IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-定置蓄電システム 図1
  • 特開-定置蓄電システム 図2
  • 特開-定置蓄電システム 図3
  • 特開-定置蓄電システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176327
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】定置蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20241212BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241212BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20241212BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
H02J3/46
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094787
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 嘉範
(72)【発明者】
【氏名】土田 祥生
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】蓄電装置を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを実行可能な定置蓄電システムを提供する。
【解決手段】定置蓄電システムが、複数の蓄電装置と、複数の蓄電装置の各々に設けられた電流センサと、複数の蓄電装置の各々の電流値を制御する制御装置とを備える。複数の蓄電装置の各々は、制御装置からの指令に従って通電/遮断を切替え可能に構成される。制御装置は、複数の蓄電装置の中から、エネルギーマネジメントに使用する蓄電装置を選び(S22)、選ばれなかった蓄電装置の電流を遮断し(S23)、選ばれた蓄電装置の電流値をエネルギーマネジメントのために制御し(S24)、エネルギーマネジメントの実行中、選ばれなかった蓄電装置に対応する電流センサについて電流が流れていないときの出力値を取得する(S26)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電装置と、
前記複数の蓄電装置の各々に設けられた電流センサと、
前記複数の蓄電装置の各々の電流値を制御する制御装置とを備え、
前記複数の蓄電装置の各々は、前記制御装置からの指令に従って通電/遮断を切替え可能に構成され、
前記制御装置は、
前記複数の蓄電装置の中から、エネルギーマネジメントに使用する前記蓄電装置を選び、選ばれなかった前記蓄電装置の電流を遮断し、
選ばれた前記蓄電装置の電流値を前記エネルギーマネジメントのために制御し、
前記エネルギーマネジメントの実行中、選ばれなかった前記蓄電装置に対応する前記電流センサについて電流が流れていないときの出力値を取得する、定置蓄電システム。
【請求項2】
前記複数の蓄電装置は、互いに並列に接続されており、
当該定置蓄電システムは、
前記複数の蓄電装置の各々に設けられ、前記制御装置からの指令に従って前記蓄電装置の通電/遮断を切り替えるリレー
をさらに備え、
前記制御装置は、前記エネルギーマネジメントの実行中、選ばれなかった前記蓄電装置に対応する前記リレーによって電流を遮断し、前記電流が流れていないときの前記電流センサの前記出力値に基づいて、選ばれなかった前記蓄電装置に対応する前記電流センサの検出誤差を補正する、請求項1に記載の定置蓄電システム。
【請求項3】
前記複数の蓄電装置は、互いに並列に接続されており、
当該定置蓄電システムは、
前記複数の蓄電装置の各々に設けられ、前記制御装置からの指令に従って前記蓄電装置の出力電圧を変圧する電力変換回路
をさらに備え、
前記複数の蓄電装置は、第1電池を含む第1蓄電装置と、前記第1電池とは異なる種類の第2電池を含む第2蓄電装置とを含む、請求項1に記載の定置蓄電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エネルギーマネジメントの実行中、前記蓄電装置の選択を繰返し実行するように構成され、
前記制御装置は、前記エネルギーマネジメントの実行中、前記複数の蓄電装置の各々の電流を順次遮断し、電流が遮断された前記蓄電装置の前記電流センサの出力値を取得するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の定置蓄電システム。
【請求項5】
当該定置蓄電システムは、電力系統を管理するサーバからの要求に応じて前記電力系統のエネルギーマネジメントを実行するように構成され、
