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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176358
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】温度検出器を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/02 20060101AFI20241212BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20241212BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241212BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241212BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241212BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B05D3/02 Z
B05D5/12 D
B05D7/24 301R
B05D7/00 H
B05D3/12 C
B05D7/00 N
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094840
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000149332
【氏名又は名称】株式会社大泉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 裕紀
【テーマコード(参考)】
4D075
4F211
【Fターム(参考)】
4D075BB05Z
4D075BB26Z
4D075CA23
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075DA32
4D075DC19
4D075DC21
4D075EA19
4D075EA31
4D075EB33
4D075EC03
4F211AA29
4F211AA39
4F211AB17
4F211AD03
4F211AF01
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH33
4F211AR07
4F211TA03
4F211TC09
4F211TD11
4F211TN07
4F211TN46
4F211TN78
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比較的簡易に且つ内側絶縁合成樹脂の使用量を大幅に低減せしめて製造することができることに加えて、煩雑な位置付け操作を必要とすることなく充分容易に且つ充分正確に熱硬化性合成樹脂が塗布された少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを所定部位に位置付けることができる、温度検出器を製造する方法を提供する。
【解決手段】未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂30が塗布された、少なくともサーミスタチップからリード線28a、28bの接続端部までを、プレート部材2、4の一方の内面に配設されている受溝6、14内に少なくとも部分的に収容する収容工程と、収容工程の後に、プレート部材の一方にプレート部材の他方を重ね合わせる重ね合わせ工程と、重ね合わせ工程の後に、プレート部材の他方の内面をプレート部材の一方の内面に押圧すると共に、絶縁性熱硬化性合成樹脂を加熱して硬化させる押圧及び加熱工程とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーミスタチップ、該サーミスタチップに直接的に又は引出線を介して接続された一対のリード線、及び少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までを被覆する絶縁性被覆を備えた温度検出器を製造する方法にして、
絶縁性合成樹脂から形成され、少なくとも一方の内面には所定方向に延在する受溝が配設されている一対のプレート部材を準備する準備工程と、
少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までに、未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布する塗布工程と、
該準備工程及び該塗布工程の後に、未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂が塗布された、少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までを、該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝内に少なくとも部分的に収容する収容工程と、
該収容工程の後に、該プレート部材の該一方に該プレート部材の他方を重ね合わせる重ね合わせ工程と、
