(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176247
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】導電性高分子分散液の製造方法、及びキャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20241212BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08G61/12
H01G9/00 290H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094665
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA01
4J032BA03
4J032BA04
4J032BA13
4J032BB01
4J032BB03
4J032BC13
4J032BC32
4J032BD02
4J032CG01
(57)【要約】
【課題】粘度の低い導電性高分子分散液の製造方法、及び前記導電性高分子分散液の硬化物からなる固体電解質層を備えたキャパシタの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアニオンと、糖アルコールと、水系分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、前記糖アルコールとを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法であって、前記糖アルコールの分子中の炭素原子の数が4~7であり、水酸基の数が3~7である、導電性高分子分散液の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニオンと、糖アルコールと、水系分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、前記糖アルコールとを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法であって、
前記糖アルコールの分子中の炭素原子の数が4~7であり、水酸基の数が3~7である、
導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記水系分散媒の総質量に対する水の含有量が70質量%以上である、請求項1に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸であるか、或いは、
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、かつ、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項2に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記糖アルコールが、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及びエリスリトールから選択される1種以上である、請求項3に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記反応液の総質量に対する前記糖アルコールの含有量が、0.01質量%以上0.50質量%以下である、請求項1に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記反応液に含まれる前記ポリアニオン100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、請求項5に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記反応液に含まれる前記モノマー100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、請求項6に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法によって導電性高分子分散液を得る工程と、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程とを有する、キャパシタの製造方法。
【請求項9】
前記固体電解質層に含まれる前記ポリアニオン100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、請求項8に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記固体電解質層に含まれる前記π共役系導電性高分子100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、請求項9に記載のキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性高分子分散液の製造方法、及びキャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。
導電性複合体を含有する導電性高分子分散液を材料とした塗料を弁金属からなる陽極表面に設けた誘電体層に塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成し、これに陰極を対向配置させることにより、キャパシタを製造する方法が開示されている(例えば特許文献1)。この開示によれば、塗料に特定の不飽和脂肪族アルコール化合物を含有させることにより、キャパシタ性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャパシタの製造に使用する導電性高分子分散液には、誘電体層の多孔質構造に浸み込むために、粘度が低いことが求められる。
また、従来の導電性高分子分散液の硬化物である固体電解質層を備えるキャパシタは、長時間の高温に曝されると等価直列抵抗(ESR)が上昇する問題があった。このESRの上昇は、キャパシタの性能劣化につながるため、改善が求められていた。
【0005】
本発明は、粘度の低い導電性高分子分散液の製造方法、及び前記導電性高分子分散液の硬化物からなる固体電解質層を備えたキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] ポリアニオンと、糖アルコールと、水系分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、前記糖アルコールとを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法であって、前記糖アルコールの分子中の炭素原子の数が4~7であり、水酸基の数が3~7である、導電性高分子分散液の製造方法。