前記制御装置は、前記サーバからの前記要求を常時受け付けるように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の定置蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定置蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-113856号公報(特許文献1)には、複数の電池スタックが並列接続された電池パックを備える車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-113856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された車両においては、複数の電池スタック(蓄電装置)の各々にシステムメインリレー(SMR)が設けられている。こうした車両において、電池スタックごとの電流値を制御するために、並列接続された電池スタックの各々に電流センサを設けることが考えられる。高い精度で電流制御を行うためには、各電流センサについて電流が流れていないときの出力値を確認しながら、各電流センサの出力補正(例えば、オフセット補正)を行うことが望ましい。車両では、例えば走行終了時に起動スイッチがオフ操作されると、各電池スタックに対応するSMRが遮断状態になり、各電池スタックに電流が流れなくなると考えられる。このため、車両は、走行終了後に、各電流センサについて電流が流れていないときの出力値を取得できるかもしれない。なお、車両の起動スイッチは、一般に「パワースイッチ」または「イグニッションスイッチ」などと称される。
【0005】
しかしながら、蓄電装置を用いてエネルギーマネジメントを行う定置蓄電システムでは、エネルギーマネジメントのために蓄電装置を通電状態にしておくことが要求される。遮断状態の蓄電装置はエネルギーマネジメントのために使用できなくなる。このため、上記定置蓄電システムに関しては、蓄電装置に設けられた電流センサの出力補正が不十分になり、蓄電装置の電流制御の精度が低下しやすいという問題がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを実行可能な定置蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る定置蓄電システムは、複数の蓄電装置と、複数の蓄電装置の各々に設けられた電流センサと、複数の蓄電装置の各々の電流値を制御する制御装置とを備える。複数の蓄電装置の各々は、制御装置からの指令に従って通電/遮断を切替え可能に構成される。制御装置は、複数の蓄電装置の中から、エネルギーマネジメントに使用する蓄電装置を選び、選ばれなかった蓄電装置の電流を遮断し、選ばれた蓄電装置の電流値をエネルギーマネジメントのために制御し、エネルギーマネジメントの実行中、選ばれなかった蓄電装置に対応する電流センサについて電流が流れていないときの出力値を取得する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蓄電装置を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを実行可能な定置蓄電システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメントシステムの概略的な構成を示す図である。
図2】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法を示すフローチャートである。
図3】電力系統を管理するサーバが要求するエネルギーマネジメントの例について説明するための図である。
図4図2に示したエネルギーマネジメント方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメントシステムの概略的な構成を示す図である。図1を参照して、この実施の形態に係るエネルギーマネジメントシステムは、蓄電システム100およびサーバ200(EMサーバ)を備え、電力系統PGのエネルギーマネジメントを実行する。サーバ200は、電力系統PGを管理するサーバ300(TSOサーバ)と通信可能に構成される。「EM」は、エネルギーマネジメントを意味する。「TSO」は、系統運用者(Transmission System Operator)を意味する。電力系統PGは、発電所および送配電設備によって構築される電力網である。サーバ300は、プロセッサおよび記憶装置を備え、電力系統PGの状態(例えば、需給バランスおよび周波数)を監視し、サーバ200にエネルギーマネジメントを要求する。これにより、電力系統PGは、安定的に質の高い電力を供給できる状態に維持される。電力系統PGは、例えば電力会社が提供する交流グリッドである。
【0012】
