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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176254
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】覆工コンクリート打設管理システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20241212BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E21D11/10 B ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094682
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸二
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛彦
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA04
2D155KA00
2D155KC06
2D155LA13
2D155LA15
2E172AA05
2E172DB13
2E172DE02
2E172HA03
(57)【要約】
【課題】型枠空間内のコンクリートの充填状況をリアルタイムで連続的に取得可能な覆工コンクリート打設管理システムを提供する。
【解決手段】覆工コンクリート打設管理システム1は、型枠空間B内にコンクリートCを打設可能な、打設手段10と、型枠体A2の外面に沿って上下方向に移動可能な、複数の締固め手段20と、締固め手段20に固定した検知手段30であって、コンクリートCを検知した検知状態と、検知状態ではない非検知状態と、を識別可能な、複数の検知手段30と、複数の検知手段30と通信可能に接続した、演算手段40と、演算手段40と通信可能に接続した、表示手段60と、を備え、演算手段40が、複数の検知手段30の検知状態及び/又は非検知状態に基づいて、型枠空間B内におけるコンクリート面の高さ情報Dを取得して表示手段60に送信し、表示手段60が、コンクリート面の高さ情報Dを、表示画面61に表示することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半筒状の型枠体の外面とトンネル内面の間の型枠空間にコンクリートを打設して充填する工程に適用する、覆工コンクリート打設管理システムであって、
前記型枠空間内にコンクリートを打設可能な、打設手段と、
前記型枠体の外面に沿って上下方向に移動可能な、複数の締固め手段と、
前記締固め手段に固定した検知手段であって、コンクリートを検知した検知状態と、前記検知状態ではない非検知状態と、を識別可能な、複数の検知手段と、
前記複数の検知手段と通信可能に接続した、演算手段と、
前記演算手段と通信可能に接続した、表示手段と、を備え、
前記演算手段が、前記複数の検知手段の検知状態及び/又は非検知状態に基づいて、前記型枠空間内におけるコンクリート面の高さ情報を取得して前記表示手段に送信し、
前記表示手段が、前記コンクリート面の高さ情報を、表示画面に表示することを特徴とする、
覆工コンクリート打設管理システム。
【請求項2】
前記複数の締固め手段及び前記複数の検知手段と通信可能に接続した、制御手段を備え、
前記制御手段が、
前記検知状態の間は前記締固め手段を上方に移動させ、前記非検知状態になったら前記締固め手段の移動を停止する、上昇モードと、
前記締固め手段によって前記型枠空間内のコンクリートを所定時間締固める、締固めモードと、
前記非検知状態の間は前記締固め手段を下方に移動させ、前記検知状態になったら前記締固め手段の移動を停止する、下降モードと、を有し、
前記制御手段が、前記締固め手段が予め設定した設定高さに到達するまで前記上昇モードを繰り返し、前記締固め手段が前記設定高さに到達したら前記締固めモードを実施し、前記締固めモード後に前記下降モードを実施し、前記下降モード後に前記上昇モードに戻るように、前記各締固め手段を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の覆工コンクリート打設管理システム。
【請求項3】
前記打設手段が、前記型枠体を連通する複数の打設口であって、高さの異なる複数列に配列した複数の打設口と、前記打設口へコンクリートを圧送可能な圧送装置と、前記複数の打設口と前記圧送装置の配管の接続を切り替え可能な配管切替装置と、備え、
