(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176279
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】状態診断システム、状態診断システムの制御方法および状態診断システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/33 20190101AFI20241212BHJP
【FI】
G06F16/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094728
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 隆樹
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175HB03
(57)【要約】
【課題】確度の高い提案内容を提示することが可能な状態診断システムを提供する。
【解決手段】
本開示の一例に従う状態診断システムは、制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成する提案部と、提案部で生成される第1の提案情報と、状態データ以外の制御システムに関連する関連データに基づく制御システムの状態を是正するための第2の提案情報との類似度を判定する判定部と、判定部の類似度に基づいて、第1および第2の提案情報の出力を制御する出力部とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて前記制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成する提案部と、
前記提案部で生成される前記第1の提案情報と、前記状態データ以外の前記制御システムに関連する関連データに基づく前記制御システムの状態を是正するための第2の提案情報との類似度を判定する判定部と、
前記判定部の類似度に基づいて、前記第1および第2の提案情報の出力を制御する出力部とを備える、状態診断システム。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1および第2の提案情報の類似度と第1の閾値との比較に基づいて前記第1および第2の提案情報の出力を制御する、請求項1記載の状態診断システム。
【請求項3】
前記出力部は、
前記第1および第2の提案情報の類似度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値以上である場合には、前記第1の提案情報を出力し、
前記第1および第2の提案情報の類似度が前記第1の閾値よりも高い第2の閾値未満である場合には、前記第2の提案情報を出力する、請求項2記載の状態診断システム。
【請求項4】
前記第1および第2の提案情報は、第1および第2のテキスト情報をそれぞれ含み、
前記判定部は、前記第1のテキスト情報に含まれる単語の第1の特徴量と、前記第2のテキスト情報に含まれる単語の第2の特徴量とに基づいて類似度を判定する、請求項1記載の状態診断システム。
【請求項5】
前記判定部は、
トピックモデルを用いて、前記第1のテキスト情報に含まれる単語の第1の特徴量と、前記第2のテキスト情報に含まれる単語の第2の特徴量とを算出する算出部と、
類似度関数を用いて前記算出部で算出した前記第1の特徴量と、第2の特徴量との類似度を判定する類似度判定部とを含む、請求項4記載の状態診断システム。
【請求項6】
前記提案部は、
前記状態データの状態パターンを解析する解析部と、
前記解析部により解析された状態パターンに従って、複数の状態パターンにそれぞれ対応する複数の提案ファイルのうちの1つの提案ファイルを前記第1の提案情報として生成する生成部とを含む、請求項1記載の状態診断システム。
【請求項7】
制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて前記制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成するステップと、
生成される前記第1の提案情報と、前記状態データ以外の前記制御システムに関連する関連データに基づく当該異常を是正するための第2の提案情報との類似度を判定するステップと、
前記類似度に基づいて、前記第1および第2の提案情報の少なくともいずれか一方を出力するステップとを備える、状態診断システムの制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて前記制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成するステップと、
生成される前記第1の提案情報と、前記状態データ以外の前記制御システムに関連する関連データに基づく当該異常を是正するための第2の提案情報との類似度を判定するステップと、
