(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176304
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二次電池および組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20241212BHJP
H01M 50/502 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/502
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094759
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 直也
【テーマコード(参考)】
5H012
5H043
【Fターム(参考)】
5H012AA03
5H012BB08
5H012DD01
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA08
5H043DA02
5H043FA02
5H043FA08
5H043FA23
5H043LA21F
(57)【要約】
【課題】より信頼性の高い二次電池および組電池を提供する。
【解決手段】この二次電池1は、第1電極と、第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、を含む電極体と、電極体および電解液を収容する外装体と、を備え、外装体は、それぞれ対向するように配置された第1封口板121と第2封口板とを含み、第1封口板121は、外装体内の圧力が所定値以上になった際に外装体内のガスを外装体外に排出する第1ガス排出弁151を含み、第2封口板は、外装体内の圧力が所定値以上になった際に外装体内のガスを外装体外に排出する第2ガス排出弁を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、を含む電極体と、
前記電極体および電解液を収容する外装体と、
を備え、
前記外装体は、それぞれ対向するように配置された第1壁と第2壁とを含み、
前記第1壁は、前記外装体内の圧力が所定値以上になった際に前記外装体内のガスを前記外装体外に排出する第1ガス排出弁を含み、
前記第2壁は、前記外装体内の圧力が所定値以上になった際に前記外装体内のガスを前記外装体外に排出する第2ガス排出弁を含む、
二次電池。
【請求項2】
前記外装体は、
一方の端部に第1開口を有し、他方の端部に第2開口を有するケース本体と、
前記第1開口を封口する第1封口板と、
前記第2開口を封口する第2封口板と、を含み、
前記第1壁は、前記第1封口板であり、
前記第2壁は、前記第2封口板であり、
前記第1封口板には第1電極端子が設けられ、
前記第2封口板には第2電極端子が設けられ、
前記電極体は、
一方の端部に前記第1電極に電気的に接続された複数の第1電極タブからなる第1電極タブ群を含み、
他方の端部に前記第2電極に電気的に接続された複数の第2電極タブからなる第2電極タブ群を含み、
前記第1電極タブ群は、前記第1電極端子と電気的に接続され、
前記第2電極タブ群は、前記第2電極端子と電気的に接続されている、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1壁の長手方向において、前記第1ガス排出弁は前記第1壁の中心から第1方向側にズレて配置され、
前記第2壁の長手方向において、前記第2ガス排出弁は前記第2壁の中心から前記第1方向側にズレて配置されている、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1ガス排出弁は、平面視の形状が長軸と短軸とを有し、
前記長軸の方向が、前記第1壁の短手方向に延びるような向きで配置され、
前記第1壁の長手方向において、前記第1ガス排出弁の中心は、前記第1壁の中心からズレた位置に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項5】
請求項1に記載の二次電池を複数個含む組電池であって、
当該組電池において、前記第1壁の長手方向および前記第2壁の長手方向が、鉛直方向に延びるように配置され、
前記第1壁の長手方向において、前記第1壁の鉛直方向の中心よりも上方側に前記第1ガス排出弁が配置され、
前記第2壁の長手方向において、前記第2壁の鉛直方向の中心よりも上方側に前記第2ガス排出弁が配置されている、
組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池および組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4537353号公報(特許文献1)には、両端に開口部(14a,14b)を有する電池ケース(14)に電極群(25)が収納され、開口部(14a,14b)を封口するキャッププレート(33,33’)に電極端子(21,23)を各々取り付けた角形の二次電池が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池ケースにおける一方の側面に正極端子、他方の端部に負極端子が設けられた角形電池とすることで、高さの低い組電池とし易い。しかしながら、より信頼性の高い二次電池が求められる。たとえば、二次電池に異常が生じた際(熱暴走等)に発生したガスの排気経路が限定される。また、近年の二次電池ではガス発生量が多くなっている。
【0005】
本技術の目的は、より信頼性の高い二次電池および組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、以下の二次電池および組電池を提供する。
【0007】
[1]第1電極と、第1電極とは異なる極性を有する第2電極と、を含む電極体と、電極体および電解液を収容する外装体と、を備え、前記外装体は、それぞれ対向するように配置された第1壁と第2壁とを含み、第1壁は、外装体内の圧力が所定値以上になった際に外装体内のガスを外装体外に排出する第1ガス排出弁を含み、第2壁は、外装体内の圧力が所定値以上になった際に外装体内のガスを外装体外に排出する第2ガス排出を含む、二次電池。
【0008】
[2]外装体は、一方の端部に第1開口を有し、他方の端部に第2開口を有するケース本体と、第1開を封口する第1封口板と、第2開口を封口する第2封口板と、を含み、第1壁は、第1封口板であり、第2壁は、第2封口板であり、第1封口板には第1電極端子が設けられ、第2封口板には第2電極端子が設けられ、電極体は、一方の端部に前記第1電極に電気的に接続された複数の第1電極タブからなる第1電極タブ群を含み、他方の端部に第2電極に電気的に接続され複数の第2電極タブからなる第2電極タブ群を含み、第1電極タブ群は、第1電極端子と電気的に接続され、第2電極タブ群は、第2電極端子と電気的に接続されている、[1]に記載の二次電池。
【0009】
[3]第1壁の長手方向において、第1ガス排出弁は第1壁の中心から第1方向側にズレて配置され、第2壁の長手方向において、第2ガス排出弁は前記第2壁の中心から第1方向側にズレて配置されている、[1]または[2]に記載の二次電池。
【0010】