前記制御手段が、前記打設手段と通信可能に接続し、
前記制御手段が、前記コンクリート面の高さ情報に基づいて、下列の前記打設口から、上列の前記打設口へ、前記圧送装置との配管の接続を切り替えるように、前記配管切替装置を制御することを特徴とする、
請求項2に記載の覆工コンクリート打設管理システム。
【請求項4】
前記打設手段が、前記打設口を封止可能な形状の封止蓋を備え、
前記制御手段が、前記コンクリート面の高さ情報に基づいて、前記下列の打設口を前記封止蓋で封止するように、前記配管切替装置を制御することを特徴とする、
請求項3に記載の覆工コンクリート打設管理システム。
【請求項5】
前記制御手段が、前記コンクリートの高さが前記設定高さまでに到達するまでコンクリートを打設し、前記コンクリートの高さが前記設定高さまでに到達したら打設を停止するように、前記圧送装置を制御することを特徴とする、
請求項3に記載の覆工コンクリート打設管理システム。
【請求項6】
前記表示手段が、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、又はタブレットを介した拡張現実型表示装置であることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の覆工コンクリート打設管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工コンクリート打設管理システムに関し、特に型枠空間内のコンクリートの充填状況をリアルタイムで連続的に取得可能な覆工コンクリート打設管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、トンネル内に移動式のトンネル覆工用型枠を配置し、吹付コンクリート面又は防水シート面と型枠体のスキンプレート面の間に画設した型枠空間内にコンクリートを打設することで、覆工コンクリートを成型する。詳細には、型枠体に設けた複数の打設口から型枠空間内にコンクリートを打設し、打設したコンクリートをバイブレータで締固めることで型枠空間内にコンクリートを充填する。
コンクリートの打設時、型枠空間内のコンクリートの高さに高低差が生じると、コンクリートの側方移動により材料の分離が生じるおそれがあるため、水平方向に隣り合う打設口による打設量を調整しながらコンクリートを打設する必要がある。また、高所からのコンクリート打設も材料分離を引き起こすため、適度な落下高さに収まるように高さ方向における打設口を切替える必要がある。
このため、従来は、型枠体に設けた検査窓を通して型枠空間内におけるコンクリートの打設状況を目視することで、コンクリートの打設や締固めを管理していた。
【0003】
一方、近年ではコンクリートセンサを用いて、型枠空間内におけるコンクリートの打設状況を「見える化」する技術が開発されている。
特許文献1には、静電容量式のレベルセンサを、覆工型枠の外周面にトンネル長手方向および周方向に沿って設け、レベルセンサによる位置情報に基づき、トンネルの長さ方向に沿ったコンクリートの高さの偏りが許容範囲を超過したと判定された場合に、位置情報に基づいて次にコンクリートを打設すべき打設管へ切り替えるシステムが開示されている。
この他、帯状のセンサケーブルを型枠空間内の配筋に固定し、コンクリートの打設状況を検知し、検知後はそのまま覆工コンクリート内に埋め殺しにするコンクリートセンサが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-003221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術には以下の問題点がある。
<1>特許文献1の技術は、型枠空間内のコンクリートの位置を型枠体上の複数のセンサ(点)で検知する技術であるため、センサ間におけるコンクリート位置を正確に把握することができない。検知の精度を高めるためには、センサの数を増やし密度を高める必要があるが、センサを型枠体に組み込む必要があるためシステムが煩雑になると共に、システムの導入コストが嵩む。
<2>コンクリートセンサは検知端子にコンクリートが固着しやすく、かつ高アルカリ環境下で使用されるため頻繁なメンテナンスが必要なところ、特許文献1の技術はセンサが型枠体の表面に組み込まれているため、メンテナンスが困難で、センサに不具合が生じた場合、修理に時間がかかる。