前記類似度に基づいて、前記第1および第2の提案情報の少なくともいずれか一方を出力するステップとを実行させる、状態診断システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置を含む制御システムの状態に関する状態診断システム、状態診断システムの制御方法および状態診断システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製造装置等の機械に対して稼働状況をリアルタイムに監視し、故障診断を行う監視システムが提案されている。
【0003】
この点で、機械に関するデータを収集し、当該収集したデータに基づいて、障害を除去するための提案を提示するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方で、提案内容について本当にユーザが必要としているものであるのかを判断することができず、提案がユーザに受け入れられる確度が低いという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためのものであって、確度の高い提案内容を提示することが可能な状態診断システム、状態診断システムの制御方法および状態診断システムの制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例に従う状態診断システムは、制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成する提案部と、提案部で生成される第1の提案情報と、状態データ以外の制御システムに関連する関連データに基づく制御システムの状態を是正するための第2の提案情報との類似度を判定する判定部と、判定部の類似度に基づいて、第1および第2の提案情報の出力を制御する出力部とを備える。この構成であれば確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【0008】
出力部は、第1および第2の提案情報の類似度と第1の閾値との比較に基づいて第1および第2の提案情報の出力を制御する。この構成であれば類似度と第1の閾値との比較に基づいて第1および第2の提案情報の出力を制御するため確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【0009】
出力部は、第1および第2の提案情報の類似度が第1の閾値よりも高い第2の閾値以上である場合には、第1の提案情報を出力し、第1および第2の提案情報の類似度が第1の閾値よりも高い第2の閾値未満である場合には、第2の提案情報を出力する。この構成であれば類似度と第1および第2の閾値との比較に基づいて第1および第2の提案情報の出力を制御するため確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【0010】
第1および第2の提案情報は、第1および第2のテキスト情報をそれぞれ含み、判定部は、第1のテキスト情報に含まれる単語の第1の特徴量と、第2のテキスト情報に含まれる単語の第2の特徴量とに基づいて類似度を判定する。この構成であればテキスト情報の単語の特徴量を用いて類似度を判定するため精度の高い判定が可能である。
【0011】
判定部は、トピックモデルを用いて、第1のテキスト情報に含まれる単語の第1の特徴量と、第2のテキスト情報に含まれる単語の第2の特徴量とを算出する算出部と、類似度関数を用いて算出部で算出した第1の特徴量と、第2の特徴量との類似度を判定する類似度判定部とを含む。この構成であれば類似度関数を用いて類似度を判定するため精度の高い判定が可能である。
【0012】
提案部は、状態データの状態パターンを解析する解析部と、解析部により解析された状態パターンに従って、複数の状態パターンにそれぞれ対応する複数の提案ファイルのうちの1つの提案ファイルを第1の提案情報として生成する生成部とを含む。この構成であれば状態パターンを解析して、当該解析された状態パターンに従って第1の提案情報が生成されるため精度の高い提案情報の生成が可能である。
【0013】
本開示の一例に従う状態診断システムの制御方法は、制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成するステップと、生成される第1の提案情報と、状態データ以外の制御システムに関連する関連データに基づく当該異常を是正するための第2の提案情報との類似度を判定するステップと、類似度に基づいて、第1および第2の提案情報の少なくともいずれか一方を出力するステップとを備える。この構成であれば確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【0014】
本開示の一例に従う状態診断システムの制御プログラムは、コンピュータに、制御装置を含む制御システムに生じた状態を示す状態データに基づいて制御システムの状態を是正するための第1の提案情報を生成するステップと、生成される第1の提案情報と、状態データ以外の制御システムに関連する関連データに基づく当該異常を是正するための第2の提案情報との類似度を判定するステップと、類似度に基づいて、第1および第2の提案情報の少なくともいずれか一方を出力するステップとを実行させる。この構成であれば確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の状態診断システム、状態診断システムの制御方法および状態診断システムの制御プログラムは、確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1に従う制御装置を含む制御システムの具体例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に従う制御システム1の状態診断に係わる機能ブロックについて説明する図である。
