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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176319
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】飼育装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094776
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 望
(57)【要約】
【課題】昆虫等の生物を飼育する飼育装置において、生物の生存率を向上させるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】飼育装置1は、生物の飼育空間11を形成する本体フレーム10と、本体フレーム10の飼育空間11に収容される飼育ユニット20と、飼育ユニット20において隙間23を隔てて配列された複数の止まり部材22と、飼育ユニット20の下方に位置するコンベアベルト42と、飼育ユニット20の複数の止まり部材22の上に配置される有底箱状の餌容器50と、を備え、餌容器50の底部50aには、餌Eよりも小さく生物から発生する不要固形物よりも大きい網目状の開口が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の飼育装置であって、
前記生物の飼育空間を形成する本体フレームと、
前記本体フレームの前記飼育空間に収容される飼育ユニットと、
前記飼育ユニットにおいて隙間を隔てて配列された複数の止まり部材と、
前記飼育ユニットの下方に位置する床部と、
前記床部よりも高所に配置される有底箱状の餌容器と、
を備え、
前記餌容器の底部には、餌よりも小さく前記生物から発生する不要固形物よりも大きい網目状の開口が設けられている、飼育装置。
【請求項2】
前記餌容器の前記底部と側部の両方に前記開口が設けられている、請求項1に記載の飼育装置。
【請求項3】
前記餌容器は、前記飼育ユニットの前記複数の止まり部材の上に配置される、請求項1または2に記載の飼育装置。
【請求項4】
前記飼育ユニットの下方に設けられた搬送部を備え、前記搬送部は、前記床部としてのコンベアベルトを有する、請求項1または2に記載の飼育装置。
【請求項5】
前記飼育ユニットにおける前記生物の分布情報を検出する分布情報検出部を備え、前記分布情報検出部が検出した前記分布情報に基づいて前記餌容器の配置状態が設定される、請求項1または2に記載の飼育装置。
【請求項6】
前記餌容器に前記餌を自動で供給するための餌供給部を備える、請求項1または2に記載の飼育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼育装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、従来のコオロギの飼育装置が記載されている。この飼育装置は、飼育領域で飼育されているコオロギに対して餌を供給するための給餌装置を備えている。給餌装置は、フレームにおいてベルトコンベアの搬送方向の上流側に配置されており、ベルトコンベアの上面に餌を供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-84103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の飼育装置において、ベルトコンベアの上面に餌を供給すると、コオロギの死骸や抜け殻、排泄物等が餌の上に堆積して餌が埋もれてしまい、餌場として機能しなくなる。また、ベルトコンベアの上面に餌を供給すると、ベルトコンベアの上面にコオロギが居ついてしまい、飼育領域に設けられた止まり部材の利用率が低下する。このため、コオロギの共食いを誘発することになり生存率低下の要因に成り得る。
【0005】
本発明は、昆虫等の生物を飼育する飼育装置において、生物の生存率を向上させるのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
生物の飼育装置であって、
前記生物の飼育空間を形成する本体フレームと、
前記本体フレームの前記飼育空間に収容される飼育ユニットと、
前記飼育ユニットにおいて隙間を隔てて配列された複数の止まり部材と、
前記飼育ユニットの下方に位置する床部と、
