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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176341
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】浴室用椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20241212BHJP
   A47C 5/10 20060101ALI20241212BHJP
   A47K 3/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A47C7/62 A
A47C5/10 J
A47C5/10 K
A47K3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094811
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】古川 優
(72)【発明者】
【氏名】川村 満夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】高▲浜▼ 智久
【テーマコード(参考)】
2D132
3B084
【Fターム(参考)】
2D132DA01
3B084JA04
3B084JB07
(57)【要約】
【課題】本発明は、折り畳み可能な浴室用椅子において、構造が簡単であり、浴室用椅子自体の構成部品に直接且つ着脱自在に取り付けることができ、それでいて浴室用椅子に回転不能に固定することができるシャワーヘッド固定用フックを備えた浴室用椅子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、脚部と背もたれ支持部とを有する脚フレームと、脚フレームに回動自在に取り付けられる座部と、座部の上方で水平方向に延びており、背もたれ支持部に配設されるパイプ形状の支持フレームと、支持フレームに取り付けられる背もたれ部とを備えている折り畳み可能な浴室用椅子において、回転防止手段を有し、支持フレームに固定される固定部と、そして前記回転防止手段と係合し、支持フレームに直接且つ着脱自在に取り付けられるシャワーヘッド固定用フックとを備えている浴室用椅子が提供される。
【選択図】 図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と背もたれ支持部とを有する脚フレームと、
脚フレームに回動自在に取り付けられる座部と、
座部の上方で水平方向に延びており、背もたれ支持部に配設されるパイプ形状の支持フレームと、
支持フレームに取り付けられる背もたれ部とを備えている折り畳み可能な浴室用椅子において、
回転防止手段を有し、支持フレームに固定される固定部と、そして
前記回転防止手段と係合し、支持フレームに直接且つ着脱自在に取り付けられるシャワーヘッド固定用フックと
を備えていることを特徴とする浴室用椅子。
【請求項2】
回転防止手段は、横方向に延びた舌形状の回り止めを有し、
シャワーヘッド固定用フックは、内周面が支持フレームの外周面に沿うように形成され、互いに向き合うように配置された一対の樋型部材からなる掴み部と、前記回り止めと係合するように前記内周面の上部に形成されたスリット状の挟持部と、掴み部の側部に設けられ、シャワーヘッドの持ち手を縦方向に保持するホルダー部とを有し、そして
シャワーヘッド固定用フックは、支持フレームの上方から下方へ押し込むことにより、同時に挟持部が回り止めに外挿されて支持フレームに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の浴室用椅子。
【請求項3】
掴み部の内周面と挟持部の内周面は、連続して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の浴室用椅子。
【請求項4】
回り止めは、少なくとも回り止めの表面または裏面のいずれか一方の面に凹部を有し、挟持部は、挟持部の内周面に前記凹部と係合する凸部を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の浴室用椅子。
【請求項5】
回り止めの凹部は、貫通孔であることを特徴とする請求項4に記載の浴室用椅子。
【請求項6】
掴み部は樹脂材料からできており、掴み部は、弾性変形することにより支持フレームに取り付けられることを特徴とする請求項2または3に記載の浴室用椅子。
【請求項7】
ホルダー部はC型に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の浴室用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室において使用される折り畳み可能な浴室用椅子に関し、特に背もたれ部を支持するために水平方向に延びた支持フレームに固定される回転防止手段と、前記回転防止手段と係合し、支持フレームに直接且つ着脱自在に取り付けられるシャワーヘッド固定用フックを備えている浴室用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者、被介護者、身体障害者等(以下、「被介護者等」という。)は、入浴に際し、立位姿勢で身体を洗ったり、シャワーを浴びたりするのが困難であることが多いので、被介護者等が腰を掛ける座部と、背中を持たせ掛ける背もたれ部と、そしてこれらの部品を支持する脚部フレームや支持フレームを備えた浴室用椅子が利用されている。
【0003】
また、浴室用椅子は、使用していないとき、狭い浴室の中で保管場所を必要として邪魔になることから、例えば特開2019-072178号公報(特許文献1)に記載されているように、折り畳んでコンパクトにすることが可能な折り畳み式の浴室用椅子も開発されている。
【0004】
