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特開2024-17628乾式スプリンクラー設備およびその製造方法
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  • 特開-乾式スプリンクラー設備およびその製造方法 図1
  • 特開-乾式スプリンクラー設備およびその製造方法 図2
  • 特開-乾式スプリンクラー設備およびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017628
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】乾式スプリンクラー設備およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/62 20060101AFI20240201BHJP
   A62C 37/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A62C35/62
A62C37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120391
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AC03
2E189CA09
(57)【要約】
【課題】スプリンクラーヘッドが故障しても水を放水しない消火システムを提供する。
【解決手段】閉鎖型のスプリンクラーヘッド103に接続される二次配管102と、二次配管102に接続される負圧ポンプ204とを備え、負圧ポンプ204は、常態で二次配管102を第1の真空度に保つ第1の運転モードと、第1の真空度よりも高真空である第2の真空度に二次配管102を保つ第2の運転モードとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管と、
前記配管に接続される真空装置とを備え、
前記真空装置は、常態で前記配管を第1の真空度に保つ第1の運転モードと、前記第1の真空度よりも高真空である第2の真空度に前記配管を保つ第2の運転モードとを有する、乾式スプリンクラー設備。
【請求項2】
閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管と、
前記配管に接続されて、試運転後の高真空引き用に用いられる接続部とを備えた、乾式スプリンクラー設備。
【請求項3】
前記配管は、常態で大気圧とされるか、または、加圧される、請求項2に記載の乾式スプリンクラー設備。
【請求項4】
乾式スプリンクラー設備の製造方法は、
配管に閉鎖型スプリンクラーヘッドを取り付け前記配管に水を充填する試運転を行う工程と、
前記試運転後の前記配管を真空にして前記配管内の水を常温で沸騰させる工程とを備える、乾式スプリンクラー設備の製造方法。
【請求項5】
前記配管内の水を常温で沸騰させる工程は、前記配管内を大気圧よりも0.08MPa以上低い圧力とする、請求項4に記載の乾式スプリンクラー設備の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は乾式スプリンクラー設備およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾式スプリンクラー設備は、たとえば特開2019-25237号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-25237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乾式のスプリンクラー設備において、二次配管(スプリンクラーヘッドに隣接する配管)には本来水が存在しないはずであるが、二次配管内に水が存在する場合があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、乾式のスプリンクラー設備の二次配管において水が存在する理由について鋭意検討した。乾式のスプリンクラー設備としては、二次配管の空気の圧力が大気圧のもの、加圧されているもの、および負圧のものがある。いずれであっても設計上は二次配管には水が存在しないはずである。しかしながら、実際には無視できない量の水が二次配管に存在する例がある。二次配管と一次配管の接続部にはバルブが存在し、このバルブにおいて水が漏れている場合には一次配管から二次配管へ水が流れ二次配管に水が存在する。しかしながら、このバルブにおいて水漏れがない場合にも二次配管内に水が存在する場合がある。
【0006】
