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特開2024-176355ゲート駆動回路、電力変換装置、及びゲート駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176355
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路、電力変換装置、及びゲート駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094835
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 梦羽
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740MM01
5H740MM12
5H740MM18
(57)【要約】
【課題】各半導体スイッチング素子のオン、オフタイミングのずれを防止することができるゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】ゲート駆動回路は、並列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子11,12のスイッチング動作を制御するための主ゲート信号の入力部20と、主ゲート信号に基づいて、第1及び第2の半導体スイッチング素子11,1を駆動させる駆動部31,32と、第1の半導体スイッチング素子11の第1のソース抵抗51、第2の半導体スイッチング素子12の第2のソース抵抗52と、第1のソース抵抗51の両端電圧を検出する第1の電圧センサ41、第2のソース抵抗52の両端電圧を検出する第2の電圧センサ42と、第1及び第2の電圧センサ41,42によるそれぞれの検出結果に基づいて、第1及び第2の半導体スイッチング素子11、12のスイッチング動作のタイミングを補正する補正部21,22とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子を同時に導通状態/非導通状態にするスイッチング動作を制御するための主ゲート信号を入力する入力部と、
前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子、ソース端子に接続され、前記主ゲート信号に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子に印加するゲート電圧を変化させる駆動部と、
前記第1の半導体スイッチング素子のソース端子と前記駆動部との間に直列接続される第1のソース抵抗、及び前記第2の半導体スイッチング素子のソース端子と前記駆動部との間に直列接続される第2のソース抵抗と、
前記第1のソース抵抗の両端電圧を検出する第1の電圧センサ、前記第2のソース抵抗の両端電圧を検出する第2の電圧センサと、
前記第1及び第2の電圧センサによるそれぞれの検出結果に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのスイッチング動作のタイミングを補正する補正部と
を備えるゲート駆動回路。
【請求項2】
前記補正部は、
前記第1の半導体スイッチング素子のゲート端子に接続され、前記第1の電圧センサによる検出結果に基づいて、前記第1の半導体スイッチング素子のスイッチング動作のタイミングを補正する第1のゲート信号補正部と、
前記第2の半導体スイッチング素子のゲート端子に接続され、前記第2の電圧センサによる検出結果に基づいて、前記第2の半導体スイッチング素子のスイッチング動作のタイミングを補正する第2のゲート信号補正部と
を備える、請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記駆動部は、前記主ゲート信号に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子に印加するゲート電圧を変化させるためのゲート駆動信号を生成し、
前記補正部は、前記第1及び第2の電圧センサによるそれぞれの検出結果に基づいて、前記駆動部から出力される前記ゲート駆動信号を前記ゲート端子に出力するタイミングを補正する
請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
前記駆動部は、
前記第1の半導体スイッチング素子のゲート端子、ソース端子に接続され、前記主ゲート信号に基づいて、前記第1の半導体スイッチング素子のゲート端子に印加するゲート電圧を変化させるためのゲート駆動信号を生成する第1の素子用駆動部と、
前記第2の半導体スイッチング素子のゲート端子、ソース端子に接続され、前記主ゲート信号に基づいて、前記第2の半導体スイッチング素子のゲート端子に印加するゲート電圧を変化させるためのゲート駆動信号を生成する第2の素子用駆動部と、を備え、
前記第1の素子用駆動部と前記第1のソース抵抗との接続点と、前記第2の素子用駆動部と前記第2のソース抵抗との接続点との接続点は接続され、
前記補正部は、
前記第1及び第2の電圧センサによるそれぞれの検出結果に基づいて、前記主ゲート信号を前記第1及び第2の素子用駆動部に出力するタイミングを補正する
請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
前記第1のソース抵抗の抵抗値は、前記駆動部の駆動に必要な抵抗値より小さく、