ところで、特許文献1には、シャワーヘッド等のオプション部品を浴室用椅子へ着脱自在に取り付けることができるオプション部品取付部材が記載されている。特許文献1に記載のオプション部品取付部材は、より具体的には浴室用椅子の背もたれ部を支持する横方向に延びた支持フレームと、該支持フレームの両端から下方へ延びた左右一対の脚フレームにより形成される両端のコーナー部を利用して、該コーナー部に着脱自在に被せることができる左右一対のカバーを設け、該カバー同士を連結するパイプ形状の固定部材(フレーム)にシャワーヘッド掛け具を固定することにより、シャワーヘッドを着脱自在に保持できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-072178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載のシャワーヘッド掛け具自体は、浴室用椅子に着脱自在に取り付けられるようにするためには、水平に配置されたパイプ形状のフレームを有するオプション部品取付部材の取り付けを必要とし、該オプション部品取付部材を介して間接的に浴室用椅子に取り付けなければならないものである。そのため、特許文献1に記載のシャワーヘッド掛け具を備えたオプション部品取付部材は大掛かりな装置となり、コスト高となるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載のシャワーヘッド掛け具は、その根元に設けた筒状体の中にパイプ形状のフレームを挿通させて該フレームに固定する構造であるため、例えば浴室用椅子の背もたれ部を支持するために設けられた下向きコの字状の椅子フレームの水平部分に直接に後付けすることもできなければ、着脱自在に取り付けることもできないという問題があった。さらに、仮に特許文献1に記載のシャワーヘッド掛け具を椅子フレームの水平部分に着脱自在に取り付けることができたとしても、椅子フレームはパイプ形状であり、且つ掛け具を着脱不能に椅子フレームに固着させることができないので、シャワーヘッド掛け具が椅子フレームに対して回転してしまい、シャワーヘッドを一定方向に保持することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、折り畳み可能な浴室用椅子において、構造が簡単であり、浴室用椅子自体の構成部品に直接且つ着脱自在に取り付けることができ、それでいて浴室用椅子に回転不能に固定することができるシャワーヘッド固定用フックを備えた浴室用椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、折り畳み可能な浴室用椅子において、シャワーヘッド固定用フックを取り付けるのに適した浴室用椅子の構成部品や取付態様などについて鋭意検討を重ねた結果、背もたれ部を取り付けるために水平方向に延びた支持フレームに回転防止手段を固定し、前記回転防止手段と係合するシャワーヘッド固定用フックを、別個前記支持フレームに直接取り付けるようにすることで上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、脚部と背もたれ支持部とを有する脚フレームと、脚フレームに回動自在に取り付けられる座部と、座部の上方で水平方向に延びており、背もたれ支持部に配設されるパイプ形状の支持フレームと、支持フレームに取り付けられる背もたれ部とを備えている折り畳み可能な浴室用椅子において、回転防止手段を有し、支持フレームに固定される固定部と、そして前記回転防止手段と係合し、支持フレームに直接且つ着脱自在に取り付けられるシャワーヘッド固定用フックとを備えている浴室用椅子が提供される。
【0011】
より具体的には、本発明の浴室用椅子に用いられる回転防止手段は、横方向に延びた舌形状の回り止めを有し、シャワーヘッド固定用フックは、内周面が支持フレームの外周面に沿うように形成され、互いに向き合うように配置された一対の樋型部材からなる掴み部と、前記回り止めと係合するように前記内周面の上部に形成されたスリット状の挟持部と、掴み部の側部に設けられ、シャワーヘッドの持ち手を縦方向に保持するホルダー部とを有し、そしてシャワーヘッド固定用フックは、支持フレームの上方から下方へ押し込むことにより、同時に挟持部が回り止めに外挿されて支持フレームに取り付けられるものであることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、シャワーヘッド固定用フック自体は、背もたれ部を支持するために水平方向に延びた支持フレームを左右両側から掴むための掴み部を備えているので、該支持フレームに直接且つ着脱自在に取り付けることができる。また、シャワーヘッド固定用フックは、支持フレームに取り付けるとき、別個支持フレームに固定される固定部の回転防止手段(回り止め)と係合する挟持部を備えているので、支持フレームに回転不能に固定することができる。さらに、シャワーヘッド固定用フック自体は、上述したように掴み部と、掴み部の内周面に形成されたスリット状の挟持部と、シャワーヘッドの持ち手を保持するホルダー部とを備えた簡単な構造であるのでコンパクトであり、安価に製造することができる。
【0013】
本発明の浴室用椅子では、シャワーヘッド固定用フックの挟持部と固定部の回転防止手段(回り止め)とがスムーズに係合および係合解除ができるように、掴み部の内周面と挟持部の内周面は、連続して形成されていることが好ましい。
【0014】
また、回転防止手段(回り止め)と挟持部との係合をより確実なものとしてシャワーヘッド固定用フックの不測の脱落等を防止するため、回転防止手段(回り止め)は、少なくとも回転防止手段(回り止め)の表面または裏面のいずれか一方の面に凹部を有し、挟持部は、挟持部の内周面に前記凹部と係合する凸部を有していることが好ましい。その場合、回転防止手段(回り止め)の凹部は円形の貫通孔であってもよい。
【0015】
本発明の浴室用椅子では、掴み部は樹脂材料からできていることが好ましく、掴み部が弾性変形することにより支持フレームへスムーズ且つ確実に取り付けることができるようになる。また、本発明の浴室用椅子では、ホルダー部はC型に形成されていることが好ましく、ホルダー部の弾性変形と相俟って様々な外径を有するシャワーヘッドに対応することができ、確実にシャワーヘッドを保持することができようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浴室用椅子に用いられるシャワーヘッド固定用フックは、背もたれ部を支持するために水平方向に延びた支持フレームを左右両側から掴むための掴み部を備えているので、該支持フレームに直接且つ着脱自在に取り付けることができる。そのため、本発明の浴室用椅子に用いられるシャワーヘッド固定用フックは、支持フレームに対して着脱可能であるので、浴室用椅子を折り畳んで収納する際、不要であればシャワーヘッド固定用フックを浴室用椅子から簡単に取り外すことができ、特に折り畳んだ後の椅子のコンパクト性、省スペース性を損なうことがない。
