(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176329
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20241212BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241212BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20241212BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20241212BHJP
H10K 77/00 20230101ALI20241212BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241212BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20241212BHJP
B23K 26/402 20140101ALI20241212BHJP
B23K 26/386 20140101ALI20241212BHJP
【FI】
G09F9/00 338
H10K50/10
H10K50/844
H10K59/12
H10K77/00
G09F9/30 349Z
B23K26/57
B23K26/402
B23K26/386
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094789
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絵理
【テーマコード(参考)】
3K107
4E168
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC23
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD12
3K107EE48
3K107EE61
3K107GG28
3K107GG52
4E168AD14
4E168AD17
4E168FC00
4E168JA03
4E168JA05
4E168JA17
4E168JB03
4E168KA06
5C094AA31
5C094AA43
5C094AA44
5C094BA27
5C094DA13
5C094EA10
5C094GB10
5G435AA14
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】信頼性の低下を抑制し、かつ、製造コストを抑えることが可能な表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、透明な基板の上の表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域とにわたって透明な無機層を形成し、前記周辺領域の前記無機層の上に金属層を形成し、前記無機層及び前記金属層の上に有機層を形成し、少なくとも前記金属層の直上に位置する前記有機層の上に保護フィルムを貼った処理基板を用意し、前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層及び前記有機層を貫通した複数の穴を形成し、前記金属層に形成された複数の穴は、識別情報に対応したパターンで並んでいる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板の上の表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域とにわたって透明な無機層を形成し、
前記周辺領域の前記無機層の上に金属層を形成し、
前記無機層及び前記金属層の上に有機層を形成し、
少なくとも前記金属層の直上に位置する前記有機層の上に保護フィルムを貼った処理基板を用意し、
前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、
前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層及び前記有機層を貫通した複数の穴を形成し、
前記金属層に形成された複数の穴は、識別情報に対応したパターンで並んでいる、
表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザ光を照射する工程は、ステージに前記保護フィルムが接した状態で行う、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光を照射する工程では、前記保護フィルムは、前記レーザ光の照射位置において、前記ステージに接している、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光を照射する工程では、前記保護フィルムを貫通する穴は形成せず、前記金属層及び前記有機層を貫通した穴の形成に伴って発生した粉塵を前記保護フィルムに付着させる、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光を照射した後、
前記保護フィルムを前記処理基板から剥離する、
請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記レーザ光は、紫外線波長のレーザ光である、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記基板は、ガラス基板であり、
前記無機層は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、または、シリコン酸窒化物(SiON)で形成する、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記金属層は、チタン、モリブデン、タングステン、及び、アルミニウムの少なくとも1つの材料で形成する、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記表示領域の前記無機層の上に電極を形成し、
