IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176299
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二次電池および二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241212BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094754
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 直也
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011KK01
5H028AA05
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB03
5H028CC08
5H028HH05
(57)【要約】
【課題】効率的および安定的に製造できる二次電池および二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】二次電池1においては、ケース本体110は、一方の端部に第1開口111を有し、他方の端部に第2開口112を有し、第1開口111は第1封口板121により封口され、第2開口112は第2封口板122により封口され、電極体200の第2開口112側の端部よりも第2開口112側の領域に第1貫通孔141が設けられ、第1貫通孔141は、第1封止部材701により封止されている。この構成により、二次電池1をより効率的、安定的に製造することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されたセパレータを含む電極体と、
前記電極体および電解液を収容する外装体と、
を備え、
前記外装体は、
一方の端部に第1開口を有し、他方の端部に第2開口を有するケース本体と、
前記第1開口を封口する第1封口板と、
前記第2開口を封口する第2封口板と、を含み、
前記第1封口板には、前記第1電極に電気的に接続された第1電極端子が設けられ、
前記第2封口板には、前記第2電極に電気的に接続された第2電極端子が設けられ、
前記電極体の一方の端部には、前記第1電極に電気的に接続された第1電極タブ群が設けられ、
前記電極体の他方の端部には、前記第2電極に電気的に接続された第2電極タブ群が設けられ、
前記ケース本体は、前記電極体の前記第2開口側の端部よりも前記第2開口側の領域に第1貫通孔が設けられ、
前記第1貫通孔は、第1封止部材により封止されている、
二次電池。
【請求項2】
前記ケース本体において、前記電極体の前記第1開口側の端部よりも前記第1開口側の領域に第2貫通孔が設けられ、
前記第2貫通孔は第2封止部材により封止されている、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1封口板と前記電極体における前記第1封口板側の端部との距離をD1とし、
前記第2封口板と前記電極体における前記第2封口板側の端部との距離をD2とした場合、D2>D1の関係である、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
第1電極と、前記第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されたセパレータを含む電極体と、
前記電極体および電解液を収容する外装体と、
を備え、
前記外装体は、
一方の端部に第1開口を有し、他方の端部に第2開口を有するケース本体と、
前記第1開口を封口する第1封口板と、
前記第2開口を封口する第2封口板と、を含み、
前記第1封口板には、前記第1電極に電気的に接続された第1電極端子が設けられ、
前記第2封口板には、前記第2電極に電気的に接続された第2電極端子が設けられ、
前記電極体の一方の端部には、前記第1電極に電気的に接続された第1電極タブ群が設けられ、
前記電極体の他方の端部には、前記第2電極に電気的に接続された第2電極タブ群が設けられ、
前記ケース本体は、前記電極体の前記第2開口側の端部よりも前記第2開口側の領域に第1貫通孔が設けられ、
前記第1貫通孔は、第1封止部材により封止されている、
構成を備える二次電池の製造方法であって、
前記第1貫通孔から前記外装体内に前記電解液を注液する工程と、
前記第1貫通孔を前記第1封止部材により封止する工程と、
を備える、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池および二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4537353号公報(特許文献1)には、両端に開口部(14a,14b)を有する電池ケース(14)に電極群(25)が収納され、開口部(14a,14b)を封口するキャッププレート(33,33’)に電極端子(21,23)を各々取り付けた角形の二次電池が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4537353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池ケースにおける一方の側面に正極端子、他方の端部に負極端子が設けられた角形電池とすることで、高さの低い組電池とし易い。しかしながら、効率的および安定的に製造できる電池とするためには、更なる改良の余地がある。
【0005】
本技術の目的は、効率的および安定的に製造できる二次電池および二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、以下の二次電池および二次電池の製造方法を提供する。
【0007】
[1]第1電極と、第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置され、セパレータを含む電極体と、電極体および電解液を収容する外装体と、を備え、外装体は、一方の端部に第1開口を有し、他方の端部に第2開口を有するケース本体と、第1開口を封口する第1封口板と、第2開口を封口する第2封口板と、を含み、第1封口板には、第1電極に電気的に接続された第1電極端子が設けられ、第2封口板には、第2電極に電気的に接続された第2電極端子が設けられ、電極体の一方の端部には、第1電極に電気的に接続された第1電極タブ群が設けられ、電極体の他方の端部には、第2電極に電気的に接続された第2電極タブ群が設けられ、ケース本体は、電極体の第2開口側の端部よりも第2開口側の領域に第1貫通孔が設けられ、第1貫通孔は、第1封止部材により封止されている、二次電池。