【0017】
また、本発明の浴室用椅子に用いられるシャワーヘッド固定用フックは、支持フレームに取り付けるとき、別個支持フレームに固定される固定部の回転防止手段(回り止め)と係合する挟持部を備えているので、支持フレームに回転不能に固定することができる。そのため、本発明の浴室用椅子に用いられるシャワーヘッド固定用フックは、シャワー使用時の吹き出し水流の反力によってシャワーヘッドが動いてしまうことがなく、介助者等が被介護者等を浴室用椅子に座らせたまま、片手で被介護者等の身体を洗うことができるようになる。
【0018】
さらに、本発明の浴室用椅子に用いられるシャワーヘッド固定用フック自体は、上述したように掴み部と、掴み部の内周面に形成されたスリット状の挟持部と、シャワーヘッドの持ち手を保持するホルダー部とを備えた簡単な構造であるのでコンパクトであり、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る浴室用椅子を前から見た斜視図である。
図2a図1に示される浴室用椅子の側面図であって、浴室用椅子を開脚して座部を展開した状態を示している。
図2b図1に示される浴室用椅子の側面図であって、浴室用椅子を閉脚して座部を折り畳んだ状態を示している。
図3図1に示される浴室用椅子を後ろから見たときの背もたれ部付近を拡大した斜視図である。
図4a図1に示される浴室用椅子の背面図であって、背もたれ部が一番高い状態を示している。
図4b図1に示される浴室用椅子の背面図であって、背もたれ部が一番低い状態を示している。
図5a図4aに示される浴室用椅子を横から見た断面図であって、図4aのA-A断面図である。
図5b図4bに示される浴室用椅子を横から見た断面図であって、図4bのB-B断面図である。
図6】本実施形態の浴室用椅子を前から見たときの背もたれ部を部分的に分解した斜視図である。
図7図5aに示される浴室用椅子の断面図の背もたれ部付近を部分的に拡大した断面図である。
図8】本実施形態の浴室用椅子を後ろから見たときの背もたれ部を部分的に分解した斜視図である。
図9】本実施形態の浴室用椅子に用いられる固定部、ブロック部及び一対のスライダーを拡大した斜視図である。
図10】本実施形態の浴室用椅子に用いられる一対のラック部、ブロック部及び付勢手段を拡大した斜視図である。
図11】本実施形態の浴室用椅子に用いられる固定部の正面図である。
図12図11に示される固定部を反対側から見た斜視図である。
図13】本実施形態の浴室用椅子に用いられるシャワーヘッド固定用フックを拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る浴室用椅子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0021】
<浴室用椅子の全体構成>
図1には、本発明の一実施形態に係る浴室用椅子1を前から見た斜視図が示されている。図2a,bには、図1に示される浴室用椅子1の側面図であって、(a)には浴室用椅子1を開脚して座部3を展開した状態が示されており、(b)には浴室用椅子1を閉脚して座部3を折り畳んだ状態を示されている。また、図3には、本実施形態の浴室用椅子1を後ろから見たときの背もたれ部6付近を拡大した斜視図が示されている。
【0022】
なお、本願明細書において、特に断りがなければ、浴室用椅子1の背もたれ部6の表面側を「前」側、背もたれ部6の背面側を「後」側といい、使用者が浴室用椅子1へ腰掛けた状態において左手側を「左」側、右手側を「右」側という。また、X,Y,Z座標系において、Z軸と略平行な向きを「鉛直方向」、「垂直方向」又は「縦方向」といい、X軸-Y軸平面と略平行な向きを「水平方向」又は「横方向」という。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の浴室用椅子1は、左右一対の脚フレーム2と、脚フレーム2に回動自在に取り付けられる座部3および肘掛け5と、左右一対の脚フレーム2の間において水平方向に延びた支持フレーム20に取り付けられる背もたれ部6とを備えている。
【0024】
脚フレーム2は金属製の中空パイプから形成されており、左右一対の前脚フレーム21と左右一対の後脚フレーム22とを含んでいる。ただし、脚フレーム2の材料や形態は金属製の中空パイプに限られるものではなく、樹脂材料など一般的な材料からなるパイプ状部材、棒状部材等からできていてもよい。
【0025】
前脚フレーム21は、脚部210と、脚部210から上方に延びた背もたれ支持部211とを含んでおり、脚部210の一部は、内挿されたパイプをスライドさせることにより伸縮可能であり、内挿されたパイプの先端には、滑り止め及び床への傷付け防止を目的とした樹脂製のキャップ212が装着されている。
【0026】
支持フレーム20は、背もたれ支持部211の上端で左右一対の前脚フレーム21を連結するように配設されており、本実施形態では、支持フレーム20は中空パイプを曲げることにより前脚フレーム21と連続して一体的に形成されているが、別部品として左右一対の前脚フレーム21の間に取り付けられていてもよい。
【0027】
左右一対の後脚フレーム22は、それぞれに左右一対の前脚フレーム21の脚部210に回動自在に取り付けられており、後脚フレーム22の一部は、前脚フレーム21と同様に内挿されたパイプをスライドさせることにより伸縮可能であり、内挿されたパイプの先端には、滑り止め及び床への傷付け防止を目的とした樹脂製のキャップ212が装着されている。
【0028】
図1に示されるように、左右一対の肘掛け5は、それぞれに左右一対の前脚フレーム21の背もたれ支持部211に回動自在に取り付けられており、主として樹脂材料から形成されている。また、肘掛け5は、椅子1を使用するとき、図1の右側肘掛け5のように水平に倒して使用することもできれば、椅子1を折り畳むとき、図1の左側肘掛け5のように垂直に跳ね上げて収納等することもできる。
