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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176346
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】建築構造用版材
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20241212BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04B5/02 H
E04C2/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094817
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】521409973
【氏名又は名称】阿部 忠
(71)【出願人】
【識別番号】594074805
【氏名又は名称】東栄コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 忠
(72)【発明者】
【氏名】新田 裕之
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162AA01
2E162BA02
2E162BB09
2E162CA11
2E162CC01
2E162EA11
2E162EA18
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りながら、一般家屋の床を構成する部材として用いることのできる建築構造用版材を提供する。
【解決手段】長手寸法が12m以下、幅寸法が2.3m以下の木板(10)の、アンカー筋(1)が打ち込まれた上面に、設計耐荷力を補強する主鉄筋(2)及び配力筋(3)の配されるコンクリート層(11)が設けられ、前記上面と前記コンクリート層(11)の間に接着剤層(4,5)が設けられ、前記コンクリート層(11)は前記木板(10)の一方の長辺及び一方の短辺と平行する木板面露出帯(12)を除く領域に設けられ、前記主鉄筋(2)及び前記配力筋(3)の端部が前記木板面露出帯(12)の上方に突出している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手寸法が12m以下、幅寸法が2.3m以下の木板の、アンカー筋が打ち込まれた上面に、設計耐荷力を補強する主鉄筋及び配力筋の配されるコンクリート層が設けられ、前記上面と前記コンクリート層の間に接着剤層が設けられ、前記コンクリート層は前記木板の一方の長辺及び一方の短辺と平行する木板面露出帯を除く領域に設けられ、前記主鉄筋及び前記配力筋の端部が前記木板面露出帯の上方に突出していることを特徴とする建築構造用版材。
【請求項2】
前記木板の、前記一方の長辺が含まれる端面に、相適合する第一形態と第二形態の嵌合部の何れかが設けられている請求項1に記載の建築構造用版材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造の組み立てに好適な版材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造の組み立てに用いられる版材(以下、「建築構造用版材」とする)は、施工性及び構造性能上の観点から、その軽量化及び耐荷力の向上が求められている。そのため、プレキャスト版では、軽量骨材を用いることにより、同一寸法とした場合の耐荷力と同等以上としながらの軽量化が図られている。
【0003】
また、特開2016-254740公報に開示されたプレキャストコンクリート板では、鉄筋の無い第1、第2コンクリート板材の間に、合板、ケイ酸カルシウム板、大平板、フレキシブルボード及び合板、木材、ケイ酸カルシウム版を組み合わせたものから選択された中間板材を設定した積層構造とし、全厚をコンクリートで形成した場合に対する軽量化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-254740公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築構造用版材は、建築構造において用いられる部位により、必要条件が異なる。そして、一般家屋の床を構成する部材として用いられる場合には、床面積あたりの想定荷重を、二辺支持、三辺支持、及び四辺支持の梁部材、及び、下方から木板面が目視できる支持材で支持できることが必要とされる。
【0006】
しかしながら、軽量化の図られた従来の建築構造用版材では、一般家屋の床を構成する部材として用いることの難しい場合があった。例えば、上記の積層構造とされたプレキャストコンクリート板では、一般家屋で想定される、床面積あたりの荷重500kg/mを、梁部材で支持することは難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、軽量化を図りながら、一般家屋の床を構成する部材として用いることのできる建築構造用版材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建築構造用版材では、長手寸法が12m以下、幅寸法が2.3m以下の木板の、アンカー筋が打ち込まれた上面に、設計耐荷力を補強する主鉄筋及び配力筋の配されるコンクリート層が設けられ、前記上面と前記コンクリート層の間に接着剤層が設けられ、前記コンクリート層は前記木板の一方の長辺及び一方の短辺と平行する木板面露出帯を除く領域に設けられ、前記主鉄筋及び前記配力筋の端部が前記木板面露出帯の上方に突出している。
【0009】
前記木板の、前記一方の長辺が含まれる端面に、相適合する第一形態と第二形態の嵌合部の何れかが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明係る建築構造用版材によれば、軽量化を図りながら、一般家屋の床を構成する部材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明係る建築構造用版材を、一部を破断して示す斜視図である。
図2図1に示す建築構造用版材が支持材上に並べて配置された状態を示す斜視図である。