前記電極及び前記金属層は、同一工程で形成する、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記金属層は、チタン層及びアルミニウム層の積層体、または、モリブデン層及びアルミニウム層の積層体として形成する、
請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
透明な基板の上の複数のパネル部にわたって透明な無機層を形成し、
前記パネル部の各々において、表示領域を囲む周辺領域の前記無機層の上に金属層を形成し、
前記無機層、及び、前記金属層の上に有機層を形成し、
少なくとも前記金属層の直上に位置する前記有機層の上に保護フィルムを貼った処理基板を用意し、
前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、
前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層及び前記有機層を貫通した複数の穴を形成し、
前記金属層に形成された複数の穴は、識別情報に対応したパターンで並んでいる、
表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記レーザ光を照射する前に、
前記処理基板を前記パネル部ごとに切断する、
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記レーザ光を照射した後に、
前記処理基板を前記パネル部ごとに切断する、
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記レーザ光を照射する工程は、前記保護フィルムとステージとが接した状態で行う、
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記レーザ光を照射する工程では、前記保護フィルムを貫通する穴は形成せず、前記金属層及び前記有機層を貫通した穴の形成に伴って発生した粉塵を前記保護フィルムに付着させ、
その後、前記保護フィルムを前記処理基板から剥離する、
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記レーザ光は、紫外線波長のレーザ光であり、
前記基板は、ガラス基板であり、
前記無機層は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、または、シリコン酸窒化物(SiON)で形成し、
前記金属層は、チタン、モリブデン、タングステン、及び、アルミニウムの少なくとも1つの材料で形成する、
請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
基板の上方に金属層を形成し、
前記金属層の直上に保護フィルムを配置し、
前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、
前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層に、識別情報に対応したパターンで並んだ複数の穴を形成する、
表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記レーザ光を照射する工程は、ステージに前記保護フィルムが接した状態で行う、
請求項17に記載の表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記レーザ光を照射する工程では、前記保護フィルムを貫通する穴は形成せず、前記金属層を貫通した穴の形成に伴って発生した粉塵を前記保護フィルムに付着させ、
その後、前記保護フィルムを剥離する、
請求項18に記載の表示装置の製造方法。
【請求項20】
前記レーザ光は、紫外線波長のレーザ光であり、
前記基板は、ガラス基板であり、
前記金属層は、チタン、モリブデン、タングステン、及び、アルミニウムの少なくとも1つの材料で形成する、
請求項19に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。このような表示装置の製造過程において、レーザ加工が行われることがある。レーザ加工時において、レーザ光が被加工物に照射されると、照射部で粉塵が発生する。この粉塵が製品に付着したままでは、表示装置の信頼性の低下に繋がる可能性がある。また、粉塵が飛散することで、製造装置を汚染する可能性もある。
【0003】
また、集塵機で粉塵を集塵する場合、製造設備を複雑な構成とする必要がある。そのため、製造コストが高くなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、信頼性の低下を抑制し、かつ、製造コストを抑えることが可能な表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
透明な基板の上の表示領域と前記表示領域を囲む周辺領域とにわたって透明な無機層を形成し、前記周辺領域の前記無機層の上に金属層を形成し、前記無機層及び前記金属層の上に有機層を形成し、少なくとも前記金属層の直上に位置する前記有機層の上に保護フィルムを貼った処理基板を用意し、前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層及び前記有機層を貫通した複数の穴を形成し、前記金属層に形成された複数の穴は、識別情報に対応したパターンで並んでいる。
【0007】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
