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特開2024-176256塗装ロボットシステムおよびロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176256
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】塗装ロボットシステムおよびロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20241212BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
B25J9/06 B
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094686
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】谷内 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 眞一
(72)【発明者】
【氏名】三村 教司
(72)【発明者】
【氏名】大島 崇
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 圭
(72)【発明者】
【氏名】米山 真人
(72)【発明者】
【氏名】出村 暢啓
【テーマコード(参考)】
3C707
4F035
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707AS23
3C707BS13
3C707CY39
3C707JS02
3C707LV02
4F035AA03
4F035BC03
(57)【要約】
【課題】ロボットを、より小さな配置領域に配置することが可能な塗装ロボットシステムを提供する。
【解決手段】この塗装ロボットシステム100は、ワーク200に対して塗装作業を実行する垂直多関節型の複数の塗装ロボット10を備える。複数の塗装ロボット10のうちの少なくとも1つは、基端アーム部12と、基端が基端アーム部12に接続される先端アーム部13と、基端が先端アーム部13に接続され、先端に塗装器具20が取り付けられる手首部14と、基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方に配置され、基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方を伸縮するJT7関節と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して塗装作業を実行する垂直多関節型の複数のロボットを備え、
前記複数のロボットのうちの少なくとも1つは、
基端アーム部と、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム部と、
基端が前記先端アーム部に接続され、先端に塗装器具が取り付けられる手首部と、
前記基端アーム部と前記先端アーム部とのうちの少なくとも一方に配置され、前記基端アーム部と前記先端アーム部とのうちの少なくとも一方を伸縮する伸縮軸と、を含む、塗装ロボットシステム。
【請求項2】
前記複数のロボットのうちの少なくとも1つは、前記伸縮軸を有する7軸の垂直多関節型のロボットを含む、請求項1に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項3】
前記複数のロボットの各々は、前記伸縮軸を含む、請求項1に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項4】
前記ワークは、所定の方向に沿って複数配置され、
前記ワークに対して塗装作業が実行される際に、前記複数のロボットは、各々、前記ワーク同士の間において前記伸縮軸の伸縮量が調整された状態で前記ワークに対して塗装作業を実行する、請求項3に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットは、前記基端アーム部の基端が接続され、前記基端アーム部を所定の軸線周りに回転させる基台部を含み、
並んで配置された前記ロボット同士の間隔は、前記伸縮軸が縮んだ状態において、前記所定の軸線から前記ロボットの可動範囲の端部までの距離以下である、請求項4に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項6】
前記ロボットは、前記所定の方向に沿って複数配置されている、請求項4に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項7】