【0008】
[2]ケース本体において、電極体の第1開口側の端部よりも第1開口側の領域に第2貫通孔が設けられ、第2貫通孔は第2封止部材により封止されている、[1]に記載の二次電池。
【0009】
[3]第1封口板と電極体における第1封口板側の端部との距離をD1とし、第2封口板と電極体における第2封口板側の端部との距離をD2とした場合、D2>D1の関係である、[1]または[2]に記載の二次電池。
【0010】
[4]第1電極と、第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置され、セパレータを含む電極体と、電極体および電解液を収容する外装体と、を備え、外装体は、一方の端部に第1開口を有し、他方の端部に第2開口を有するケース本体と、第1開口を封口する第1封口板と、第2開口を封口する第2封口板と、を含み、第1封口板には、第1電極に電気的に接続された第1電極端子が設けられ、第2封口板には、第2電極に電気的に接続された第2電極端子が設けられ、電極体の一方の端部には、第1電極に電気的に接続された第1電極タブ群が設けられ、電極対の他方の端部には、第2電極に電気的に接続された第2電極タブ群が設けられ、ケース本体は、電極体の第2開口側の端部よりも第2開口側の領域に第1貫通孔が設けられ、第1貫通孔は、第1封止部材により封止されている、構成を備える二次電池の製造方法であって、第1貫通孔から外装体内に電解液を注液する工程と、第1貫通孔を第1封止部材により封止する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、効率的および安定的に製造できる二次電池および二次電池の製造方法の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】二次電池の正面図である。
図2図1に示す二次電池を矢印II方向からみた状態を示す図である。
図3図1に示す二次電池を矢印III方向からみた状態を示す図である。
図4図1に示す二次電池を矢印IV方向からみた状態を示す図である。
図5図1に示す二次電池の正面断面図である。
図6】負極板が成形される前の負極原板を示す正面図である。
図7図6に示す負極原板のVII-VII断面図である。
図8】負極原板から形成された負極板を示す正面図である。
図9】正極板が成形される前の正極原板を示す正面図である。
図10図9に示す正極原板のX-X断面図である。
図11】正極原板から形成された正極板を示す正面図である。
図12】二次電池から取り出した電極体と集電体とを示す図である。
図13】負極タブ群と負極集電体との接続構造を示す図である。
図14図13に示す接続構造の正面図である。
図15図13に示す接続構造の断面図である。
図16】電極体をケース本体に挿入する工程を示す図である。
図17】第1封口板と電極体との間にスペーサを設ける工程を示す図である。
図18】第1封口板と電極体との間にスペーサを設けた状態を示す断面図である。
図19】スペーサの変形例を示す図である。
図20】第1封口板およびスペーサを介して電極体を押圧する機構の一例を示す図である。
図21図20に示す機構をZ軸方向から見た状態を示す図である。
図22】他の形態のスペーサの斜視図である。
図23】他の形態のスペーサの斜視図である。
図24】他の形態のスペーサの斜視図である。
図25】二次電池の製造方法の各工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0015】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0016】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0017】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0018】
(電池の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る二次電池1の正面図である。図2ないし図4は、各々、図1に示す二次電池1を矢印II方向、矢印III方向、矢印IV方向からみた状態を示す図である。図5は、図1に示す二次電池1の正面断面図である。
【0019】
二次電池1は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、およびハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、二次電池1の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0020】
図1ないし図5に示すように、二次電池1は、外装体100と、電極体200と、集電体300とを含む。外装体100は、ケース本体110と、第1封口板121と、第2封口板122とを含む。
【0021】
本願明細書においては、図1ないし図5に示すX軸方向(第1の方向)を二次電池1ないしケース本体110の「幅方向」と称し、同じくY軸方向(第2の方向)を二次電池1ないしケース本体110の「厚み方向」と称し、同じくZ軸方向(第3の方向)を二次電池1ないしケース本体110の「高さ方向」と称する場合がある。また、本開示の説明では、Z軸方向が天地の方向に一致しているものとする。したがって、図1に示す二次電池1において、図示の上側が鉛直上方となり、図示の下側が鉛直下方となる。よって、図2は底面から見た状態を示す。
【0022】
二次電池1を含む組電池を構成するときは、複数の二次電池1が、それらの厚み方向に積層される。積層された二次電池1は、拘束部材により積層方向(Y軸方向)に拘束されて電池モジュールとされてもよいし、拘束部材を用いることなく、電池パックのケースの側面に組電池が直接的に支持されてもよい。
【0023】
ケース本体110は、筒状、好ましくは角筒状の部材からなる。これにより、角形の二次電池1が得られる。ケース本体110は、金属製である。具体的には、ケース本体110は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などにより構成されている。
【0024】
図1図2に示すように、ケース本体の両端部に第1封口板121および第2封口板122が設けられる。ケース本体110は、たとえば、曲げ加工を施した板状部材の端辺どうしを当接させ(図2に例示する接合部110A)、互いに接合(たとえばレーザ溶接)することで、角筒状に形成され得る。「角筒状」の角部はR形状を有してもよい。
【0025】