【0029】
図3に示されるように、背もたれ部6は、前脚フレーム21の上端に設けられた支持フレーム20にボルト81&ナットを用いて昇降可能に取り付けられており、後述する高さ調節手段7を備えているので、支持フレーム20に対してその高さを調節することができる。また、図1に示されるように、背もたれ部6は主として樹脂材料から形成されており、その前面には発泡樹脂からなる背もたれクッション600が着脱可能に装着されている。
【0030】
図1及び図2a,bに示されるように、座部3は、左右一対の後脚フレーム22の上端部に回動自在に取り付けられており、リンク31を介して、左右一対の前脚フレーム21を連結するように取り付けられた補強フレーム23と連結されている。また、座部3は主として樹脂材料から形成されており、その前面には発泡樹脂からなる座面クッション30が取り付けられている。
【0031】
座部3は、その後端部に設けられたレバー40を動かすことにより、前脚フレーム21に設けられた係止部と係合し又は係合を解除するロック&ロック解除手段4を備えている。そのため、本実施形態において浴室用椅子1を折り畳むときは、片手でレバー40を上方へ持ち上げるように握ることにより、ロック&ロック解除手段4による座部3と前脚フレーム21との係合が解除され、座部3が水平な展開状態から垂直な折り畳み状態へ回動するので、浴室用椅子1を簡単に閉脚状態とすることができる(図2b)。一方、浴室用椅子1を開脚するときは、前脚フレーム21の脚部210のみを床面から浮かせた状態にて、座部3が水平となるようにその後端又は背もたれ部6の上端を床面に向けて押し付けることで、座部3は、垂直な折り畳み状態から水平な展開状態へ回動し、ロック&ロック解除手段4により前脚フレーム21と係合するので、浴室用椅子1を簡単且つ安全に閉脚状態とすることができる(図2a)。
【0032】
なお、図示しないが、本発明では、座部3は必ずしも後脚フレーム22へ回動自在に取り付けられる必要がなく、前脚フレーム21へ回動自在に取り付けられていてもよい。この場合、座部3を、リンクを介して左右一対の後脚フレーム22を連結すれば、本実施形態の浴室用椅子1と同様に、簡単に折り畳んだり展開したりすることができるようになる。
【0033】
<背もたれ部の高さ調節手段>
図4a,bには、本実施形態の浴室用椅子1の背面図であって、(a)には背もたれ部6が一番高い位置に調整されている態様が示されており、(b)には背もたれ部6が一番低い位置に調節されている態様が示されている。図5a,bには、図4a,bに示される浴室用椅子1を横から見た断面図であって、(a)には図4aのA-A断面図が示されており、(b)には図4bのB-B断面図が示されている。
【0034】
図4a,b及び図5a,bを参照して理解されるように、本実施形態の浴室用椅子1は、背もたれ部6の高さを調節する高さ調節手段7を備えており、高さ調節手段7を操作することにより、背もたれ部6を昇降させて、背もたれ部6の浴室用椅子1(支持フレーム20)に対する取付位置(高さ)を任意の高さに調節することができる。
【0035】
図6には、本実施形態の浴室用椅子1を前から見たときの背もたれ部6を部分的に分解した斜視図が示されており、図7には、図5aに示される浴室用椅子1の断面図の背もたれ部6付近を部分的に拡大した断面図が示されている。また、図8には、浴室用椅子1を後ろから見たときの背もたれ部6を部分的に分解した斜視図が示されている。
【0036】
図3,6,7に示されるように、背もたれ部6は、使用者の背中や背骨を支持するための背もたれ本体60と、該背もたれ本体60を支持フレーム20へ取り付けるための固定部8およびスライダー80とを備えており、背もたれ本体60の前面には、背もたれクッション600が装着されている。背もたれ本体60は、その左右の端部付近に円形の貫通穴61を有しており、該貫通穴61の中へ背もたれクッション600のボス部601を弾性変形させながら嵌め込むことにより、背もたれクッション600を背もたれ本体60へ着脱可能に取り付けている。
【0037】
背もたれ本体60は、左右一対の貫通穴61の間に、垂直方向に延びた縦長の左右一対のスライド穴62を有しており、スライド穴62の内周面には被摺動壁620と段部621が形成されている。それぞれのスライド穴62の中にはトラック形状のスライダー80がスライド可能に収容されており(図6)、背もたれ部6は、背もたれ本体60と固定部8とを、支持フレーム20を前後方向から挟み込むように配置し、支持フレーム20の水平方向に設けられた挿通孔にボルト81を挿通して固定部8とスライダー80とを連結(ナット止め)することにより支持フレーム20に昇降可能に取り付けられている。
【0038】
図9には、本実施形態の浴室用椅子1に用いられる固定部8、ブロック部71及び左右一対のスライダー80を拡大した斜視図が示されている。
【0039】
図9に示されるように、スライダー80は、スライド穴62の被摺動壁620と摺接するスライド方向に延びた摺動面800を有しているので、背もたれ本体60は、スライダー80に対してガタ付くことなくスムーズに昇降することができる。また、スライダー80は、スライド穴62のスライド方向の長さより短く、且つ段部621の開口幅よりも広い幅サイズを有しているので、背もたれ本体60を昇降させる際、背もたれ本体60(スライド穴62)がスライダー80から抜け落ちることがない。
【0040】
なお、スライダー80は、支持フレーム20に挿通されるボルト81の他に、その上方および下方において2つのビスによっても固定部8と転結されている。そのため、スライダー80は、ボルト81に対して回転することなく、スライド穴62介して背もたれ本体60の昇降を正確且つスムーズに案内することができる。また、スライダー80は、後述するラック部70を挟んで左右2箇所で固定部8と連結されている(図9)。背もたれ本体60の左右一対の各スライド穴62には、スライダー80と固定部8とを連結するボルト81およびビスが挿通されているので、背もたれ本体60は、左右2箇所に配置されたスライダー80により、固定部8および支持フレーム20に対しても回転することなく、正確且つスムーズに昇降することができる。