該重ね合わせ工程の後に、該プレート部材の該他方の内面を該プレート部材の該一方の内面に押圧すると共に、該絶縁性熱硬化性合成樹脂を加熱して硬化させる、押圧及び加熱工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝は、該プレート部材の該一方の片端縁近傍から他端縁まで延在する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該プレート部材の該他方の内面にも受溝が配設されており、該プレート部材の該一方に該プレート部材の他方を重ね合わせると、該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝と該プレート部材の該他方の内面に配設されている該受溝とが整合して位置する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該プレート部材の該他方の内面に配設されている該受溝は、該プレート部材の該他方の片端縁近傍から他端縁まで延在し、該他端縁近傍から該他端縁までの部位における横断面形状は一対のリード線の外形に対応して並列配置されている2個の凹弧状である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
該塗布工程においては、少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までを未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂内に浸漬し、次いで絶縁性熱硬化性合成樹脂から取り出すことによって、少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までに絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
絶縁性熱硬化性合成樹脂は、シリカ粒子を混入してチキソ性を付与したエポキシ系合成樹脂である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該プレート部材の各々はポリアミド系合成樹脂から形成されている、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該プレート部材の各々は0.7乃至1.0mmの厚さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該プレート部材の該一方の外形と該他方の外形とは同一矩形状である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝は該プレート部材の該一方の内面の幅方向中央部を長手方向に延在している、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該プレート部材の該一方と該他方とは可撓性薄肉接続片を介して接続されており、該一対のプレート部材の該一方及び該他方並びに該可撓性薄肉接続片は一体に形成されている、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該可撓性薄肉接続片は該プレート部材の該一方の片端縁と該他方の片端縁とを接続している、請求項1記載の方法。
【請求項13】
該プレート部材の該一方の内面には、凹部又は外面まで延びる貫通穴或いは突起が所定間隔をおいて2個形成されており、該一対のプレート部材の該他方の内面には、突起或いは凹部又は外面まで延びる貫通穴が所定間隔をおいて2個形成されており、該凹部又は該貫通穴に該突起を係合することによって該一対のプレート部材の該一方に対して該他方が所要とおりに位置付けられる、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出器を製造する方法、更に詳しくはサーミスタチップ、このサーミスタチップに直接的に又は引出線を介して接続された一対のリード線、及び少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを被覆する絶縁性被覆を備えた形態の温度検出器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、サーミスタチップ、このサーミスタチップに直接的に又は引出線を介して接続された一対のリード線、及び少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを被覆する絶縁性被覆を備えた形態の温度検出器が広く実用に供されている。かような形態の温度検出器を、例えば自動車に搭載されている二次電池の温度検出器として使用する場合、耐熱性及び機械的強度に優れていることに加えて、温度測定対象物に対して比較的広い面積で接触することができると共に充分に薄いことが望まれる。下記特許文献1には、かような要望を満たす温度検出器を製造する方法として、サーミスタチップ、このサーミスタチップに引出線を介して接続された一対のリード線、及び少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを、一対の内側絶縁合成樹脂シート及び一対の外側絶縁合成樹脂シート間に配設し、一対の内側絶縁合成樹脂シート及び一対の外側絶縁合成樹脂シートを相互に接近する方向に且つそれらの平面に対して垂直な方向に加圧すると共に加熱することが開示されている。一対の内側絶縁合成樹脂シートの各々は融点が比較的低いフッ素系合成樹脂であるフッ素化エチレンプロピレンから構成され、一対の外側絶縁合成樹脂シートの各々は融点が比較的高いフッ素系合成樹脂であるポリテトラフルオロエチレンから構成されている。