(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176347
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ピストン及びエンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/22 20060101AFI20241212BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20241212BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20241212BHJP
F16J 1/08 20060101ALI20241212BHJP
F16J 1/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F02F3/22 A
F02F3/00 L
F01M1/06 C
F16J1/08
F16J1/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094819
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰裕
【テーマコード(参考)】
3G313
3J044
【Fターム(参考)】
3G313BC04
3G313BD32
3G313CA25
3G313FA09
3J044AA12
3J044AA20
3J044BA01
3J044CA04
3J044CA16
3J044DA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ピストンにおいて、ピストンとシリンダ間に生じる摩擦損失を低減させる。
【解決手段】オイルが流れる環状のクーリングチャンネル12を有するピストンヘッド1と、ピストンスカート部2であって、スラスト側に設けられている第1摺動面21、反スラスト側に設けられている第2摺動面22、及びピストンピンが挿入される孔231を形成する突出部23を有するピストンスカート部2と、クーリングチャンネル12から流入したオイルを第1摺動面21に供給するための第1流路3と、クーリングチャンネル12から流入したオイルを第2摺動面22に供給するための第2流路4と、を有し、ピストンスカート部2は、第1摺動面21に第1流路3を流れたオイルが流出する第1開口211と、第2摺動面22に第2流路4を流れたオイルが流出する第2開口221と、を有し、第1開口211及び第2開口221は、孔231の中心Nよりも上方に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンのシリンダ内に収容されるピストンであって、
前記ピストンを冷却するためのオイルが流れる環状のクーリングチャンネルを有するピストンヘッドと、
前記ピストンヘッドの下面に接続されているピストンスカート部であって、スラスト側に設けられている第1摺動面、反スラスト側に設けられている第2摺動面、及びコネクティングロッドに前記ピストンを接続するためのピストンピンが挿入される孔を形成する突出部を有するピストンスカート部と、
前記クーリングチャンネルと接続されており、前記クーリングチャンネルから流入した前記オイルを前記第1摺動面に供給するための第1流路と、
前記クーリングチャンネルと接続されており、前記クーリングチャンネルから流入した前記オイルを前記第2摺動面に供給するための第2流路と、
を有し、
前記ピストンスカート部は、前記第1摺動面に前記第1流路を流れた前記オイルが流出する第1開口と、前記第2摺動面に前記第2流路を流れた前記オイルが流出する第2開口と、を有し、
前記第1開口及び前記第2開口は、前記孔の中心よりも上方に設けられているピストン。
【請求項2】
前記クーリングチャンネルは、
前記クーリングチャンネルにおける前記第1流路が前記クーリングチャンネルに接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している第1領域と、
前記クーリングチャンネルにおける前記第2流路が前記クーリングチャンネルに接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している第2領域と、
を有する、
請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記第1開口は、前記ピストンの周方向において、前記第1摺動面のスラスト方向を中心として前記周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の第1範囲内に設けられており、
前記第2開口は、前記周方向において、前記第2摺動面の反スラスト方向を中心として前記周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の第2範囲内に設けられている、
請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
