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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176312
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電磁流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/58 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01F1/58 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094768
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉明
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】矢野間 潤持
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035BE08
(57)【要約】
【課題】ケースの円周上の突合せ部分における溶接不良の発生を抑制することを課題とする。
【解決手段】電磁流量計は、流体が流れる測定管と、測定管の軸方向に所定の間隔を空けて測定管の外周面に配置されるとともに、測定管の径方向の外側に向かって突出する一対の壁部と、測定管の外周面上で一対の壁部の間に載置されるセンサ部品と、一対の壁部が有する径方向の2つの端部のうち前記径方向の外側に位置する方の端部の天面に当接するとともに測定管の外周面に沿ってセンサ部品を覆う覆部材とを有し、一対の壁部は、覆部材の周壁の円周上の突合せ部分に設けられたジョッグルの下面に当接する第1の当接面と、ジョッグルの軸方向の側面に当接する第2の当接面とを含む段差部を天面よりも軸方向の内側に有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる測定管と、
前記測定管の軸方向に所定の間隔を空けて前記測定管の外周面に配置されるとともに、前記測定管の径方向の外側に向かって突出する一対の壁部と、
前記測定管の外周面上で前記一対の壁部の間に載置されるセンサ部品と、
前記一対の壁部が有する前記径方向の2つの端部のうち前記径方向の外側に位置する方の端部の天面に当接するとともに前記測定管の外周面に沿って前記センサ部品を覆う覆部材とを有し、
前記一対の壁部は、前記覆部材の周壁の円周上の突合せ部分に設けられたジョッグルの下面に当接する第1の当接面と、前記ジョッグルの前記軸方向の側面に当接する第2の当接面とを含む段差部を前記天面よりも前記軸方向の内側に有することを特徴とする電磁流量計。
【請求項2】
前記ジョッグルの下面および前記第1の当接面が重複するラップ量は、前記ジョッグルの軸方向の公差と、前記一対の壁部が有する端部の内側面の間隔の公差とに基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項3】
前記覆部材の下面および前記一対の壁部が有する端部の天面が重複するラップ量は、前記覆部材の軸方向の公差と、前記一対の壁部が有する前記第2の当接面の間隔の公差とに基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項4】
前記覆部材の側面及び前記一対の壁部が有する端部の外側面の間隔は、前記ジョッグルの軸方向の公差と、前記一対の壁部が有する端部の外側面の間隔の公差とに基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項5】
前記センサ部品は、前記測定管内で前記流体が流れる方向に対して直交する方向に磁界を発生させる励磁コイルおよび前記流体の通過により発生する起電力を検出する電極を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の電磁流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁流量計では、測定対象とする流体を流す測定管の外周面にセンサ部品が搭載される。例えば、測定管の外周面には、測定管内で流体が流れる方向に対して直交する方向に磁界を発生させる励磁コイルや導電性を有する流体の通過により発生する起電力を取り出す電極などのセンサ部品が組み付けられる。