図3】支持材上に並べて配置された建築構造用版材の間詰部にコンクリートが打設された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~3を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図1~3においては、本発明の理解を容易にするため、説明の便宜上、誇張して表示されている部分があり、部位間の相対寸法は正確ではない。
【0013】
この実施形態に係る建築構造用版材は、木板10の上面に、主鉄筋2及び配力筋3の配されるコンクリート層11が設けられた構成となっている。
【0014】
木板10は、その長辺寸法が12.0m、短辺寸法が2.3mとされている。長辺寸法は、組み立て目的の建築構造における支間長に合わせて決めればよいが、一般家屋では12m以下となる。一方、短辺寸法は、組み立て作業が行われる現場への輸送を考慮して決めればよいが、2.3m以下であれば、一般的な車両を使用した輸送が可能となる。
【0015】
木板10の上面は、油性剤が全て除去され、研掃され、コンクリート層11が設けられる領域に、アンカー筋1が打ち込まれている。
【0016】
アンカー筋1には、公知の製品を、例えば、頭部に円形突起を有する型式のものや、木ネジ式のものを使用することができる。アンカー筋1を打ち込む間隔は、引き抜き強度、支圧強度、木板10のコンクリート層11との付着強度、及び、木板10とコンクリート層11の界面のせん断強度に及ぼす影響を考慮し、200~300mmとすることが好ましい。
【0017】
木板10の上面とコンクリート層11の間には、第一の接着剤層4と第二の接着剤層5が設けられている。
【0018】
第一の接着剤層4は、浸透面である木板10の表面を強固にし、引張せん断強さを向上させ、更に、木板10の乾燥収縮を抑制し、コンクリート層11との付着力を高める効果をもたらすものである。この実施形態における第一の接着剤層4は、200mPa・s以上の粘度、及び、2.6N/mm以上の付着強度を有する浸透性接着を、1.0Kg/mの塗布量で、浸透深さが数ミリ程度になることを目安に塗布し、木板10に浸透(浸み込み)させることにより形成されている。
【0019】
第二の接着剤層5は、木板10のコンクリート層11との付着力を高める効果をもたらすものである。この実施形態における第二の接着剤層5は、付着用接着剤として、3.7N/mm以上の付着強度を有する高耐久型エポキシ系接着剤を採用し、1.0Kg/mの塗布量を目安に塗布して形成されており、木板10のコンクリート層11との付着力が1.0N/mm以上とされている。なお、接着剤は、木板10の表面に、ハケを使用して塗布してもよく、或いは、リシンガンを使用して吹き付けてもよい。
【0020】
コンクリート層11は、木板10の一方の長辺及び一方の短辺と平行する、平面視でL形の木板面露出帯12を除く領域に設けられている。
【0021】
コンクリート層11には、主鉄筋2及び配力筋3が配されている。主鉄筋2は、設計耐荷力を補強するもので、木板10が分担する耐荷力を考慮した配置とする。この実施形態では1層となっているが、必要に応じて2層(覆鉄筋構造)としてもよい。
【0022】
コンクリート層11に配されている主鉄筋2及び配力筋3の端部は、木板面露出帯12の上方に突出している。そして、木板面露出帯12の上方に突出する端部には、継手構造が設けられている。
【0023】
この実施形態における継手構造には、突起付き鉄筋を用いた重ね継ぎ手が採用されている。なお、継手構造として、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手など、他の公知の構造を用いることもできる。ただし、重ね継ぎ手は、工期の短縮において有利であり、更には、突起付き鉄筋などの機械式継手を用いることにより継手長を短くし、間詰部寸法の短縮をはかり、間詰部のコンクリートの打ち込みを最小限にすることで、施工の合理化を図ることも可能とある。
【0024】
コンクリート層11の形成には、公知のコンクリート材を用いることができるが、骨材として軽量骨材を用いる場合、一般的な砕石などの骨材を用いた場合に対し80%近くの軽量化を図ることができると共に、一般的な砕石などの骨材を用いた場合と同等の性能を備えるものにできる。
【0025】
木板面露出帯12の縁辺をなす長辺が含まれる、木板10の端面には、相適合する第一形態と第二形態の嵌合部の何れかが設けられている。この実施形態における嵌合部13は、木板面露出帯12における木板10の長辺に平行する部分を所定の厚さ寸法切り欠いて形成した第一形態と、木板面露出帯12における木板10の長辺に平行する部分と重なる木板10の裏面部分を所定の厚さ寸法切り欠いて形成した第二形態が相適合するものとなっている。ただし、嵌合部13の形態に制限はなく、設置作業条件等を考慮しその他公知の形態を採用してもよい。
【0026】
この実施形態に係る建築構造用版材は、二次製品工場で製作し、使用の際には、二次製品工場より建設現場まで大型車両にて運搬する。そして、建設現場においては、クレーン等で、梁部材等の支持材14が配置されている設置場所に搬入する。そのため、建設現場において木板にアンカー筋を打ち込み、コンクリート打設する従来工法と比較して、施工の省力化を図ることができる。
【0027】
設置に際しては、嵌合部13が嵌まり合う向きで、支持材14の上に、建築構造用版材を並べて載置する。そして、木板面露出帯12の嵌合部13が嵌まり合っている部分に、ずれ止め用としてアンカー筋1を打ち込む。
【0028】
続いて、複数の建築構造用版材が並べられ連結された状態において間詰部となる木板面露出帯12の表面に、浸透性接着剤を塗布して第一の接着層を形成し、更に、付着用接着剤を塗布して第二の接着層を形成した後、間詰部にコンクリート材を打設し、間詰コンクリート部15を形成する。
【0029】
間詰部に打設するコンクリート材は、施工時間を考慮し、予定される期間に要求性能が発現するものを採用すればよい。例えば、要求性能を発現させるために設けられる期間が28日以上であれば普通セメントを、7日以上であれば早強セメントを、1.5日以上であれば速硬セメントを、3時間以上であれば超速硬セメントを用いればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 アンカー筋
2 主鉄筋
3 配力筋
4 第一の接着剤層
5 第二の接着剤層
10 木板
11 コンクリート層
12 木板面露出帯
13 嵌合部
14 支持材
15 間詰コンクリート部
図1
図2
図3