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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176284
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L31/08 H
H01L31/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094736
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰介
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA17
5F149AB02
5F149AB07
5F149BA01
5F149FA04
5F149FA05
5F149HA01
5F149JA11
5F149LA01
5F149LA03
5F149XB15
5F149XB18
(57)【要約】
【課題】トリガー光が低強度であっても光スイッチが効率的に動作できること。
【解決手段】半導体基板11と、半導体基板に設置された一対の電極12A、12Bと、電極に接続されて一対の電極間に電位差を生じさせる電源13とを有し、半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面にトリガー光1を内部に導入させるトリガー光導入面14を備え、一対の電極に対応する内部には、トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域16が設けられた光スイッチにおいて、半導体基板11は、一側面と対向する位置に、内部に導入されたトリガー光を全反射させる全反射面15を備え、トリガー光導入面14から半導体基板11内に導入されて全反射面15で全反射されるトリガー光1が、キャリア生成領域16を複数回通過するよう構成されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、この半導体基板に設置された一対の電極と、この電極に接続されて一対の前記電極間に電位差を生じさせる電源とを有し、
前記半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面にトリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面を備え、一対の前記電極に対応する内部には、前記トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域が設けられた光スイッチにおいて、
前記半導体基板は、前記一側面と対向する位置に、内部に導入された前記トリガー光を全反射させる全反射面を備え、
前記トリガー光導入面から前記半導体基板内に導入されて前記全反射面で全反射される前記トリガー光が、前記キャリア生成領域を複数回通過するよう構成されたことを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
前記全反射面は、半導体基板の表面または裏面に対して垂直な面に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記全反射面は、半導体基板の表面または裏面に対する垂直な面に対しトリガー光の臨界角以上の角度に設定されると共に、全反射した前記トリガー光が前記半導体基板の前記表面または前記裏面に臨界角以上の角度で入射する角度に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項4】
前記全反射面は、半導体基板の表面または裏面に対する垂直な面に対しトリガー光の臨界角以上の角度に設定されると共に、全反射した前記トリガー光が前記半導体基板の前記表面または前記裏面に臨界角以上の角度で入射し、且つ、前記半導体基板の前記表面または前記裏面で全反射した前記トリガー光が前記半導体基板のトリガー光導入面に臨界角以上の角度で入射する角度に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項5】
前記半導体基板は全反射面を複数備え、
前記トリガー光は、複数の前記全反射面の配置方向に所定の幅を有し、複数の前記全反射面に同時に入射して全反射するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記トリガー光導入面が、トリガー光に対してブリュースター角に設定されると共に、前記トリガー光が、前記トリガー光導入面に対してp偏光であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項7】
前記トリガー光導入面には、トリガー光に対する反射防止コーティングが施されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項8】
前記トリガー光は、半導体基板を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ波長の1倍より大きく且つ2倍以下の波長に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項9】