【0003】
これらのセンサ部品を保護する側面から、測定管の外周面に沿ってセンサ部品を被覆する筒状のケースが巻装される。このようなケースの円周上の突合せ部分は、ケースの円弧長の公差を吸収するために、ジョッグル構造とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-105929号公報
【特許文献2】特開2016-095279号公報
【特許文献3】特開平11-339737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のケースの円周上の突合せ部分には、ジョッグルの幅方向の公差により間隙が生じるので、溶接不良が起こる場合がある。
【0006】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、ケースの円周上の突合せ部分における溶接不良の発生を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る電磁流量計は、流体が流れる測定管と、前記測定管の軸方向に所定の間隔を空けて前記測定管の外周面に配置されるとともに、前記測定管の径方向の外側に向かって突出する一対の壁部と、前記測定管の外周面上で前記一対の壁部の間に載置されるセンサ部品と、前記一対の壁部が有する前記径方向の2つの端部のうち前記径方向の外側に位置する方の端部の天面に当接するとともに前記測定管の外周面に沿って前記センサ部品を覆う覆部材とを有し、前記一対の壁部は、前記覆部材の周壁の円周上の突合せ部分に設けられたジョッグルの下面に当接する第1の当接面と、前記ジョッグルの前記軸方向の側面に当接する第2の当接面とを含む段差部を前記天面よりも前記軸方向の内側に有する。
【0008】
上記の電磁流量計において、前記ジョッグルの下面および前記第1の当接面が重複するラップ量は、前記ジョッグルの軸方向の公差と、前記一対の壁部が有する端部の内側面の間隔の公差とに基づいて設定されてもよい。
【0009】
上記の電磁流量計において、前記覆部材の下面および前記一対の壁部が有する端部の天面が重複するラップ量は、前記覆部材の軸方向の公差と、前記一対の壁部が有する前記第2の当接面の間隔の公差とに基づいて設定されてもよい。
【0010】
上記の電磁流量計において、前記覆部材の側面及び前記一対の壁部が有する端部の外側面の間隔は、前記ジョッグルの軸方向の公差と、前記一対の壁部が有する端部の外側面の間隔の公差とに基づいて設定されてもよい。
【0011】
上記の電磁流量計において、前記センサ部品は、前記測定管内で前記流体が流れる方向に対して直交する方向に磁界を発生させる励磁コイルおよび前記流体の通過により発生する起電力を検出する電極を含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記の電磁流量計によれば、ケースの円周上の突合せ部分における溶接不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、電磁流量計の外観構成を示す斜視図である。
図2図2は、電磁流量計の内部構造を示す斜視図である。
図3図3は、関連技術CA1に係るケースの組付方法を示す模式図である。
図4図4は、ケースの幅の削減例を示す模式図である。
図5図5は、ケースの円周上の突合せ部分の間隙を示す図である。
図6図6は、電磁流量計の配管接続口を示す側面図である。
図7図7は、電磁流量計のA-A矢視の断面図である。
図8図8は、ケース周辺の各部材の寸法を示す模式図である。
図9図9は、ケース周辺の各部材の寸法の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本願に係る電磁流量計の実施の形態(以下、「実施形態」と記載)について説明する。
【0015】
<全体構成>
図1は、電磁流量計1の外観構成を示す斜視図である。図1に示す電磁流量計1は、ファラデーの電磁誘導現象を利用して、導電性を有する流体が磁界中を通過する流れによって発生する起電力に基づいて流量を測定するものである。
【0016】