蓄電システム100は、DC/AC変換回路10と、N個のSMR21-1~21-N(区別しない場合は「SMR21」と記載する)と、N個のDC/DC変換回路22-1~22-N(区別しない場合は「DC/DC変換回路22」と記載する)と、N個の電池パック23-1~23-N(区別しない場合は「電池パック23」と記載する)とを備える。「SMR」は、システムメインリレー(System Main Relay)を意味する。SMR21、DC/DC変換回路22、電池パック23は、それぞれ本開示に係る「リレー」、「電力変換回路」、「蓄電装置」の一例に相当する。蓄電システム100は、サーバ200によって制御される。Nは、例えば50程度である。ただし、Nは、2以上の自然数であればよく、100以上でもよい。蓄電システム100は、図示しない漏電検知器(例えば、漏電を検知したときに自動的に電流を遮断するブレーカー)をさらに備えてもよい。
【0013】
電池パック23-1~23-Nは、互いに並列に接続されている。電池パック23-1~23-Nには、それぞれSMR21-1~21-NおよびDC/DC変換回路22-1~22-Nが設けられている。電池パック23-1~23-Nの各々は、サーバ200からの指令に従って通電/遮断を切替え可能に構成される。通電状態の電池パック23には電流が流れ得る。他方、遮断状態の電池パック23には電流が流れない。この実施の形態では、SMR21が、サーバ200からの指令に従って、対応する電池パック23の通電/遮断を切り替えるように構成される。SMR21は、DC/AC変換回路10とDC/DC変換回路22とをつなぐ電路に設けられている。SMR21は、例えば電磁式のメカニカルリレーである。SMR21の開閉によって電路の切断/接続が切り替わる。
【0014】
DC/AC変換回路10は、サーバ200からの指令に従って交流電力を電力系統PGへ出力するように構成される。また、DC/AC変換回路10は、電力系統PGから入力される交流電力を直流電力に変換してDC/DC変換回路22-1~22-Nの各々へ出力するように構成される。DC/DC変換回路22は、サーバ200からの指令に従って、対応する電池パック23の出力電圧を変圧するように構成される。また、DC/DC変換回路22は、サーバ200からの指令に従い、DC/AC変換回路10から入力される直流電力を変圧して、対応する電池パック23へ出力するように構成される。
【0015】
詳しくは、電池パック23から対応するDC/DC変換回路22に直流電力が入力されると、DC/DC変換回路22は、サーバ200からの指令に応じた直流電力をDC/AC変換回路10へ出力する。そして、DC/AC変換回路10は、サーバ200からの指令に応じた交流電力を電力系統PGへ出力する(逆潮流)。他方、電力系統PGからDC/AC変換回路10に交流電力が入力されると(順潮流)、DC/AC変換回路10は、サーバ200からの指令に応じた直流電力をDC/DC変換回路22-1~22-Nの各々へ出力する。そして、DC/DC変換回路22-1~22-Nの各々は、サーバ200からの指令に応じた直流電力を、対応する電池パック23へ出力する。各DC/DC変換回路の出力電力は同じでもよいし異なってもよい。サーバ200は、各DC/DC変換回路の出力電力を、対応する電池パック23に合わせて決定してもよい。
【0016】
サーバ200はプロセッサ210および記憶装置220を備える。プロセッサ210の例としてはCPU(Central Processing Unit)が挙げられる。記憶装置220は、格納された情報を保存可能に構成される。サーバ200には、蓄電システム100に含まれる電池パック23-1~23-Nが登録される。記憶装置220は、各電池パックに関する情報(例えば、仕様、制御情報、およびセンサ情報)を、電池パックの識別情報(電池ID)で区別して記憶している。制御情報は、サーバ200が各電池パックに対応するSMR21およびDC/DC変換回路22を個別に制御するための情報を含む。センサ情報は、センサ出力に対する補正係数を含む。
【0017】
電池パック23は、バッテリ231と、電池ECU(Electronic Control Unit)232と、バッテリ231を流れる電流を検出する電流センサ233aと、バッテリ231の電圧を検出する電圧センサ233bと、バッテリ231の温度を検出する温度センサ233cとを含む。各センサによる検出結果は電池ECU232に入力される。電池ECU232は、図示しないプロセッサおよび記憶装置を備え、各センサによる検出結果を検出時刻と紐付けて記憶装置に記録する。また、電池ECU232は、各センサによる検出結果からバッテリ231のSOC(State Of Charge)を算出し、バッテリ231のSOCも時刻と紐付けて記憶装置に記録する。SOCは、蓄電残量を、例えば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合で表わしたものである。電池ECU232は、サーバ200からの要求に応じて、記憶装置に記録されたデータをサーバ200へ出力する。
【0018】
電池ECU232は、サーバ200からの指令に従ってSMR21およびDC/DC変換回路22の各々を制御する。電池ECU232は、サーバ200からの指令を、SMR21およびDC/DC変換回路22の各々に対する制御信号に変換する。サーバ200は、電池ECU232を介して、SMR21-1~21-NおよびDC/DC変換回路22-1~22-Nの各々を制御する。