前記トリガー光は、半導体基板を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ波長の2倍より大きく且つ3倍以下の波長に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項10】
前記トリガー光は、パルスレーザー光を含むレーザー光であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項11】
前記トリガー光は、Er:YAGレーザー、Nd:YAGレーザー、Ni:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザー、Ybファイバーレーザー、半導体レーザー、フラッシュランプによる光、または発光ダイオードによる光であることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項12】
前記半導体基板を構成する半絶縁性半導体が、Si、GaAs、SiC、GaNまたはダイヤモンドであることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光を用いて回路を開閉する光スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号ではなく光によって回路を開閉する光スイッチは、電気制御よりも高速な応答、ノイズ対策、電気的なアイソレーション等、様々な用法に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-209269号公報
【特許文献2】特開2005-191074号公報
【特許文献3】実開昭58-166627号公報
【特許文献4】特開平7-22603号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F. Lacassie et. Al., “Two photon absorption in semi-insulating gallium arsenide photoconductive switch irradiated by a picosecond infrared laser”The European Physical Journal - Applied Physics , Volume 11 , Issue 3 , September 2000 , pp. 189 - 195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、半絶縁性半導体に、そのバンドギャップ波長よりも短い波長の光を入射すると価電子帯の電子が伝導帯に励起され、キャリアが注入されて電気抵抗値が低下する光伝導効果を使用した光伝導スイッチが開示されている。この光伝導スイッチは、高速なパルスレーザー光等をトリガー光として使用することで、電気信号制御の通常のスイッチング素子よりも高速な閉操作を行うことができ、また、半絶縁性半導体にて構成される基板の耐圧が高いことから高電圧化も可能である。
【0006】
一方、従来の光伝導スイッチでは、レーザー光が基板表面のみで吸収されるためキャリア数が制限され、電流を大きくすることや、電気抵抗値を十分に下げること等が困難である。これを解決する2光子吸収を利用した光伝導スイッチが、非特許文献1に提案されている。2光子吸収型の光伝導スイッチでは吸収長が長くなるため、励起光が半絶縁性半導体の基板に浸透し、キャリアが注入される領域が面ではなく体積になるため、大量のキャリアを注入することが可能になる。
【0007】
しかしながら、吸収長が長いことは同時に、入射光の大半が透過してしまうことに繋がり、光の利用効率が低下する。図7は、従来の2光子吸収型の光伝導スイッチ100を示す。一対の正負の電極101A、101Bが、半導体基板102に設置された構造を有する。一対の電極101A、101Bは、電源103に接続され、この電源103により電極101A、101B間に電圧差が印加される。トリガー光104が、半導体基板102の側面に設けられたトリガー光導入面105から入射すると、入射したトリガー光104は、半導体基板102のキャリア生成領域106を通過し、その一部がキャリア生成領域106で2光子吸収される。これにより、キャリア生成領域106の電気抵抗値が低下して、光伝導スイッチ100は閉動作する。光伝導スイッチ100が閉動作した際には、半導体基板102を経由して電極101A、101B間に電流が流れる。
【0008】
前述のように、2光子吸収型の光伝導スイッチ100では、トリガー光104の大部分は吸収されず、光伝導スイッチ100の開閉に寄与せずに、半導体基板102の反対側等から半導体基板102の外部へ放出される。このように、2光子吸収型の光伝導スイッチ100では吸収長が長く、トリガー光104の大部分が放出されてトリガー光104の利用効率が低下するので、光伝導スイッチ100を動作させるためにトリガー光104に要求される強度(出力)が増大してしまう。