前記先端アーム部は、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム基端部分と、先端が前記手首部に接続され前記先端アーム基端部分に対して前記伸縮軸により移動される先端アーム先端部分と、を有する、請求項1に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項8】
前記先端アーム部の最大の伸長量は、前記先端アーム部が縮んだ状態での前記先端アーム先端部分の長さよりも大きい、請求項7に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットは、前記基端アーム部の基端が接続され、前記基端アーム部を所定の軸線周りに回転させる基台部を含み、
前記基端アーム部は、
基端が前記基台部に接続される基端アーム基端部分と、先端が前記先端アーム部に接続され前記基端アーム基端部分に対して前記伸縮軸により移動される基端アーム先端部分と、を有する、請求項1に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項10】
前記基端アーム部の最大の伸長量は、前記基端アーム部が縮んだ状態での前記基端アーム先端部分の長さよりも大きい、請求項9に記載の塗装ロボットシステム。
【請求項11】
ワークに対して塗装作業を実行する垂直多関節型のロボットであって、
前記ロボットは、
基端アーム部と、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム部と、
基端が前記先端アーム部に接続され、先端に塗装器具が取り付けられる手首部と、
前記先端アーム部に配置され、前記先端アーム部を伸縮する伸縮軸と、を含む、ロボット。
【請求項12】
前記先端アーム部は、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム基端部分と、先端が前記手首部に接続され前記先端アーム基端部分に対して前記伸縮軸により移動される先端アーム先端部分と、を有する、請求項11に記載のロボット。
【請求項13】
前記先端アーム先端部分の最大の伸長量は、前記先端アーム部が縮んだ状態での前記先端アーム先端部分の長さよりも大きい、請求項12に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、塗装ロボットシステムおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装などの作業を実行するロボットが開示されている。特許文献1には、7軸の垂直多関節ロボットが開示されている。特許文献1の7軸の垂直多関節ロボットは、ベース部と、下部アーム部と、上部アーム部と、手首部と、を備えている。また、特許文献1では、上部アーム部と手首部との間に、互いに屈曲する第1アームと第2アームとが配置されている。すなわち、特許文献1の7軸の垂直多関節ロボットは、従来の6軸の垂直多関節ロボットに対して、第1アームと第2アームとを屈曲するための7軸目としての関節が追加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-183843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている7軸の垂直多関節ロボットは、7軸目の関節を折り曲げることにより、従来の6軸の垂直多関節ロボットに比べて大きさがコンパクトになる。このため、複数の7軸の垂直多関節ロボットを配置する場合、7軸の垂直多関節ロボット同士の干渉を避けながら、7軸の垂直多関節ロボット同士を密に配置することができる。その結果、7軸の垂直多関節ロボットが配置される配置領域を小さくすることが可能になる。しかしながら、特許文献1の7軸の垂直多関節ロボットでは、第1アームと第2アームとが屈曲する一方、第1アームと第2アームとの全長は変わらないため、7軸の垂直多関節ロボット同士の間隔を小さくしすぎると、7軸の垂直多関節ロボット同士が干渉してしまう。そこで、より小さな配置領域に配置することが可能な垂直多関節ロボットが望まれている。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この開示の1つの目的は、より小さな配置領域に配置することが可能な塗装ロボットシステムおよびロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の第1の局面による塗装ロボットシステムは、ワークに対して塗装作業を実行する垂直多関節型の複数のロボットを備え、複数のロボットのうちの少なくとも1つは、基端アーム部と、基端が基端アーム部に接続される先端アーム部と、基端が先端アーム部に接続され、先端に塗装器具が取り付けられる手首部と、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方に配置され、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方を伸縮する伸縮軸と、を含む。