電磁流量計1は、測定対象とする流体が流れる配管(図示せず)の経路のうち任意のポイントに介装できる。例えば、フランジ形の電磁流量計1では、測定管2の両端の外周部に形成されたフランジ3が配管側のフランジ(図示せず)にボルトやナットなどの締付部品を介して締め付けられることにより、電磁流量計1が配管接続される。
【0017】
このような電磁流量計1では、パイプ状に形成された測定管2の外周面に各種のセンサ部品が搭載される。例えば、測定管2の外周面には、測定管2内で流体が流れる方向に対して直交する方向に磁界を発生させる励磁コイルや導電性を有する流体の通過により発生する起電力を検出する電極などのセンサ部品が組み付けられる。
【0018】
これらのセンサ部品を保護する側面から、測定管2の外周面に沿ってセンサ部品を被覆する筒状のケース10が巻装される。例えば、図1に破線状の太線で示す通り、ケース10の側端の部分が円周状に溶接されるとともに、図1に実線状の太線で示す通り、ケース10の円周上の突合せ部分が直線状に溶接される。以下、前者の溶接を指して「円周溶接」と表記するとともに後者の溶接を指して「直線溶接」と表記する場合がある。このようなケース10の円周上の突合せ部分は、ケース10の円弧長の公差を吸収するために、ジョッグル構造とされる。
【0019】
図2は、電磁流量計1の内部構造を示す斜視図である。図2には、測定管2およびケース10の一部が切り欠いた状態で電磁流量計1の内部構造が示されている。図2に示すように、測定管2の外周面に搭載されたセンサ部品は、測定管2の外周面、リング状プレート5の内側面(フランジ3の反対側)およびケース10の内周面で囲われた内部空間7により封止される。このような内部空間7が確保されることにより、ケース10の外部からの湿気や水の浸入を抑制できる。
【0020】
<ケースの組付構造の遷移>
<関連技術CA1>
次に、ケース10が測定管2の外周面に組付けられる構造の遷移について説明する。ここでは、ケース10の組付構造の例として関連技術CA1を説明した後に関連技術CA1の改善案である関連技術CA2について説明することとする。
【0021】
図3は、関連技術CA1に係るケースの組付方法を示す模式図である。図3に示すように、関連技術CA1では、測定管2の両端に形成されたフランジ3の内側面が凹設されることにより、環状溝3aが形成される。
【0022】
フランジ3の内側面に形成された環状溝3a内には、帯状板をロール加工で湾曲させることにより形成されたリング状鍔部6の側縁が嵌め込まれる。このようにフランジ3の環状溝3aに嵌め込まれたリング状鍔部6のうちフランジ3の内側面と連接して外部に露出する部分が溶接されることにより溶接部8が形成される。
【0023】
さらに、リング状鍔部6の天面には、ケース10aの側端を支持する支持面6aが機械加工される。このような支持面6aに載置されたケース10aの側端が溶接されることにより、ケース10aが測定管2の外周面に沿って巻装される。
【0024】
<関連技術CA1の課題>
このような関連技術CA1によれば、ケース10aの幅方向、すなわち測定管2の軸方向(Z軸方向)の寸法を測定管2の両端に形成されたフランジ3の間隔と同等の寸法とする必要があるので、ケース10aのコストが高くなる。加えて、ケース10aの幅の寸法が大きくなるにしたがって電磁流量計1の重量も増加する。
【0025】
これらコストや重量の増加は、測定管2の口径が中口径、大口径といったように測定管2の口径が大きくなるにしたがってケース10aの幅の寸法も大きくする必要があるので、測定管2の口径が大きくなるにつれてより顕著になる。
【0026】
<関連技術CA2>
このような関連技術CA1の改善案として、ケース10の幅を削減する関連技術CA2が挙げられる。図4は、ケース10の幅の削減例を示す模式図である。図4に示すように、関連技術CA1では、フランジ3の環状溝3aに嵌め込まれたリング状鍔部6にケース10aの側端を支持させることにより、内部空間7-1が確保される。一方、関連技術CA2では、一対のリング状プレート5にケース10の側端を支持させることにより、内部空間7-2が確保される。
【0027】
このように、関連技術CA1では、ケース10aの幅の寸法がフランジ3の間隔と同等である一方で、関連技術CA2では、ケース10の幅の寸法がリング状プレート5の間隔まで削減される。
【0028】
<関連技術CA2の課題>
