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  • 特開-光ファイバーケーブル設置構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176268
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光ファイバーケーブル設置構造
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20241212BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01B11/16 G
G02B6/46 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094706
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】十川 貴行
(72)【発明者】
【氏名】皆川 春奈
【テーマコード(参考)】
2F065
2H038
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB12
2F065DD16
2F065FF51
2F065LL02
2H038CA33
(57)【要約】
【課題】光ファイバーケーブルの断線と剥離とを抑制する光ファイバーケーブル設置構造を提供する。
【解決手段】光ファイバーケーブル設置構造1は、鉄筋3のひずみを計測するための光ファイバーケーブル5を鉄筋3に設置する構造であって、光ファイバーケーブル5を鉄筋3の平坦部7に接着する接着層11と、光ファイバーケーブル5及び接着層11を覆うカバー部材13と、カバー部材13を平坦部7に接着する接着層12と、を備え、カバー部材13及び接着層12は、光ファイバーケーブル5及び接着層11に非接触である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部材のひずみを計測するための光ファイバーケーブルを前記対象部材に設置する光ファイバーケーブル設置構造であって、
前記光ファイバーケーブルを前記対象部材の表面に接着する第1接着層と、
前記光ファイバーケーブル及び前記第1接着層を覆うカバー部材と、
前記カバー部材を前記対象部材の表面に接着する第2接着層と、を備え、
前記カバー部材及び前記第2接着層は、前記光ファイバーケーブル及び前記第1接着層に非接触である、光ファイバーケーブル設置構造。
【請求項2】
前記光ファイバーケーブル及び前記第1接着層を埋め込むように前記対象部材の表面と前記カバー部材との間の空間を充填する充填層を更に備え、
前記充填層は前記第1接着層に比べて弾性係数が小さい、請求項1に記載の光ファイバーケーブル設置構造。
【請求項3】
対象部材のひずみを計測するための光ファイバーケーブルを前記対象部材に設置する光ファイバーケーブル設置構造であって、
前記光ファイバーケーブルを前記対象部材の表面に接着する接着層と、
前記接着層よりも弾性係数が小さい材料からなり、前記対象部材の表面に貼着され、前記光ファイバーケーブル及び前記接着層を覆う被覆部材と、を備える、光ファイバーケーブル設置構造。
【請求項4】
前記対象部材は、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋である、請求項1~3の何れか1項に記載の光ファイバーケーブル設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーケーブル設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に光ファイバーケーブルを接着し、光ファイバーにパルス光を入射して生じる後方散乱光を検出することで、対象物の歪み分布や温度分布を計測することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-131024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバーケーブルを用いたこの種のひずみ測定では、光ファイバーケーブルが断線したり対象物から剥離したりすれば、所望のひずみ測定が不可能になってしまう。ここで、光ファイバーケーブルの断線を抑制するためには、光ファイバーケーブルの径を太くし接着層を厚くすることで、光ファイバーケーブル及び接着層の機械的強度を向上することが好ましい。その一方で、光ファイバーケーブルの径が太くなり接着層が厚くなるほど、光ファイバーケーブルと接着層とを合わせた部分の剛性が高くなる。これにより、対象物のひずみ発生時に対象物と接着層との界面に発生するずれせん断力が大きくなる。そうすると、接着層が対象物から剥離し易くなり、すなわち、光ファイバーケーブルが対象物から剥離し易くなる。このように、光ファイバーケーブルの断線抑制と剥離抑制とを両立することは難しい。そこで、本発明は、光ファイバーケーブルの断線と剥離とを抑制する光ファイバーケーブル設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の〔1〕~〔4〕に存する。
【0006】