【0007】
この開示の第1の局面による塗装ロボットシステムは、上記のように、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方に配置され、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方を伸縮する伸縮軸を含む。これにより、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方が縮むので、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方の全長が小さくなる。このため、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方が屈曲する場合と比べて、ロボット同士の干渉をより抑制できる。その結果、ロボット同士をより密に配置することができるので、より小さな配置領域にロボットを配置することができる。また、基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方が比較的短い場合でも、伸縮軸によって基端アーム部と先端アーム部とのうちの少なくとも一方を伸長することにより、遠方のワークに対して塗装作業を実行することができる。
【0008】
この開示の第2の局面によるロボットは、ワークに対して塗装作業を実行する垂直多関節型のロボットであって、ロボットは、基端アーム部と、基端が基端アーム部に接続される先端アーム部と、基端が先端アーム部に接続され、先端に塗装器具が取り付けられる手首部と、先端アーム部に配置され、先端アーム部を伸縮する伸縮軸と、を含む。
【0009】
この開示の第2の局面によるロボットは、上記のように、先端アーム部に配置され、先端アーム部を伸縮する伸縮軸を含む。これにより、先端アーム部が縮むので、先端アーム部の全長が小さくなる。このため、先端アーム部が屈曲する場合と比べて、ロボット同士の干渉をより抑制できる。その結果、ロボット同士をより密に配置することができるので、より小さな配置領域に配置可能なロボットを提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、塗装ロボットを、より小さな配置領域に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態による塗装ロボットシステムを上方から見た図である。
図2】第1実施形態によるJT7関節が収縮した状態の塗装ロボットを示す図である。
図3】第1実施形態による塗装ロボットの関節を示す図である。
図4】第1実施形態によるJT7関節が収縮した状態の塗装ロボットを示す図である。
図5】第1実施形態による塗装ロボットシステムのブロック図である。
図6】第1実施形態による塗装ロボットシステムを側方から見た図である。
図7】第1実施形態による塗装ロボットの可動範囲を示す図である。
図8】第2実施形態によるJT7関節が収縮した状態の塗装ロボットを示す図である。
図9】第2実施形態による塗装ロボットの関節を示す図である。
図10】第2実施形態によるJT7関節が伸長した状態の塗装ロボットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を具体化した本開示の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
(塗装ロボットシステム)
第1実施形態による塗装ロボットシステム100の構成について説明する。図1に示すように、塗装ロボットシステム100は、ワーク200に対して塗装作業を実行する。ワーク200は、たとえば、自動車210のドアである。なお、本願明細書において、上下方向をZ方向とする。上方側をZ1側とし、下方側をZ2側とする。Z方向に直交する方向をX方向とする。X方向の一方側をX1側とし、他方側をX2側とする。Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。Y方向の一方側をY1側とし、他方側をY2側とする。なお、X方向は、所定の方向の一例である。
【0014】
図1に示すように、塗装ロボットシステム100は、複数の塗装ロボット10を備えている。複数の塗装ロボット10は、並んで配置されており、ワーク200に対して塗装作業を実行する。図1では、2台の塗装ロボット10がX方向に沿って並んで配置されている。また、2台の塗装ロボット10は、Z方向に沿った壁部1に取り付けられている。ワーク200は、たとえば、自動車210のドアである。塗装ロボット10は、ワーク200のX1側の面とX2側の面とのうちの一方、または、両方を塗装する。ワーク200は、コンベアなどにより、X方向に沿って搬送される。塗装ロボット10によりワーク200が塗装される際には、ワーク200は停止されている。なお、塗装ロボット10は、移動するワーク200を塗装してもよい。また、ワーク200は、X方向に沿って複数配置されている。なお、図1に示す例では、1台の自動車210の2のドアが、ワーク200としてX方向に沿って2つ配置されている。なお、塗装ロボット10は、ロボットの一例である。