前記床部よりも高所に配置される有底箱状の餌容器と、
を備え、
前記餌容器の底部には、餌よりも小さく前記生物から発生する不要固形物よりも大きい網目状の開口が設けられている、飼育装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の飼育装置において、飼育ユニットの下方に位置する床部よりも高所には有底箱状の餌容器が配置される。この餌容器の底部に設けられている網目状の開口は、餌よりも小さく生物から発生する不要固形物よりも大きくなるように寸法設定されている。この餌容器に餌を入れて生物に給餌する。
【0008】
生物は餌を食べるために餌容器の内側或いは外側に誘引される。生物は、餌容器の内側で餌を食べるか、若しくは、餌容器の底部の下方から網目状の開口を通じて餌を食べることができる。餌が餌容器の内側で残存するのに対して、生物から発生した排泄物のような不要固形物はその一部または全部が自重によって餌容器の底部の開口を通じて落下して床部に堆積する。このため、不要固形物が餌容器の内側で餌の上に堆積するのを抑制でき、餌容器の内側を餌場として衛生的な環境に維持することができる。このとき、餌容器の内側に残存する不要固形物が減って餌が衛生的なまま残存するため、餌容器から不要固形物を餌とともに回収する必要性が少なくなり、その分、餌のロスを減少させるのに有効である。
【0009】
また、生物を床部よりも高所にある餌容器まで誘引することによって、床部を餌場とした場合に生物が床部に居つくような現象が発生するのを抑制でき、飼育ユニットの止まり部材の利用率を高めることができる。このとき、餌容器の底部に網目状の開口が設けられているため、生物は餌容器の下方からも餌に気付き易くなり、餌への生物の誘引効果が高くなる。
【0010】
以上のことから、上記構成の飼育装置は、生物の共食いを防いで生存率の低下を抑制することができるという作用効果を奏する。その結果、生物の収穫量が増えることになり、生物の飼育単価を下げることが可能になる。
【0011】
上述の態様によれば、昆虫等の生物を飼育する飼育装置において、生物の生存率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の飼育装置を本体フレームに収集装置が接続された状態にて示す斜視図。
図2図1の飼育装置を本体フレームから収集装置が分離された状態にて示す斜視図。
図3図2の飼育装置を収集装置側から見た正面図。
図4図3中の飼育ユニット及び餌容器の斜視図。
図5図4中の飼育ユニット及び餌容器の断面図。
図6図2中の収集装置を本体フレーム側から見た斜視図。
図7図3中の飼育ユニットが収集装置の支持部によって支持された状態を示す正面図。
図8図7中の第1飼育ユニットの止まり部材の隙間に引き離し部材の櫛歯が挿入される前の状態を示す側面図。
図9図7中の第1飼育ユニットの止まり部材の隙間に引き離し部材の櫛歯が挿入された状態を示す側面図。
図10】実施形態2の飼育装置について図3に対応した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上述の態様の一実施形態である飼育装置の具体的な構造について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
なお、本明細書及び図面では、特に断わらない限り、飼育装置の上下方向をX軸方向とし、飼育装置の水平方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向とする。
【0015】
(実施形態1)
1.飼育対象
飼育装置で飼育対象である生物は、例えば、節足動物等の小生物である。飼育対象は、例えば、食用、飼料用、研究用等に用いられる生物である。例えば、コオロギ、イナゴ、バッタ等の昆虫を飼育対象とすることができる。特に、飼育対象である生物は、幼虫が直接成虫に変態する不完全変態の節足動物であって、さらには、不完全変態における幼虫が好適である。本形態では、昆虫のうち、バッタ目のコオロギやイナゴの幼虫を飼育対象である生物の好適な例として説明する。ただし、成虫(羽化した不完全変態節足動物)を飼育対象としても良い。また、飼育装置は、卵から飼育しても良いし、孵化後の生物を飼育しても良い。
【0016】
2.飼育装置の基本構成