前記ピストンヘッドの下面に設けられており、前記オイルが前記クーリングチャンネルに流入する流入部と、
前記ピストンヘッドの下面に設けられており、前記クーリングチャンネルを流れた前記オイルが流出する流出部と、
をさらに有し、
前記周方向において、前記流入部及び前記流出部は、前記第1開口が設けられた前記第1範囲及び前記第2開口が設けられた前記第2範囲の外側に設けられている、
請求項3に記載のピストン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のピストンと、
前記ピストンを収容する前記シリンダと、
を有するエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン及びエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンにはピストンが設けられている。特許文献1には、クーリングチャンネル内のオイルが流出する複数の開口が、スラスト側の第1の摺動面のボス孔の中心よりも下方、及び反スラスト側の第2の摺動面の上側の縁範囲に設けられているピストンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すピストンの場合、クーリングチャンネル内のオイルが流出する開口がボス孔の中心よりも下方に設けられているため、ピストンの摺動面におけるピストンからシリンダに力が加わり易い領域において、オイルが不足するおそれがある。この場合、ピストンとシリンダ間に生じる摩擦損失が増大することで、燃費が悪化してしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ピストンとシリンダ間に生じる摩擦損失を低減できるピストンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両のエンジンのシリンダ内に収容されるピストンであって、前記ピストンを冷却するためのオイルが流れる環状のクーリングチャンネルを有するピストンヘッドと、前記ピストンヘッドの下面に接続されているピストンスカート部であって、スラスト側に設けられている第1摺動面、反スラスト側に設けられている第2摺動面、及びコネクティングロッドに前記ピストンを接続するためのピストンピンが挿入される孔を形成する突出部を有するピストンスカート部と、前記クーリングチャンネルと接続されており、前記クーリングチャンネルから流入した前記オイルを前記第1摺動面に供給するための第1流路と、前記クーリングチャンネルと接続されており、前記クーリングチャンネルから流入した前記オイルを前記第2摺動面に供給するための第2流路と、を有し、前記ピストンスカート部は、前記第1摺動面に前記第1流路を流れた前記オイルが流出する第1開口と、前記第2摺動面に前記第2流路を流れた前記オイルが流出する第2開口と、を有し、前記第1開口及び前記第2開口は、前記孔の中心よりも上方に設けられているピストンを提供する。
【0007】
また、前記クーリングチャンネルは、前記クーリングチャンネルにおける前記第1流路が前記クーリングチャンネルに接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している第1領域と、前記クーリングチャンネルにおける前記第2流路が前記クーリングチャンネルに接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している第2領域と、を有していてもよい。
【0008】
また、前記第1開口は、前記ピストンの周方向において、前記第1摺動面のスラスト方向を中心として前記周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の第1範囲内に設けられており、前記第2開口は、前記周方向において、前記第2摺動面の反スラスト方向を中心として前記周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の第2範囲内に設けられていてもよい。
【0009】
また、前記ピストンヘッドの下面に設けられており、前記オイルが前記クーリングチャンネルに流入する流入部と、前記ピストンヘッドの下面に設けられており、前記クーリングチャンネルを流れた前記オイルが流出する流出部と、をさらに有し、前記周方向において、前記流入部及び前記流出部は、前記第1開口が設けられた前記第1範囲及び前記第2開口が設けられた前記第2範囲の外側に設けられていてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、ピストンと、前記ピストンを収容する前記シリンダと、を有するエンジンを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピストンにおいて、ピストンとシリンダ間に生じる摩擦損失を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】ピストンを反スラスト側から見た構造を示す。
【