【0015】
(塗装ロボット)
塗装ロボット10の構成について説明する。なお、2台の塗装ロボット10の構成は同様であるので、1台の塗装ロボット10の構成について説明する。図2に示すように、塗装ロボット10は、垂直多関節型である。また、塗装ロボット10は、JT1関節、JT2関節、JT3関節、JT4関節、JT5関節、JT6関節およびJT7関節を含む7軸の垂直多関節型の塗装ロボット10である。塗装ロボット10は、基台部11と、基端アーム部12と、先端アーム部13と、手首部14と、図5に示すロボットコントローラ15と、を備えている。塗装ロボット10の先端には、塗装器具20が接続されている。なお、JT7関節は、本開示の伸縮軸の一例である。
【0016】
基台部11と基端アーム部12と先端アーム部13と手首部14との接続関係について説明する。塗装ロボット10は、台座30に取り付けられている。台座30は、Z方向に沿った壁部1に取り付けられている。台座30と基台部11とは、JT1関節により接続されている。図2に示す例では、JT1関節は、Y方向に沿った軸線周りに回転する。基台部11と基端アーム部12の基端とは、JT2関節により接続されている。JT2関節は、JT1関節の軸線に対して直交する方向に沿った軸線周りに回転する。基端アーム部12の先端と、先端アーム部13の基端とは、JT3関節により接続されている。JT3関節は、JT2関節の軸線と平行な軸線周りに回転する。先端アーム部13の先端と、手首部14の基端とは、JT4関節により接続されている。JT4関節は、JT3関節の軸線に対して直交する方向に沿った軸線周りに回転する。手首部14の先端と、塗装器具20とは、JT6関節により接続されている。JT6関節は、JT3関節の軸線に対して直交する方向に沿った軸線周りに回転する。また、JT4関節とJT6関節とは、JT5関節により接続されている。JT5関節は、JT3関節の軸線に対して直交する方向に沿った軸線周りに回転する。また、JT4関節の軸線とJT5関節の軸線とは、互いに交差する。また、JT5関節の軸線とJT6関節の軸線とは、互いに交差する。また、JT1関節からJT7関節までの各々に図5に示す駆動部16が配置されている。駆動部16は、サーボモータとエンコーダと減速機とを含む。
【0017】
JT7関節の配置位置について説明する。第1実施形態では、JT7関節は、先端アーム部13に配置され、先端アーム部13を伸縮する。すなわち、塗装ロボット10は、伸縮軸としてのJT7関節を有する7軸の垂直多関節型の塗装ロボット10である。なお、上記のように2台の塗装ロボット10は、同様の構成を有しており、2台の塗装ロボット10は、各々、伸縮軸としてのJT7関節を有する。また、JT1関節からJT6関節までは、回転軸である一方、JT7関節は、直動軸である。JT7関節は、たとえば、サーボモータを含み、JT7関節の伸縮量は、調整可能である。
【0018】
先端アーム部13の具体的な構成について説明する。第1実施形態では、図2に示すように、先端アーム部13は、先端アーム基端部分13aと、先端アーム先端部分13bと、を有する。先端アーム基端部分13aは、基端が基端アーム部12に接続されている。すなわち、先端アーム基端部分13aと基端アーム部12とは、JT3関節により接続されている。先端アーム先端部分13bの先端と、手首部14とがJT4関節により接続されている。先端アーム先端部分13bは、先端アーム基端部分13aに対してJT7関節により移動される。具体的には、先端アーム基端部分13aと先端アーム先端部分13bとは、共に筒形状を有する。そして、先端アーム先端部分13bが、先端アーム基端部分13aの内部に挿入されており、先端アーム先端部分13bが先端アーム基端部分13aに出し入れされる。これにより、先端アーム部13が伸縮する。このように、図3に示すように、塗装ロボット10では、基端から先端に向かって、JT1関節、JT2関節、JT3関節、JT7関節、JT4関節、JT5関節、および、JT6関節の順に関節が配置されている。
【0019】
先端アーム部13の伸長量L1について説明する。第1実施形態では、図4に示すように、先端アーム部13の最大の伸長量L1は、先端アーム部13が縮んだ状態での先端アーム先端部分13bの長さL2よりも大きい。なお、先端アーム先端部分13bの長さL2とは、先端アーム部13が最も縮んだ状態で、先端アーム先端部分13bのうちの先端アーム基端部分13aから出ている部分の長さを意味する。また、先端アーム部13の伸長量L1とは、先端アーム先端部分13bが長さL2からさらに伸びる最大の長さを意味する。