[2] 前記水系分散媒の総質量に対する水の含有量が70質量%以上である、[1]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[3] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸であるか、或いは、前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、かつ、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記糖アルコールが、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及びエリスリトールから選択される1種以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[5] 前記反応液の総質量に対する前記糖アルコールの含有量が、0.01質量%以上0.50質量%以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[6] 前記反応液に含まれる前記ポリアニオン100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[7] 前記反応液に含まれる前記モノマー100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法によって導電性高分子分散液を得る工程と、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、前記導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程とを有する、キャパシタの製造方法。
[9] 前記固体電解質層に含まれる前記ポリアニオン100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、[8]に記載のキャパシタの製造方法。
[10] 前記固体電解質層に含まれる前記π共役系導電性高分子100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量が、1質量部以上100質量部以下である、[8]又は[9]に記載のキャパシタの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によって得た導電性高分子分散液は、粘度が低いので、キャパシタの製造に適している。また、本発明の製造方法によって得たキャパシタは、前記導電性高分子分散液の硬化物からなる固体電解質層を備えるので、ESRが低く、耐熱性にも優れる。
【0008】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】キャパシタの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪導電性高分子分散液の製造方法≫
本発明の第一態様は、ポリアニオンと、糖アルコールと、水系分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、前記糖アルコールとを含有する導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法である。
【0012】
特定の糖アルコールの存在下で前記導電性複合体を形成することにより、粘度が低く、高性能のキャパシタの製造に適した導電性高分子分散液を得ることができる。
本態様によって第二態様の導電性高分子分散液を製造することができる。
【0013】
<ポリアニオンの準備>
前記モノマーの重合工程で用いるポリアニオンは常法により準備することができる。例えば、重合性アニオンモノマー及び水を含む反応液に重合開始剤を添加し、重合性アニオンモノマーが重合してなるポリアニオンを含む水溶液を得る。
【0014】
重合性アニオンモノマーは、重合するとポリアニオンを形成する有機化合物であり、1分子中に少なくとも1つのアニオン基を有する。アニオン基は水中で電離し得る官能基であり、ナトリウムやカリウム等のカチオンと塩を形成していてもよい。
本工程で用いる重合性アニオンモノマーは、後で詳述するポリアニオンを形成し得る公知のモノマーから選択される1種以上であることが好ましい。なかでも、π共役系導電性高分子のドーパントとして特に優れているポリスチレンスルホン酸を形成可能な、スチレンスルホン酸又はその塩が最も好ましい。
【0015】
反応液の総質量に対する重合性アニオンモノマーの配合量は、例えば、1.0~25.0質量%が好ましく、10.0~20.0質量%がより好ましく、12.0~18.0質量%がさらに好ましい。
【0016】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。
反応液の総質量に対する重合開始剤の配合量は、例えば、0.01~0.50質量%が挙げられる。
【0017】
前記反応液におけるポリアニオンの重合反応の終了は、反応液に添加した重合開始剤が全て消費されたことが目安となる。例えば、70~95℃で攪拌しながら反応させた場合、4~12時間程度で反応が終了し得る。
【0018】
上記で得たポリアニオンが有するアニオン基がカウンターカチオンと塩を形成している場合には、陽イオン交換樹脂と接触させて、カチオンを除去することが好ましい。
【0019】
<重合工程>
ポリアニオンと、特定の糖アルコールと、水系分散媒とを含む反応液でπ共役系導電性高分子を重合反応により形成し、導電性複合体を得る。例えば、ポリアニオン水溶液に、特定の糖アルコールと、π共役系導電性高分子を形成する重合性モノマーと、任意のラジカル重合開始剤を添加し、前記π共役系導電性高分子を形成することにより、前記π共役系導電性高分子と前記ポリアニオンが複合体化した導電性複合体の分散液を得ることができる。重合工程において、ポリアニオン及び特定の糖アルコールの存在下でπ共役系導電性高分子を重合すること以外は、公知方法により行うことができる。
【0020】
(分散媒)
前記反応液を構成する分散媒は、ポリアニオン及び糖アルコールが親水性であることから、水を含む水系分散媒であることが好ましいが、水以外の分散媒を含んでもよい。
