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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176311
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ミキサドラム制御装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/42 20060101AFI20241212BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B28C5/42
B60P3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094767
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 幸徳
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CC24
4G056CD64
4G056DA08
(57)【要約】
【課題】ミキサドラムを正確に制御する。
【解決手段】ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4を制御するコントローラ20では、駆動装置4は、油圧ポンプ5から油圧モータ6に導かれる作動流体の流れを制御する電磁比例弁31を有し、電磁比例弁31は、ミキサドラム2が正転方向に回転するように油圧ポンプ5が吐出した作動流体を油圧モータ6に導く正転位置31Aと、ミキサドラム2が逆転方向に回転するように油圧ポンプ5が吐出した作動流体を油圧モータ6に導く逆転位置31Bと、を切り換えるためのソレノイド32を有し、コントローラ20は、ミキサドラム2を正転方向に回転させる時のソレノイド32への指令値及びミキサドラム2を逆転方向に回転させる時のソレノイド32への指令値からミキサドラム2の回転方向を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサドラムを回転駆動する駆動装置を制御するミキサドラム制御装置であって、
前記駆動装置は、
駆動源によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプから吐出された作動流体によって作動して前記ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、
前記流体圧ポンプから前記流体圧モータに導かれる作動流体の流れを制御する電磁弁と、を有し、
前記電磁弁は、前記ミキサドラムが正転方向に回転するように前記流体圧ポンプが吐出した作動流体を前記流体圧モータに導く正転位置と、前記ミキサドラムが逆転方向に回転するように前記流体圧ポンプが吐出した作動流体を前記流体圧モータに導く逆転位置と、を切り換えるためのソレノイドを有し、
前記ミキサドラム制御装置は、前記ミキサドラムを正転方向に回転させる時の前記ソレノイドへの指令値及び前記ミキサドラムを逆転方向に回転させる時の前記ソレノイドへの指令値に基づいて前記ミキサドラムの回転方向を判定することを特徴とするミキサドラム制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミキサドラム制御装置であって、
前記ミキサドラムの回転方向の判定には、前記ミキサドラムまたは前記流体圧モータの回転情報を検出する回転センサが正常であれば前記回転センサの検出結果が用いられ、前記回転センサが異常であれば前記ソレノイドへの指令値が用いられることを特徴とするミキサドラム制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサドラム制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、架台に搭載され、撹拌方向及び排出方向に回転可能なミキサドラムと、ミキサドラムを回転駆動するための駆動装置と、駆動装置の動作を制御するコントローラと、を備えるミキサ車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-228152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなミキサ車では、ミキサドラムの制御のために、ミキサドラムの回転方向を検出するセンサを用いることが考えられる。