<3>配筋固定タイプのコンクリートセンサは、覆工コンクリート1スパンごとの埋め殺しとなるため装置の調達コストが嵩む。また、1スパンごとに配筋にセンサを固定する作業に手間がかかるため、施工性が悪い。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決可能な覆工コンクリート打設管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、型枠空間内にコンクリートを打設可能な、打設手段と、型枠体の外面に沿って上下方向に移動可能な、複数の締固め手段と、締固め手段に固定した検知手段であって、コンクリートを検知した検知状態と、検知状態ではない非検知状態と、を識別可能な、複数の検知手段と、複数の検知手段と通信可能に接続した、演算手段と、演算手段と通信可能に接続した、表示手段と、を備え、演算手段が、複数の検知手段の検知状態及び/又は非検知状態に基づいて、型枠空間内におけるコンクリート面の高さ情報を取得して表示手段に送信し、表示手段が、コンクリート面の高さ情報を、表示画面に表示することを特徴とする。
【0008】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、複数の締固め手段及び複数の検知手段と通信可能に接続した、制御手段を備え、制御手段が、検知状態の間は締固め手段を上方に移動させ、非検知状態になったら締固め手段の移動を停止する、上昇モードと、締固め手段によって型枠空間内のコンクリートを所定時間締固める、締固めモードと、非検知状態の間は締固め手段を下方に移動させ、検知状態になったら締固め手段の移動を停止する、下降モードと、を有し、制御手段が、締固め手段が予め設定した設定高さに到達するまで上昇モードを繰り返し、締固め手段が設定高さに到達したら締固めモードを実施し、締固めモード後に下降モードを実施し、下降モード後に上昇モードに戻るように、各締固め手段を制御してもよい。
【0009】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、打設手段が、型枠体を連通する複数の打設口であって、高さの異なる複数列に配列した複数の打設口と、打設口へコンクリートを圧送可能な圧送装置と、複数の打設口と圧送装置の配管の接続を切り替え可能な配管切替装置と、備え、制御手段が、打設手段と通信可能に接続し、制御手段が、コンクリート面の高さ情報に基づいて、下列の打設口から、上列の打設口へ、圧送装置との配管の接続を切り替えるように、配管切替装置を制御してもよい。
【0010】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、打設手段が、打設口を封止可能な形状の封止蓋を備え、制御手段が、コンクリート面の高さ情報に基づいて、下列の打設口を封止蓋で封止するように、配管切替装置を制御してもよい。
【0011】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、制御手段が、コンクリートの高さが設定高さまでに到達するまでコンクリートを打設し、コンクリートの高さが設定高さまでに到達したら打設を停止するように、圧送装置を制御してもよい。
【0012】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、表示手段が、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、又はタブレットを介した拡張現実型表示装置であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の覆工コンクリート打設管理システムは、以下の効果の内少なくとも1つを備える。
<1>締固め装置に付設した検知端子を、打設によるコンクリート面の上昇と締固めによる沈下に追従させて、コンクリート面を連続検知することで、複数の測点におけるコンクリート面の高さをリアルタイムかつ連続的に把握することができる。
<2>締固め装置が検知手段を兼ねるため、別途コンクリートセンサを覆工型枠に組み込む必要がなく、検知手段のメンテナンスも容易である。
<3>制御手段を備える場合、コンクリート面の高さ情報を、配管の切り替え制御に利用することで、覆工コンクリートの自動化施工を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】覆工コンクリート打設管理システムの説明図