【0020】
ロボットコントローラ15について説明する。図5に示すように、ロボットコントローラ15は、メイン制御部15aと、サーボ制御部15bと、駆動回路部15cと、を含む。メイン制御部15a、および、サーボ制御部15bは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メイン制御部15aは、JT1関節からJT7関節までの駆動部16を制御する。サーボ制御部15bは、メイン制御部15aからの指令に基づいて、駆動部16に供給される電力を制御する。駆動回路部15cは、駆動部16に駆動電力を供給する。駆動回路部15cは、JT1関節からJT7関節までの各々に対して配置されている。なお、JT1関節からJT7関節までに対して共通の1つの駆動回路部15cを配置してもよい。
【0021】
(塗装ロボットシステムのレイアウト)
塗装ロボットシステム100のレイアウトについて説明する。第1実施形態では、図1に示すように、ワーク200に対して塗装作業が実行される際に、複数の塗装ロボット10は、各々、ワーク200同士の間に位置している。そして、複数の塗装ロボット10は、各々、JT7関節の伸長量L1が調整された状態でワーク200に対して塗装作業を実行する。たとえば、塗装ロボット10がワーク200のZ1側を塗装する場合には、JT7関節の伸長量L1が小さくされる。また、図6に示すように、塗装ロボット10がワーク200のZ2側を塗装する場合には、JT7関節の伸長量L1が大きくされる。つまり、塗装する部分の高さに合わせて、JT7関節の伸長量L1が調整される。
【0022】
塗装ロボット10同士の間隔について説明する。第1実施形態では、図1に示すように、並んで配置された塗装ロボット10同士の間隔Wは、図7に示すように、JT7関節が縮んだ状態において、JT1関節の軸線から塗装ロボット10の可動範囲の端部までの距離L3以下である。なお、並んで配置された塗装ロボット10同士の間隔Wとは、塗装ロボット10のJT1関節の軸線同士のX方向に沿った間隔Wを意味する。また、可動範囲の端部とは、たとえば、JT4関節の軸線とJT5関節の軸線とが交差する点が、JT1関節の軸線から離間する方向において到達可能な最遠端を意味する。
【0023】
[第1実施形態の効果]
基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方に配置され、基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方を伸縮するJT7関節を含む。これにより、基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方が縮むので、基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方の全長が小さくなる。このため、基端アーム部12と先端アーム部13とのうちの少なくとも一方が屈曲する場合と比べて、塗装ロボット10同士の干渉をより抑制できる。その結果、塗装ロボット10同士をより密に配置することができるので、より小さな配置領域に塗装ロボット10を配置することができる。また、先端アーム部13が比較的短い場合でも、JT7関節によって先端アーム部13を伸長することにより、遠方のワーク200に対して塗装作業を実行することができる。
【0024】
複数の塗装ロボット10のうちの少なくとも1つは、JT7関節を有する7軸の垂直多関節型の塗装ロボット10を含む。これにより、複数の7軸の垂直多関節型の塗装ロボット10を備える塗装ロボットシステム100において、7軸の垂直多関節型の塗装ロボット10同士をより密に配置することができる。
【0025】
複数の塗装ロボット10の各々は、JT7関節を含む。これにより、複数の塗装ロボット10の一部のみがJT7関節を含む場合と比べて、7軸の垂直多関節型の塗装ロボット10同士をより一層密に配置することができる。
【0026】
ワーク200は、X方向に沿って複数配置され、ワーク200に対して塗装作業が実行される際に、複数の塗装ロボット10は、各々、ワーク200同士の間においてJT7関節の伸縮量が調整された状態でワーク200に対して塗装作業を実行する。これにより、JT7関節の伸縮量が調整されるので、塗装ロボット10は、正確に塗装作業を実行することができる。
【0027】
塗装ロボット10は、基端アーム部12の基端が接続され、基端アーム部12をJT1関節の軸線周りに回転させる基台部11を含む。並んで配置された塗装ロボット10同士の間隔Wは、JT7関節が縮んだ状態において、JT1関節の軸線から塗装ロボット10の可動範囲の端部までの距離L3以下である。これにより、塗装ロボット10同士の間隔Wが小さくなるので、塗装ロボット10同士を確実に密に配置することができる。
【0028】