〔1〕対象部材のひずみを計測するための光ファイバーケーブルを前記対象部材に設置する光ファイバーケーブル設置構造であって、前記光ファイバーケーブルを前記対象部材の表面に接着する第1接着層と、前記光ファイバーケーブル及び前記第1接着層を覆うカバー部材と、前記カバー部材を前記対象部材の表面に接着する第2接着層と、を備え、前記カバー部材及び前記第2接着層は、前記光ファイバーケーブル及び前記第1接着層に非接触である、光ファイバーケーブル設置構造。
【0007】
〔2〕前記光ファイバーケーブル及び前記第1接着層を埋め込むように前記対象部材の表面と前記カバー部材との間の空間を充填する充填層を更に備え、前記充填層は前記第1接着層に比べて弾性係数が小さい、〔1〕に記載の光ファイバーケーブル設置構造。
【0008】
〔3〕対象部材のひずみを計測するための光ファイバーケーブルを前記対象部材に設置する光ファイバーケーブル設置構造であって、前記光ファイバーケーブルを前記対象部材の表面に接着する接着層と、前記接着層よりも弾性係数が小さい材料からなり、前記対象部材の表面に貼着され、前記光ファイバーケーブル及び前記接着層を覆う被覆部材と、を備える、光ファイバーケーブル設置構造。
【0009】
〔4〕前記対象部材は、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋である、〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の光ファイバーケーブル設置構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光ファイバーケーブルの断線と剥離とを抑制する光ファイバーケーブル設置構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、第1実施形態の光ファイバーケーブル設置構造を示す分解斜視図であり、(b)は、その光ファイバーケーブル設置構造の断面図である。
図2】(a)は、第2実施形態の光ファイバーケーブル設置構造を示す断面図であり、(b)は、第3実施形態の光ファイバーケーブル設置構造を示す断面図である。
図3】本発明者らによる引張試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明に係る光ファイバーケーブル設置構造の第1実施形態について詳細に説明する。図1(a)は、本実施形態の光ファイバーケーブル設置構造1を示す分解斜視図であり、図1(b)は、光ファイバーケーブル設置構造1の断面図である。図1に示される光ファイバーケーブル設置構造1は、鉄筋3に対しひずみ計測用の光ファイバーケーブル5を接着し一体化させるものである。光ファイバーケーブル5は、例えば、直径0.9mmの光ファイバー心線である。
【0013】
鉄筋3の周面の一部として平坦な表面をなす平坦部7が鉄筋3の全長に亘って存在している。鉄筋3の長手方向に延在する光ファイバーケーブル5が、上記の平坦部7に対して、ひずみ計測の対象の領域全体に亘って、鉄筋3と一体化するように接着される。光ファイバーケーブル5が接着された鉄筋3は、鉄筋コンクリート構造物100の鉄筋としてコンクリート103に埋設される。例えば、本実施形態における鉄筋3は市販のネジ節鉄筋であり、当該ネジ節鉄筋が有する平坦部が上記の平坦部7として利用される。以下において、単に「長手方向」と言うときには平坦部7の長手方向(鉄筋3の長手方向)を意味し、単に「幅方向」と言うときには平坦部7の幅方向を意味する。
【0014】
光ファイバーケーブル5の端部は、上記鉄筋コンクリート構造物100の外部に引き出され、例えばOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)やBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)等のひずみ計測器(図示せず)に接続される。このひずみ計測器から光ファイバーケーブル5の光ファイバーにパルス光が入射されると、光ファイバーの長手方向の各部位からの散乱光がひずみ計測器に戻る。この散乱光がひずみ計測器で解析されることで、光ファイバーケーブル5の長手方向の各部位のひずみを知ることができ、当該光ファイバーケーブル5が一体的に接着された鉄筋3の長手方向の各部位のひずみを知ることができる。
【0015】
図1(b)に拡大して示されるように、光ファイバーケーブル設置構造1は、光ファイバーケーブル5と、光ファイバーケーブル5を平坦部7に接着する接着層11(第1接着層)と、光ファイバーケーブル5及び接着層11を覆うカバー部材13と、カバー部材13を平坦部7に接着する接着層12(第2接着層)と、を備えている。
【0016】
光ファイバーケーブル5を平坦部7に接着する工程では、例えば、平坦部7上に光ファイバーケーブル5が仮止めされ、この光ファイバーケーブル5上から当該光ファイバーケーブル5の両側にはみ出す幅で平坦部7に接着剤が塗布される。この接着剤が硬化することで接着層11が形成され、光ファイバーケーブル5及び接着層11は鉄筋3に対し一体的に接着される。上記接着剤が比較的薄く塗布されて、接着層11が比較的薄く形成されることが好ましい。
【0017】