透明な基板の上の複数のパネル部にわたって透明な無機層を形成し、前記パネル部の各々において、表示領域を囲む周辺領域の前記無機層の上に金属層を形成し、前記無機層、及び、前記金属層の上に有機層を形成し、少なくとも前記金属層の直上に位置する前記有機層の上に保護フィルムを貼った処理基板を用意し、前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層及び前記有機層を貫通した複数の穴を形成し、前記金属層に形成された複数の穴は、識別情報に対応したパターンで並んでいる。
【0008】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
基板の上方に金属層を形成し、前記金属層の直上に保護フィルムを配置し、前記基板側から前記金属層に向けてレーザ光を照射し、前記レーザ光を照射する工程では、前記金属層に、識別情報に対応したパターンで並んだ複数の穴を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、タグTGの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4中のV-V線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図7】
図7は、処理基板を用意する工程を説明するための図である。
【
図8】
図8は、処理基板を切断する工程を説明するための図である。
【
図9】
図9は、レーザ光を照射する工程を説明するための図である。
【
図10】
図10は、レーザ光を照射する工程を説明するための図である。
【
図11】
図11は、レーザ光を照射する工程を説明するための図である。
【
図12】
図12は、保護フィルムを剥離する工程を説明するための図である。
【
図13】
図13は、保護フィルムを剥離する工程を説明するための図である。
【
図14】
図14は、表示装置DSPの製造方法の他の例を説明するためのフロー図である。
【
図15】
図15は、表示装置DSPの製造方法の他の例を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0012】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として、例えば、有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0013】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAを囲む周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラス基板である。なお、基板10の材料は、ガラス基板に限らず、紫外線波長に対する透過率が高い材料であればよい。
【0014】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを備えている。一例では、画素PXは、赤色の副画素SP1、緑色の副画素SP2及び青色の副画素SP3を備えている。なお、画素PXは、上記の3色の副画素の他に、白色などの他の色の副画素を加えた4個以上の副画素を備えてもよい。
【0015】
周辺領域SAは、タグTGと、第1方向Xに並んだ複数の端子TMを備えている。
図1の例では、タグTG及び複数の端子TMは、表示領域DAに対して第2方向Yの矢印側に位置している。タグTGは、詳細は後述するが、例えば、表示装置DSPの識別情報に対応したパターンを有している。識別情報に対応したパターンは、2次元コードとして形成されている。このようなパターンは、後述するレーザ光でマーキングされている。複数の端子TMは、フレキシブルプリント回路基板やICチップなどと接続される。また、複数の端子TMは、副画素SPを駆動するための各種配線(走査線GL、信号線SL、電源線PLなど)と電気的に接続されている。
【0016】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20とを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0017】
画素スイッチ2において、ゲート電極は走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。
【0018】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)である。例えば、副画素SP1は赤波長に対応した光を出射する表示素子20を備え、副画素SP2は緑波長に対応した光を出射する表示素子20を備え、副画素SP3は青波長に対応した光を出射する表示素子20を備えている。表示素子20の構成については後述する。
【0019】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。ここでは、破線で囲んだ4個の画素PXに着目する。それぞれの画素PXにおいて、副画素SP1,SP2,SP3はこの順で第1方向Xに並んでいる。すなわち、表示領域DAにおいて、第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP1により構成される列と、第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP2により構成される列と、第2方向Yに並ぶ複数の副画素SP3により構成される列とが、第1方向Xにおいて並んでいる。
【0020】
副画素SP1,SP2,SP3の境界には、隔壁5が配置されている。
図2の例において、隔壁5は、第1方向Xに隣り合う副画素SPの間にそれぞれ位置する複数の隔壁5Xと、第2方向Yに隣り合う副画素SPの間にそれぞれ位置する複数の隔壁5Yとを有した格子状に形成されている。