【
図5】実施形態に従う制御システム1における異常要因パターンと対処法について説明する図である。
【
図6】実施形態に従う提案ファイルFAの一例について説明する図である。
【
図7】実施の形態に従う提案部11の処理について説明するフロー図である。
【
図8】実施形態に従う第2の提案情報について説明する図である。
【
図9】実施の形態に従う判定部14および出力部17の処理について説明するフロー図である。
【
図10】提案ファイルおよびニーズファイルについてそれぞれの単語の出現頻度表の生成について説明する図である。
【
図11】実施形態に従うトピックモデルの生成の概念について説明する図である。
【
図12】実施形態に従う出力判定処理の詳細について説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
<システム構成>
図1は、実施の形態1に従う制御装置を含む制御システムの具体例を示す図である。
【0019】
図1を参照して、制御システム1は、制御装置100と、HMI(Human Machine Interface)200と、生産ライン300と、サーバ500とを含む。制御装置100とHMI200と、サーバ500とは、情報系ネットワーク6を介して通信可能に接続される。制御装置100と生産ライン300に含まれる1以上の機器とは、制御系ネットワーク4を介して通信可能に接続される。
【0020】
制御装置100は、典型的にはPLC(Programmable Logic Controller)であり、生産ライン300に含まれる1以上の機器を制御する。
【0021】
HMI200は、ユーザに対して情報を提示する機能、および、ユーザからの操作を受け付ける機能を含む。本実施の形態では、HMI200は、制御システム1の状態を是正するための提案情報をユーザに提供する。
【0022】
生産ライン300は、製品を生産するための1以上の機器を含む。
図1に例示される生産ライン300は、塗料が塗布された金属プレート400を生産する。生産ライン300は、塗料準備工程310と、塗装工程320と、乾燥工程330と、検査工程340と、を含む。
【0023】
塗料準備工程310に設置される機器は、原料投入機311と、攪拌機312と、塗料保管器313と、を含む。原料投入機311は、塗料の原料(顔料、樹脂、添加剤、溶剤など)を容器に投入する機器である。攪拌機312は、容器内の原料を撹拌し、混合する。塗料保管器313は、塗料の粘度を所定範囲内に維持するために、適切な温度(塗料保管温度)で塗料を収容する。塗料準備工程310に設置される機器の動作に関連する説明変数は、塗料希釈率、撹拌速度、塗料保管温度を含む。
【0024】
塗装工程320に設置される機器は、塗布装置321と、ベルトコンベア322と、を含む。塗布装置321は、圧縮空気を利用して、塗料保管器313から供給される塗料を、ベルトコンベア322によって搬送されている金属プレート400上に吹き付ける。
【0025】
乾燥工程330に設置される機器は、乾燥機331と、ベルトコンベア332と、を含む。乾燥機331は、ベルトコンベア332によって搬送されている金属プレート400を加熱することにより、金属プレート400上の塗料を乾燥させる。
【0026】
塗料準備工程310、塗装工程320および乾燥工程330に設置される機器の動作に関する値は、制御装置100によって収集される。
【0027】
検査工程340は、金属プレート400の塗装膜厚を測定する工程である。塗装膜厚は、作業者によって測定されてもよいし、膜厚測定機を用いて自動的に測定されてもよい。
【0028】
サーバ500は、制御システム1の状態を是正するための別の提案情報をユーザに提供する。
【0029】
<制御装置のハードウェア構成>
図2は、本実施の形態に係る制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0030】
図2を参照して、制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサ102と、チップセット104と、主メモリ106と、ストレージ110と、制御系ネットワークコントローラ120と、情報系ネットワークコントローラ122と、USBコントローラ124と、メモリカードインターフェイス126とを含む。
【0031】
プロセッサ102は、ストレージ110に格納された各種プログラムを読み出して、主メモリ106に展開して実行することで、制御対象を制御するための制御演算を実現する。チップセット104は、プロセッサ102と各コンポーネントとのデータ伝送などを制御する。
【0032】
ストレージ110には、基本的な処理を実現するためのシステムプログラム112と、制御演算を実現するためのユーザプログラム114と、制御装置を含む制御システムの状態を診断するための状態診断プログラム116とが格納される。