一対の内側合成樹脂シート及び一対の外側合成樹脂シートの各々の平面形状は矩形状であり、同一寸法及び同一平面形状を有する。加熱はフッ素化エチレンプロピレンの融点よりも高いがポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低い温度で遂行され、従って一対の外側絶縁合成樹脂シートは溶融されることはないが、一対の内側絶縁合成樹脂シートは溶融され、しかる後に硬化される。溶融後硬化された内側絶縁合成樹脂シート及び外側絶縁合成樹脂シートが絶縁被覆を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表特許WO2019/087755公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上記特許文献1に開示されている方法には、(1)加圧及び加熱の際に一対の内側絶縁合成樹脂シートと共に一対の外側絶縁合成樹脂シートを充分精密に位置付けることが必要であり、操作が煩雑である、(2)一対の内側絶縁合成樹脂シートを使用することに起因して内側絶縁合成樹脂の使用量が必要以上になり製造コストが増大する、という解決すべき問題がある。
【0005】
上記とおりの事実に鑑み、本発明者は、先に、特願2022-166278において、少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までに、未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布し、しかる後に熱硬化性合成樹脂が塗布された少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを一対の絶縁性合成樹脂シート間に介在させて、一対のシートを相互に接近する方向に且つそれらの平面に対して垂直な方向に加圧すると共に熱硬化性合成樹脂を加熱する方法を提案した。かような方法によれば、一対の内側絶縁合成樹脂シートを使用することに代えて、少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までに、未硬化状態の熱硬化性合成樹脂を塗布する故に、従来の方法に比べて比較的簡易に且つ内側絶縁合成樹脂の使用量を大幅に低減せしめて温度検出器を製造することができる。
【0006】
しかしながら、本発明者が提案して上記のとおりの方法も未だ充分に満足し得るものではなく、一対の絶縁性合成樹脂シート間に熱硬化性合成樹脂が塗布された少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを位置付ける際に、一対の絶縁性合成樹脂シートに対して充分精密に位置付けることが必ずしも容易ではなく、位置付け操作が煩雑であり、そしてまた一対の絶縁性合成樹脂シートに対する位置付けに誤差が発生してしまう傾向がある。
【0007】
本発明は上記のとおりの事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、従来の方法に比べて比較的簡易に且つ内側絶縁合成樹脂の使用量を大幅に低減せしめて製造することができることに加えて、煩雑な位置付け操作を必要とすることなく充分容易に且つ充分正確に熱硬化性合成樹脂が塗布された少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを所定部位に位置付けることができる、新規且つ改良された温度検出器を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討及び実験の結果、絶縁性合成樹脂から形成され、少なくとも一方の内面には所定方向に延在する受溝が配設されている一対のプレート部材を準備し、未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂が塗布された、少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを、プレート部材の一方の内面に配設されている受溝内に少なくとも部分的に収容することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する温度検出器を製造する方法として、
サーミスタチップ、該サーミスタチップに直接的に又は引出線を介して接続された一対のリード線、及び少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までを被覆する絶縁性被覆を備えた温度検出器を製造する方法にして、
絶縁性合成樹脂から形成され、少なくとも一方の内面には所定方向に延在する受溝が配設されている一対のプレート部材を準備する準備工程と、
少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までに、未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布する塗布工程と、
該準備工程及び該塗布工程の後に、未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂が塗布された、少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までを、該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝内に少なくとも部分的に収容する収容工程と、