前記第2のソース抵抗の抵抗値は、前記駆動部の駆動に必要な抵抗値より小さい、請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項6】
前記第1のソース抵抗の抵抗値は、前記第1の半導体スイッチング素子のゲート端子にゲート抵抗が直列接続されるとき、前記ゲート抵抗の抵抗値より小さく、
前記第1のソース抵抗の抵抗値は、前記第1の半導体スイッチング素子のゲート端子にゲート抵抗が直列接続されるとき、前記ゲート抵抗の抵抗値より小さい
請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項7】
前記補正部は、前記第1及び第2の電圧センサのいずれか1つの電圧検出値と予め決められた電流バランス制御用閾値電圧とを比較し、電圧検出値が前記電流バランス制御用閾値電圧より大きい場合に、該当する半導体スイッチング素子と他の半導体スイッチング素子の主回路端子に流れた電流がアンバランスと判断し、該当する半導体スイッチング素子のスイッチング動作のタイミングを補正する、請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項8】
前記補正部は、前記第1及び第2の電圧センサのいずれか1つの電圧検出値と予め決められた短絡検出用閾値電圧とを比較し、電圧検出値が前記短絡検出用閾値電圧より大きい場合に、該当する半導体スイッチング素子に短絡電流が流れたと判断し、短絡検出信号を出力する、請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項9】
前記短絡検出用閾値電圧は、電流バランス制御用閾値電圧より大きい、請求項8に記載のゲート駆動回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のゲート駆動回路を搭載する電力変換装置。
【請求項11】
並列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子を同時に導通状態/非導通状態にするスイッチング動作を制御するための主ゲート信号を入力する工程と、
記憶した出力タイミングで前記主ゲート信号を補正する工程と、
補正した前記主ゲート信号に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子に印加するゲート電圧を変化させる工程と、
前記第1の半導体スイッチング素子のソース端子に直列接続されるソース抵抗の両端電圧を検出し、前記第2の半導体スイッチング素子のソース端子に直列接続されるソース抵抗の両端電圧を検出する工程と、
ソース抵抗の両端電圧が閾値を超えるか否かを判断する工程と、
前記閾値を超えない場合に、前記記憶した出力タイミングを更新しない工程と、
前記ソース抵抗の両端電圧が閾値を超える場合に、前記記憶した出力タイミングを更新する工程と、
を具備するゲート駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動回路、ゲート駆動回路を搭載する電力変換装置、及びゲート駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や鉄道用の電力変換装置では、MOSFET(Metal Oxide S emiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電圧駆動型パワー半導体素子がよく使われている。電力変換装置の電力容量を拡大し、適用範囲を広げるために、複数の半導体スイッチング素子を並列接続した電力変換装置の適用が従来から検討されている。
【0003】
このような電力変換装置においては、並列接続された半導体スイッチング素子に流れる電流を均等化するために、半導体スイッチング素子間の配線インダクタンスを調整することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-17655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配線インダクタンスを調整しても、各半導体スイッチング素子のオン、オフタイミングにずれが生じた場合に、ずれが生じた半導体スイッチング素子に過大な電流が流れ、半導体スイッチング素子が破損する恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、並列接続された各半導体スイッチング素子のオン、オフタイミングのずれを防止することができるゲート駆動回路、電力変換装置、及びゲート駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によるゲート駆動回路は、並列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子を同時に導通状態/非導通状態にするスイッチング動作を制御するための主ゲート信号を入力する入力部と、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子、ソース端子に接続され、前記主ゲート信号に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子に印加するゲート電圧を変化させる駆動部と、前記第1の半導体スイッチング素子のソース端子と前記駆動部との間に直列接続される第1のソース抵抗、及び前記第2の半導体スイッチング素子のソース端子と前記駆動部との間に直列接続される第2のソース抵抗と、前記第1のソース抵抗の両端電圧を検出する第1の電圧センサ、前記第2のソース抵抗の両端電圧を検出する第2の電圧センサと、前記第1及び第2の電圧センサによるそれぞれの検出結果に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのスイッチング動作のタイミングを補正する補正部とを備える。