形成する導電性複合体はポリアニオンに由来する余剰のアニオン基を有し、水に対する分散性が高いので、水以外の分散媒は水溶性有機溶剤が好ましい。ここで水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。分散媒として含まれる水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0021】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0022】
反応液中の固形分(不揮発成分)を除いた分散媒の総質量に対する水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。残部は水溶性有機溶剤であることが好ましい。
上記下限値以上で水を含むと、形成された導電性複合体の分散性が高まる。
【0023】
重合反応時の反応液の総質量に対する前記糖アルコールの含有量は、例えば、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.10質量%以上0.50質量%以下がさらに好ましい。
上記の下限値以上であると、形成される導電性高分子分散液の粘度をより小さくすることができる。上記の上限値以下であると、得られる導電性高分子分散液に含まれる過剰な糖アルコールを低減することができる。
【0024】
前記反応液に含まれる前記ポリアニオン100質量部に対する前記糖アルコールの含有量は、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上80質量部以下がより好ましく、20質量部以上50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
上記の下限値以上であると、形成される導電性高分子分散液の粘度をより小さくすることができる。上記の上限値以下であると、得られる導電性高分子分散液に含まれる過剰な糖アルコールを低減することができる。
【0025】
前記反応液に含まれる前記モノマー100質量部に対する前記糖アルコールの含有量は、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましく、30質量部以上90質量部以下がさらに好ましく、50質量部以上80質量部以下が特に好ましい。
上記の下限値以上であると、形成される導電性高分子分散液の粘度をより小さくすることができる。上記の上限値以下であると、得られる導電性高分子分散液に含まれる過剰な糖アルコールを低減することができる。
【0026】
前記糖アルコールは、後で詳述する群から選択される1種以上であることが好ましい。なかでも、粘度がより低い導電性高分子分散液が得られ、キャパシタを構成した際のESRが低く、耐熱性が高い固体電解質層を形成可能であることから、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及びエリスリトールから選択される1種以上が最も好ましい。
【0027】
π共役系導電性高分子を形成する重合性モノマーは、後で詳述するπ共役系導電性高分子を形成し得る公知のモノマーから選択される1種以上であることが好ましい。なかでも、導電性、耐熱性に優れるPEDOTを形成可能な、3,4-エチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
【0028】
反応液の総質量に対する前記モノマーの配合量は、例えば、0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.4質量%以上0.7質量%以下がさらに好ましい。
反応液の総質量に対する前記ポリアニオンの配合量は、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な範囲とすることにより、導電性複合体の濃度を前述した好適な含有量とした導電性高分子分散液が容易に得られる。
【0029】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。ラジカル重合開始剤とともに、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等の触媒を反応液中に配合することが好ましい。
【0030】
重合反応時の反応液の総質量に対するラジカル重合開始剤の配合量としては、例えば、0.10質量%以上1.00質量%以下が好ましく、0.30質量%以上0.80質量%以下がより好ましく、0.50質量%以上0.70質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
前記反応液における反応温度としては、例えば、20~30℃とすることができる。上記反応温度であれば、重合反応は通常4~12時間程度で完了する。重合反応の終了は、反応液中の未反応のモノマーの量をガスクロマトグラフィー等の測定によって知ることができる。重合反応後、導電性複合体が含まれた反応液は導電性高分子分散液として得られる。
【0032】
前記反応液に添加した触媒及びラジカル重合開始剤の残渣を、重合反応後に導電性高分子分散液から除去することが好ましい。
除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に導電性高分子分散液を接触させ、触媒及びラジカル重合開始剤をイオン交換樹脂に吸着させる方法、導電性高分子分散液を限外ろ過することにより分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
【0033】
得られた導電性高分子分散液を高圧ホモジナイザー等の常法により分散処理してもよい。
【0034】
以上で得られた導電性高分子分散液に、さらに糖アルコール以外のポリオール化合物、窒素含有芳香族化合物、任意の添加剤等を添加してもよい。
【0035】
≪導電性高分子分散液≫
本発明の第二態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、糖アルコールと、水系分散媒とを含む導電性高分子分散液である。本態様の導電性高分子分散液は第一態様の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。
【0036】
<導電性複合体>
本態様の導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
ポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0037】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0038】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0039】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
【0040】