該収容工程の後に、該プレート部材の該一方に該プレート部材の他方を重ね合わせる重ね合わせ工程と、
該重ね合わせ工程の後に、該プレート部材の該他方の内面を該プレート部材の該一方の内面に押圧すると共に、該絶縁性熱硬化性合成樹脂を加熱して硬化させる、押圧及び加熱工程と、
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0010】
好ましくは、該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝は、該プレート部材の該一方の片端縁近傍から他端縁まで延在する。該プレート部材の該他方の内面にも受溝が配設されており、該プレート部材の該一方に該プレート部材の他方を重ね合わせると、該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝と該プレート部材の該他方の内面に配設されている該受溝とが整合して位置するのが好適である。該プレート部材の該他方の内面に配設されている該受溝は、該プレート部材の該他方の片端縁近傍から他端縁まで延在し、該他端縁近傍から該他端縁までの部位における横断面形状は一対のリード線の外形に対応して並列配置された2個の凹弧状であるのが望ましい。該塗布工程においては、少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までを未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂内に浸漬し、次いで絶縁性熱硬化性合成樹脂から取り出すことによって、少なくとも該サーミスタチップから該リード線の接続端部までに絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布するのが好都合である。絶縁性熱硬化性合成樹脂は、シリカ粒子を混入してチキソ性を付与したエポキシ系合成樹脂であるのが望ましい。該プレート部材の各々はポリアミド系合成樹脂から形成されているのが好適である。該プレート部材の各々は0.7乃至1.0mmの厚さを有するのが望ましい。好ましくは、該プレート部材の該一方の外形と該他方の外形とは同一矩形状である。該プレート部材の該一方の内面に配設されている該受溝は該プレート部材の該一方の内面の幅方向中央部を長手方向に延在しているのが好適である。好ましくは、該プレート部材の該一方と該他方とは可撓性薄肉接続片を介して接続されており、該一対のプレート部材の該一方及び該他方並びに該可撓性薄肉接続片は一体に形成されている。該可撓性薄肉接続片は該プレート部材の該一方の片端縁と該他方の片端縁とを接続しているのが好都合である。該プレート部材の該一方の内面には、凹部又は外面まで延びる貫通穴或いは突起が所定間隔をおいて2個形成されており、該一対のプレート部材の該他方の内面には、突起或いは凹部又は外面まで延びる貫通穴が所定間隔をおいて2個形成されており、該凹部又は該貫通穴に該突起を係合することによって該一対のプレート部材の該一方に対して該他方が所要とおりに位置付けられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、従来の方法に比べて比較的簡易に且つ内側絶縁合成樹脂の使用量を大幅に低減せしめて製造することができることに加えて、煩雑な位置付け操作を必要とすることなく充分容易に且つ充分正確に熱硬化性合成樹脂が塗布された少なくともサーミスタチップからリード線の接続端部までを所定部位に位置付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法に使用される一対のプレート部材の好適実施形態を示す斜面図。
図2】本発明の方法に使用されるサーミスタチップ及びこのサーミスタチップに引出線を介して接続された一対のリード線を示す斜面図。
図3図2に示すサーミスタチップ及びこのサーミスタチップに引出線を介して接続された一対のリード線の接続端部に絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布した状態を示す斜面図。
図4図3に示す絶縁性熱硬化性合成樹脂を塗布したサーミスタチップ及びこのサーミスタチップに引出線を介して接続された一対のリード線の接続端部並びにリード線の接続端部に隣接する部分を、図1に図示する一対のプレート部材の一方の内面に配設されている受溝に部分的に収容した状態を示す斜面図。
図5図4に示す状態において一対のプレート部材の一方に他方を重ね合わせた状態を示す斜面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0014】
準備工程
本発明の方法に使用される一対のプレート部材の好適実施形態を図示している図1を参照して説明すると、本発明の方法においては、一対のプレート部材2及び4を準備することが重要である。一対のプレート部材2及び4の一方、即ちプレート部材2は、外形が矩形状である板状部材から構成されている。このプレート部材2の内面には、所定方向に延在する受溝6が配設されていることが重要である。図示の実施形態においては、受溝6は、プレート部材2の幅方向中央部を長手方向に、プレート部材2の片端縁8の近傍から他端縁10まで連続して延在している。受溝6の両端縁を除く部分は平面視において略細長長方形であり、受溝6の片端縁は平面視において円弧状である。受溝6の横断面形状は細長長方形状でよい。プレート部材2には、更に、長手方向中央部において幅方向に間隔をおいて2個の貫通穴12が形成されている。貫通穴12の一方は受溝6に対して片側に間隔をおいて位置し、他方は受溝6に対して他側に間隔をおいて位置している。プレート部材2の内面から外面まで延びる貫通穴12の横断面形状は円形でよい。所望ならば、貫通穴12に代えて、好ましくは横断面形状が円形である凹部を形成することもできる。