本実施の形態において、ケース本体110は、二次電池1の幅方向(X軸方向)において、二次電池1の厚み方向(Y軸方向)および高さ方向(Z軸方向)よりも長く形成される。よって、図示する側の面とその反対側の面とにより、対向する一対の第1壁110Yが規定され、図示において上側の面と下側の面とにより、対向する一対の第2壁110Zが規定され、一対の第1壁110Yの面積は、一対の第2壁110Zの面積よりも大きくなる。
【0026】
ケース本体110のX軸方向の寸法(幅)は、好ましくは30cm以上程度である。これにより、比較的大型(高容量)の二次電池1を構成することができる。ケース本体110のZ軸方向の寸法(高さ)は、好ましくは20cm以下程度であり、より好ましくは15cm以下程度であり、さらに好ましくは10cm以下程度である。これにより、比較的高さの低い(低ハイト)の二次電池1を構成することができ、たとえば車両への搭載性が向上する。
【0027】
図3に示すように、ケース本体110の一方の端部には第1開口111が設けられる。第1開口111は、第1封口板121により封口される。第1封口板121には、負極端子131(第1電極端子)と、ガス排出弁151とが設けられる。負極端子131およびガス排出弁151の位置は適宜変更され得る。第1開口111および第1封口板121は、Y軸方向が短手方向、Z軸方向が長手方向となる略矩形形状を有する。
【0028】
図4に示すように、ケース本体110の一方の端部には第2開口112が設けられる。第2開口112は、第2封口板122により封口される。第2封口板122には、正極端子132(第2電極端子)と、ガス排出弁152とが設けられる。正極端子132およびガス排出弁152の位置は適宜変更され得る。第2開口112および第2封口板122は、Y軸方向が短手方向、Z軸方向が長手方向となる略矩形形状を有する。
【0029】
第1封口板121および第2封口板122は、金属製である。具体的には、第1封口板121および第2封口板122は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などにより構成されている。
【0030】
負極端子131は、電極体200の負極と電気的に接続される。正極端子132は、電極体200の正極と電気的に接続される。
【0031】
負極端子131は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえば銅または銅合金などにより構成され得る。負極端子131の外側表面部分にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる部分ないし層を設けてもよい。
【0032】
正極端子132は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などにより構成され得る。
【0033】
ガス排出弁151,152は、外装体100内の圧力が所定値以上になったときに破断し、外装体100内のガスを外部に排出する。
【0034】
電極体200は、後述する正極板および負極板を有する扁平形状の電極体である。具体的には、電極体200は、図示しない帯状のセパレータを介して帯状の正極板および帯状の負極板がともに巻回された巻回型電極体である。ただし、本明細書において「電極体」は巻回型電極体に限定されず、複数枚の正極板と複数枚の負極板とが交互に積層された積層型電極体であってもよい。電極体が複数の正極板と複数の負極板を含み、各正極板に設けられた正極タブが積層されて正極タブ群を構成してもよく、各負極板に設けられた負極タブが積層されて負極タブ群を構成してもよい。
【0035】
本実施の形態では、ケース本体110の図示の上面側の第2壁110Z側に、第1貫通孔141および第2貫通孔142が設けられている。第1貫通孔141は、第1封止部材701により封止されている。第2貫通孔142は、第2封止部材702より封止されている。第1封止部材701および第2封止部材702は、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いて、ケース本体110にカシメ固定することができる。第1封止部材701および第2封止部材702をケース本体110に溶接にて固定してもよい。
【0036】
後述の「二次電池1の製造工程」でも説明するが、第1貫通孔141を電解液の注液孔として使用する場合には、第2貫通孔142は、ケース本体110内のガス(空気)抜き孔として機能する。他方、第2貫通孔142を電解液の注液孔として使用する場合には、第1貫通孔141は、ケース本体110内のガス(空気)の排気孔として機能する。
【0037】
図5に示すように、外装体100は、電極体200を収容する。電極体200は、その巻回軸がX軸方向と平行になるように外装体100内に収容される。
【0038】
具体的には、外装体100内に配置された後述の絶縁シート600の内側に、単数または複数の巻回型電極体が図示しない電解液(電解質)とともに収容されている。電解液(非水電解液)としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比(25℃)30:30:40の割合で混合した非水溶媒に、LiPFを1.2モル/Lの濃度で溶解させたものを用いることができる。なお、電解液に代えて、固体電解質が用いられてもよい。
【0039】
電極体200は、第1封口板121側の端部(第1端部)に設けられた負極タブ群210A(第1電極タブ群)と、第2封口板122側の端部(第2端部)に設けられた正極タブ群220A(第2電極タブ群)とを含む。負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aは、電極体200の負極および正極に各々接続される。負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aは、電極体200の本体部分(正極板と負極板とがセパレータを介して積層された部分)から第1封口板121および第2封口板122に向かって突出するように形成される。その結果、負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aは、それぞれの主面が一対の第1壁110Yに対向する向きに配置され、それぞれの端側面が一対の第2壁110Zに対向する向きに配置されることとなる。
【0040】
集電体300は、負極集電体310(第1集電体)と正極集電体320(第2集電体)とを含む。負極集電体310および正極集電体320は、各々板状部材からなる。電極体200は、集電体300を介して負極端子131および正極端子132と電気的に接続される。
【0041】
負極集電体310は、樹脂製の絶縁部材を介して、第1封口板121上に配置される。負極集電体310は、負極タブ群210Aおよび負極端子131と電気的に接続される。負極集電体310は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえば銅または銅合金などにより構成され得る。