【0041】
背もたれ本体60は、支持フレーム20に設けられる挿通孔の貫通角度を変更し、支持フレーム20に対する固定部8および該固定部8に連結されるスライダー80の取付角度を変えることにより、支持フレーム20への取付角度(昇降方向)を任意の角度(方向)に調整することができる。
【0042】
本実施形態では、高さ調節手段7により、背もたれ部6(背もたれ本体60)が鉛直方向に昇降するように固定部8およびスライダー80の取付角度を調整しているので、図5a,bに示されるように、背もたれ部6の高さを変えても、平面視における背もたれ部6(例えば前面)と座部3(例えば後端)との間の水平距離L、別言すれば、平面視における座部3(例えば後端)に対する背もたれ部6(例えば前面)の相対位置が変化しなくなるので、被介護者等の座位を安定させることができる。なお、背もたれ部6の前面は、上方から下方へ向かうにつれて後側から前側へ傾斜するように形成されているので、背もたれ部6の高さに拠らず、背もたれ部6の前面は適度な後傾を保持することで使用者に快適な座り心地を提供することができる。
【0043】
図10には、本実施形態の浴室用椅子1に用いられる左右一対のラック部70、ブロック部71及び付勢手段72を拡大した斜視図であって、図8とは逆方向から見たものが示されている。
【0044】
図8,10に示されるように、本実施形態において高さ調節手段7は、背もたれ本体60の背面に配置される左右一対のラック部70(以下、それぞれを「第1のラック部70」、「第2のラック部70」という場合もある。)と、該ラック部70と係合するブロック部71と、ラック部70をブロック部71と係合するように付勢する付勢手段72とを備えている。なお、本実施形態では、第1のラック部70と第2のラック部70とは付勢手段72を挟んで鏡面対称に配置されており、同じ形状を有している。そのため、第1のラック部70を構成する各構成要素および第2のラック部70を構成する各構成要素は、いずれも第1,第2のラック部70と同様に、同一符号を用いて説明する。
【0045】
ブロック部71は、図9,10に示されるように全体として略矩形状の扁平したブロック片からできており、その中に、平面視においてC型に配置された左右一対の第1の係止部710および第2の係止部710を備えている。そして、ブロック部71の第1,2の係止部710が形成された側の端部とは反対側の接続端部711を、固定部8の内側に設けられた棚部82の上に載置(位置決め)してビス止めすることで(図7,9)、ブロック部71は、固定部8の内部に取替可能に固定されている。さらに、固定部8を、支持フレーム20を挟んでスライダー80と連結(ナット止め)することで(図3,7)、ブロック部71は、固定部8を介して支持フレーム20に回動不能に固定されている。なお、本発明では、ブロック部71に形成された左右一対の係止部710のうち、後述するラック部70の第1の係合部702と係合する係止部を「第1の係止部710」といい、第2の係合部702と係合する係止部を「第2の係止部710」という場合もある。
【0046】
ブロック部71では、係止部710がラック部70の係合部710と係合および係合解除を繰り返すことにより摩耗することがあるので、ブロック部71を固定部8に着脱可能に取り付けることで容易に交換することができ、そのメンテナンス性が向上する。
【0047】
左右一対のラック部70は、それぞれに垂直方向に延びた支柱部700と、該支柱部700から水平方向に突出した複数の爪部701を有しており、上側の爪部701と下側の爪部701との間には、ブロック部71(図10)の係止部710と係合する複数の凹状の係合部702が形成されている。また、第1,2のラック部70の上部には摘み部704が設けられており、例えば親指と人差し指を使って片手で簡単に第1,2のラック部70を操作できるようになっている。本実施形態では、5つの爪部701により4つの係合部702が区画されているが、爪部701の数および係合部702の数は特に制限がなく、所望する背もたれ部6の高さ調節範囲や高さ調節ピッチにより決定すればよい。なお、本発明では、左右一対のラック部70のうち、第1のラック部70に形成された係合部を「第1の係合部702」といい、第2のラック部70に形成された係合部を「第2のラック部70」という場合もある。
【0048】
個々の爪部701の形状および個々の係合部702の形状は、ブロック部71の係止部710と係合可能な形状であれば特に限定がなく、任意の形状とすることができる。本実施形態では、5つの爪部701のうち、最上段の爪部701と最下段の爪部701以外の中央3つの爪部701は全て同じ形状を有しており、4つの凹状の係合部702のうち、最下段の係合部702以外の上部3つの係合部702は全て同じ形状を有している。
【0049】
また、第1のラック部70および第2のラック部70の水平方向へのスライドを案内するため、背もたれ部6には、背もたれ部6の背面に水平方向に延びた3段の案内リブ63(図8)が設けられ、第1,第2のラック部70には、最上段の爪部701および最下段の爪部701と、上から2段目と3段目の爪部701の間に、該案内リブ63を摺動可能に挟持する3段のスライド溝703(図10)が設けられている。そして、最上段の爪部701および最下段の爪部701を他の段の爪部701よりも水平方向に長く延ばし、スライド溝703の長さを延長することにより、第1,第2のラック部70のスライド移動をスライド溝703および案内リブ63に案内させて、より一層正確且つスムーズにしている。
【0050】
また、第1のラック部70に形成された4つの第1の係合部702のうち、上部3つの凹状の第1の係合部702は、少なくとも第1のラック部70のスライド方向と平行な第1の下向きの面705と、第1の下向きの面705よりも短く且つ第1のラック部70のスライド方向と平行な第1の上向きの面706と、そして第1の上向きの面706と接続し且つ第1のラック部70のスライド方向よりも下向き斜め方向に延びた第1の傾斜面707により区画されている(図10)。また、第2のラック部70に形成された4つの第2の係合部702のうち、上部3つの凹状の第2の係合部702は、少なくとも第2のラック部70のスライド方向と平行な第2の下向きの面705と、第2の下向きの面705よりも短く且つ第2のラック部70のスライド方向と平行な第2の上向きの面706と、そして第2の上向きの面706と接続し且つ第2のラック部70のスライド方向よりも下向き斜め方向に延びた第2の傾斜面707により区画されている(図10)。