【0015】
一対のプレート部材2及び4の他方、即ちプレート部材4も、外形が矩形状である板状部材から構成されている。プレート部材2の外形とプレート部材4の外形とは実質上同一であるのが好適である。プレート部材4の内面にも受溝14が形成されている。図示の実施形態においては、受溝14はプレート部材4の幅方向中央部を長手方向に、プレート部材4の片端縁16の近傍から他端縁18まで連続して延在している。受溝14の主部位14aは片端縁を除いて平面視において細長長方形状であり、片端縁は平面視において円弧状である。受溝14の横断面形状は細長長方形でよい。一方、受溝14におけるプレート部材4の他端縁18の近傍から他端縁18までの部位14bは、平面視において長方形状であるが、横断面において並列配置された2個の凹弧状である。横断面における並列配置された2個の凹弧状は、後述する一対のリード線の横断面形状に対応している。プレート部材4の内面には、更に、長手方向中央部において幅方向に間隔をおいて2個の突起20が形成されている。かかる突起20の配設部位はプレート部材2における上記貫通穴12の配設部位に対応しており、突起20の横断面形状はプレート部材2に配設されている上記貫通穴12の横断面形状と実質上同一であり、円形であるのが好適である。突起20の一方は受溝14に関して片側に間隔をおいて位置し、他方は受溝14に対して他側に間隔をおいて位置している。
【0016】
図1を参照して説明を続けると、図示の実施形態においては、一対のプレート部材2及び4は可撓性薄肉接続片22によって接続されている。可撓性薄肉接続片22はプレート部材2の片端縁8とプレート部材4の片端縁16とを接続する幅狭帯状片から構成されている。プレート部材2とプレート部材4とは、可撓性薄肉接続片22を撓ますことによって相対的に旋回動することができる。
【0017】
上述したとおりのプレート部材2及び4並びに可撓性薄肉接続片22は、適宜の絶縁性合成樹脂から一体に成形されているのが好都合である。絶縁性合成樹脂の好適例としては、機械的強度が大きいポリアミド系合成樹脂を挙げることができる。プレート部材2及び4の厚さは0.7乃至1.0mm程度で、可撓性薄肉接続片22の厚さは0.1乃至0.2mm程度でよい。
【0018】
而して、上述した実施形態においてはプレート部材2とプレート部材4とを可撓性薄肉接続片22によって接続しているが、所望ならばプレート部材2とプレート部材4とを夫々別個の部材とすることもできる。また、上述した実施形態においてはプレート部材4の内面にも受溝14を配設しているが、かかる受溝14を省略することもできる。受溝14を省略する場合には、プレート部材2の内面に配設されている受溝6の深さを幾分増大するのが望ましい。更に、図示の実施形態においてはプレート部材2に貫通穴12(又は凹部)を形成しプレート部材4に突起20を形成しているが、プレート部材2に突起20を形成しプレート部材4に貫通穴12(又は凹部)を形成することもできる。
【0019】
塗布工程
図2には、サーミスタチップ24及びこのサーミスタチップ24に引出線26a及び26bを介して接続された一対のリード線28a及び28bが図示されている。サーミスタチップ24は、図示してないが、サーミスタ、このサーミスタの両表面に積層された素子電極層及びこの素子電極層に積層されたカバー電極層から構成されている。かようなサーミスタチップ24自体は周知の形態であり、例えば特開2020―21861号公報に記載されているので、その詳細については本明細書においては説明を省略する。サーミスタチップ24には一対の引出線26a及び26bの先端が溶着又は半田付け等の適宜の接続手段によって接続されており、引出線26a及び26bの後端には同様に溶着又は半田付け等の適宜の接続手段によってリード線28a及び28bの先端が接続されている。引出線26a及び26bは銅ニッケル合金線から構成することができ、リード線28a及び28bは多数の銅線を撚った心材とこれを覆う絶縁性合成樹脂から形成された被覆から構成することができる。リード線28a及び28bの先端部即ち接続端部においては被覆が除去されていて、心材が引出線26a及び26bに接続されている。図示の実施形態においては、更に、引出線26a及び26bの先端が接続されたサーミスタ素子は合成樹脂又はガラスによってシールされている。図示の実施形態においては、引出線26a及び26bを介してリード線28a及び28bをサーミスタ素子に接続しているが、本発明の方法は、リード線28a及び28bを直接的にサーミスタ素子に接続した形態のものにも適用することができる。
【0020】