カバー部材13は鉄筋3の概ね長手方向全体に亘って延在する部材であり、カバー部材13の断面形状は平坦部7から外方に膨らむ円弧をなしている。当該円弧の両端に対応する部分が、それぞれ、平坦部7に接着されることで、カバー部材13が平坦部7に固定されている。カバー部材13は、硬質の材料からなる部材であり、例えば、金属製であってもよく、樹脂製(例えば、塩化ビニル樹脂製)であってもよい。カバー部材13と平坦部7との間には断面半円状の空間15が形成され、当該空間15内に前述の光ファイバーケーブル5及び接着層11が存在している。
【0018】
カバー部材13を平坦部7に接着する工程では、例えば、既に平坦部7上に存在する光ファイバーケーブル5及び接着層11を幅方向に挟んで2箇所の位置に接着剤が塗布される。ここでは、接着層11に接触しないように接着層11との間に幅方向の隙間をあけて接着剤が塗布される。そして、カバー部材13が平坦部7上に載置され、塗布された上記接着剤によりカバー部材13の両端がそれぞれ平坦部7に接着される。この接着剤が硬化することで、接着層12が形成される。接着層12を形成する接着剤としては、例えば、接着層11を形成する接着剤と同じものが使用される。このようなカバー部材13の接着工程は、光ファイバーケーブル5用の接着層11が完全に硬化した後に実行されてもよい。
【0019】
カバー部材13は、光ファイバーケーブル5に対して非接触であり、接着層11に対しても非接触である。また、接着層12も、光ファイバーケーブル5に対して非接触であり、接着層11に対しても非接触である。カバー部材13は、前述の通り硬質の部材であり、カバー部材13の弾性係数は、鉄筋3の弾性係数よりも小さく、接着層11及び接着層12の弾性係数よりも大きい。また、接着層11及び接着層12の弾性係数は、光ファイバーケーブル5の弾性係数よりも大きい。すなわち、上記の各部位の弾性係数は、鉄筋3、カバー部材13、接着層11及び接着層12、光ファイバーケーブル5、の順に大きい。
【0020】
以上のような光ファイバーケーブル設置構造1による作用効果について説明する。鉄筋コンクリート構造物100の構築においては、鉄筋3に光ファイバーケーブル5が設置された状態で、この鉄筋3を埋め込むように鉄筋コンクリート構造物100のコンクリート103が打設される。コンクリート103はカバー部材13の外面に接する。このコンクリート打設の際には、例えば、作業者が鉄筋3に接触する、締固め用のバイブレータが鉄筋3に接触する、などして、鉄筋3に外力が加わる場合がある。これに対して、光ファイバーケーブル設置構造1では、光ファイバーケーブル5が硬質のカバー部材13により覆われ、カバー部材13と光ファイバーケーブル5とは非接触であり両者の間には隙間が存在する。従って、上記のような外力に起因して光ファイバーケーブル5に付与される力は小さく抑えられ、その結果、外力による光ファイバーケーブル5の断線が抑制される。
【0021】
上記のように、光ファイバーケーブル5がカバー部材13で覆われているので、接着層11を厚くして光ファイバーケーブル5を保護する必要性は低く、接着層11を薄くすることができる。すなわち、接着層11の厚さは、光ファイバーケーブル5を鉄筋3に対して一体化できるものであれば十分である。また、光ファイバーケーブル5を太くする必要性も低く、例えば、前述したような直径0.9mmの光ファイバー心線よりも細いものを採用することもできる。そうすると、光ファイバーケーブル5と接着層11とを合わせた部分の剛性は低く抑えられ、鉄筋3のひずみ発生時に鉄筋3と接着層11との界面に発生するずれせん断力は小さく抑えられる。
【0022】
また、カバー部材13は弾性係数が比較的大きい部材である。従って、仮に、光ファイバーケーブル5と、接着層11と、接着層12と、カバー部材13と、を合わせた部位が一体として挙動するとすれば、この一体の部位の剛性は比較的高くなる。その結果、鉄筋3のひずみ発生時には、鉄筋3と上記一体の部位との界面に発生するずれせん断力は比較的大きく、上記一体の部位が鉄筋3から剥離し易い。すなわち、光ファイバーケーブル5が鉄筋3から剥離し易い。これに対して、光ファイバーケーブル設置構造1では、カバー部材13は、光ファイバーケーブル5に対して非接触であり、接着層11に対しても非接触である。また、接着層12も、光ファイバーケーブル5に対して非接触であり、接着層11に対しても非接触である。従って、光ファイバーケーブル5及び接着層11は、カバー部材13及び接着層12とは別に挙動し、その結果、前述の通り、鉄筋3のひずみ発生時に鉄筋3と接着層11との界面に発生するずれせん断力は小さく抑えられる。
【0023】
上記のように、鉄筋3のひずみ発生時に鉄筋3と接着層11との界面に発生するずれせん断力は小さく抑えられる。よって、鉄筋3のひずみ発生時に接着層11が鉄筋3から剥離し難く、すなわち、光ファイバーケーブル5が鉄筋3から剥離し難い。その結果、例えば鉄筋3の降伏以降に発生し得る数万μの大ひずみの計測にも対応可能になり得る。以上のように、光ファイバーケーブル設置構造1によれば、光ファイバーケーブル5の断線と剥離とを抑制することができる。
【0024】
(第2実施形態)