【0051】
ラック部70がブロック部71と係合しているとき、第1,2の下向きの面705は、第1,2の上向きの面706よりも大きな接触面積にてブロック部71の第1,2の係止部710の上面と係合するので、背もたれ部6の上から下へ向けての耐荷重性が向上し、背もたれ部6の自重による不測の下降を確実に防止することができる。一方、第1,2の係合部702は第1,2の傾斜面707を有しているので、ラック部70とブロック部71との係合を解除して摘み部704(背もたれ本体60)を引き上げるとき、第1,2のラック部70は、係合が完全に解除される途中から、第1,2の傾斜面707がブロック部71の第1,2の係止部710の下面と摺接することにより、互いに離間するように案内されるので、背もたれ部6の自重に逆らった引き上げがスムーズになる。
【0052】
図8,10に示されるように、第1のラック部70および第2のラック部70はそれぞれに2つ突起を有しており、該突起は、第1のラック部70と第2のラック部70との間で互いに対向するように配置されている。弦巻状の金属バネからなる付勢手段72は、第1,2のラック部70の突起により両側から支持され、第1の係合部702がブロック部71の第1の係止部710と係合し、第2の係合部702がブロック部71の第2の係止部710と係合するように第1のラック部70および第2のラック部70を付勢している。
【0053】
以上のように、本実施形態の浴室用椅子1は、上述したような構成を有する背もたれ部6の高さ調節手段7を備えているので、非操作時、第1,2のラック部70は付勢手段72により左右に開くように付勢され、ラック部70の第1,2の係合部702は、その中へブロック部71の第1,2の係止部710を収容して係合しているので、背もたれ部6の昇降が確実にロックされる。
【0054】
一方、背もたれ部6の高さを変更するときは、例えば親指と人差し指を使って第1,2のラック部70の左右一対の摘み部704を摘まめば、第1,2のラック部70が近接するように水平方向にスライドし、第1,2の係合部702の中からの第1,2の係止部710が外れるので、片手で簡単に第1,2の係合部702と第1,2の係止部710との係合を解除することができる。摘み部704は、それぞれに第1,2のラック部70の上端付近に形成されているので、係合を解除すると同時に上下させれば、該摘み部704を介して背もたれ部6を片手で簡単に昇降させることができる。最後に、第1,2のラック部70の左右一対の摘み部704から手を離せば、第1,2のラック部70が離間するように水平方向にスライドし、再び第1,2の係止部710は、その中へ第1,2の係合部702を収容して係合するので、背もたれ部6の昇降がロックされ、背もたれ部6の高さ調節を完了することができる。
【0055】
このように、本実施形態の浴室用椅子1は、折り畳み可能な浴室用椅子1であっても背もたれ部6の高さを、背もたれ本体60の高さの範囲内で多段階に調節可能とすることができ、被介護者等を背骨の形状や体格に合わせて椅子の形状を変化させることができる。特に浴室用椅子1を利用する被介護者等が円背であるような場合、本実施形態の浴室用椅子1は、背もたれ部6の高さを、被介護者等の脊椎凸部を圧迫しない位置(具体的には、座部3の座面に対する背もたれ本体60の上端の高さが約250mmとなる位置)へ調節することができ、約80%以上の円背の被介護者等に痛みを生じさせないように対処することができる。
【0056】
また、本実施形態では、高さ調節手段7が背もたれ本体60の上部および下部に張り出さない構成としているので、例えば被介護者等の背中を洗う際、介助者等は、被介護者等の身体を片方の手で支えながら、他方の手で背もたれ部6を昇降させて邪魔にならない位置(高さ)へ移動すれば、背もたれ本体60の上部空間または下部空間から被介護者等の背中を容易に洗うことができる。
【0057】
本実施形態では、背もたれ部6の高さ調節手段7として、浴室用椅子1の支持フレーム20側に手動操作が必要な前進・後退可能な係合ピン等を設け、背もたれ本体60側にラック部等を固定するのではなく、背もたれ本体60の後ろ側に水平方向にスライド可能なラック部70を設け、支持フレーム20側に係止部710を固定しているので、背もたれ本体60とラック部70とを一緒に操作することが可能となり、片手で簡単に背もたれ部6の高さを調節することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、摘み部704を第1,2のラック部70の上端付近に設けているが、必ずしも摘み部704を設ける必要はなく、例えばラック部70を側方から直接摘まんでスライドさせる構成(図示せず)としてもよい。また、摘み部704を設ける位置も必ずしもラック部70の上端付近である必要はなく、例えば第1,2のラック部70の下端、若しくはラック部70の上下方向の中央付近に設けてもよい(図示せず)。摘み部704をラック部70の下端付近に設けた場合、摘み部704には水が掛かり難くなったり、水が溜まり難くなることで、高さ調節手段7の耐久性や滑り防止による操作性が向上する。また、摘み部704は、本実施形態のように第1,2のラック部70と一体的に形成されている必要はなく、交換可能なように別部品として構成してもよい(図示せず)。
【0059】
<把手部>
図11には、本実施形態の浴室用椅子1に用いられる固定部8の正面図が示されており、図12には、図11に示される固定部8を反対側から見た斜視図が示されている。
【0060】
図11,12によく示されるように、本実施形態の浴室用椅子1は、上述した固定部8の下部に連続して一体的に形成された把手部9を有しており、該把手部9は、固定部8を浴室用椅子1の支持フレーム20に固定することにより支持フレーム20に取り付けられている(図3,7)。
【0061】