【0042】
正極集電体320は、樹脂製の絶縁部材を介して、第2封口板122上に配置される。正極集電体320は、正極タブ群220Aおよび正極端子132と電気的に接続される。正極集電体320は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などにより構成され得る。なお、正極タブ群220Aを直接、または正極集電体320を介して第2封口板122に電気的に接続してもよい。この場合、第2封口板122が正極端子123を兼ねてもよい。
【0043】
第1封口板121と電極体200における第1封口板121側の端部との距離をD1とし、第2封口板122と電極体200における第2封口板122側の端部との距離をD2とした場合、D2>D1の関係である。ここで、電極体200における第1封口板121側の端部200t1とは、セパレータの端部であり、同様に電極体200における第2封口板122側の端部200t2とは、セパレータの端部である。
【0044】
ここで、セパレータは、正極と負極との間に配置されており、セパレータの幅(図示のX方向)は、後述する電極体200を構成する負極板210および正極板220の幅よりも大きいので、負極板210および正極板220の端部よりもセパレータ端部の方が突出していることとなる。したがって、セパレータ端部とは、この負極板210および正極板220の端部よりも突出しているセパレータの端部を意味する。なお、負極板210から突出する負極タブ210B、および、正極板220から突出する正極タブ220Bは、電極体200を構成する負極板210および正極板220の幅には含まれないものとする。
【0045】
このように、電極体200と封口板の間のスペースは、第1封口板121側よりも第2封口板122側の方が大きい。よって、電解液の注液孔として使用する場合には、電極体200には対向しない位置に設けられた第2封口板122側に位置する第1貫通孔141を、電解液の注液孔として使用することが好ましい。したがって、第1封口板121側に位置する第2貫通孔142は、ケース本体110内のガス(空気)の排気孔として用いることが好ましい。なお、第2貫通孔142を電解液の注液孔として使用してもよい。
【0046】
好ましくは、第1貫通孔141および第2貫通孔142は、孔開口の全てが電極体200には対向しない電極体200と封口板との間のスペースに設けられていることがよいが、孔開口の一部が、電極体200と封口板との間のスペースに設けられていればよい。
【0047】
第1貫通孔141および第2貫通孔142の両方を必ずしも設ける必要はなく、少なくとも、第1貫通孔141を設けておくことで、電解液の注液孔と使用しつつ、外装体100内のガス(空気)の排気孔として兼用することも可能である。
【0048】
(電極体200の構成)
図6は、負極板210(第1電極)が成形される前の負極原板210Sを示す正面図であり、図7は、図6に示す負極原板210SのVII-VII断面図であり、図8は、負極原板210Sから形成されたを示す正面図である。
【0049】
負極板210は、負極原板210Sを加工することにより製造される。図6および図7に示すように、負極原板210Sは、負極芯体211と、負極活物質層212とを含む。負極芯体211は、銅箔または銅合金箔である。
【0050】
負極芯体211には、両面の一方側の端部を除いて負極活物質層212が形成されている。負極活物質層212は、負極活物質層スラリーをダイコータによって塗布することにより形成される。
【0051】
負極活物質層スラリーは、負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、および、分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が約98:1:1となるように混練することによって作製される。
【0052】
負極活物質層スラリーが塗布された負極芯体211を乾燥させ、負極活物質層スラリーに含まれる水を除去することにより、負極活物質層212が形成される。さらに、負極活物質層212を圧縮することにより、負極芯体211および負極活物質層212を含む負極原板210Sが形成される。負極原板210Sを所定の形状に切断することにより、負極板210が成形される。負極原板210Sは、エネルギー線の照射によるレーザ加工、金型加工、または、カッター加工などにより切断することができる。
【0053】
図8に示すように、負極原板210Sから成形された負極板210の幅方向の一方端部には、負極芯体211からなる負極タブ210Bが複数設けられている。負極板210を巻回したとき、複数の負極タブ210Bが積層されて負極タブ群210Aとなる。複数の負極タブ210Bの各々の位置および突出方向の長さは、負極タブ群210Aが負極集電体310に接続される状態を考慮して適宜調整される。なお、負極タブ210Bの形状は図8に例示するものに限定されない。
【0054】
図9は、正極板220(第2電極)が成形される前の正極原板220Sを示す正面図であり、図10は、図9に示す正極原板220SのX-X断面図であり、図11は、正極原板220Sから形成された正極板220を示す正面図である。
【0055】
正極板220は、正極原板220Sを加工することにより製造される。図9および図10に示すように、正極原板220Sは、正極芯体221と、正極活物質層222と、正極保護層223とを含む。正極芯体221は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。
【0056】
正極芯体221には、両面の一方側の端部を除いて正極活物質層222が形成されている。正極活物質層222は、正極活物質層スラリーをダイコータによって塗布することにより正極芯体221上に形成される。
【0057】
正極活物質層スラリーは、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としての炭素材料、および、分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が約97.5:1:1.5となるように混練することによって作製される。
【0058】
正極保護層223は、正極芯体221に接し、正極活物質層222の幅方向の一方側の端部に形成されている。正極保護層223は、正極保護層スラリーをダイコータによって塗布することにより正極芯体221上に形成される。正極保護層223は、正極活物質層222の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。