図1及び図2に示されるように、実施形態1の飼育装置1は、飼育対象である生物の飼育を行うのに用いられる。図1では、生物として昆虫の一種であるコオロギの飼育に適した飼育装置1を例示している。コオロギと同様に、大量かつ高密度で飼育される昆虫にも飼育装置1を好適に使用できる。この飼育装置1は、その基本構成として、本体フレーム10と、複数の飼育ユニット20と、収集装置30と、を備えている。
【0017】
本体フレーム10は、飼育装置1のための設置面に置かれる。本体フレーム10は、生物Cの飼育空間11を形成するように構成されている。なお、図1では、便宜上、図示を省略しているが、本体フレーム10の外周は飼育空間11を区画する壁部(図示省略)によって被覆されている。このため、飼育空間11は、飼育期間において常時に密閉された密閉空間とされ、この密閉空間が生物Cの生育に適した環境に適宜に設定される。
【0018】
3.本体フレームの内部構造
本形態では、本体フレーム10の内部に2つの飼育空間11がX軸方向の上下二段で形成されている。即ち、飼育空間11として、X軸方向の上段に位置する第1飼育空間11aと、X軸方向の下段に位置する第2飼育空間11bと、が形成されている。第1飼育空間11aと第2飼育空間11bは同一寸法の空間である。
【0019】
図1及び図2に二点鎖線で示すように、複数の飼育ユニット20は、本体フレーム10の内部の飼育空間11に収容される。複数の飼育ユニット20には、上段の3つの第1飼育ユニット20Aと、下段の3つの第2飼育ユニット20Bと、が含まれている。第1飼育ユニット20Aと第2飼育ユニット20Bは同一形状である。
【0020】
3つの第1飼育ユニット20Aは、第1飼育空間11aにZ軸方向に並置された状態で収容されている。3つの第2飼育ユニット20Bは、第2飼育空間11bにZ軸方向に並置された状態で収容されている。なお、第1飼育ユニット20A及び第2飼育ユニット20Bのそれぞれの数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更可能である。
【0021】
本体フレーム10は、いずれもZ軸方向に延びる複数の支持部12a,12bを備えている。2つの支持部12aは、各第1飼育ユニット20AをZ軸方向にスライド可能に支持するための構成要素であり、Y軸方向に互いに離間した状態でZ軸方向に平行に延びている。また、2つの支持部12bは、各第2飼育ユニット20BをZ軸方向にスライド可能に支持するための構成要素であり、Y軸方向に互いに離間した状態でZ軸方向に平行に延びている。
【0022】
支持部12a及び支持部12bのそれぞれのY軸方向の内面には、複数の支持ローラ13がZ軸方向に沿って設けられている。支持ローラ13は、コロ或いはベアリングのような回転可能な部材であり、Z軸方向の入力を受けて自転するように構成されている。
【0023】
本体フレーム10には、第1飼育ユニット20A及び第2飼育ユニット20Bのそれぞれにおける生物の分布情報を検出する分布情報検出部14が設けられている。分布情報検出部14として、典型的には、飼育空間11を撮影するための撮影カメラを使用することができる。撮影カメラは、飼育空間11における生物の表面で反射した反射光を撮像素子が受光することによって画像を連続的に撮像し、その撮影画像をモニタ(図示省略)に表示するように構成されている。これにより、ユーザは、第1飼育ユニット20A及び第2飼育ユニット20Bのそれぞれにおける生物の分布情報を確認することができる。撮像素子として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーが採用され得る。
【0024】
4.搬送部40の構造
図3に示されるように、飼育装置1を図2のA方向から見たとき、本体フレーム10の内部には、第1飼育ユニット20Aと第2飼育ユニット20Bのそれぞれの下方に搬送部40が設けられている。本形態の搬送部40は、ベルトコンベアであり、Z軸方向に離間して設けられた一対のローラ41,41と、一対のローラ41,41に掛けられた無端状のコンベアベルト42と、一方のローラ41を駆動するモータ(図示省略)と、を備えている。
【0025】
各搬送部40において、モータが一方のローラ41を駆動することで、コンベアベルト42の搬送面42aが連続して移動する。このとき、コンベアベルト42は、飼育ユニット20の下方に位置する床部を形成している。コンベアベルト42は、Z軸方向の一方向のみに回転可能としても良いし、Z軸方向の両方向に回転可能としても良い。
【0026】