図5】クーリングチャンネルをスラスト側から見た構造を示す。
【
図6】クーリングチャンネルを前方側から見た構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ピストンSの構造]
図1は、本実施形態に係るピストンSの構造を示す図である。なお、
図1は、ピストンSの断面図である。
図2は、ピストンSをスラスト側から見た構造を示す図である。
図3は、ピストンSを反スラスト側から見た構造を示す図である。
図4は、ピストンヘッド1を下方から見た構造を示す図である。
【0014】
車両のエンジン(不図示)は、ピストンS及びシリンダ(不図示)を有する。ピストンSは、シリンダ内に収容される。ピストンSは、シリンダ内において、上下に往復動する。シリンダは、ピストンSを収容する。
【0015】
ピストンSは、ピストンヘッド1、ピストンスカート部2、第1流路3、及び第2流路4を有する。
【0016】
ピストンヘッド1は、ピストンSのうち上部側の領域に設けられている。ピストンヘッド1の上面とシリンダの内面との間には、エンジンの燃焼室が形成される。
【0017】
ピストンヘッド1は、リング部11、クーリングチャンネル12、流入部13、及び流出部14を有する。リング部11は、ピストンリング(不図示)が収容される複数の凹部を有する部位である。
【0018】
クーリングチャンネル12は、ピストンSを冷却するためのオイルが流れる流路である。
図4に示すように、クーリングチャンネル12は、ピストンSの径方向の中心を中心として、ピストンSの周方向において、環状に設けられている。クーリングチャンネル12は、第1領域121及び第2領域122を有する。第1領域121は、環状のクーリングチャンネル12のうちのスラスト側の領域である。第2領域122は、環状のクーリングチャンネル12のうちの反スラスト側の領域である。クーリングチャンネル12の詳細は後述する。
【0019】
流入部13は、オイルがクーリングチャンネル12に流入する部位である。流入部13は、具体的には、オイルが流入する開口部である。流入部13は、ピストンヘッド1の下面に設けられている。ピストンSの下方には、オイルをピストンSに向かって噴出するノズル(不図示)が設けられている。当該ノズルから噴出したオイルは流入部13からクーリングチャンネル12に流入する。
【0020】
流出部14は、クーリングチャンネル12を流れたオイルが流出する部位である。流出部14は、具体的には、クーリングチャンネル12を流れたオイルが流出する開口部である。流出部14は、ピストンヘッド1の下面に設けられている。流入部13及び流出部14の詳細は後述する。
【0021】
図1に示すように、クーリングチャンネル12は、ピストンSの高さ方向において、リング部11と同じ位置に設けられている。
【0022】
ピストンスカート部2は、ピストンヘッド1の下面に接続されている。ピストンスカート部2は、
図1に示すように、第1摺動面21、第2摺動面22、及び突出部23を有する。
【0023】
第1摺動面21は、スラスト側に設けられている摺動面である。スラスト側とは、エンジンの膨張行程において、ピストンSが下方に向かって移動する際に、コネクティングロッド(不図示)が傾くことにより、ピストンSからシリンダに力が作用する方向である。
【0024】
ピストンスカート部2は、第1摺動面21に第1開口211を有する。第1開口211は、クーリングチャンネル12を流れるオイルが流出する開口である。具体的には、第1開口211は、後述する第1流路3を流れたオイルが流出する開口である。
【0025】
第2摺動面22は、反スラスト側に設けられている摺動面である。反スラスト側とは、スラスト側の反対側である。ピストンスカート部2は、第2摺動面22に第2開口221を有する。第2開口221は、クーリングチャンネル12を流れるオイルが流出する開口である。具体的には、第2開口221は、後述する第2流路4を流れたオイルが流出する開口である。
【0026】
突出部23は、孔231を形成する。突出部23は、第1摺動面21と第2摺動面22との間に設けられている。孔231は、ピストンピン(不図示)が挿入される孔である。ピストンピンは、コネクティングロッドにピストンを接続するための部品である。
【0027】
第1流路3は、クーリングチャンネル12からのオイルが流入する流路であり、クーリングチャンネル12からのオイルを第1摺動面21に供給するための流路である。第1流路3は、クーリングチャンネル12と接続されている。具体的には、第1流路3は、クーリングチャンネル12の第1領域121と接続されている。第1流路3の第1開口211側の端部は、第1流路3のクーリングチャンネル12と接続されている側の端部よりも下方に位置する。第1流路3を流れたオイルは、第1開口211から第1摺動面21に流出する。
【0028】