しかしながら、この場合には、センサに異常が生じるとミキサドラムの回転方向を正確に検出することができず、ミキサドラムを正確に制御できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラムを正確に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミキサドラムを回転駆動する駆動装置を制御するミキサドラム制御装置であって、駆動装置は、駆動源によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプと、流体圧ポンプから吐出された作動流体によって作動してミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、流体圧ポンプから流体圧モータに導かれる作動流体の流れを制御する電磁弁と、を有し、電磁弁は、ミキサドラムが正転方向に回転するように流体圧ポンプが吐出した作動流体を流体圧モータに導く正転位置と、ミキサドラムが逆転方向に回転するように流体圧ポンプが吐出した作動流体を流体圧モータに導く逆転位置と、を切り換えるためのソレノイドを有し、ミキサドラム制御装置は、ミキサドラムを正転方向に回転させる時のソレノイドへの指令値及びミキサドラムを逆転方向に回転させる時のソレノイドへの指令値に基づいてミキサドラムの回転方向を判定することを特徴とする。
【0007】
この発明では、ミキサドラム制御装置は、正転位置と逆転位置とを切り換えるためのソレノイドへの指令値に基づいて、ミキサドラムの回転方向を判定する。つまり、ミキサドラム制御装置は、センサ等の検出結果ではなく、流体圧ポンプから流体圧モータに導かれる作動流体の流れを制御する電磁弁への指令値に基づいてミキサドラムの回転方向を判定する。そのため、ミキサドラムの回転方向を正確に判定することができる。
【0008】
本発明は、ミキサドラム制御装置は、ミキサドラムの回転方向の判定には、ミキサドラムまたは流体圧モータの回転情報を検出する回転センサが正常であれば回転センサの検出結果が用いられ、回転センサが異常であればソレノイドへの指令値が用いられることを特徴とする。
【0009】
この発明では、回転センサに異常が生じてもソレノイドへの指令値に基づいてミキサドラムの回転方向を判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ミキサドラムを正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の実施形態に係るミキサ車を上方から見た平面図である。
図1B】本発明の実施形態に係るミキサ車を後方から見た背面図である。
図2】本発明の実施形態に係るミキサ車のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】コントローラが回転センサが正常であるかどうかを判定し、ミキサドラムの回転数及び回転方向を演算(判定)するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るミキサ車について説明する。
【0013】
ミキサ車1は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車1が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0014】
図1A,Bに示すように、ミキサ車1は、運転室11と架台3とを備える車両である。ミキサ車1は、車両上に回転自在に搭載されたミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、駆動装置4を制御するミキサドラム制御装置としてのコントローラ20と、を備える。
【0015】
ミキサドラム2は、架台3に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられる。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。ミキサドラム2内には、ドラムブレード(図示省略)がドラム内壁面に沿って螺旋状に配設されており、ミキサドラム2とともにドラムブレードが回転することによって、ミキサドラム2内に積載された生コンの攪拌等が行われる。
【0016】
ミキサドラム2の開口部2aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。生コン工場においてミキサ車1に投入される生コンは、ホッパ16によって開口部2aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2aから排出される生コンは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0017】
ミキサドラム2は、ミキサ車1に搭載された走行用のエンジン10を駆動源として、駆動装置4を介して回転駆動される。駆動装置4は、エンジン10の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動する流体圧装置である。駆動装置4では、作動流体として作動油が用いられるが、作動流体として他の非圧縮性流体を用いてもよい。エンジン10の回転は、エンジン10から常時動力を取り出すPTO軸9(PTO:Power take-off)と、PTO軸9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8と、を介して駆動装置4に伝達される。
【0018】
図2に示すように、エンジン10は、エンジン10の出力及び回転数を調整するためのスロットル弁10aを有する。スロットル弁10aの開度は、コントローラ20により制御される。