なお、この明細書において「負圧」および「真空」とは、大気圧よりも低い圧力をいう。
【0007】
本発明者は、スプリンクラー設備の完成後に行う試運転において、二次配管に水が充填され、その水が二次配管内に残存することを見出した。
【0008】
そして、当該課題を解決するために、二次配管を減圧することにより、二次配管内の水を常温で沸騰させて水を除去することに成功した。
【0009】
このような知見によってなされた一つの局面に従った乾式スプリンクラー設備は、閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管と、前記配管に接続される真空装置とを備え、真空装置は、常態で前記配管を第1の真空度に保つ第1の運転モードと、前記第1の真空度よりも高真空である第2の真空度に前記配管を保つ第2の運転モードとを有する。なお、常態とは、平常状態をいい、火災が発生していない状態をいう。
【0010】
このように構成された乾式スプリンクラー設備においては、通常運転時には配管を第1の運転モードとし、試運転終了後で配管内に水が残存する状態においては高真空の第2の運転モードとすることで、試運転後に配管内に残存する水を常温で沸騰させて水を除去することができる。
【0011】
別の局面に従った乾式スプリンクラー設備は、閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管と、配管に接続されて試運転後の高真空引き用に用いられる接続部とを備える。
【0012】
このように構成された乾式スプリンクラー設備においては、試運転後の高真空引きのための接続部が設けられているため、試運転後に高真空引きをすることで、配管内に残存する水を常温で蒸発させることが可能になる。
【0013】
好ましくは、前記配管は、常態で大気圧とされるか、または、加圧される。
【0014】
乾式スプリンクラー設備の製造方法は、配管に閉鎖型スプリンクラーヘッドを取り付け前記配管に水を充填する試運転を行う工程と、試運転後の配管を真空にして配管内の水を常温で沸騰させる工程とを備える。
【0015】
このような工程を備えた乾式スプリンクラー設備の製造方法においては、試運転後の配管を真空にして配管内の水を常温で沸騰させる工程を備えるため、試運転後に配管内に残存する水を除去することができる。
【0016】
好ましくは、前記配管内の水を常温で沸騰させる工程は、前記配管内を大気圧よりも0.08MPa以上低い圧力とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に従った、乾式の真空スプリンクラー設備の模式図である。
図2】実施の形態2に従った、乾式の加圧式スプリンクラー設備の模式図である。
図3】実施の形態3に従った、乾式のスプリンクラー設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
(スプリンクラー設備の構成)
図1は、実施の形態1に従ったスプリンクラー設備の模式図である。図1で示すように、乾式スプリンクラー設備1は、建屋10に設けられる。建屋10は、下層階である第一区画11と、上層階である第二区画12とを有する。
【0019】
放水システム100は、一次配管101と、一次配管101に接続された二次配管102と、二次配管102に設けられたスプリンクラーヘッド103と、一次配管101と二次配管102との境界に設けられたバルブ105と一次配管101に水を送るための水ポンプ106とを有する。
【0020】
一次配管101には水が充填されている。この水は、水ポンプ106により加圧されている。水ポンプ106には消火水槽(図示せず)から水が供給される。建屋10の最上階の高架水槽から水ポンプ106に水が供給されてもよい。
【0021】
一次配管101は、水ポンプ106から建屋10の最上部まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。この実施の形態では2階建ての建屋10を記載しているが、建屋10の階は2階に限定されない。
【0022】
一次配管101の水は、バルブ105で止められており、バルブ105が開くことで一次配管101の水が二次配管102へ送られる。バルブ105の開閉は、コンピュータ302により制御される。
【0023】
二次配管102はバルブ105に接続されている。二次配管102は第二区画12に配置されている。なお、この実施の形態ではバルブ105が第二区画12に配置されている例を示しているが、バルブ105が第一区画11に配置されていてもよい。
【0024】