【0009】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、トリガー光が低強度であっても効率的に動作することができる光スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態における光スイッチは、半導体基板と、この半導体基板に設置された一対の電極と、この電極に接続されて一対の前記電極間に電位差を生じさせる電源とを有し、前記半導体基板は、半絶縁性半導体から構成されると共に、一側面にトリガー光を内部に導入させるトリガー光導入面を備え、一対の前記電極に対応する内部には、前記トリガー光の通過によりキャリアが生成されて電気抵抗値が低下するキャリア生成領域が設けられた光スイッチにおいて、前記半導体基板は、前記一側面と対向する位置に、内部に導入された前記トリガー光を全反射させる全反射面を備え、前記トリガー光導入面から前記半導体基板内に導入されて前記全反射面で全反射される前記トリガー光が、前記キャリア生成領域を複数回通過するよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、トリガー光が低強度であっても効率的に動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る光スイッチとしての光伝導スイッチを示す平面図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3】第2実施形態に係る光スイッチとしての光伝導スイッチを示す平面図。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図。
図5図4の半導体基板を拡大してトリガー光の入射及び反射の状況を説明する説明図。
図6】第3実施形態に係る光スイッチとしての光伝導スイッチを示す平面図。
図7】従来の2光子吸収型の光伝導スイッチを示し、(A)が平面図、(B)が図7(A)のVIIB-VIIB線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図2
図1は、第1実施形態に係る光スイッチとしての光伝導スイッチを示す平面図である。この図1に示す光スイッチとしての光伝導スイッチ10は、光(トリガー光1)を用いて回路を開閉させるスイッチであり、半導体基板11と、この半導体基板11の表面、裏面にそれぞれ設置された正負一対の電極12A、12Bと、これらの電極12A、12Bに接続されてこれらの電極12A、12B間に電位差を生じさせる電源13と、を有して構成される。
【0014】
電極12A、12Bは、金、アルミニウム、ITO(Indium-Tin Oxide)、NiまたはTi等の電気的な導体にて構成される。また、電極12A及び12Bは、上記各導体が積層されて構成されてもよい。光伝導スイッチ10が閉動作された際には、電源13により電極12A、12B間に印加された電位差によって、半導体基板11を介して電極12A、12B間に電流が流れる。
【0015】
半導体基板11は、Si、GaAs、SiC、GaNまたはダイヤモンドなどの半絶縁性半導体にて構成され、トリガー光導入面14、全反射面15(第1全反射面15A、第2全反射面15B)、及びキャリア生成領域16を有する。
【0016】
トリガー光導入面14は、半導体基板11の一側面に形成され、トリガー光1の入射角が全反射の条件である臨界角よりも小さくなるように設定されることで、トリガー光1を半導体基板11の内部に導入させる。また、トリガー光導入面14は、トリガー光1に対してブリュースター角に設定されて、トリガー光導入面14に対しp偏光であるトリガー光1の反射を抑制して、トリガー光1の透過率を向上させてもよい。更に、トリガー光導入面14には、トリガー光1に対する反射防止コーティングが施されていてもよい。
【0017】
全反射面15の第1全反射面15A及び第2全反射面15Bは、半導体基板11においてトリガー光導入面14と対向する位置で、半導体基板11の表面または裏面に対し垂直な面Hに連続して設けられる。また、これらの第1全反射面15A及び第2全反射面15Bは、半導体基板11内に導入されたトリガー光1を、全反射の条件となる臨界角以上の入射角で入射させて、この半導体基板11内に導入されたトリガー光1を全反射させる。
【0018】
例えば、トリガー光1が最初に到達する第1全反射面15Aと、この第1全反射面15Aにて反射された後に到達する第2全反射面15Bは、トリガー光1とのなす角(トリガー光1の入射角)が共に45度に設定されている。ここで、半導体基板11がSiCにて構成され、トリガー光1が波長532nmのNd:YAGレーザーの第二高調波である場合、トリガー光1が全反射するための臨界角は22度である。従って、半導体基板11内に導入されたトリガー光1は、キャリア生成領域16を通過した後に第1全反射面15Aにて全反射され、その後第2全反射面15Bにて全反射されて再度キャリア生成領域16を通過する。
【0019】
キャリア生成領域16は、半導体基板11における一対の電極12A、12Bに対応する内部、即ち、半導体基板11の内部において電極12Aと12Bに挟まれた領域に設けられる。このキャリア生成領域16は、トリガー光1の通過により価電子帯が伝導帯に励起されてキャリアが生成され、電気抵抗値が低下する。トリガー光導入面14から半導体基板11内に導入されたトリガー光1がキャリア生成領域16を通過し、次に、全反射面15(第1全反射面15A、第2全反射面15B)で全反射されたトリガー光1がキャリア生成領域16を再度通過することで、トリガー光1がキャリア生成領域16を複数回通過するよう構成されている。