【0019】
バッテリ231は、1つの二次電池であってもよいし、複数の二次電池が電気的に接続されて構成される組電池であってもよい。電池パック23-1~23-Nは、互いに同種の二次電池を含んでもよいし、互いに異なる種類の二次電池を含んでもよい。二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。二次電池は、液式二次電池、半固体二次電池、全固体二次電池のいずれであってもよい。
【0020】
電池パック23は、定置式の蓄電装置に相当する。電動車で使用された電池パック(駆動バッテリおよび電池ECUを含む)が、電池パック23として再利用されてもよい。また、電動車で使用されたインバータ、DC/DCコンバータが、それぞれDC/AC変換回路10、DC/DC変換回路22として再利用されてもよい。蓄電システム100は、定置式のESS(Energy Storage System)として機能する。この実施の形態では、サーバ200および電池ECU232が、本開示に係る「制御装置」として機能する。
【0021】
ところで、サーバ200が高い精度で電池パック23-1~23-Nの各々の電流制御を行うためには、サーバ200が、電池パック23-1~23-Nの各々の電流センサ233aについて電流が流れていないときの出力値を確認しながら、各電流センサの出力補正(例えば、オフセット補正)を行うことが望ましい。しかしながら、定置蓄電システムでは、エネルギーマネジメントのために蓄電装置を通電状態にしておくことが要求される。遮断状態の蓄電装置はエネルギーマネジメントに使用できなくなる。このため、蓄電装置に設けられた電流センサの出力補正が不十分になり、蓄電装置の電流制御の精度が低下しやすいという問題がある。
【0022】
そこで、この実施の形態では、サーバ200が、エネルギーマネジメントの実行中、エネルギーマネジメントに使用しない電池パック23に対応する電流センサ233aについて電流が流れていないときの出力値(以下、「ゼロ出力値」と称する)を取得し、得られたゼロ出力値に基づいて、電流センサ233aの出力補正(検出誤差の補正)を行う。これにより、電池パック23を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを行うことが可能になる。また、サーバ200は、電力系統PGを管理するサーバ300からの要求に応える電力系統PGのエネルギーマネジメントが実行されるように、蓄電システム100を制御する。サーバ200は、サーバ300からの要求を常時受け付ける。
【0023】
図2は、この実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法を示すフローチャートである。フローチャート中の「S」は、ステップを意味する。
【0024】
図2を参照して、サーバ300は、S11~S12の処理フローを周期的に実行する。S11では、サーバ300が、電力系統PGの状態(例えば、需給状況および周波数)を検出する。続くS12では、サーバ300が、電力系統PGの状態を改善するためのエネルギーマネジメントをサーバ200に要求する。具体的には、サーバ300は、EM要求信号をサーバ200へ送信する。EM要求信号は、要求されるエネルギーマネジメントの内容(例えば、充電電力、放電電力、充電電力量、または放電電力量)を示す。S12の処理が実行されると、処理は最初のステップ(S11)に戻る。
【0025】
サーバ200は、サーバ300からEM要求信号を受信するたびにS21~S27の処理フローを開始する。S21では、EM要求信号が要求する入出力性が、蓄電システム100の入出力性よりも低いか否かを、サーバ200が判断する。具体的には、EM要求信号が要求する充電電力または放電電力が、電池パック23-1~23-Nの少なくとも1つを遮断状態にしても蓄電システム100が充電または放電できる値であれば、S21においてYESと判断され、処理がS22に進む。また、EM要求信号が要求する充電電力または放電電力が、電池パック23-1~23-Nの全てを通電状態にしなければ蓄電システム100が達成できない値、または全ての電池パックを通電状態にしても蓄電システム100が達成できない値であれば、S21においてNOと判断され、処理がS24に進む。S24では、サーバ200が、電池パック23-1~23-Nの全てを通電状態にする。具体的には、サーバ200はSMR21-1~21-Nの全てを接続状態にする。その後、処理はS25に進む。
【0026】