ポリアニオンの重量平均分子量Mwは2万以上100万以下が好ましく、5万以上80万以下がより好ましい。
重量平均分子量Mwは、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0041】
本態様の導電性複合体に含まれるポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して、例えば、1質量部以上1000質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子の含有比率が充分となるので、充分な導電性を確保できる。
【0042】
本態様の導電性高分子分散液の総質量に対するπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量(すなわち導電性複合体の含有量)は、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、0.8質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
上記好適な範囲であると、導電性複合体の分散性が高まり、塗工性が向上する。また、前記導電性高分子分散液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができる。
【0043】
(糖アルコール)
本態様の導電性高分子分散液が第一態様の製造方法で形成されたものであれば、導電性複合体の形成が特定の糖アルコール存在下で行われるので、その粘度が低減する。また、前記導電性高分子分散液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができ、その耐熱性も向上することができる。
【0044】
上記の効果を充分に得る観点から、糖アルコールは、糖アルコールの分子中の炭素原子の数が4~7であり、水酸基の数が3~7であることが好ましく、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及びエリスリトールから選択される1種以上であることがより好ましい。
【0045】
導電性高分子分散液の総質量に対する糖アルコールの含有量は、例えば、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.10質量%以上0.50質量%以下がさらに好ましい。
上記下限値以上であると、導電性高分子分散液の粘度をより低減することができる。また、前記固体電解質層の耐熱性をより向上させることができる。
上記上限値以下であると、その硬化物である固体電解質層の導電性の低下を低減することができる。
【0046】
(分散媒)
導電性高分子分散液に含まれる分散媒は、導電性複合体が親水性であることから、水を含む水系分散媒である。また、水以外の分散媒を含んでもよい。水以外の分散媒は、前記導電性複合体の分散性を著しく損なうものでなければ特に限定されない。
導電性複合体はポリアニオンに由来する余剰のアニオン基を有し、水に対する分散性が高いので、水以外の分散媒は水溶性有機溶剤が好ましい。分散媒として含まれる水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0047】
導電性高分子分散液の固形分(不揮発成分)を除いた分散媒の総質量に対する水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。上記下限値以上で水を含むと、導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の分散性が高まり、塗工性が向上する。また、導電性高分子分散液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができる。また、前記導電性高分子分散液から形成される導電層を有する導電性積層体の帯電防止性等をより向上することができる。
【0048】
導電性高分子分散液の25℃における粘度は、前記導電性高分子分散液の総質量に対する前記導電性複合体の濃度を1.6質量%に調整した時に、40mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下がさらに好ましく、13mPa・s以下が特に好ましい。上記粘度の下限値は特に制限されず、目安として1mPa・s以上が挙げられる。
上記粘度の測定の際、導電性高分子分散液に含まれる分散媒はイオン交換水のみであることが好ましい。また、粘度を測定する導電性高分子分散液には前記糖アルコールが含まれているが、その他の添加剤を含まないことが好ましい。
上記粘度の測定は、音叉振動式粘度計を用い、JIS Z8803:2011(振動粘度計による粘度測定法)に準拠して、25℃で測定された値である。
【0049】
(ポリオール化合物)
導電性高分子分散液は1種以上のポリオール化合物を含んでもよい。ここで、ポリオール化合物は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン及び前記糖アルコールとは異なる、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物をいう。ポリオール化合物を含有することにより、導電性高分子分散液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができる。
【0050】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、及びポリエチレングリコールから選択される1種以上が挙げられる。
【0051】
導電性高分子分散液に含まれるポリオール化合物の含有量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部に対して、例えば、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、200質量部以上2000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電性高分子分散液の塗工性が向上し、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0052】
導電性高分子分散液の総質量に対するポリオール化合物の含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電性高分子分散液の塗工性が向上し、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0053】
(窒素含有芳香族化合物)
