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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176248
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】アンカーボルト施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
E04B1/41 503B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094666
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513048036
【氏名又は名称】光建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健太郎
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AC01
2E125AE01
2E125AG04
2E125AG12
2E125BA13
2E125CA14
2E125CA19
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】既設コンクリート躯体に対して、アンカーボルトを簡易かつ高品質に施工することが可能なアンカーボルト施工方法を提案する。
【解決手段】既設コンクリート躯体に貫通孔を形成する削孔工程と、貫通孔の先端側孔口を蓋材4により遮蔽する遮蔽工程と、貫通孔の基端側孔口から充填材を注入する注入工程と、貫通孔の基端側孔口からアンカーボルトを挿入する挿入工程とを備えるアンカーボルト施工方法である。蓋材4には、アンカーボルトを挿通可能な挿通孔41が形成されているとともに既設コンクリート躯体側の面に挿通孔を遮蔽するシート材5が設置されており、挿入工程では、アンカーボルトの先端でシート材5を突き破りつつ、アンカーボルトの先端を挿通孔41に挿通する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリート躯体に貫通孔を形成する削孔工程と、
前記貫通孔の先端側孔口を蓋材により遮蔽する遮蔽工程と、
前記貫通孔の基端側孔口から充填材を注入する注入工程と、
前記貫通孔の基端側孔口からアンカーボルトを挿入する挿入工程と、を備えるアンカーボルト施工方法であって、
前記蓋材には、前記アンカーボルトを挿通可能な挿通孔が形成されているとともに前記既設コンクリート躯体側の面に前記挿通孔を遮蔽するシート材が設置されており、
前記挿入工程では、前記アンカーボルトの先端で前記シート材を突き破りつつ、前記アンカーボルトの先端を挿通孔に挿通することを特徴とする、アンカーボルト施工方法。
【請求項2】
前記シート材が布テープであることを特徴とする、請求項1に記載のアンカーボルト施工方法。
【請求項3】
前記挿入工程において、前記アンカーボルトの先端部に保護材を被覆した状態で前記アンカーボルトを挿入することを特徴とする、請求項1に記載のアンカーボルト施工方法。
【請求項4】
前記挿入工程後に、前記基端側孔口から充填材を補充する補充工程をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載のアンカーボルト施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルト施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設コンクリート構造物の補強方法として、既設コンクリート躯体の表面に補強部材(落橋防止材、鋼板や増打コンクリート等)を増設する場合がある。このような補強部材の固定方法として、既設コンクリート躯体にアンカーボルトをあと施工により固定して、このアンカーボルトに補強部材を固定する場合がある。
例えば、特許文献1には、既設コンクリート躯体を貫通するボルト部材(アンカーボルト)の端部に補強板が固定された補強構造が開示されている。特許文献1に補強構造のボルト部材は、あと施工により既設コンクリート躯体に形成されたアンカー孔に挿入されるものであり、両端が既設コンクリート躯体の側面から突出するとともに、アンカー孔に充填された充填材により固定されている。
アンカーボルトの施工は、既設コンクリート躯体に形成されたアンカー孔に、アンカーボルトを挿入した状態で、充填材注入用の注入管を配管するとともにボルト孔の孔口を遮蔽し、アンカー孔内の空気を抜きつつ注入管から充填材を充填するのが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
