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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176332
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、光学材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241212BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241212BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L63/00 C
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094796
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍一
(72)【発明者】
【氏名】生田 潤
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BG031
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD191
4J002CD201
4J002CH031
4J002CP051
4J002EV296
4J002FD200
4J002FD206
4J002GJ01
4J002GP00
4J002GP01
(57)【要約】
【課題】光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物。
(i)2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度が0.11以上
(ii)分子量が600以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物。
(i)2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度が0.11以上
(ii)分子量が600以上
【請求項2】
光酸発生剤が、スルホニウム塩系光酸発生剤である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光酸発生剤が有するアニオン成分のGaussianに基づく分子体積が85Å以上である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
主成分として、エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂及びエポキシ基を含有するポリ(メタ)アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
主成分として、沸点100℃以下の低沸点成分を含有しない請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
シリコーン骨格を有する樹脂の含有量が、主成分100質量%中20質量%以下である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
レオメーターにより測定される50℃における貯蔵弾性率G’が0.5MPa以下であり、フィルム形態である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
硬化物の25℃における波長400nmの光透過率が70%以上である請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化して得られた光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物、光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光硬化性を有する樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物)が、ディスプレイ、光半導体の接着剤、レンズ、保護膜等の光学用途に広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、固形状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂及び光酸発生剤を含有する透明性、耐熱性等に優れた光硬化性樹脂組成物製シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-96571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1に記載の光硬化性樹脂組成物製シートでは、光照射の光源として、従来使用されてきた高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプなどを使用した場合には光硬化性が得られるものの、UV-LEDを用いた場合に充分な光硬化性が得られないということが新たに判明した。
本発明は、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、本発明者らが新たに見出した前記課題について鋭意検討した結果、特定の光酸発生剤を使用することにより、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明(1)は、下記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物に関する。
(i)2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度が0.11以上
(ii)分子量が600以上
【0007】
本発明(2)は、光酸発生剤が、スルホニウム塩系光酸発生剤である本発明(1)に記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0008】