S22では、サーバ200が、電池パック23-1~23-Nの中から、エネルギーマネジメントに使用する1つ以上の電池パック(以下、「EM制御対象」と称する)を選ぶ。サーバ200は、EM要求信号が要求する充電電力または放電電力を蓄電システム100が充電または放電できるように、EM制御対象を決定する。サーバ200は、電流センサ233aの直近の学習(出力補正)からの経過時間が短い電池パックから優先的に、エネルギーマネジメントに必要な数の電池パック(EM制御対象)を選んでもよい。また、EM要求信号が充電電力量または放電電力量を要求する場合には、サーバ200が、要求される充電電力量または放電電力量に基づいて、EM制御対象に含まれる電池パックの数を決定してもよい。電池パック23-1~23-NにおいてSOCばらつきがある場合には、サーバ200は、各電池パックのSOCに基づいて、エネルギーマネジメントに必要な数の電池パック(EM制御対象)を選んでもよい。
【0027】
図3は、サーバ300が要求するエネルギーマネジメントの例について説明するための図である。以下では、充電電力または放電電力の要求を「パワー要求」、充電電力量または放電電力量の要求を「エネルギー要求」と称する。
【0028】
パワー要求は、電力系統PGの発電所から出力される発電電力の変動を抑制するためのエネルギーマネジメントの要求であってもよい。発電所は、気象条件によって発電出力が変動する自然変動電源を含むかもしれない。サーバ200は、電力系統PGにおける発電電力の実績値L12を目標値L11に近づけるためのパワー要求を、サーバ300から受けるかもしれない。エネルギー要求は、電力系統PGの需給バランスを調整するためのエネルギーマネジメントの要求であってもよい。サーバ200は、電力系統PGの電力需要量L21と電力供給量L22とを一致させるためエネルギー要求を、サーバ300から受けるかもしれない。
【0029】
電池パック23-1~23-Nは、出力型電池(第1電池)を含む第1電池パック(第1蓄電装置)と、容量型電池(第2電池)を含む第2電池パック(第2蓄電装置)とを含んでもよい。第1電池パック、第2電池パックは、それぞれ複数の出力型電池、複数の容量型電池が電気的に接続された組電池(バッテリ231)を含んでもよい。出力型電池の定格出力(W)は、容量型電池の定格出力(W)よりも大きい。定格出力は、電池メーカによって示される最大放電電力に相当する。容量型電池の容量(Wh)は、出力型電池の容量(Wh)よりも大きい。電池容量は、満充電状態の電池に蓄えられた電気量に相当する。出力型電池のパワー密度は、容量型電池のパワー密度よりも高くてもよい。容量型電池のエネルギー密度は、出力型電池のエネルギー密度よりも高くてもよい。図3において、線L1は、通電状態の出力型電池の個数を増減させたときの蓄電システム100の出力電力(W)および容量(Wh)の変化(傾き)を示す。線L2は、通電状態の容量型電池の個数を増減させたときの蓄電システム100の出力電力(W)および容量(Wh)の変化(傾き)を示す。
【0030】
サーバ200は、エネルギー要求およびパワー要求のうち、エネルギー要求のみを受けた場合には、出力型電池(第1電池パック)よりも容量型電池(第2電池パック)を優先的にEM制御対象として選び、パワー要求のみを受けた場合には、容量型電池(第2電池パック)よりも出力型電池(第1電池パック)を優先的にEM制御対象として選ぶ。また、サーバ200は、図3に示すように要求WhがXであるエネルギー要求と要求WがYであるパワー要求との両方を受けた場合には、これらエネルギー要求およびパワー要求の両方に応える入出力性を蓄電システム100に持たせるようにEM制御対象を選ぶ。
【0031】
サーバ200は、EM制御対象に含まれる各電池パックの出力電圧を、各電池パックのDC/DC変換回路22(電力変換回路)によって個別に調整できる。このため、サーバ200は、電池の種類が異なる複数種の蓄電装置(電池パック23-1~23-N)の出力電圧をDC/DC変換回路22によって個別に調整することによって、EM制御対象に含まれる各電池パックの出力電圧を揃えることができる。こうした蓄電システム100においては複数種の電池を採用しやすい。図1に示した構成によれば、例えば中古電池を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを行う定置蓄電システムを実現しやすくなる。
【0032】
再び図2を参照して、S23では、サーバ200が、EM制御対象に含まれる各電池パック(S22で選ばれた各電池パック)を通電状態にし、S22で選ばれなかった各電池パック(以下、「学習対象」と称する)の電流を遮断する。具体的には、サーバ200は、EM制御対象に対応するSMR21を接続状態(閉状態)にし、学習対象に対応するSMR21を切断状態(開状態)にする。
【0033】
S25では、サーバ200が、S23またはS24で通電状態になった各電池パックを用いて、サーバ300から要求されたエネルギーマネジメントを実行する。具体的には、サーバ200は、通電状態になった各電池パックの電流センサ233aによる検出値に基づいて、通電状態になった各電池パックの電流値をエネルギーマネジメントのために制御する。電流センサ233aの出力に対して補正係数が設定されている場合には、サーバ200は、補正係数によって補正された電流センサ233aの出力値に基づいて、電池パック23(バッテリ231)の電流値を検出する。サーバ200は、エネルギーマネジメントの実行中、通電状態になった各電池パックにおけるSOCの均等化を実行してもよい。