【0020】
半導体基板11のトリガー光導入面14から入射されて半導体基板11内に導入されるトリガー光1は、パルスレーザー光を含むレーザー光が好ましい。このトリガー光1は、半導体基板11を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ波長の1倍より長く且つ2倍以下の波長に設定される。
【0021】
例えば、半導体基板11を構成するSi、GaAs、SiC、GaN、ダイヤモンドのバンドギャップ波長は、それぞれ1117nm、867nm、384nm、364nm、226nmである。従って、トリガー光1としてのレーザー光は、半導体基板11がSiにて構成される場合にはEr:YAGレーザーが好ましく、半導体基板11がGaAsにて構成される場合には、Er:YAGレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーが好ましく、半導体基板11がSiC、GaNにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第二高調波が好ましく、半導体基板11がダイヤモンドにて構成される場合にはNd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第三高調波等が好ましい。また、トリガー光1はフラッシュランプによる光、それぞれの波長に対応した半導体レーザー、または発光ダイオード等による光であってもよい。
【0022】
また、トリガー光1は、半導体基板11を構成する半絶縁性半導体のバンドギャップ波長の2倍より長く且つ3倍以下の波長に設定されてもよい。例えば、トリガー光1としてのレーザー光は、半導体基板11がSiC、GaNにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーが好ましく、半導体基板11がダイヤモンドにて構成される場合には、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザーまたはYbファイバーレーザーのそれぞれの第二高調波等が好ましい。この場合も、トリガー光1はフラッシュランプによる光、それぞれの波長に対応した半導体レーザー、または発光ダイオード等による光であってもよい。
【0023】
次に、上述のように構成された光伝導スイッチ10の動作を説明する。
通常状態では、光伝導スイッチ10は開であり、電源13により一対の電極12A、12B間に予め電位差を印加しておく。
【0024】
次に、トリガー光1が照射される。トリガー光導入面14に対するトリガー光1の入射角が、全反射の条件である臨界角より小さく設定されているので、トリガー光1は半導体基板11の内部に侵入する。例えば、トリガー光1であるNd:YAGレーザーの第二高調波である波長532nmに対する半導体基板11のSiCの屈折率は2.78であり、臨界角は22度である。
【0025】
トリガー光1は半導体基板11の内部に侵入した後、キャリア生成領域16を通過し、一部が吸収されてキャリア生成領域16の電気抵抗値を低下させるが、大部分は透過して第1全反射面15Aに到達する。
【0026】
第1全反射面15Aにて全反射されたトリガー光1は、第2全反射面15Bに入射し全反射するとキャリア生成領域16を再び通過して、キャリア生成領域16の電気抵抗値を更に低下させる。トリガー光1がキャリア生成領域16を2回通過して、キャリア生成領域16の電気抵抗値が低下することで、光伝導スイッチ10は閉動作し、一対の電極12A、12B間に電流が流れる。
【0027】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)トリガー光導入面14から半導体基板11内に導入されて全反射面15(第1全反射面15A、第2全反射面15B)で全反射されるトリガー光1が、半導体基板11のキャリア生成領域16を複数回通過するよう構成されている。このため、より多くのトリガー光1がキャリア生成領域16に吸収されるので、このキャリア生成領域16では、より多くのキャリアが生成されて電気抵抗値が低下する。この結果、トリガー光1が低強度(低出力)であっても、光伝導スイッチ10を効率的に閉動作させることができる。一方、トリガー光の強度(出力)が一定である場合には、光伝導スイッチ10の閉動作時における電気抵抗値をより低い値に設定することができる。
【0028】
[B]第2実施形態(図3図5
図3は、第2実施形態に係る光スイッチとしての光伝導スイッチを示す平面図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0029】
本第2実施形態の光スイッチとしての光伝導スイッチ20が第1実施形態と異なる点は、半絶縁性半導体から構成される半導体基板21における全反射面22が、図3に示すように半導体基板21の表面または裏面を含む平面上でトリガー光導入面14と平行して形成されると共に、図4及び図5に示すように、半導体基板21の表面または裏面に対する垂直な面Hに対しトリガー光1の臨界角θ以上の角度α(例えばα=θ)に設定された点である。例えば、半導体基板21がSiCにて構成され、トリガー光1が波長532nmのNd:YAGレーザーの第二高調波である場合、トリガー光1の臨界角θは22度である。