導電性高分子分散液は1種以上の窒素含有芳香族化合物を含んでもよい。ここで、窒素含有芳香族化合物は、少なくとも1つの窒素原子が環構造を形成する芳香族化合物をいう。窒素含有芳香族化合物を含有することにより、導電性高分子分散液から形成される固体電解質層を有するキャパシタのESRをより低減することができる。
【0054】
窒素含有芳香族化合物としては、例えば、ピロール、インドール、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、N-プロピルイミダゾール、N-ブチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-1-メチルベンズイミダゾール、2-ヒドロキシベンズイミダゾール、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン及びこれらのアルキル置換体(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1~4のアルキル基での置換体)、ハロゲン置換体(例えば、フロロ、クロロ、ブロム等のハロゲン基での置換体)、ニトリル置換体等の誘導体が挙げられる。なかでも、イミダゾールがより好ましい。
【0055】
導電性高分子分散液に含まれる窒素含有芳香族化合物の含有量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部に対して、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましい。上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0056】
導電性高分子分散液の総質量に対する窒素含有芳香族化合物の含有量は、0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましい。上記の好適な範囲であると、キャパシタのESRをより低減することができる。
【0057】
(任意の添加剤)
本態様の導電性高分子分散液は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、導電性複合体以外の任意の添加剤を含有してもよく、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部に対して、例えば、1~1000質量部とすることができる。ここで、任意の添加剤は、前記糖アルコール、前記ポリオール化合物及び前記分散媒以外の化合物である。
【0058】
任意の添加剤としては、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0059】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第二態様の導電性高分子分散液を、基材の少なくとも一部の面に塗工し、導電層を形成する工程を含む製造方法により、導電性積層体を製造することができる。
【0060】
導電性高分子分散液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0061】
導電性高分子分散液の基材への塗布量は特に制限されないが、例えば、不揮発成分として、0.01~10.0g/m2の範囲が好ましい。
【0062】
基材上に塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒の少なくとも一部を除去し、硬化させることにより、導電層を形成することができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上200℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
【0063】
≪導電性積層体≫
前記導電性積層体は、基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された導電層とを備え、前記導電層は第二態様の導電性高分子分散液の硬化物を含む。
【0064】
[導電層]
前記導電層の形成範囲は、基材が有する任意の面の全体でもよいし、一部でもよい。導電性フィルムにおいては、フィルム基材の一方の面又は他方の面のほぼ全体にほぼ均一な厚さの導電層が形成されていることが好ましい。基材が有する面の一部のみに導電層が形成されている場合、例えば、当該導電層は回路や電極などの微細な導電パターンであってもよいし、導電層が設けられた領域と設けられていない領域とが同じ面に存在して大まかに区分けされただけであってもよい。
【0065】
前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下が好ましく、20nm以上50μm以下がより好ましく、30nm以上30μm以下がさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0066】
[基材]
前記基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0067】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はポリエステル樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0068】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、前記導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0069】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0070】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0071】
ガラス基材の平均厚みとしては、100μm以上3000μm以下が好ましく、100μm以上1000μm以下がより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0072】
≪キャパシタの製造方法≫
弁金属の多孔質体からなる陽極の表面に形成された誘電体層の表面に、第二態様の導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させて固体電解質層を形成する工程を有する製造方法により、キャパシタを製造することができる。
【0073】
キャパシタの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する工程(誘電体形成工程)と、前記誘電体層に対向する位置に陰極を配置する工程(陰極形成工程)と、前記誘電体層の表面の少なくとも一部に固体電解質層を形成する工程(成膜工程)と、を含むことが好ましい。以下、