【0059】
正極保護層スラリーは、アルミナ粉末、導電材としての炭素材料、結着材としてのPVdF、および、分散媒としてのNMPを、アルミナ粉末:炭素材料:PVdFの質量比が約83:3:14となるように混練することによって作製される。
【0060】
正極活物質層スラリーおよび正極保護層スラリーが塗布された正極芯体221を乾燥させ、正極活物質層スラリーおよび正極保護層スラリーに含まれるNMPを除去することにより、正極活物質層222および正極保護層223が形成される。さらに、正極活物質層222を圧縮することにより、正極芯体221、正極活物質層222および正極保護層223を含む正極原板220Sが形成される。正極原板220Sを所定の形状に切断することにより、正極板220が成形される。正極原板220Sは、エネルギー線の照射によるレーザ加工、金型加工、または、カッター加工などにより切断することができる。
【0061】
図11に示すように、正極原板220Sから成形された正極板220の幅方向の一方端部には、正極芯体221からなる正極タブ220Bが複数設けられている。正極板220を巻回したとき、複数の正極タブ220Bが積層されて正極タブ群220Aとなる。複数の正極タブ220Bの各々の位置および突出方向の長さは、正極タブ群220Aが正極集電体320に接続される状態を考慮して適宜調整される。なお、正極タブ220Bの形状は図11に例示するものに限定されない。
【0062】
複数の正極タブ220Bの各々の根元には、正極保護層223が設けられている。正極タブ220Bの根元に必ずしも正極保護層223が設けられていなくてもよい。なお、正極保護層223の厚みは、正極活物質層222の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0063】
典型的な例では、負極タブ210B(1枚)の厚みは、正極タブ220B(1枚)の厚みよりも小さい。この場合、負極タブ群210Aの厚みは、正極タブ群220Aの厚みよりも小さい。
【0064】
(電極体200と集電体300との接続構造)
図12は、二次電池1から取り出した電極体200と集電体300とを示す図である。図12に示すように、電極体200は、各々が巻回型電極体である2つの電極体201,202を重ねることによって形成されている。図12に示す例では、2つの巻回型電極体を重ねる構造を示しているが、電極体200は1つの巻回型電極体により構成されてもよいし、3つ以上の巻回型電極体により構成されてもよいし、積層型電極体により構成されてもよい。
【0065】
負極タブ群210Aは、接合部310Aにおいて負極集電体310と接合され、正極タブ群220Aは、接合部320Aにおいて正極集電体320と接合される。接合部310A,320Aは、たとえば超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ等により形成し得る。
【0066】
図13は、負極タブ群210Aと負極集電体310との接続構造を示す図である。図14図15は、各々、図13に示す接続構造の正面図および断面図である。
【0067】
図13ないし図15に示すように、負極集電体310は、電極体200と第1封口板121との間において負極端子131と接続されている。負極集電体310は、第1導電部材311と、第2導電部材312とを含む。第1導電部材311と第2導電部材312とは、接合部313において接合される。
【0068】
負極タブ群210Aは、接合部310Aにおいて負極集電体310の第1導電部材311と接合される。第1導電部材311は、接合部313において第2導電部材312と接続される。接合部313は、たとえば超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ等により形成し得る。
【0069】
第1導電部材311および第2導電部材312は、樹脂製の絶縁部材410を介して第1封口板121の内面側に取り付けられる。絶縁部材410は、第1封口板121に設けられた貫通孔を介して第1封口板121の外面側から内面側に達するように設けられる。なお、絶縁部材410が、負極端子131と第1封口板121の間に配置される部材と、第1導電部材311および第2導電部材312と第1封口板121の間に配置される部品とを含む、複数の部品から構成されてもよい。
【0070】
負極端子131は、樹脂製の絶縁部材410Aを介して第1封口板121に取り付けられる。負極端子131は、第1封口板121の外側に露出し、かつ、第1封口板121の内面側に設けられた負極集電体310の第2導電部材312に達するように設けられる。負極端子131と第2導電部材312とは、たとえば超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ等により接続され得る。本実施の形態では、第2導電部材312に貫通孔を設け、負極端子131を当該貫通孔に挿入し、負極端子131を第2導電部材312上でカシメた後、カシメ部分と第2導電部材312とを接合部131Aにおいて溶接することによって負極端子131と第2導電部材312とが接続される。
【0071】
各部品の組み付け手順としては、まず、負極端子131および第2導電部材312が、絶縁部材410,410Aとともに第1封口板121に取り付けられる。続いて、電極体200に接続された第1導電部材311が第2導電部材312に取り付けられる。このとき、第1導電部材311の一部が第2導電部材312と重なるように第1導電部材311が絶縁部材410上に配置される。続いて、接合部313において第1導電部材311と第2導電部材312とが溶接接続される。なお、絶縁部材410,410Aは一部材から構成されてもよい。
【0072】
ただし、負極端子131は第1封口板121と電気的に接続されていてもよい。また、第1封口板121が負極端子131の役割を果たしてもよい。
【0073】
なお、図13ないし図15においては、2つの部品(第1導電部材311および第2導電部材312)からなる負極集電体310を例示したが、負極集電体310は、1つの部品から構成されていてもよい。
【0074】
図13ないし図15においては負極側の接続構造について示したが、正極側についても、基本的な接続構造は負極側と同様である。
【0075】
(電極体200の挿入工程)
図16は、電極体200をケース本体110に挿入する工程を示す図である。図16に示すように、電極体200とケース本体110の間には樹脂製の絶縁シート600(電極体ホルダ)が配置される。
【0076】
絶縁シート600は、たとえば樹脂により構成し得る。より具体的には、絶縁シート600の材質は、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)またはポリオレフィン(PO)である。