【0030】
更に、全反射面22は、この全反射面22にて全反射したトリガー光1が半導体基板21の表面または裏面に入射する入射角(90°-2θ)が臨界角θ以上になるような角度に設定される。更に、全反射面22は、半導体基板21の表面または裏面にて1回または複数回全反射してトリガー光導入面14に入射する入射角βが、臨界角θ以上の角度2θとなるような角度に設定される。
【0031】
全反射面22が上述のように設定されたことで、トリガー光導入面14から半導体基板21内に導入されたトリガー光1は、全反射面22、半導体基板21の表面または裏面、トリガー光導入面14にてそれぞれ繰り返し全反射されて、半導体基板21のキャリア生成領域16を往復して複数回通過し、このキャリア生成領域16の電気抵抗値を低下させる。
【0032】
次に、上述のように構成された光伝導スイッチ20の動作を説明する。
通常状態では、光伝導スイッチ20は開であり、電源13により一対の電極12A、12B間に予め電位差を印加しておく。
【0033】
次に、トリガー光1が照射される。トリガー光導入面14に対するトリガー光1の入射角が、全反射の条件である臨界角θより小さく設定されているので、トリガー光1は半導体基板21の内部に侵入する。
【0034】
トリガー光1は半導体基板21の内部に侵入した後、キャリア生成領域16を通過し、一部が吸収されてキャリア生成領域16の電気抵抗値を低下させるが、その大部分が透過し、全反射面22に到達する。
【0035】
その後、トリガー光1は全反射面22で全反射し、半導体基板21の表面または裏面に入射する。このときの入射角(90°-2θ)が臨界角θ以上の角度を満たしているので、トリガー光1は、半導体基板21の表面または裏面で全反射を繰り返し、キャリア生成領域16を再び通過して、キャリア生成領域16の電気抵抗値を更に低下させる。
【0036】
トリガー光導入面14と全反射面22とが、半導体基板21の表面または裏面を含む平面上で平行に設置されているので、半導体基板21の表面または裏面で全反射したトリガー光1は、トリガー光導入面14に入射角β(β=2θ)で入射する。この入射角βが臨界角θよりも大きいので、トリガー光1は、トリガー光導入面14で全反射し、半導体基板21の表面または裏面で再度全反射してキャリア生成領域16を通過し、キャリア生成領域16の電気抵抗値をより一層低下させる。
【0037】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏する。
【0038】
[C]第3実施形態(図6
図6は、第3実施形態に係る光スイッチとしての光伝導スイッチを示す平面図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0039】
本第3実施形態の光スイッチとしての光伝導スイッチ30が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態と同様に、半導体基板11の全反射面15が連続して複数(第1全反射面15A、第2全反射面15B)設けられるものの、トリガー光31が、複数の全反射面15(第1全反射面15A、第2全反射面15B)の配置方向に所定の幅Wを有し、複数の全反射面15(第1全反射面15A、第2全反射面15B)に同時に入射して全反射する点である。
【0040】
従って、半導体基板11のトリガー光導入面14から半導体基板11内に導入されたトリガー光31は、キャリア生成領域16を通過した後、第1全反射面15Aと第2全反射面15Bに同時に到達する。トリガー光31のうち、中心線Pから片側の領域(例えば図6の上半分領域)の光31Uは、第2全反射面15Bにて全反射した後に第1全反射面15Aにて全反射して、キャリア生成領域16を再度通過する。同時に、トリガー光31のうち、中心線Pから他の片側の領域(例えば図6の下半分領域)の光31Dは、第1全反射面15Aにて全反射した後に第2全反射面15Bにて全反射して、キャリア生成領域16を再度通過する。このようにして、トリガー光31のより多くの光が半導体基板11のキャリア生成領域16を通過することになる。
【0041】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏する。なお、本第3実施形態の光伝導スイッチ30では、複数の全反射面15(第1全反射面15A、第2全反射面15B)は、第2実施形態の全反射面22のように、半導体基板の表面または裏面に対する垂直な面Hに対し、トリガー光31の臨界角θ以上の角度α(例えばα=θ)に設定されてもよい。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…トリガー光、10…光伝導スイッチ(光スイッチ)、11…半導体基板、12A、12B…電極、13…電源、14…トリガー光導入面、15…全反射面、15A…第1全反射面、15B…第2全反射面、16…キャリア生成領域、20…光伝導スイッチ、21…半導体基板、22…全反射面、30…光伝導スイッチ、31…トリガー光、H…垂直な面、W…幅、α…角度、β…入射角、θ…臨界角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7