【0034】
続くS26では、サーバ200が、学習対象に含まれる各電池パックの電流センサ233aの検出誤差を学習する。具体的には、サーバ200は、学習対象に含まれる各電池パックの電流センサ233aについて、ゼロ出力値(電流が流れていないときの出力値)を取得し、正しいセンサ出力値に対するゼロ出力値の誤差(検出誤差)を記憶装置220に記録する。
【0035】
続くS27では、サーバ200が、学習対象に含まれる各電池パックの電流センサ233aについて、S26で取得した検出誤差が小さくなるように出力補正(検出誤差の補正)を行う。例えば、電池パック23(学習対象)のバッテリ231に電流が流れていないときに、バッテリ231に対応する電流センサ233aの出力値(検出値)が0Aを示すように出力補正を行う。出力補正は、オフセット補正であってもよい。サーバ200は、ゼロ出力値に基づいて、電流センサ233aの出力に対する補正係数を決定してもよい。S27の処理が実行されると、S21~S27の処理フローは終了する。
【0036】
以上説明したように、この実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法は、図2に示した各処理を含む。1つ以上のプロセッサが1つ以上のメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各処理が実行される。ただし、これらの処理は、ソフトウェアではなく、ハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
【0037】
この実施の形態に係る定置蓄電システムは、複数の蓄電装置(電池パック23-1~23-N)と、複数の蓄電装置の各々に設けられた電流センサ233aと、複数の蓄電装置の各々の電流値を制御する制御装置(サーバ200および電池ECU232)とを備える。複数の蓄電装置の各々は、制御装置からの指令に従って通電/遮断を切替え可能に構成される。制御装置は、複数の蓄電装置の中から、エネルギーマネジメントに使用する蓄電装置を選び(S22)、選ばれなかった蓄電装置の電流を遮断し(S23)、選ばれた蓄電装置の電流値をエネルギーマネジメントのために制御し(S25)、エネルギーマネジメントの実行中、選ばれなかった蓄電装置に対応する電流センサについて電流が流れていないときの出力値を取得する(S26)。
【0038】
上記構成によれば、選ばれた蓄電装置によってエネルギーマネジメントを実行できる。また、エネルギーマネジメントの実行中、選ばれなかった蓄電装置に対応する電流センサについて電流が流れていないときの出力値を取得することができる。これにより、電流が流れていないときの電流センサの出力値に基づいて、電流センサの出力補正(検出誤差の補正)を行うことが可能になる。このように、上記の定置蓄電システムは、蓄電装置を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを行うことができる。
【0039】
この実施の形態に係る定置蓄電システムでは、制御装置(サーバ200および電池ECU232)が、エネルギーマネジメントの実行中、学習対象(選ばれなかった蓄電装置)に対応するリレー(SMR21)によって電流を遮断し(S23)、ゼロ出力値(電流が流れていないときの電流センサ233aの出力値)に基づいて、学習対象に対応する電流センサ233aの検出誤差を補正する(S27)。こうした構成によれば、複数の蓄電装置の中から任意の蓄電装置(EM制御対象)を選び、選ばれなかった蓄電装置(学習対象)の電流を上記リレーによって適切に遮断することが可能になる。ただし、サーバ200は、SMR21の代わりにDC/DC変換回路22を制御することによって電池パック23を遮断状態(電流が流れない状態)にしてもよい。
【0040】
この実施の形態に係る定置蓄電システムでは、制御装置(サーバ200および電池ECU232)が、サーバ300からEM要求信号(S12)を受信するたびにS21~S27の処理フローを開始する。これにより、S21~S27の処理フローが繰返し実行される。このため、S25の処理によりエネルギーマネジメントが継続的に実行される。制御装置は、エネルギーマネジメントの実行中、蓄電装置の選択(S22)を繰返し実行する。このため、制御装置は、サーバ300からの要求に応じて、EM制御対象(エネルギーマネジメントに使用する蓄電装置)を変えることができる。制御装置は、エネルギーマネジメントの実行中、複数の蓄電装置の各々の電流を順次遮断し(S23)、学習対象(電流が遮断された蓄電装置)の電流センサ233aの出力値を取得する(S26)。これにより、電池パック23-1~23-Nにおける各電流センサの出力補正(検出誤差の補正)を順次行うことが可能になる。
【0041】