[4]第1ガス排出弁は、平面視の形状が長軸と短軸とを有し、長軸の方向が、第1壁の短手方向に延びるような向きで配置され、第1壁の長手方向において、第1ガス排出弁の中心は、第1壁の中心からズレた位置に配置されている、[1]または[2]に記載の二次電池。
【0011】
[5][1]から[4]のいずれか1項に記載の二次電池を複数個含む組電池であって、組電池において、第1壁の長手方向および第2壁の長手方向が、鉛直方向に延びるように配置され、第1壁の長手方向において、第1壁の鉛直方向の中心よりも上方側に第1ガス排出弁が配置され、第2壁の長手方向において、第2壁の鉛直方向の中心よりも上方側に第2ガス排出弁が配置されている、組電池。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、より信頼性の高い二次電池および組電池の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示す二次電池を矢印II方向からみた状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す二次電池を矢印III方向からみた状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す二次電池を矢印IV方向からみた状態を示す図である。
【
図7】負極板が成形される前の負極原板を示す正面図である。
【
図8】
図7に示す負極原板のVIII-VIII断面図である。
【
図9】負極原板から形成された負極板を示す正面図である。
【
図10】正極板が成形される前の正極原板を示す正面図である。
【
図12】正極原板から形成された正極板を示す正面図である。
【
図13】二次電池から取り出した電極体と集電体とを示す図である。
【
図14】負極タブ群と負極集電体との接続構造を示す図である。
【
図17】電極体をケース本体に挿入する工程を示す図である。
【
図18】封口板と電極体との間にスペーサを設ける工程を示す図である。
【
図19】封口板と電極体との間にスペーサを設けた状態を示す断面図である。
【
図21】封口板およびスペーサを介して電極体を押圧する機構の一例を示す図である。
【
図22】
図21に示す機構をZ軸方向から見た状態を示す図である。
【
図26】二次電池の製造方法の各工程を示すフロー図である。
【
図28】
図3の図に対応し、第1封口板の他の形態を示す図である。
【
図29】
図4の図に対応し、第2封口板の他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0015】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0016】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0017】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0018】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0019】
(電池の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る二次電池1の正面図である。
図2ないし
図4は、各々、
図1に示す二次電池1を矢印II方向、矢印III方向、矢印IV方向からみた状態を示す図である。
図5は、
図1に示す二次電池1の正面断面図である。
図28は、
図3の図に対応し、第1封口板の他の形態を示す図、
図29は、
図4の図に対応し、第2封口板の他の形態を示す図である。
【0020】
二次電池1は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、およびハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、二次電池1の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0021】
図1ないし
図5に示すように、二次電池1は、外装体100と、電極体200と、集電体300とを含む。外装体100は、ケース本体110と、第1壁としての第1封口板121と、第2壁としての第2封口板122とを含む。
【0022】
本願明細書においては、
図1ないし
図5に示すX軸方向(第1の方向)を二次電池1ないしケース本体110の「幅方向」と称し、同じくY軸方向(第2の方向)を二次電池1ないしケース本体110の「厚み方向」と称し、同じくZ軸方向(第3の方向)を二次電池1ないしケース本体110の「高さ方向」と称する場合がある。また、本開示の説明では、Z軸方向が天地の方向に一致しているものとする。したがって、
図1に示す二次電池1において、図示の上側が鉛直上方となり、図示の下側が鉛直下方となる。よって、
図2は底面から見た状態を示す。
【0023】
二次電池1を含む組電池を構成するときは、複数の二次電池1が、それらの厚み方向に積層される。積層された二次電池1は、拘束部材により積層方向(Y軸方向)に拘束されて電池モジュールとされてもよいし、拘束部材を用いることなく、電池パックのケースの側面に組電池が直接的に支持されてもよい。
【0024】
ケース本体110は、筒状、好ましくは角筒状の部材からなる。これにより、角形の二次電池1が得られる。ケース本体110は、金属製である。具体的には、ケース本体110は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などにより構成されている。
【0025】
図1,
図2に示すように、ケース本体の両端部に第1封口板121および第2封口板122が設けられる。ケース本体110は、たとえば、曲げ加工を施した板状部材の端辺どうしを当接させ(
図2に例示する接合部110A)、互いに接合(たとえばレーザ溶接)することで、角筒状に形成され得る。「角筒状」の角部はR形状を有してもよい。
【0026】
本実施の形態において、ケース本体110は、二次電池1の幅方向(X軸方向)において、つまり、第1壁である第1封口板121と第2壁である第2封口板122とを結ぶ方向(X軸方向)における長さが、二次電池1の厚み方向(Y軸方向)および高さ方向(Z軸方向)よりも長く形成される。
【0027】
ケース本体110のX軸方向の寸法(幅)は、好ましくは30cm以上程度である。これにより、比較的大型(高容量)の二次電池1を構成することができる。ケース本体110のZ軸方向の寸法(高さ)は、好ましくは20cm以下程度であり、より好ましくは15cm以下程度であり、さらに好ましくは10cm以下程度である。これにより、比較的高さの低い(低ハイト)の二次電池1を構成することができ、たとえば車両への搭載性が向上する。
【0028】
図3に示すように、ケース本体110の一方の端部には第1開口111が設けられる。第1開口111は、第1封口板121により封口される。第1封口板121には、負極端子131(第1電極端子)と、第1注液口141と、第1ガス排出弁151とが設けられる。負極端子131および第1ガス排出弁151の位置は適宜変更され得る。第1開口111および第1封口板121は、Y軸方向が短手方向、Z軸方向が長手方向となる略矩形形状を有する。本実施の形態では、第1ガス排出弁151は、第1封口板121の長手方向(Z方向)において、第1封口板121の中心CLから第1方向(鉛直方向の上方)側にズレて配置されている。なお、
