構造でありながら、音質の向上、調整が可能となる。
【0029】
バカ穴部18は、中央部26の長手方向に長軸が位置する楕円開口であり、後に説明する締付ネジ部16のシャンク部54が貫通可能な大きさに設定される。
一対の脚部30は、リードR の幅方向内で、リードR の幅方向に互いに遠ざかるように斜め下方に延びる。
ベース部12および/または押付プレート部14は、おもて面をラッカー仕上げしてもよく、それにより、楽器自体と同様に、音質向上が可能である。
一対の押付部20間の長手方向の間隔Dは、リードR のおもて面の表皮部SSの長さの三分の一ないし二分の一が好ましい。
押付プレート部14の中央部26の幅は、リガチャー付メタル製マウスピース10の幅の三分の一ないし二分の一が好ましく、コの字状の高さ、すなわち、押付部20に対する中央部26の高さh2は、締付ネジ部16を後に説明する凸部41のネジ穴部22にねじ込むことにより、一対の押付部20それぞれの押付面24がリードR をリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対して押付固定可能なように、ベース部12のアーチ高さに応じて、定めればよいが、リガチャー付メタル製マウスピース10全体の重心をなるべく低くして、音質向上に資する観点から、なるべく低いのが好ましく、たとえば、5ミリ以内がよく、材質は、金属製、たとえば、真鍮製、特に銀製がよい。
【0030】
図5に示すように、押付プレート部14は、バカ穴部18と同心状に、下面に非円形断面の凹部36を有し、ベース部12の凸部40に凹部36を嵌め込むことにより、押付プレート部14は、ベース部12に対して相対回転不能に固定されるようにしている。より詳細には、凸部40の上面41が凹部36の環状底面37に当たることにより、押付プレート部14のリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対する相対高さが定まるとともに、押付プレート部14の凸部40、かくしてベース部12に対する相対回転を不能にしている。
押付プレート部14のリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対する相対高さは、締付ネジ部16によるネジ込みにより、リガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に設定されるリードR の表皮部SSのおもて面を押付固定可能なように、設定すればよい。
【0031】
変形例として、押付プレート部14は、バカ穴部18が設けられ、ベース部12の幅w1より長い中央部26を有し、一対の押付部20はそれぞれ、中央部26の対応する端部28全体から下方に延在する傾斜部(図示せず)を有し、一対の押付部20それぞれは、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面24が設けられるのでもよい。
この場合、押付面24には、互いに押付プレート部14の幅方向に間隔を隔てた一対の突起部(図示せず)を有し、一対の突起部それぞれは、押付によりリードR の表皮部SSのおもて面が凹まない範囲で、下方に突起する湾曲面を構成し、湾曲面を介して、リードR に点接触するのでもよい。
【0032】
図7に示すように、締付ネジ部16は、シャンク部54と、シャンク部54の先端に、同心状に設けられ、指で摘まんで回転可能なヘッド部56とを有する。
締付ネジ部16による締付により、締付ネジ部16とリガチャー付メタル製マウスピース10に固定されるベース部12との間の押付プレート部14は、ベース部12側、すなわち、リードR のおもて面に対して押し付けられ、リードR がリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対して固定される。押付プレート部14のリードR に対する押付力は、締付ネジ部16による締付程度により調整可能である。
ヘッド部56は、軽量性の観点から、中実状でなく、上板と上板の周縁から下方に延びる環状板とからなるのが好ましく、上板を略多角形として、環状板を指で摘まんで、シャンク部54の長手方向を中心に回転しやすくするのがよい。
図8に示すように、シャンク部54の長さl2は、シャンク部54の中実円柱部62の下面64が、押付プレート部14の環状突起部31の上面に当たるまで、締付ネジ部16による締付ける際、シャンク部54の下端部が、ベース部12の下面からなるべく突出しないように設定するのがよい。
また、シャンク部54の根元部には、シャンク部54と同心状に中実円柱部62が設けられ、この場合、中実円柱部62の質量に応じて、音質が変わることから、中実円柱部62の径および/または長さl1を調整するのがよい。