第2流路4は、クーリングチャンネル12からのオイルが流入する流路であり、クーリングチャンネル12からのオイルを第2摺動面22に供給するための流路である。第2流路4は、クーリングチャンネル12と接続されている。具体的には、第2流路4は、クーリングチャンネル12の第2領域122と接続されている。第2流路4の第2開口221側の端部は、第2流路4のクーリングチャンネル12と接続されている側の端部よりも下方に位置する。第2流路4を流れたオイルは、第2開口221から第2摺動面22に流出する。
【0029】
図1に示すように、第1開口211及び第2開口221は、孔231の中心Nよりも上方に設けられている。具体的には、第1開口211及び第2開口221は、孔231の上端よりも上方に設けられている。ピストンSの高さ方向において、第2開口221は、第1開口211と同じ位置に設けられている。
【0030】
ピストンSにおいては、このように第1開口211及び第2開口221が、孔231の中心Nよりも上方に設けられているため、第1開口211及び第2開口221から流出したオイルが第1摺動面21及び第2摺動面22のピストンSの高さ方向におけるピストンピンの位置付近に供給され易い。その結果、ピストンSにおいては、ピストンSの摺動面におけるピストンSからシリンダに力が加わり易い領域に、オイルを供給し易くなる。したがって、ピストンSにおいては、ピストンSとシリンダ間に生じる摩擦損失を低減できる。
【0031】
[クーリングチャンネル12の形状]
図5は、クーリングチャンネル12をスラスト側から見た構造を示す図である。
図5(a)は、クーリングチャンネル12を模式的に示す図である。
図5(b)は、ピストンS内のクーリングチャンネル12の状態を示す図である。
【0032】
図6は、クーリングチャンネル12を前方側から見た構造を示す図である。
図6(a)は、クーリングチャンネル12を模式的に示す図である。
図6(b)は、ピストンS内のクーリングチャンネル12の状態を示す図である。
【0033】
第1領域121は、クーリングチャンネル12における第1流路3がクーリングチャンネル12に接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している領域である。具体的には、第1領域121は、ピストンSの周方向において、クーリングチャンネル12における第1流路3がクーリングチャンネル12に接続されている位置に両側から向かうにつれて、両側から下面が下方に向かって傾斜している領域である。
【0034】
第2領域122は、クーリングチャンネル12における第2流路4がクーリングチャンネル12に接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している領域である。具体的には、第2領域122は、ピストンSの周方向において、クーリングチャンネル12における第2流路4がクーリングチャンネル12に接続されている位置に両側から向かうにつれて、両側から下面が下方に向かって傾斜している領域である。
【0035】
ピストンSにおいては、このようにクーリングチャンネル12に第1領域121及び第2領域122が設けられている。第1領域121及び第2領域122は、それぞれ、各領域の最深部に第1流路3及び第2流路4が位置するような形状に設けられているため、クーリングチャンネル12を流れるオイルが、第1流路3又は第2流路4に流入し易くなる。その結果、ピストンSにおいては、第1摺動面21及び第2摺動面22にオイルを供給し易くなる。
【0036】
[第1開口211、第2開口221、流入部13、及び流出部14の配置]
図2及び
図4に示すように、第1開口211は、ピストンSの周方向において、第1範囲R1内に設けられている。第1範囲R1は、第1摺動面21のスラスト方向を中心としてピストンSの周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の範囲である。
図2では、一例として、第1開口211は第1摺動面21のスラスト方向の位置に設けられている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、第2開口221は、ピストンSの周方向において、第2範囲R2内に設けられている。第2範囲R2は、第2摺動面22の反スラスト方向を中心としてピストンSの周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の範囲である。
図3では、一例として、第2開口221は第2摺動面22の反スラスト方向の位置に設けられている。
【0038】
ピストンSにおいては、このような範囲に第1開口211及び第2開口221が設けられていることで、第1摺動面21のスラスト方向の位置付近及び第2摺動面22の反スラスト方向の位置付近に対してオイルを好適に供給することができる。その結果、ピストンSにおいては、ピストンSの摺動面の周方向において、ピストンSからシリンダに力が加わり易い領域に、オイルを供給することができる。
【0039】
図4に示すように、ピストンSの周方向において、流入部13及び流出部14は、第1開口211が設けられた第1範囲R1及び第2開口221が設けられた第2範囲R2の外側に設けられている。
【0040】