【0019】
駆動装置4は、駆動源としてのエンジン10によって駆動されて作動流体としての作動油を吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から吐出された作動油によって作動してミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、油圧ポンプ5から油圧モータ6に導かれる作動油の流れを制御する電磁弁としての電磁比例弁31と、を有する。駆動装置4は、ミキサドラム2を正転方向及び逆転方向に回転させ、また、回転速度を変更させることが可能である。本実施形態では、「正転方向」は生コンを撹拌する攪拌方向及び生コンを投入する投入方向であり、「逆転方向」は生コンを排出する方向である排出方向である。
【0020】
油圧ポンプ5は、PTO軸9を介してエンジン10から常時取り出される動力によって回転駆動される。なお、油圧ポンプ5を回転駆動させる駆動源としては、走行用のエンジン10に限定されず、走行に用いられない補機用のエンジンや電動モータであってもよい。油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。なお、油圧ポンプ5は、吐出容量が可変であるポンプであればどのような形式のポンプであってもよい。油圧ポンプ5から吐出された作動油は、油圧モータ6に供給される。
【0021】
油圧モータ6は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンモータであり、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6の回転は、減速機7を介してミキサドラム2に伝達される。油圧モータ6の出力軸6aには、油圧モータ6の回転情報を検出する回転センサ6bが設けられる。本実施形態では、回転センサ6bは、A相とB相の二相のパルスが出力される二相出力式のセンサである。回転センサ6bは、コントローラ20と接続され、検出した二相のパルス信号を検出結果としてコントローラ20に出力する。
【0022】
油圧ポンプ5と油圧モータ6の間には、閉回路Lが設けられ、この閉回路Lを作動油が循環するようになっている。この閉回路L中に電磁比例弁31が設けられる。電磁比例弁31は、ミキサドラム2が正転方向に回転するように油圧ポンプ5が吐出した作動油を油圧モータ6に導く正転位置31Aと、ミキサドラム2が逆転方向に回転するように油圧ポンプ5が吐出した作動油を油圧モータ6に導く逆転位置31Bと、油圧ポンプ5から油圧モータ6への間の作動油の流れを遮断する中立位置31Cと、を有する。
【0023】
電磁比例弁31は、コントローラ20により電子制御され正転位置31Aと逆転位置31Bとを切り換えるためのソレノイド32と、一対のリターンスプリング33a,33bと、を有する。ソレノイド32は一対設けられ、電磁比例弁31を正転位置31Aに切り換えるための第一ソレノイド32aと、電磁比例弁31を逆転位置31Bに切り換えるための第二ソレノイド32bと、を有する。電磁比例弁31は、第一ソレノイド32aが励磁されることで正転位置31Aに切り換わり、ミキサドラム2を正転方向へ回転させるように油圧モータ6に作動油を供給する。また、電磁比例弁31は、第二ソレノイド32bが励磁されることで逆転位置31Bに切り換わり、ミキサドラム2を逆転方向へ回転させるように油圧モータ6に作動油を供給する。第一ソレノイド32a及び第二ソレノイド32bは、コントローラ20から出力される指令値によって作動する。指令値とは、具体的には電流値である。第一ソレノイド32a及び第二ソレノイド32bに出力する電流値を調整することで、電磁比例弁31は、正転位置31A、中立位置31C、及び逆転位置31Bにポジションが切り換えられる。
【0024】
電磁比例弁31は、第一ソレノイド32aへ通電されることで、その通電量に応じた開度で正転位置31Aに切り換えられる。これにより、油圧モータ6には、電磁比例弁31の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム2を正転方向に回転させるように供給される。反対に、電磁比例弁31は、第二ソレノイド32bへ通電されることで、その通電量に応じた開度で逆転位置31Bに切り換えられる。これにより、油圧モータ6には、電磁比例弁31の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム2を逆転方向に回転させるように供給される。電磁比例弁31は、第一ソレノイド32a及び第二ソレノイド32bへの通電量が大きいほど、開度が大きくなり多くの流量が油圧モータ6に導かれる。また、電磁比例弁31は、第一ソレノイド32a及び第二ソレノイド32bへの通電が遮断されると、一対のリターンスプリング33a,33bの付勢力によって中立位置31Cに切り換えられる。中立位置31Cでは、油圧モータ6への作動油の供給が遮断されるため、油圧モータ6は回転駆動されず停止する。
【0025】