図28に示すように第1注液口141は、第1封口板121の長手方向(Z方向)において、負極端子131に対して、第1ガス排出弁151と反対側に設けられてもよい。
【0029】
図4に示すように、ケース本体110の一方の端部には第2開口112が設けられる。第2開口112は、第2封口板122により封口される。第2封口板122には、正極端子132(第2電極端子)と、第2注液口142と、第2ガス排出弁152とが設けられる。正極端子132および第2ガス排出弁152の位置は適宜変更され得る。第2開口112および第2封口板122は、Y軸方向が短手方向、Z軸方向が長手方向となる略矩形形状を有する。第2ガス排出弁152は、第2封口板122の長手方向(Z方向)において、第2封口板122の中心CLから第1方向(鉛直方向の上方)側にズレて配置されている。なお、
図29に示すように第2注液口142は、第2封口板122の長手方向(Z方向)において、正極端子132に対して、第2ガス排出弁152と反対側に設けられてもよい。
【0030】
このように、第1ガス排出弁151および第2ガス排出弁152を対向する封口板のそれぞれに設けておくことで、後述する電極体200において、一方の端部側で短絡等の異常が生じた場合に、ガス排出弁が他方側にしか位置しない場合には、外装体100内から外部へのガス排出が遅れる可能性がある。他方、第1封口板121および第2封口板122のそれぞれに、ガス排出弁を設けることにより、電極体200のいずれの端部で異常が生じても、ガス排出が遅れることを抑制できる。特に、第1封口板121と第2封口板122とを結ぶ方向の長さ(X方向)が長い二次電池においては特に効果的である。
【0031】
第1ガス排出弁151を設ける位置は、
図3において上方を鉛直上方とした場合に、第1封口板121の中央(中心CL)位置または、中央から上方(中央からなるべく離れた位置)に配置することが好ましい。異常時において、電解液などの余剰な溶媒溜まりの第1ガス排出弁151からの吹き出しを軽微にすることができるからである。さらに、中央からなるべく離れた位置に配置することで、通常の使用時における第1封口板121の変形(中央部が膨れる)によるストレスを軽微にすることができる。
【0032】
第1ガス排出弁151として、トラック形状のガス排出弁を採用している。トラック形状の長手方向が、第1封口板121の短手方向に沿って配置され、トラック形状の短手方向が、第1封口板121の長手方向に沿って配置されている。この配置形態を採用することによっても、通常使用時に、外装体100が変形したとしても、第1ガス排出弁151への負荷を低減(誤作動、差動圧の変化等を抑制)しつつ、開口面積の確保を可能としている。また、第1封口板121に対して第1ガス排出弁151が機能した場合のガス排出開口面積の効率を高めることができる。
【0033】
第1ガス排出弁151は、第1封口板121の板厚さよりも薄く設けられたトラック形状の第1破断溝151Aが設けられ、中央には上下に延びる第1補助破断溝151Bが設けられている。さらに、第1補助破断溝151Bの厚さより薄く設けられた直線状の第1脆弱部151Cが設けられている。外装体100の内圧力が所定値以上になった際には、第1脆弱部151Cから判断し、さらに、第1破断溝151Aおよび第1補助破断溝151Bに沿って、第1ガス排出弁151が第1封口板121から引き剥がされることで、外装体100内のガスを外装体100外に排出する。第1脆弱部151Cは直線に限らず、第1破断溝151Aの内側に沿ったトラック形状でもよい。
【0034】
第2ガス排出弁152は、第2封口板122の板厚さよりも薄く設けられたトラック形状の第2破断溝152Aが設けられ、中央には上下に延びる第2補助破断溝152Bが設けられている。さらに、第2補助破断溝152Bの厚さより薄く設けられた直線状の第2脆弱部152Cが設けられている。外装体100の内圧力が所定値以上になった際には、第2脆弱部152Cから判断し、さらに、第2破断溝152Aおよび第2補助破断溝152Bに沿って、第2ガス排出弁152が第2封口板122から引き剥がされることで、外装体100内のガスを外装体100外に排出する。第2脆弱部152Cは直線に限らず、第2破断溝152Aの内側に沿ったトラック形状でもよい。
【0035】
上記第1ガス排出弁151および第2ガス排出弁152は、同じ形状で、対向する同じ位置に設けるようにしたが、形状、形成位置、開弁圧等に違いを持たせてもよい。たとえば、二次電池の熱暴走が発生した場合、二次電池の同一の組電池内の隣接した二次電池への類焼を防止するには熱暴走した二次電池の内燃物を外装体外へ放出ことが効果的である。内燃物を外装体外へ吐き出すためにはガス排出弁の開口部のガス排気の流速が高い方が好ましく、それは、開口面積が小さくすることと同義である。
【0036】
しかし、ガス排出弁の開口面積が小さいと内燃した電極体のデブリなどでガス排出弁の開口部が塞がり、排出が滞ることが考えられる。したがって、たとえば、第2ガス排出弁152の開口面積>第1ガス排出弁151の開口面積となるように設計することで、開口面積が小さい第1ガス排出弁151では、内容物の内燃物の吐き出しを(流速)優先し、開口面積が大きい第2ガス排出弁152では、排気(流量)を優先するといった選択が可能となる。なお、第2ガス排出弁152の開口面積/第1ガス排出弁151の開口面積の比は、1.1程度であるとよい。
【0037】
なお、
図6に示すように、第1ガス排出弁151の形状を円形としてもよい。具体的には、第1破断溝151Aを円形とし、第1破断溝151Aの内側に沿って、円形の第1脆弱部151Cを設けてもよい。第2ガス排出弁152にも同様に適用することができる。
【0038】
第1封口板121および第2封口板122は、金属製である。具体的には、第1封口板121および第2封口板122は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などにより構成されている。
【0039】
負極端子131は、電極体200の負極と電気的に接続される。正極端子132は、電極体200の正極と電気的に接続される。
【0040】
負極端子131は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえば銅または銅合金などにより構成され得る。負極端子131の外側表面部分にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる部分ないし層を設けてもよい。
【0041】
正極端子132は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などにより構成され得る。
【0042】
電極体200は、後述する正極板および負極板を有する扁平形状の電極体である。具体的には、電極体200は、図示しない帯状のセパレータを介して帯状の正極板および帯状の負極板がともに巻回された巻回型電極体である。ただし、本明細書において「電極体」は巻回型電極体に限定されず、複数枚の正極板と複数枚の負極板とが交互に積層された積層型電極体であってもよい。電極体が複数の正極板と複数の負極板を含み、各正極板に設けられた正極タブが積層されて正極タブ群を構成してもよく、各負極板に設けられた負極タブが積層されて負極タブ群を構成してもよい。