具体的には、流入部13は、ピストンSの周方向において、第1範囲R1及び第2範囲R2の外側における、反スラスト側及び前方側に設けられている。流出部14は、ピストンSの周方向において、第1範囲R1及び第2範囲R2の外側における、スラスト側及び後方側に設けられている。流出部14は、流入部13に対してピストンSの径方向における中心を挟んで対称の位置に設けられている。
【0041】
ピストンSにおいては、このように流入部13及び流出部14が設けられていることで、流入部13から流入するオイルの流れ、及び流出部14から流出するオイルの流れが、第1開口211及び第2開口221から流出するオイルの流れに与える影響を小さくすることができる。
【0042】
[本実施形態に係るピストンSによる効果]
本実施形態に係るピストンSにおいては、ピストンスカート部2は、第1摺動面21に第1流路3を流れたオイルが流出する第1開口211と、第2摺動面22に第2流路4を流れたオイルが流出する第2開口221と、を有する。そして、第1開口211及び第2開口221は、孔231の中心Nよりも上方に設けられている。
【0043】
ピストンSにおいては、このように第1開口211及び第2開口221が、孔231の中心Nよりも上方に設けられているため、第1開口211及び第2開口221から流出したオイルが第1摺動面21及び第2摺動面22のピストンSの高さ方向におけるピストンピンの位置付近に供給され易い。その結果、ピストンSにおいては、ピストンSの摺動面におけるピストンSからシリンダに力が加わり易い領域に、オイルを供給し易くなる。したがって、ピストンSにおいては、ピストンSとシリンダ間に生じる摩擦損失を低減できる。
【0044】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0045】
S・・・ピストン
1・・・ピストンヘッド
11・・・リング部
12・・・クーリングチャンネル
121・・・第1領域
122・・・第2領域
13・・・流入部
14・・・流出部
2・・・ピストンスカート部
21・・・第1摺動面
211・・・第1開口
22・・・第2摺動面
221・・・第2開口
23・・・突出部
231・・・孔
3・・・第1流路
4・・・第2流路
N・・・中心
R1・・・第1範囲
R2・・・第2範囲
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンのシリンダ内に収容されるピストンであって、
前記ピストンを冷却するためのオイルが流れる環状のクーリングチャンネルを有するピストンヘッドと、
前記ピストンヘッドの下面に接続されているピストンスカート部であって、スラスト側に設けられている第1摺動面、反スラスト側に設けられている第2摺動面、及びコネクティングロッドに前記ピストンを接続するためのピストンピンが挿入される孔を形成する突出部を有するピストンスカート部と、
前記クーリングチャンネルと接続されており、前記クーリングチャンネルから流入した前記オイルを前記第1摺動面に供給するための第1流路と、
前記クーリングチャンネルと接続されており、前記クーリングチャンネルから流入した前記オイルを前記第2摺動面に供給するための第2流路と、
を有し、
前記ピストンスカート部は、前記第1摺動面に前記第1流路を流れた前記オイルが流出する第1開口と、前記第2摺動面に前記第2流路を流れた前記オイルが流出する第2開口と、を有し、
前記第1開口及び前記第2開口は、前記孔の中心よりも上方に設けられており、
前記クーリングチャンネルは、
前記クーリングチャンネルにおける前記第1流路が前記クーリングチャンネルに接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している第1領域と、
前記クーリングチャンネルにおける前記第2流路が前記クーリングチャンネルに接続されている位置に向かうにつれて、下面が下方に向かって傾斜している第2領域と、
を有するピストン。
【請求項2】
前記第1開口は、前記ピストンの周方向において、前記第1摺動面のスラスト方向を中心として前記周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の第1範囲内に設けられており、
前記第2開口は、前記周方向において、前記第2摺動面の反スラスト方向を中心として前記周方向の両側に向かって中心角が30°となる角度の第2範囲内に設けられている、
請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記ピストンヘッドの下面に設けられており、前記オイルが前記クーリングチャンネルに流入する流入部と、
前記ピストンヘッドの下面に設けられており、前記クーリングチャンネルを流れた前記オイルが流出する流出部と、
をさらに有し、
前記周方向において、前記流入部及び前記流出部は、前記第1開口が設けられた前記第1範囲及び前記第2開口が設けられた前記第2範囲の外側に設けられている、
請求項2に記載のピストン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のピストンと、
前記ピストンを収容する前記シリンダと、
を有するエンジン。