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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176348
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20241212BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20241212BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241212BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B23K9/04 Y
B23K9/095 510D
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094823
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山縣 侑加
(57)【要約】
【課題】溶接トーチと積層物との距離を安定化させることが可能な積層造形装置を提供する。
【解決手段】溶接トーチを所定の移送機構を用いて移動させながら溶接ビードを積層することにより積層物を造形する積層造形装置であって、積層物の最上積層の位置を測定する測定器と、測定器の測定値に基づいて溶接トーチと最上積層との距離を補正して移送機構を制御する制御装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチを所定の移送機構を用いて移動させながら溶接ビードを積層することにより積層物を造形する積層造形装置であって、
前記積層物の最上積層の位置を測定する測定器と、
前記測定器の測定値に基づいて前記溶接トーチと前記最上積層との距離を補正して前記移送機構を制御する制御装置と
を備える積層造形装置。
【請求項2】
前記測定器は、前記積層物における任意の積層の複数箇所の位置を測定し、複数箇所における前記測定値に統計処理を施した値に基づいて前記距離を補正する請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記溶接トーチと前記測定器との間に光遮蔽板を備える請求項1又は2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記光遮蔽板は、前記積層物に対して進退自在である請求項3に記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記測定器に付着する溶接ヒュームを除去する溶接ヒューム除去装置をさらに備える請求項3に記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記溶接ヒューム除去装置は、前記測定器が備える投光部及び受光部に対して個別に設けられる請求項5に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接によって金属を積層することにより造形する技術(積層造形方法)として、例えば特許文献1、2に開示されたものがある。これらの積層造形方法は、溶接トーチを予め設定した積層パスに沿って移動させることにより溶融金属のビード(溶接ビード)を積み重ね、以って所定の積層物を造形(形成)するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-144446号公報
【特許文献2】特許第6797324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際に積層される溶接ビードの高さは、積層物への入熱の蓄積が要因となって徐々に低くなる傾向がある。すなわち、初層の溶接ビードの高さに対する次層の溶接ビードの高さは低くなる。この結果、積層回数の増加に伴って溶接トーチと積層物との距離が徐々に大きくなり、最終的にはさらなる積層が困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、溶接トーチと積層物との距離を安定化させることが可能な積層造形装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、積層造形装置に係る第1の解決手段として、溶接トーチを所定の移送機構を用いて移動させながら溶接ビードを積層することにより積層物を造形する積層造形装置であって、前記積層物の最上積層の位置を測定する測定器と、前記測定器の測定値に基づいて前記溶接トーチと前記最上積層との距離を補正して前記移送機構を制御する制御装置とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、積層造形装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記測定器は、前記積層物における任意の積層の複数箇所の位置を測定し、複数箇所における前記測定値に統計処理を施した値に基づいて前記距離を補正する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、積層造形装置に係る第3の解決手段として、上記第1又は第2の解決手段において、前記溶接トーチと前記測定器との間に光遮蔽板を備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、積層造形装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記光遮蔽板は、前記積層物に対して進退自在である、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、積層造形装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記測定器に付着する溶接ヒュームを除去する溶接ヒューム除去装置をさらに備える、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、積層造形装置に係る第6の解決手段として、上記第5の解決手段において、前記溶接ヒューム除去装置は、前記測定器が備える投光部及び受光部に対して個別に設けられる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接トーチと積層物との距離を安定化させることが可能な積層造形装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る積層造形装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層造形装置の要部構成を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る積層造形装置における測定点を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る積層造形装置の補正動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る積層造形装置Aは、図1に示すように、溶接トーチ1、移送機構2、プロファイル測定器3、コンプレッサ4、電磁バルブ5及び制御装置6を備える。
【0015】
溶接トーチ1は、アーク放電によって所定の溶加材(金属)を溶融させるアーク溶接用溶接トーチである。図示していないが、この溶接トーチ1は、上記溶加材を先端部(アーク放電部)に送り出す溶加材送出装置が付帯的に設けられている。溶接トーチ1は、移送機構2によって基材bの表面に沿って所定方向に順次移動するとともに、溶加材送出装置によって先端部に順次送り出される溶加材を順次溶融させて上記基材bの表面に付着させる。
【0016】
移送機構2は、制御装置6から入力される移送指令に基づいて溶接トーチ1を移動させる機械要素である。すなわち、この移送機構2は、移送指令に基づいて溶接トーチ1を基材bの表面に沿って所定方向に順次移動させる。このような移送機構2は、例えば多関節ロボット(マニピュレータ)である。移送機構2と溶接トーチ1との協働によって基材bの表面には積層物Wが造形(形成)される。
【0017】
図1に示す積層物Wは、造形(形成)途中のものであり、ベース板b上に形成された第1積層y1、第2積層y2及び第3積層y3からなる。すなわち、第1積層y1は、ベース板bの表面上に直接形成された溶接ビードである。第2積層y2は、第1積層y1上に形成された溶接ビードである。また、第3積層y3は、第2積層y2上に形成された溶接ビードであり、本発明における最上積層である。
【0018】
プロファイル測定器3は、上記積層物Wの最上積層の位置を測定する測定器である。このプロファイル測定器3は、溶接トーチ1の移動方向における後方側に溶接トーチ1に一体化された状態で設けられている。このようなプロファイル測定器3は、溶接トーチ1の移動に合わせて所定のタイムインターバルで積層物Wにおける最上積層の測定値を取得し、この測定値を制御装置6に順次出力する。
【0019】
例えば、図2に示すように溶接トーチ1の移動軌跡が円環状であり、また基材bの表面が水平面であった場合、プロファイル測定器3は、最上積層までの距離を測定する。この高さ位置は、図2に示すように、溶接トーチ1の移動方向における円環状の移動軌跡において所定間隔を空けた複数箇所を測定点とする。
