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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176328
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】エレベータードア制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B66B13/14 Q
B66B13/14 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094788
(22)【出願日】2023-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】濱田 朗充
【テーマコード(参考)】
3F307
【Fターム(参考)】
3F307AA02
3F307BA04
3F307EA21
3F307EA35
(57)【要約】
【課題】ドアを駆動するベルトの状態に起因する振動及び騒音を抑制する上で有利になるエレベータードア制御装置を提供する。
【解決手段】本開示に係るエレベータードア制御装置は、ドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、推定した共振周波数に応じてドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、を備えたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、
前記ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、
前記ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、
前記ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、
前記回転検出器及び前記ドア位置スイッチから得られた信号をもとに前記ドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、
前記ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、
前記ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、
前記ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、
推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、
推定した共振周波数に応じて前記ドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、
を備えるエレベータードア制御装置。
【請求項2】
前記ベルト剛性推定部は、前記ドアパネルが全開位置または全閉位置の場合に前記電流検出器から得られたモータ電流値から算出される前記ベルトにかかる力の理論計算値と、前記回転検出器から得られた前記ドアモータの回転変化量から算出される前記ベルトの伸びと、を用いて前記ベルトの剛性を推定する請求項1に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、正常時のドア装置の固有振動数をあらかじめ記憶する記憶部と、判定結果に応じて異常を発報する異常発報部と、を備え、あらかじめ記憶したドア装置の固有振動数と、前記共振周波数推定部で推定したドア装置の固有振動数とが異なり、且つ、前記共振周波数推定部で推定された共振周波数が存在する場合に前記ベルトに異常があると判定する請求項1または請求項2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項4】
前記共振周波数推定部は、前記ベルト剛性推定部が推定した剛性値から算出したドア装置の固有振動数と、ベルトに関わる固有振動数が一致する場合、その振動数を共振周波数として出力する請求項1または請求項2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項5】
前記共振周波数推定部は据え付け時または各階床で共振周波数の推定を実施して、前記自動調整部は据え付け時または各階床ごとに前記速度制御系パラメータの自動調整を行う、請求項1または請求項2に記載のエレベータードア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータードア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にドア制御装置が開示されている。このドア制御装置は、モータで駆動されるベルトに連結されたドアパネルを開閉移動させるためにモータを回転させる動作を指示する第1の動作指令と、ドアパネルの停止時にモータにトルクを発生させる動作を指示する第2の動作指令と、を選択して出力する開閉動作選択部と、第1の動作指令に基づき、ドアパネルの移動速度を制御するようにモータに供給される第1の電流値を出力する第1の電流指令部と、第2の動作指令に基づき、モータが発生するトルクが変化するようにモータに供給される第2の電流値を変化させる第2の電流指令部と、モータに設けられた回転検出器が出力するモータの回転位置からモータの回転速度を演算する速度演算部と、第2の電流値の変化量と、モータの回転位置の変化量とを用いて、ベルトのベルト剛性を推定するベルト剛性推定部と、ベルト剛性推定部が推定したベルト剛性から遮断周波数を決定する遮断周波数決定部と、回転速度の信号から遮断周波数の周波数成分を除去した信号を出力して、第1の電流指令部に負帰還させるフィルタ処理部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-039609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータードア装置では、ベルトの張力状態によってはドア駆動時に異常騒音あるいは発振現象が生じる場合があり、これらの現象を解決するために、保守作業者などが現場でベルト張力を変更することあるいは制御パラメータを変更することで問題を解決していた。