凸部40の突出部43の上面に対して、押付プレート部14の下面の凹部36の環状底面37が当接する状態で、締付ネジ部16の締付により、シャンク部54の中実円柱部62の下面64が、押付プレート部14の環状突起部31の上面に当たることにより、押付プレート部14がリードR をリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に対して押付固定することが可能である。
【0033】
以上より、押付プレート部14を環状ベース部12に対して相対回転不能に設定することが可能であり、リードR をリガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に位置決めした状態で、締付ネジ部16のシャンク部54を凸部40のネジ穴部22に螺合させることにより、押付面24によりリードR をテーブル面T に向かって押付固定することが可能である。
【0034】
図6に示すように、弾性リング17が、押付プレート部14と締付ネジ部16との間に介在する。より詳細には、弾性リング17は、円形開口19を有する環状であり、円形開口19にシャンク部54を通して、締付ネジ部16を締付けることにより、押付プレート部14に対して押し付けられ、上下方向に潰れることにより、その反発力により、押付プレート部14の押付力が補強される。弾性リング17の剛性の選択により、音質を変えることが可能であり、たとえば、剛性の低いゴム製の場合、柔らかい音色となり、剛性の高いスプリングワッシャーの場合は、明るくエッジが立つ反面若干音が細くなる。なお、弾性リング17はオプションであり、その場合には、シャンク部54の中実円柱部62の下面64が、押付プレート部14の環状突起部31の上面に直接当たる。
【0035】
以上の構成を有するリガチャー付メタル製マウスピース10によれば、リガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T に沿って設けられるリードR の幅方向に跨り、リガチャー付メタル製マウスピース10に対して固定されるベース部12に対して、押付プレート部14を、ベース部12の上方に位置決めし、締付ネジ部16を押付プレート部14のバカ穴部18に貫通させ、ベース部12のネジ穴部22に対して締め付けることにより、押付プレート部14が一対の押付部20を介してリードR をリガチャー付メタル製マウスピース10に対して押付け可能で、一対の押付部20がバカ穴部18を挟んで互いに逆方向に延在することにより、リガチャー付メタル製マウスピース10のテーブル面T の面に対して、テーブル面T の長手方向に間隔を隔てた2か所で真上からリードR を押し付け可能であるから、優れた音質を確保可能であるとともに、押付プレート部14が、ベース部12の上方に位置し、テーブル面T の延び方向に沿ってベース部12の幅w1を上方から跨ぐように設けられることから、シンプルで、デザイン性に優れた構造であり、リガチャーLG10のリガチャー付メタル製マウスピース10に対する装着が簡便で、たとえば、演奏中にリガチャー付メタル製マウスピース10の楽器本体への差し込み深さを調整するのに、リガチャー付メタル製マウスピース10を片手で握って、楽器本体に対してリガチャー付メタル製マウスピース10を長手方向を中心に回転させる際、演奏中のリードR のリガチャー付メタル製マウスピース10に対するずれが抑制可能である一方、締付ネジ部16の締付を単に緩めるだけで、ベース部12、押付プレート部14および締付ネジ部16をばらばらに分解可能であり、分解性、メインテナンス性に優れるリガチャーLG10を提供することが可能である。
なお、装着の際、
図1に示すように、ベース部12、押付プレート部14および締付ネジ部16をバラバラにした状態で、リードR をベース部12の開口に通し、リガチャー付メタル製マウスピース10に固定し、次いで、押付プレート部14の凸部をベース部12の凹部に差し込んで、押付プレート部14をベース部12に対して位置決めし、そのうえで、締付ネジ部16を締付けることにより、押付プレート部14をリードR の表皮部SSの湾曲おもて面に押し付けるのがよいが、本リガチャー付メタル製マウスピース10は、分解可能な別個の要素部品から構成されるからこそ、ベース部12、押付プレート部14、締付ネジ部16およびオプションとしての弾性リング17それぞれの選択、組み合わせにより、様々な音色をアレンジすることが可能となる。
また、ベース部12、押付プレート部14および締付ネジ部16がバラバラで要素部品からなるものでも、それによりロウ付けを採用せずに、ねじ構造により組み立てることから、リガチャー付メタル製マウスピース10の製造の際の音質への悪影響要因を削減することが可能である。