【0033】
制御系ネットワークコントローラ120は、制御系ネットワーク4を介した機器とのデータのやり取りを制御する。
【0034】
情報系ネットワークコントローラ122は、情報系ネットワーク6を介したHMI100などとのデータのやり取りを制御する。
【0035】
USBコントローラ124は、USB接続を介した外部装置(例えば、サポート装置)とのデータのやり取りを制御する。
【0036】
メモリカードインターフェイス126は、メモリカード128を着脱可能に構成されており、メモリカード128に対してデータを書き込み、メモリカード128から各種データ(ユーザプログラムなど)を読み出すことが可能になっている。
【0037】
図2には、プロセッサ102がプログラムを実行することで必要な処理が提供される構成例を示したが、これらの提供される処理の一部または全部を、専用のハードウェア回路(例えば、ASICまたはFPGAなど)を用いて実装してもよい。あるいは、制御装置100の主要部を、汎用的なアーキテクチャに従うハードウェア(例えば、汎用パソコンをベースとした産業用パソコン)を用いて実現してもよい。この場合には、仮想化技術を用いて、用途の異なる複数のOSを並列的に実行させるとともに、各OS上で必要なアプリケーションを実行させるようにしてもよい。
【0038】
<制御装置の機能構成>
図3は、本実施の形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【0039】
図3を参照して、制御装置100は、IO処理部10と、提案部11と、判定部14と、出力部17とを備える。
【0040】
IO処理部10は、プロセッサ102がユーザプログラム114を実行することにより実現される。
【0041】
提案部11、判定部14および出力部17は、プロセッサ102が状態診断プログラム116を実行することにより実現される。
【0042】
提案部11は、制御装置100を含む制御システム1に生じた状態を示す状態データに基づいて制御システム1の状態を是正するための第1の提案情報を生成する。
【0043】
判定部14は、提案部11で生成される第1の提案情報と、状態データ以外の制御システム1に関連する関連データに基づく制御システム1の状態を是正するための第2の提案情報との類似度を判定する。本例においては、第2の提案情報は、サーバ500から送信されるものである。
【0044】
出力部17は、判定部14の類似度に基づいて、第1および第2の提案情報の少なくともいずれか一方を出力する。
【0045】
IO処理部10は、収集処理および出力処理を実行する。収集処理は、生産ライン300に含まれる1以上の機器からデータを収集する処理である。出力処理は、処理によって得られるデータを、生産ライン300に含まれる1以上の機器に出力する処理である。
【0046】
収集処理によって収集されるデータは、生産ライン300に含まれる1以上の機器の動作に関する状態データ、例えば、塗装希釈率,撹拌速度,塗料保管温度,送り速さ(塗装工程),エア圧,室温,吐出量,吹付距離,送り速さ(乾燥工程),乾燥温度等の計測値を示すデータを含む。さらに、収集処理によって収集されるデータは、生産ライン300によって生産される製品の品質を示す計測値を示すデータを含む。データは、変数の計測値と製品個体を識別するワークIDとを示す。ワークIDは、例えば通し番号である。
【0047】
IO処理部10は、生産ライン300の各工程から最新のデータを一定周期ごとに収集する。生産ライン300の各工程および工程間において、一定個数の製品が滞留する。IO処理部10によって収集されたデータは蓄積される。
【0048】
提案部11は、解析部12と、生成部13とを含む。
解析部12は、収集処理によって収集される生産ライン300の状態データの状態パターンを解析する。
【0049】
生成部13は、解析部12により解析された状態パターンに従って、複数の状態パターンにそれぞれ対応する複数の提案ファイルのうちの1つの提案ファイルを第1の提案情報として生成する。
【0050】
図4は、実施形態に従う制御システム1の状態診断に係わる機能ブロックについて説明する図である。
【0051】
図4を参照して、サーバ500は、顧客情報データ部506と、事例データ部504と、顧客ニーズ推定部502とを含む。
【0052】
顧客情報データ部506は、顧客に関する情報を格納するデータベースである。顧客に関する情報として、一例として、機器の販売履歴や、サービスの販売履歴や、公開IR情報や、営業訪問記録や、コールセンタ記録や、Web閲覧履歴に関する情報等、顧客に関する情報であればどのような情報を含んでいてもよい。
【0053】
事例データ部504は、顧客のニーズあるいはソリューションを提案するための情報を格納するデータベースである。顧客のニーズあるいはソリューションを提案するための情報として、サービス事例や、機器の導入事例、教育受講事例等の情報を含んでいてもよい。
【0054】
顧客ニーズ推定部502は、顧客情報データ部506からの顧客に関する情報に基づいて事例データ部504の情報を活用して顧客のニーズを推定して制御システム1の状態を是正するための提案情報を制御装置100に出力する。
