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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176261
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】移動体の制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20241212BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20241212BHJP
   B60L 58/14 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L1/00 J
B60L58/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094695
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】牧 龍一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮裕
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC06
5H125BC25
5H125CA18
5H125CC04
5H125CD03
5H125EE27
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】移動体の待機場所での待機中において乗員の快適性の低下を抑制することを可能とする。
【解決手段】ECU40において、到達可否判定部42は、自車両が充電施設まで到達可能であるか否かを判定する。待機場所設定部43は、自車両が充電施設まで到達可能でないと判定された場合に、充電施設よりも近い位置を自車両の待機場所として設定する。
待機時間設定部44は、自車両が待機場所まで移動しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する。エネルギ消費量設定部45は、待機場所までの自車両の移動と、待機時間内における自車両の補機の駆動とに要するエネルギ消費量を設定する。上限値算出部46は、バッテリ10のエネルギ残量と、エネルギ消費量設定部45により設定されたエネルギ消費量とに基づいて、待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値を算出する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ源(10)に保存されたエネルギにより移動可能な移動体に適用される制御装置(40)であって、
前記移動体がエネルギ補充場所まで移動可能であるか否かを判定する判定部と、
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、当該エネルギ補充場所よりも近い位置を前記移動体の待機場所として設定する待機場所設定部と、
前記移動体が前記待機場所まで移動しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する待機時間設定部と、
前記待機場所までの前記移動体の移動と、前記待機時間内における前記移動体の補機の駆動とに要するエネルギ消費量を設定するエネルギ消費量設定部と、
前記エネルギ源のエネルギ残量と、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記エネルギ消費量とに基づいて、前記待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値を算出する上限値算出部と、
を備える移動体の制御装置。
【請求項2】
前記移動体は、前記補機として複数の補機を有しており、
前記エネルギ消費量設定部は、前記待機場所までの前記移動体の移動と、前記待機時間内における前記各補機の駆動とを含む各機能について、個別に前記エネルギ消費量を設定するとともに優先順位を設定し、
前記上限値算出部は、前記エネルギ源のエネルギ残量を、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記各機能のエネルギ消費量と前記優先順位とに基づいて配分し、当該機能ごとに前記エネルギ消費上限値を算出する、請求項1に記載の移動体の制御装置。
【請求項3】
前記移動体は、前記補機として空調機器(32a)を含む複数の機器を有しており、
前記エネルギ消費量設定部は、前記複数の補機のうち前記空調機器を最優先として前記優先順位を設定する、請求項2に記載の移動体の制御装置。
【請求項4】
前記上限値算出部は、
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、その判定の時点の前記エネルギ残量を、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記各機能のエネルギ消費量と前記優先順位とに基づいて配分し、当該機能ごとに前記エネルギ消費上限値を算出する一方、
前記移動体が前記待機場所に到達した場合に、その時点の前記エネルギ残量を、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記各機能のエネルギ消費量と前記優先順位とに基づいて再び配分し、当該機能ごとに前記エネルギ消費上限値を算出する、請求項2又は3に記載の移動体の制御装置。
【請求項5】
前記上限値算出部は、前記移動体が前記待機場所に到達した場合において、エネルギ供給対象とする前記補機の数を、前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された時にエネルギ供給対象とした前記補機の数よりも増やすことを許容する、請求項4に記載の移動体の制御装置。
【請求項6】
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、外部装置(52)に対して救助要請を送信する送信部を備え、
前記待機時間設定部は、前記救助要請の送信後に前記外部装置から受信した救助情報に基づいて、前記待機時間を設定する、請求項1に記載の移動体の制御装置。
【請求項7】
前記待機時間設定部は、前記救助要請の送信後に前記外部装置から前記救助情報を受信した場合に、その救助情報に基づいて前記待機時間を設定し、前記救助情報を受信しない場合に、予め定めた所定時間を前記待機時間として設定するものであり、