本発明の方法においては、図3に図示する如く、少なくともサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部を、従って少なくともサーミスタチップ24からリード線28a及び28bの接続端部までを、絶縁性熱硬化性合成樹脂30で塗布する。かような塗布は、ディップコーティング様式、即ち未硬化状態の絶縁性熱硬化性合成樹脂内にサーミスタチップ24からリード線28a及び28bの接続端部(図示の実施形態においては、被覆が除去された接続端部と共にこれらに隣接するリード線28a及び28bの被覆が存在する部分を含む)までを浸漬し、次いで絶縁性熱硬化性合成樹脂から取り出すことによって好適に実施することができる。熱硬化性合成樹脂30の塗布量は、熱硬性合成樹脂からサーミスタチップ24からリード線28a及び28bの接続端部(及びこれらに隣接するリード線28a及び28bの被覆が存在する部分)までを取り出す速度を調節することによって適宜に調節することができる。熱硬化性合成樹脂からサーミスタチップ24からリード線28a及び28bの接続端部(及びこれらに隣接するリード線28a及び28bの被覆が存在する部分)までを比較的低速で取り出すと、比較的多量の熱硬化性合成樹脂を塗布することができ、比較的高速で取り出すと、比較的少量の熱硬化性合成樹脂を塗布することができる(熱硬化性合成樹脂の塗布量については後に更に言及する)。塗布する熱硬化性合成樹脂の好適例としては、シリカ粒子を混入してチキソ性をチキソトロピー指数で3.0乃至3.9程度まで付与したエポキシ系合成樹脂を挙げることができる。
【0021】
所望ならば、ディップコーティング様式によって熱硬化性合成樹脂30を塗布することに代えて、例えば絵筆の如き適宜の塗布具を使用して、未硬化状態の熱硬化性合成樹脂を少なくともサーミスタチップ24からリード線28a及び28bの接続端部(及びこれらに隣接するリード線28a及び28bの被覆が存在する部分)までに塗布することもできる。
【0022】
収容工程
本発明の方法においては、上記準備工程及び上記塗布工程の後に収容工程を遂行する。この収容工程においては、図4に図示する如く、未硬化状態の熱硬化性合成樹脂30が塗布された少なくともサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部を、上記一対のプレート部材の一方即ちプレート部材2の内面に配設された受溝6内に少なくとも部分的に収容する。図示の実施形態においては、未硬化状態の熱硬化性合成樹脂30が塗布されたサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部並びにリード線28a及び28bの接続端部に隣接する部分と共に、リード線28a及び28bの未硬化状態の熱硬化性合成樹脂30が塗布されていない部分が、横断面において略半分まで受溝6内に収容される。プレート部材2の内面に対する未硬化状態の熱硬化性合成樹脂30が塗布された少なくともサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部の位置付けは、受溝6に収容することによって充分容易に且つ充分正確に達成することができる。
【0023】
重ね合わせ工程
上記収容工程の後に、図5に図示する如く、一対のプレート部材の他方即ちプレート部材4を一対のオプレート部材の一方即ちプレート部材2に対して旋回動させて、プレート部材2にプレート部材4を重ね合わせる。かくすると、プレート部材2の内面に形成されている受溝6にプレート部材4の内面に形成されている受溝14が整合して位置し、未硬化状態の熱硬化性合成樹脂30が塗布された少なくともサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部並びにリード線28a及び28bの接続端部に隣接する部分並びにリード線28a及び28bの被覆が存在する部分の受溝6から上方に突出している上半部が受溝14内に収容される。リード線28a及び28bの未硬化状態の熱硬化性合成樹脂30が塗布されていない部分の上半部は、受溝14における横断面形状が並列配置された2個の凹弧状である部位14bに収容される。
【0024】
上記重ね合わせ工程に次いで、プレート部材4の内面をプレート部材2の内面に押圧する。少なくともサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部(図示の場合は更にリード線28a及び28bの接続端部に隣接する部分)に塗布された熱硬化性合成樹脂30の塗布量は、プレート部材4の内面をプレート部材2の内面に押圧された時に受溝6及び14から熱硬化性合成樹脂30が幾分はみ出す程度であるのが好適である。プレート部材2の内面にプレート部材4の内面を押圧するのと同時に又はこれに続いて、熱硬化性合成樹脂30を加熱して硬化させ、プレート部材2とプレート部材4とを硬化された熱硬化性合成樹脂によって相互に接合する。熱硬化性合成樹脂30の加熱は、熱硬化性合成樹脂30の硬化温度よりも高いがプレート部材2及び4の溶融温度よりも低い温度でプレート部材2及び4を適宜の加熱手段で加熱することで遂行することができる。所望ならば、プレート部材2及び4を介することなく適宜の加熱手段によって熱硬化性合成樹脂30自体を直接的に加熱することもできる。かくして、少なくともサーミスタチップ24、引出線26a及び26b及びリード線28a及び28bの接続端部(図示の場合は更にリード線28a及び28bの接続端部に隣接する部分)が、硬化された熱硬化性合成樹脂30及びプレート部材2及び4からなる絶縁性被覆によって被覆された温度検出器が得られる。
【符号の説明】
【0025】
2:プレート部材
4:プレート部材
6:受溝
8:片端縁
10:他端縁
12:貫通孔
14:受溝
16:片端縁
18:他端縁
20:突起
22:可撓性薄肉接続片
24:サーミスタ
26a:引出線
26b:引出線
28a:リード線
28b:リード線
30:絶縁性熱硬化性合成樹脂
図1
図2
図3
図4
図5