【0008】
また、本発明の一態様による電力変換装置は、請求項1から9のいずれか1項に記載のゲート駆動回路を搭載する。
【0009】
さらに、本発明の一態様によるゲート駆動方法は、並列接続された第1及び第2の半導体スイッチング素子を同時に導通状態/非導通状態にするスイッチング動作を制御するための主ゲート信号を入力する工程と、記憶した出力タイミングで前記主ゲート信号を補正する工程と、補正した前記主ゲート信号に基づいて、前記第1及び第2の半導体スイッチング素子それぞれのゲート端子に印加するゲート電圧を変化させる工程と、前記第1の半導体スイッチング素子のソース端子に直列接続されるソース抵抗の両端電圧を検出し、前記第2の半導体スイッチング素子のソース端子に直列接続されるソース抵抗の両端電圧を検出する工程と、ソース抵抗の両端電圧が閾値を超えるか否かを判断する工程と、前記閾値を超えない場合に、前記記憶した出力タイミングを更新しない工程と、
前記ソース抵抗の両端電圧が閾値を超える場合に、前記記憶した出力タイミングを更新する工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、並列接続された各半導体スイッチング素子のオン、オフタイミングのずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態において、並列接続されたMOSFET素子とゲート駆動回路の概略構成図である。
図2】並列接続されたMOSFET素子の主回路配線インダクタンスを含めた等価回路図である。
図3】単体のMOSFET素子のゲートソース間寄生容量、ゲート端子、補助ソース端子の配線インダクタンスを含めた等価回路図である。
図4】配線インダクタンスにバラつきがある時、補助ソース端子に流れる電流波形の比較図を示している。
図5】各MOSFET素子に流れるメイン電流がアンバランスしている時、ターンオン時とターンオフ時に補助ソース端子に流れる電流の電流波形を示している。
図6】本発明の第1の実施形態において、ソース抵抗の両端電圧とマスター・ゲート信号を用いて、MOSFET素子のゲート信号の立ち上がり、立下り時間を補正するゲート信号補正回路の内部構成を示している。
図7】本発明の第2の実施形態において、並列接続されたMOSFET素子とゲート駆動回路の概略構成図である。
図8】本発明の第3の実施形態において、並列接続されたMOSFET素子とゲート駆動回路の概略構成図である。
図9】本発明の第4の実施形態におけるゲート駆動回路の制御処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、実施形態では、MOSFET(金属-酸化物-半導体)素子を3つ並列接続するスイッチング回路を例に説明するが、複数のパワー半導体素子を並列接続する回路構成であれば適用することができる。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態において、並列接続されたMOSFET素子11,12,13とゲート駆動回路1Aの概略構成図を示す。MOSFET素子11,12,13は、それぞれメイン電流を流すドレイン端子111,121,131、ソース端子112,122,132、ゲート駆動回路1Aと接続するゲート端子113,123,132、ゲート駆動回路1Aと接続する補助ソース端子114,124,134を有するものとする。ゲート駆動回路1Aの駆動対象は、MOSFET素子に限らず、半導体スイッチング素子として例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)であってもよい。
【0015】
ゲート駆動回路1Aは、MOSFET素子11,12,13を同時に導通状態(オン状態)/非導通状態(オフ状態)にするスイッチング動作を制御するためのマスター・ゲート信号(主ゲート信号の一例)、具体的にはスイッチング回路全体制御のためのマスター・ゲート信号を入力するためのマスター・ゲート信号入力部(入力部の一例)20と、MOSFET素子11,12,13間の電流バランスを制御するゲート信号補正回路(第1及び第2のゲート信号補正部の一例)21,22,23と、各MOSFET素子11,12,13のゲート-ソース間電圧を制御する駆動回路(第1及び第2の素子用駆動部の一例)31,32,33から構成される。
【0016】
また、ゲート駆動回路1Aは、MOSFET素子11,12,13の補助ソース端子114,124,134に直列接続したソース抵抗51,52,53と、ソース抵抗51,52,53の両端電圧を検出する電圧センサ41,42,43とを備える。具体的に、駆動回路31,32,33は、マスター・ゲート信号入力部20からゲート信号補正回路21,22,23を経由して送られるマスター・ゲート信号に基づいて、MOSFET素子11,12,13のゲート端子113,123,133に印加するゲート電圧を変化させるためのゲート駆動信号を生成する。