図2に示した処理フローは適宜変更可能である。例えば、目的に応じて、処理の順序が変更されてもよいし、不要なステップが省かれてもよい。また、いずれかの処理の内容が変更されてもよい。図4は、図2に示したエネルギーマネジメント方法の変形例を示す図である。サーバ200,300の各々は、図2に示した処理の代わりに図4に示す処理を実行してもよい。図4に示す変形例では、サーバ200が、S31,S32,S21AおよびS23~S27の処理フロー(以下、「S31フロー」と称する)を周期的に実行する。
【0042】
S31では、サーバ200がEM制御対象および学習対象を決定する。電池パック23-1~23-Nの中から、所定数の電池パックを学習対象として選び、学習対象以外の電池パックをEM制御対象として選ぶ。すなわち、この変形例でも、EM制御対象として選ばれなかった電池パック23が、学習対象に相当する。上記所定数(学習対象に含まれる電池パック23の数)は、1つでもよいし複数でもよい。
【0043】
この変形例では、S31フローが周期的に実行される。このため、EM制御対象および学習対象の選択(S31)は繰返し実行される。サーバ200は、エネルギーマネジメントの実行中に電池パック23-1~23-Nの全ての電流センサ233aの学習が行われるように、選択(S31)のたびに学習対象を変えてもよい。サーバ200は、学習対象とする電池パック23を、電池パック23-1、23-2、23-3、・・・、23-Nの順に選んでもよい。
【0044】
続くS32では、サーバ200が、EM制御対象の入出力性に基づいて、蓄電システム100の最大充電電力および最大放電電力を求める。また、サーバ200は、蓄電システム100のSOCに基づいて、蓄電システム100の最大充電電力量および最大放電電力量をさらに求めてもよい。得られた最大充電電力、最大放電電力、最大充電電力量、および最大放電電力量の各々は、蓄電システム100の入出力性に相当する。そして、サーバ200は、蓄電システム100の入出力性を示す信号(以下、「システム信号」と称する)をサーバ300へ送信する。その後、サーバ200は、S21Aにおいてサーバ300からEM要求信号(後述するS12A参照)を受信したか否かを判断し、EM要求信号を受信しない間は処理を進めない。
【0045】
サーバ300は、サーバ200からシステム信号を受信するたびにS11,S12Aの処理フローを開始する。サーバ300は、S11において、図2中のS11と同様の処理を実行する。続くS12Aでは、サーバ300が、S11の検出結果と、サーバ200から受信したシステム信号が示す入出力性とに基づいて、サーバ200が実行可能であり、かつ、電力系統PGの状態を改善するEM(エネルギーマネジメント)をサーバ200に要求する。具体的には、サーバ300は、要求されるEMの内容を示すEM要求信号をサーバ200へ送信する。S12Aの処理が実行されると、S11,S12Aの処理フローは終了する。
【0046】
サーバ200がサーバ300からEM要求信号を受信すると(S21AにてYES)、処理がS23に進む。S23以降の処理は、図2中のS23~S27と同じであるため、説明を繰り返さない。ただし、この変形例では、S27の処理が実行されると、処理が最初のステップ(S31)に戻る。
【0047】
上記変形例に係る定置蓄電システムによっても、蓄電装置(電池パック23)を用いて高い精度でエネルギーマネジメントを行うことが可能になる。また、上記変形例に係る制御装置(サーバ200および電池ECU232)も、エネルギーマネジメントの実行中、蓄電装置の選択(S31)を繰返し実行する。このため、制御装置は、サーバ300からの要求に応じて、EM制御対象および学習対象を変えることができる。制御装置は、エネルギーマネジメントの実行中、複数の蓄電装置の各々の電流を順次遮断し(S23)、学習対象(電流が遮断された蓄電装置)の電流センサ233aの出力値を取得する(S26)。これにより、電池パック23-1~23-Nにおける各電流センサの出力補正(検出誤差の補正)を順次行うことが可能になる。
【0048】
蓄電装置(電池パック)の構成は、図1に示した構成に限られない。例えば電池ECU232が省かれてもよい。サーバ200は、電池ECU232を介さず、直接的にSMR21およびDC/DC変換回路22を制御してもよい。電力系統PGは、大規模な交流グリッドに限られず、マイクログリッドでもよく直流グリッドでもよい。電力系統PGが直流グリッドである形態では、DC/AC変換回路10が省かれてもよい。電力系統のためのEM(エネルギーマネジメント)の代わりに、他のEM(例えば、オフグリッドの建物のためのEM、または電力市場で落札された調整力のためのEM)が実行されてもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 DC/AC変換回路、21,21-1~21-N SMR、22,22-1~22-N DC/DC変換回路、23,23-1~23-N 電池パック、100 蓄電システム、200 サーバ、210 プロセッサ、220 記憶装置、231 バッテリ、232 電池ECU、233a 電流センサ、300 サーバ、PG 電力系統。
図1
図2
図3
図4