(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176338
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20241212BHJP
H02K 3/26 20060101ALI20241212BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20241212BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20241212BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B06B1/04 S
H02K3/26 Z
H05K1/16 B
G06F3/041 480
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094803
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】長岡 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】市丸 修平
(72)【発明者】
【氏名】井上 真弥
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 誉大
【テーマコード(参考)】
4E351
5D107
5E555
5H603
【Fターム(参考)】
4E351AA03
4E351AA04
4E351BB09
4E351BB11
4E351BB15
4E351BB22
4E351BB27
4E351BB33
4E351BB49
4E351CC06
4E351DD04
4E351GG20
5D107AA13
5D107BB08
5D107CC08
5E555AA08
5E555DA24
5E555FA00
5H603AA09
5H603BB01
5H603CA01
5H603CA05
5H603CD25
(57)【要約】
【課題】薄型化することが可能なアクチュエータおよびアクチュエータの製造方法を提供する。
【解決手段】アクチュエータ100は、金属支持層10、第1の導体パターン30、中間絶縁層40および第2の導体パターン50を含む。第1の導体パターン30は、コイル状を有する。第1の導体パターン30は、金属支持層10上に形成される。第2の導体パターン50は、コイル状を有する。第2の導体パターン50は、中間絶縁層40を介して第1の導体パターン30に対向して形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層と、
コイル状を有し、前記金属支持層上に形成される第1の導体パターンと、
絶縁層と、
コイル状を有し、前記絶縁層を介して前記第1の導体パターンに対向して形成される第2の導体パターンとを備える、アクチュエータ。
【請求項2】
前記金属支持層は、電磁鋼、ケイ素鋼、鉄およびパーマロイのいずれかを含む、請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記絶縁層の弾性率は3000MPa以下である、請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記絶縁層の弾性率は10MPa以上である、請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記絶縁層は多孔質体である、請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記多孔質体の平均孔径は50μm以下である、請求項5記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記多孔質体の空孔率は60%以上である、請求項5記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する接続導体部をさらに備える、請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記接続導体部は、前記絶縁層を貫通するように形成される、請求項8記載のアクチュエータ。
【請求項10】
コイル状を有する第1の導体パターンを金属支持層上に形成することと、
絶縁層を形成することと、
コイル状を有する第2の導体パターンを、前記絶縁層を介して前記第1の導体パターンに対向して形成することとを含む、アクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する接続導体部を形成することをさらに含む、請求項10記載のアクチュエータの製造方法。
【請求項12】
前記接続導体部を形成することは、前記絶縁層を貫通するように前記接続導体部を形成することを含む、請求項11記載のアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器等の製品には、使用者の操作に応答して振動するアクチュエータが搭載されることがある。例えば、特許文献1には、多層基板、磁石および可動体を備えるアクチュエータが記載されている。多層基板は、積層体と、積層体に形成されるコイルとを含む。コイルに所定の電流が流されると、コイルから放射される磁界により、磁石および可動体が多層基板における積層体の積層方向とは直交する方向に変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アクチュエータが搭載される製品の薄型化が進んでいる。そのため、アクチュエータをより薄型化することが求められる。しかしながら、特許文献1記載のアクチュエータの構成においては、アクチュエータを薄型化することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、薄型化することが可能なアクチュエータおよびアクチュエータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従うアクチュエータは、金属支持層と、コイル状を有し、前記金属支持層上に形成される第1の導体パターンと、絶縁層と、コイル状を有し、前記絶縁層を介して前記第1の導体パターンに対向して形成される第2の導体パターンとを備える。