【0020】
このようなプロファイル測定器3は、図1に示すように、投光部3a、受光部3b、光遮蔽板3c、第1のガス噴射孔3d及び第2のガス噴射孔3eが設けられている。投光部3aは、第3積層y3(最上積層)の表面に所定波長の測定光pを投光する発光素子である。この測定光pは、図示するように第3積層y3(最上積層)の表面で反射することにより受光部3bに入射する。
【0021】
受光部3bは、第3積層y3(最上積層)から入射する測定光p(反射光)を受光する受光素子である。すなわち、この受光部3bは、測定光p(光信号)を受光することにより受光信号(電気信号)に変換する。プロファイル測定器3は、例えば投光部3aにおける測定光pの投光タイミングに対する受光部3bにおける測定光pの受光タイミングのズレ(遅延量)に基づいて第3積層y3(最上積層)の表面位置を測定する。
【0022】
光遮蔽板3cは、図示するようにプロファイル測定器3において溶接トーチ1側に設けられている。すなわち、光遮蔽板3cは、プロファイル測定器3と溶接トーチ1との間に設けられている。この光遮蔽板3cは、溶接トーチ1の先端で発生するアーク放電に付随する光が受光部3bに外乱として入射することを遮断又は抑制する板状又はシート状の部材である。
【0023】
この光遮蔽板3cは、例えば光透過性を持たない材料から形成された比較的硬い平板または可撓性を有するシート材である。光遮蔽板3cは、図示するように先端(下端)が第3積層y3(最上積層)の表面に接触する状態又は非接触だが積層物との距離が十分に小さい状態で設けられている。また、光遮蔽板3cは、溶接トーチ1とプロファイル測定器3との対向方向に直交する方向における幅(横幅Ls)が第3積層y3(最上積層)の横幅Lbの数倍程度に設定されている。
【0024】
また、光遮蔽板3cは、遮光性の金属平板によって構成されている場合、図2に示すように第3積層y3(最上積層)の表面(上端部)に対して前進及び後退が可能にプロファイル測定器3に取り付けられている。すなわち、この光遮蔽板3cは、積層物Wに対して進退自在であり、図2に示すように第3積層y3の上に第4積層y4(最上積層)が積層された場合には、第4積層y4(最上積層)の表面(上端部)に当接する。
【0025】
このような光遮蔽板3cは、例えばバネ等の付勢部材によって第3積層y3(最上積層)の表面(上端部)に押し当られている。なお、光遮蔽板3cが最上積層の表面(上端部)と当接する部分を可撓性を有するシート材によって形成する場合、光遮蔽板3cの材質としては、例えばハイシリカ繊維(商品名)、マフテック(商品名)やアルセン(商標)等の不燃性の織物を採用することが考えられる。
【0026】
第1のガス噴射孔3dは、投光部3aの出射に向けて第1の圧縮ガスa1を噴射する開口である。第1の圧縮ガスa1は、第1のガス噴射孔3dから投光部3aに直接吹き付けられる。このような第1の圧縮ガスa1は、投光部3aに付着し得る溶接ヒュームを効果的に除去する。
【0027】
第2のガス噴射孔3eは、受光部3bの受光面に向けて第2の圧縮ガスa2を噴射する開口である。第2の圧縮ガスa2は、第2のガス噴射孔3eから受光部3bに直接吹き付けられる。このような第2の圧縮ガスa2は、受光部3bに付着し得る溶接ヒュームを効果的に除去する。
【0028】
コンプレッサ4は、このような第1、第2のガス噴射孔3d、3eに第1、第2の圧縮ガスa1、a2を供給するガス供給源である。図示するように、コンプレッサ4と第1、第2のガス噴射孔3d、3eとは、第1、第2の圧縮ガスa1、a2の流通が自在なガス配管7によって相互に接続されている。なお、第1、第2の圧縮ガスa1、a2として、例えば空気やアルゴンガスが採用される。
【0029】
コンプレッサ4から吐出された第1、第2の圧縮ガスa1、a2のうち、第1の圧縮ガスa1は上記ガス配管7を介して第1のガス噴射孔3dに供給され、第2の圧縮ガスa2は上記ガス配管7を介して第2のガス噴射孔3eに供給される。なお、このコンプレッサ4の作動は、制御装置6によって制御されている。
【0030】
電磁バルブ5は、上記ガス配管7に設けられ、第1、第2の圧縮ガスa1、a2の第1、第2のガス噴射孔3d、3eへの供給/遮断を設定する開閉装置である。すなわち、この電磁バルブ5は、制御装置6から入力される開閉信号に基づいて、第1、第2の圧縮ガスa1、a2の第1、第2のガス噴射孔3d、3eへの供給/遮断を設定する。
【0031】