塗装ロボット10は、X方向に沿って複数配置されている。これにより、X方向に沿って複数配置されているワーク200の各々に対して、塗装ロボット10により塗装作業を容易に実行できる。
【0029】
先端アーム部13は、基端が基端アーム部12に接続される先端アーム基端部分13aと、先端が手首部14に接続され先端アーム基端部分13aに対してJT7関節により移動される先端アーム先端部分13bと、を有する。これにより、基端アーム部12が伸長して先端アーム部13の全体がワーク200側に移動する場合と異なり、先端アーム部13の一部分である先端アーム先端部分13bのみがワーク200側に移動する。このため、ワーク200に近づく先端アーム先端部分13bの大きさが比較的小さいので、先端アーム先端部分13bとワーク200との間の距離を比較的大きくした状態で塗装作業を実行できる。その結果、先端アーム部13とワーク200との干渉を抑制できる。
【0030】
先端アーム部13の最大の伸長量L1は、先端アーム部13が縮んだ状態での先端アーム先端部分13bの長さL2よりも大きい。これにより、先端アーム部13の伸長量L1が比較的大きくなるので、より遠い位置まで塗装作業を実行することができる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態による塗装ロボット110の構成について説明する。第2実施形態による塗装ロボット110では、JT7関節の配置位置が、第1実施形態による塗装ロボット10と異なっている。なお、塗装ロボット110は、ロボットの一例である。
【0032】
第2実施形態では、図8に示すように、JT7関節は、基端アーム部112に配置され、基端アーム部112を伸縮する。具体的には、基端アーム部112は、基端アーム基端部分112aと、基端アーム先端部分112bと、を有する。基端アーム基端部分112aは、基端が基台部11に接続されている。基端アーム先端部分112bは、先端が先端アーム部13に接続され基端アーム基端部分112aに対してJT7関節により移動される。具体的には、基端アーム基端部分112aと基端アーム先端部分112bとは、共に筒形状を有する。そして、基端アーム先端部分112bが、基端アーム基端部分112aの内部に挿入されており、基端アーム先端部分112bが基端アーム基端部分112aに出し入れされる。これにより、基端アーム部112が伸縮する。なお、塗装ロボット110の先端アーム部113は、伸縮しない。このように、図9に示すように、塗装ロボット110では、基端から先端に向かって、JT1関節、JT2関節、JT7関節、JT3関節、JT4関節、JT5関節、および、JT6関節の順に関節が配置されている。
【0033】
基端アーム部112の伸長量L11について説明する。第2実施形態では、図10に示すように、基端アーム部112の最大の伸長量L11は、基端アーム部112が縮んだ状態での基端アーム先端部分112bの長さL12よりも大きい。なお、基端アーム先端部分112bの長さL12とは、基端アーム部112が最も縮んだ状態で、基端アーム先端部分112bのうちの基端アーム基端部分112aから出ている部分の長さを意味する。また、基端アーム部112の伸長量L11とは、基端アーム先端部分112bが長さL12からさらに伸びる最大の長さを意味する。
【0034】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0035】
[第2実施形態の効果]
塗装ロボット110は、基端アーム部112の基端が接続され、基端アーム部112を関節JT1の軸線周りに回転させる基台部11を含む。基端アーム部112は、基端が基台部11に接続される基端アーム基端部分112aと、先端が先端アーム部13に接続され基端アーム基端部分112aに対してJT7関節により移動される基端アーム先端部分112bと、を有する。これにより、JT7関節が塗装ロボット110の基端寄りに配置されるので、JT7関節が塗装ロボット110の先端よりに配置される場合と比べて、塗装ロボット110を安定して配置できる。
【0036】
基端アーム部112の最大の伸長量L11は、基端アーム部112が縮んだ状態での基端アーム先端部分112bの長さL12よりも大きい。れにより、基端アーム部112の伸長量L11が比較的大きくなるので、より遠い位置まで塗装作業を実行することができる。
【0037】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0038】
上記第1実施形態では、複数の塗装ロボット10の各々にJT7関節が配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、複数の塗装ロボット10の一部にJT7関節が配置されていてもよい。すわなち、塗装ロボットシステム100に含まれる塗装ロボットに、6軸の塗装ロボットと7軸の塗装ロボット10とが混在していてもよい。第2実施形態の塗装ロボット110についても同様である。