【0017】
電圧センサ41,42,43は、ソース抵抗51,52,53の両端電圧を検出し、得た電圧情報をゲート信号補正回路21,22,23に入力する。ゲート信号補正回路21,22,23ではマスター・ゲート信号入力部20に入力されたマスター・ゲート信号と電圧情報を用いて、各MOSFET素子11,12,13のターンオン、ターンオフのタイミングを補正し、メイン電流をバランスさせる。補正後のマスター・ゲート信号は、各MOSFET素子11,12,13の駆動回路31,32,33に入力される。
【0018】
各MOSFET素子11,12,13には、逆並列に接続された還流ダイオード61,62,63が接続されている。具体的には、MOSFET素子11,12,13のドレイン端子111,121,131は、還流ダイオード61,62,63に設けられたカソード端子に接続されている。MOSFET素子11,12,13のソース端子112,122,132は、還流ダイオード61,62,63に設けられたアノード端子に接続されている。
なお、還流ダイオード61,62,63は、各MOSFET素子11,12,13のボディーダイオードに置き換えてもよい。
【0019】
MOSFET素子11,12,13のドレイン端子111,121,131及び還流ダイオード61,62,63のカソード端子は、高電位が供給される高電位供給端子Thpに接続されている。例えば、MOSFET素子11,12,13がインバータ回路(電力変換装置の一例)の上アーム用の半導体スイッチング素子に適用される場合、高電位供給端子Thpは、正極側の直流電源が供給される端子又は当該直流電源が供給される正極側ラインと接続される接続部となる。また、MOSFET素子11,12,13がインバータ回路(電力変換装置の一例)の下アーム用の半導体スイッチング素子に適用される場合、高電位供給端子Thpは交流出力端子となる。
【0020】
MOSFET素子11,12,13のソース端子112,122,132及び還流ダイオード61,62,63のアノード端子は、低電位が供給される低電位供給端子Tlpに接続されている。例えば、MOSFET素子11,12,13がインバータ回路(電力変換装置の一例)の上アーム用の半導体スイッチング素子に適用される場合、低電位供給端子Tlpは交流出力端子となる。また、MOSFET素子11,12,13がインバータ回路(電力変換装置の一例)の下アーム用の半導体スイッチング素子に適用される場合、低電位供給端子Tlpは、グランド端子もしくは負極側の直流電源が供給される端子又は当該直流電源が供給される負極側ラインと接続される接続部となる。
【0021】
図2は、並列接続されたMOSFET素子11,12,13の主回路配線インダクタンスを含めた等価回路図を示す。各MOSFET素子11,12,13のソース端子112,122,132に配線インダクタンスLs1,Ls2,Ls3を有するものとする。スイッチング動作時は、MOSFET素子11,12,13に流れるメイン電流id1,id2,id3のdi/dtが大きくなり、配線インダクタンスに電圧Vs1,Vs2,Vs3が発生する。例えば、配線インダクタンスLs1,Ls2,Ls3または、メイン電流id1,id2,id3のdi/dt及びその双方が不一致でありVs1がVs2,Vs3より大きい場合、MOSFET素子11の補助ソース端子114とMOSFET素子12,13の補助ソース端子124,134の間に電圧差が発生し、共通接続部を経由して、補助ソース端子114,124,134間に電流is1,is2,is3が流れる。
すなわち、各MOSFET素子11,12,13の配線インダクタンスLs1,Ls2,Ls3またはメイン電流id1,id2,id3のdi/dt及びその双方が、不一致である場合、配線インダクタンスの電圧Vs1,Vs2,Vs3が発生し、その電圧差により、共通接続部を経由して、補助ソース端子114,124,134間に電流is1,is2,is3が流れる。
【0022】
図3は、例えば、単体のMOSFET素子11のゲートソース間寄生容量Cgs、ゲート端子113、補助ソース端子114の配線インダクタンスを含めた等価回路図を示す。
【0023】
また、ゲート端子113と補助ソース端子114は、駆動回路31内のバイパスコンデンサCbpと接続するものとする。スイッチング動作時に、補助ソース端子114に流れる電流isにより、バイパスコンデンサCbpと配線インダクタンス、ゲート抵抗Rg、ソース抵抗Rs、寄生容量Cgsから構成するLCRループでリンギングを起こす可能性がある。リンギングにより、ゲート電圧のオーバーシュート又はアンダーシュートが発生し、誤ターンオンによる上下アーム短絡、またはゲート端子113の耐圧超過による素子破壊を起こす恐れがあるため、補助ソース端子114に流れる電流を抑制すべきである。
【0024】
図4は、配線インダクタンスLs1,Ls2,Ls3にバラつきがある時、補助ソース端子114,124に流れる電流波形is1,is2の比較図を示している。図4(a)は、補助ソース端子114,124,134にソース抵抗51,52,53を挿入する場合の電流波形is1,is2の比較図を示している。図4(b)は、補助ソース端子114,124,134にソース抵抗51,52,53を挿入しない場合の電流波形is1,is2の比較図を示している。
【0025】