【0055】
制御装置100は、提案データ部18と、提案部11と、判定部14と、出力部17とを含む。提案データ部18は、ストレージ110に設けられたものである。
【0056】
提案部11は、提案データ部18に格納されている提案情報を判定部14に出力する。
判定部14は、提案部11から出力された提案情報(第1の提案情報)と、顧客ニーズ推定部502から出力された提案情報(第2の提案情報)との類似度を判定する。
【0057】
出力部17は、判定部14の判定結果である類似度に基づいて提案部11から出力された提案情報(第1の提案情報)および顧客ニーズ推定部502から出力された提案情報(第2の提案情報)の出力を制御する。
【0058】
<第1の提案情報の説明>
図5は、実施形態に従う制御システム1における異常要因パターンと対処法について説明する図である。
【0059】
図5(A)を参照して、制御システム1の生産ライン300の異常の際の状態データを集収し、その頻度に従って異常要因パターンを特定する。本例においては、生産ライン300における収集処理によって得られた状態データP1~P9(以下、総称して状態データPとも称する)を取得し、頻度の多い異常要因パターンEAを特定した場合が示されている。
【0060】
ここでは、異常が生じた場合の状態データP1~P9の値が示されている。
当該異常要因パターンに対応して、対処法が示されている。具体的には、端子挿入高さの設定変更の実施比率が70%、鉄心カシメの装置設定変更の実施比率が20%、鉄片カシメのストローク調整の実施比率が10%として示されている。
【0061】
予め収集された状態データを解析することにより異常要因パターンを特定することが可能である。
【0062】
そして、当該異常要因パターンに対して対処した各対処法の実施比率の統計情報を用いることにより当該異常要因パターンに対しての提案情報を生成することが可能である。
【0063】
例えば、異常要因パターンEAに対しては、対処法として「端子挿入高さの設定変更」が効果的である可能性が高い。また、その次の対処法として「鉄心カシメの装置設定変更」が効果的である可能性が高い。また、その次の対処法として「鉄心カシメのストローク調整」が効果的である可能性が高い。
【0064】
こうした分析を通して、異常要因パターンEAに対応する提案ファイルFAを事前に作成する。
【0065】
図6は、実施形態に従う提案ファイルFAの一例について説明する図である。
図6を参照して、提案ファイルFAとして、不具合事象と対処法とが記述されている。
【0066】
具体的には、「事象:リアルタイム状態診断が異常を検知し、鉄心カシメ工程にて鉄心部品に起因した異常がある可能性がある。鉄心部品の直径がロット切り替え(またはメーカー変更による)変動により、わずかに減少している可能性がある。このためカシメ接合の強度が規格に対して不足する傾向が見られる。対処:スピンカシメ装置のサーボモーターのトルクを増すことでカシメ接合強度を維持できる。」のテキスト情報が記述されている。
【0067】
異常要因パターンFAに対応して提案ファイルFAが対応付けられて提案データ部18に格納される。
【0068】
再び
図5(B)を参照して、本例においても同様にして、異常の際の状態データを集収し、その頻度に従って異常要因パターンを特定する。本例においては、生産ライン300における収集処理によって得られた状態データP1~P9を取得し、頻度の多い異常要因パターンEBを特定した場合が示されている。
【0069】
ここでは、状態データP1~P9について異常が生じた場合の値が示されている。
当該異常要因パターンに対応して、対処法が示されている。具体的には、端子曲げ角度の設定変更の実施比率が90%、接点高さの設定変更の実施比率が10%として示されている。
【0070】
予め収集された状態データを解析することにより異常要因パターンを特定することが可能である。
【0071】
そして、当該異常要因パターンに対して対処した各対処法の実施比率の統計情報を用いることにより当該異常要因パターンに対しての提案情報を生成することが可能である。
【0072】
例えば、異常要因パターンFBに対しては、対処法として「端子曲げ確度の設定変更」が効果的である可能性が高い。また、その次の対処法として「接点高さの設定変更」が効果的である可能性が高い。
【0073】
こうした分析を通して、異常要因パターンEBに対応する提案ファイルFBを事前に作成する。
【0074】
以下、同様にして各種の異常要因パターンを特定して、それぞれの異常要因パターンに対応する提案ファイルを作成して、提案データ部18に格納する。
【0075】
図7は、実施の形態に従う提案部11の処理について説明するフロー図である。
図7を参照して、提案部11は、状態データを取得する(ステップS2)。具体的には、提案部11は、生産ライン300におけるIO処理部10の収集処理によって得られた状態データP等を取得する。
【0076】
次に、提案部11の解析部12は、取得した状態データPを解析する(ステップS4)。解析処理として、状態データPの分布を解析する。
【0077】