【0039】
上記第1実施形態では、塗装ロボット10が、回転軸として、JT1関節からJT6関節までの6つの関節を含む例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、塗装ロボット10が、回転軸として、6つ以外の数の関節を含んでいてもよい。第2実施形態の塗装ロボット110についても同様である。
【0040】
上記第1実施形態では、ワーク200に対して塗装作業が実行される際に、複数の塗装ロボット10は、各々、ワーク200同士の間において塗装作業を実行する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、塗装ロボット10の正面に配置されたワーク200に対して、塗装ロボット10が塗装作業を実行してもよい。第2実施形態の塗装ロボット110についても同様である。
【0041】
上記第1実施形態では、複数の塗装ロボット10が、各々、X方向に沿って複数配置されたワーク200の各々に塗装作業を実行する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、複数の塗装ロボット10が、共通のワーク200に対して塗装作業を実行してもよい。第2実施形態の塗装ロボット110についても同様である。
【0042】
上記第1実施形態では、塗装ロボット10同士の間隔Wは、JT7が縮んだ状態において、JT1関節の軸線から塗装ロボット10が届く範囲の端部までのJT1関節の軸線に直交する方向に沿った距離L3以下である例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、塗装ロボット10同士の間隔Wを、距離L3よりも大きくしてもよい。第2実施形態の塗装ロボット110についても同様である。
【0043】
上記第1実施形態では、先端アーム先端部分13bが、JT7関節により、先端アーム基端部分13aに対して移動される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、先端アーム基端部分13aが、JT7関節により、先端アーム先端部分13bに対して移動されてもよい。同様に、上記第2実施形態では、基端アーム先端部分112bが、JT7関節により、基端アーム基端部分112aに対して移動される例を示したが、たとえば、基端アーム基端部分112aが、JT7関節により、基端アーム先端部分112bに対して移動されてもよい。
【0044】
上記第1実施形態では、先端アーム部13の最大の伸長量L1は、先端アーム部13が縮んだ状態での先端アーム先端部分13bの長さL2よりも大きい例を示したが、たとえば、先端アーム部13の最大の伸長量L1を、先端アーム部13が縮んだ状態での先端アーム先端部分13bの長さL2以下にしてもよい。同様に、上記第2実施形態では、基端アーム部112の最大の伸長量L11は、基端アーム部112が縮んだ状態での基端アーム先端部分112bの長さL12よりも大きい例を示したが、たとえば、基端アーム部112の最大の伸長量L11を、基端アーム部112が縮んだ状態での基端アーム先端部分112bの長さL12以下にしてもよい。
【0045】
上記第1および第2実施形態では、JT7関節は、たとえば、サーボモータを含み、JT7関節の伸縮量は、調整可能である例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、JT7関節が、エアシリンダなど含み、JT7関節は、伸びた状態または縮んだ状態の2つの長さのみに調整されてもよい。
【0046】
上記第1実施形態では、JT7関節が、JT3関節とJT4関節との間に配置され、上記第2実施形態では、JT7関節が、JT2関節とJT3関節との間に配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、JT7関節が、これらの関節の間以外の関節の間に配置されていてもよい。
【0047】
上記第1実施形態では、複数の塗装ロボット10が、Z方向に沿った壁部1に配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、複数の塗装ロボット10が、水平方向に沿った床面に配置されていてもよい。第2実施形態の塗装ロボット110についても同様である。
【0048】
上記第1および第2実施形態では、ワーク200が自動車210のドアである例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ワーク200が自動車210のドア以外のワーク200であってもよい。
【0049】