【0077】
絶縁シート600は、必ずしも電極体200の全面を覆う必要はない。絶縁シート600は、好ましくは電極体の外表面の50%以上程度、より好ましくは70%以上程度の面積を覆う。絶縁シート600は、略直方体状(扁平形状)の電極体200の6面のうち、少なくとも負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aが各々形成された2面以外の4面の全体を覆うことが好ましい。
【0078】
図17は、第1封口板121と電極体200との間にスペーサ510を配置する工程を示す図である。図18は、第1封口板121と電極体200との間にスペーサ510を配置した状態を示す断面図である。
【0079】
図17図18に示すように、電極体200から第1封口板121に向かう負極タブ群210Aは、第1封口板121のY軸方向の中央部から端部に向かい、その後、逆向きに折り返して中央部に向かうように湾曲させられる。湾曲した負極タブ群210A(湾曲部)を収納するようにスペーサ510が設けられる。
【0080】
スペーサ510は、第1スペーサ511と、第2スペーサ512とを含む。第1スペーサ511および第2スペーサ512は、各々、第1封口板121の端部側から中央側に向かうようにY軸方向に沿ってスライドさせることにより、互いに係合する。これにより、スペーサ510は、絶縁部材410を介して第1封口板121に固定され、スペーサ510の位置の安定性が増す。
【0081】
図18に示すように、スペーサ510は、負極集電体310を収納する内部空間を形成し、負極タブ群210Aの先端部分もスペーサ510の内部空間に収納される。スペーサ510は、負極タブ群210Aを通過させる孔部を有する。
【0082】
スペーサ510の素材は特に限定されないが、樹脂などの絶縁性素材を用いることが好ましい。より具体的には、ポリオレフィン(PO)製のシートを用いることが好ましい。また、スペーサ510と電極体200との間に絶縁シート600を介在させてもよい。
【0083】
再び図16を参照して、本実施の形態に係る二次電池1の製造方法においては、負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続した後に、第1開口111を介して、電極体200を正極タブ群220A側の端部側からケース本体110に挿入している。電極体200をケース本体110の所定の位置まで挿入したとき、正極タブ群220Aはケース本体110の第2開口112からケース本体110の外部に突出する。これにより、電極体200をケース本体110に挿入した後、正極端子132と正極タブ群220Aとの接続を行うことができる。
【0084】
ケース本体110に電極体200を挿入した後に、第1封口板121に取り付けられた負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続する場合には、ケース本体110に収納された電極体200の負極タブ群210Aがケース本体110の外部に十分に突出する長さが負極タブ群210Aに求められる。ケース本体110に電極体200を挿入する前に、第1封口板121に取り付けられた負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続することにより、ケース本体110に電極体200を挿入した後に取り付ける場合と比較して、負極タブ群210Aの長さを縮小することができる。結果として、ケース本体110の内部空間における負極板210および正極板220の体積占有率を増大させることができる。
【0085】
また、図16の例では、負極タブ群210Aの湾曲部を収納するスペーサ510を配置した後に電極体200をケース本体110に挿入している。このようにすることで、電極体200の挿入工程における負極タブ群210Aの湾曲部の保護を図ることができる。スペーサ510には、第2貫通孔142が対向する位置に、電解液を通過させるための開口510hを設けておくことが好ましい。開口510hの形状は、円形に限定されるものでなく、電解液を通過させる形状であればどのような形状でもよい。
【0086】
また、図16の例では、電極体200が絶縁シート600により覆われた状態で電極体200をケース本体110に挿入している。これにより、ケース本体110への挿入時の電極体200の損傷を抑制することができる。
【0087】
電極体200の挿入工程時に、ケース本体110を所定の角度に保持することができる。一例として、X軸方向(ケース本体110の幅方向)が水平方向に対して±45°以下程度の角度で交差するようにケース本体110を保持した状態で電極体200を挿入することが好ましい。たとえば、鉛直方向において、電極体200が挿入される第1開口111の上端部が、第2開口112の上端部よりも上方に位置するよう、ケース本体110を傾けた状態とし、ケース本体110に電極体200を挿入することができる。
【0088】
電極体200の挿入工程は、第1開口111側から電極体200を押し込む態様に限定されず、たとえば、第2開口112側から電極体200を引っ張る態様であってもよい。
【0089】
第2壁110Zに設けられた第1貫通孔141から正極タブ群220Aを見た場合、正極タブ群220Aは、第1貫通孔141を避けるように折り曲げられているとよい。電解液の注液性を向上させることができるからである。同様に、第2壁110Zに設けられた第2貫通孔142から負極タブ群210Aを見た場合、負極タブ群210Aは、第2貫通孔142を避けるように折り曲げられているとよい。この構成により、後述する二次電池1の製造工程において、電解液の注液性の向上を図ることができる。
【0090】
図19は、スペーサ510の変形例を示す図である。図16ないし図18の例では、第1封口板121の高さ方向(Z軸方向)の一部にスペーサ510が配置されているが、図19に示すように、第1封口板121の高さ方向の略全域にわたってスペーサ510が配置されてもよい。このとき、スペーサ510は、負極タブ群210AからZ軸方向に離間した位置(第1領域)において、負極タブ群210Aの近傍(第2領域)よりも電極体200側に突出する部分を有してもよい。第1領域と第2領域との境界に段差(好ましくは1mm以上程度の段差)が形成されてもよい。このようにすることで、電極体200のケース本体110への挿入時における負極タブ群210Aの損傷を抑制することができる。
【0091】
(電極体を押圧する機構)
図20は、第1封口板121およびスペーサ510Aを介して電極体200を押圧する機構の一例を示す図である。図21は、図20に示す機構をZ軸方向から見た状態を示す図である。スペーサ510Aは、上述したスペーサ510の変形例である。