図2】覆工コンクリート打設管理システムの構成図
図3】打設手段の説明図
図4】締固め手段の説明図
図5】締固め装置と検知手段の説明図
図6】表示手段の説明図
図7A】上昇モードの説明図
図7B】上昇モードの説明図
図7C】上昇モードの説明図
図7D】上昇モードの説明図
図7E】上昇モードの説明図
図7F】締固めモードの説明図
図7G】下降モードの説明図
図7H】下降モードの説明図
図7I】上昇モードの説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の覆工コンクリート打設管理システムについて詳細に説明する。
【実施例0016】
[覆工コンクリート打設管理システム]
<1>全体の構成(図1図2
覆工コンクリート打設管理システム1は、覆工コンクリートの打設工程を管理するためのシステムである。
覆工コンクリート打設管理システム1は、型枠空間B内におけるコンクリート面の高さ情報Dを連続的に取得し、リアルタイムに表示できる点に一つの特徴を有する。本例では更に、コンクリート面の高さ情報Dに基づいて、締固め装置の移動と締固め、配管の切り替え、及びコンクリートの打設量を自動制御する。
覆工コンクリート打設管理システム1は、覆工用型枠Aに取付け、打設手段10と、複数の締固め手段20と、締固め手段に固定した複数の検知手段30と、複数の検知手段30と通信可能に接続した演算手段40と、演算手段40と通信可能に接続した表示手段60と、を少なくとも備える。本例では更に、制御手段50を備える。
制御手段50は、打設手段10、締固め手段20、検知手段30、及び演算手段40とそれぞれ通信可能に接続する。
ここで「通信可能に接続」とは、各構成要素が一方向又は双方向に電気的信号を発信可能に接続されていることを意味し、有線接続であるか無線接続であるかを問わない。
【0017】
<1.1>覆工用型枠(図1
覆工用型枠Aは、トンネル内をトンネル軸方向に移動可能な基台A1と、基台A1上に昇降自在に架設した型枠体A2と、を少なくとも備える。
基台A1は、概ね門形に組んだ複数の鋼材をトンネル延長方向に連結してなる枠状体である。
型枠体A2は、略半筒状のコンクリート型枠である。
基台A1と型枠体A2の間には、コンクリートCの打設時に型枠体A2を展開する展開装置を備える。
型枠体A2の外面と吹付コンクリート面又は防水シート面の間には、コンクリートCを打設するための型枠空間Bが画設される。
型枠体A2の両肩部には、基台A1の長手方向に沿って、開閉自在な複数の検査窓A3を備える。
【0018】
<1.2>各構成要素の配置
覆工コンクリート打設管理システム1は、覆工用型枠Aに例えば以下のように組み込む。
打設手段10は、基台A1内に配置し、打設口13が型枠体A2を内外に貫通する。
複数の締固め手段20は、型枠体A2上部の検査窓A3から、型枠体A2両側の外面に吊下げる。
複数の検知手段30は、締固め手段20の締固め装置21内に一体に設ける。
演算手段40と制御手段50は、中央処理装置(CPU)や記憶装置等を備えるサーバで構築し、基台A1内に配置する。
表示手段60は、タブレット端末として作業員が携帯する。
ただし上記は一例にすぎず、例えば演算手段40と制御手段50を、表示手段60と一体にタブレット端末に内蔵してもよい。
【0019】
<2>打設手段(図3
打設手段10は、型枠空間B内にコンクリートCを打設する手段である。
本例では打設手段10として、坑内に配置したコンクリート圧送装置(不図示)と、型枠体A2の頂部に付設した分岐管11と、コンクリート圧送装置と分岐管11を接続する圧送管12と、型枠体A2に設けた複数の打設口13と、分岐管11と複数の打設口13を接続する複数の配管14と、各打設口13に設けた封止蓋15と、打設の進捗に応じて配管14を切替える配管切替装置16と、の組合せを採用する。
複数の打設口13は、型枠体A2表面の周方向に沿って所定の間隔で配置して1列を構成し、この1列を覆工用型枠Aの長手方向に複数並列する。
各打設口13には、配管切替装置16を設ける。
配管切替装置16は、制御手段50の制御により、打設の進行に応じて打設口13と配管14の接続を切り替えて、コンクリートCを打設する打設口13の位置を変更すると共に、コンクリートCを打設しない打設口13を封止蓋15で封止する。なお、封止蓋15は、表面を型枠体A2の表面と面一とすることで、打設口13の封止後に、型枠面として機能する。
ただし、打設手段10の構成は上記に限らず、例えば配管切替装置16は、制御手段50によらず作業員が操作してもよい。