【0007】
本発明の他の局面に従うアクチュエータの製造方法は、コイル状を有する第1の導体パターンを金属支持層上に形成することと、絶縁層を形成することと、コイル状を有する第2の導体パターンを、前記絶縁層を介して前記第1の導体パターンに対向して形成することとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクチュエータを薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るアクチュエータの平面図である。
【
図2】
図1のアクチュエータのA-A線断面図である。
【
図3】
図1のアクチュエータのB-B線断面図である。
【
図4】
図1のアクチュエータの模式的斜視図である。
【
図5】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図6】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図7】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図8】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図9】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図10】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図11】アクチュエータの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図12】他の実施の形態に係るアクチュエータの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るアクチュエータおよびアクチュエータの製造方法について、図面を参照しながら説明する。アクチュエータは、例えばハプティクス(触覚技術)素子としてモバイル機器のタッチパッド等に設けられる。タッチパッドは、例えば静電容量方式のタッチパネルであり、使用者等による接触を静電容量の変化として検出するための複数の電極を有する。
【0011】
(1)アクチュエータ
図1は、本発明の一実施の形態に係るアクチュエータの平面図である。
図2は、
図1のアクチュエータ100のA-A線断面図である。
図3は、
図1のアクチュエータ100のB-B線断面図である。
図4は、
図1のアクチュエータ100の模式的斜視図である。
図1に示すように、アクチュエータ100は、駆動回路110に接続される。駆動回路110は、例えば集積回路を含む。駆動回路110は、アクチュエータ100上に実装されてもよい。
【0012】
図1~
図4に示すように、アクチュエータ100は、金属支持層10、ベース絶縁層20、導体パターン30、中間絶縁層40、導体パターン50、カバー絶縁層60および接続導体部70を備える。なお、
図1においては、ベース絶縁層20、中間絶縁層40およびカバー絶縁層60の図示が省略されている。また、
図4においては、金属支持層10、ベース絶縁層20、中間絶縁層40およびカバー絶縁層60の図示が省略されている。
【0013】
金属支持層10は、例えば磁性体材料からなる。磁性体材料は、例えばSUS430、電磁鋼、ケイ素鋼、鉄およびパーマロイのいずれかを含む。磁性体材料は、ケイ素鋼、鉄またはパーマロイ等の強磁性体材料を含むことが好ましい。金属支持層10は、アモルファスを含んでもよい。ベース絶縁層20は、ポリイミド等の樹脂からなり、金属支持層10上に設けられる。導体パターン30は、例えば銅からなり、ベース絶縁層20上に設けられる。導体パターン30は、コイル状に周回された配線を有する。
【0014】
中間絶縁層40は、ポリイミド、PTFE、ポリエチレンまたはエポキシ樹脂等により形成され、導体パターン30を覆うようにベース絶縁層20上に設けられる。中間絶縁層40の弾性率は、例えば10MPa以上でかつ3000MPa(3GPa)以下であり、好ましくは800MPa以上でかつ2000MPa(2GPa)以下である。このような絶縁材料は、多孔質体(例えば多孔質ポリイミド)、PTFE、低密度ポリエチレンまたはエポキシ樹脂等を含む。低密度ポリエチレンは、密度が0.90g/cm3以上でかつ0.93g/cm3以下のポリエチレンである。
【0015】
なお、樹脂前駆体と多孔化剤との相分離構造を有する前駆体フィルムを調製し、超臨界抽出法により多孔化剤を前駆体フィルムから除去することにより、任意の平均孔径および空孔率を有する多孔質体を製造可能である。多孔質体の平均孔径および空孔率を調整することにより、任意の弾性率を有する多孔質体を製造することができる。本例では、平均孔径は、例えば50μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。また、空孔率は、例えば60%以上であり、好ましくは70%以上である。
【0016】