本発明(3)は、光酸発生剤が有するアニオン成分のGaussianに基づく分子体積が85Å以上である本発明(1)又は(2)に記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明(4)は、主成分として、エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂及びエポキシ基を含有するポリ(メタ)アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する本発明(1)~(3)のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明(5)は、主成分として、沸点100℃以下の低沸点成分を含有しない本発明(1)~(4)のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明(6)は、シリコーン骨格を有する樹脂の含有量が、主成分100質量%中20質量%以下である本発明(1)~(5)のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明(7)は、レオメーターにより測定される50℃における貯蔵弾性率G’が0.5MPa以下であり、フィルム形態である本発明(1)~(6)のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明(8)は、硬化物の25℃における波長400nmの光透過率が70%以上である本発明(1)~(7)のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明(9)はまた、本発明(1)~(8)のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化して得られた光学材料に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、特定の光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物であるので、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤を含有する。これにより、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れる。
(i)2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度が0.11以上
(ii)分子量が600以上
【0017】
前記組成物で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
前記(i)の特性は、UV-LEDが発する光の波長領域である波長365nmにおいて吸光度が特定値以上であることを意味するため、前記(i)の特性を有する光酸発生剤は、UV-LEDが発する光を受けることにより、酸を発生することが可能となる。これにより、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性に優れる。
更に、本願特定の光酸発生剤は、分子量が600以上((ii)の特性)であり、比較的大きな分子量を有する。光酸発生剤の分子量が小さい場合は、樹脂中での分子の移動性が高いという理由から、組成物中において、酸発生後の残った分子が再結合により共役構造が形成されやすく、透明性が低下するおそれがあるが、本願特定の光酸発生剤は、比較的大きな分子量を有するため、前記共役構造の形成を抑制でき、透明性に優れる。更には、分子量が大きい方が、樹脂中での拡散性が低くなり、酸発生後の残渣成分の再結合が抑制され着色要因となりにくいため、透明性に優れる。
【0018】
本明細書において、50~100質量%など、数値範囲を~で示す場合は、その上限値、下限値を含む。例えば、50~100質量%は、50質量%以上100質量%以下を意味する。
【0019】
<<光酸発生剤>>
本発明で使用する光酸発生剤は、下記(i)、(ii)の特性を有する。光酸発生剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(i)2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度が0.11以上
(ii)分子量が600以上
【0020】
2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度は、0.11以上であり、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.70以上、特に好ましくは1.00以上、最も好ましくは1.45以上であり、上限は特に限定されない。
本明細書において、前記吸光度は、光酸発生剤を2.5mmol/Lとなるようにアセトニトリルで希釈した溶液について、分光光度計を用いて測定される。
【0021】
光酸発生剤の分子量は、600以上、好ましくは650以上、より好ましくは700以上、更に好ましくは800以上、特に好ましくは900以上、最も好ましくは1000以上であり、上限は特に限定されない。
なお、本明細書において、光酸発生剤の分子量は、該化合物の分子構造から算出される値である。ここで、本明細書において、前記化合物の分子構造は、NMRにより決定される。
【0022】
光酸発生剤としては、アニオン成分とカチオン成分とからなるオニウム塩が挙げられる。オニウム塩としては、スルホニウム塩が好ましい。
オニウムカチオン成分としては、例えば、芳香族ジアゾニウム、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族セレニウム、芳香族ピリジニウム、芳香族フェロセニウム、芳香族ホスホニウム等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族スルホニウムが好ましい。
【0023】
アニオン成分としては、例えば、PF 、PF(CFCF 、PF(CFCF 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、ジチオカルバメートアニオン、SCN、トリフルオロメタンスルホナート、(Rf)PF6-n、B(C 、BF 、CFSO 、SO 2-、下記式(I)で表される成分等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
[(R1)(R2)(R3)(R4)Ga]-H (I)
〔式(1)中、R1~R4は互いに独立して、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アシル基及びハロゲンからなる群より選ばれる基で置換されてよいフェニル基又はパーフルオロアルキル基を表す。〕
なかでも、(Rf)PF6-n、B(C 、SbF 、PF(CFCF 、PF(CFCF 、PF 、SbF 、AsF 、ガレート酸系(上記式(I)で表される成分)が好ましく、SbF 、ガレート酸系(上記式(I)で表される成分)、PF(CFCF 、PF(CFCF がより好ましく、SbF 、Ga(C 、PF(CFCF 、PF(CFCF が更に好ましい。
【0024】
アニオン成分のGaussianに基づく分子体積は、好ましくは85Å以上、より好ましくは275Å以上、更に好ましくは350Å以上、特に好ましくは460Å以上、最も好ましくは500Å以上であり、上限は特に限定されない。