図1を参照して各工程を説明する。
【0074】
[誘電体形成工程]
本工程では、弁金属の多孔質体からなる陽極11の表面を酸化して誘電体層12を形成する。誘電体層12を形成する方法は、特に制限されず、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液、ホウ酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液などの化成処理用電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化する方法が挙げられる。
【0075】
[陰極形成工程]
本工程では、誘電体層12に対向する位置に陰極13を配置する。陰極13の配置方法は、特に制限されず、例えば、カーボンペースト、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて陰極13を形成する方法、アルミニウム箔等の金属箔を誘電体層12に対向配置させる方法などが挙げられる。
【0076】
[成膜工程]
本工程は、誘電体層12の表面の少なくとも一部に前述の導電性高分子分散液を塗布し、乾燥させることにより、固体電解質層14を形成する。
【0077】
導電性高分子分散液の塗布方法としては、例えば、浸漬(ディップコーティング)、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等を適用することができる。これらのうち、陽極11を減圧下で導電性高分子分散液中に浸漬する方法が好ましい。浸漬方法であると、誘電体層12の表面の多孔質構造の内部にまで導電性高分子分散液を充分に塗布することができる。浸漬後に取り出して次の乾燥処理に進む。
【0078】
乾燥方法としては、例えば室温乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等が挙げられる。これらの中でも熱風乾燥が好ましい。
乾燥温度としては、例えば100~180℃が好ましく、120~150℃がより好ましい。乾燥時間としては、例えば0.2~1時間が好ましい。
乾燥処理の後、常法によりキャパシタを組み立てればよい。
【0079】
固体電解質層14に含まれる成分の組成は、塗布した導電性高分子分散液の組成を反映する。
固体電解質層14に含まれる前記ポリアニオン100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量は、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上80質量部以下がより好ましく、20質量部以上50質量部以下がさらに好ましく、25質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
上記範囲であると、キャパシタのESRが低減し、その耐熱性が充分に向上する。
【0080】
前記固体電解質層14に含まれる前記π共役系導電性高分子100質量部に対する、前記糖アルコールの含有量は、例えば、1質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましく、30質量部以上90質量部以下がさらに好ましく、50質量部以上80質量部以下が特に好ましい。
上記範囲であると、キャパシタのESRが低減し、その耐熱性が充分に向上する。
【0081】
≪キャパシタ≫
前記キャパシタは、弁金属の多孔質体からなる陽極と、前記弁金属の酸化物からなる誘電体層と、前記誘電体層の、前記陽極と反対側に設けられた導電物質製の陰極と、前記誘電体層及び前記陰極の間に形成された固体電解質層とを具備し、前記固体電解質層が第二態様の導電性高分子分散液の硬化物を含む。
【0082】
前記キャパシタの実施形態の一例について
図1を参照して説明する。
図1に示すキャパシタ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、弁金属の酸化物からなる誘電体層12と、誘電体層12の表面に形成された固体電解質層14と、最も表側に設けられた陰極13とを具備する。陰極13は誘電体層12及び固体電解質層14を間に挟んで、陽極11と反対側に設けられている。
【0083】
陽極11を構成する弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成された多孔質体となる。
【0084】
本実施形態における誘電体層12は、陽極11の表面が酸化されて形成された層であり、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、金属体の陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。陽極11と同様に誘電体層12にも凹凸が形成されている。
【0085】
本実施形態における陰極13としては、導電性ペーストから形成した導電層やアルミニウム箔など、導電物質製の金属層を使用することができる。
【0086】
本実施形態における固体電解質層14は、誘電体層12の表面に形成されている。固体電解質層14は、誘電体層12の表面の少なくとも一部を覆っており、誘電体層12の表面の全部を覆っていてもよい。
固体電解質層14の厚さは、一定でもよいし、一定でなくてもよく、例えば、1μm以上100μm以下の厚さが挙げられる。
【0087】
[電解液]
前記キャパシタは、固体電解質層を含浸する電解液を有していてもよい。
電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン等の硫黄系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
電解液を構成する電解質としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸;あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物;リン酸、炭酸、ケイ酸等の無機酸などをアニオン成分とし、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質;等が挙げられる。
【0088】
前記キャパシタは、上記の構成に限らず、誘電体層と陰極との間に、セパレータが設けられていてもよい。誘電体層と陰極との間にセパレータが設けられたキャパシタとしては、巻回型キャパシタが挙げられる。
セパレータとしては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンなどからなるシート(不織布を含む)、ガラス繊維の不織布などが挙げられる。