導体パターン50は、導体パターン30と同様の構成を有し、中間絶縁層40上に設けられる。すなわち、導体パターン50は、例えば銅からなり、コイル状に周回された配線を有する。カバー絶縁層60は、ポリイミド等の樹脂からなり、導体パターン50を覆うように中間絶縁層40上に設けられる。
【0017】
図4に示すように、導体パターン30および導体パターン50は、互いの中心(配線からなるコイルの中心)が上下方向に略重なるように配置される。導体パターン30のコイルの巻数と、導体パターン50のコイルの巻数とは、略同じであるが、異なっていてもよい。接続導体部70は、例えば銅からなり、
図3の中間絶縁層40を厚み方向に貫通して導体パターン30の一端部と導体パターン50の一端部とを電気的に接続する。導体パターン30の他端部および導体パターン50の他端部は、駆動回路110に接続される。
【0018】
タッチパッドの使用者は、タッチパッドの表面を接触操作する。この場合、タッチパッドに設けられた図示しない複数の電極間の静電容量が変化する。駆動回路110は、電極間の静電容量の変化を検出した場合、導体パターン30,50に交流電流を流す。本例では、導体パターン30,50に流れる電流の向きは互いに逆であるため、導体パターン30,50の各々により互いに逆向きの磁界が発生する。
【0019】
上記の構成によれば、導体パターン30,50間に反発力が発生することにより、導体パターン30,50間の中間絶縁層40が弾性変形して導体パターン30,50が互いに離れる方向に変位する。導体パターン30,50間の変位量は、導体パターン30,50に流れる電流の絶対値の時間変化に追従するように変化する。これにより、導体パターン30,50の変位がアクチュエータ100の振動として使用者により知覚される。
【0020】
(2)アクチュエータの製造方法
図5~
図11は、アクチュエータ100の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
図5~
図11の工程断面図は、
図3のアクチュエータ100のA-A線断面図に対応する。まず、
図5に示すように、金属支持層10とベース絶縁層20とからなる二層基材を準備する。金属支持層10の厚みは、例えば10μm以上でかつ500μm以下であり、本例では100μmである。ベース絶縁層20の厚みは、例えば2μm以上でかつ30μm以下である。
【0021】
次に、
図6に示すように、ベース絶縁層20上にコイル状の導体パターン30を形成する。導体パターン30は、アディティブ法により形成されてもよく、セミアディティブにより形成されてもよく、サブトラクティブ法等の他の方法により形成されてもよい。導体パターン30の厚みは、例えば5μm以上でかつ30μm以下である。導体パターン30の配線の幅は、例えば2μm以上でかつ300μm以下であり、好ましくは10μm以上でかつ300μm以下である。
【0022】
続いて、
図7に示すように、導体パターン30を覆うようにベース絶縁層20上に中間絶縁層40を形成する。中間絶縁層40は、例えば多孔化剤が除去された上記の前駆体フィルムをベース絶縁層20上に塗布し、前駆体フィルムを硬化させることにより形成される。本例では、中間絶縁層40は、200MPaの弾性率を有する。中間絶縁層40の厚みは、例えば2μm以上でかつ1000μm以下であり、好ましくは5μm以上でかつ500μm以下である。本例では、中間絶縁層40の厚みは50μmである。
【0023】
その後、
図8に示すように、中間絶縁層40における導体パターン30の一端部と重なる部分に、厚み方向に貫通する開口部41を形成する。開口部41は、例えばレーザ加工により形成されてもよいし、エッチング液を用いた化学エッチングにより形成されてもよい。次に、
図9に示すように、中間絶縁層40の開口部41内に接続導体部70を形成する。これにより、導体パターン30の一端部と接続導体部70とが電気的に接続される。接続導体部70は、例えば銅めっきにより形成されてもよい。
【0024】
続いて、
図10に示すように、中間絶縁層40上にコイル状の導体パターン50を形成する。導体パターン50の形成手順は、導体パターン30の形成手順と同様である。導体パターン50の厚みは、例えば5μm以上でかつ30μm以下である。導体パターン50の配線の幅は、例えば2μm以上でかつ300μm以下であり、好ましくは10μm以上でかつ300μm以下である。導体パターン50の一端部は、中間絶縁層40の開口部41と重なる。これにより、導体パターン50の一端部と接続導体部70とが電気的に接続される。
【0025】
最後に、
図11に示すように、導体パターン50を覆うように中間絶縁層40上にカバー絶縁層60を形成する。カバー絶縁層60は、中間絶縁層40上に感光性樹脂前駆体を塗布し、紫外線を用いて感光性樹脂前駆体を露光することにより形成されてもよい。カバー絶縁層60の厚みは、例えば8μm以上でかつ50μm以下である。これにより、アクチュエータ100が完成する。この製造方法によれば、アクチュエータ100を低コストで製造することができる。
【0026】
(3)変形例
本実施の形態において、導体パターン30と導体パターン50とは、流れる電流の向きが互いに逆になるように接続導体部70により接続されるが、実施の形態はこれに限定されない。導体パターン30と導体パターン50とは、流れる電流の向きが互いに同じになるように接続導体部70により接続されてもよい。例えば、導体パターン30の一端部と導体パターン50の他端部とが接続導体部70により接続され、導体パターン30の他端部および導体パターン50の一端部が駆動回路110に接続されてもよい。
【0027】