さらに、既存の従来の真鍮製リガチャー付メタル製マウスピース10に対して、リガチャー付メタル製マウスピース10の外周面44に長溝52を機械加工して、本リガチャーLGを装着するとともに、純銀製中空シャンク部72を準備して、真鍮製リガチャー付メタル製マウスピース10に内嵌させることにより、低バッフルであっても、演奏者のレベルを問わず吹奏感良好に、リガチャー付メタル製マウスピース10特有のエッジの立つ発音を利用しつつ、演奏者自身の表現力を存分に引き出すことが可能である。
【0036】
以上の構成を有するリガチャー付メタル製マウスピース10によれば、楽器ネック部に直接接続されるマウスピースの部分を、固有振動数を有しない材質の純銀製である中空シャンク部により構成するとともに、真鍮製中空本体部70 に設けるサキソフォン用リガチャーLGにより、マウスピースの長手方向に間隔を隔てた位置の2か所で、リードR をマウスピースに対して点または線接触態様で押付け可能とすることにより、バッフル面75として、ウィンドウWに臨む位置において、チャンバーCHの一部を構成し、ティップTPから長手方向に一対のサイドレールSRから離れる向きに滑らかに段差なく傾斜し、ネック側のチャンバーCH直胴部の内径に対する、ティップTPとチャンバーCHの直胴部の中心XXとの高低差Δhの割合が、第1所定値以上に設定され、バッフル面75の最大傾斜角度が、第2所定値以上に設定される、いわゆる低バッフルでありながら、演奏者のレベルを問わず吹奏感良好に、リガチャー付メタル製マウスピース10特有のエッジの立つ発音を利用しつつ、演奏者自身の表現力を存分に引き出すことが可能である。
【0037】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、テナーサキソフォン向けリガチャー付メタル製マウスピース10のバッフル面75として、いわゆるロールオーバータイプのもの(
図9)を説明したが、それに限定されることなく、ティップから長手方向に段差なく滑らかに傾斜する傾斜面である限り、ティップ近傍に傾斜角度の小さい部分を有しないいわゆるストレートタイプのものでもよい。
たとえば、本実施形態において、リガチャー付メタル製マウスピース10の押付プレート部14として、バカ穴部18を有する中央部26を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部20を有し、一対の押付部20それぞれが、脚部30を有し、一対の押付部それぞれは、各々が中央部26の対応する端部から下方に延在する脚部30を一対有し、各脚部30はリードR の幅方向内で、リードR の幅方向に互いに遠ざかるように斜め下方に延び、脚部30の下端に、押付面24が設けられる、長手方向に線対称構造のものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば、一対の脚部30が中央部26のティップTP側端部にのみ設けられ、中央部26の楽器側端部には、単一の脚部30が楽器側端部の中央部26に設けられ、単一の押付面24が設けられるのでもよく、たとえば、一対の脚部30が中央部26のティップTP側端部にのみ設けられ、中央部26の楽器側端部には、楽器側端部全体から下方に延在する傾斜部を有し、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面24が設けられるのでもよく、たとえば、中央部26のティップTP側端部には、単一の脚部30がティップTP側端部にのみ設けられ、単一の押付面24が設けられ、中央部26の楽器側端部には、楽器側端部全体から下方に延在する傾斜部を有し、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面24が設けられるのでもよく、いずれも、押付プレート部14がベース部12の幅w1を跨ぐように、ベース部12の上方に位置するシンプルな構造である点では共通であるが、所望する音質に応じて、押付プレート部14の態様を選択すればよい。
【0038】
たとえば、本実施形態において、リガチャー付メタル製マウスピース10の押付プレート部14として、長手方向および幅方向それぞれに間隔を隔てた4か所の位置でリードR を上方から固定するものとして説明したが、それに限定されることなく、長手方向に間隔を隔てた2か所の位置でリードR を上方から固定する限り、たとえば、押付面24に下方に突出する線状突起部、点状突起部を設けることにより、押付面24がリードR に対して、線接触または点接触するのでもよい。