図2の例においては、隔壁5Xが第2方向Yと平行に延び、隔壁5Yが第1方向Xと平行に延びている。これらの隔壁5X,5Yにより、副画素SP1,SP2,SP3のそれぞれにおいて開口OPが形成されている。このような開口OPは、各副画素SPの発光領域に相当する。図示した例では、各副画素SPの開口OPの面積は同一である。
【0021】
なお、副画素のレイアウトは、図示した例に限らない。例えば、各副画素SPの開口OPの面積が互いに異なっていてもよい。また、副画素SP1,SP2,SP3が一列に並んでいなくてもよい。また、互いに異なる色の副画素SPが第2方向Yに並んでいてもよい。
【0022】
図3は、
図2のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
図3においては、副画素SP1,SP2,SP3に配置される素子として駆動トランジスタ3及び表示素子20を示し、その他の素子の図示を省略している。
【0023】
表示装置DSPは、上述の基板10と、絶縁層11,12,13と、上述の隔壁5Xと、封止層14とを備えている。絶縁層11,12,13は、基板10の上において第3方向Zに積層されている。例えば、絶縁層11,12は無機材料で形成された無機層であり、絶縁層13、及び、隔壁5Xは有機材料で形成された有機層である。
図2に示した隔壁5Yは、隔壁5Xと同じ材料によって隔壁5Xと一体的に形成されている。
【0024】
各副画素の駆動トランジスタ3は、半導体層30と、電極31,32,33とを備えている。電極31は、ゲート電極に相当する。電極32,33の一方はソース電極に相当し、他方はドレイン電極に相当する。半導体層30は、基板10と絶縁層11の間に配置されている。電極31は、絶縁層11,12の間に配置されている。電極32,33は、絶縁層12,13の間に配置され、絶縁層11,12を貫通するコンタクトホールを通じて半導体層30に接触している。なお、駆動トランジスタ3の構成については、図示したトップゲート型に限らず、ボトムゲート型であってもよい。
【0025】
半導体層30は、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、酸化物半導体などのいずれであってもよい。電極31は、例えば、モリブデン及びタングステンの合金で形成されている。電極32,33は、例えば、チタン層とアルミニウム層との積層体、あるいは、モリブデン層とアルミニウム層との積層体として形成されている。
【0026】
表示素子20は、下部電極LEと、有機EL層ORと、上部電極UEとを備えている。下部電極LEは、副画素SP毎に配置された電極であり、画素電極と呼ばれる場合がある。上部電極UEは、複数の表示素子20に対して共通に配置された電極であり、共通電極と呼ばれる場合がある。有機EL層ORは、下部電極LE及び上部電極UEの間に配置されている。
【0027】
下部電極LE1,LE2,LE3は、絶縁層13の上に配置されている。隔壁5X1,5X2,5X3,5X4も絶縁層13の上に配置されている。
図3の例においては、隔壁5X1、5X2が下部電極LE1の第1方向Xにおける両端部を覆い、隔壁5X2、5X3が下部電極LE2の第1方向Xにおける両端部を覆い、隔壁5X3、5X4が下部電極LE3の第1方向Xにおける両端部を覆っている。
図3の断面には表れていないが、隔壁5Yも隔壁5Xと同様に絶縁層13の上に配置され、下部電極LE1,LE2,LE3の第2方向Yにおける両端部を覆っている。平面視において、下部電極LE1,LE2,LE3は、
図2に示した開口OPとそれぞれ重なっている。
【0028】
下部電極LE1,LE2,LE3は、それぞれ絶縁層13を貫通するコンタクトホールを通じて電極33と電気的に接続されている。下部電極LE1,LE2,LE3は、銀などの金属材料で形成されている。ただし、下部電極LE1,LE2,LE3は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料で形成されてもよいし、透明導電材料と金属材料との積層体であってもよい。
【0029】
有機EL層OR1は、第1方向Xにおいて隔壁5X1,5X2の間に位置し、赤色の発光層を含み、下部電極LE1を覆っている。有機EL層OR2は、第1方向Xにおいて隔壁5X2,5X3の間に位置し、緑色の発光層を含み、下部電極LE2を覆っている。有機EL層OR3は、第1方向Xにおいて隔壁5X3,5X4の間に位置し、青色の発光層を含み、下部電極LE3を覆っている。
図3の断面には表れていないが、有機EL層OR1,OR2,OR3は、第2方向Yにおいて隣り合う隔壁5Yの間に位置している。すなわち、有機EL層OR1,OR2,OR3は、それぞれ平面視において
図2に示した開口OPに配置されている。
【0030】
また、詳述しないが、有機EL層OR1,OR2,OR3は、それぞれ正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などの機能層を含んでいる。
【0031】
上部電極UEは、有機EL層OR1,OR2,OR3及び隔壁5X1,5X2,5X3,5X4を覆っている。上部電極UEは、マグネシウム及び銀などの金属材料で形成されている。ただし、上部電極UEは、ITOやIZOなどの透明導電材料で形成されてもよい。
【0032】
封止層14は、上部電極UEの上に配置されている。封止層14は、隔壁5X1,5X2,5X3,5X4により生じる凹凸を平坦化ための有機層と、有機EL層OR1,OR2,OR3,OR4を水分などから保護する無機層と、を含んでいる。有機層は、例えば絶縁層11,12,13や隔壁5X1,5X2,5X3,5X4よりも厚く形成されている。
【0033】
図4は、タグTGの構成の一例を示す図である。
図4の例では、タグTGは、正方形状に形成されている。タグTGは、