しかし、これらの異常が発生した場合はエレベーター利用停止の可能性が高く、利用者への影響が大きい。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、ドアを駆動するベルトの状態に起因する振動及び騒音を抑制する上で有利になるエレベータードア制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータードア制御装置は、ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、回転検出器及びドア位置スイッチから得られた信号をもとにドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、推定した共振周波数に応じてドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ドアを駆動するベルトの状態に起因する振動及び騒音を抑制する上で有利になるエレベータードア制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1によるエレベータードア制御装置のドア装置を示す全体構成の概略図である。
図2】共振周波数推定部が計算したドア装置固有振動数とベルト固有振動数の関係の一例を示す図である。
図3】異常判定部の詳細構成を示す図である。
図4】ベルト異常判定のフローチャートを示す図である。
図5】実施の形態1におけるエレベータードア制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。以下に示す実施の形態に示した構成は、本開示に係る技術的思想の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示に記載の複数の技術的思想を組み合わせることも可能である。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略または変更することも可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベータードア制御装置のドア装置を示す全体構成の概略図である。図1は例えばエレベータードア制御装置が有するドア装置で、ドアモータ1、ベルト2、ドアパネル3、回転検出器4、連結部5、プーリー6、及びドア位置スイッチ7を備える。またエレベータードア制御装置は、速度指令部8、フィルタ9、速度制御部10、電流指令部11、電流制御部12、ベルト剛性推定部13、共振周波数推定部14、及び自動調整部15を備える。
【0011】
図1において、ドア装置はドアモータ1の駆動力によりベルト2が水平方向に動作することでエレベーターかごの出入口であるドアパネル3を開閉する。
【0012】
ドアモータ1には回転検出器4が取り付けられており、ドアモータ1の回転角度を検出することで、ドアパネル3の速度あるいは位置を把握することが可能となっている。
【0013】
ドアパネル3の上部には、連結部5がベルト2を把持する形で配置されている。これにより、ドアモータ1の駆動力がプーリー6に張り渡されたベルト2を介してドアパネル3に伝達されてドアの開閉が可能となっている。
【0014】
ベルト2として、歯付ベルトを用いることができる。プーリー6にはベルト種類に応じた溝が設けられており、ベルト2の長さ及びプーリー6の軸間距離に応じて初期張力を調整することが可能である。また、ドア位置スイッチ7はドアパネル3がドア全開位置終端またはドア全閉位置終端に位置することを検出する機能を有している。
【0015】
速度指令部8は、ドアパネル3の開閉速度を指令する。速度指令部8は、ドアパネル3が全開位置に存在するか全閉位置に存在するかをドア位置スイッチ7から得られた信号を元に判定して戸開指令または戸閉指令を速度制御部10に出力する。
【0016】
速度制御部10は、ドアパネル3の開閉速度を制御する。速度制御部10は、速度指令部8から指令されたドアパネル3の速度にフィルタ9がかけられた値と、回転検出器4から得られたドアモータ1の回転速度を元に計算されたドアパネル3の速度にフィルタ9がかけられた値の差分を入力とし、入力された速度差を補正する。フィルタ9は、指令値あるいは負帰還値のノイズ成分を除去するために用いられ、例えばローパスフィルタでも良いし、ノッチフィルタでも良い。フィルタの遮断周波数は、後述する共振周波数推定値の影響を除去できる値に設定する。
【0017】
電流指令部11は、回転検出器4及びドア位置スイッチ7の信号を元に、ドアパネル3が全開位置または全閉位置に存在する場合は、ドアパネル3を全開方向または全閉方向に一定の力で押し付ける電流指令を出力し、それ以外の位置にドアパネル3が存在する場合は、速度制御部10で制御された電流指令値を出力する。
【0018】
電流制御部12は、入力された電流指令値に基づいてドアモータ1に供給される電流を制御する。電流制御部12は、ドアモータ1に流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する。ドアモータ1のトルクをτ、ドアモータ1に供給される電流値をI、トルク定数をKtとすると、τ=I×Ktで表すことができる。
【0019】
ベルト剛性推定部13は、ベルト2の剛性値をドアモータ1で印加したトルクτ及び回転検出器4で検出したベルト伸びxから算出する推定部である。ベルト剛性をk、ベルト伸びをx、プーリー半径をR、回転角度θとすると、一定トルクτで戸開方向または戸閉方向にベルト2へ力をかけた際、
x=R・θ
τ/R=k・x
の2式が成り立つ。
それゆえ、ベルト剛性kは、k=τ/R^2/θで計算することができる。
【0020】
ベルト剛性推定部13は、ドアパネル3が全開位置または全閉位置の場合に、ドアモータ1に流れる電流値を検出する電流検出器から得られたモータ電流値から算出されるベルト2にかかる力の理論計算値と、回転検出器4から得られたドアモータ1の回転変化量から算出されるベルト2の伸びと、を用いてベルト2の剛性を推定してもよい。これにより、ベルト2の剛性を精度良く推定することが可能となる。