搬送部40は、飼育対象である生物自体をはじめ、生物の卵、生物の抜け殻、生物の排泄物、生物の死骸、水分、塵埃の少なくとも1つを搬送する。例えば、生育初期の生物又は生物の卵を、外部から飼育空間11a,11bに搬入するために搬送部40を用いることができる。また、飼育空間11で飼育している生物には、水分が必要である。そこで、外部から飼育空間11a,11bに水分を供給するために搬送部40を用いることができる。また、生物の飼育途中において、飼育空間11a,11bの底部には、生物の抜け殻、生物の排泄物、生物の死骸、餌の残り等が堆積する。そこで、これらを飼育空間11a,11bの底部から外部へ排出するために搬送部40を用いることができる。また、生物が生育した飼育終了後において、当該生物を収集するために搬送部40を用いることができる。
【0027】
5.飼育ユニットの構造
図3に示されるように、第1飼育ユニット20Aは、本体フレーム10の内部の第1飼育空間11aに収容された状態で、保持部21のY軸方向の両端部が支持部12aの複数の支持ローラ13によって下方から支持される。第2飼育ユニット20Bは、第1飼育ユニット20Aの場合と同様に、本体フレーム10の内部の第2飼育空間11bに収容された状態で、保持部21のY軸方向の両端部が支持部12bの複数の支持ローラ13によって下方から支持される。
【0028】
図3及び図4に示されるように、複数の飼育ユニット20(第1飼育ユニット20A及び第2飼育ユニット20B)はいずれも、複数の止まり部材22と、複数の止まり部材22を保持する保持部21と、を有する。各飼育ユニット20は、複数の止まり部材22を利用して生物が隠れることができる領域を構成するものであり「隠れ家」とも称される。
【0029】
図4に示されるように、複数の止まり部材22は、いずれも同形状をなしており、天板となる保持部21の下面から垂れ下がるように構成されている。複数の止まり部材22は、保持部21に近い方の端部を基端部22aとして下端部22bまで下方に延びている。複数の止まり部材22は、図3中に寸法aで示される隙間23を隔ててY軸方向に配列されている。即ち、複数の止まり部材22は、Y軸方向に実質的に等間隔で配置されている。
【0030】
止まり部材22は、Y軸方向を板厚方向としX軸方向及びZ軸方向によって定まる平面上に延在する板状部材である。止まり部材22は、その表面に飼育対象である生物が止まることを可能とするように構成されている。止まり部材22は、平板状に形成しても良いし、或いは、波形に形成しても良い。本形態では、止まり部材22は、平板状に形成されている。
【0031】
止まり部材22の材料は特に限定されないが、一例として、鉄、アルミニウム等の金属、樹脂、木材、紙等を使用できる。止まり部材22は、生物Cの足場となるように、多数の貫通孔が全面に亘って形成されたメッシュ構造を有するのが好ましい。例えば、止まり部材22をパンチングメタル又は金網等により形成することができる。
【0032】
図4に示されるように、保持部21は、枠状に形成されており、飼育ユニット20をX軸方向の上方から見たとき、各止まり部材22の基端部22aが保持部21の開口を通じて露出している。複数の止まり部材22は、保持部21に直に取り付けられていても良いし、或いは、保持部21と複数の止まり部材22との間に別部材が介在していても良い。
【0033】
6.餌容器50の構造
図3及び図4に示されるように、飼育装置1は、各飼育ユニット20の複数の止まり部材22の上に直に配置される有底箱状の餌容器50と、餌容器50に餌Eを自動で供給するための餌供給部52と、を備えている。餌容器50は、各飼育ユニット20の下方に位置する床部であるコンベアベルト42よりも高所に配置される。なお、餌容器50は、複数の止まり部材22の上方に間隔を隔てて配置されても良い。また、餌容器50の寸法や数は適宜に変更が可能である。
【0034】
図4に示されように、餌容器50の底部50aと側部50bの両方には、概ね全面にわたって網目状の開口51が設けられている。すなわち、底部50aと側部50bのそれぞれを貫通するように開口51が形成されている。このとき、開口51における網目の大きさは、生物Cに与える餌Eよりも小さく生物Cから発生する不要固形物よりも大きくなるように寸法設定されている。また、開口51における網目の大きさは、止まり部材22の隙間23の寸法aを下回るように寸法設定されている。開口51は、餌Eを通しにくく、餌Eに比べて不要固形物を通し易い。なお、開口51の形状は特に限定されるものではなく、矩形、円形などの適宜の形状を採り得る。餌Eは、ペレット状、顆粒状、フレーク状などの形状を採り得る。不要固形物として、典型的には、生物Cの排泄物が挙げられ、その他として死骸、抜け殻などが挙げられる。