図3に示した電極31と同一層に位置する金属層、または、電極32,33と同一層に位置する金属層であり、チタン、モリブデン、タングステン、及び、アルミニウムの少なくとも1つの材料で形成されている。一例では、タグTGは、電極32などと同一層に位置し、チタン層及びアルミニウム層の積層体、または、モリブデン層及びアルミニウム層の積層体として形成されている。
【0034】
タグTGは、識別情報INFを備えている。識別情報INFは、タグTGを第3方向Zに貫通する複数の穴HLのパターンとして形成されている。複数の穴HLは、所定のルールに従って第1方向X及び第2方向Yに並び、2次元コードを形成している。識別情報INFをスキャナなどで読み取ることで、事前に登録した製品の製造番号やロット番号など、製品の管理に必要な情報を取得することができる。
【0035】
図5は、
図4中のV-V線に沿うタグTGを含む表示装置DSPの概略的な断面図である。
表示装置DSPは、絶縁層IL1,IL2を備えている。絶縁層IL1は、透明な無機材料で形成された無機層である。絶縁層IL1は、例えば、
図3における絶縁層11及び12のうちの少なくとも1つに相当する。絶縁層IL2は、透明な有機材料で形成された有機層である。絶縁層IL2は、例えば、
図2における隔壁5、
図3における絶縁層13、又は、封止層14に含まれる有機層のうち少なくとも1つに相当する。
【0036】
絶縁層IL1は、基板10の上に配置されている。タグTGは、絶縁層IL1の上に配置されている。絶縁層IL2は、タグTG及び絶縁層IL1の上に配置されている。複数の穴HLは、それぞれ絶縁層IL2及びタグTGを貫通し、絶縁層IL1に到達している。穴HLは、絶縁層IL1を貫通していない。
【0037】
次に、表示装置DSPの製造方法の一例について
図6乃至
図13を参照しながら説明する。
【0038】
図6は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
ここに示す製造方法は、大別して、複数のパネル部PNLを有する大型の処理基板MBを用意する工程(ステップST1)と、処理基板MBを切断する工程(ステップST2)と、レーザ光LZを照射する工程(ステップST3)と、保護フィルムPFを剥離する工程(ステップST4)とを含む。
【0039】
ステップST1においては、まず、
図7(a)に示すように、大型の基板10を用意する(ステップST11)。基板10は、例えばガラス基板である。
【0040】
その後、
図7(b)に示すように、基板10の上に無機層である絶縁層IL1を形成する(ステップST12)。絶縁層IL1は、基板10の上の表示領域DAと周辺領域SAとにわたって形成している。絶縁層IL1は、例えばシリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)またはシリコン酸窒化物(SiON)などの透明な無機材料で形成されている。
【0041】
その後、
図7(c)に示すように、周辺領域SAにおいて絶縁層IL1の上に金属層MLを形成する(ステップST13)。図示した例では、金属層MLを形成するのと同時に、表示領域DAにおいて絶縁層IL1の上に電極ELを形成する。
具体的には、まず、絶縁層IL1の上に、チタン、モリブデン、タングステン、及び、アルミニウムの少なくとも1つの金属材料を堆積し、金属薄膜を形成する。その後、電極EL及び金属層MLとして残す領域にレジストを形成する。その後、レジストをマスクとして、金属薄膜のエッチングを行う。その後、レジストを除去する。これにより、電極EL及び金属層MLが形成される。つまり、電極EL及び金属層MLは、同一材料を用いて、同一行程で形成される。
例えば、電極ELは、
図3における電極32,33に相当し、電極EL及び金属層MLは、チタン層及びアルミニウム層の積層体、または、モリブデン層及びアルミニウム層の積層体として形成する。
【0042】
その後、
図7(d)に示すように、絶縁層IL1、電極EL及び金属層MLの上に有機層である絶縁層IL2を形成する(ステップST14)。
【0043】
上記のステップST12からステップST14までの間に、表示領域DAの画素回路1や表示素子20の他に、周辺領域SAの端子TMなども形成される。
【0044】
その後、
図7(e)に示すように、絶縁層IL2の上に保護フィルムPFを貼り付ける(ステップST15)。このとき、保護フィルムPFは、少なくとも金属層MLの直上に位置する絶縁層IL2の上に配置される。図示した例では、保護フィルムPFは、表示領域DA及び周辺領域SAにわたって配置され、絶縁層IL2の全体に重なっている。
保護フィルムPFは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料で形成されている。
【0045】
これにより、処理基板MBが用意される。このようにして用意された処理基板MBは、
図8に示すように、第1方向X及び第2方向Yに並んだ複数のパネル部PNLを有している。
図8の例では、複数のパネル部PNLは、一点鎖線で示すカットラインCLを挟んで第1方向X及び第2方向Yに隣接している。なお、それぞれのパネル部PNLの間に隙間が設けられていてもよい。
【0046】
ステップST2においては、
図8に示すように、処理基板MBをカットラインCLに沿ってパネル部PNLごとに切断する。これにより、単個の処理基板SUBが形成される。
【0047】
ステップST3においては、まず、
図9に示すように、処理基板SUBをレーザ照射装置100に搬入する。レーザ照射装置100は、ステージ110と、ステージ110の上方に配置されたレーザ装置120と、を備えている。
処理基板SUBがレーザ照射装置100に搬入される際、処理基板SUBの保護フィルムPFがステージ110と向かい合うように、処理基板SUBを反転する(ステップST31)。
【0048】
その後、
図10に示すように、処理基板SUBをステージ110に配置する(ステップST32)。このとき、保護フィルムPFとステージ110とが接するように処理基板SUBをステージ110に配置する。なお、