【0021】
ベルト剛性は経年劣化などにより剛性値が低下するが、例えば、戸開終端で戸開方向にあるいは戸閉終端で戸閉方向に一定のトルクを印加すれば、逐次ベルト剛性の値を推定することができる。ここでベルト剛性推定部13が推定した剛性値が据え付け時の剛性値より低下している場合、その結果を共振周波数推定部14に出力する。
【0022】
共振周波数推定部14は、ベルト剛性推定部13から出力されたベルト剛性値より、共振周波数を推定する。
【0023】
自動調整部15は、共振周波数推定部14で共振周波数が存在すると判断された場合に、フィルタ9の遮断周波数及び速度制御部10の制御ゲインを調整する。フィルタ9の遮断周波数及び速度制御部10の制御ゲインは、ドアモータ1の速度制御系パラメータの例である。本実施の形態であれば、ドアを駆動するベルト2の剛性を推定し、ベルト2の状態に応じて制御パラメータを自動調整することが可能となる。このため、振動及び騒音を確実に抑制することが可能となる。
【0024】
また、異常判定部16は、共振周波数推定部14から推定されたドア装置固有振動数17があらかじめ記憶された数値と著しく異なり、自動調整部15で制御パラメータが変更された後も、速度帰還値に閾値を超える振動成分が存在する場合にベルト2に異常があると判定し例えば保守システム21などに発報する。
【0025】
図2は、共振周波数推定部14が計算したドア装置固有振動数17とベルト固有振動数18の関係の一例を示したものである。共振周波数推定部14は、例えば、ベルト2をばね、ドアパネル3を質量体と見立てたモデルでドア装置固有振動数17を算出し出力する推定部である。共振周波数推定部14は、算出されたドア装置固有振動数17と、ベルト固有振動数18が一致した場合、一致した固有振動数を共振周波数とみなし値を出力する。ベルト固有振動数18は、ベルト2の長さL、初期張力T、及び線密度ρで決まるベルト弦振動周波数、あるいはドアモータ1とベルト2のベルト噛合い周波数である。ベルト弦振動周波数をfbとするとfb=n/2L*√ρ/Tで算出できる。nは自然数であり、n=1のときの弦振動周波数は基本波であり、n=2、3、4…は高調波を示す。
【0026】
また、ベルト噛合い周波数をfcとすると、ベルト長さLは連結部5からプーリー6の軸までの距離と考えて計算する。線密度ρはベルトの種類に応じた値である。ドア位置に応じて連結部5も移動するため、ベルト長さも変化し、ドア位置によってドア装置固有振動数17、ベルト固有振動数18は変化する。共振周波数推定部14は、ベルト剛性が変化しドア装置固有振動数17とベルト固有振動数18が一致する周波数を共振周波数として検出する。
【0027】
図3は、異常判定部16の詳細構成を示す図である。異常判定部16は、正常時のドア装置固有振動数17をあらかじめ記憶する記憶部19と、ベルト2に異常が存在すると判定した際に保守システム21に異常を発報する異常発報部20とを有する。異常判定部16は、あらかじめ記憶したドア装置固有振動数17と、共振周波数推定部14で推定したドア装置固有振動数17とが異なり、且つ、共振周波数推定部14で推定された共振周波数が存在する場合にベルト2に異常があると判定してもよい。これにより、ベルト2の異常を精度良く検知することが可能となる。
【0028】
ベルト剛性推定部13がベルト剛性推定を開始し、異常判定部16がベルト2の異常を検出するまでの流れの一例を図4に示す。図4は、ベルト異常判定のフローチャートを示す図であり、STARTから処理を開始し、ENDに到達するまでは図4の処理を継続する。ステップS201で、ベルト剛性推定部13は、回転検出器4及びドア位置スイッチ7から得られた信号でドア位置信号を取得し、ドアパネル3が全開または全閉であるか判定する。ここでベルト剛性推定部13はドアパネル3が全開または全閉位置であることを判定した場合には、ステップS202に進む。ステップS202にて電流指令部11は一定値の電流指令を電流制御部に入力し、ドアモータ1が一定トルクでベルト2を駆動し、ベルト剛性推定部13がベルト剛性を推定する。ステップS203にてベルト剛性推定部13は、ベルト剛性が低下しているか否かを判定する。ベルト剛性が低下している場合は、ベルト共振周波数推定ステップS204に進む。ステップS204にて、共振周波数推定部14は、入力されたベルト剛性を用いてドア装置固有振動数17及びベルト固有振動数18を推定しステップS205に進む。
【0029】
ステップS205では、ドア装置固有振動数17とベルト固有振動数18が一致するか否かを判定する。ドア装置固有振動数17とベルト固有振動数18が一致する場合は、その固有振動数値を共振周波数値とみなしステップS206に進む。ステップS206では、フィルタ9の遮断周波数または速度制御部10の制御ゲインを調整しステップS207に進む。ステップS207では異常判定部16が回転検出器4で取得したドアモータ1の回転速度の入力すなわち実速度の波形を確認しステップS208に進む。異常判定部16は入力されたドアモータ1の回転速度に振動が存在するか否かを判定し、振動が存在する場合は、ステップS209に進む。ステップS209では、異常発報部20が保守システム21に異常の発報を行い、処理を終了する。
【0030】
上述したように、共振周波数推定部14は、ベルト剛性推定部13が推定したベルト剛性値から算出したドア装置固有振動数17と、ベルト2に関わる固有振動数であるベルト固有振動数18が一致する場合、その振動数を共振周波数として出力する。これにより、共振周波数を精度良く推定することが可能となる。
【0031】
共振周波数推定部14は、エレベーターの据え付け時に共振周波数の推定を実施して、自動調整部15は当該据え付け時に速度制御系パラメータの自動調整を行うようにしてもよい。これにより、据付不良の早期発見が可能となる。また、据付け直後の調整不良を発見でき、作業員によるヒューマンエラーを早期に対処可能となる。また、共振周波数推定部14は、各階床で共振周波数の推定を実施して、自動調整部15は各階床ごとに速度制御系パラメータの自動調整を行うようにしてもよい。これにより、各階床のベルト2の据え付け状態に応じてパラメータを調整でき、振動騒音を確実に抑制することが可能となる。
【0032】