しかしながら、上記の関連技術CA2では、ケース10の円周上の突合せ部分でジョッグルの幅方向の公差により間隙が生じるので、溶接不良が起こる場合がある。
【0029】
図5は、ケース10の円周上の突合せ部分の間隙を示す図である。図5には、関連技術CA2における破線の枠に対応する範囲が拡大された拡大図21が示されている。さらに、図5には、ジョッグル11の視認性を高める側面から、拡大図21に含まれるケース10の塗りつぶしが透過状態で示された透過図22が示されている。
【0030】
図5に示すように、ケース10の円周上の突合せ部分には、ケース10の円弧長の公差を吸収するために、ジョッグル11が設けられる。すなわち、ケース10の円周上の突合せ部分である2つの端部E1および端部E2は、ケース10の円弧長に公差が生じるので、必ずしも接合するとは限らない。このため、ケース10の円周上の突合せ部分のうち一方の端部E1から延在するとともに他方の端部E2の下側面に密接する状態で延出する段付き面がジョッグル11として形成される。
【0031】
このようなジョッグル11が端部E2を係止することにより、ケース10の円弧長のばらつきより過不足が生じる場合でも、ケース10の円周上の突合せ部分を接合できるので、ケース10の円弧長の公差を吸収できる。
【0032】
その一方で、上記の関連技術CA2では、ジョッグル11の幅方向、すなわち測定管2の軸方向(Z方向)に生じる公差の影響から、一対のリング状プレート5の間隔と、ジョッグル11の幅の寸法とを一致させるのが困難な側面がある。
【0033】
そして、一対のリング状プレート5の間隔およびジョッグル11の幅の寸法が一致しない場合、一対のリング状プレート5の間隔およびジョッグル11の幅の寸法のずれが間隙G1として現れる。
【0034】
このような間隙G1を無視してケース10の円周上の突合せ部分の溶接、すなわち直線溶接(図1に示す太い実線部分の溶接)を実施しようとすれば、溶接により溶けた部分が間隙G1に落ちることで、溶接不良が起こる。最悪の場合、ケース10の円周上の突合せ部分に不完全溶接(穴)が発生するおそれもある。
【0035】
さらに、上記の間隙G1は、溶接時に発生する高熱を内部空間7-2へ伝搬させるので、内部空間7-2に搭載されたセンサ部品に悪影響を与える場合がある。最悪の場合、センサ部品が破損するおそれもある。
【0036】
このような関連技術CA2における課題は、ケース10の幅が削減されるのに伴って間隙G1およびセンサ部品の距離が縮まることにより生じる一面がある。つまり、上記の関連技術CA1では、ケース10aの側端が一対のフランジ3近傍で支持されるので、たとえ間隙が生じたとしてもセンサ部品までの距離は上記の関連技術CA2に比べて長い。このため、上記の関連技術CA1では、ケース10aの円周上の突合せ部分の直線溶接がセンサ部品に与える影響が小さい。その一方で、上記の関連技術CA2では、ケース10の側端がフランジ3よりも中央側にあるリング状プレート5で支持されるので、間隙G1からセンサ部品までの距離が上記の関連技術CA1に比べて短い。それ故、上記の関連技術CA2では、ケース10の円周上の突合せ部分の直線溶接がセンサ部品に与える影響も大きい。
【0037】
<課題解決アプローチ>
<リング状プレート5の段差構造>
そこで、本実施形態に係る電磁流量計1では、測定管2の外周面に互いが対向する状態で装着される一対のリング状プレート5をジョッグル11の下面に当接する第1の面とジョッグル11の側面に当接する第2の面とを含む段差構造とする。
【0038】
図6は、電磁流量計1の配管接続口を示す側面図である。図6には、ジョッグル11の視認性を高める側面から、フランジ3の一部を透過状態として筒状のケース10およびケース10の円周上の突合せ部分に形成されたジョッグル11が示されている。
【0039】
このように図6に示すA-A矢視の断面図を図7に示す。図7は、電磁流量計1のA-A矢視の断面図である。図7には、同図に示す断面図のうち破線で示す枠に対応する範囲の拡大図31および拡大図32が示されている。
【0040】
ここで、上記の関連技術CA2および本実施形態の間の対比で説明を行う側面から、拡大図31には、上記の関連技術CA2に係るジョッグルの周辺構造が示される一方で、拡大図32には、本実施形態に係るジョッグルの周辺構造が示されている。
【0041】