前記エネルギ消費量設定部は、前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、前記移動体の移動と前記補機の駆動とについてエネルギ制限をしつつ前記エネルギ消費量を設定するものであり、かつ前記救助情報を受信しない場合には、前記救助情報を受信した場合に比べて、前記エネルギ制限の度合を大きくする、請求項6に記載の移動体の制御装置。
【請求項8】
エネルギ源(10)に保存されたエネルギにより移動可能な移動体に適用され、コンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記移動体がエネルギ補充場所まで移動可能であるか否かを判定する判定処理と、
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、当該エネルギ補充場所よりも近い位置を前記移動体の待機場所として設定する待機場所設定処理と、
前記移動体が前記待機場所まで移動しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する待機時間設定処理と、
前記待機場所までの前記移動体の移動と、前記待機時間内における前記移動体の補機の駆動とに要するエネルギ消費量を設定するエネルギ消費量設定処理と、
前記エネルギ源のエネルギ残量と、前記エネルギ消費量設定処理により設定された前記エネルギ消費量とに基づいて、前記待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値を算出する上限値算出処理と、
を備えるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、走行用モータを有する電気自動車である車両では、バッテリからの給電により走行用モータが駆動され、車両が走行する。また、電気自動車では、バッテリにおける走行エネルギが不足してエネルギ補充施設までの走行が不可能になる場合に、所定の待機場所で救助車両を待つことが考えられる。例えば特許文献1に記載の技術では、自車両がエネルギ補充施設まで走行可能でないと判定された場合において、自車両が補機の使用を継続した場合に補機が使用不可能となる時点と救助車両が到着する時点との差が最小となる場所を、救助車両を待つための推奨待機場所として自車両の乗員に報知するようにしている。これにより、補機の使用が不可となる時間を最短時間とし、乗員の快適性低下を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-150045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術は、補機の使用が不可となってから救助車両の到着までの時間を最短とするものであるが、自車両が待機場所に到達した後の補機の使用を想定したものでないため、自車両が待機場所に到達した後において乗員の快適性が確保できなくなることが懸念される。例えば、低温又は高温の環境下において、自車両内で待機する乗員の快適性が低下することが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動体の待機場所での待機中において乗員の快適性の低下を抑制することを可能とする移動体の制御装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、本開示は、
エネルギ源に保存されたエネルギにより移動可能な移動体に適用される制御装置であって、
前記移動体がエネルギ補充場所まで移動可能であるか否かを判定する判定部と、
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、当該エネルギ補充場所よりも近い位置を前記移動体の待機場所として設定する待機場所設定部と、
前記移動体が前記待機場所まで移動しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する待機時間設定部と、
前記待機場所までの前記移動体の移動と、前記待機時間内における前記移動体の補機の駆動とに要するエネルギ消費量を設定するエネルギ消費量設定部と、
前記エネルギ源のエネルギ残量と、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記エネルギ消費量とに基づいて、前記待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値を算出する上限値算出部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、移動体がエネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、待機場所までの移動体の移動と、待機時間内における移動体の補機の駆動とに要するエネルギ消費量が設定される。つまり、移動体が待機場所に到達した後のエネルギ消費分を見込んでエネルギ消費量が設定される。そして、そのエネルギ消費量と、エネルギ源のエネルギ残量とに基づいて、待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値が算出される。この場合、移動体が待機場所に到達した後を含む期間で、エネルギ消費を制限しつつ補機の継続的な駆動が可能となる。その結果、移動体の待機場所での待機中において乗員の快適性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両システムの概略構成図。
図2】ECUの機能を説明するための機能ブロック図。
図3】優先順位に応じたエネルギ配分を説明するための図。
図4】車両のエネルギ制限制御の処理手順を示すフローチャート。
図5】機能ごとのエネルギ配分量を決定する処理を示すフローチャート。
図6】エネルギ制限制御の処理をより具体的に説明するためのタイムチャート。
図7】別例におけるエネルギ制限制御の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態における車両システムを説明する。本実施形態では、移動体として、電気エネルギにより走行する電気自動車(以下、自車両という)を想定し、その自車両に搭載される車両システムを、図面を参照しつつ説明する。図1は、車両システムの概略構成図である。
【0010】