【0092】
図20図21に示すように、スペーサ510Aは、第1封口板121および電極体200の高さ方向(Z軸方向)において、負極タブ群210Aおよび負極集電体310を避けた位置(負極タブ群210Aおよび負極集電体310から離間した位置)に配置される。より具体的には、スペーサ510Aは、Z軸方向において負極タブ群210Aを挟むように2箇所に分かれて配置される。スペーサ510Aは、電極体200において、負極タブ群210Aが設けられていない部分を押圧することが好ましい。特に、負極板210の端部よりもセパレータが突出した部分を押圧することが好ましい。スペーサ510Aは、Z軸方向において負極タブ群210Aの片側にのみ設けられてもよい。スペーサ510Aは、たとえば接着、溶着、テープ貼り付けなどの方法により第1封口板121および/または電極体200に固定し得る。なお、スペーサ510Aが負極タブ群210Aに接触してもよい。
【0093】
スペーサ510Aにおいて第1貫通孔141が対向する位置には、貫通孔、切り欠き、スリット等を設けることが好ましい。また、スペーサ510Aにおいてガス排出弁151が対向する位置には、貫通孔、切り欠き、スリット等を設けることが好ましい。これにより、第1貫通孔141あるいはガス排出弁151の機能をより確実に確保できる。
【0094】
図20図21の例では、スペーサ510Aを介して電極体200を押圧することにより電極体200がケース本体110に挿入される。電極体200の挿入工程の初期には電極体200を保持して電極体200の一部がケース本体110に挿入された後にスペーサ510Aを介して電極体200を押圧することにより電極体200をさらに挿入してもよい。
【0095】
上述したスペーサに代えて、電極体200に固定されたスペーサを設けてもよい。電極体200へのスペーサの固定は、たとえば、テープ貼り付けなどにより行われる。
【0096】
なお、正極タブ群220Aを保護する観点から上記スペーサ510およびスペーサ510Aを、正極タブ群220A側に設けてもよい。正極タブ群220A側に配置するスペーサにおいても、第1貫通孔141が対向する位置に、電解液を通過させるための開口を設けておくことが好ましい。開口の形状は、電解液を通過させる形状であればどのような形状でもよい。
【0097】
ここで、図22から図24を参照して、他の形態のスペーサについて図示する。図22は、他の形態のスペーサ510Bの斜視図、図23は、他の形態のスペーサ510Cの斜視図、図24は、他の形態のスペーサ510Dの斜視図である。
【0098】
図22に示すスペーサ510Bは、電極体200に対向する側に長方形型の開口510h1が設けられている。このスペーサ510Bの場合、第1貫通孔141(または第2貫通孔142)とは対向しない位置に開口510h1が位置する。
【0099】
図23に示すスペーサ510Cは、電極体200に対向する側に斜めに配置されたスリット状の開口510h2が設けられている。スリット状の開口510h2を設けた場合、十分な開口面積が確保され、脱気および注液に必要な流路面積が確保でき、さらに、注液した溶媒が溜まりづらい利点を有する。
【0100】
図24に示すスペーサ510Dは、第1貫通孔141(または第2貫通孔142)に対向する側に長方形型の開口510h3が設けられている。この開口510h3の位置においては、電極タブの湾曲方向と垂直な位置に配置されることとなる。その結果、注液の勢いによるセパレータのメクレや電極(タブ含み)損傷を防ぐことができ、電極体挿入時の押圧を均等にでき、湾曲した電極タブがスペーサ内の空間からはみ出すことを防ぐことができる。
【0101】
スペーサの外形形態、開口の位置および形態は、上記スペーサに限定されるものではないが、正極タブ群220Aおよび負極タブ群210Aを保護する目的で配置するスペーサに適宜開口を設けておくことで、電極体の損傷抑制、あるいは意図しない短絡の抑制、および、電解液注液性の低下抑制を図ることが可能となる。
【0102】
(二次電池1の製造工程)
図25は、二次電池1の製造方法の各工程を示すフロー図である。図25に示すように、S10において、ケース本体110を準備する。次に、S20において、電極体200を作製する。S30において、第1封口板121および第2封口板122に設けられた電極端子と電極体200の電極タブ群とを電気的に接続する。このとき、まず負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続し(S31)、その後に負極側の第1封口板121と電極体200との間にスペーサ510を配置し(S40)、さらに電極体200をケース本体110に挿入する(S50)。このとき、正極タブ群220Aは、ケース本体110の第2開口112からケース本体110の外側に突出する。電極体200がケース本体110に挿入された後に、正極端子132と正極タブ群220Aとを電気的に接続する(S32)。
【0103】
本実施の形態においては、負極端子131と負極タブ群210Aとの接続(S31)、電極体200の挿入(S50)、正極端子132と正極タブ群220Aとの接続(S32)の順で行う例について説明したが、本技術の範囲はこれに限定されず、正極端子132と正極タブ群220Aとの接続(S32)、電極体200の挿入(S50)、負極端子131と負極タブ群210Aとの接続(S31)の順で行う場合もある。
【0104】
電極端子と電極タブ群との接続(S30)が完了した後、第1封口板121および第2封口板122により第1開口111および第2開口112を封口する(S60)。第1封口板121および第2封口板122による封口工程は、たとえばレーザ溶接により行われる。
【0105】
負極側の第1封口板121により第1開口111を封口する工程(S61)は、電極体200をケース本体110に挿入する工程(S50)の後であればよく、正極側の第2封口板122により第2開口112を封口する工程(S62)は、正極端子132と正極タブ群220Aとを電気的に接続する工程(S32)の後であればよい。
【0106】
したがって、たとえば、第1封口板121により第1開口111を封口する工程(S61)を、正極端子132と正極タブ群220Aとを電気的に接続する工程(S32)の前に行ってもよいし、第1封口板121により第1開口111を封口する工程(S61)を、第2封口板122により第2開口112を封口する工程(S62)の後に行ってもよい。さらに、第1封口板121および第2封口板122による封口を行う工程(S61,S62)の少なくとも一部を同時進行で行うことも可能である。
【0107】