続いて、光ファイバーケーブル設置構造の第2実施形態について説明する。図2(a)は本実施形態の光ファイバーケーブル設置構造51の断面図である。図に示されるように、光ファイバーケーブル設置構造51は、第1実施形態の光ファイバーケーブル設置構造1に加えて、充填層17を備えるものである。その他の点においては光ファイバーケーブル設置構造1と同様であるので、同一又は同等の構成要素に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
充填層17は、鉄筋3の平坦部7とカバー部材13とで囲まれた空間15を充填するものである。充填層17の材料としては、例えば、シリコーン樹脂などの弾性係数が小さい材料が使用される。充填層17の弾性係数は、接着層11の弾性係数よりも小さく、光ファイバーケーブル5の弾性係数よりも小さい。この充填層17を形成する工程では、例えば、カバー部材13が平坦部7に接着された後、空間15内に流動性の充填材料が注入される。或いは、カバー部材13の内側に充填材料が仕込まれた状態から、カバー部材13が平坦部7に接着されるようにして、空間15内に充填材料が充填されてもよい。この充填材料が硬化することで充填層17が形成される。空間15内の光ファイバーケーブル5及び接着層11は充填層17に埋め込まれた状態になる。
【0026】
このような光ファイバーケーブル設置構造51によれば、充填層17が、コンクリート打設時に鉄筋3に加わる衝撃力を吸収するので、カバー部材13とともに外力から光ファイバーケーブル5を保護し、光ファイバーケーブル5の断線が抑制される。また、充填層17は、光ファイバーケーブル5及び接着層11と、カバー部材13及び接着層12と、の間に介在しているが、充填層17の弾性係数は比較的小さい。従って、光ファイバーケーブル5及び接着層11がカバー部材13等と合わせて一体として挙動する作用は小さく抑えられる。よって、光ファイバーケーブル5が鉄筋3から剥離する可能性は、充填層17の存在に起因して極端に増大することはない。また、充填層17により空間15が塞がれるので、鉄筋コンクリート構造物100において、空間15が水みちになって鉄筋3の腐食等の原因になるといった可能性が低減される。
【0027】
(第3実施形態)
続いて、光ファイバーケーブル設置構造の第3実施形態について説明する。図2(b)は本実施形態の光ファイバーケーブル設置構造61の断面図である。図に示されるように、光ファイバーケーブル設置構造61は、第1実施形態の光ファイバーケーブル設置構造1のカバー部材13に代えて、保護テープ19(被覆部材)を備えるものである。その他の点においては光ファイバーケーブル設置構造1と同様であるので、同一又は同等の構成要素に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
保護テープ19は、鉄筋3の概ね長手方向全体に亘って延在し、片面に粘着面を有する帯状の部材である。保護テープ19は、平坦部7側に粘着面を向けて光ファイバーケーブル5及び接着層11を覆うように平坦部7に貼着される。保護テープ19と光ファイバーケーブル5との間に隙間があいていてもよく、保護テープ19と接着層11との間に隙間があいていてもよい。保護テープ19の弾性係数は、接着層11の弾性係数よりも小さく、光ファイバーケーブル5の弾性係数よりも小さい。保護テープ19を平坦部7に貼着する工程は、光ファイバーケーブル5用の接着層11が完全に硬化した後に実行されてもよい。
【0029】
このような光ファイバーケーブル設置構造61によれば、鉄筋3を埋め込むように鉄筋コンクリート構造物100のコンクリート103が打設され、コンクリート103は保護テープ19の外面に接する。このコンクリート打設の際には、弾性係数が比較的小さい保護テープ19がクッションとなって光ファイバーケーブル5が外力から保護され、光ファイバーケーブル5の断線が抑制される。また、保護テープ19が、光ファイバーケーブル5及び接着層11に付着していたとしても、保護テープ19の弾性係数は比較的小さい。従って、光ファイバーケーブル5及び接着層11が保護テープ19と合わせて一体の部位として挙動したとしても、その一体の部位の剛性は、光ファイバーケーブル5及び接着層11の剛性に比較して極端に増大するものではない。よって、光ファイバーケーブル5が鉄筋3から剥離する可能性は、保護テープ19の存在に起因して極端に増大することはない。
【0030】
図3は、光ファイバーケーブル設置構造61に関して本発明者らが行なった鉄筋の引張試験の結果を示す。この試験サンプルの鉄筋には光ファイバーケーブル設置構造61によって光ファイバーケーブルを設置し、鉄筋の下端から550mmの位置にはひずみゲージを設置した。引張試験では、ひずみゲージによる鉄筋のひずみの計測値と、光ファイバーケーブルによる鉄筋のひずみの計測値と、が約11500μでほぼ一致した。この試験により、光ファイバーケーブル設置構造61によって10000μ程度の鉄筋の大ひずみが計測可能であることが確認され、例えば鉄筋の降伏以降に発生し得るひずみの計測にも対応可能であることが確認された。
【0031】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1,51,61…光ファイバーケーブル設置構造、3…鉄筋(対象部材)、7…平坦部、5…光ファイバーケーブル、11…接着層(第1接着層)、12…接着層(第2接着層)、13…カバー部材、15…空間、17…充填層、19…保護テープ(被覆部材)、100…鉄筋コンクリート構造物。


図1
図2
図3