【0035】
例えば、餌容器50を網籠によって構成することができる。或いは、餌容器50の底部50aと側部50bを、パンチングメタル又は金網などによって構成することができる。なお、必要に応じて、餌容器50の底部50aのみに網目状の開口51を設けるようにしても良い。
【0036】
図4に示されように、餌供給部52は、餌Eを貯留可能なホッパー53と、ホッパー53を餌容器50に対して自動で移動させるための駆動部54と、を備えている。ホッパー53は、餌Eの投入口53a及び排出口53bを有し、排出口53bが餌容器50の上方に位置するように配置される。駆動部54は、電動モータ等のアクチュエータ備える駆動機構部であっても良いし、ティーチング制御されるロボットアームであっても良い。餌供給部52によれば、必要なタイミングでホッパー53から餌容器50に餌Eを供給したり、当該供給を停止したりすることが可能になる。
【0037】
7.餌容器50の機能
図5に示されるように、上記構成の餌容器50において、餌容器50に供給された餌Eは餌容器50の内側で残存する一方で、不要固形物Sはその一部または全部が重力にしたがって餌容器50の底部50aの開口51を通過して餌容器50の下方へ落下する。不要固形物Sは、餌容器50の内側において時間経過に伴って微粒化する。このため、餌容器50は、餌Eを不要固形物Sから選別するための「ふるい」若しくは「通し」としての機能を果たす。
【0038】
一例として、餌容器50をふるい目の形状が正方形であるふるい網を有するものとし、この餌容器50をコオロギのような生物Cに使用する場合、ふるいの目開きを5~10mmに設定することができる。この場合、餌Eの大きさを10~15mmとし、不要固形物Sの大きさを1~5mmとすることができる。なお、これらの数値はあくまで例示的なものであって、飼育する生物Cの種類に応じて適宜に変更される。
【0039】
また、本形態では、餌容器50の底部50aと側部50bの両方に開口51を設けているため、生物Cは、餌容器50の内側から餌Eを食べることができることは勿論、餌容器50の底部50aと側部50bの外側から開口51を通じて餌Eを食べることができる。このため、餌容器50は、餌場面積を大きくできるとともに、餌Eへの生物Cのアクセス経路の領域を広げることで、アクセス性を高める効果がある。
【0040】
また、飼育ユニット20の複数の止まり部材22の上に上記構成の餌容器50を配置することで、生物Cを先ずは、複数の止まり部材22に誘引することができる。このとき、複数の止まり部材22は、隠れ家としての本来の機能に加えて、コンベアベルト42と餌容器50をこの間で生物Cが自由に移動できるように接続する移動経路としての機能を果たす。これにより、餌容器50への生物Cのアクセス性を向上させることができる。
【0041】
なお、本形態の飼育装置1では、本体フレーム10に設けられた分布情報検出部14(図1を参照)が検出した、飼育ユニット20における生物Cの分布情報に基づいて、餌容器50の配置状態(配置場所、向き、数など)を設定するのが好ましい。飼育ユニット20における生物Cの分布を把握して、例えば、複数の止まり部材22の上の場所のうち生物Cの居つきの少ないところに餌容器50を置くことで、生物Cの居つきを均一化させることができる。なお、分布情報検出部14は必須ではなく、不要な場合には省略しても良い。
【0042】
8.収集装置の構造
図2に示されるように、収集装置30は、本体フレーム10とは別体の装置であり、飼育期間の終了後に生物Cを収集するときに使用される。収集装置30は、生物Cの収集時に本体フレーム10に接続され(図1を参照)、生物Cの飼育時には本体フレーム10から分離される(図2を参照)。図6に示されるように、この収集装置30は、本体部3と、2つの引き離し部材32と、2つのケース36と、を備えている。
【0043】
本体部31は、いずれもZ軸方向に延びる複数の支持部31a,31bを備えている。2つの支持部31aは、支持部12aと同様に、複数の第1飼育ユニット20AをZ軸方向にスライド可能に支持するための構成要素であり、Y軸方向に互いに離間した状態でZ軸方向に平行に延びている。また、2つの支持部31bは、複数の第2飼育ユニット20BをZ軸方向にスライド可能に支持するための構成要素であり、支持部12bと同様に、Y軸方向に互いに離間した状態でZ軸方向に平行に延びている。