たとえば、本実施形態において、リガチャー付メタル製マウスピース10の押付プレート部14として、上面に環状突起部31を有し、締付ネジ部のシャンク部54の根元に設けられた中実円柱部62の下面64が環状突起部31の上面に当たるまで、締付ネジ部16を締め付けることにより、押付プレート部14がリードR を上方から押付固定するものとして説明したが、それに限定されることなく、押付プレート部14がリードR を上方から押付固定可能である限り、たとえば、押付プレート部14の上面の環状突起部31を省略して、中実円柱部62の下面64が押付プレート部14の上面に当たるまで締付ネジ部16を締め付けるのでもよい。
【0039】
たとえば、本実施形態において、押付プレート部14として、バカ穴部18を有する中央部26に対して、互いに長手方向逆向きに延在する一対の押付部20が設けられ、各押付部20は、斜め下方に延びる脚部30が押付プレート部14の幅方向に間隔を隔て一対設けられ、各脚部30の下端部に押付面24が設けられるものとして説明したが、それに限定されることなく、中央部26に対して、互いに長手方向逆向きに延在する一対の押付部20が設けられる限り、各押付部20において、または押付部20いずれかにおいて、単一の脚部30が押付プレート部14の中央部に設けられるのでもよい。
【0040】
たとえば、本実施形態において、ベース部12、押付プレート部14、および締付ネジ部16から構成されるリガチャー付メタル製マウスピース10として、一種類の押付プレート部14を用いる場合として説明したが、それに限定されることなく、ベース部12および締付ネジ部16は共通に、ベース部12および締付ネジ部16の間に介在し、締付ネジ部16が貫通するバカ穴部18が設けられる限り、形態が異なる押付プレート部14を準備し、リードR の形態、要求する音質に応じて、選択するのでもよい。この場合、押付プレート部14を交換するには、ベース部12はリガチャー付メタル製マウスピース10に装着した状態で、締付ネジ部16による締付を緩めるだけでよい。または、ベース部12と押付プレート部14との組み合わせとして、第1実施形態の環状ベース部12、第2実施形態のアーチ状ベース部12、あるいは凹凸状の不規則模様PNを有するベース部12を準備し、所望の形態の押付プレート部14と組合わせることにより、デザイン性、音質を変えるのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の押付プレート部14の斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の押付プレート部14の底面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の弾性リングの斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の締付ネジ部16の斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10の側面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10において、テナーサキソフォン向けの側断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るリガチャー付メタル製マウスピース10において、アルトサキソフォン向けの側断面図である。
【符号の説明】
【0042】
MP リガチャー付メタル製マウスピース
LG サキソフォン用リガチャー
O ティップオープニング
TP ティップ
F フェイシング
T テーブル面
R リード
D 一対の押付部間の長手方向の間隔
E エッジ部
SS 表皮部
SR サイドレール
Di チャンバー直胴部の内径
Δh ティップTPとチャンバーCHの直胴部の中心XXとの高低差
Θmax バッフル面の最大傾斜角度
XX チャンバーCHの直胴部の中心軸線
l1 中実円柱部の高さ
l2 シャンク部の長さ
12 ベース部
14 押付プレート部
16 締付ネジ部
17 弾性リング
18 バカ穴部
19 開口
20 一対の押付部
22 ネジ穴部
24 押付面
26 中央部
28 端部
30 脚部
31 環状突起部
32 下端
34 裏面
36 凹部
37 環状底面
38 おもて面
40 凸部
41 上面
44 外周面
48 長手方向縁部
50 凸状部
52 長溝
54 シャンク部
56 ヘッド部
57 ネジ部
58 ナット部
62 中実円柱部
64 下面
47 環状傾斜外周面
49 環状傾斜内周面
70 真鍮製中空本体部
71 内周面
72 純銀製中空シャンク部
73 内周面
75 バッフル面
77 先端傾斜面
79 一端開口