本明細書において、アニオン成分のGaussianに基づく分子体積は、汎用量子化学計算プログラムであるGaussianを用いて算出される。例えば、PF 、SbF 、PF(CFCF のGaussianに基づく分子体積は、それぞれ、75Å、85Å、279Åである。
【0025】
本発明で使用する光酸発生剤は、前記(i)、(ii)の特性を有する。
前記(i)の特性を有する光酸発生剤は、カチオン成分に対象波長領域の光吸収をより高くもつ構造を導入したものを選定する。
前記(ii)の特性を有する光酸発生剤は、カチオン成分、アニオン成分それぞれの分子量を考慮して、カチオン成分、アニオン成分の組み合わせを適宜調整すればよい。
以上の指針に沿って、当業者であれば、どのような光酸発生剤であれば前記(i)、(ii)の特性を有するかについて理解できるため、市販されている光酸発生剤の中から、前記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤を入手することが可能であり、また、カチオン成分、アニオン成分を適宜組み合わせて、前記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤を製造することも可能である。
【0026】
本発明の光硬化性樹脂組成物において、前記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤の含有量は、主成分(樹脂)100質量部に対して、好ましくは0.5~5.0質量部、より好ましくは0.5~4.0質量部、更に好ましくは1.0~4.0質量部である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
【0027】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、前記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤以外の他の光酸発生剤を含有してもよいが、光酸発生剤100質量%中の前記(i)、(ii)の特性を有する光酸発生剤の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
【0028】
<<主成分(樹脂)>>
主成分とは、組成物においても最も含有率の大きな成分を意味し、通常は、樹脂である。ここで、組成物が溶剤を含有する場合は、溶剤を除く成分のうち最も含有率の大きな成分を意味する。溶剤は、塗工性等を改善するために添加される成分であり、最終的には乾燥させることにより除去されるためである。
【0029】
主成分としては、特に限定されないが、樹脂が好ましく、エポキシ基を有する樹脂がより好ましい。樹脂は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。エポキシ基としては、脂肪族エポキシ基が好ましく、グリシジル基がより好ましい。
【0030】
主成分(樹脂)としては、例えば、エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂、エポキシ基を含有するポリ(メタ)アクリル樹脂、オキセタン樹脂、シリコーン含有樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂、エポキシ基を含有するポリ(メタ)アクリル樹脂が好ましく、エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂がより好ましく、エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂の併用が更に好ましい。エポキシ基を含有するフェノキシ樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂により、架橋密度が向上し、より高いガラス温度を有する硬化物が得られ、信頼性が向上する傾向がある。
【0031】
樹脂のエポキシ官能基当量は特に限定されないが、好ましくは100~15,000g/eqである。エポキシ官能基当量が前記範囲内であると、エポキシ基の密度が適度な範囲となり、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、樹脂のエポキシ官能基当量は、JIS K7236(2001)により測定される。
【0032】
樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは250~60,000である。前記範囲内であると、光での反応性が良好で、かつ硬化後のTgが高く耐熱性が良好である。
なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC装置(東ソー株式会社製、HLC-8320GPC)を用いて以下の条件で測定し、ポリスチレン換算により求められる値である。
カラム:TSKgel Super HZMH/HZ4000/HZ3000/HZ2000
カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
溶離液:THF
流量:0.6mL/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
注入量:20μL
【0033】
樹脂は、25℃で固形状であっても、液状であってもよい。
本明細書において、25℃で固形状とは、25℃において、流動性が失われた状態を意味し、流動性を有さない半固形状のものも含み、25℃で液状とは、25℃において、流動性を有する状態を意味する。また、本明細書において、固形状樹脂とは、25℃において固形状の樹脂を意味し、液状樹脂とは、25℃において液状の樹脂を意味する。
【0034】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、固形状樹脂と液状樹脂を併用することが好ましい。これにより、柔軟性により優れ、より好適にフィルム形態を保持でき、タック性の過剰な増大をより好適に抑制でき、より良好なハンドリング性が得られる傾向がある。
主成分(樹脂)100質量%中の固形状樹脂の含有量は、50~90質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましい。これにより、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
主成分(樹脂)100質量%中の液状樹脂(好ましくは液状エポキシ樹脂)の含有量は、10~50質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましい。これにより、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