図1において、車両システムは、バッテリ10と、バッテリ10の状態を監視するバッテリ監視装置としてのBMU20(Battery Management Unit)と、バッテリ10から給電可能なモータ31及び補機類32と、これらモータ31及び補機類32の駆動を制御するECU40(Electronic Control Unit)とを備えている。バッテリ10は、充放電可能な蓄電池(二次電池)であり、例えばリチウムイオン蓄電池等からなる。バッテリ10には、例えば百[V]以上となる電圧で電気エネルギが蓄電可能となっている。バッテリ10が、電気エネルギを保存するエネルギ源に相当する。
【0011】
BMU20は、バッテリ10の端子電圧やバッテリ10に流れる電流を取得し、それら電圧や電流等の情報に基づいて、バッテリ10の蓄電状態(SOC:State Of Charge)及び劣化状態(SOH:State Of Health)などを適宜算出する。BMU20は、例えば、バッテリ10の開放電圧であるOCV(Open Circuit Voltage)と、通電状態での充放電電流の積算値とに基づいて、バッテリ10のSOCを算出する。BMU20は、ECU40との間で相互に通信可能となっている。
【0012】
モータ31は、自車両の走行駆動源として設けられており、その駆動により自車両が走行する。補機類32には、車室内の冷暖房を行う空調機器32aや、その他複数の補機32b,32cが含まれている。補機32b,32cは、ディスプレイオーディオやランプ類、ワイパ装置等である。
【0013】
モータ31は、車載主機であり、図示しない駆動輪との間で動力伝達可能となっている。モータ31は、力行機能と回生発電機能とを有する。モータ31には、複数のスイッチング素子を有するインバータ31aが設けられており、インバータ31aにより、モータ31の多相のステータコイルに流れる電流が調整される。スイッチング素子は、IGBTやMOSFET等の半導体スイッチング素子である。モータ制御装置31bは、モータ31における回転角度、電流等の検出情報や、ECU40からの駆動要求に基づいて、インバータ31aのスイッチング制御を実施する。これにより、モータ31が駆動されて自車両が走行する。なお、インバータ31aやモータ制御装置31bは、モータ31に一体に設けられていてもよいし、別体に設けられていてもよい。
【0014】
詳細は省略するが、空調機器32aには、車室内の冷房及び暖房を制御する空調制御装置が設けられている。また、その他の各補機32b,32cにも同様に、それぞれ制御装置が設けられているとよい。
【0015】
ECU40は、自車両において電気エネルギを管理する車両制御装置である。ECU40は、モータ31や補機類32との間での情報の入出力が可能となっている。ECU40は、CPUやROM、RAM等を含むマイクロコンピュータを備えて構成されており、ROM内に記憶されているプログラムを実行することで、自車両においてモータ31や補機類32に対するエネルギ供給に関する制御を実施する。特に、ECU40は、バッテリ10のエネルギ残量に基づいてバッテリ10の出力上限となるエネルギ量(例えば上限出力電力)を設定する処理や、モータ31及び補機類32に対して電気エネルギを配分する処理等を実行する。
【0016】
ECU40には、BMU20からバッテリ10に関する情報が入力される他、地図情報や各種施設の情報を案内するナビゲーション装置51からナビゲーション情報が入力される。また、ECU40では、無線通信により外部サーバ52からの情報取得が可能になっている。外部サーバ52は、例えば、気温や湿度、降雨、降雪といった気候情報を送信する装置や、故障車両等の救助を行うロードサービスやディーラ等に設けられた装置である。自車両に故障等が発生した場合には、外部サーバ52に対して救助要請が送信され、その応答として、外部サーバ52から救助の可否や救助の到着時刻等の情報が返信される。
【0017】
ところで、自車両の走行時において、バッテリ10のエネルギ残量が減少すると、次の充電施設(エネルギ補充場所)までの走行が不可能となり、自車両を待機場所で待機させた状態で救助を待つことが考えられる。この場合、例えば低温又は高温の環境下において、自車両の車室内で待機する乗員にとって不快な状況になることが懸念される。また、自車両において、ディスプレイオーディオ等の補機が使用不可になると、待機中に例えば幼少の子供が退屈してしまうことが懸念される。
【0018】
そこで本実施形態では、自車両が充電施設まで走行可能でないと判定された場合に、その充電施設よりも近い位置を自車両の待機場所とし、待機場所までの自車両の走行(モータ31の駆動)や待機中の補機の駆動に要するエネルギ消費量を算出するとともに、そのエネルギ消費量とバッテリ10のエネルギ残量とに基づいて、待機時間が経過するまでの期間内の単位時間ごとのエネルギ消費上限値を算出するようにしている。そしてこれにより、救助待ちとなる待機中において補機を継続的に使用可能とし、乗員の快適性の低下を抑制できるようにしている。以下に、自車両においてエネルギ不足が生じる場合におけるエネルギ制限処理について詳しく説明する。
【0019】
図2は、ECU40における制御機能を説明するための機能ブロック図である。図2には、ECU40において自車両のエネルギ管理に関わる機能が示されている。
【0020】
ECU40は、エネルギ残量取得部41と、到達可否判定部42と、待機場所設定部43と、待機時間設定部44と、エネルギ消費量設定部45と、上限値算出部46とを備えている。
【0021】
エネルギ残量取得部41は、BMU20から、バッテリ10のエネルギ残量としてバッテリ10のSOCを取得する。
【0022】
到達可否判定部42は、自車両から最寄りとなる充電施設まで自車両が走行により到達可能であるか否か判定する。具体的には、到達可否判定部42は、ナビゲーション装置51からの情報に基づいて自車両周辺の充電施設を検索するとともに、自車両周辺の充電施設のうち最も近くに位置する充電施設までの距離を算出する。そして、バッテリ10のエネルギ残量であるSOCと、最寄りの充電施設までの距離とに基づいて、自車両が充電施設まで走行可能であるか否かを判定する。この場合、バッテリ10のSOCが不足していれば、自車両が充電施設まで走行できない旨を判定する。
【0023】
なお、到達可否判定部42は、自車両から最寄りの充電施設までの走行に要する電気エネルギ量を算出し、その電気エネルギ量とバッテリ10のSOCとに基づいて、自車両が充電施設まで走行可能であるか否かを判定する構成であってもよい。この場合、モータ31の駆動による必要エネルギ量だけでなく、現時点で駆動状態となっている電気負荷(空調機器及び補機)の駆動による必要エネルギ量を合わせて、充電施設までの走行に要する電気エネルギ量が算出されてもよい。
【0024】