【0044】
支持部31a及び支持部31bのそれぞれのY軸方向の内面には、支持ローラ13と同様の複数の支持ローラ37がZ軸方向に沿って設けられている。支持ローラ37は、支持ローラ13と同様に、Z軸方向の入力を受けて自転するように構成されている。
【0045】
本体部31の底部には、収集装置30の走行を可能とする複数のキャスター31cが設けられている。このため、作業者が収集装置30を手動で操作することによって、収集装置30が本体フレーム10に対して移動自在となる。
【0046】
収集装置30が本体フレーム10に接続された接続位置P1(図1を参照)にあるとき、支持部31aは、本体フレーム10の支持部12aの延長線上に配置される。同様に、支持部31bは、本体フレーム10の支持部12bの延長線上に配置される。このため、収集装置30が接続位置P1にあるときには、第1飼育ユニット20Aと第2飼育ユニット20Bのそれぞれを、支持ローラ13を有する本体フレーム10と、支持ローラ37を有する収集装置30と、の間でZ軸方向に自由にスライドさせることができる。支持ローラ37は、支持ローラ13と同一の構造を有する。
【0047】
図7に示されるように、第1飼育ユニット20Aは、本体フレーム10側から収集装置30側に移動したとき、保持部21のY軸方向の両端部が支持部31aの複数の支持ローラ37によって下方から支持される。第2飼育ユニット20Bは、第1飼育ユニット20Aの場合と同様に、本体フレーム10側から収集装置30側に移動したとき、保持部21のY軸方向の両端部が支持部31bの複数の支持ローラ37によって下方から支持される。
【0048】
なお、生物Cの飼育期間では収集装置30を使用しない。したがって、生物Cの収集時においてのみ収集装置30を本体フレーム10に接続し、それ以外の期間では収集装置30を本体フレーム10から分離して使用位置P1から待機位置P2(図2を参照)に移動させることができる。
【0049】
図6に示されるように、引き離し部材32は、各飼育ユニット20の止まり部材22に止まっている生物Cに干渉して、この止まり部材22から生物Cを引き離すためのものである。上側の引き離し部材32は、Z軸方向について第1飼育空間11aの開口11c(図2を参照)に対向するように設けられている。下側の引き離し部材32は、Z軸方向について第2飼育空間11bの開口11d(図2を参照)に対向するように設けられている。
【0050】
引き離し部材32は、本体部31に固定されY軸方向に延びる支持部33と、複数の櫛歯34と、を有する。支持部33は、複数の櫛歯34を支持しており、複数の櫛歯34が支持部33側から先端部まで延出している。引き離し部材32は、各櫛歯34が複数の止まり部材22の隙間23から外れた位置にある未挿入状態と、各櫛歯34の一部或いは全体が複数の止まり部材22の隙間23に挿入された位置にある挿入状態と、のいずれかの状態を採り得る。
【0051】
複数の櫛歯34は、隙間35を隔てて複数の止まり部材22の配列方向であるY軸方向と同方向に等間隔で並んでいる。即ち、引き離し部材32の複数の櫛歯34は、Y軸方向に平行に並んで配列されている。複数の櫛歯34は、飼育ユニット20との相対移動方向であるZ軸方向に対して、支持部33側から先端部まで一定の傾斜角度θで傾斜している。このとき、傾斜角度θを、30°から90°までの範囲内の角度に適宜に設定することができる。複数の櫛歯34は、いずれも同形状をなす棒状の部位である。このとき、各櫛歯34の断面形状は特に限定されるものでなく、円形、楕円形、矩形、多角形などの適宜の形状を採用することができる。
【0052】
ケース36は、引き離し部材32が止まり部材22から引き離した生物Cを下方から受けて収集するためのものである。ケース36は、有底箱状の部材によって構成されており、上部が開口した収集空間36aを有する。上側のケース36は、上側の引き離し部材32の下方に設けられている。下側のケース36は、下側の引き離し部材32の下方に設けられている。
【0053】
9.生物Cの収集作業
上記構成の飼育装置1を使用した生物Cの収集作業について、図1図8及び図9を参照しながら説明する。
【0054】