次に、提案部11の解析部12は、異常が有る場合には異常要因パターンを特定する(ステップS5)。具体的には、例えば状態データPの分布として異常要因パターンEAのような分布に類似しているか否かを判断し、類似している場合には異常要因パターンEAとして特定する。あるいは、状態データPの分布として異常要因パターンEBのような分布に類似しているか否かを判断し、類似している場合には異常要因パターンEBとして特定する。他の異常要因パターンについても同様である。
【0078】
次に、提案部11の生成部13は、解析部12により特定された異常要因パターンに従って提案データ部18を参照して、対応する異常要因パターンに従う提案ファイルを抽出する(ステップS6)。例えば、異常要因パターンPAが特定された場合には、提案ファイルFAを抽出する。また、異常要因パターンPBが特定された場合には、提案ファイルFBを抽出する。他の異常要因パターンについても同様である。
【0079】
次に、提案部11の生成部13は、当該抽出した提案ファイルを提案情報として生成して判定部14に出力する(ステップS8)。例えば提案ファイルFAを抽出した場合には、当該ファイルを提案情報として出力する。提案ファイルFBを抽出した場合には当該ファイルを提案情報として出力する。他の場合についても同様である。
【0080】
そして、処理を終了する(エンド)。
<第2の提案情報の説明>
第2の提案情報は、サーバ500から出力されるものである。
【0081】
図8は、実施形態に従う第2の提案情報について説明する図である。
図8を参照して、ニーズファイルNAとして、制御システム1の状態を是正するための情報が記述されている。
【0082】
具体的には、「分析結果から装置Aのメンテナンス周期の最適化がエネルギー生産性の向上には有効です。最適化に向けたアクション・プランをご提案します」が記述されている。また、具体的なアクション・プランに関して、「1.メンテナンス履歴の整備 装置Aのメンテナンス履歴を整備し、メンテナンス作業内容や周期を明確に把握することで、メンテナンスの実施状況を正確に評価することができます。2.メンテナンスの実施状況の評価 メンテナンスの実施状況を評価し、メンテナンス作業の効果や実施頻度について検討します。3.メンテナンス周期の見直し メンテナンス周期を見直し、必要に応じて変更することで、装置Aの状態に応じた最適なメンテナンス周期を設定します。4.メンテナンス計画の実施 最適なメンテナンス計画を策定し、実施することで、装置Aの稼働率を向上させます。5.メンテナンス周期のモニタリング 最適なメンテナンス周期を設定した後も、定期的にモニタリングを行い、装置Aの状態に合わせてメンテナンス周期を調整することが必要です。」とのテキスト情報が記述される。
【0083】
他のニーズファイルNB,NCについても同様に事例データ部504に格納されている。
【0084】
ニーズファイルは、制御装置100に収集される状態データに基づいて生成されたものではなく、状態データ以外の制御システム1に関連する関連データに基づく制御システムの状態を是正するための提案情報である。
【0085】
サーバ500の顧客ニーズ推定部502は、顧客情報データ部506からの顧客に関する情報に基づいて事例データ部504の情報を活用して顧客のニーズを推定して制御システム1の状態を是正するための提案情報を制御装置100に出力する。
【0086】
例えば、ニーズファイルは、顧客毎に用意されていてもよいし、複数のニーズファイルの中から顧客に適切なニーズファイルを選択するようにしてもよい。機械学習を用いた人工知能(生成系AI)を用いて顧客に関する情報等に基づいてニーズファイルを生成するようにしてもよい。あるいは、販売員やサービスマンが顧客の状況を分析し、分析結果をニーズファイルとしてテキスト形式で纏めて事例データ部504に格納したものでもよい。
【0087】
<判定処理および出力処理の説明>
図9は、実施の形態に従う判定部14および出力部17の処理について説明するフロー図である。
【0088】
図9を参照して、判定部14は、提案ファイルとニーズファイルとを取得する(ステップS10)。具体的には、提案部11で生成された提案ファイルと、サーバ500から出力されたニーズファイルとを取得する。
【0089】
次に、判定部14は、それぞれ取得した提案ファイルおよびニーズファイルについて単語の出現頻度表を生成する(ステップS12)。本例においては、一例としてTF-IDF(term frequency-inverse document frequency)スコアを用いて単語の出現頻度表を生成する場合について説明する。
【0090】
図10は、提案ファイルおよびニーズファイルについてそれぞれの単語の出現頻度表の生成について説明する図である。
【0091】
図10(A)には、提案ファイルFAについて品詞分解し、単語行列データを生成して、TF-IDFスコアおよび出現頻度を算出した場合が示されている。すなわち、提案ファイルFAのテキスト情報に含まれる単語の特徴量を算出する。
【0092】
図10(B)には、ニーズファイルNAについて品詞分解し、単語行列データを生成して、TF-IDFスコアおよび出現頻度を算出した場合が示されている。すなわち、ニーズファイルNAのテキスト情報に含まれる単語の特徴量を算出する。
【0093】
再び