図5は、実施の形態1におけるエレベータードア制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。エレベータードア制御装置の各機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用ハードウェア600であってもよい。処理回路は、プロセッサ601及びメモリ602を備えていてもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア600として形成され、且つ、当該処理回路は更にプロセッサ601及びメモリ602を備えていてもよい。図5に示す例において、処理回路の一部は専用ハードウェア600として形成されている。また、図5に示す例において、処理回路は、専用ハードウェア600に加えて、プロセッサ601及びメモリ602を更に備えている。
【0033】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア600である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0034】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ601及び少なくとも1つのメモリ602を備える場合、エレベータードア制御装置の各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0035】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ602に格納される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。プロセッサ601は、メモリ602に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ601は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ602には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0036】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、エレベータードア制御装置の機能を実現することができる。なお、エレベータードア制御装置の各機能は、複数の機器が連携することで実現されてもよいし、単一の機器によって実現されてもよい。また、エレベータードア制御装置の各機能の少なくとも一部は、外部ネットワーク上のサーバ等に実装されていてもよい。
【0037】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0038】
(付記1)
ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、
前記ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、
前記ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、
前記ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、
前記回転検出器及び前記ドア位置スイッチから得られた信号をもとに前記ドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、
前記ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、
前記ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、
前記ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、
推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、
推定した共振周波数に応じて前記ドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、
を備えるエレベータードア制御装置。
(付記2)
前記ベルト剛性推定部は、前記ドアパネルが全開位置または全閉位置の場合に前記電流検出器から得られたモータ電流値から算出される前記ベルトにかかる力の理論計算値と、前記回転検出器から得られた前記ドアモータの回転変化量から算出される前記ベルトの伸びと、を用いて前記ベルトの剛性を推定する付記1に記載のエレベータードア制御装置。
(付記3)
前記異常判定部は、正常時のドア装置の固有振動数をあらかじめ記憶する記憶部と、判定結果に応じて異常を発報する異常発報部と、を備え、あらかじめ記憶したドア装置の固有振動数と、前記共振周波数推定部で推定したドア装置の固有振動数とが異なり、且つ、前記共振周波数推定部で推定された共振周波数が存在する場合に前記ベルトに異常があると判定する付記1または付記2に記載のエレベータードア制御装置。
(付記4)
前記共振周波数推定部は、前記ベルト剛性推定部が推定した剛性値から算出したドア装置の固有振動数と、ベルトに関わる固有振動数が一致する場合、その振動数を共振周波数として出力する付記1から付記3のいずれか一項に記載のエレベータードア制御装置。
(付記5)
前記共振周波数推定部は据え付け時または各階床で共振周波数の推定を実施して、前記自動調整部は据え付け時または各階床ごとに前記速度制御系パラメータの自動調整を行う、付記1から付記4のいずれか一項に記載のエレベータードア制御装置。
【符号の説明】
【0039】
1 ドアモータ、 2 ベルト、 3 ドアパネル、 4 回転検出器、 5 連結部、 6 プーリー、 7 ドア位置スイッチ、 8 速度指令部、 9 フィルタ、 10 速度制御部、 11 電流指令部、 12 電流制御部、 13 ベルト剛性推定部、 14 共振周波数推定部、 15 自動調整部、 16 異常判定部、 17 ドア装置固有振動数、 18 ベルト固有振動数、 19 記憶部、 20 異常発報部、 21 保守システム、 600 専用ハードウェア、 601 プロセッサ、 602 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、