図1に示されるように、飼育期間に本体フレーム10の内部の第1飼育空間11a及び第2飼育空間11bで生物Cが飼育される。その後、生物Cの飼育期間が終了すると収集作業に移行する。なお、生物Cの収集作業を開始するに際して、餌容器50にある餌Eを無くして、生物Cを餌容器50よりも下方へ移動させるのが好ましい。例えば、餌容器50を振動させて餌Eを摩擦によって微粒化させれば、餌容器50の内側から底部50aの開口51を通じて餌Eを落下させることができる。また、生物Cの収集時には、前述の飼育時の場合と同様に、生物Cの習性を利用して、餌容器50の周辺領域を生物Cが嫌う嫌環境に設定したり、餌容器50よりも下方領域を生物Cが好む好環境に設定したりするのが好ましい。これにより、生物Cの収集時に生物Cを餌容器50よりも下方へ移動させることができ、生物Cの収集効率を高めることが可能になる。
【0055】
生物Cの収集作業では、先ず、収集装置30を本体フレーム10に接続する接続位置P1にセットする。なお、本形態では、上段の第1飼育ユニット20Aと下段の第2飼育ユニット20Bが同様に動作するため、以下の説明では、便宜上、第1飼育ユニット20Aの動作についてのみ説明し、第2飼育ユニット20Bの動作についての説明を省略する。
【0056】
収集装置30は、上側の引き離し部材32が第1飼育空間11aとZ軸方向について対向し、且つ、2つの支持部31aのそれぞれが本体フレーム10の2つの支持部12aのそれぞれに連続して延びて繋がるように配置される。このとき、収集装置30は、本体フレーム10との接続によって複数の第1飼育ユニット20Aを本体フレーム10側の支持部12aから収集装置30側の支持部31aまでの間で連続して移動可能にガイドする。
【0057】
引き続いて、第1飼育空間11aに収容されている3つの第1飼育ユニット20Aを、収集装置30に近いほうから順番に収集装置30に向けて移動させる。このとき、飼育ユニット20Aは自走手段を有しておらず、作業者が飼育ユニット20Aを手指で直に掴んで手動で動かすことによって、飼育ユニット20Aを移動させることができる。
【0058】
図8に示されるように、最初の第1飼育ユニット20Aを、保持部21のY軸方向の両端部が支持部12aの複数の支持ローラ13によって下方から支持された状態で移動方向Z1に移動させる。このとき、本体フレーム10の支持部12aは、静止状態の引き離し部材32に対して複数の第1飼育ユニット20AをZ軸方向に移動可能に支持する第1支持部となる。なお、この第1飼育ユニット20Aを移動方向Z1にスライドさせるときには、残りの2つの第1飼育ユニット20Aは第1飼育空間11aでともに待機状態とされる。
【0059】
第1飼育ユニット20Aのスライドが進行することにより、引き離し部材32は、第1飼育ユニット20Aに対してZ軸方向に相対移動する。これにより、保持部21のY軸方向の両端部は、移動方向Z1の前側が支持部31aの支持ローラ37に乗り上げて下方から支持される。このとき、支持部31aは、複数の第1飼育ユニット20AをZ軸方向に移動可能に支持する第2支持部となる。
【0060】
図9に示されるように、第1飼育ユニット20Aを移動方向Z1にスライドさせると、引き離し部材32の各櫛歯34が止まり部材22の一部に止まっている生物Cに干渉し、当該生物Cを止まり部材22から物理的に引き離すことができる。止まり部材22から引き離された一部の生物Cは、例えば、自重による落下によって、櫛歯34の下方に位置するケース36の収集空間36aに収集される。引き続いて、止まり部材22が引き離し部材32を通過するまで第1飼育ユニット20Aを移動方向Z1にスライドさせる。これにより、引き離し部材32の各櫛歯34が止まり部材22に止まっている残りの生物Cも止まり部材22から物理的に引き離して、ケース36の収集空間36aに収集できる。
【0061】
10.作用効果
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0062】
実施形態1の飼育装置1によれば、生物Cは餌Eを食べるために餌容器50の内側或いは外側に誘引される。生物Cは、餌容器50の内側で餌を食べるか、若しくは、餌容器50の底部50aの下方から網目状の開口51を通じて餌Eを食べることができる。
【0063】
餌Eが餌容器50の内側で残存するのに対して、生物Cから発生した排泄物のような不要固形物Sはその一部または全部が自重によって餌容器50の底部50aの開口を通じて落下して搬送部40のコンベアベルト42に堆積する。このため、不要固形物Sが餌容器50の内側で餌Eの上に堆積するのを抑制でき、餌容器50の内側を餌場として衛生的な環境に維持することができる。このとき、餌容器50の内側に残存する不要固形物Sが減って餌Eが衛生的なまま残存するため、餌容器50から不要固形物Sを餌Eとともに回収する必要性が少なくなり、その分、餌Eのロスを減少させるのに有効である。