ここで、この電磁バルブ5に加え、第1、第2のガス噴射孔3d、3e、コンプレッサ4及びガス配管7は、本発明の溶接ヒューム除去装置を構成している。すなわち、第1、第2のガス噴射孔3d、3e、コンプレッサ4、電磁バルブ5及びガス配管7は、プロファイル測定器3(測定器)に付着する溶接ヒュームを除去する機能を有するとともに、プロファイル測定器3(測定器)が備える投光部3a及び受光部3bに対して個別に設けられている。
【0032】
制御装置6は、積層造形装置Aを統一的に制御するソフトウエア制御装置である。すなわち、この制御装置6は、予め記憶する制御プログラムに基づいて溶接トーチ1、移送機構2、プロファイル測定器3、コンプレッサ4及び電磁バルブ5を統一的に制御することにより、基材b上に積層物Wを造形(形成)させる。
【0033】
次に、本実施形態に係る積層造形装置Aの動作について、図3及び図4を参照して詳しく説明する。
【0034】
例えば、図3に示すように溶接トーチ1の移動軌跡が円環状である場合、つまり基材bの表面に円環状の溶接ビードを積み上げることによって積層物Wを造形(形成)する場合、溶接トーチ1及びプロファイル測定器3は、基材bの表面上において円環状移動ルートRを移動する。
【0035】
すなわち、溶接トーチ1及びプロファイル測定器3は、移送機構2と制御装置6との協働によって、予め設定された積層開始点から積層方向に円環状移動ルートRに沿って順次移動する。一体化された溶接トーチ1及びプロファイル測定器3のうち、溶接トーチ1が先行して移動し、またプロファイル測定器3が溶接トーチ1の後側に位置して溶接トーチ1とともに移動する。
【0036】
そして、溶接トーチ1及びプロファイル測定器3が円環状移動ルートRに沿って1周する間に、溶接トーチ1が作動することにより基材bの表面上に円環状の第1積層y1が形成される。また、溶接トーチ1が作動を開始すると、第1、第2のガス噴射孔3d、3eから第1、第2の圧縮ガスa1、a2が第1積層y1に向けて噴射される。
【0037】
さらに、プロファイル測定器3は、円環状移動ルートRに沿って1周する間に、第1積層y1(最上積層)の上面位置を測定点毎に順次測定し、複数の測定値を制御装置6に出力する。制御装置6は、プロファイル測定器3から取得した複数の測定値に所定の統計処理を施すことにより、円環状移動ルートRの1周に亘る平均値を算出する。
【0038】
そして、制御装置6は、第1積層y1上に第2積層y2を形成する際の計画位置として予め設定された溶接トーチ1の高さ位置(例えば基材bの表面を基準とする溶接トーチ1の高さ位置)を上記平均値を用いて補正して移送機構2を制御する。この結果、第2積層y2を形成する際の溶接トーチ1の高さ位置は、第1積層y1の実際の高さに対応したものになる。
【0039】
例えば、図4(a)に示すように、予め計画された溶接トーチ1の高さ位置Lrは、予め計画された理想積層yrの高さ(理想高さHr)に対して設定されている。これに対して、図4(b)に示すように、実際に基材b上に形成された第1積層y1の高さH1が理想高さHrからΔrだけ高かった場合、つまり上記平均値が(Hr+Δr)として計算された場合、溶接トーチ1の高さ位置L1は、この平均値(Hr+Δr)に基づいて(Lr+Δr)に補正される。
【0040】
一方、実際に基材b上に形成された第1積層y1の高さH1が理想高さHrからΔrだけ低かった場合、つまり上記平均値が(Hr-Δr)として計算された場合、溶接トーチ1の高さ位置L1は、この平均値(Hr-Δr)に基づいて(Lr-Δr)に補正される。すなわち、溶接トーチ1の高さ位置L1は、実際に基材bの表面に形成された第1積層y1の高さH1に対して最適化される。
【0041】
ここで、上記統計処理について追加説明する。プロファイル測定器3は、円環状移動ルートRに沿って1周する間に複数の測定点について測定値を取得する。制御装置6は、このような複数の測定値のうち、他の測定値に対して極端に乖離している測定値を平均値を算出するための測定値から除外する。
【0042】
例えば、図3において、白丸は平均値を算出するための測定値から除外された測定値を示し、また黒丸は平均値を算出するための測定値を示している。この例では、プロファイル測定器3が円環状移動ルートRの1周に亘って取得した複数の測定点のうち、最終的に5つの測定値によって平均値が算出される。
【0043】
溶接トーチ1が作動を開始すると、溶接トーチ1の先端と基材bとの間にアーク放電が発生する。すなわち、基材b上への第1積層y1の形成では、アーク放電に起因する光(アーク光)が常時発生する。
【0044】
しかしながら、プロファイル測定器3の溶接トーチ1側には光遮蔽板3cが設けられているので、アーク光がプロファイル測定器3の受光部3bに入射することを防止又は抑制することができる。したがって、溶接トーチ1で発生するアーク光がプロファイル測定器3における測定の外乱として作用することを回避することが可能である。