【0035】
本発明の光硬化性樹脂組成物が、エポキシ官能基当量が400~1500g/eqの固形状エポキシ樹脂を含有する場合は、主成分(樹脂)100質量%中の、エポキシ官能基当量が400~1500g/eqの固形状エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは20質量%以下である。これにより、フィルムの柔軟性により優れる傾向がある。更に、この場合、液状樹脂と併用することが好ましい。これにより、タック性により優れる傾向がある。この場合の主成分(樹脂)100質量%中の、液状樹脂(好ましくは液状エポキシ樹脂)の含有量は、好ましくは25~50質量%が好ましい。これにより、より好適にフィルム形態を保持でき、タック性の過剰な増大をより好適に抑制でき、より良好なハンドリング性が得られる傾向がある。
【0036】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンから重合されたポリヒドロキシポリエーテルが挙げられる。ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられるが、透明性及び耐熱性の観点からは、ビスフェノールAが好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ等の含複素環エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等の(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして重合したポリマーが挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ポリ(メタ)アクリル樹脂は、上述の(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーを共重合することもできる。他のモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル等が挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。これらの他のモノマーは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0041】
ポリ(メタ)アクリル樹脂の重合方法は、特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0042】
樹脂がポリ(メタ)アクリル樹脂等のラジカル重合で重合する樹脂である場合、エポキシ基の導入方法は、特に限定されないが、エポキシ基を有するモノマーと、上述した各種モノマーとを共重合する方法等が挙げられる。エポキシ基としては、脂肪族エポキシ基が好ましく、グリシジル基がより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート基が更に好ましい。
【0043】
エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、脂肪族エポキシ基を有するモノマー、脂環式エポキシ基を有するモノマー、芳香族エポキシ基を有するモノマーが挙げられる。なかでも、脂肪族エポキシ基を有するモノマーが好ましい。
【0044】
脂肪族エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等の脂肪族エポキシ化合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
脂環式エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、プロパン-2,2-ジイル-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパンジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、これらのカプロラクトン変性物、トリメチルカプロラクトン変性物、バレロラクトン変性物等の脂環式エポキシ化合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
芳香族エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、フェノール、クレゾール又はブチルフェノールにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
樹脂がフェノキシ樹脂である場合、エポキシ基の導入方法は、特に限定されないが、エポキシ基に関しては、例えば、水酸基含有樹脂とエピクロロヒドリン等のクロロ基含有エポキシ化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の光硬化性樹脂組成物100質量%(ここで、組成物が溶剤を含有する場合は溶剤以外の成分の合計量を100質量%とする)中の主成分(樹脂)の含有量は、92~99質量%が好ましく、95~99質量%がより好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
【0049】
主成分(樹脂)100質量%中のエポキシ基を含有するフェノキシ樹脂の含有量は、20~60質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
【0050】
主成分(樹脂)100質量%中のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂の含有量は、20~80質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。これにより、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
【0051】
シリコーン骨格を有する樹脂を含有する場合、透明性が低下する傾向にあるため、本発明の光硬化性樹脂組成物では、主成分(樹脂)100質量%中のシリコーン骨格を有する樹脂の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0質量%(含有しない)である。
【0052】