また、配管切替装置16を打設口13ごとに設けず、分岐管11に設置して配管14の切り替えを一括管理してもよい。
【0020】
<3>締固め手段(図4
締固め手段20は、型枠空間B内のコンクリートCを締固める手段である。
本例では締固め手段20として、締固め装置21と、締固め装置21を吊り下げる吊下索22と、吊下索22を繰り出し又は巻き上げることで締固め装置21を昇降させる昇降装置23と、の組合せを採用する。
詳細には、例えば吊下索22は例えば可撓性のワイヤケーブル、昇降装置23は電源ケーブルを巻き上げるリールとリールを駆動する電動モータの組合せとすることができる。
昇降装置23は基台A1の上部に設置し、吊下索22は検査窓A3を介して型枠体A2の外側に延出し、締固め装置21は型枠体A2の表面に吊り下げる。
本例では、締固め手段20を覆工用型枠Aの長手方向に沿って型枠体A2の両側に各7基ずつ配置する。
【0021】
<3.1>締固め装置(図5
締固め装置21は、型枠体A2に沿って上下方向に移動しつつ、コンクリートCを締固める装置である。ここで「上下方向」とは、型枠体A2表面の傾斜を含んだ意味で用いる。
本例では締固め装置21として、本体部21aと、本体部21aから延出する棒状の加振部21bと、加振部21bを型枠体A2の表面に沿って上下に滑動させる移動部21cの組合せからなる、電動式バイブレータを採用する。
本体部21aは、バッテリと振動発生器を内蔵し、加振部21bを振動させる。本体部21aには、後述する検知手段30を内蔵する。
移動部21cは、本体部21aに取付けた4輪のガイドローラである。
【0022】
<4>検知手段(図5
検知手段30は、コンクリートCを検知する手段である。
本例では検知手段30として、検知端子31を備える、印加電圧方式のコンクリートセンサを採用する。印加電圧方式のコンクリートセンサは、コンクリートとブリーディング水を区別してコンクリートのみを検知可能であるため、検知手段30として特に好適である。
検知手段30は、締固め装置21の本体部21aに内蔵し、検知端子31を本体部21aの表面に露出させる。検知端子31の周辺に、検知端子31に付着したコンクリートCを除去するための噴射式のセンサクリーナを設けてもよい。
検知手段30は、検知端子31がコンクリートCと接触した検知状態と、検知状態ではない非検知状態と、を識別し、識別結果を演算手段40に送信する。
【0023】
<5>演算手段
演算手段40は、コンクリート面の高さ情報Dを生成する手段である。
演算手段40は、複数の検知手段30の検知状態及び/又は非検知状態に基づいて、型枠空間B内におけるコンクリート面の高さ情報Dを生成し、高さ情報Dを制御手段50と表示手段60に送信する。
詳細には、例えば以下の手順で高さ情報Dを生成する。
締固め装置21を上下方向に移動している状態では、締固め装置21に付設した検知手段30が検知状態から非検知状態に切り替わる時、又は非検知状態から検知状態に切り替わる時、両状態の境界をコンクリート面と認識する。
締固め装置21が型枠空間B内に停止している状態では、コンクリート面の上昇に伴って検知手段30が非検知状態から検知状態に切り替わる時、又はコンクリートCの締固めによるコンクリート面の沈下に伴って検知手段30が検知状態から非検知状態に切り替わる時、両状態の境界をコンクリート面と認識する。
演算手段40は、コンクリート面を認識した時点における、吊下索22の巻取量から締固め装置21の高さを算出し、算出結果に締固め装置21における検知端子31の設置位置を加減することで、各締固め装置21に対応するコンクリート面の高さの情報である、高さ情報Dを生成する。
【0024】
<6>表示手段(図6
表示手段60は、コンクリート面の高さ情報Dを表示する手段である。
表示手段60は、演算手段40からコンクリート面の高さ情報Dを受信し、表示画面61に表示する。
本例では表示手段60として、演算手段40と無線接続したタブレット端末を採用する。
タブレット端末の表示画面61に、型枠空間Bを平面的に展開した平面図を表示し、平面図上に型枠体A2の長手方向各部におけるコンクリート面の高さを表示する。これによって、作業員は、タブレット端末に表示される各部のコンクリート面の高さを確認しながら、各打設口13からのコンクリート打設量をリアルタイムに調整することができる。
なお表示画面61は、型枠空間Bの平面図に限らず、例えば型枠空間B内におけるコンクリートCの充填状況を直観的に認識できるように、型枠空間Bを模した3Dモデル内にコンクリート面の高さを立体的に表示した3D図であってもよい。