前記従来のアンカーボルトの施工方法では、注入管を配管する手間がかかる。また、注入管は、充填材硬化後に切断するが、既設コンクリート躯体の表面から突出することが無いように、平滑に処理する作業を要する。また、アンカー孔とアンカーボルトとの小さい隙間に充填材を充填するため、充填材にはセメントミルクなどの粘性の低い材料を使う必要があるが、粘性が低い充填材は、アンカー孔の上部に付着し難いため、アンカー孔の上部に空気だまり(未充填箇所)が形成されやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-092005号公報
【特許文献2】特開2000-248750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既設コンクリート躯体に対して、アンカーボルトを簡易かつ高品質に施工することが可能なアンカーボルト施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明のアンカーボルト施工方法は、既設コンクリート躯体に貫通孔を形成する削孔工程と、前記貫通孔の先端側孔口を蓋材により遮蔽する遮蔽工程と、前記貫通孔の基端側孔口から充填材を注入する注入工程と、前記貫通孔の基端側孔口からアンカーボルトを挿入する挿入工程とを備えている。前記蓋材には、前記アンカーボルトを挿通可能な挿通孔が形成されているとともに前記既設コンクリート躯体側の面に前記挿通孔を遮蔽するシート材が設置されている。そして、前記挿入工程では、前記アンカーボルトの先端で前記シート材を突き破りつつ、前記アンカーボルトの先端を前記挿通孔に挿通する。
【0006】
かかるアンカーボルト施工方法によれば、施工後に既設コンクリート躯体の表面を平滑にする作業などを要しないため、施工性に優れている。また、アンカーボルトの挿入前に充填材を貫通孔に注入するため、粘性の高い材料を充填材に使用できる。粘性が高い充填材を使用すれば、貫通孔内の上部に未充填箇所(空気だまり)が形成され難く、高品質に施工できる。アンカーボルトを蓋材の挿入孔に挿通する際には、アンカーボルトによりシート材を突き破るため、充填材が貫通孔の先端側から漏れ出し難い。
【0007】
なお、前記シート材が布テープであれば、アンカーボルトを蓋材の挿入孔に挿通した際に、シート材の繊維がアンカーボルトに絡まるため、充填材の漏れ出しがより抑制される。
また、前記アンカーボルトの先端部に保護材を被覆した状態で前記アンカーボルトを挿入すればアンカーボルトの先端部にネジ加工が施されている場合であっても、充填材がネジ部分に付着することを抑制できる。
さらに、前記挿入工程後に、前記基端側孔口から充填材を補充する補充工程をさらに備えているのが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンカーボルト施工方法によれば、既設コンクリート躯体に対して、アンカーボルトを簡易かつ高品質に施工することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るアンカーボルトの設置状況を示す断面図である。
図2】アンカーボルト施工方法の手順を示すフローチャートである。
図3】アンカーボルト施工方法の各工程を示す断面図であって、(a)は削孔工程、(b)は遮蔽工程である。
図4】蓋材を示す斜視図である。
図5】アンカーボルト施工方法の各工程を示す断面図であって、(a)は注入工程、(b)は挿入工程である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、既設コンクリート躯体にアンカーボルトを設置するアンカーボルト施工方法について説明する。
図1にアンカーボルト1を示す。アンカーボルト1は、図1に示すように、両端部が既設コンクリート躯体2の側面から突出するように、既設コンクリート躯体2に形成された貫通孔21を貫通した状態で設置する。アンカーボルト1と貫通孔21との隙間には、充填材3が充填されている。本実施形態のアンカーボルト1の両端部には、ネジ加工が施されていて、雄ネジ11,11が形成されている。
【0011】
図2にアンカーボルト施工方法の手順を示す。図2に示すように、削孔工程S1と、遮蔽工程S2と、注入工程S3と、挿入工程S4、補充工程S5とを備えている。
図3(a)に削孔工程S1を示す。図3(a)に示すように、削孔工程S1では、既設コンクリート躯体2に貫通孔21を形成する。貫通孔21は、アンカーボルト1の外径よりも大きな内径を有している。貫通孔21は、コアボーリングにより水平に形成する。削孔後、貫通孔21内の清掃を行い、貫通孔21内から切削片等を取り除く。
【0012】