待機場所設定部43は、自車両が充電施設まで走行可能でないと判定された場合に、充電施設よりも近い位置を自車両の待機場所として設定する。具体的には、待機場所設定部43は、外部サーバ52から救助情報を取得し、その救助情報に基づいて、自車両が待機する待機場所を設定する。
【0025】
待機時間設定部44は、自車両が待機場所まで走行しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する。具体的には、待機時間設定部44は、外部サーバ52から救助情報を取得し、その救助情報に基づいて、救助が到着するまでの待機時間を設定する。待機時間には、自車両が待機場所に到達するまでの時間(移動時間)と、待機場所で救助を待つ時間とを合わせた時間である。
【0026】
エネルギ消費量設定部45は、待機場所設定部43により設定された待機場所までの自車両の走行と、待機時間設定部44により設定された待機時間内での自車両の補機の駆動とに要するエネルギ消費量を設定する。例えば、エネルギ消費量設定部45は、現時点から待機時間が経過するまでの期間において、車両走行のためのモータ31の駆動と、現時点で駆動中の補機類32の駆動とを継続的に実施するために必要となるエネルギ消費量を設定する。つまり、エネルギ消費量設定部45では、電力供給を必要とする車両機能に応じて、待機時間内で消費されるエネルギ量が設定される。なお、空調機器32aについては、現時点での駆動/非駆動に関係なく、その駆動エネルギがエネルギ消費量に含まれているとよい。
【0027】
エネルギ消費量設定部45は、例えばナビゲーション装置51から待機場所までの走行経路情報を取得し、その走行経路情報に基づいて、車両走行のためのモータ駆動に要するエネルギ消費量を設定するようにしてもよい。走行経路情報には、例えば車速、渋滞情報、道路の勾配情報などが含まれる。
【0028】
本実施形態では、エネルギ消費量設定部45は、待機場所までの自車両の走行と、救助までの各補機の駆動とを含む各機能について、個別にエネルギ消費量を設定するとともに優先順位を設定する。例えば、図3に示すように、電力供給の対象となる機能が選出され、その各機能について個別にエネルギ消費量が設定されるとともに優先順位が付与される。図3では、一例として、空調機能が優先順位1(最優先)とされるとともに、それに続いてモータ駆動が優先順位2、補機機能1が優先順位3、補機機能2が優先順位4などとされている。また、それら機能ごとにエネルギ消費量Xが定められている。例えば、補機機能1はディスプレイオーディオ機能であり、補機機能2はランプ機能である。
【0029】
補機類32のうち空調機器32aは最も高い優先順位が設定されるとよいが、自車両が充電施設まで到達できないと判定された時点で空調機能が用いられているか否かにより、空調機能の優先順位を決定することも可能である。また、外気温や湿度、天候に応じて、空調機能の優先順位を決定することも可能である。
【0030】
各機能のエネルギ消費量Xは、待機場所までの距離と待機時間とに基づいて設定されるとよい。この場合、待機時間までの距離が長いほど、エネルギ消費量Xが大きい値として算出される。また、待機時間が長いほど、エネルギ消費量Xが大きい値として算出される。ただし、モータ駆動機能については、待機場所に到着した後は不要であるため、モータ駆動機能のエネルギ消費量Xは、待機場所までの距離と待機時間とのうち待機場所までの距離のみに基づいて設定されるとよい。自車両の移動のためのモータ駆動機能に要するエネルギ消費量Xは、自車両が待機場所に到達するまでに要するエネルギの総量として設定され、空調機能を含め補機類32の駆動に要するエネルギ消費量Xは、自車両が待機場所に到達するまでの期間と、待機場所での救助待ちの期間とを合わせた期間に要するエネルギの総量として設定される。
【0031】
上限値算出部46は、バッテリ10のSOC(エネルギ残量)と、エネルギ消費量設定部45により設定されたエネルギ消費量とに基づいて、待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値Zを算出する。詳しくは、上限値算出部46は、バッテリ10のエネルギ残量を、エネルギ消費量設定部45により設定された各機能のエネルギ消費量Xと優先順位とに基づいて配分し、機能ごとにエネルギ配分量Yを算出する。そして、各機能のエネルギ配分量Yを待機時間で除算することにより、機能ごとにエネルギ消費上限値Zを算出する。エネルギ消費上限値Zは、単位時間当たりで利用可能な最大エネルギ量である。例えば道路の法定速度や渋滞情報、道路の勾配情報などの走行経路情報により、エネルギ消費上限値Zを補正することも可能である。なお、自車両の移動のためのモータ駆動機能については、モータ駆動機能のエネルギ配分量Yを、待機時間のうち自車両の移動時間で除算することによりエネルギ消費上限値Zを算出するとよい。
【0032】
具体的には、バッテリ10のエネルギ残量を、図3に示すように機能ごとに配分することが考えられる。なお、図3では、エネルギの大きさを数字により示すが、これはエネルギ量の度合を示すものであり、例えばSOCに対応する値である。また、バッテリ10のエネルギ残量を配分可能エネルギ量Eとし、具体的には「20」としている。
【0033】
図3では、
優先順位1の空調機能のエネルギ消費量Xを「5」、
優先順位2のモータ駆動機能のエネルギ消費量Xを「10」、
優先順位3の補機機能1のエネルギ消費量Xを「3」、
優先順位4の補機機能2のエネルギ消費量Xを「3」としている。これら各機能のエネルギ消費量Xは、待機場所までの距離や待機時間に応じて可変に設定されたものであるとよい。各機能のエネルギ消費量Xは、待機中のエネルギ枯渇を抑制すべく、通常時(すなわち、充電施設まで到達不可と判定されていない時)よりもエネルギ消費が制限されたエネルギ量として設定されるとよい。例えば、空調機能のエネルギ消費量Xは、外気温や湿度、天候といった環境条件に基づいて設定されるとよい。
【0034】
この場合、優先順位1の空調機能については、配分可能エネルギ量Eからエネルギ消費量Xが減算されると「E-X>0」になることから、エネルギ配分が可能であり、空調機能のエネルギ配分量Yが「5」、すなわちエネルギ消費量Xと同じ値となっている。また、優先順位2,3のモータ駆動機能、補機機能1についても、同様に「E-X>0」になることからエネルギ配分が可能であり、エネルギ配分量Yがそれぞれ「10」、「3」、すなわちエネルギ消費量Xと同じ値となっている。これに対し、優先順位4の補機機能2は、「E-X<0」になることからエネルギ配分が不可であり、エネルギ配分量Yが「0」となっている。優先順位4以降も同様である。図3の事例では、優先順位1~3の各機能について、エネルギ配分量Yが0以外で算出され、そのエネルギ配分量Yにより単位時間当たりのエネルギ消費上限値Zが算出される。