上記構成の駆動装置4において、油圧ポンプ5から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されることによって油圧モータ6が回転し、供給される作動油の流量及び油圧モータ6の斜板の傾転角に応じて、油圧モータ6の回転数(回転速度)が変更される。駆動装置4の出力軸、すなわち油圧モータ6の出力軸6aは、減速機7を介してミキサドラム2に連結される。このため、油圧モータ6の回転数を増減することによって、ミキサドラム2の回転数を増減させることが可能であり、油圧モータ6の回転方向を切り換えることによって、ミキサドラム2の回転方向を正転方向と逆転方向とに切り換えることが可能である。
【0026】
このように、ミキサドラム2の回転数及び回転方向は、油圧モータ6の回転数及び回転方向に相関する。そのため、コントローラ20は、回転センサ6bが検出する回転情報(パルス信号)と減速機7のギヤ比とに基づいて、ミキサドラム2の回転数及び回転方向を演算(判定)することが可能である。つまり、コントローラ20は、回転センサ6bから入力された二相のパルス信号のいずれかのパルス数に基づいてミキサドラム2の回転数を演算し、二相のパルス信号の位相差に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定する。なお、回転センサ6bは、油圧モータ6ではなくミキサドラム2に設けられてミキサドラム2の回転情報を検出するものであってもよい。この場合には、コントローラ20は、回転センサ6bの検出結果からミキサドラム2の回転数及び回転方向を直接演算できる。このようにして演算されるミキサドラム2の回転数及び回転方向は、後述するように、コントローラ20によるミキサドラム2の制御に使用される。
【0027】
ミキサドラム2が正転方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら前方へと移動する。このように、ミキサドラム2を正転方向に回転させることで、ミキサドラム2内の生コンを攪拌することができる。一方、ミキサドラム2が逆転方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら後方へと移動する。このように、ミキサドラム2を逆転方向に回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出することができる。
【0028】
コントローラ20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAM等をROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって、駆動装置4の作動が制御される。
【0029】
コントローラ20には、上記のように、電磁比例弁31と、エンジン10のスロットル弁10aと、が接続され、コントローラ20からこれらを作動させる指令信号が出力される。さらに、コントローラ20には、作業者がミキサドラム2の回転数及び回転方向を操作するための入力部40と、回転センサ6bとが接続される。入力部40は、例えば、ミキサ車1の運転室11等に設けられるダイヤルつまみ型のポテンショメータや、コントローラ20と無線接続される端末等である。入力部40を通じて入力される作業者の操作入力は、操作信号としてコントローラ20に送信される。操作信号には、作業者により入力されるミキサドラム2の目標回転数及び目標回転方向を示す情報が含まれる。
【0030】
コントローラ20は、ミキサドラム2の制御のために、ミキサドラム2の現在の回転数及び回転方向を演算(判定)する。図3は、コントローラ20がミキサドラム2の回転数及び回転方向を演算(判定)するフローチャートである。コントローラ20は、例えば、回転センサ6bからパルス信号が入力されるごとに、図3に示す処理を繰り返して実行する。
【0031】
まず、コントローラ20は、回転センサ6bから入力される二相のパルス信号から、回転センサ6bが正常であるかどうかを判定する。具体的には、コントローラ20は、ステップS101において、回転センサ6bから一方の相であるA相のパルス信号が入力されているか否かの判定をする。A相のパルス信号が入力されている場合には、ステップS102へと進み、回転センサ6bから他方の相であるB相のパルス信号が入力されているか否かの判定をする。B相のパルス信号が入力されている場合には、ステップS103へと進んで回転センサ6bが正常であると判定し、ステップS104において、上記のように回転センサ6bの検出結果(パルス信号)に基づいて、ミキサドラム2の回転数及び回転方向を演算し、処理を終了する。
【0032】
一方で、コントローラ20は、ステップS101において回転センサ6bからA相のパルス信号が入力されていない場合や、ステップS102において回転センサ6bからB相のパルス信号が入力されていない場合には、ステップS105へと進み、回転センサ6bが異常であると判定する。このように、「回転センサ6bが正常である」とは、回転センサ6bが二相のパルス信号の両方を検出している状態であり、「回転センサ6bが異常である」とは、回転センサ6bが一方の相のパルス信号を検出しているにもかかわらず、他方の相のパルス信号を検出していない状態である。