例えば、上記の関連技術CA1では、図7に示す拡大図31の通り、一対のリング状プレート5の間隔およびジョッグル11の幅の寸法のずれが間隙G1として現れる。このような間隙G1は、ケース10を貫通してケース10の内部および外部を疎通する空間(穴)となる。このため、間隙G1は、直線溶接(図1に示す太い実線部分の溶接)時に溶けた部分、例えば母材や溶接棒、溶加材などの一部の他、直線溶接時に発生する熱がケース10内部に浸入する経路となり得る。
【0042】
その一方で、本実施形態では、図7に示す拡大図32の通り、ジョッグル11の下面に当接する第1の面51と、ジョッグル11の軸方向(Z軸方向)の側面に当接する第2の面52とを含む段差部50がリング状プレート5に形成される。
【0043】
このため、本実施形態においても、ジョッグル11の側端および第2の面52の間で間隙G2が生じ得るが、ジョッグル11の下面および第1の面51が当接するので、ケース10内部への浸入経路が遮断される。それ故、直線溶接時に溶けた部分がケース10内部に浸入したり、あるいは直線溶接時に発生する熱がケース10内部に伝搬したりといった事態を抑制できる。
【0044】
このとき、第1の面51およびジョッグル11の下面の間の距離は、より短い方が熱等の遮断効果は高まるが、必ずしも第1の面51およびジョッグル11の下面が密接せずともよい。なぜなら、ケース10内部への浸入経路は、本実施形態に係る段差部50により、間隙G2からの直線状の経路とはならないからである。すなわち、ケース10内部への浸入経路は、ジョッグル11の側面および第2の面52により形成される部分と、ジョッグル11の下面および第1の面51により形成される部分とを含むL字状の経路となる。このため、必ずしも第1の面51およびジョッグル11の下面が密接せずとも、L字状の経路の屈曲部分で十分な遮断効果を得ることができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る電磁流量計1によれば、直線溶接時に溶けた部分がケース10内部に浸入することを抑制するので、ケース10の円周上の突合せ部分における溶接不良の発生を抑制できる。加えて、本実施形態に係る電磁流量計1によれば、直線溶接時に発生する熱がケース10内部に伝搬することも抑制するので、センサ部品の破損も抑制できる。
【0046】
<ケース周辺の各部材の寸法>
次に、ケース10周辺の各部材の寸法について説明する。図8は、ケース10周辺の各部材の寸法を示す模式図である。図8には、図7に示す断面図のうち破線で示す枠に対応する範囲、すなわち図7に示すケース10の右片側が拡大されるとともに模式化されている。
【0047】
<寸法d1>
ジョッグル11の側面および第2の面52の隙間(図8の寸法d1)には、ジョッグル11およびリング状プレート5の各部材が組み立て時に干渉しない呼び値、いわゆる呼び寸法が設定される。このような寸法d1の呼び値は、あくまで一例として、ジョッグル11の幅方向(Z方向)の公差と、左右両側で一対となる第2の面52の間隔の公差とに基づいて設定できる。
【0048】
<寸法d2>
ジョッグル11の下面及び第1の面51が重複するラップ量(図8の寸法d2)には、各部材の実寸法が公差の範囲でばらつく場合でも、ケース10の円周上の突合せ部分に生じる間隙G2から伝搬する熱の遮断効果を獲得できる呼び値が設定される。
【0049】
このように熱の遮断効果を獲得する側面から、寸法d2には、ジョッグル11の幅方向の公差及び左右両側で一対となるリング状プレート5の内側面5aの間隔の公差に基づいて寸法d2の実寸法が閾値Th1、例えば0.7mm以上となる呼び値が設定される。
【0050】
<寸法d3>
ケース10の下面およびリング状プレート5の天面5bが重複するラップ量(図8の寸法d3)には、各部材の実寸法が公差の範囲でばらつく場合でも、ケース10の円周上で生じる間隙が生じることを抑制できる呼び値が設定される。
【0051】
すなわち、ケース10の軸方向(Z軸方向)の幅は、公差が生じるので、ケース10の円周上で一定とならない。このため、ケース10の幅方向の公差を無視して寸法d3のラップ量が設定される場合、ケース10の幅がリング状プレート5の内側面5aの間隔に満たず、ケース10の側端がリング状プレート5の天面5bに届かない部分に間隙が生じる。このようにケース10の円周上で間隙が生じるのを抑制し、以って円周溶接(図1に示す太い破線部分の溶接)時に熱がケース10内部に伝搬するのを抑制する側面から、寸法d3には、寸法d3の実寸法が閾値Th2、例えば2.4mm以上となる呼び値が設定される。このような寸法d3の呼び値は、あくまで一例として、ケース10の幅方向の公差と、左右両側で一対となる第2の面52の間隔の公差とに基づいて設定できる。