【0035】
上限値算出部46により算出されたエネルギ消費上限値Zは、モータ31や空調機器32a、各補機32bに送信される。これにより、自車両が待機場所まで走行しかつ待機場所で待機する期間において、バッテリ10の電気エネルギの消費が制限されつつモータ31や補機類32の駆動が継続的に行われる。
【0036】
図2に示す各機能は、ECU40が実行する下記フローチャートの処理により実現されるとよい。図4は、車両のエネルギ制限制御の処理手順を示すフローチャートであり、本処理はECU40により所定周期で繰り返し実行される。
【0037】
図4において、ステップS11では、今現在のバッテリ10のエネルギ残量を取得する。具体的には、ECU40は、BMU20からバッテリ10のSOCを取得する。その後、ステップS12では、ナビゲーション装置51の地図情報に基づいて自車両から最寄りの充電施設を検索するとともに、その充電施設までの距離を算出する。
【0038】
ステップS13では、ステップS11で取得したSOCと、ステップS12で算出した充電施設までの距離とに基づいて、自車両が、自車両周辺の充電施設のうち最も近い充電施設まで到達できるか否かを判定する。自車両が充電施設まで到達可能であると判定されれば、そのまま本処理を一旦終了し、自車両が充電施設まで到達可能でないと判定されれば、ステップS14に進む。
【0039】
ステップS14では、自車両の乗員に対して、バッテリ10のエネルギ不足により救助待ちの待機を行うべき状況である旨を通知する。その通知は、車室内のディスプレイの表示や音声により行われるとよい。
【0040】
その後、ステップS15では、外部サーバ52に対して救助要請を送信し、続くステップS16では、救助要請の送信後に外部サーバ52から救助情報を受信したか否かを判定する。この場合、外部サーバ52から救助情報を受信していなければ、ステップS17に進み、救助要請から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、例えば数分(1~3分程度)の時間であるとよい。
【0041】
そして、救助要請から所定時間が経過する前に外部サーバ52から救助情報を受信した場合に、ステップS18に進む。ステップS18では、外部サーバ52からの救助情報に基づいて、自車両が待機する待機場所を設定する。この場合、救助情報として推奨待機場所が指定されていれば、ECU40は、その場所を待機場所として設定する。救助情報として複数の推奨待機場所が指定されている場合には、ECU40が、交通状況や乗員の希望等に応じて、複数の推奨待機場所の中から待機場所を選択してもよい。
【0042】
なお、ステップS15に送信する救助要請には、ECU40側(自車両側)で希望する希望待機場所が含まれるとともに、外部サーバ52側から受信する救助情報に、希望待機場所を待機場所にしてよいか否かの返答が含まれている構成であってもよい。
【0043】
その後、ステップS19では、外部サーバ52からの救助情報に基づいて、自車両が待機場所に走行しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する。この場合、外部サーバ52からの救助情報に救助到着時刻が含まれていれば、その救助到着時刻に基づいて、待機時間を設定する。すなわち、現時点の時刻から救助到着時刻までの時間を待機時間とする。また、ECU40が、救助情報に含まれる待機場所と現在位置とに基づいて、待機時間を設定することも可能である。
【0044】
待機場所及び待機時間が設定された場合には、それらの情報が車室内のディスプレイの表示や音声により乗員に対して通知されるとよい。
【0045】
その後、ステップS20では、現時点から待機時間が経過するまでの期間で実行される各機能についてエネルギ配分量Yを決定する。このとき、車両走行のためのモータ31の駆動と、救助待ち中に使用される補機類32の駆動とに要するエネルギ消費量Xが設定されるとともに、そのエネルギ消費量Xとバッテリ10のエネルギ残量とに基づいて、電力供給対象となる各機能へのエネルギ配分量Yが決定される。ステップS20の詳細については後述する。
【0046】
その後、ステップS21では、各機能のエネルギ配分量Yに基づいて、機能ごとに単位時間当たりのエネルギ消費上限値Zを算出する。このとき、各機能のエネルギ配分量Yが待機時間で除算されることにより、機能ごとにエネルギ消費上限値Zが算出される。また、ステップS22では、各機能のエネルギ消費上限値Zを、モータ31及び補機類32に出力する。
【0047】
また、救助要請の送信後に外部サーバ52から救助情報を受信しないまま所定時間が経過した場合(ステップS16がNO、かつステップS17がYESの場合)には、ステップS23に進む。ステップS23では、ナビゲーション装置51の地図情報を用いて、自車両が待機する待機場所を設定する。この場合、例えばECU40が自車両周辺の待機場所を指定し、ディスプレイ表示や音声により自車両を待機場所へ誘導するとよい。又は、自車両から所定距離以内である周辺領域で待機可能な複数の候補位置をディスプレイに表示し、その複数の候補位置の中から乗員に待機場所を選択させるようにしてもよい。
【0048】
その後、ステップS24では、自車両が待機場所に走行しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する。この場合、救助が到着する時刻は不明であるため、予め定めた時間が待機時間として設定されるとよい。なお、ステップS23で設定した待機場所と、救助支援者のいる場所との距離に基づいて、待機時間を設定することも可能である。例えば、救助支援者としてディーラやロードサービスの従業員を想定する場合には、待機場所とディーラやロードサービスとの距離に基づいて待機時間を設定するとよい。
【0049】
待機場所及び待機時間の設定後は、ステップS20に進む。ステップS20~S22では、既述のとおり現時点から待機時間が経過するまでの期間で実行される各機能についてエネルギ配分量Yを決定する。また、各機能のエネルギ配分量Yに基づいて、機能ごとに単位時間当たりのエネルギ消費上限値Zを算出し、そのエネルギ消費上限値Zを、モータ31及び補機類32に出力する。これにより、エネルギ消費上限値Zを超えない範囲内でモータ31や各補機に対して電力供給が行われ、これらモータ31や各補機が駆動される。
【0050】
図5は、機能ごとのエネルギ配分量を決定する処理を示すフローチャートである。本処理は、図4のステップS20において実行される。