図4(a),(b)において、縦軸は電流、電圧の振幅値を示し、横軸は時間を示している。また、図4(a),(b)において、(1)は高電位供給端子ThpからMOSFET素子11のドレイン端子111に流れるメイン電流id1の電流波形を示し、(2)は配線インダクタンスLs1,Ls2にかかる電圧Vs1,Vs2の差分を示し、(3)は補助ソース端子114に流れる電流is1の電流波形を示し、(4)は補助ソース端子124に流れる電流is2の電流波形を示す。また、各MOSFET素子11,12,13に流れるメイン電流id1、id2、id3がバランスを取っている前提で比較している。
【0026】
補助ソース端子114,124にソース抵抗51,52を挿入しない場合、Vs1とVs2間の僅か20uV程度の電圧差により(図4(a)(2))、補助ソース端子114に10A程度の電流is1が流れる(図4(a)(3))。それに対して、各MOSFET素子11,12,13の補助ソース端子114,124,134に0.1Ωのソース抵抗51,52,53を挿入する場合、補助ソース端子114,124に電流is1,is2がほぼ流れないことを波形から確認できる(図4(b)(3)(4))。したがって、補助ソース端子114,124,134にソース抵抗51,52,53を挿入し、インピータンスを高くすることにより、配線インダクタンスのバラつきに起因する電流を抑制できる。
【0027】
図5は、各MOSFET素子11,12,13に流れるメイン電流id1、id2、id3がアンバランスしている時、ターンオン時とターンオフ時に補助ソース端子114,134に流れる電流is1、is3の電流波形を示している。図5(a)はターンオン時の電流is1、is3の波形を示し、図5(b)はターンオフ時の電流波形is1、is3を示している。
【0028】
図5(a),(b)において、縦軸は電流、電圧の振幅値を示し、横軸は時間を示している。また、図5(a),(b)において、(1)は高電位供給端子ThpからMOSFET素子11のドレイン端子111に流れるメイン電流id1,id2,id3の電流波形を示し、(2)は配線インダクタンスLs1,Ls3にかかる電圧Vs1とVs3の差分を示し、(3)は補助ソース端子114に流れる電流is1の電流波形を示し、(4)は補助ソース端子134に流れる電流is3の電流波形を示す。
【0029】
この場合は、各MOSFET素子11,12,13の補助ソース端子114,124,134に0.1Ωのソース抵抗51,52,53を挿入し、配線インダクタンスのバラつきに起因する電流分が抑制されているものとする。MOSFET素子13のメイン電流id3の立ち上がりがMOSFET素子11,12のメイン電流id1,id2より遅い場合(図5(a)(1))、MOSFET素子13の補助ソース端子134とMOSFET素子11,12の補助ソース端子114,124の間に数V程度の電圧差が発生し(図5(a)(2))、MOSFET素子13の補助ソース端子134に他素子からの瞬間的に電流が流れる(図5(a)(4))。同様に、ターンオフ時のメイン電流id3の立下りがメイン電流id1,id2より遅い場合(図5(b)(1))、MOSFET素子13の補助ソース端子134から他素子へ電流が流れる(図5(b)(4))。
【0030】
メイン電流id1,id2,id3のアンバランスに起因する補助ソース端子114,124,134の電圧差は、配線インダクタンスのバラつきに起因する電圧差より遥かに大きいため、補助ソース端子114,124,134と駆動回路31,32,33との間に挿入したソース抵抗51,52,53で補助ソース端子114,124,134に流れる電流is1、is2、is3を抑制することが極めて困難である。
【0031】
ただし、各MOSFET素子11,12,13のスイッチングタイミングを調整し、メイン電流id1,id2,id3をバランスさせることによって、電流is1、is2、is3を抑制することができる。本発明の第1の実施形態では、各MOSFET素子11,12,13の補助ソース端子114,124,134に流れる電流is1、is2、is3の大きさを、補助ソース端子114,124,134に直列接続するソース抵抗51,52,53の両端電圧Vrs1,Vrs2,Vrs3から検出し、その電圧情報に基づいて、各MOSFET素子11,12,13のスイッチングのタイミングを補正する。
【0032】
図6は、本発明の第1の実施形態において、ソース抵抗51の両端電圧Vrs1とマスター・ゲート信号を用いて、MOSFET素子11のゲート信号の立ち上がり、立下り時間を補正するゲート信号補正回路21の内部構成を示す。なお、MOSFET素子12,13のゲート信号補正回路22,23は、MOSFET素子11のゲート信号補正回路21と同じ構成を有している。
【0033】
ゲート信号補正回路21は、ターンオン時間補正部分とターンオフ時間補正部分を有し、コンパレータ回路211,215、Dラッチ回路212,216、カウンタ回路213,214,217,218、論理積回路219、論理和回路220,221から構成される。
【0034】
ターンオン時間補正部分では、補助ソース端子114に正方向の電流が流れる。すると、電圧センサ41から出力される電圧情報がコンパレータ回路211の一方の入力端に入力される。コンパレータ回路211の他方の入力端には、電流バランス制御用ターンオン閾値電圧Vref_onが入力される。コンパレータ回路211は、電圧センサ41から出力される電圧情報と電流バランス制御用ターンオン閾値電圧Vref_onとを比較し、ソース抵抗51の両端電圧Vrs1が電流バランス制御用ターンオン閾値電圧Vref_onを超える場合、Dラッチ回路212にH信号を出力する。