【0043】
再び
図5を参照して、外装体100は、電極体200を収容する。電極体200は、その巻回軸がX軸方向と平行になるように外装体100内に収容される。
【0044】
具体的には、外装体100内に配置された後述のセパレータとしての絶縁シート600の内側に、単数または複数の巻回型電極体が図示しない電解液(電解質)とともに収容されている。電解液(非水電解液)としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比(25℃)30:30:40の割合で混合した非水溶媒に、LiPF6を1.2モル/Lの濃度で溶解させたものを用いることができる。なお、電解液に代えて、固体電解質が用いられてもよい。
【0045】
電極体200は、第1封口板121側の端部(第1端部)に設けられた負極タブ群210A(第1電極タブ群)と、第2封口板122側の端部(第2端部)に設けられた正極タブ群220A(第2電極タブ群)とを含む。負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aは、電極体200の負極および正極に各々接続される。負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aは、電極体200の本体部分(正極板と負極板とがセパレータを介して積層された部分)から第1封口板121および第2封口板122に向かって突出するように形成される。
【0046】
集電体300は、負極集電体310(第1集電体)と正極集電体320(第2集電体)とを含む。負極集電体310および正極集電体320は、各々板状部材からなる。電極体200は、集電体300を介して負極端子131および正極端子132と電気的に接続される。
【0047】
負極集電体310は、樹脂製の絶縁部材を介して、第1封口板121上に配置される。負極集電体310は、負極タブ群210Aおよび負極端子131と電気的に接続される。負極集電体310は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえば銅または銅合金などにより構成され得る。
【0048】
正極集電体320は、樹脂製の絶縁部材を介して、第2封口板122上に設配置される。正極集電体320は、正極タブ群220Aおよび正極端子132と電気的に接続される。正極集電体320は、導電性素材(より具体的には金属)により構成され、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などにより構成され得る。なお、正極タブ群220Aを直接、または正極集電体320を介して第2封口板122に電気的に接続してもよい。この場合、第2封口板122が正極端子123を兼ねてもよい。
【0049】
(電極体200の構成)
図7は、負極板210(第1電極)が成形される前の負極原板210Sを示す正面図であり、
図8は、
図7に示す負極原板210SのVIII-VIII断面図であり、
図9は、負極原板210Sから形成された負極板210を示す正面図である。
【0050】
負極板210は、負極原板210Sを加工することにより製造される。
図6および
図7に示すように、負極原板210Sは、負極芯体211と、負極活物質層212とを含む。負極芯体211は、銅箔または銅合金箔である。
【0051】
負極芯体211には、両面の一方側の端部を除いて負極活物質層212が形成されている。負極活物質層212は、負極活物質層スラリーをダイコータによって塗布することにより形成される。
【0052】
負極活物質層スラリーは、負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、および、分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が約98:1:1となるように混練することによって作製される。
【0053】
負極活物質層スラリーが塗布された負極芯体211を乾燥させ、負極活物質層スラリーに含まれる水を除去することにより、負極活物質層212が形成される。さらに、負極活物質層212を圧縮することにより、負極芯体211および負極活物質層212を含む負極原板210Sが形成される。負極原板210Sを所定の形状に切断することにより、負極板210が成形される。負極原板210Sは、エネルギー線の照射によるレーザ加工、金型加工、または、カッター加工などにより切断することができる。
【0054】
図9に示すように、負極原板210Sから成形された負極板210の幅方向の一方端部には、負極芯体211からなる負極タブ210Bが複数設けられている。負極板210を巻回したとき、複数の負極タブ210Bが積層されて負極タブ群210Aとなる。複数の負極タブ210Bの各々の位置および突出方向の長さは、負極タブ群210Aが負極集電体310に接続される状態を考慮して適宜調整される。なお、負極タブ210Bの形状は
図9に例示するものに限定されない。
【0055】
図10は、正極板220(第2電極)が成形される前の正極原板220Sを示す正面図であり、
図11は、
図10に示す正極原板220SのXI-XI断面図であり、
図12は、正極原板220Sから形成された正極板220を示す正面図である。
【0056】
正極板220は、正極原板220Sを加工することにより製造される。
図10および
図11に示すように、正極原板220Sは、正極芯体221と、正極活物質層222と、正極保護層223とを含む。正極芯体221は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。
【0057】
正極芯体221には、両面の一方側の端部を除いて正極活物質層222が形成されている。正極活物質層222は、正極活物質層スラリーをダイコータによって塗布することにより正極芯体221上に形成される。
【0058】
正極活物質層スラリーは、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としての炭素材料、および、分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が約97.5:1:1.5となるように混練することによって作製される。
【0059】
正極保護層223は、正極芯体221に接し、正極活物質層222の幅方向の一方側の端部に形成されている。正極保護層223は、正極保護層スラリーをダイコータによって塗布することにより正極芯体221上に形成される。正極保護層223は、正極活物質層222の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。
【0060】
正極保護層スラリーは、アルミナ粉末、導電材としての炭素材料、結着材としてのPVdF、および、分散媒としてのNMPを、アルミナ粉末:炭素材料:PVdFの質量比が約83:3:14となるように混練することによって作製される。
【0061】