【0051】
図5において、ステップS31では、電力供給の対象となるN個の機能を選出するとともに、その選出した各機能について個別にエネルギ消費量Xと優先順位とを設定する。各機能のエネルギ消費量Xは、通常時(すなわち、充電施設まで到達不可と判定されていない時)よりもエネルギ消費が制限されたエネルギ量として設定される。このとき、外部サーバ52から受信した救助情報に基づいて待機時間が設定された場合と、外部サーバ52から救助情報を受信しておらず予め定めた所定時間が待機時間として設定された場合とで、エネルギ消費量Xにおけるエネルギ制限の度合を相違させるとよい。つまり、図4においてステップS19で待機時間が設定された場合と、ステップS24で待機時間が設定された場合とでエネルギ制限の度合を相違させるとよい。具体的には、救助情報を受信していない場合のエネルギ消費量Xを、救助情報を受信した場合に比べて、エネルギ制限の度合を大きくするとよい。
【0052】
ステップS32では、ステップS31で選出した各機能のエネルギ配分量Yを全て0にする。ステップS33では、優先順位を示すmを1とし、配分可能エネルギ量Eを、現時点のバッテリ10のエネルギ残量(SOC)とする。
【0053】
その後、ステップS34では、優先順位mの機能についてエネルギ消費量X(m)を取得し、続くステップS35では、配分可能エネルギ量Eからエネルギ消費量X(m)を減算した値「E-X(m)」を、残りの配分可能エネルギ量Eとする。
【0054】
ステップS36では、ステップS35で算出した配分可能エネルギ量Eが0よりも大きいか否かを判定する。この判定処理は、優先順位mまでの各機能で必要になるエネルギ消費量Xを配分可能であるか否かを判定するものであり、ステップS35が否定されればステップS37に進み、肯定されればステップS38に進む。
【0055】
ステップS37では、その時点で残っている配分可能エネルギ量Eを、優先順位mの機能のエネルギ消費量X(m)とし、その後、ステップS40に進む。
【0056】
一方、ステップS38では、m=Nであるか否かを判定する。すなわち、ステップS31で選出した全N個の機能についてエネルギ配分が完了したか否かを判定する。そして、m<Nであれば、ステップS39に進み、m=Nであれば、ステップS40に進む。ステップS39では、mを1インクリメントし、その後、ステップS34に戻る。そして、ステップS34以降の処理を再び実行する。その後は、ステップS36で配分可能エネルギ量Eが0以下であると判定されるか、又はステップS38でm=Nであると判定されるまで、mが1ずつ加算され、m個分の各機能のエネルギ消費量X(m)が順に算出される。
【0057】
ステップS40では、ステップS35で算出された各機能のエネルギ消費量X(m)に基づいて、機能ごとにエネルギ配分量Yを決定する。このとき、m個分の各機能についてエネルギ消費量Xがエネルギ配分量Yとして算出される。
【0058】
ここで、ステップS36が否定された後、ステップS37を介してステップS40に移行した場合には、ステップS31で選出された全N個の機能のうち最上位から優先順位mまでの機能についてエネルギ配分が行われる。ただし、ステップS36が否定された場合には、優先順位mの機能についてエネルギ消費量X(m)の一部のみエネルギ配分が可能となる。そのため、ステップS36が否定された時の優先順位mの機能についてはエネルギ配分を行わないようしてもよい。この場合、全N個の機能のうち最上位から優先順位m-1までの機能についてエネルギ配分が行われる。
【0059】
また、ステップS38が否定されてステップS40に移行した場合には、ステップS31で選出された全N個の機能についてエネルギ配分が行われる。
【0060】
図6は、車両のエネルギ制限制御の処理をより具体的に説明するためのタイムチャートである。図6では、タイミングt1が、自車両が最寄りの充電施設まで到達できないと判定されたタイミングであり、タイミングt2が、自車両が待機場所に到着したタイミングであり、タイミングt3が、待機場所に救助が到着したタイミングである。タイミングt1~t3の時間が待機時間に相当する。また、図6では、自車両の機能として、4つの機能、すなわちモータ駆動機能と空調機能と2つの補機機能とを例示しており、これら各機能のエネルギ消費上限値Zを、それぞれZ1,Z2,Z3,Z4としている。
【0061】
図6において、タイミングt1以前は、バッテリ10のエネルギ残量が、自車両が最寄りの充電施設に到達するまでに要する必要エネルギよりも多い。そのため、自車両が最寄りの充電施設まで到達可能であると判定されている。
【0062】
これに対し、タイミングt1では、エネルギ残量の低下に伴い、自車両が最寄りの充電施設まで到達不可になったと判定される。タイミングt1では、充電施設よりも近い位置に待機場所が設定されるとともに、救助を待つのに要する時間が待機時間として設定される。このとき、自車両からの救助要請の送信後に外部サーバ52から救助情報が受信された場合には、その救助情報に基づいて待機場所と待機時間とが設定される。また、救助情報が受信されない場合には、自車両側で定めた待機場所と待機時間とが設定される。
【0063】
また、タイミングt1では、その時点のバッテリ10のエネルギ残量と各機能の優先順位とに基づいて、自車両において実現すべき機能が抽出される。そして、各機能のエネルギ配分により、機能ごとにエネルギ消費上限値Zが設定される。
【0064】
図6では、タイミングt1以降において、図示の4つの機能(モータ駆動機能、空調機能、2つの補機機能)のうち、モータ駆動機能と空調機能と1つの補機機能とを継続的に駆動可能にすべく、これら3つの各機能に対するエネルギ配分が行われとともに、各機能のエネルギ配分量によりエネルギ消費上限値Z1~Z3が設定される。なお、図示の4つの機能のうち1つ(図の補機2)についてはエネルギ配分が行われず、エネルギ消費上限値Z4が0になっている。
【0065】
その後、タイミングt2では、自車両が待機場所に到達する。タイミングt2以降、図示の4つの機能のうち、空調機能と1つの補機機能とを継続的に駆動可能にすべく、これら各機能に対するエネルギ配分が行われるとともに、各機能のエネルギ配分量によりエネルギ消費上限値Z2,Z3が設定される。これにより、待機場所に救助が到着するタイミングt3までの期間において、所望とする補機機能の継続的な使用が可能になっている。
【0066】