二次配管102は第二区画12の天井に配置されている。二次配管102には複数のスプリンクラーヘッド103が設けられている。スプリンクラーヘッド103の数は、第二区画12の広さによって決定される。
【0025】
この実施の形態では、第二区画12にスプリンクラーヘッド103が設けられる例を示しているが、第一区画11に二次配管102およびスプリンクラーヘッド103が配置されていてもよい。
【0026】
スプリンクラーヘッド103は、閉鎖型のスプリンクラーヘッドであり、水を放水する孔が複数設けられている。スプリンクラーヘッド103は感熱機構(可溶金属片)を有する。常態では、水を放水する孔と、一次配管101との間はスプリンクラーヘッド103内で遮蔽されている。感熱機構が火災時の火炎により溶融すると遮断が開放される。バルブ105が開かれて一次配管101および二次配管102を経由して水がスプリンクラーヘッド103の孔から放水される。
【0027】
負圧システム200は、二次配管102に接続される負圧用配管201と、負圧用配管201内を負圧にする負圧ポンプ204とを有する。
【0028】
負圧ポンプ204は第一区画11に設けられて負圧を発生させる。この実施の形態では、水ポンプ106および負圧ポンプ204は同じ第一区画11に設置されているが、これらが互いに異なる区画に設けられてもよい。負圧ポンプ204は空気および水を吸引することができる。負圧ポンプ204が空気のみを吸引して水を吸引できない場合には、負圧用配管201に気水分離機を設けて負圧ポンプ204に水が流入しないようにする必要がある。
【0029】
負圧ポンプ204は定常状態であり負圧用配管201内を第1の真空度にする第1運転モードと、第1の真空度よりも高真空の第2の運転モードを有する。負圧ポンプ204以外に高真空用の追加の真空ポンプを設けて、定常状態では負圧ポンプのみを駆動させて第1の運転モードとして、第2の運転モードとするときには追加の真空ポンプを駆動させて高真空の第2の運転モードを実現してもよい。
【0030】
負圧ポンプ204に接続された負圧用配管201は負圧ポンプ204から建屋10の最上階まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。各階において負圧用配管201が分岐して各部屋に負圧用配管201が張り巡らされている。
【0031】
検知システム300は、火災検知器301およびコンピュータ302を有する。第二区画12内で火災が発生すると、その熱または煙を火災検知器301が検知する。コンピュータ302とバルブ105とが信号線311により接続されている。コンピュータ302と水ポンプ106とが信号線312により接続されている。コンピュータ302と負圧ポンプ204は信号線313により接続されている。
【0032】
このスプリンクラー設備は、火災検知器301が火災を検知した後に火災検知器301からの信号をコンピュータ302が受信し、コンピュータ302が信号線311を経由してバルブ105を開く、いわゆる予作動式であってもよい。火災の検知がなくても、スプリンクラーヘッド103において空気が流通すれば二次配管102内の気圧の変化を検知してバルブ105を開いてもよい。この場合は予作動式ではない。
【0033】
(乾式スプリンクラー設備の試運転)
乾式スプリンクラー設備1が製造された後に、乾式スプリンクラー設備1の試運転が行われる。試運転は、大きく分けて、二次配管102内に水を入れて行う耐圧試験と実際に水を放水させる放水試験がある。まず、耐圧試験について説明する。耐圧試験では、火災ではない状態においてバルブ105を開く。これにより水ポンプ106から一次配管101を経由して水が二次配管102に充填される。そして水ポンプ106の最高使用圧力(たとえば1.4MPa)の1.5倍(2.1MPa)まで加圧手段(図示せず)を用いて二次配管102内を加圧する。その状態で水が二次配管102に充填されていることを確認して耐圧試験が終了する。次に放水試験について説明する。放水試験では、二次配管102の末端に取り付けられた試験用の末端試験弁(図示せず)から所定の放水ができるかどうかの試験を実施する。この試験では末端試験弁から水が流れるかを確認すると同時に末端試験弁から所定の流量の水が流れるかを確認する。流量を確認する方法としては末端試験弁における水の圧力を測定する方法がある。これにより試運転が終了する。試運転終了後、末端試験弁を開いて二次配管102から水を抜く。
【0034】
(試運転後の二次配管102内の処理)
負圧ポンプ204を第2の運転モードとして負圧用配管201内を高真空とする。これにより二次配管102内も高真空となる。そのため、常温であっても二次配管102内の水が蒸発する。
【0035】