正極活物質層スラリーおよび正極保護層スラリーが塗布された正極芯体221を乾燥させ、正極活物質層スラリーおよび正極保護層スラリーに含まれるNMPを除去することにより、正極活物質層222および正極保護層223が形成される。さらに、正極活物質層222を圧縮することにより、正極芯体221、正極活物質層222および正極保護層223を含む正極原板220Sが形成される。正極原板220Sを所定の形状に切断することにより、正極板220が成形される。正極原板220Sは、エネルギー線の照射によるレーザ加工、金型加工、または、カッター加工などにより切断することができる。
【0062】
図12に示すように、正極原板220Sから成形された正極板220の幅方向の一方端部には、正極芯体221からなる正極タブ220Bが複数設けられている。正極板220を巻回したとき、複数の正極タブ220Bが積層されて正極タブ群220Aとなる。複数の正極タブ220Bの各々の位置および突出方向の長さは、正極タブ群220Aが正極集電体320に接続される状態を考慮して適宜調整される。なお、正極タブ220Bの形状は
図11に例示するものに限定されない。
【0063】
複数の正極タブ220Bの各々の根元には、正極保護層223が設けられている。正極タブ220Bの根元に必ずしも正極保護層223が設けられていなくてもよい。
【0064】
典型的な例では、負極タブ210B(1枚)の厚みは、正極タブ220B(1枚)の厚みよりも小さい。この場合、負極タブ群210Aの厚みは、正極タブ群220Aの厚みよりも小さい。
【0065】
(電極体200と集電体300との接続構造)
図13は、二次電池1から取り出した電極体200と集電体300とを示す図である。
図13に示すように、電極体200は、各々が巻回型電極体である2つの電極体201,202を重ねることによって形成されている。
図13に示す例では、2つの巻回型電極体を重ねる構造を示しているが、電極体200は1つの巻回型電極体により構成されてもよいし、3つ以上の巻回型電極体により構成されてもよいし、積層型電極体により構成されてもよい。
【0066】
負極タブ群210Aは、接合部310Aにおいて負極集電体310と接合され、正極タブ群220Aは、接合部320Aにおいて正極集電体320と接合される。接合部310A,320Aは、たとえば超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ等により形成し得る。
【0067】
図14は、負極タブ群210Aと負極集電体310との接続構造を示す図である。
図15,
図16は、各々、
図14に示す接続構造の正面図および断面図である。
【0068】
図14ないし
図16に示すように、負極集電体310は、電極体200と第1封口板121との間において負極端子131と接続されている。負極集電体310は、第1導電部材311と、第2導電部材312とを含む。第1導電部材311と第2導電部材312とは、接合部313において接合される。
【0069】
負極タブ群210Aは、接合部310Aにおいて負極集電体310の第1導電部材311と接合される。第1導電部材311は、接合部313において第2導電部材312と接続される。接合部313は、たとえば超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ等により形成し得る。
【0070】
第1導電部材311および第2導電部材312は、樹脂製の絶縁部材410を介して第1封口板121の内面側に取り付けられる。絶縁部材410は、第1封口板121に設けられた貫通孔を介して第1封口板121の外面側から内面側に達するように設けられる。なお、絶縁部材410が、負極端子131と第1封口板121の間に配置される部材と、第1導電部材311および第2導電部材312と第1封口板121の間に配置される部品とを含む、複数の部品から構成されてもよい。
【0071】
負極端子131は、絶縁部材410を介して第1封口板121に取り付けられる。負極端子131は、第1封口板121の外側に露出し、かつ、第1封口板121の内面側に設けられた負極集電体310の第2導電部材312に達するように設けられる。負極端子131と第2導電部材312とは、接合部131Aにおいて接合される。接合部131Aは、たとえば超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接、カシメ等により形成し得る。
【0072】
各部品の組み付け手順としては、まず、第1封口板121に負極端子301および第2導電部材440を、絶縁部材410と共に取り付ける。続いて、電極体200に接続された第1導電部材311が第2導電部材312に取り付けられる。このとき、第1導電部材311の一部が第2導電部材312と重なるように第1導電部材311が絶縁部材410上に配置される。続いて、接合部313において第1導電部材311と第2導電部材312とが溶接接続される。
【0073】
ただし、負極端子131は第1封口板121と電気的に接続されていてもよい。また、第1封口板121が負極端子131の役割を果たしてもよい。
【0074】
なお、
図14ないし
図16においては、2つの部品(第1導電部材311および第2導電部材312)からなる負極集電体310を例示したが、負極集電体310は、1つの部品から構成されていてもよい。
【0075】
図14ないし
図14においては負極側の接続構造について示したが、正極側についても、基本的な接続構造は負極側と同様である。
【0076】
(電極体200の挿入工程)
図17は、電極体200をケース本体110に挿入する工程を示す図である。
図17に示すように、電極体200とケース本体110の間には樹脂製の絶縁シート600(電極体ホルダ)が配置される。
【0077】
絶縁シート600は、たとえば樹脂により構成し得る。より具体的には、絶縁シート600の材質は、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)またはポリオレフィン(PO)である。
【0078】
絶縁シート600は、必ずしも電極体200の全面を覆う必要はない。絶縁シート600は、好ましくは電極体の外表面の50%以上程度、より好ましくは70%以上程度の面積を覆う。絶縁シート600は、略直方体状(扁平形状)の電極体200の6面のうち、少なくとも負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aが各々形成された2面以外の4面の全体を覆うことが好ましい。
【0079】
図18は、第1封口板121と電極体200との間にスペーサ510を配置する工程を示す図である。
図19は、第1封口板121と電極体200との間にスペーサ510を配置した状態を示す断面図である。
【0080】
図18,
図19に示すように、電極体200から第1封口板121に向かう負極タブ群210Aは、第1封口板121のY軸方向の中央部から端部に向かい、その後、逆向きに折り返して中央部に向かうように湾曲させられる。湾曲した負極タブ群210A(湾曲部)を収納するようにスペーサ510が設けられる。
【0081】
スペーサ510は、第1スペーサ511と、第2スペーサ512とを含む。第1スペーサ511および第2スペーサ512は、各々、第1封口板121の端部側から中央側に向かうようにY軸方向に沿ってスライドさせることにより、互いに係合する。これにより、スペーサ510は、絶縁部材410を介して第1封口板121に固定され、スペーサ510の位置の安定性が増す。