次に、第1貫通孔141から外装体100内に電解液を注液する工程(S70)を行う。電極体200と封口板の間のスペースが大きい、第2封口板122側に設けている第1貫通孔141を電解液の注液口として用いることが好ましい。他方、反対側には、第2貫通孔142を設けていることから、この第2貫通孔142を外装体100内のガス(空気あるいは窒素等)の排気孔として用いることが好ましい。これにより、電解液の外装体100内への注液性の向上を図ることができる。
【0108】
ケース本体110において、電極体200の第2開口112側の端部よりも第2開口112側の領域に配置された第1貫通孔141からケース本体110内に電解液を注液することで、ケース本体110において電極体200(タブ群は除く)と対向しない領域から注液を行なえるため、注液性が向上する。また、ケース本体110に第1貫通孔141を設けることで、ケース本体110の長手方向が水平方向となる向き、あるいは水平方向に近い向きとした状態で、ケース本体110内に電解液を注液しやすくなる。これにより電極体200の損傷をよる効果的に抑制できる。あるいは、液ダレなども抑制できる。
【0109】
外装体100内に電解液を注液する際には、外装体100を、第1貫通孔141が設けられた第2壁110Zが上側となるように水平面に載置することが好ましい。他方、第2壁110Zが45度以下、好ましくは、30度以下、より好ましくは、15度以下となるように、外装体100を傾けて(第2貫通孔142が下側)、外装体100内に電解液を注液してもよい。これにより、電解液の外装体100内への注液性の向上を図ることができる。
【0110】
外装体100内への電解液の注液が完了した後、第1封止部材701で第1貫通孔141を封止し(第1封止工程)、第2封止部材702で第2貫通孔142を封止する(第2封止工程)。第1封止工程および第2封止工程は、どちらが先行してもよい。第1封止部材701および第2封止部材702は、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いて、ケース本体110にカシメ固定する。または、第1封止部材701および第2封止部材702をケース本体110に溶接にて固定する。
【0111】
ここで、上記第1封止工程および上記第2封止工程の一方を行った後、電極体200に充電を行なう充電工程を実施し、この充電工程の後、上記第1封止工程および上記第2封止工程の他方を行なう。一方側の貫通孔を封止した後、充電を行い、発生したガスを外装体100外に排気する。その後、他方側の貫通孔を封止することで、外装体100の膨れを抑制することができる。
【0112】
(要約)
本実施の形態に係る二次電池1および二次電池1の製造方法について、上述した内容を要約すると、以下のとおりである。
【0113】
この二次電池1においては、負極原板210Sと、負極原板210Sとは異なる極性を有する正極原板220Sと、負極原板210Sと正極原板220Sとの間に配置されセパレタを含む電極体200と、電極体200および電解液を収容する外装体100と、を備える。外装体100は、一方の端部に第1開口111を有し、他方の端部に第2開口112を有するケース本体110と、第1開口111を封口する第1封口板121と、第2開口112を封口する第2封口板122と、を含む。第1封口板121には負極原板210Sに電気的に接続された負極端子131が設けられ、第2封口板122には、正極原板220Sに電気的に接続された正極端子132が設けられる。電極体200の一方の端部には、負極原板210Sに電気的に接続された負極タブ群210Aが設けられ、電極体200の他方の端部には、正極原板220Sに電気的に接続された正極タブ群220Aが設けられている。ケース本体110は、電極体200の第2開口112側の端部よりも第2開口112側の領域に第1貫通孔141が設けられ、第1貫通孔141は、第1封止部材701により封止されている。
【0114】
一例に係る二次電池1は、ケース本体110において、電極体200の第1開口111側の端部よりも第1開口111側の領域に第2貫通孔142が設けられ、第2貫通孔142は第2封止部材702により封止されている。二次電池1の製造時に、第1貫通孔141を、電解液の注液口として使用し、第2貫通孔142を外装体100内のガス(空気)の排気孔として用いることができる。
【0115】
一例に係る二次電池1は、第1封口板121と電極体200における第1封口板121側の端部との距離をD1とし、第2封口板122と電極体200における第2封口板122側の端部との距離をD2とした場合、D2>D1の関係である。電極体200と封口板の間のスペースは、第1封口板121側よりも第2封口板122側の方が大きいことから、第2封口板122側に位置する第1貫通孔141を、電解液の注液孔として使用することが好ましい。
【0116】
この二次電池1の製造方法は、上記構成の二次電池1において、第1貫通孔141から外装体100内に電解液を注液する工程と、第1貫通孔141を第1封止部材701により封止する工程と、を備える。
【0117】
(作用効果)
本実施の形態に係る二次電池1によれば、二次電池1を効率的に製造できると共に、注液性を向上させることができる。たとえば、二次電池1を、外装体100の長手方向を水平に配置することで、外装体100内への電解液の注液性を高めることができる。その結果、二次電池1をより効率的、安定的に製造することができる。
【0118】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 二次電池、100 外装体、110 ケース本体、110A,131A,310A,313,320A 接合部、110Y 第1壁、110Z 第2壁、111 第1開口、112 第2開口、121 第1封口板、122 第2封口板、131 負極端子、132 正極端子、141 第1貫通孔、142 第2貫通孔、151,152 ガス排出弁、200,201,202 電極体、200t1 第1封口板側の端部、200t2 第2封口板側の端部、210 負極板、210A 負極タブ群、210B 負極タブ、210S 負極原板、211 負極芯体、212 負極活物質層、220 正極板、220A 正極タブ群、220B 正極タブ、220S 正極原板、221 正極芯体、222 正極活物質層、223 正極保護層、300 集電体、310 負極集電体、311 第1導電部材、312 第2導電部材、320 正極集電体、410 絶縁部材、510,510A,510B,510C,510D スペーサ、510h1,510h,510h3,510h2 開口、511 第1スペーサ、512 第2スペーサ、600 絶縁シート、701 第1封止部材、702 第2封止部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5