この接続においては、導体パターン30,50に交流電流が流れた場合、導体パターン30,50の各々により互いに同じ向きの磁界が発生する。そのため、導体パターン30,50間に吸引力が発生することにより、導体パターン30,50間の中間絶縁層40が弾性変形して導体パターン30,50が互いに近づく方向に変位する。導体パターン30,50間の変位量は、導体パターン30,50に流れる電流の絶対値の時間変化に追従するように変化する。これにより、導体パターン30,50の変位がアクチュエータ100の振動として使用者により知覚される。
【0028】
(4)効果
本実施の形態に係るアクチュエータ100においては、導体パターン30,50に電流を流すことにより、導体パターン30,50間の中間絶縁層40が弾性変形して導体パターン30,50が変位する。これにより、アクチュエータ100が振動する。この構成においては、アクチュエータ100に磁石を設ける必要がないので、磁石によりアクチュエータ100の薄型化が制限されることがない。これにより、アクチュエータ100を薄型化することができる。そのため、アクチュエータ100を折り曲げて使用することが可能である。
【0029】
金属支持層10は、例えば電磁鋼、ケイ素鋼、鉄およびパーマロイのいずれかを含む。この場合、導体パターン30と導体パターン50との間の磁性力が増加する。これにより、アクチュエータ100を容易に振動させることができる。
【0030】
中間絶縁層40の弾性率は、例えば3000MPa以下である。この場合、中間絶縁層40が十分に弾性変形する。これにより、アクチュエータ100を容易に振動させることができる。また、中間絶縁層40の弾性率は、例えば10MPa以上である。この場合、中間絶縁層40の耐久性が向上する。また、中間絶縁層40の加工容易性が向上する。そのため、アクチュエータ100を容易に製造することができる。
【0031】
中間絶縁層40は、例えば多孔質体である。この場合、中間絶縁層40を弾性変形させることが容易になる。特に、多孔質体の平均孔径が50μm以下である場合、または多孔質体の空孔率は60%以上である場合には、中間絶縁層40を弾性変形させることがより容易になる。これにより、アクチュエータ100を容易に振動させることができる。
【0032】
また、導体パターン30と導体パターン50とは、中間絶縁層40を貫通する接続導体部70により電気的に接続される。この場合、アクチュエータ100をより小型化しつつ、簡単な接続により導体パターン30,50に電流を流すことができる。
【0033】
(5)他の実施の形態
上記実施の形態において、接続導体部70は中間絶縁層40の開口部41を貫通するように開口部41内に設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。接続導体部70は、導体パターン30と導体パターン50とを接続する限り、接続導体部70は中間絶縁層40の開口部41内に設けられなくてもよい。この場合でも、簡単な接続により導体パターン30,50に電流を流すことができる。
【0034】
また、アクチュエータ100は、接続導体部70を含まなくてもよい。
図12は、他の実施の形態に係るアクチュエータ100の模式的斜視図である。
図12においては、
図4と同様に、金属支持層10、ベース絶縁層20、中間絶縁層40およびカバー絶縁層60の図示が省略されている。
【0035】
図12に示すように、本実施の形態においては、導体パターン30と導体パターン50とは、接続導体部70により接続されることなく、電気的に絶縁される。また、導体パターン30の両端部は、駆動回路110に接続される。同様に、導体パターン50の両端部は、駆動回路110に接続される。導体パターン30,50の各々において、コイルの配線が他の配線と交差する部分は、適宜ジャンパ配線等に置換されてもよい。
【0036】
駆動回路110は、タッチパッドの電極間の静電容量の変化を検出した場合、導体パターン30,50の各々に個別に交流電流を流す。これにより、使用者がタッチパッドの表面を接触操作することに応答してアクチュエータ100を振動させることができる。導体パターン30,50に流される電流の向きは互いに逆であってもよいし、同じであってもよい。また、導体パターン30,50に流される電流の周波数は同じであるが、異なってもよい。
【0037】
(6)実施例
以下の実施例1~6においては、
図1のアクチュエータ100について、振動時の変位量をシミュレーションにより評価した。実施例1~6における中間絶縁層40の絶縁材料は、それぞれ多孔質ポリイミド、多孔質ポリイミド、PTFE、低密度ポリエチレン、エポキシ樹脂および無孔質のポリイミドとした。また、実施例1~6における中間絶縁層40の弾性率は、それぞれ950MPa、1700MPa、500MPa、100MPa、2400MPaおよび3500MPaとした。
【0038】
実施例1~6における導体パターン30,50の各々について、コイルの巻数を5300回とし、配線の幅を2.7μmとし、配線間の間隔を1.0μmとした。また、導体パターン30,50に流す交流電流の大きさを1Aとした。表1は、実施例1~6のアクチュエータ100についての評価結果を示す。表1には、変位量が1μm以上となった例には「◎」の評価が記され、変位量が0.5μm以上でかつ1μm未満となった例には「〇」の評価が記され、変位量が0.5μm未満となった例には「△」の評価が記されている。
【0039】
【0040】
表1に示すように、実施例1~4においては、変位量が1μm以上となり、アクチュエータ100が十分に振動することが確認された。実施例5においては、変位量が0.5μm以上でかつ1μm未満となり、アクチュエータ100が適切に振動することが確認された。実施例6においては、変位量が0.5μm未満となり、アクチュエータ100がわずかに振動することが確認された。
【0041】