沸点100℃以下の低沸点成分を含有する場合、塗工する際や乾燥する際に揮発するため、物性が安定しないおそれがある。また、塗工時や貼り合せ時の樹脂組成物のはみだしも生じるおそれがある。よって、主成分(樹脂)として、沸点100℃以下の低沸点成分を含有しないことが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物では、主成分(樹脂)100質量%中の沸点100℃以下の低沸点成分の含有量は、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%(含有しない)である。
【0053】
沸点100℃以下の低沸点成分としては、例えば、オキセタニル基を有する化合物が挙げられる。本発明では、オキセタニル基を有する化合物等の沸点100℃以下の低沸点成分を含有しなくても、特定の光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物であるので、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性に優れる。
【0054】
オキセタニル基を有する化合物としては、例えば、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の光硬化性樹脂組成物100質量%(ここで、組成物が溶剤を含有する場合は溶剤以外の成分の合計量を100質量%とする)中の光酸発生剤及び主成分(樹脂)の合計含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0056】
<<シランカップリング剤>>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、ガラス等他の基材に接着させる際の密着力を高めることができる。
【0057】
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。なかでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0058】
シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、主成分(樹脂)100質量部に対して例えば0.5~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましく、0.5~2質量部が更に好ましい。これにより、光学設計や透明性等の低下なく密着力を向上させることができる。
【0059】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、光酸発生剤、主成分(樹脂)に加えて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、光増感剤等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
光増感剤としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。特に光増感効果に優れたアントラセン化合物が好ましい。光増感剤の含有量は、本発明の光硬化性樹脂組成物100質量%(ここで、組成物が溶剤を含有する場合は溶剤以外の成分の合計量を100質量%とする)中0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。
【0061】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩を含む熱酸発生剤を含まないことが好ましい。これにより、透明性により優れると共に、長期保存安定性を高めることができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物100質量%(ここで、組成物が溶剤を含有する場合は溶剤以外の成分の合計量を100質量%とする)中の下記一般式(1)で表される芳香族スルホニウム塩を含む熱酸発生剤の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%(含有しない)である。
【化1】
(上記一般式(1)中、
は水素原子、メトキシカルボニル基、アセチル基、ベンゾイル基のいずれか示し、
は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基のいずれかを示し、
は炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基で置換もしくは無置換のベンジル基又はα-ナフチルメチル基のいずれかを示し、
は炭素数1~4のアルキル基を示す。
XはSbF、PF、AsF、BF、CFSO、(CFSON、B(Cのいずれかを示す。)
【0062】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、レオメーターにより測定される50℃における貯蔵弾性率G’が0.5MPa以下であり、フィルム形態であることが好ましい。これにより、より良好なタック性、柔軟性が得られる傾向がある。
レオメーターにより測定される50℃における貯蔵弾性率G’は、より好ましくは0.4MPa以下、更に好ましくは0.3MPa以下であり、下限は特に限定されない。
光硬化性樹脂組成物中の液状成分比率が多いと、より低い前記貯蔵弾性率G’が得られる傾向がある。
【0063】
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における波長400nmの光透過率(直線透過率)は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、99%以下が好ましい。光透過率が70%未満であると、透明性が不充分であり光学用途に使用できないことがある。光透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。
使用する原材料の紫外領域の光吸収を抑制することにより、波長400nmの光透過率を前記数値範囲内に調整することができる。
【0064】
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における波長589nmの光線に対する屈折率は、光硬化性樹脂組成物の用途によって好ましい範囲が異なる。例えば、本発明の光硬化性樹脂組成物をレンズに使用する場合には、屈折率は1.40以上が好ましく、1.47以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、1.80以下が好ましい。屈折率は、屈折率計を用いて測定することができる。
使用する原材料の屈折率及びその配合比率を調整することにより、波長589nmの光線に対する屈折率を前記数値範囲内に調整することができる。
【0065】
前記光透過率、前記屈折率を前記数値範囲内に調整する具体的な方法としては、例えば、紫外領域に光吸収の少ない材料を使用し、必要に応じて、光吸収のある材料(例えば、光酸発生剤)の配合量を少量に調整すればよい。