セパレータの密度は、例えば0.1g/cm3以上1.0g/cm3以下が挙げられる。
セパレータを設ける場合には、セパレータにカーボンペーストあるいは銀ペーストを含浸させて陰極を形成する方法を適用することもできる。
【実施例0089】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造1
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸(PSS)を得た。このポリスチレンスルホン酸10gをイオン交換水90gに溶解して10質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。
【0090】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、既知の重量平均分子量のプルランを標準物質として、上記で得たポリスチレンスルホン酸水溶液の重量平均分子量(Mw)を測定した結果、重量平均分子量は20万であった。
【0091】
重量平均分子量の測定は、株式会社島津製作所製の高速液体クロマトグラフ装置Prominenceを使用し、溶媒として0.1%NaNO3水溶液を使用し、カラムとしてShodex OHpack SB-806M HQを使用し、検出器としてRID-20Aを使用し、溶媒温度40℃に設定し、流速0.6ml/minに設定し、試料中のPSS濃度0.1質量%にして、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過した試料100μlを注入し、解析ソフトウェアLab Solutions(島津製作所製)を使用して行った。
【0092】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸の製造2
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した0.38gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
次に、得られたポリスチレンスルホン酸10gをイオン交換水90gに溶解して10質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。
製造例1と同様にGPCを用いて測定した、上記で得たポリスチレンスルホン酸(PSS)の重量平均分子量は54万であった。
【0093】
(製造例3)キャパシタ用素子の作成
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で40Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)して、アルミニウム箔の両面に誘電体層を形成して陽極箔を得た。
次に、陽極箔の両面に、陰極リード端子が溶接された対向アルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを円筒状に巻き取ってキャパシタ用素子を得た。
【0094】
(実施例1)導電性高分子分散液の調製
3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)5.7gと、製造例1のポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液)130.7gと、10質量%ペンタエリスリトール水溶液14gと、イオン交換水773.6gを25℃で混合した。
得られた混合溶液を25℃に保ち、掻き混ぜながら、6質量%硫酸第二鉄水溶液19.2gを添加した。次に11質量%過硫酸ナトリウム水溶液を56.8g加え、得られた反応液を8時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、ペンタエリスリトールと、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。
【0095】
得られた導電性高分子分散液をGPCで分析したところ、未重合のEDOTは検出限界以下であった。
【0096】
この導電性高分子分散液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)132gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)132gを加え、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子分散液850gを得て、固形分(不揮発成分)を測定した。
次に、得られた導電性高分子分散液からエバポレーターを用いて水を減圧留去し固形分を1.6質量%とした。後述の方法で粘度を測定した後、導電性高分子分散液100gに、イミダゾールを添加しpHを2.5に調整し、ジエチレングリコール8gを添加して、キャパシタの製造に用いた。
【0097】
製造例3で得たキャパシタ用素子を上記の導電性高分子分散液に減圧下で浸漬した後、125℃の熱風乾燥機により30分間乾燥して、誘電体層表面上に導電性複合体を含む固体電解質層を形成させた。
次いで、アルミニウム製のケースに、上記の固体電解質層が形成されたキャパシタ用素子を装填し、封口ゴムで封止して、キャパシタを作製した。
【0098】
(実施例2)
実施例1において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を28g、水を759.6gとしたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0099】
(実施例3)
実施例1において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を42g、水を745.6gとしたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0100】
(実施例4)
実施例1において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を10質量%ソルビトール水溶液としたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0101】
(実施例5)
実施例1において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を10質量%マンニトール水溶液としたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0102】
(実施例6)