【0082】
図19に示すように、スペーサ510は、負極集電体310を収納する内部空間を形成し、負極タブ群210Aの先端部分もスペーサ510の内部空間に収納される。スペーサ510は、負極タブ群210Aを通過させる孔部を有する。
【0083】
スペーサ510の素材は特に限定されないが、樹脂などの絶縁性素材を用いることが好ましい。より具体的には、ポリオレフィン(PO)製のシートを用いることが好ましい。また、スペーサ510と電極体200との間に絶縁シート600を介在させてもよい。
【0084】
再び
図17を参照して、本実施の形態に係る二次電池1の製造方法においては、負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続した後に、第1開口111を介して、電極体200を正極タブ群220A側の端部側からケース本体110に挿入している。電極体200をケース本体110の所定の位置まで挿入したとき、正極タブ群220Aはケース本体110の第2開口112からケース本体110の外部に突出する。これにより、電極体200をケース本体110に挿入した後、正極端子132と正極タブ群220Aとの接続を行うことができる。
【0085】
ケース本体110に電極体200を挿入した後に、第1封口板121に取り付けられた負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続する場合には、ケース本体110に収納された電極体200の負極タブ群210Aがケース本体110の外部に十分に突出する長さが負極タブ群210Aに求められる。ケース本体110に電極体200を挿入する前に、第1封口板121に取り付けられた負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続することにより、ケース本体110に電極体200を挿入した後に取り付ける場合と比較して、負極タブ群210Aの長さを縮小することができる。結果として、ケース本体110の内部空間における負極板210および正極板220の体積占有率を増大させることができる。
【0086】
また、
図17の例では、負極タブ群210Aの湾曲部を収納するスペーサ510を設けた後に電極体200をケース本体110に挿入している。このようにすることで、電極体200の挿入工程における負極タブ群210Aの湾曲部の保護を図ることができる。
【0087】
また、
図17の例では、電極体200が絶縁シート600により覆われた状態で電極体200をケース本体110に挿入している。これにより、ケース本体110への挿入時の電極体200の損傷を抑制することができる。
【0088】
電極体200の挿入工程時に、ケース本体110を所定の角度に保持することができる。一例として、X軸方向(ケース本体110の幅方向)が水平方向に対して±45°以下程度の角度で交差するようにケース本体110を保持した状態で電極体200を挿入することが好ましい。たとえば、鉛直方向において、電極体200が挿入される第1開口111の上端部が、第2開口112の上端部よりも上方に位置するよう、ケース本体110を傾けた状態とし、ケース本体110に電極体200を挿入することができる。
【0089】
電極体200の挿入工程は、第1開口111側から電極体200を押し込む態様に限定されず、たとえば、第2開口112側から電極体200を引っ張る態様であってもよい。
【0090】
図20は、スペーサ510の変形例を示す図である。
図17ないし
図19の例では、第1封口板121の高さ方向(Z軸方向)の一部にスペーサ510が設けられているが、
図20に示すように、第1封口板121の高さ方向の略全域にわたってスペーサ510が設けられてもよい。このとき、スペーサ510は、負極タブ群210AからZ軸方向に離間した位置(第1領域)において、負極タブ群210Aの近傍(第2領域)よりも電極体200側に突出する部分を有してもよい。第1領域と第2領域との境界に段差(好ましくは1mm以上程度の段差)が形成されてもよい。このようにすることで、電極体200のケース本体110への挿入時における負極タブ群210Aの損傷を抑制することができる。
【0091】
(電極体を押圧する機構)
図21は、第1封口板121およびスペーサ510Aを介して電極体200を押圧する機構の一例を示す図である。
図22は、
図21に示す機構をZ軸方向から見た状態を示す図である。スペーサ510Aは、上述したスペーサ510の変形例である。
【0092】
図21,
図22に示すように、スペーサ510Aは、第1封口板121および電極体200の高さ方向(Z軸方向)において、負極タブ群210Aおよび負極集電体310を避けた位置(負極タブ群210Aおよび負極集電体310から離間した位置)に設けられる。より具体的には、スペーサ510Aは、Z軸方向において負極タブ群210Aを挟むように2箇所に分かれて設けられている。ただし、スペーサ510Aは、Z軸方向において負極タブ群210Aの片側にのみ設けられてもよい。スペーサ510Aは、たとえば接着、溶着、テープ貼り付けなどの方法により第1封口板121に固定し得る。
【0093】
スペーサ510Aが第2注液口142および第1ガス排出弁151と重なる場合には、第2注液口142および第1ガス排出弁151の機能を確保し得るように、スペーサ510Aに貫通孔、切り欠き、スリット等を設けることが好ましい。
【0094】
図21,
図22の例では、スペーサ510Aを介して電極体200を押圧することにより電極体200がケース本体110に挿入される。電極体200の挿入工程の初期にはスペーサ510Aを電極体200に当接させず、電極体200の一部がケース本体110に挿入された後にスペーサ510Aを介して電極体200を押圧することにより電極体200をさらに挿入してもよい。
【0095】
上述したスペーサに代えて、電極体200に固定されたスペーサを設けてもよい。電極体200へのスペーサの固定は、たとえば、テープ貼り付けなどにより行われる。
【0096】
なお、正極タブ群220Aを保護する観点から上記スペーサ510およびスペーサ510Aを、正極タブ群220A側に設けてもよい。正極タブ群220A側に配置するスペーサにおいても、第2注液口142が対向する位置に、電解液を通過させるための開口を設けておくことが好ましい。開口の形状は、電解液を通過させる形状であればどのような形状でもよい。
【0097】
負極タブ群210A側に配置するスペーサと、正極タブ群220A側に配置するスペーサとの厚さ(第1封口板121と第2封口板122とを結ぶ方向(X軸方向)における厚さ)を比較した場合には、電極体200と封口板の間のスペースは、第1封口板121側よりも第2封口板122側の方が大きい。よって、正極タブ群220A側に配置するスペーサの厚さの方が、負極タブ群210A側に配置するスペーサの厚さよりも大きい方がよい。
【0098】
再び、
図18および
図19を参照して、負極タブ群210Aは折り曲げられて、負極集電体310に接続され、さらに負極集電体310に負極端子131が接続されている。同様に、正極タブ群220Aは折り曲げられて、正極集電体320に接続され、さらに正極集電体320に正極端子132が接続されている(