【0045】
また、溶接トーチ1が作動を開始すると、溶接トーチ1の先端と基材bとの間に溶接ヒュームが発生する。この溶接ヒュームは、光遮蔽板3cを迂回してプロファイル測定器3側に侵入し、投光部3a及び受光部3bに付着し得る。
【0046】
しかしながら、溶接トーチ1が作動すると、第1、第2のガス噴射孔3d、3eから第1、第2の圧縮ガスa1、a2が投光部3a及び受光部3bに向けて噴射されるので、投光部3a及び受光部3bに付着した溶接ヒュームは、第1、第2の圧縮ガスa1、a2によって効果的に除去される。
【0047】
このような本実施形態によれば、溶接トーチ1を所定の移送機構2を用いて移動させながら第1~第3積層y1~y3(溶接ビード)を積層することにより積層物Wを造形する積層造形装置Aであって、積層物Wの最上積層の位置を測定するプロファイル測定器3(測定器)と、プロファイル測定器3(測定器)の測定値に基づいて溶接トーチ1と最上積層との距離を補正して移送機構2を制御する制御装置とを備えるので、溶接トーチ1と積層物Wとの距離を安定化させることが可能である。
【0048】
また、本実施形態によれば、プロファイル測定器3(測定器)は、積層物Wにおける任意の積層の複数箇所の位置を測定し、複数箇所における測定値に統計処理を施した値に基づいて溶接トーチ1と最上積層との距離を補正するので、溶接トーチ1と積層物Wとの距離をより安定化させることが可能である。
【0049】
また、本実施形態によれば、溶接トーチ1とプロファイル測定器3(測定器)との間に光遮蔽板3cを備えるので、溶接トーチ1のアーク光がプロファイル測定器3に外乱として作用することを回避することが可能であり、以ってプロファイル測定器3の測定値の信頼性を向上させることが可能である。
【0050】
また、本実施形態によれば、光遮蔽板3cは、積層物Wに対して進退自在なので、積層物Wの総数が変化しても溶接トーチ1のアーク光がプロファイル測定器3に外乱として作用することを回避することが可能であり、以ってプロファイル測定器3(測定器)の測定値の信頼性を向上させることが可能である。
【0051】
また、本実施形態によれば、プロファイル測定器3(測定器)に付着する溶接ヒュームを除去する溶接ヒューム除去装置をさらに備えるので、溶接ヒュームに起因するプロファイル測定器3(測定器)の測定精度の低下を防止又は抑制することが可能である。したがって、これによってもプロファイル測定器3(測定器)の測定値の信頼性を向上させることが可能である。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、溶接ヒューム除去装置は、プロファイル測定器3(測定器)が備える投光部3a及び受光部3bに対して個別に設けられるので、投光部3aにおける測定光pの積層物Wへの投光を安定化することが可能であるとともに、受光部3bにおける測定光p(反射光)の受光を安定化することが可能である。したがって、これによってもプロファイル測定器3(測定器)の測定値の信頼性を向上させることが可能である。
【0053】
なお、上記実施形態では、溶接ヒューム除去装置を投光部3a及び受光部3bに対して個別に設けたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、必要に応じて投光部3a及び受光部3bのいずれか一方に設けてもよい。例えば溶接トーチ1により近い投光部3aに対してのみ溶接ヒューム除去装置を設けることが考えられる。
【0054】
また、上記実施形態では、プロファイル測定器3(測定器)の一面を遮蔽するように光遮蔽板3cを設けたが、本発明はこれに限定されない。アーク放電に起因するアーク光は、ベース板b等の周囲の部材に反射すことにより、あらゆる方向から受光部3bに入射して来ることがあり得るので、プロファイル測定器3(測定器)の一面だけではなく、プロファイル測定器3(測定器)の複数面を遮蔽するように光遮蔽板3cを設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
A 積層造形装置
W 積層物
a1、a2 圧縮ガス
b ベース板
p 測定光
y1 第1積層(溶接ビーム)
y2 第2積層(溶接ビーム)
y3 第3積層(溶接ビーム)
y4 第4積層(溶接ビーム)
1 溶接トーチ
2 移送機構
3 プロファイル測定器(測定器)
3a 投光部
3b 受光部
3c 光遮蔽板
3d 第1のガス噴射孔(溶接ヒューム除去装置)
3e 第2のガス噴射孔(溶接ヒューム除去装置)
4 コンプレッサ(溶接ヒューム除去装置)
5 電磁バルブ(溶接ヒューム除去装置)
6 制御装置
7 ガス配管(溶接ヒューム除去装置)
図1
図2
図3
図4