乾式スプリンクラー設備は、閉鎖型のスプリンクラーヘッド103に接続される配管としての二次配管102と、二次配管102に接続される真空装置としての負圧ポンプ204とを備える。
【0036】
負圧ポンプ204は、常態で二次配管102を第1の真空度に保つ第1の運転モードと、前記第1の真空度よりも高真空である第2の真空度に二次配管102を保つ第2の運転モードとを有する。真空装置は、複数の負圧ポンプによって構成されていてもよく、その場合、第1の真空度を実現する第1の負圧ポンプと第2の真空度を実現する第2の負圧ポンプを真空措置は有する。第1および第2の真空度は大気圧未満の気圧であり、第2の真空度は第1の真空度よりも低い気圧である。
【0037】
(実施の形態2)
図2は実施の形態2に従った、乾式の加圧式スプリンクラー設備の模式図である。図2において、二次配管1102内が常態で加圧されている点において、実施の形態1に従った乾式のスプリンクラー設備と異なる。二次配管1102を加圧するための加圧システム1200が設けられている。
【0038】
加圧システム1200はコンプレッサ1204と、コンプレッサ1204に接続された配管1201とを有する。配管1201は接続点1202により二次配管1102に接続されている。
【0039】
二次配管1102を負圧にするための接続部としての枝管1205が設けられている。枝管1205には負圧ポンプ204が接続される。枝管1205は接続点1206により二次配管1102に接続されている。枝管1205の長さは特に限定されない。枝管1205は二次配管1102に設けられたバルブであってもよい。負圧ポンプ204は常に設けられる必要はない。試運転後、二次配管1102を負圧にするときに負圧ポンプ204が存在すればよい。
【0040】
(乾式スプリンクラー設備の試運転)
乾式スプリンクラー設備1が製造された後に、乾式スプリンクラー設備1の試運転が行われる。試運転では火災ではない状態においてバルブ105を開く。これにより実施の形態1と同様に試運転を実施する。試運転終了後、末端試験弁から二次配管1102の水を抜く。
【0041】
(試運転後の二次配管1102内の処理)
負圧ポンプ204を運転モードとして枝管1205内を真空とする。これにより二次配管1102内も高真空となる。そのため、常温であっても二次配管1102内の水が蒸発する。
【0042】
乾式スプリンクラー設備1は、閉鎖型のスプリンクラーヘッド103に接続される二次配管1102と、二次配管1102に接続されて、試運転後の高真空引き用に用いられる枝管1205とを備える。
【0043】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に従った、乾式のスプリンクラー設備の模式図である。図2において、二次配管1102内が常態で大気圧である点において、実施の形態1および2に従った乾式のスプリンクラー設備と異なる。
【0044】
二次配管1102を負圧にするための枝管1205が設けられている。枝管1205には負圧ポンプ204が接続される。枝管1205は接続点1206により二次配管1102に接続されている。枝管1205の長さは特に限定されない。枝管1205は二次配管1102に設けられたバルブであってもよい。負圧ポンプ204は常に設けられる必要はない。試運転後、二次配管1102を負圧にするときに負圧ポンプ204が存在すればよい。
【0045】
(乾式スプリンクラー設備の試運転)
乾式スプリンクラー設備1が製造された後に、乾式スプリンクラー設備1の試運転が行われる。試運転では火災ではない状態においてバルブ105を開く。これにより実施の形態1と同様に試運転を実施する。試運転終了後、末端試験弁から二次配管1102の水を抜く。
【0046】
(試運転後の二次配管1102内の処理)
負圧ポンプ204を運転モードとして枝管1205内を真空とする。これにより二次配管1102内も高真空となる。そのため、常温であっても二次配管1102内の水が蒸発する。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 乾式スプリンクラー設備、10 建屋、11 第一区画、12 第二区画、100 負圧スプリンクラーシステム、101 一次配管、102,1102 二次配管、103 スプリンクラーヘッド、105,209,219 バルブ、106 水ポンプ、200 負圧システム、201 負圧用配管、202,212,1202,1206 接続点、203 吸入口、204 負圧ポンプ、205 接続管、300 検知システム、301 火災検知器、302 コンピュータ、311,312,313,1313 信号線、1200 加圧システム、1201,1205 配管、1204 コンプレッサ。
図1
図2
図3