【0052】
<寸法d4>
ケース10の側面及びリング状プレート5の外側面5cの間隔(図8の寸法d4)には、各部材の実寸法が公差の範囲でばらつく場合でも、ケース10の円周溶接(図1に示す太い破線部分の溶接)の自動化が実現可能なスペースを確保できる呼び値が設定される。
【0053】
例えば、ケース10の円周溶接を自動化溶接(MIG溶接)により実現するには、溶接時に溶けたものがリング状プレート5の外側面5cへ漏れ落ちない程度のスペースが確保されるのが好ましい。このような側面から、寸法d4の呼び値は、ケース10の幅方向の公差と、左右両側で一対となるリング状プレート5の外側面5cの間隔の公差とに基づいて設定できる。
【0054】
<寸法の設定例>
図9は、ケース10周辺の各部材の寸法の設定例を示す図である。図9には、大口径の測定管2を搭載する電磁流量計1における各部材の寸法の設定例が示されており、部材ごとに寸法箇所の解説、呼び値、公差、平均値、最大値および最小値などが示されている。
【0055】
ここで、図9に示す寸法の設定例は、測定管2の口径が大きくなるにしたがってケース10の幅やケース10の円弧長、一対のリング状プレート5の間隔などの公差が拡大する電磁流量計において寸法d1~d4が次に説明する要件を満たす点が優れている。
【0056】
1つの側面として、寸法d1の呼び値が1mmに設定されることで、寸法d1が最小許容寸法である場合でも0.1mmとなる。このことから、ジョッグル11およびリング状プレート5の各部材が組み立て時に干渉しない寸法d1の呼び値の設定が実現されていることが明らかである。
【0057】
他の側面として、寸法d2の呼び値が1.5mmに設定されることで、寸法d2が最小許容寸法である場合でも0.7mmとなる。このため、上記の閾値Th1以上のラップ量を確保できる寸法d2の呼び値の設定が実現されていることが明らかである。これにより、各部材の寸法の公差が大きい場合でも、ケース10の円周上の突合せ部分に生じる間隙G2から伝搬する熱の遮断効果を獲得できる。
【0058】
更なる側面として、寸法d3の呼び値が3mmに設定されることで、寸法d3が最小許容寸法である場合でも2.4mmとなる。このため、上記の閾値Th2以上のラップ量を確保できる寸法d3の呼び値の設定が実現されていることが明らかである。これにより、各部材の寸法の公差が大きい場合でも、ケース10の円周上で間隙が生じることを抑制できる。
【0059】
他の側面として、寸法d4の呼び値が4.5mmに設定されることで、寸法d4が最小許容寸法である場合でも3.9mmとなる。このため、自動溶接の実現が可能な目安となるスペースの幅である4mmと同等以上のスペースを確保できる寸法d4の呼び値の設定が実現されていることが明らかである。これにより、ケース10の円周溶接を自動化溶接(MIG溶接)により実現できる。
【0060】
上述の実施形態は一例を示したものであり、種々の応用が可能である。
【0061】
例えば、上記の実施形態では、フランジ形の電磁流量計1を例示したが、配管接続の形態はフランジ形に限定されず、他の配管接続、例えばウエハ形で上記の段差構造が実現されてよい。さらに、上記の実施形態では、流体が通過する測定管内に磁界を発生させ、流体の通過により発生する起電力を検出する検出部と、検出部により検出される起電力を流体の流量へ変換する変換部とが一体型である電磁流量計1を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、検出部および変換部が分離された分離型の電磁流量計で上記の段差構造が実現されることを妨げない。
【符号の説明】
【0062】
1 電磁流量計
2 測定管
3 フランジ
5 リング状プレート
5a 内側面
5b 天面
5c 外側面
50 段差部
51 第1の面
52 第2の面
7 内部空間
10 ケース
11 ジョッグル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9