【0064】
また、生物Cを床部であるコンベアベルト42よりも高所にある餌容器50まで誘引することによって、コンベアベルト42を餌場とした場合に生物Cがコンベアベルト42に居つくような現象が発生するのを抑制でき、飼育ユニット20の止まり部材22の利用率を高めることができる。このとき、餌容器50の底部50aに網目状の開口51が設けられているため、生物Cは餌容器50の下方からも餌Eに気付き易くなり、餌Eへの生物Cの誘引効果が高くなる。
【0065】
以上のことから、飼育装置1は、生物Cの共食いを防いで生存率の低下を抑制することができるという作用効果を奏する。その結果、生物Cの収穫量が増えることになり、生物Cの飼育単価を下げることが可能になる。
【0066】
したがって、上述の実施形態1によれば、生物Cを飼育する飼育装置1において、生物Cの生存率を向上させることができる。
【0067】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0068】
(実施形態2)
図10に示されるように、実施形態2の飼育装置2は、実施形態1の飼育装置1に対して、餌容器50が床部であるコンベアベルト42よりも高所に配置される点で一致し、餌容器50が各飼育ユニット20のY軸方向の側方に並置される点で相違している。
【0069】
飼育装置2の飼育ユニット20は、保持部21から下方へ延びる取付フレーム24を備え、この取付フレーム24に餌容器50が配置されるように構成されている。また、取付フレーム24には、止まり部材22と餌容器50をこれらの間を生物Cが移動できるように接続する接続部材25が設けられている。
【0070】
その他の構成は、実施形態1のものと同様である。
【0071】
実施形態2の飼育装置2によれば、生物Cは接続部材25を通って止まり部材22と餌容器50との間を行き来することができる。このため、生物Cは止まり部材22に自由に止まることができる一方で、止まり部材22から餌容器50まで移動して自由に餌Eを食べることができる。
【0072】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0073】
11.変形態様
本発明は、実施形態に準拠して記述されたが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0074】
上述の形態では、本体フレーム10の内部に2つの飼育空間11がX軸方向の上下二段に形成される場合について例示したが、飼育空間11の数や配置はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更することが可能である。例えば、本体フレーム10の内部に飼育空間11が1段のみ形成される構造や、本体フレーム10の内部に3つ以上の飼育空間11がX軸方向の上下複数段に形成される構造を採用することもできる。飼育空間11の段数を増やせば、X軸方向の上部空間を有効利用することができ、飼育装置の設置面積あたりの生物Cの飼育効率を高めるのに有効である。
【0075】
上述の形態では、飼育ユニット20の下方の床部が搬送部40のコンベアベルト42によって構成される場合について例示したが、これに代えて、搬送部40を省略して、飼育ユニット20の下方に床部を構成するプレート部材を配置するようにしても良い。
【0076】
上述の形態では、止まり部材22から生物Cを引き離すのに、複数の櫛歯34を有する引き離し部材32に対して飼育ユニット20をZ軸方向に移動させる場合について例示したが、これに代えて、止まり部材22に対してX軸方向に昇降動作可能な引き離し部材を使用し、この引き離し部材を上昇位置から下降させる動作を利用して、止まり部材22から生物Cを引き離すようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1,2:飼育装置、 10:本体フレーム、 14:分布情報検出部、 11:飼育空間、 20:飼育ユニット、 22:止まり部材、 23:隙間、 40:搬送部、 42:コンベアベルト(床部)、 50:餌容器、 50a:底部、 50b:側部、 51:開口、 52:餌供給部、 E:餌、 S:不要固形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10