【0025】
<7>制御手段
制御手段50は、他の構成要素を制御する手段である。
本例では制御手段50が、締固め手段20の移動と締固め、配管14の切り替え、及びコンクリートCの打設量をそれぞれ自動制御可能である。
【0026】
<8>締固め手段の制御
制御手段50は、上昇モードM1と、締固めモードM2と、下降モードM3と、の少なくとも3種類のモードを切り替えて締固め手段20を制御する。
上昇モードM1では、検知手段30が検知状態の間は締固め装置21を上方に移動させ、非検知状態になったら締固め装置21の移動を停止する。
締固めモードM2では、締固め装置21によって、コンクリートCを所定時間締め固める。
下降モードM3では、検知手段30が非検知状態の間は締固め装置21を下方に移動させ、検知状態になったら締固め装置21の移動を停止する。
制御手段50は、締固め装置21が予め設定した設定高さEに到達するまで上昇モードM1を繰り返し、締固め装置21が設定高さEに到達したら締固めモードM2を実施し、締固めモードM2後に下降モードM3を実施し、下降モードM3後に上昇モードM1に戻るように、締固め手段20を制御する。
ここで設定高さEとは、締固め装置21による締固めを規定する高さであり、例えば型枠空間B内におけるコンクリートCの1回分の打設量に基づき、型枠空間Bの底面から40~50cm程度ごとに設定することができる。
詳細には、例えば以下のように締固め手段20を制御する。
【0027】
<8.1>上昇モード
締固め装置21を型枠体A2の表面において設定高さEより下方に配置し、型枠空間B内にコンクリートCを打設する(図7A)。
コンクリートCの打設に伴いコンクリート面が上昇し、コンクリート面が締固め装置21表面の検知端子31に接触すると(図7B)、検知手段30がコンクリートCの検知状態を認識し、検知信号を制御手段50に送信する。制御手段50は、検知信号に基づいて昇降装置23に指令を出し、吊下索22を巻き上げて、締固め装置21を上方に移動させる(図7C)。
締固め装置21が上方に移動し、検知端子31がコンクリート面より上方に露出すると、検知手段30がコンクリートCの非検知状態を認識し、検知信号の制御手段50への送信を停止する。制御手段50は、検知信号の停止に基づいて昇降装置23の巻き上げを停止し、締固め装置21の移動を停止させる。
コンクリートCの打設に伴いコンクリート面が上昇し、コンクリート面が再び締固め装置21表面の検知端子31に接触すると(図7D)、上記と同様の手順によって制御手段50が締固め装置21を上方に移動させる。
以上の上昇モードM1を繰り返し、締固め装置21の所定位置(例えば検知端子31の位置)が設定高さEに達すると(図7E)、制御手段50が締固めモードM2に切り替わる。
【0028】
<8.2>締固めモード
締固め装置21の位置が設定高さEに達すると(図7E)、制御手段50が締固め手段20に指令を出し、締固め装置21にコンクリートCの締固めを行わせる(図7F)。締固め時間は適宜設定することができるが、5秒から15秒程度とするのが好ましい。
締固めに伴いコンクリート面は沈下し、検知端子31はコンクリート面より上方に露出する。
締固めの終了後、制御手段50が下降モードM3に切り替わる。
【0029】
<8.3>下降モード
所定時間の締固め終了後、制御手段50は、昇降装置23に指令を出し、吊下索22を繰り出して、締固め装置21を下方に移動させる(図7G)。
締固め装置21が下方に移動し、検知端子31がコンクリート面に接触すると(図7H)、検知手段30がコンクリートCの検知状態を認識し、検知信号を制御手段50に送信する。検知信号に基づいて、制御手段50は再び上昇モードM1に切り替わり、昇降装置23に指令を出し、吊下索22を巻き上げて、締固め装置21を上方に移動させる(図7I)。
以上のサイクルを繰り返し、型枠空間Bの肩部までコンクリートCを打設する。
肩部までの打設後、検査窓A3から締固め装置21を回収し、検査窓A3の閉鎖後に型枠体A2頂部の吹上口から型枠空間Bのクラウン部の打設を行うが、これらの工程は本願発明の要旨でないためここでは詳述しない。
【0030】
<8.4>締固め手段の制御の特徴
本例では、上昇モードM1の繰り返しによって、締固め装置21をコンクリート面の上昇に合わせて小刻みに移動させると共に、下降モードM3によって締固めによるコンクリート面の沈下にも追従させるため、コンクリートCの締固めと並行してコンクリート面の高さ情報Dを連続的に取得することができる。