【0033】
回転センサ6bが、一方のパルス信号のみを検出している状態である、異常である場合には、コントローラ20は、二相のパルス信号の位相差に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定することができない。つまり、コントローラ20は、回転センサ6bの検出結果に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定することができない。この場合には、コントローラ20は、ステップS106において、ミキサドラム2を正転方向に回転させる時のソレノイド32への指令値及びミキサドラム2を逆転方向に回転させる時のソレノイド32への指令値(具体的には、第一ソレノイド32a及び第二ソレノイド32bに通電している電流値)に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定する。つまり、コントローラ20は、第一ソレノイド32aに通電している場合にはミキサドラム2の回転方向が正転方向であると判定し、第二ソレノイド32bに通電している場合にはミキサドラム2の回転方向が逆転方向であると判定する。また、コントローラ20は、回転センサ6bが検出している一方の相のパルス信号のパルス数に基づいて、ミキサドラム2の回転数を演算する。ステップS106において、ミキサドラム2の回転方向の判定及び回転数の演算をすると、処理を終了する。
【0034】
このように、コントローラ20によるミキサドラム2の回転数の演算には、回転センサ6bの状態によらず、回転センサ6bの検出結果が用いられる。また、コントローラ20によるミキサドラム2の回転方向の判定には、回転センサ6bが正常であれば回転センサ6bの検出結果が用いられ、回転センサ6bが異常であればソレノイド32への指令値が用いられる。
【0035】
コントローラ20は、ミキサドラム2の回転状態が、入力部40から受信した操作信号に応じた状態となるように、ミキサドラム2の回転数及び回転方向を制御する。具体的には、ミキサドラム2の回転数及び回転方向が、入力部40から受信した目標回転数及び目標回転方向となるように、油圧ポンプ5、油圧モータ6、及び電磁比例弁31を制御する。
【0036】
より具体的には、コントローラ20は、入力部40から操作信号を受信すると、演算されたミキサドラム2の現在の回転数と、ミキサドラム2の目標回転数との差分を演算する。そして、電磁比例弁31のソレノイド32への通電量を当該差分に相当する量変化させる、または、エンジン10のスロットル弁10aを制御してエンジン10の回転数を当該差分に相当する量変化させることにより、油圧モータ6に供給される作動油の流量を制御し、ミキサドラム2を目標回転数で回転するように制御する。
【0037】
また、コントローラ20は、入力部40から操作信号を受信すると、回転センサ6bの検出結果またはソレノイド32への通電状態に基づいて判定されたミキサドラム2の現在の回転方向と、目標回転方向とに応じて、第一ソレノイド32aまたは第二ソレノイド32bに選択的に通電する。
【0038】
このようにして、コントローラ20により、ミキサドラム2の回転数と回転方向が制御される。ここで、コントローラ20が仮に回転センサ6bのみに基づいてミキサドラム2の回転数と回転方向を演算(判定)する構成では、回転センサ6bに異常が生じ一方の相のパルス信号が検出されない状態になると、回転センサ6bの検出結果からミキサドラム2の回転方向を判定することができず、ミキサドラム2を正確に制御することができない。これに対して、コントローラ20では、上記のように、回転センサ6bの状態に応じて、回転センサ6bの検出結果またはソレノイド32への指令値からミキサドラム2の回転方向を判定するとともに、回転センサ6bの状態によらず、回転センサ6bの検出結果からミキサドラム2の回転数を演算する。そのため、回転センサ6bに異常が生じた場合であっても、ミキサドラム2を正確に制御することができる。
【0039】
また、ソレノイド32への通電状態に基づくミキサドラム2の回転方向の判定結果は、例えば、回転センサ6bの異常の監視用として使用することもできる。具体的には、コントローラ20は、回転センサ6bの検出結果に基づいて判定されたミキサドラム2の現在の回転方向と、ソレノイド32への通電状態に基づいて判定されたミキサドラム2の現在の回転方向とを比較する。コントローラ20は、両者が異なる場合には、回転センサ6bが異常であるとして異常を検知し、図示しない報知部(ブザーや、ランプ、モニタ等)等を介して作業者に報知する。
【0040】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0041】
<変形例1>