特に、実施例1~5と実施例6との比較結果から、中間絶縁層40の弾性率を3000MPa以下にすることにより、アクチュエータ100を適切に振動させることができることが確認された。また、実施例1~4と実施例5との比較結果から、中間絶縁層40の弾性率を2000MPa以下にすることにより、アクチュエータ100を十分に振動させることができることが確認された。
【0042】
(7)対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0043】
上記実施の形態においては、金属支持層10が金属支持層の例であり、導体パターン30が第1の導体パターンの例であり、導体パターン50が第2の導体パターンの例である。中間絶縁層40が絶縁層の例であり、アクチュエータ100がアクチュエータの例であり、接続導体部70が接続導体部の例である。
【0044】
(8)実施の形態の総括
(第1項)第1項に係るアクチュエータは、
金属支持層と、
コイル状を有し、前記金属支持層上に形成される第1の導体パターンと、
絶縁層と、
コイル状を有し、前記絶縁層を介して前記第1の導体パターンに対向して形成される第2の導体パターンとを備える。
【0045】
このアクチュエータにおいては、第1の導体パターンおよび第2の導体パターンに電流を流すことにより、第1の導体パターンと第2の導体パターンとの間の絶縁層が弾性変形して第1の導体パターンおよび第2の導体パターンが変位する。これにより、アクチュエータが振動する。この構成においては、アクチュエータに磁石を設ける必要がないので、磁石によりアクチュエータの薄型化が制限されることがない。これにより、アクチュエータを薄型化することができる。
【0046】
(第2項)第1項に記載のアクチュエータにおいて、
前記金属支持層は、電磁鋼、ケイ素鋼、鉄およびパーマロイのいずれかを含んでもよい。
【0047】
この場合、第1の導体パターンと第2の導体パターンとの間の磁性力が増加する。これにより、アクチュエータを容易に振動させることができる。
【0048】
(第3項)第1項または第2項に記載のアクチュエータにおいて、
前記絶縁層の弾性率は3000MPa以下であってもよい。
【0049】
この場合、絶縁層が十分に弾性変形する。これにより、アクチュエータを容易に振動させることができる。
【0050】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記絶縁層の弾性率は10MPa以上であってもよい。
【0051】
この場合、絶縁層の耐久性が向上する。また、絶縁層の加工容易性が向上する。そのため、アクチュエータを容易に製造することができる。
【0052】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記絶縁層は多孔質体であってもよい。
【0053】
この場合、絶縁層を弾性変形させることが容易になる。これにより、アクチュエータを容易に振動させることができる。
【0054】
(第6項)第5項に記載のアクチュエータにおいて、
前記多孔質体の平均孔径は50μm以下であってもよい。
【0055】
この場合、絶縁層を弾性変形させることがより容易になる。これにより、アクチュエータをより容易に振動させることができる。
【0056】
(第7項)第5項または第6項に記載のアクチュエータにおいて、
前記多孔質体の空孔率は60%以上であってもよい。
【0057】
この場合、絶縁層を弾性変形させることがより容易になる。これにより、アクチュエータをより容易に振動させることができる。
【0058】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に記載のアクチュエータは、
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する接続導体部をさらに備えてもよい。
【0059】
この場合、簡単な接続により第1の導体パターンおよび第2の導体パターンに電流を流すことができる。
【0060】
(第9項)第8項に記載のアクチュエータにおいて、
前記接続導体部は、前記絶縁層を貫通するように形成されてもよい。
【0061】
この場合、アクチュエータをより小型化することができる。
【0062】
(第10項)第10項に係るアクチュエータの製造方法は、
コイル状を有する第1の導体パターンを金属支持層上に形成することと、
絶縁層を形成することと、
コイル状を有する第2の導体パターンを、前記絶縁層を介して前記第1の導体パターンに対向して形成することとを含む。
【0063】
このアクチュエータの製造方法によれば、アクチュエータに磁石を設ける必要がないので、磁石によりアクチュエータの薄型化が制限されることがない。これにより、アクチュエータを薄型化することができる。
【0064】
(第11項)第10項に記載のアクチュエータの製造方法は、
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する接続導体部を形成することをさらに含んでもよい。
【0065】
この場合、簡単な接続により第1の導体パターンおよび第2の導体パターンに電流を流すことができる。
【0066】
(第12項)第11項に記載のアクチュエータの製造方法において、
前記接続導体部を形成することは、前記絶縁層を貫通するように前記接続導体部を形成することを含んでもよい。
【0067】
この場合、アクチュエータをより小型化することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…金属支持層,20…ベース絶縁層,30,50…導体パターン,40…中間絶縁層,41…開口部,60…カバー絶縁層,70…接続導体部,100…アクチュエータ,110…駆動回路