また、コンクリート面の高さの変化をリアルタイムに把握できるため、後述する配管14の切り替えやコンクリートCの打設など、他の装置との即時的な連携が必要な各種の制御が可能となる。
【0031】
<9>配管の切り替え制御
制御手段50は、コンクリート面の高さ情報Dに基づいて、配管14を切り替え制御することができる。
高さ方向に連続する下位の打設口13a、中位の打設口13b、上位の打設口13c、を備える例では、配管14の切り替え制御は例えば以下のように行う。
打設開始時には、下位の打設口13aをコンクリート圧送装置と接続し、下位の打設口13aから型枠空間B内にコンクリートCを打設する。
型枠空間B内にコンクリートCが充填され、コンクリート面が下位の打設口13aから所定の距離に近づくと、制御手段50が、コンクリート面の高さ情報Dに基づいて、コンクリート圧送装置を停止させ、同時に配管切替装置16を制御して下位の打設口13aを封止蓋15で封止させる。
続いて、制御手段50が、配管切替装置16を制御して、コンクリート圧送装置と中位の打設口13bとを配管14で接続し、中位の打設口13bからコンクリートCを打設させる。
同様に、コンクリート面が中位の打設口13bから所定の距離に近づくと、制御手段50が、コンクリートの圧送を停止させ、中位の打設口13bを封止蓋15で封止させると共に、コンクリート圧送装置と上位の打設口13cとを配管14で接続して上位の打設口13cからコンクリートCを打設させる。
以上のように、制御手段50が、コンクリート面より上方でコンクリート面から最も近い位置にある打設口13から常時コンクリートCを打設するように配管14を切り替え制御することで、所定の打設高さを確保しつつ、コンクリートCの自動打設が可能となる。
【0032】
<10>コンクリートの打設量の制御
制御手段50は、コンクリート面の高さ情報Dに基づいて、打設手段10によるコンクリートCの打設量を制御することができる。
詳細には、まず制御手段50において、一層あたりの打設高さを設定する。打設高さは、例えば型枠空間Bの底面又は下層の打設高さから40~50cmである。
制御手段50は、打設手段10によって型枠空間B内にコンクリートCを打設しつつ、演算手段40からコンクリート面の高さ情報Dを継続して取得し、高さ情報Dによるコンクリート面の高さが、予め設定した打設高さに達したら、コンクリート圧送装置による打設を停止させる。
ここで、制御手段50は、複数の検知手段30の全てが打設高さに達した時点で全ての打設口13からの打設を停止させてもよいし、打設高さに達した検知手段30に近接する打設口13から順次打設を停止させてもよい。
【実施例0033】
[AR技術を組み合わせた例]
表示手段60は、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を利用した拡張現実型の表示装置62であってもよい。
AR技術は、現実を仮想的に拡張する技術であって、具体的にはディスプレイ内の現実の画像に仮想画像を重ねあわせて表示する装置などとして実装する。
本例では表示装置62として、作業員が頭部に装着可能なヘッドマウントディスプレイを採用し、ヘッドマウントディスプレイ内に表示した現実の坑内の画像に、型枠空間B内のコンクリート面の高さや打設口13の位置等を重ねて表示させる。
本例の場合、現実の施工風景とディスプレイとを見比べることなく、型枠空間B内のコンクリート量を直観的に認識して施工管理できるため、コンクリートCの打設に係る施工精度と施工効率が向上する。
なお表示装置62はヘッドマウントディスプレイに限らず、AR技術をプログラムしたスマートフォンやタブレット端末等であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 覆工コンクリート打設管理システム
10 打設手段
11 分岐管
12 圧送管
13 打設口
14 配管
15 封止蓋
16 配管切替装置
20 締固め手段
21 締固め装置
21a 本体部
21b 加振部
21c 移動部
22 吊下索
23 昇降装置
30 検知手段
31 検知端子
40 演算手段
50 制御手段
60 表示手段
61 表示画面
62 表示装置
A 覆工用型枠
A1 基台
A2 型枠体
A3 検査窓
B 型枠空間
C コンクリート
D 高さ情報
E 設定高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I