【0066】
本発明のフィルム形態の光硬化性樹脂組成物(光硬化性樹脂フィルム(シート))は、上述した光酸発生剤、主成分(樹脂)と、必要に応じて溶剤とを含む光硬化性樹脂組成物を基材上にキャストし、必要に応じて溶剤を乾燥させることにより製造することができる。また、上述した光酸発生剤、主成分(樹脂)を含む光硬化性樹脂組成物をロールでフィルム状に加工したり、Tダイからフィルム状に押し出すこともできる。その後、基材を使用した場合には、基材を剥離しても、剥離しなくてもよい。また、基材上に製造した光硬化性樹脂フィルムに、更に別の基材を重ねることで、基材間に挟まれた状態の光硬化性樹脂フィルムとすることもできる。この場合、光硬化性樹脂フィルムを巻き芯に巻き取ることで、ロール状とすることもできる。また、所定のサイズに裁断したフィルムを重ねて枚葉フィルムとすることもできる。
【0067】
溶剤としては、特に限定されないが、例えば、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、パーフルオロオクタン、パーフルオロトリ-N-ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。なかでも、溶質との相溶性の観点から、メチルエチルケトンが好ましい。
【0068】
光硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、溶剤の含有量は特に限定されないが、光酸発生剤及び主成分(樹脂)の合計含有量100質量部に対して、20~50質量部であることが好ましい。
【0069】
基材は例えばプラスチック基材であり、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチック基材の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。これらの材質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、基材は単層構造でも、多層構造でもよい。更に、基材は光透過性を有することが好ましい。
【0070】
本発明の光硬化性樹脂フィルムの厚み(基材を除いた厚み)は、10~300μmが好ましく、30~100μmがより好ましい。光硬化性樹脂フィルムの厚みが10μm未満であると、ハンドリング性を損なうことがあり、300μmを超えると、光硬化性を損なうことがある。厚膜の場合には、薄層を重ねてラミネートし形成することも可能である。
【0071】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線(例えば波長365nm近辺)照射等の光照射により硬化させることができる。光照射の光源としては、LED、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ等を用いることができるが、本発明の光硬化性樹脂組成物は、特定の光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物であるので、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れるため、UV-LEDを用いることが好ましい。照射量は特に限定されないが、100~10,000mJ/cmが好ましい。また、必要に応じて加熱硬化工程を行ってもよい。加熱条件としては、例えば、80~180℃で5~60分間の条件が挙げられる。
【0072】
また、本発明の光学材料は、本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする。
光学材料は特に限定されないが、例えば、ディスプレイや光半導体の接着剤、レンズ、保護膜等の光学電子部品が挙げられる。
【実施例0073】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「質量部」又は「質量%」を意味する。
【0074】
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
【0075】
樹脂1(グリシジル基を有するフェノキシ樹脂、三菱ケミカル社製の1256B40(固形分40質量%)、重量平均分子量45,000、エポキシ官能基当量7800g/eq)
樹脂2(グリシジル基を有するフェノキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル社製のYP70、重量平均分子量55,000、エポキシ官能基当量12,100g/eq)
樹脂3(グリシジル基(グリシジル(メタ)アクリレート基)を有する(メタ)アクリル樹脂、大成ファインケミカル株式会社製1HM2067、重量平均分子量60,000、エポキシ当量433g/eq)
樹脂4(液状エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製のJER828、重量平均分子量378、エポキシ官能基当量189g/eq)
樹脂5(液状エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製のJER827、重量平均分子量370、エポキシ官能基当量185g/eq)
樹脂6(液状エポキシ樹脂、ダイセル社製のCel2021P、重量平均分子量260、エポキシ官能基当量135g/eq)
樹脂7(固形状エポキシ樹脂、ダイセル社製のEHPE3150(脂環式エポキシ樹脂)、重量平均分子量2400、エポキシ官能基当量180g/eq)
樹脂8(固形状エポキシ樹脂、大阪ガスケミカル社製のEG-200、エポキシ官能基当量290g/eq)
樹脂9(固形状エポキシ樹脂、国都化学社製のEpokukdo YD-012W(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、重量平均分子量1200、エポキシ官能基当量650g/eq)
樹脂10(固形状エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製のYX8040、重量平均分子量1200、エポキシ官能基当量1100g/eq)
樹脂11(オキセタン樹脂、東亜合成株式会社製OXT221(オキセタニル基含有化合物、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン)、分子量214)
樹脂12(シリコーン含有樹脂、信越シリコーン社製のKR-470(シリコーン骨格を有する樹脂)、エポキシ官能基当量200g/eq)