上記実施形態では、コントローラ20によるミキサドラム2の回転方向の判定には、回転センサ6bが正常であれば回転センサ6bの検出結果が用いられ、回転センサ6bが異常であればソレノイド32への指令値が用いられる。これに限らず、コントローラ20は、回転センサ6bの状態に関わらず、常にソレノイド32への指令値からミキサドラム2の回転方向を判定するようにしてもよい。言い換えれば、コントローラ20は、回転センサ6bの検出結果からはミキサドラム2の回転方向を判定しないようにしてもよい。この構成であれば、コントローラ20は、センサ等の検出結果ではなく、油圧ポンプ5から油圧モータ6に導かれる作動油の流れを制御する電磁比例弁31の通電状態からミキサドラム2の回転方向を判定するため、ミキサドラム2の回転方向を正確に判定することができ、ミキサドラム2を正確に制御することができる。
【0042】
この場合には、回転センサ6bは、検出結果からコントローラ20がミキサドラム2の回転数のみを演算できればよい。そのため、回転センサ6bがエンジン10や油圧ポンプ5に設けられ、コントローラ20が回転センサ6bの検出結果に基づいてエンジン10や油圧ポンプ5の回転数や、油圧ポンプ5の流量等を演算し、その演算結果に基づきミキサドラム2の回転数を演算してもよい。
【0043】
<変形例2>
上記実施形態では、回転センサ6bが正常であれば、コントローラ20は、回転センサ6bの検出結果(パルス信号)に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定する。これに限らず、回転センサ6bがパルス信号に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定し、その判定結果をコントローラ20に出力する構成であってもよい。つまり、回転センサ6bが正常であれば、ミキサドラム2の回転方向の判定には回転センサ6bの検出結果が用いられればよく、ミキサドラム2の回転方向の判定は、コントローラ20及び回転センサ6bのいずれで行ってもよい。
【0044】
<変形例3>
上記実施形態では、コントローラ20は、ミキサドラム2の現在の回転方向と、入力部40から受信した目標回転方向とに応じて、第一ソレノイド32aまたは第二ソレノイド32bに選択的に通電する。これに限らず、コントローラ20は、ミキサドラム2の現在の回転方向を参照せずに、目標回転方向に応じて第一ソレノイド32aまたは第二ソレノイド32bに選択的に通電する構成であってもよい。
【0045】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0046】
ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4を制御するミキサドラム制御装置としてのコントローラ20では、駆動装置4は、駆動源としてのエンジン10によって駆動されて作動流体を吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から吐出された作動流体によって作動してミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、油圧ポンプ5から油圧モータ6に導かれる作動流体の流れを制御する電磁弁としての電磁比例弁31と、を有し、電磁比例弁31は、ミキサドラム2が正転方向に回転するように油圧ポンプ5が吐出した作動流体を油圧モータ6に導く正転位置31Aと、ミキサドラム2が逆転方向に回転するように油圧ポンプ5が吐出した作動流体を油圧モータ6に導く逆転位置31Bと、を切り換えるためのソレノイド32を有し、コントローラ20は、ミキサドラム2を正転方向に回転させる時のソレノイド32への指令値及びミキサドラム2を逆転方向に回転させる時のソレノイド32への指令値に基づいてミキサドラム2の回転方向を判定する。
【0047】
この構成では、コントローラ20は、正転位置31Aと逆転位置31Bとを切り換えるためのソレノイド32への指令値から、ミキサドラム2の回転方向を判定する。つまり、コントローラ20は、センサ等の検出結果ではなく、油圧ポンプ5から油圧モータ6に導かれる作動流体の流れを制御する電磁比例弁31への指令値からミキサドラム2の回転方向を判定する。そのため、ミキサドラム2の回転方向を正確に判定することができる。
【0048】
また、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転方向の判定には、ミキサドラム2または油圧モータ6の回転情報を検出する回転センサ6bが正常であれば回転センサ6bの検出結果が用いられ、回転センサ6bが異常であればソレノイド32への指令値が用いられる。
【0049】
この構成では、回転センサ6bに異常が生じてもソレノイド32への指令値からミキサドラム2の回転方向を判定することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0051】
1…ミキサ車、2…ミキサドラム、5…油圧ポンプ(流体圧ポンプ)、6…油圧モータ(流体圧モータ)、6b…回転センサ、10…エンジン(駆動源)、20…コントローラ(ミキサドラム制御装置)、31…電磁比例弁(電磁弁)、31A…正転位置、31B…逆転位置、32…ソレノイド
図1A
図1B
図2
図3