図21参照)。負極タブ群210Aと負極集電体310の接合面は、第1封口板121に沿った平行に配置されることが好ましいが必ずしも平行でなくてもよい。たとえば、±30度の範囲内で配置されていることが好ましい。同様に、正極タブ群220Aと正極集電体320の接合面は、第2封口板122に沿った平行に配置されることが好ましいが必ずしも平行でなくてもよい。たとえば、±30度の範囲内で配置されていることが好ましい。
【0099】
ここで、
図23から
図25を参照して、他の形態のスペーサについて図示する。
図23は、他の形態のスペーサ510Bの斜視図、
図24は、他の形態のスペーサ510Cの斜視図、
図25は、他の形態のスペーサ510Dの斜視図である。以下に示すスペーサは、負極タブ群210A側および正極タブ群220A側のいずれにも配置することが可能である。
【0100】
図23に示すスペーサ510Bは、電極体200に対向する側に長方形型の開口510h1が設けられている。このスペーサ510Bの場合、第1注液口141(または第2注液口142)に対向する位置に開口510h1が位置する。
【0101】
図24に示すスペーサ510Cは、電極体200に対向する側に斜めに配置されたスリット状の開口510h2が設けられている。スリット状の開口510h2を設けた場合、十分な開口面積が確保され、脱気および注液に必要な流路面積が確保でき、さらに、注液した電解液が溜まりづらい利点を有する。
【0102】
図25に示すスペーサ510Dは、第1注液口141(または第2注液口142)に対向しない位置に長方形型の開口510h3が設けられている。この開口510h3の位置においては、電極タブの湾曲方向と垂直な位置に配置されることとなる。その結果、注液の勢いによるセパレータのメクレや電極(タブ含み)損傷を防ぐことができ、電極体挿入時の押圧を均等にでき、湾曲した電極タブがスペーサ内の空間からはみ出すことを防ぐことができる。
【0103】
スペーサの外形形態、開口の位置および形態は、上記スペーサに限定されるものではないが、負極タブ群210Aおよび正極タブ群220Aを保護する目的で配置するスペーサに適宜開口を設けておくことで、電極体の損傷抑制、あるいは意図しない短絡の抑制、および、電解液注液性の低下抑制を図ることが可能となる。
【0104】
第1封口板121により第1開口111を封口する際は、負極端子131と第1封口板121は絶縁される。この場合、負極端子131と第1封口板121の間には樹脂部材等の絶縁部材が配置されるとよい。なお、負極端子131と第1封口板121とは、電気的に接続されてもよい。第1封口板121が負極端子の役割を果たしてもよい。
【0105】
第2封口板122により第2開口112を封口する際は、正極端子132と第2封口板122は絶縁される。この場合、正極端子132と第2封口板122の間には樹脂部材等の絶縁部材が配置されるとよい。なお、正極端子132と第2封口板122は電気的に接続されていてもよい。第2封口板122が第2電極端子の役割を果たしてもよい。
【0106】
(二次電池1の製造工程)
図26は、二次電池1の製造方法の各工程を示すフロー図である。
図26に示すように、S10において、ケース本体110を準備する。次に、S20において、電極体200を作製する。S30において、第1封口板121および第2封口板122に設けられた電極端子と電極体200の電極タブ群とを電気的に接続する。このとき、まず負極端子131と負極タブ群210Aとを電気的に接続し(S31)、その後に負極側の第1封口板121と電極体200との間にスペーサ510を配置し(S40)、さらに電極体200をケース本体110に挿入する(S50)。このとき、正極タブ群220Aは、ケース本体110の第2開口112からケース本体110の外側に突出する。電極体200がケース本体110に挿入された後に、正極端子132と正極タブ群220Aとを電気的に接続する(S32)。
【0107】
本実施の形態においては、負極端子131と負極タブ群210Aとの接続(S31)、電極体200の挿入(S50)、正極端子132と正極タブ群220Aとの接続(S32)の順で行う例について説明したが、本技術の範囲はこれに限定されず、正極端子132と正極タブ群220Aとの接続(S32)、電極体200の挿入(S50)、負極端子131と負極タブ群210Aとの接続(S31)の順で行う場合もある。
【0108】
電極端子と電極タブ群との接続(S30)が完了した後、第1封口板121および第2封口板122により第1開口111および第2開口112を封口する(S60)。第1封口板121および第2封口板122による封口工程は、たとえばレーザ溶接により行われる。
【0109】
負極側の第1封口板121により第1開口111を封口する工程(S61)は、電極体200をケース本体110に挿入する工程(S50)の後であればよく、正極側の第2封口板122により第2開口112を封口する工程(S62)は、正極端子132と正極タブ群220Aとを電気的に接続する工程(S32)の後であればよい。
【0110】
したがって、たとえば、第1封口板121により第1開口111を封口する工程(S61)を、正極端子132と正極タブ群220Aとを電気的に接続する工程(S32)の前に行ってもよいし、第1封口板121により第1開口111を封口する工程(S61)を、第2封口板122により第2開口112を封口する工程(S62)の後に行ってもよい。さらに、第1封口板121および第2封口板122による封口を行う工程(S61,S62)の少なくとも一部を同時進行で行うことも可能である。
【0111】
次に、第2注液口142から外装体100内に電解液を注液する工程(S70)を行う。反対側には、第1注液口141を設けていることから、この第1注液口141を外装体100内のガス(空気あるいは窒素等)の排気孔として用いることが好ましい。これにより、電解液の外装体100内への注液性の向上を図ることができる。なお、第1注液口141から電解液を注液し、第2注液口142からガスの排気を行ってもよい。
【0112】
外装体100内への電解液の注液が完了した後、第1封止部材141aで第1注液口141を封止し(第1封止工程)、第2封止部材142aで第2注液口142を封止する(第2封止工程)。第1封止工程および第2封止工程は、どちらが先行してもよい。第1封止部材141aおよび第2封止部材142aは、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いて、ケース本体110にカシメ固定する。または、第1封止部材141aおよび第2封止部材142aをケース本体110に溶接にて固定する。
【0113】
ここで、上記第1封止工程および上記第2封止工程の一方を行った後、電極体200に充電を行なう充電工程を実施し、この充電工程の後、上記第1封止工程および上記第2封止工程の他方を行なう。一方側の貫通孔を封止した後、充電を行い、発生したガスを外装体100外に排気する。その後、他方側の貫通孔を封止することで、外装体100の膨れを抑制することができる。
【0114】
(組電池1000)
図27を参照して、上記した二次電池1を用いた組電池1000について説明する。