上記第1実施形態では、伸縮軸としてのJT7関節が先端アーム部13に配置され、上記第2実施形態では、伸縮軸としてのJT7関節が基端アーム部112に配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、伸縮軸が、基端アーム部および先端アーム部の両方に配置されていてもよい。
【0050】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0051】
(項目1)
ワークに対して塗装作業を実行する垂直多関節型の複数のロボットを備え、
前記複数のロボットのうちの少なくとも1つは、
基端アーム部と、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム部と、
基端が前記先端アーム部に接続され、先端に塗装器具が取り付けられる手首部と、
前記基端アーム部と前記先端アーム部とのうちの少なくとも一方に配置され、前記基端アーム部と前記先端アーム部とのうちの少なくとも一方を伸縮する伸縮軸と、を含む、塗装ロボットシステム。
【0052】
(項目2)
前記複数のロボットのうちの少なくとも1つは、前記伸縮軸を有する7軸の垂直多関節型のロボットを含む、項目1に記載の塗装ロボットシステム。
【0053】
(項目3)
前記複数のロボットの各々は、前記伸縮軸を含む、項目1または項目2に記載の塗装ロボットシステム。
【0054】
(項目4)
前記ワークは、所定の方向に沿って複数配置され、
前記ワークに対して塗装作業が実行される際に、前記複数のロボットは、各々、前記ワーク同士の間において前記伸縮軸の伸縮量が調整された状態で前記ワークに対して塗装作業を実行する、項目3に記載の塗装ロボットシステム。
【0055】
(項目5)
前記ロボットは、前記基端アーム部の基端が接続され、前記基端アーム部を所定の軸線周りに回転させる基台部を含み、
並んで配置された前記ロボット同士の間隔は、前記伸縮軸が縮んだ状態において、前記所定の軸線から前記ロボットの可動範囲の端部までの距離以下である、項目4に記載の塗装ロボットシステム。
【0056】
(項目6)
前記ロボットは、前記所定の方向に沿って複数配置されている、項目4または項目5に記載の塗装ロボットシステム。
【0057】
(項目7)
前記先端アーム部は、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム基端部分と、先端が前記手首部に接続され前記先端アーム基端部分に対して前記伸縮軸により移動される先端アーム先端部分と、を有する、項目1から項目5までのいずれか1項に記載の塗装ロボットシステム。
【0058】
(項目8)
前記先端アーム部の最大の伸長量は、前記先端アーム部が縮んだ状態での前記先端アーム先端部分の長さよりも大きい、項目7に記載の塗装ロボットシステム。
【0059】
(項目9)
前記塗装ロボットは、前記基端アーム部の基端が接続され、前記基端アーム部を所定の軸線周りに回転させる基台部を含み、
前記基端アーム部は、
基端が前記基台部に接続される基端アーム基端部分と、先端が前記先端アーム部に接続され前記基端アーム基端部分に対して前記伸縮軸により移動される基端アーム先端部分と、を有する、項目1から項目8までのいずれか1項に記載の塗装ロボットシステム。
【0060】
(項目10)
前記基端アーム部の最大の伸長量は、前記基端アーム部が縮んだ状態での前記基端アーム先端部分の長さよりも大きい、項目9に記載の塗装ロボットシステム。
【0061】
(項目11)
ワークに対して塗装作業を実行する垂直多関節型のロボットであって、
前記ロボットは、
基端アーム部と、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム部と、
基端が前記先端アーム部に接続され、先端に塗装器具が取り付けられる手首部と、
前記先端アーム部に配置され、前記先端アーム部を伸縮する伸縮軸と、を含む、ロボット。
【0062】
(項目12)
前記先端アーム部は、
基端が前記基端アーム部に接続される先端アーム基端部分と、先端が前記手首部に接続され前記先端アーム基端部分に対して前記伸縮軸により移動される先端アーム先端部分と、を有する、項目11に記載のロボット。
【0063】
(項目13)
前記先端アーム先端部分の最大の伸長量は、前記先端アーム部が縮んだ状態での前記先端アーム先端部分の長さよりも大きい、項目12に記載のロボット。
【符号の説明】
【0064】
10 塗装ロボット(ロボット)
11 基台部
12 基端アーム部
13 先端アーム部
13a 先端アーム基端部分
13b 先端アーム先端部分
14 手首部
20 塗装器具
100 塗装ロボットシステム
110 塗装ロボット(ロボット)
112 基端アーム部
112a 基端アーム基端部分
112b 基端アーム先端部分
113 先端アーム部
200 ワーク
JT7関節(伸縮軸)
X方向(所定の方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10