本実施形態において、把手部9は、主として浴室用椅子1の使用者が手を掛ける部分を意味し、固定部8は、主として把手部9を支持フレーム20に取り付ける部分を意味しており、把手部9自体は固定部8の機能を兼ねて直接支持フレーム20に取り付けられていてもよい。また、固定部8は、本実施形態のように背もたれ部6を支持フレーム20へ固定する機能を兼ね備えたものであってもよく、または把手部9を支持フレーム20へ固定するのみの専用部品であってもよい。さらに、本実施形態では、把手部9と固定部8とは一体的に形成されているが、必ずしも一体的に形成されている必要はなく、別々の部品として構成されていてもよい。なお、把手部9は、耐水性、成形性、軽量であること等を考慮して主として樹脂材料から形成されていることが好ましいが、それに限られるものではない。
【0062】
本実施形態では、支持フレーム20には、該支持フレーム20を水平方向に貫通する挿通孔が2箇所設けられている(図7)。そして、把手部9の支持フレーム20への取り付けは、固定部8に設けられた挿通孔と、スライダー80の挿通孔と、支持フレーム20の挿通孔とを整列させるように配置し、前記各部品8,20,80の挿通孔にボルト81を挿通して固定部8とスライダー80とを連結(ナット止め)することにより取り付けている。ただし、固定部8は、本実施形態のように、ボルト81&ナットおよびスライダー80を用いて支持フレーム20に固定する必要がなく、例えばビス止め等によって直接支持フレーム20に取り付けてもよい。
【0063】
本実施形態の把手部9は、図11に示されるように、正面視において、下底を短辺とする下向きの台形形状を有している。また、把手部9は、図7,12に示されるように、垂直方向に延びた第1の平板状部材91と、第1の平板状部材91と連結し、第1の平板状部材91と略直交するように形成された第2の平板状部材92であって、使用者が手を掛けたとき、使用者の手の指の基節骨の領域が当接する表面920と、使用者の手の指の末節骨の領域が当接する裏面921とを有する前記第2の平板状部材92とを備えており、把手部9全体としては、前方向から後ろ方向へ凹んだ窪み90を有する舌形状を呈している。
【0064】
そのため、本実施形態の把手部9は、使用者が背もたれ部6の後方から手を掛けたとき、手の指の末節骨の領域が第2の平板状部材92の裏面921に掛かり、手の指の中節骨の領域が第2の平板状部材92の端部と当接し、そして手の指の基節骨の領域が第2の平板状部材92の表面920と当接するので、使用者の手の指が把手部9の所定の位置へ案内されて、その掛かり具合が安定化される。
【0065】
特に第2の平板状部材92は、下向きの台形形状の下底を形成する水平面と、その両端部から斜めに立ち上がった斜面とを有しているので、使用者の人差し指から小指までの4本の指が台形形状の下底に誘導され、使用者の指と把手部9との掛かりを確実なものにする。また、把手部9の窪み90は平均的な大人の手の指の末節骨と略同じ深さを有しており、さらに、下向きの台形形状の第1の平板状部材91は手の平と呼ばれる中手骨の領域を広い接触面積にて支持するので、使用者は安定して把手部9を握り、操作することができる。
【0066】
また、本実施形態の把手部9は、第2の平板状部材92の全部または一部が支持フレーム20の真下に配置されるように、第2の平板状部材92と接続した第1の平板状部材91が支持フレーム20の後ろ側で下方に延びており、支持フレーム20に回動不能に固定されているという特徴を有している。別言すれば、本実施形態の把手部9は、図7に示されるように、その窪み90の一部および/または第2の平板状部材92の一部が支持フレーム20の鉛直領域と重なり合うように配置されている。
【0067】
そのため、本実施形態の把手部9は、支持フレーム20を背もたれ部6から離間するようにさらに後方へ湾曲させたり、或いは支持フレーム20の後方にさらに専用の手摺り(フレームなど)を取り付けることで支持フレーム20よりも後方に把手部を設ける場合と比べて、背もたれ部6および支持フレーム20後方における突出を実質的に無くすることが可能となる。そのため、本実施形態の把手部9は安全性が高く、特に折り畳んだ後の椅子のコンパクト性、省スペース性を損なわないので、本実施形態のような折り畳み可能な浴室用椅子1においては極めて有益となる。
【0068】
また、本実施形態の把手部9は、支持フレーム20に対して回動不能に固定され、且つ第1の平板状部材91および第2の平板状部材92等により区画された窪み90を有する舌形状であるので、使用者の手の指の掛かりを確実なものとすることができ、本実施形態の把手部9を用いれば、折り畳み可能な浴室用椅子1で必要となる上方への引き上げ操作(折り畳み操作)が容易になるのみならず、浴室用椅子1を開脚したまま後方への移動も容易になる。
【0069】
<シャワーヘッド固定用フック>
図13には、本実施形態の浴室用椅子1に用いられるシャワーヘッド固定用フック10を拡大した斜視図が示されている。
【0070】
図3,11,13に示されるように、本実施形態の浴室用椅子1は、回転防止手段としての回り止め83を有する固定部8と、該回り止め83と係合することにより支持フレーム20に回転不能に固定されるシャワーヘッド固定用フック10を備えている。シャワーヘッド固定用フック10はシャワーヘッド(図示せず)を着脱自在に縦方向に保持するホルダー部100を有しており、回り止め83を有する固定部8を浴室用椅子1の支持フレーム20に回転不能に固定することにより、支持フレーム20に直接且つ着脱自在に取り付けられている(図3)。
【0071】
なお、本実施形態では、シャワーヘッド固定用フック10は、回り止め83と係合しながら支持フレーム20に直接取り付けられているが、本発明における前記「直接」の意味には、例えば支持フレーム20が保護カバー等(図示せず)で覆われており、シャワーヘッド固定用フック10が該保護カバーの上から支持フレーム20に取り付けられているような態様も含まれている。また、固定部8は、本実施形態のように背もたれ部6を支持フレーム20へ固定する機能を兼ね備えたものであってもよく、またはシャワーヘッド固定用フック10を支持フレーム20へ固定するのみの専用部品であってもよい。
【0072】