図27は、組電池1000の外観を示す模式図である。この組電池1000は、二次電池1を複数個含む組電池であって、第1封口板121の長手方向および第2封口板122の長手方向が、鉛直方向に延びるように配置され、第1封口板121の長手方向において、第1封口板121の中心(高さ方向の中心)よりも上方側に第1ガス排出弁151が配置され、第2封口板122の長手方向において、第2封口板122の中心(高さ方向の中心)よりも上方側に第2ガス排出弁152が配置されている。
【0115】
この組電池1000によれば、各二次電池1の最も大きい面積の面がそれぞれ対向する向きとなるように電池を配列している。隣接する二次電池の間にセパレータ等を配置してもよい。各二次電池1は、直列ないし並列に接続するとよい。隣接する二次電池1の端子同士をバスバー(図示省略)で接続する。組電池1000は、積層された二次電池1を拘束する拘束部材(図示省略)で一体として固定される。たとえば、一対のエンドプレートと、それらを接続するバインドバー、または、箱状の外装ケースを用いてもよい。
【0116】
この組電池1000を車両に搭載する場合には、第1封口板121の長手方向および第2封口板122の長手方向が、鉛直方向に延びる向きに配置することで、組電池1000の低背化の利点を十分に生かすことができる。
【0117】
(要約)
本実施の形態に係る二次電池1および組電池1000について、上述した内容を要約すると、以下のとおりである。
【0118】
二次電池1は、負極板210と、負極板210とは異なる極性を有する正極板220と、を含む電極体200と、電極体200および電解液を収容する外装体100と、を備え、外装体100は、それぞれ対向するように配置された第1封口板121と第2封口板122とを含み、第1封口板121は、外装体100内の圧力が所定値以上になった際に外装体100内のガスを外装体100外に排出する第1ガス排出弁151を含み、第2封口板122は、外装体100内の圧力が所定値以上になった際に外装体100内のガスを外装体100外に排出する第2ガス排出弁152を含む。この二次電池によれば、適切にガス排出が可能な信頼性の高い二次電池の提供を可能としている。
【0119】
一例に係る二次電池1では、外装体100は、一方の端部に第1開口111を有し、他方の端部に第2開口112を有するケース本体110と、第1開口111を封口する第1封口板121と、第2開口112を封口する第2封口板122と、を含み、第1封口板121には負極端子131が設けられ、第2封口板122には正極端子132が設けられ、電極体200は、一方の端部に負極板210に電気的に接続された複数の負極タブ210Bからなる負極タブ群210Aを含み、他方の端部に正極板220に電気的に接続された複数の正極タブ220Bからなる正極タブ群220Aを含み、負極タブ群210Aは、負極端子131と電気的に接続され、正極タブ群220Aは、正極端子132と電気的に接続されている。この二次電池によれば、体積エネルギー密度がより高く、効率的な二次電池の提供を可能する。
【0120】
一例に係る二次電池1では、第1封口板121の長手方向において、第1ガス排出弁151は第1封口板121の中心から第1方向側にズレて配置され、第2封口板122の長手方向において、第2ガス排出弁152は第2封口板122の中心から第1方向側にズレて配置されている。
【0121】
一例に係る二次電池1では、第1ガス排出弁151は、平面視の形状が長軸と短軸とを有し、長軸の方向が、第1封口板121の短手方向に延びるような向きで配置され、第1封口板121の長手方向において、第1ガス排出弁151の中心は、第1封口板121の中心からズレた位置に配置されている。この二次電池によれば、通常使用時に、外装体100が変形したとしても、ガス排出弁への負荷を低減しつつ、ガス排出の開口面積の確保を可能とする。
【0122】
組電池1000は、上述に記載のいずれかの二次電池1を複数個含む組電池であって、組電池1000において、第1封口板121の長手方向および第2封口板122の長手方向が、鉛直方向に延びるように配置され、第1封口板121の長手方向において、第1封口板121の鉛直方向の中心よりも上方側に第1ガス排出弁151が配置され、第2封口板122の長手方向において、第2封口板122の鉛直方向の中心よりも上方側に第2ガス排出弁152が配置されている。この組電池によれば、車両に搭載した場合には、第1封口板121の長手方向および第2封口板122の長手方向が、鉛直方向に延びる向きに配置することで、組電池1000の低背化の利点を十分に生かすことができる。
【0123】
(作用効果)
本実施の形態に係る二次電池1および組電池1000によれば、より信頼性の高い二次電池および組電池の提供を可能とする。
【0124】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0125】
1 二次電池、100 外装体、110 ケース本体、110A 接合部、111 第1開口、112 第2開口、121 第1封口板、122 第2封口板、131 負極端子、131A 接合部、132 正極端子、141 第1注液口、142 第2注液口、151 第1ガス排出弁、151A 第1破断溝、151B 第1補助破断溝、151C 第1脆弱部、152 第2ガス排出弁、152A 第2破断溝、152B 第2補助破断溝、152C 第2脆弱部、200,201,202 電極体、210 負極板、210A 負極タブ群、210B 負極タブ、210S 負極原板、211 負極芯体、212 負極活物質層、220 正極板、220A 正極タブ群、220B 正極タブ、220S 正極原板、221 正極芯体、222 正極活物質層、223 正極保護層、300 集電体、310 負極集電体、310A 接合部、311 第1導電部材、312 第2導電部材、313 接合部、320 正極集電体、320A 接合部、410 絶縁部材、411 第1絶縁部材、412 第2絶縁部材、510,510A,510B,510C,510D スペーサ、510B1,510C1 突出部、510D1 接合部、511 第1スペーサ、512 第2スペーサ、600 絶縁シート、1000 組電池。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図4に示すように、ケース本体110の
他方の端部には第2開口112が設けられる。第2開口112は、第2封口板122により封口される。第2封口板122には、正極端子132(第2電極端子)と、第2注液口142と、第2ガス排出弁152とが設けられる。正極端子132および第2ガス排出弁152の位置は適宜変更され得る。第2開口112および第2封口板122は、Y軸方向が短手方向、Z軸方向が長手方向となる略矩形形状を有する。第2ガス排出弁152は、第2封口板122の長手方向(Z方向)において、第2封口板122の中心CLから第1方向(鉛直方向の上方)側にズレて配置されている。なお、
図29に示すように第2注液口142は、第2封口板122の長手方向(Z方向)において、正極端子132に対して、第2ガス排出弁152と反対側に設けられてもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
図14ないし
図16においては負極側の接続構造について示したが、正極側についても、基本的な接続構造は負極側と同様である。