【0035】
Dラッチ回路212は、コンパレータ回路211からH信号を入力すると、CLK信号がHに変わり、出力QからH信号を出力する。カウンタ回路213は、CLK入力端にH信号を受けて、出力信号を1加算し、遅れ数をカウントし補正量を記憶する。カウンタ回路214は、次回のマスター・ゲートの立ち上げ信号をLoad信号として扱い、立ち上げ信号を受けてから入力の遅れ数(補正量)を減算し、遅れ数が0までにL信号を出力する。L信号の出力時間幅は補正する時間に相当し、遅れ数×時間補正用クロック信号周期となる。最後に、論理積回路219は、次回のマスター・ゲート信号とターンオン遅れ信号との論理積を演算することにより、ターンオン信号を補正する。
【0036】
ターンオフ時間補正部分では、MOSFET素子11のメイン電流id1が他素子より小さい場合、補助ソース端子114に逆方向の電流が流れる。すると、電圧センサ41から出力される電圧情報がコンパレータ回路215の一方の入力端に入力される。コンパレータ回路215の他方の入力端には、電流バランス制御用ターンオフ閾値電圧Vref_offが入力される。コンパレータ回路215は、電圧センサ41から出力される電圧情報と電流バランス制御用ターンオフ閾値電圧Vref_offとを比較し、ソース抵抗51の両端電圧Vrs1の逆方向電圧が電流バランス制御用ターンオフ閾値電圧Vref_offを超える場合、Dラッチ回路216にH信号を出力する。
【0037】
Dラッチ回路216は、コンパレータ回路215からH信号を入力すると、CLK信号がHに変わり、出力QからH信号を出力する。同様に、カウンタ回路217は、CLK入力端にH信号を受けて、出力信号を1加算し、遅れ数をカウントし補正量を記憶する。カウンタ回路218は、次回のマスター・ゲートの立ち下げ信号をLoad信号として扱い、立ち下げ信号を受けてから入力の遅れ数(補正量)を減算し、遅れ数が0までにH信号を出力する。論理和回路220は、ターンオン補正済み信号と次回のターンオフ遅れ信号との論理積を演算することにより、ターンオフ信号を補正する。
【0038】
ターンオン補正済み信号とターンオフ補正済み信号はそれぞれ、MOSFET素子11のゲート信号として選択的に出力される。また、論理和回路221は、ターンオン補正済み信号とターンオフ遅れ信号との論理和を演算することによりターンオン/オフの両方を補正する信号を作成し、ゲート信号として出力できる。
【0039】
Dラッチ回路212及びDラッチ回路216は、それぞれマスター・ゲート信号の立ち下げ、立ち上げ信号でリセットし、1つの制御周期にH信号を1回しか出力しない。これにより、制御周期ごとに1クロック信号周期分の遅れ時間を加算し、各素子のスイッチングタイミングを少しずつ調整できる。また、補助ソース端子114に流れる電流が閾値以下になると、カウンタ回路213とカウンタ回路217でカウントしている遅れ数がホールドされ、電流バランス状態を保持する。また、遅れ信号の時間長には上限を設け、デッドタイム時間幅の短縮による上下アーム短絡を防ぐ。また、カウンタ回路213とカウンタ回路217にはDown入力を設け、遅れ信号の時間幅の短縮も実現できる。
【0040】
図6には、アーム短絡検出用回路231と短絡検出用閾値電圧Vref_stを別に設ける。電圧Vrs1が短絡検出用閾値電圧Vref_stを超える時は短絡検出信号を出力する。短絡検出用閾値電圧Vref_stは電流バランス制御用閾値電圧Vref_on、Vref_offより大きいものとする。つまり、ゲート信号補正回路21は、アーム短絡検出用回路231で電圧Vrs1と閾値電圧Vref_stとを比較し、電圧Vrs1が閾値電圧Vref_stを超えるときに、アーム短絡等により補助ソース端子に大電流が流れると判断して、警報として短絡検出信号を出力すれば、素早く管理者に通知することができる。
【0041】
以上、第1の実施形態について説明したが、これに限定されない。例えば、外乱による電圧センサの誤検出を防ぐために、コンパレータ回路211,215の前に平均値算出器を追加し、数制御周期分の電圧検出値の平均値を算出し、電流バランス制御用閾値電圧と比較する。もしくは、カウンタ回路213,217が一定時間の連続のH信号を受けてから、遅れ数を1カウントする。他に、スイッチングのタイミングを調整する手法として、補助ソース端子114,124,134に接続するソース抵抗51,52,53をゲート抵抗の一部と見なし、ゲート信号補正回路21,22,23で生成した遅れ数に応じて上記ソース抵抗51,52,53の抵抗値を変更し、スイッチング速度を調整する方法が挙げられる。また、上記図6で示すゲート信号補正回路21,22,23の内部構成以外に、遅れ数に応じてターンオンとターンオフの遅れ信号を出力する回路であればよい。
【0042】
<第1の実施形態による作用効果>
以上のように第1の実施形態によれば、電圧センサ41,42,43により各MOSFET素子11,12,13それぞれの動作のばらつきに起因するソース還流電流を検出し、各MOSFET素子11,12,13の動作タイミングを均一化できる。
【0043】