光酸発生剤1(トリアリールスルホニウム塩、サンアプロ株式会社製CPI-310FG、2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度:1.46、分子量:1300、アニオン成分:Ga(C 、アニオン成分のGaussianに基づく分子体積:514Å
光酸発生剤2(トリアリールスルホニウム塩、サンアプロ株式会社製CPI-310A、2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度:1.45、分子量:757、アニオン成分:SbF 、アニオン成分のGaussianに基づく分子体積:85Å
光酸発生剤3(トリアリールスルホニウム塩、サンアプロ株式会社製CPI-200K、2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度:0.11、分子量:817、アニオン成分:PF(CFCF 、アニオン成分のGaussianに基づく分子体積:279Å
光酸発生剤4(トリアリールスルホニウム塩、ADEKA社製SP-170、2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度:0.07、分子量:633、アニオン成分:SbF 、アニオン成分のGaussianに基づく分子体積:85Å
光酸発生剤5(トリアリールスルホニウム塩、ADEKA社製SP-150、2.5mmol/Lの濃度で測定した25℃における波長365nmの吸光度:0.08、分子量:517、アニオン成分:PF 、アニオン成分のGaussianに基づく分子体積:75Å
シランカップリング剤:信越シリコーン社製のKBM403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0076】
<光酸発生剤の吸光度>
光酸発生剤の濃度が2.5mmol/Lとなるようにアセトニトリルで希釈した溶液を準備した。準備した溶液について、Jasco社製分光光度計にて、液状用10mm角型石英ガラス測定セルを用いて、25℃で、500nm~190nmの吸光度を評価し、365nmの吸光度の値を確認した。
【0077】
実施例及び比較例
表1に示す配合(質量比)にて、自転公転ミキサーを用いて、2200rpmで5分間攪拌し、更に、自転公転ミキサーで1.5分間脱泡処理することにより、光硬化性樹脂組成物を得た。この際に、塗工しやすいように適宜メチルエチルケトン(MEK)を添加し、組成物中の固形分が40~60質量%となるように調整した。
基材としてPETフィルムを用い、基材上に光硬化性樹脂組成物をキャストし、乾燥させることにより、厚みが100μmの光硬化性樹脂フィルムを得た。
得られた光硬化性樹脂フィルムを用いて、下記の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0078】
<光硬化性>
実施例及び比較例で作製した光硬化性樹脂フィルムについて、AntonPaar社製UVレオメーターを使用し、以下の条件下で光硬化性を評価し、G’<G’’からG’>G’’となる点を光硬化十分であるとし、G’=G’’(クロスポイント)を光硬化時間とした。
また、アクリルポリマーを使用した場合は、初期から弾性項が優位でG’>G’’となるため、その場合は、初期のG’上昇の傾きと飽和した最終G’の接戦の交点を解析しクロスポイントと定義した。
なお、測定安定化のため、測定開始後50秒間は光照射を行わずに測定した。
測定温度:40℃
サンプルサイズと厚み:5mmφ,100μm
照射光:365nm単一波長、25mW/cm
また、硬化時間について、以下の基準で評価した。
◎:200秒以下
〇:201~300秒
△:301~350秒
×:350秒より長い
【0079】
<光透過率>
実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂フィルムに、365nm単一波長で3Jの照射積算光量となるように光を照射して光硬化させた後に、ポストキュア(150℃×30分間)した。得られた硬化物の25℃における光透過率(直線透過率、波長400nm)を、分光光度計(Jasco社製)により測定した。
【0080】
<粘度:貯蔵弾性率G’>
実施例及び比較例で作製した光硬化性樹脂フィルムの50℃における貯蔵弾性率G’を、レオメーター(TA社製HAAKE)により、以下の測定条件で測定した。50℃における貯蔵弾性率G’が低いほどフィルムの柔軟性が良好であることを意味する。
サンプルサイズ:直径8mmΦ、厚み100μm
測定モード:ずりオシレーション
周波数:1Hz
【0081】
<タック性(貼り合せ性)>
実施例及び比較例で作製した光硬化性樹脂フィルムを85℃のラミネーターで剥離ライナーと貼り合せを行った。このフィルムを85℃のラミネーターで0.5mm厚のガラスへ貼り合せを行い、ラミネート後のフィルムから表面の剥離ライナーを引き剥がした際にガラスへの密着性が十分かを確認し、以下の基準で評価した。
液体の場合には、ガラス上に組成物を滴下し光照射後に剥離しないかを確認した。
〇:剥離なく、はがれない
△:一部剥離が見られる、容易にはがれる
【0082】
<屈折率>
実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂フィルムに、365nm単一波長で3Jの照射積算光量となるように光を照射して光硬化させた後に、ポストキュア(150℃×30分間)した。得られた硬化物について、屈折率計(株式会社アタゴ製)により、25℃環境下でのナトリウムD線(波長589nmの光線)に対する屈折率を測定した。
【0083】
<貼り合せ時の樹脂はみだし>
実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂フィルムを25mm角に切出し、同じサイズ(25mm×25mm)の二枚のガラスで挟み80℃の真空プレスにて熱圧着した後、光透過率の評価と同じ手順で硬化させた。硬化後に樹脂がガラス端部からはみ出しているかを確認し、以下の基準で評価した。
液状サンプルの場合は、片面のガラス上に樹脂組成物を滴下した後でもう一方のガラスをかぶせた後にフィルムの場合と同様に硬化させた。
〇:端部からのはみだしが0~1mm以内である
×:端部からのはみだしが1mm超、あるいは樹脂の未充填あり
【0084】
【表1】

【0085】
表1より、特定の光酸発生剤を含有する実施例の光硬化性樹脂組成物は、光照射の光源としてUV-LEDを用いた場合であっても光硬化性及び透明性に優れることが分かった。なお、比較例2では、光酸発生剤の含有量を増加させることにより、光硬化性は改善したものの、透明性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は光硬化性樹脂組成物に関し、ディスプレイや光半導体の接着剤、レンズ、保護膜等といった光学電子部品用途に利用することができる。