図10乃至
図13には、処理基板SUBのうち、金属層MLを含む部分を拡大した断面を示している。
【0049】
その後、
図11に示すように、処理基板SUBにレーザ光LZを照射する(ステップST33)。このとき、レーザ装置120は、処理基板SUBの基板10と向かい合う側に位置している。レーザ装置120は、主に金属層MLの加工に適し且つ基板10及び絶縁層IL1を透過する波長のレーザ光LZを出射するように構成されている。例えば、レーザ装置120は、紫外線波長のレーザ光LZを出射するように構成されている。また、このとき、レーザ光LZの照射位置において、保護フィルムPFは、ステージ110に接している。
【0050】
レーザ装置120は、基板10側から金属層MLに向けて、レーザ光LZを照射する。レーザ光LZは、透明材料で形成された基板10及び絶縁層IL1を透過し、金属層ML及び絶縁層IL2を貫通する穴HLを形成する。レーザ光LZのエネルギーの多くは、金属層ML及び絶縁層IL2の加工に用いられる。そのため、レーザ光LZは、保護フィルムPFを貫通する穴を形成せず、また、ステージ110はレーザ光LZによりほとんどダメージを受けない。また、レーザ光LZにより穴HLを形成するときに、粉塵40が発生する。粉塵40は、金属層MLの直上において保護フィルムPFに付着する。
【0051】
このようなレーザ光LZの照射により、金属層MLに、識別情報に対応したパターンの複数の穴HLが形成される。これにより、
図4などの示したタグTGが形成される。
【0052】
ステップST4においては、まず、処理基板SUBをレーザ照射装置100から搬出し、
図12に示すように、処理基板SUBを反転する(ステップST41)。
【0053】
その後、
図13に示すように、保護フィルムPFを処理基板SUBから剥離する(ステップST42)。粉塵40は保護フィルムPFに付着しているため、保護フィルムPFを処理基板SUBから剥離することで、粉塵40は処理基板SUBから除去される。
【0054】
以上の工程により、レーザ光が照射されることよって金属層ML及び絶縁層IL2には、識別情報に対応したパターンで並んだ複数の穴HLが形成される。
【0055】
なお、
図14に示すように、レーザ光を照射する工程(ステップST3)の後に、処理基板MBをパネル部PNLごとに切断する工程(ステップST2)を行ってもよい。例えば、複数台のレーザ設備で、処理基板MBが有する複数のタグTGにレーザ光を照射し、その後に処理基板MBをパネル部PNLごとに切断してもよい。
【0056】
また、
図15に示すように、保護フィルムPFを剥離する工程(ステップST4)の後に、処理基板MBをパネル部PNLごとに切断する工程(ステップST2)を行ってもよい。この場合、ステップST42では、処理基板MBから保護フィルムPFを剥離することとなる。処理基板MBから保護フィルムPFを剥がす場合は、パネル部PNLごとに切断された処理基板SUBから保護フィルムPFを剥離する場合と比べると、保護フィルムPFを剥がす回数が減少する。これにより、表示装置の製造歩留まりを向上することができる。
【0057】
本実施形態によれば、タグTGを形成するためのレーザ照射に伴って発生する粉塵40は、保護フィルムPFに付着する。これにより、レーザ照射時に発生する粉塵の飛散を抑えることができる。よって、粉塵を吸引するための集塵機等の設備が不要となるため、表示装置の製造コストを抑えることができる。
【0058】
さらに、レーザ光LZは保護フィルムPFを貫通せず、ステージ110はレーザ光LZによるダメージをほとんど受けない。これにより、例えばレーザ照射位置に貫通孔や溝を形成したステージを用意する必要がない。よって、表示装置の製造コストを抑えることができる。
【0059】
さらに、保護フィルムPFに付着した粉塵40は、保護フィルムPFとともに処理基板SUBから除去される。これにより、粉塵40は、処理基板SUBにほとんど残らない。よって、表示装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【0060】
また、粉塵40の飛散が抑えられ、しかも、発生した粉塵が保護フィルムPFとともに処理基板SUBから除去されることで、レーザ照射装置100の汚染を抑制することができる。
【0061】
さらに、上述した製造方法により形成されたタグTGは、小さいスペースに形成することができ、周辺領域SAの面積が小さい表示装置DSPに好適である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、信頼性の低下を抑制し、かつ、製造コストを抑えることが可能な表示装置の製造方法を提供することができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、表示装置DSPの一例として有機エレクトロルミネッセンス表示装置について説明したが、表示装置DSPは、表示素子として、液晶素子や無機系の発光ダイオードを備えた表示装置であってもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0065】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0066】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0067】
DSP…表示装置、MB,SUB…処理基板、PNL…パネル部、DA…表示領域、SA…周辺領域、SP…副画素、UE…上部電極、LE…下部電極、5…隔壁、11~13,IL1,IL2…絶縁層、14…封止層、20…表示素子、30…半導体層、31~33…電極、10…基板、ML…金属層、EL…電極、TG…タグ、PF…保護フィルム、40…粉塵、110…ステージ、120…レーザ装置、LZ…レーザ光。