実施例1において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を10質量%エリスリトール水溶液としたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0103】
(実施例7)
実施例1において製造例1のポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液)130.7gを91.3gとし、水を813.0gにしたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0104】
(実施例8)
実施例1において製造例1のポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液、Mw:20万)130.7gを製造例2のポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液、Mw:54万)130.7gとしたこと以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
【0105】
(比較例1)
実施例1において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を添加しなかったことした以外は実施例1と同様にしてキャパシタを作製した。
(比較例2)
実施例7において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を添加しなかったことした以外は実施例7と同様にしてキャパシタを作製した。
(比較例3)
実施例8において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を添加しなかったことした以外は実施例8と同様にしてキャパシタを作製した。
(比較例4)
実施例1においてポリスチレンスルホン酸を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして検討を行ったが、粒子が析出し、導電性高分子分散液が得られなかったため検討を中止した。
(比較例5)
3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)5.7gと、製造例1のポリスチレンスルホン酸(10質量%水溶液)130.7gと、イオン交換水773.6gを25℃で混合した。
得られた混合溶液を25℃に保ち、掻き混ぜながら、6質量%硫酸第二鉄水溶液19.2gを添加した。次に11質量%過硫酸ナトリウム水溶液を56.8g加え、得られた反応液を8時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。
得られた導電性高分子分散液をGPCで分析したところ、未重合のEDOTは検出限界以下であった。
この導電性高分子分散液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)132gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)132gを加え、10質量%のペンタエリスルトール溶液を14g添加し、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子分散液850gを得て、固形分(不揮発成分)を測定した。
次に、得られた導電性高分子分散液からエバポレーターを用いて水を減圧留去し固形分を1.6質量%とした。後述の方法で粘度を測定した後、導電性高分子分散液100gにイミダゾールを添加しpHを2.5に調整し、ジエチレングリコール8gを添加して、キャパシタの製造に用いた。
(比較例6)
比較例5において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を10質量%ソルビトール水溶液としたこと以外は比較例5と同様にしてキャパシタを作製した。
(比較例7)
比較例5において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を10質量%マンニトール水溶液としたこと以外は比較例5と同様にしてキャパシタを作製した。
(比較例8)
比較例5において10質量%ペンタエリスリトール水溶液を10質量%エリスリトール水溶液としたこと以外は比較例5と同様にしてキャパシタを作製した。
【0106】
[pHの測定]
市販のpHメータを用いて常法により、温度25℃でのpHを測定した。
【0107】
[粘度の測定方法]
各例で得た固形分1.6質量%の導電性高分子分散液(ただし、イミダゾール及びジエチレングリコールを添加していない。)を高圧ホモジナイザーで分散し、試料として、音叉振動式粘度計(型番:SV-10、A&D社製)を用い、25℃にてJIS Z8803:2011(振動粘度計による粘度測定方法)に準拠して、導電性高分子分散液の粘度を測定した。1Pa・s(パスカル秒)=1000cP(センチポアズ)として換算した。
【0108】
<評価>
(製造例3)キャパシタの製造
各例で得たイミダゾール及びジエチレングリコールを含む導電性高分子分散液にキャパシタ用素子を減圧下で浸漬した後、120℃の熱風乾燥機により20分間乾燥する工程を2回実施して、誘電体層表面上に、導電性複合体を含む固体電解質層を形成させた。さらに、アルミニウム製のケースに、キャパシタ用素子を装填し、封口ゴムで封止しキャパシタを作製した。
【0109】
[静電容量・等価直列抵抗の測定]
各例の導電性高分子分散液を用いて作製したキャパシタについて、LCRメータZM2376((株)エヌエフ回路設計ブロック製)を用いて、120Hzでの静電容量(単位:μF)、及び100kHzでの等価直列抵抗(ESR)(単位:mΩ)を測定した。ESRについては、初期のESRを測定した後でキャパシタを145℃の恒温槽に300時間静置する加熱処理を行い、再びESRを測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0110】
【0111】
以上から、本発明に係る実施例で製造した導電性高分子分散液は、粘度が低く、その導電性高分子分散液を用いて製造したキャパシタにあっては初期のESRが低く、さらには加熱処理後のESRの上昇倍率を低減することもできた。
一方、π共役系導電性高分子の重合時に特定の糖アルコールを配合しなかった比較例5~8においては、初期のESRの低減及び加熱処理後のESR上昇倍率の低減は見られなかった。これらの結果から、導電性高分子分散液に後から添加剤として特定の糖アルコールを添加しても目的の効果は得られず、π共役系導電性高分子の重合反応時、すなわち導電性複合体の形成時に、特定の糖アルコールが存在することが重要であることが理解される。