図9を参照して、判定部14は、トピックモデルを生成する(ステップS14)。
図11は、実施形態に従うトピックモデルの生成の概念について説明する図である。
【0094】
図11(A)および(B)を参照して、本例においては、LDAトピックモデルを用いて提案ファイルFAおよびニーズファイルNAについてトピックを分類する場合について説明する。スコアの値に従って文字サイズが調整された状態で可視化されている。これにより容易に単語の特徴量を把握することが可能である。
【0095】
本邸においては、上記単語の特徴量に基づいて、一例として、制御機器トピックと、方法論トピックと、手法トピックとに分類する場合が示されている。なお、これに限られずさらに複数のトピックに分類することも可能である。
【0096】
再び
図9を参照して、判定部14は、最終的に分類されたトピックを用いて類似度を算出する(ステップS16)。具体的には、提案ファイルFAとニーズファイルNAとのトピックの類似度を算出する。例えば、類似度関数(一例としてCOS関数)を用いて類似度を判定する。なお、COS関数に限られず他の関数を用いて類似度を判定するようにしてもよい。
【0097】
そして、出力部17は、出力判定処理を実行する(ステップS18)。
そして、処理を終了する(エンド)。
【0098】
図12は、実施形態に従う出力判定処理の詳細について説明するフロー図である。
図12を参照して、出力部17は、判定部14により算出された類似度が第1のしきい値以上であるか否かを判断する(ステップS20)。一例として、第1のしきい値として「50」に設定する。なお、第1のしきい値は適宜設定することが可能である。
【0099】
ステップS20において、出力部17は、判定部14により算出された類似度が第1のしきい値以上であると判断した場合(ステップS20においてYES)には、次に、出力部17は、類似度は第2のしきい値以上であるか否かを判断する(ステップS22)。一例として、第2のしきい値として「75」に設定する。なお、第2のしきい値は適宜設定することが可能である。
【0100】
ステップS22において、出力部17は、判定部14により算出された類似度が第2のしきい値以上であると判断した場合(ステップS22においてYES)には、第1の提案情報を出力する(ステップS24)。具体的には、提案ファイルFAを出力する。
【0101】
そして、処理を終了する(リターン)。
一方で、ステップS22において、出力部17は、判定部14により算出された類似度が第2のしきい値未満であると判断した場合(ステップS22においてNO)には、第2の提案情報を出力する(ステップS26)。具体的には、ニーズファイルNAを出力する。
【0102】
そして、処理を終了する(リターン)。
一方、ステップS20において、出力部17は、判定部14により算出された類似度が第1のしきい値未満であると判断した場合(ステップS20においてNO)には、処理を終了する(リターン)。
【0103】
本例においては、一例として、判定部14により算出された類似度が第1のしきい値以上で、かつ第2のしきい値未満の場合には、ニーズファイルFAを出力する。また、判定部14により算出された類似度が第1のしきい値以上で、かつ第2のしきい値以上である場合には、提案ファイルFAを出力する。
【0104】
一方、ユーザの嗜好により必要とする情報の種類は異なるためニーズファイルNAと、提案ファイルFAとを入れ替えて出力するようにしてもよい。
【0105】
本例においては、判定部14により算出された類似度が第1のしきい値未満の場合には、第1の提案情報および第2の提案情報のいずれも出力しない場合について説明したが、これに限られず、例えば、第1の提案情報あるいは第2の提案情報の一方を出力するようにしてもよい。
【0106】
上記の実施形態で説明したように第1および第2の提案情報の類似度を判定し、判定結果に基づいて当該提案情報の出力を制御する方式であるため確度の高い提案内容を提示することが可能である。
【0107】
なお、上記においては、LDAトピックモデルを用いる場合について説明したが、これ限られず、例えば、階層ディリクレ過程(Hierarchical Dirichlet Process, HDP)や、PLSA(Probabilistic Latent Semantic Analysis)、CTM(Correlated Topic Model)を用いてトピックの分類を行うようにしてもよい。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 制御システム、4 制御系ネットワーク、6 情報系ネットワーク、10 IO処理部、11 提案部、12 解析部、13 生成部、14 判定部、17 出力部、18 提案データ部、100 制御装置、102 プロセッサ、104 チップセット、106 主メモリ、110 ストレージ、112 システムプログラム、114 ユーザプログラム、116 状態診断プログラム、120 制御系ネットワークコントローラ、122 情報系ネットワークコントローラ、124 コントローラ、126 メモリカードインターフェイス、128 メモリカード、300 生産ライン、500 サーバ、502 顧客ニーズ推定部、504 事例データ部、506 顧客情報データ部。