前記ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、
前記ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、
前記ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、
前記回転検出器及び前記ドア位置スイッチから得られた信号をもとに前記ドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、
前記ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、
前記ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、
前記ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、
推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、
推定した共振周波数に応じて前記ドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、
を備え
前記異常判定部は、正常時のドア装置の固有振動数をあらかじめ記憶する記憶部と、判定結果に応じて異常を発報する異常発報部と、を備え、あらかじめ記憶したドア装置の固有振動数と、前記共振周波数推定部で推定したドア装置の固有振動数とが異なり、且つ、前記共振周波数推定部で推定された共振周波数が存在する場合に前記ベルトに異常があると判定するエレベータードア制御装置。
【請求項2】
ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、
前記ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、
前記ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、
前記ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、
前記回転検出器及び前記ドア位置スイッチから得られた信号をもとに前記ドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、
前記ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、
前記ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、
前記ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、
推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、
推定した共振周波数に応じて前記ドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、
を備え
前記共振周波数推定部は、前記ベルト剛性推定部が推定した剛性値から算出したドア装置の固有振動数と、ベルトに関わる固有振動数が一致する場合、その振動数を共振周波数として出力するエレベータードア制御装置。
【請求項3】
前記ベルト剛性推定部は、前記ドアパネルが全開位置または全閉位置の場合に前記電流検出器から得られたモータ電流値から算出される前記ベルトにかかる力の理論計算値と、前記回転検出器から得られた前記ドアモータの回転変化量から算出される前記ベルトの伸びと、を用いて前記ベルトの剛性を推定する請求項1または請求項2に記載のエレベータードア制御装置。
【請求項4】
前記共振周波数推定部は据え付け時または各階床で共振周波数の推定を実施して、前記自動調整部は据え付け時または各階床ごとに前記速度制御系パラメータの自動調整を行う、請求項1または請求項2に記載のエレベータードア制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示に係るエレベータードア制御装置は、ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、回転検出器及びドア位置スイッチから得られた信号をもとにドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、推定した共振周波数に応じてドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、を備え、異常判定部は、正常時のドア装置の固有振動数をあらかじめ記憶する記憶部と、判定結果に応じて異常を発報する異常発報部と、を備え、あらかじめ記憶したドア装置の固有振動数と、共振周波数推定部で推定したドア装置の固有振動数とが異なり、且つ、共振周波数推定部で推定された共振周波数が存在する場合にベルトに異常があると判定するものである。
また、本開示に係るエレベータードア制御装置は、ドアパネルが吊り下げられたベルトを駆動するドアモータの回転角度を検出する回転検出器と、ドアパネルの位置が全開または全閉状態であることを検出するドア位置スイッチと、ドアモータに流れる電流値を検出する電流検出器と、ドアパネルの開閉速度を指令する速度指令部と、ドアパネルの開閉速度を制御する速度制御部と、回転検出器及びドア位置スイッチから得られた信号をもとにドアパネルが全開位置または全閉位置にある場合に戸開方向または戸閉方向に一定の押しつけ力が加わるような指令値を与える電流指令部と、ドアモータに流れる電流が指令値に追従するような電圧指令値を生成する電流制御部と、ベルトの剛性値を推定するベルト剛性推定部と、ベルトの剛性値から共振周波数を推定する共振周波数推定部と、推定した共振周波数に応じて異常を判定する異常判定部と、推定した共振周波数に応じてドアモータの速度制御系パラメータを自動調整する自動調整部と、を備え、共振周波数推定部は、ベルト剛性推定部が推定した剛性値から算出したドア装置の固有振動数と、ベルトに関わる固有振動数が一致する場合、その振動数を共振周波数として出力するものである。