また、第1の実施形態によれば、電圧センサ41,42,43によりソース抵抗51,52,53それぞれの両端電圧を検出することで、ソース還流電流を検出できるので、配線インダクタンスの誤差により発生するソース還流電流を抑制できる。さらに、MOSFET素子11,12,13それぞれの補助ソース端子114,124,134間のリンギングの抑制と、MOSFET素子11,12,13それぞれに流れるメイン電流id1,id2,id3のバランス制御と、短絡検知機能を、MOSFET素子11,12,13それぞれの補助ソース端子114,124,134に直列接続されるソース抵抗51,52,53で実現し、メイン電流id1,id2,id3を測定する電流センサが不要となるため、部品数削減、コスト低減を図ることができる。
【0044】
さらに、第1の実施形態によれば、MOSFET素子11,12,13それぞれに、駆動回路31,32,33を設けることにより、大きな絶縁電源を用いる必要がなくなるとともに、絶縁電源による発熱問題もなくなり、さらにゲート配線を短くすることができる。また、MOSFET素子11、補助ソース端子124、ソース抵抗51、駆動回路31、ゲート端子113による1つの回路を形成することにより、MOSFET素子11のゲート配線に流れる横流がなくなる。さらに、MOSFET素子11,12,13それぞれに、駆動回路31,32,33を設けることにより、新たにMOSFET素子を追加しても、追加したMOSFET素子に供給する電力を確保できる。
【0045】
また、第1の実施形態によれば、メイン電流id1,id2,id3のバランス制御を実行すると同時に、ゲート信号補正回路21,22,23により短絡電流検出を行うため、電流アンバランスによるアーム短絡の誤検出を防ぐことができる。
【0046】
<第2の実施形態>
図7は、本発明の第2の実施形態において、並列接続されたMOSFET素子11,12,13とゲート駆動回路1Bの概略構成図を示す。図7において、上記図1と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
ゲート駆動回路1Bは、マスター・ゲート信号入力部20と、ゲート信号補正回路21,22,23との間に、マスター・駆動回路(駆動部の一例)30を接続している。マスター・駆動回路30は、上記駆動回路31,32,33を1つに集約した回路で、マスター・ゲート信号入力部20に入力されるマスター・ゲート信号に基づいて、各MOSFET素子11,12,13のゲート端子113,123,133に印加するゲート電圧を変化させるためのゲート駆動信号を生成する。
【0048】
ゲート信号補正回路21,22,23は、電圧センサ41,42,43により検出された電圧情報に基づいて、各MOSFET素子11,12,13のゲート端子113,123,133へのゲート駆動信号の出力タイミングを補正する。
【0049】
<第2の実施形態による作用効果>
以上のように第2の実施形態によれば、MOSFET素子11,12,13ごとの駆動回路31,32,33を1つのマスター・駆動回路30に集約できるため、MOSFET素子11,12,13ごとに駆動回路31,32,33を追加する必要がなく、ゲート駆動回路1Bのコストアップ、サイズアップを抑制できる。
【0050】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態は、先の第1の実施形態において、駆動回路31,32,33の基準電位とMOSFET素子11,12,13のソース電位の差分を抑制するようにしたものである。
図8は、本発明の第3の実施形態において、並列接続されたMOSFET素子11,12,13とゲート駆動回路1Cの概略構成図を示す。なお、図8では、MOSFET素子11,12を代表して説明する。また、ゲート駆動回路1Cにおいて、駆動回路31,32を代表して説明する。
【0051】
駆動回路31は、ハイレベルのマスター・ゲート信号が入力されると、内部のバイパスコンデンサ311により基準電位(ゲート電圧)Vgを発生する。駆動回路31から流れる電流は、ゲート端子113に直列接続されるゲート抵抗71を介してMOSFET素子11のゲート-ソース間に形成されるゲート-ソース間容量に充電される。そして、基準電位VgがMOSFET素子11のゲート-ソース間の閾値電圧を超えると、MOSFET素子11が導通状態(オン状態)になる。
【0052】
また、駆動回路32は、ハイレベル(ターンオン)のマスター・ゲート信号が入力されると、内部のバイパスコンデンサ321により基準電位(ゲート電圧)Vgを発生する。駆動回路32から流れる電流は、ゲート端子123に直列接続されるゲート抵抗72を介してMOSFET素子12のゲート-ソース間に形成されるゲート-ソース間容量に充電される。そして、基準電位VgがMOSFET素子12のゲート-ソース間の閾値電圧を超えると、MOSFET素子12が導通状態(オン状態)になる。
【0053】
MOSFET素子11,12がオン状態になると、MOSFET素子11の補助ソース端子114に直列接続されるソース抵抗51と、MOSFET素子12の補助ソース端子124に直列接続されるソース抵抗52との間にソース還流電流isが流れる。すると、ソース抵抗51には、補助ソース端子114から駆動回路31への方向(正方向)のソース電位(Vrs)が印加され、ソース抵抗52には、駆動回路32から補助ソース端子124への方向(負方向)のソース電位(Vrs)が印加される。
【0054】
また、MOSFET素子11がオン状態になることにより、ソース抵抗51、バイパスコンデンサ311、ゲート抵抗71により1つの回路が形成される。同様に、MOSFET素子12がオン状態になることにより、ソース抵抗52、バイパスコンデンサ321、ゲート抵抗72により1つの回路が形成される。