なお、タイミングt3以降においてもエネルギ消費上限値Z2,Z3が設定されたままとしてもよい。これにより、バッテリエネルギが残っていれば、予定の到着時刻に救助が到着しない場合にも補機駆動を継続することができる。タイミングt3以降においては、空調機能のみを使用可能にしてもよい。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0068】
自車両が充電施設まで移動可能でないと判定された場合に、待機場所までの自車両の移動と、待機時間内における自車両の補機の駆動とに要するエネルギ消費量Xが設定される。つまり、自車両が待機場所に到達した後のエネルギ消費分を見込んでエネルギ消費量Xが設定される。そして、そのエネルギ消費量Xと、バッテリ10のエネルギ残量とに基づいて、待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値Zが算出される。この場合、自車両が待機場所に到達した後を含む期間で、エネルギ消費を制限しつつ補機の継続的な駆動が可能となる。その結果、自車両の待機場所での待機中において乗員の快適性の低下を抑制することが可能となる。
【0069】
自車両が充電施設まで移動可能でないと判定された場合に、待機場所までの自車両の走行と、救助までの各補機の駆動とを含む各機能について、個別にエネルギ消費量Xと優先順位とを設定するとともに、バッテリ10のエネルギ残量を、機能ごとのエネルギ消費量Xと優先順位とに基づいて配分し、機能ごとにエネルギ消費上限値Zを算出するようにした。これにより、自車両の待機中において電力供給の優先度に応じた適正なエネルギ管理を実施することができる。
【0070】
自車両の待機中に、空調機器32aの駆動を最優先にして補機駆動を行わせるようにした。これにより、低温又は高温の環境下において自車両内で待機する乗員の体調が損なわれるといった不都合を抑制することができる。
【0071】
自車両が充電施設まで走行可能でないと判定された場合において、外部サーバ52に対して救助要請を送信し、その後、外部サーバ52から受信した救助情報に基づいて、待機時間を設定するようにした。この場合、救助が到達する時刻等を把握できることから、待機時間を正しく設定でき、ひいてはバッテリ10のエネルギ消費を、過剰に制限することなく適正に用いることが可能となる。
【0072】
自車両が充電施設まで到達可能でないと判定された場合に、自車両の移動と補機類の駆動とについてエネルギ制限をしつつエネルギ消費量Xを設定するものとし、さらに外部サーバ52から救助情報を受信しない場合に、外部サーバ52から救助情報を受信した場合に比べて、エネルギ制限の度合を大きくするようにした。これにより、外部サーバ52から救助情報が受信できないために救助の到着時刻を正しく把握できず、救助が到着するまでの時間が長引くおそれのある場合にも、補機類の駆動が意図せず途切れてしまうことを抑制することができる。
【0073】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0074】
・エネルギ制限制御の処理として、ECU40が図7の処理を実行してもよい。図7において、ステップS51では、到達不可フラグが0であるか否かを判定する。到達不可フラグは、自車両が充電施設まで到達不可であると判定された場合に1がセットされるフラグであり、0であることは、現時点よりも前に自車両が充電施設まで到達不可であると判定されていないことを意味する。到達不可フラグが0であればステップS52に進み、到達不可フラグが1であればステップS56に進む。
【0075】
ステップS52では、自車両が充電施設まで到達可能であるか否かを判定する。このステップS52の処理は、図4のステップS11~S13と同じ処理であればよい。そして、ステップS52が肯定されるとステップS53に進む。
【0076】
ステップS53では、到達不可フラグに1をセットする。ステップS54では、現時点のエネルギ残量(バッテリ10のSOC)を、待機中(充電施設までの到達不可判定から待機時間終了までの期間)に実行する各機能のエネルギ消費量Xと優先順位とに基づいて配分し、当該機能ごとにエネルギ消費上限値Zを算出する。この処理は、図4のステップS20,S21と同じ処理であればよい。その後、ステップS55では、各機能のエネルギ消費上限値Zを、モータ31及び補機類32に出力する。
【0077】
また、ステップS56では、自車両が待機場所に到達したタイミングであるか否かを判定する。ステップS56が肯定されると、ステップS57に進み、現時点のエネルギ残量、すなわち自車両が待機場所に到達したタイミングでのエネルギ残量に基づいて、自車両において現時点以降に実行する機能を追加するか否かを判定する。そして、ステップS57が肯定されると、ステップS58に進み、自車両において現時点以降に実行する機能を追加する。この場合、自車両が充電施設まで移動可能でないと判定された時に設定された機能に比べて、エネルギ供給対象とする補機の数を増やすことが許容される。
【0078】
要するに、自車両が充電施設まで到達不可であると判定された後は、エネルギ消費上限値Zによりエネルギ制限が行われるため、場合によっては、自車両が待機場所に到達したタイミングにおいて、当初の想定よりもエネルギ残量に余裕が生じていることが考えられる。また、自車両が待機場所に到達すればモータ駆動が停止され、その分のエネルギ消費が減る。これらを鑑みると、自車両が待機場所に到達したタイミングでは、自車両で実行される補機機能を追加することが可能となっている。ステップS57,S58では、現時点のエネルギ残量と、現時点以降に実行される各機能のエネルギ消費量Xとに基づいて、当初の想定よりもエネルギ残量に余裕があるか否かが判定され、エネルギ残量に余裕があれば、機能追加(エネルギ供給対象とする補機の追加)が行われる。
【0079】
その後、ステップS59では、現時点のエネルギ残量を、待機中(待機場所到達から待機時間終了までの期間)に実行する各機能のエネルギ消費量Xと優先順位とに基づいて再び配分し、当該機能ごとにエネルギ消費上限値Zを算出する。その後、ステップS55では、各機能のエネルギ消費上限値Zを補機類32に出力する。なお、ステップS57,S58の処理は省略することも可能である。
【0080】
自車両が充電施設まで到達可能でないと判定され、機能ごとにエネルギ消費上限値Zによりエネルギ制限が行われる場合には、消費上限値以下でバッテリエネルギが消費されるため、自車両が待機場所に到着した時点では、当初の想定よりもエネルギ残量が多くなっていることがあると考えられる。これを考慮し、自車両が充電施設まで到達可能でないと判定された場合と、自車両が待機場所に到達した場合とにおいて、それら各時点のエネルギ残量を、各機能のエネルギ消費量Xと優先順位とに基づいて配分し、機能ごとにエネルギ消費上限値Zを算出するようにした。これにより、自車両が充電施設まで到達可能でないと判定されてから自車両が待機場所に到着するまでのエネルギ消費が想定よりも少なくなる場合において、待機場所での補機の使用が過剰に制限されることが抑制され、救助待ちの期間における快適性の向上を図ることができる。