図3(b)に遮蔽工程S2を示す。図3(b)に示すように、遮蔽工程S2では、貫通孔21の先端側孔口を蓋材4により遮蔽する。図4に蓋材4を示す。図4に示すように、蓋材4は、アンカーボルト1を挿通可能な挿通孔41が形成された板材により構成されている。本実施形態では、蓋材4をいわゆるコンパネ等の木製板材により構成する。蓋材4は、貫通孔21の直径に対して十分に大きい幅と高さ(例えば100mm×100mm)を有している。挿通孔41は、貫通孔21の直径よりも小さく、かつ、アンカーボルト1の外径と同等以上の内径(例えば、ボルト径+2mm)を有している。蓋材4の既設コンクリート躯体2側の面には、挿通孔41を遮蔽するシート材5が設置(貼着)されている。シート材5は、例えば、布テープであり、片面に粘着層を備えている。
本実施形態では、コンクリートビス6により蓋材4を既設コンクリート躯体2に固定する。コンクリートビス6は、蓋材4に対して対角に取り付けるものとし、蓋材4の角部を貫通している。
【0013】
図5(a)に注入工程S3を示す。図5(a)に示すように、注入工程S3では、貫通孔21の基端側孔口から充填材3を注入する。充填材3は、無機系の材料(例えば無収縮モルタル)からなる。本実施形態では、ハンドガン(図示せず)を用いて貫通孔21の先端側(蓋材4側)から充填材3を注入する。注入工程S3において注入する充填材3の量は、貫通孔21の内空の容積からアンカーボルト1の貫通孔21の長さ分の体積を差し引いた量と同等以上とする。
【0014】
図5(b)に挿入工程S4を示す。図5(b)に示すように、挿入工程S4では、貫通孔21の基端側孔口からアンカーボルト1を挿入する。挿入工程S4では、アンカーボルト1の先端でシート材5を突き破りつつ、アンカーボルト1の先端を挿通孔41に挿通する。このとき、アンカーボルト1の先端部(雄ネジ11の周囲)に保護材7を被覆しておく。保護材7には、例えば、ポリエチレン製テープを使用すればよい。
【0015】
補充工程S5では、貫通孔21の基端側孔口から充填材3を補充する。補充工程S5では、アンカーボルト1を挿入した際に、基端側孔口から漏れ出した分の充填材3を補充する。基端側孔口は、ヘラなどを利用して平坦に仕上げる。補充する充填材3は、新たに補充してもよいし、基端側孔口から漏れ出したものを使用してもよい。
充填材3の養生後、蓋材4および保護材7を取り外す。
【0016】
以上、本実施形態のアンカーボルト施工方法によれば、注入管を配管する手間を要せず、また、施工後にグラインダー仕上げ等の既設コンクリート躯体2の表面を平滑にする作業などを要しないため、施工性に優れている。
また、アンカーボルト1の挿入前に充填材3を貫通孔21に注入するため、粘性の高い材料を充填材3に使用できる。そのため、貫通孔21内の上部に未充填箇所(空気だまり)が形成され難く、高品質に施工できる。
アンカーボルト1を蓋材4の挿通孔41に挿通する際に、アンカーボルト1により布テープからなるシート材5を突き破ることで、シート材5がアンカーボルト1に絡まった状態で蓋材4の挿通孔41とアンカーボルト1との隙間が閉塞されるため、充填材3が貫通孔21の先端側から漏れ出し難い。
また、アンカーボルト1の先端部に保護材7を被覆した状態でアンカーボルト1を貫通孔21に挿入するため、貫通孔21内の充填材3がアンカーボルト1先端の雄ネジ11に付着することを抑制できる。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
補充工程S5は必要に応じて実施すればよく、挿入工程S4終了時に貫通孔21とアンカーボルト1との隙間が充填材3によって充填されている場合には、省略してもよい。
保護材7は、必要に応じて設置すればよく、例えば、アンカーボルト1が鋼棒や鉄筋等の場合には、省略してもよい。
シート材5を構成する材料は、充填材3の漏出を防止し、アンカーボルト1によって突き破ることが可能な材質を有していれば、布テープに限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン製テープや紙製テープであってもよい。また、粘着層を有しないビニールシートや紙等であってもよい。
注入工程における貫通孔21内への充填材3の注入方法は、ハンドガンによる方法に限定されるものではなく、例えば、注入管を利用した方法でもよい。注入管を利用する場合には、まず、注入管の先端を蓋材4の近傍に位置させた状態で充填材3の注入を開始し、充填材を注入しながら注入管を徐々に引き出す方法により行ってもよい。また、充填材3が充填された容器(カプセルや袋等)を貫通孔21に挿入し、挿入工程において貫通孔21にアンカーボルト1を挿入した際に、アンカーボルト1によって容器を突き破ることで、貫通孔21内に充填材3を充填させてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 アンカーボルト
11 雄ネジ
2 既設コンクリート躯体
21 貫通孔
3 充填材
4 蓋材
41 挿通孔
5 シート材
6 コンクリートビス
7 保護材
S1 削孔工程
S2 遮蔽工程
S3 注入工程
S4 挿入工程
S5 補充工程
図1
図2
図3
図4
図5