【0055】
ゲート抵抗71には、基準電位Vgとソース電位Vrsと加算した電位が印加され、ゲート抵抗72には、基準電位Vgとソース電位Vrsとの差分の電位が印加される。このような場合、駆動回路31,32の基準電位Vgの変動による誤動作が発生する恐れがある。
【0056】
そこで、第3の実施形態では、ソース抵抗51の抵抗値を、駆動回路31の駆動に必要な抵抗値より小さくしている。具体的には、ゲート抵抗71の抵抗値より小さくしている。また、第3の実施形態では、ソース抵抗52の抵抗値を、駆動回路32の駆動に必要な抵抗値より小さくしている。具体的には、ゲート抵抗72の抵抗値より小さくしている。
【0057】
<第3の実施形態による作用効果>
以上のように第3の実施形態によれば、駆動回路31の基準電位VgとMOSFET素子11のソース電位Vrsとの差分、駆動回路32の基準電位VgとMOSFET素子12のソース電位Vrsとの差分を抑え、駆動回路31,32の基準電位Vgの変動による誤動作を防ぐことができる。
【0058】
<第3の実施形態の変形例>
本発明の第3の実施形態の変形例として、ソース抵抗51,52の抵抗値を、MOSFET素子11,12のゲート抵抗71,72の抵抗値より大きくすることも考えられる。
第3の実施形態の変形例によれば、ソース抵抗51,52の抵抗値が大きいほど、MOSFET素子11,12の補助ソース端子114,124間に流れるソース還流電流を抑制することができる。また、ソース抵抗51,52で発生する損失は、ソース還流電流の2乗に比例するため、電流が低いほど抵抗の発熱が小さい。
【0059】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態は、先の第1の実施形態のゲート信号補正回路21,22,23を1つのゲート駆動回路1Dにより実現するようにしている。
図9は、本発明の第4の実施形態におけるゲート駆動回路1Dの制御処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
ゲート駆動回路1Dは、マスター・ゲート信号を検出すると(ステップST9a)、後述する記憶した出力タイミングによりマスター・ゲート信号を補正し(ステップST9b)、補正後のマスター・ゲート信号を該当するMOSFET素子11の駆動回路31に出力して駆動回路31を駆動開始させる(ステップST9c)。駆動回路31を駆動開始後に、各MOSFET素子11,12,13の電圧センサ41,42,43から出力される電圧情報を検出し(ステップST9c)、検出電圧が閾値を超えるか否かの判断を行う(ステップST9d)。ここで、検出電圧が閾値を超えたと判断した場合(ステップST9d:Yes)、ゲート駆動回路1Dは、該当するMOSFET素子11の駆動回路31に出力するマスター・ゲート信号について記憶した出力タイミングを更新する(ステップST9e)。
【0061】
一方、検出電圧が閾値を超えない場合(ステップST9d:No)、ゲート駆動回路1Dは、該当するMOSFET素子11の駆動回路31に出力するマスター・ゲート信号について記憶した出力タイミングを更新せず、次回のマスター・ゲート信号を迎える。
このように第4の実施形態にあっても、先の第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
<その他の実施形態>
上記のように、本技術は第1から第4の実施形態及び第3の実施形態の変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本技術を限定するものであると理解すべきではない。上記の第1から第4の実施形態が開示する技術内容の趣旨を理解すれば、当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が本技術に含まれ得ることが明らかとなろう。また、第1から第4の実施形態及び第3の実施形態の変形例がそれぞれ開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。例えば、複数の異なる実施形態がそれぞれ開示する構成を組み合わせてもよく、同一の実施形態の複数の異なる変形例がそれぞれ開示する構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B,1C,1D ゲート駆動回路
11,12,13 MOSFET素子
20 マスター・ゲート信号入力部(入力部の一例)
21,22,23 ゲート信号補正回路(第1及び第2のゲート信号補正部の一例)
30 マスター・駆動回路(駆動部の一例)
31,32,33 駆動回路(第1及び第2の素子用駆動部の一例)
41,42,43 電圧センサ
51,52,53 ソース抵抗
61,62,63 還流ダイオード
71,72 ゲート抵抗
111,121,131 ドレイン端子
112,122,132 ソース端子
113,123,133 ゲート端子
114,124,134 補助ソース端子
211,215 コンパレータ回路
212,216 Dラッチ回路
213,214,217、218 カウンタ回路
219 論理積回路
220,221 論理和回路
231 アーム短絡検出用回路
311 バイパスコンデンサ
321 バイパスコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9