本実施形態のシャワーヘッド固定用フック10において、固定部8は、その両端部付近に横方向に延びた舌形状又は棒形状の回り止め83を有している(図11,12)。本実施形態では回り止め83は舌形状又は棒形状であるが、後述するシャワーヘッド固定用フック10に設けられる他方の回転防止手段としての回り止めと係合できるものであればこれに限定されるものではなく、例えば固定部8またはシャワーヘッド固定用フック10のいずれか一方に雄雌構造の雄部を設け、他方に雌部を設けてもよい。また、固定部8に設けられる回り止め83の数や配置も特に制限はなく、固定部8を支持フレーム20に取り付けられる範囲内で適宜決定することができる。
【0073】
他方、本実施形態において、シャワーヘッド固定用フック10は、図13に示されるように、内周面が半円筒形の支持フレーム20の外周面に沿うように形成され、互いに向き合うように配置された一対の樋型部材からなる掴み部101と、固定部8の回り止め83と係合し、掴み部11の内周面の上部に形成されたスリット状の挟持部102と、掴み部101の側部に設けられ、シャワーヘッドの持ち手(図示せず)を縦方向に保持するホルダー部100とを有している。なお、本実施例では、掴み部101の挟持部102と固定部8の回り止め83とがスムーズに係合および係合解除ができるように、掴み部101の内周面と挟持部102の内周面は連続して形成されている。
【0074】
本実施形態では、回り止め83と挟持部102との係合をより確実なものとしてシャワーヘッド固定用フック10の不測の脱落等を防止するため、少なくとも回り止め83の表面または裏面のいずれか一方の面には凹部830が設けられており(図11,12)、挟持部102の内周面には前記凹部830と係合するドーム状の凸部(図示せず)が設けられている。また、本実施形態の場合、回り止め83の凹部830は円形の貫通孔である(図11,12)。
【0075】
本実施形態において、掴み部101とホルダー部100とは、水平方向に延びた掴み部101の中心軸aと垂直方向に延びたホルダー部100の中心軸bとが互いに直交するように配置されている(図13)。そのため、シャワーヘッド固定用フック10の掴み部101を支持フレーム20の外周に沿って上方から下方へ押し込み、同時にシャワーヘッド固定用フック10の挟持部102を固定部8の回り止め83に外挿すれば、シャワーヘッド固定用フック10を支持フレーム20に対して回転不能に簡単に取り付けることができ、そしてホルダー部100は、シャワーヘッドを縦方向に保持するように縦方向に配置される(図3)。また、シャワーヘッド固定用フック10を支持フレーム20から取り外すときは、取付時とは逆に、シャワーヘッド固定用フック10を支持フレーム20の外周に沿って下方から上方へ引き上げればよい。
【0076】
本実施例では、シャワーヘッド固定用フック10は、耐水性、成形性、軽量であること等を考慮して主として樹脂材料から形成されていることが好ましいが、それに限られるものではない。例えば、本実施例では、掴み部101は樹脂材料からできており、掴み部101は、弾性変形することにより支持フレーム20へスムーズ且つ確実に取り付けることができる。また、ホルダー部100はC型に形成されており、ホルダー部100の弾性変形と相俟って様々な外径を有するシャワーヘッドに対応することができ、確実にシャワーヘッドを保持することができる。
【0077】
このように、本実施形態のシャワーヘッド固定用フック10は支持フレーム20に対して着脱可能であるので、浴室用椅子1を折り畳んで収納する際、不要であればシャワーヘッド固定用フック10を浴室用椅子1から簡単に取り外すことができ、特に折り畳んだ後のコンパクト性、省スペース性を損なわないので、本実施形態のような折り畳み可能な浴室用椅子1においては極めて有益となる。また、本実施形態のシャワーヘッド固定用フック10は、固定部8の回り止め83により、支持フレーム20が円筒形のパイプ形状であっても該支持フレーム20に回転不能に取り付けることができるので、シャワー使用時の吹き出し水流の反力によってシャワーヘッドが動いてしまうことがなく、介助者等が被介護者等を浴室用椅子1に座らせたまま、片手で被介護者等の身体を洗うことができるようになる。
【0078】
さらに、本実施形態のシャワーヘッド固定用フック10自体は、上述したように掴み部101と、掴み部101の内周面に形成されたスリット状の挟持部102と、シャワーヘッド(図示せず)を保持するホルダー部100とを備えた簡単な構造であるのでコンパクトであり、安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0079】
1・・・・・浴室用椅子
2・・・・・脚フレーム
20・・・・支持フレーム
21・・・・前脚フレーム
210・・・脚部
211・・・背もたれ支持部
212・・・キャップ
22・・・・後脚フレーム
23・・・・補強フレーム
3・・・・・座部
30・・・・座面クッション
31・・・・リンク
4・・・・・ロック&ロック解除手段
40・・・・レバー
5・・・・・肘掛け
6・・・・・背もたれ部
60・・・・背もたれ本体
600・・・背もたれクッション
601・・・ボス部
61・・・・貫通穴
62・・・・スライド穴
620・・・被摺動壁
621・・・段部
63・・・・案内リブ
7・・・・・高さ調節手段
70・・・・ラック部(第1,第2のラック部)
700・・・支柱部
701・・・爪部
702・・・係合部(第1,第2の係合部)
703・・・スライド溝
704・・・摘み部
705・・・第1,2の下向きの面
706・・・第1,2の上向きの面
707・・・第1,2の傾斜面
71・・・・ブロック部
710・・・係止部(第1,第2の係止部)
711・・・接続端部
72・・・・付勢手段
8・・・・・固定部
80・・・・スライダー
800・・・摺動面
81・・・・ボルト
82・・・・棚部
83・・・・回転防止手段(回り止め)
830・・・凹部(貫通孔)
9・・・・・把手部
90・・・・窪み
91・・・・第1の平板状部材
92・・・・第2の平板状部材
920・・・表面
921・・・裏面
10・・・・シャワーヘッド固定用フック
100・・・ホルダー部
101・・・掴み部
102・・・挟持部
L・・・・・水平距離
a・・・・・掴み部の中心軸
b・・・・・ホルダー部の中心軸
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13