【0081】
自車両が充電施設まで到達可能でないと判定されてから自車両が待機場所に到着するまでのエネルギ消費が想定よりも少なくなる場合には、当初の想定よりも待機場所でのエネルギ残量に余裕が生じる。この点、自車両が待機場所に到達した場合において、エネルギ供給対象とする補機の数を、自車両が充電施設まで移動可能でないと判定された時にエネルギ供給対象とした補機の数よりも増やすことを許容するようにした。これにより、救助待ちの期間における快適性の向上を図ることができる。
【0082】
・自車両において、ナビゲーション装置51等により行き先の目的地が設定されている場合には、その目的地に向かう走行経路上、又はその走行経路から近い位置で最寄りの充電施設が検索される構成であるとよい。また、自車両の待機場所は、目的地、又は、検索された充電施設に向かう走行経路上、又はその走行経路から近い位置に設定される構成であるとよい。
【0083】
・移動体としての車両は、電気自動車以外であってもよく、例えば、走行動力源として内燃機関とモータとを有するハイブリッド自動車や、走行動力源として内燃機関を有するエンジン車両であってもよい。ハイブリッド自動車では、バッテリに蓄えられた電気エネルギと燃料タンク内の燃料とが「エネルギ源に保存されたエネルギ」に相当し、エンジン車両では、燃料タンク内の燃料が「エネルギ源に保存されたエネルギ」に相当する。
【0084】
・移動体は、車両以外であってもよく、船舶や飛行体であってもよい。船舶や飛行体の場合にも、上記同様、移動体がエネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、待機場所や待機時間が設定されるとともに、機能ごとにエネルギ消費量やエネルギ消費上限値が適宜算出されるとよい。
【0085】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
エネルギ源(10)に保存されたエネルギにより移動可能な移動体に適用される制御装置(40)であって、
前記移動体がエネルギ補充場所まで移動可能であるか否かを判定する判定部と、
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、当該エネルギ補充場所よりも近い位置を前記移動体の待機場所として設定する待機場所設定部と、
前記移動体が前記待機場所まで移動しかつ救助を待つのに要する時間を待機時間として設定する待機時間設定部と、
前記待機場所までの前記移動体の移動と、前記待機時間内における前記移動体の補機の駆動とに要するエネルギ消費量を設定するエネルギ消費量設定部と、
前記エネルギ源のエネルギ残量と、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記エネルギ消費量とに基づいて、前記待機時間が経過するまでの期間内の単位時間当たりのエネルギ消費上限値を算出する上限値算出部と、
を備える移動体の制御装置。
[構成2]
前記移動体は、前記補機として複数の補機を有しており、
前記エネルギ消費量設定部は、前記待機場所までの前記移動体の移動と、前記待機時間内における前記各補機の駆動とを含む各機能について、個別に前記エネルギ消費量を設定するとともに優先順位を設定し、
前記上限値算出部は、前記エネルギ源のエネルギ残量を、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記各機能のエネルギ消費量と前記優先順位とに基づいて配分し、当該機能ごとに前記エネルギ消費上限値を算出する、構成1に記載の移動体の制御装置。
[構成3]
前記移動体は、前記補機として空調機器(32a)を含む複数の機器を有しており、
前記エネルギ消費量設定部は、前記複数の補機のうち前記空調機器を最優先として前記優先順位を設定する、構成2に記載の移動体の制御装置。
[構成4]
前記上限値算出部は、
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、その判定の時点の前記エネルギ残量を、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記各機能のエネルギ消費量と前記優先順位とに基づいて配分し、当該機能ごとに前記エネルギ消費上限値を算出する一方、
前記移動体が前記待機場所に到達した場合に、その時点の前記エネルギ残量を、前記エネルギ消費量設定部により設定された前記各機能のエネルギ消費量と前記優先順位とに基づいて再び配分し、当該機能ごとに前記エネルギ消費上限値を算出する、構成2又は3に記載の移動体の制御装置。
[構成5]
前記上限値算出部は、前記移動体が前記待機場所に到達した場合において、エネルギ供給対象とする前記補機の数を、前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された時にエネルギ供給対象とした前記補機の数よりも増やすことを許容する、構成4に記載の移動体の制御装置。
[構成6]
前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、外部装置(52)に対して救助要請を送信する送信部を備え、
前記待機時間設定部は、前記救助要請の送信後に前記外部装置から受信した救助情報に基づいて、前記待機時間を設定する、構成1~5のいずれかに記載の移動体の制御装置。
[構成7]
前記待機時間設定部は、前記救助要請の送信後に前記外部装置から前記救助情報を受信した場合に、その救助情報に基づいて前記待機時間を設定し、前記救助情報を受信しない場合に、予め定めた所定時間を前記待機時間として設定するものであり、
前記エネルギ消費量設定部は、前記移動体が前記エネルギ補充場所まで移動可能でないと判定された場合に、前記移動体の移動と前記補機の駆動とについてエネルギ制限をしつつ前記エネルギ消費量を設定するものであり、かつ前記救助情報を受信しない場合には、前記救助情報を受信した場合に比べて、前記エネルギ制限の度合を大きくする、構成6に記載の移動体の制御装置。
【符号の説明】
【0086】
10…バッテリ、40…ECU、42…到達可否判定部、43…待機場所設定部、44…待機時間設定部、45…エネルギ消費量設定部、46…上限値算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7