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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176364
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241212BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241212BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20241212BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20241212BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241212BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F01N3/08 A
F01N3/24 E
F01N3/02 101A
F01N3/24 L
F01N13/00 B
B01D53/26 100
B01J20/18 A ZAB
B01D53/92 240
B01D53/92 352
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094852
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕美
(72)【発明者】
【氏名】砂金 健太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】天谷 道明
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
4D002
4D052
4G066
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004DA23
3G004EA06
3G091AA02
3G091AB08
3G091BA36
3G091CA07
3G091GB09
3G091HA08
3G091HA19
3G091HA23
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA13
4D002DA45
4D002EA01
4D002EA02
4D052AA02
4D052BA00
4G066AA61B
4G066CA35
4G066DA02
(57)【要約】
【課題】効果的に二酸化炭素を吸着可能な二酸化炭素分離装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素分離装置10は、脱水部30と、二酸化炭素吸着部40と、排水構造50とを備える。脱水部30は、熱交換器20から流入する排気ガスに含まれる水分を取り除くように構成される。二酸化炭素吸着部40は、脱水部30を通過した排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着するように構成される。排水構造50は、熱交換器20と脱水部30との間の排気ガスの流路において、排気ガスから凝縮した水が流路を伝って脱水部30へ流入するのを抑制するように設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスを冷却するように構成される熱交換器に接続され、前記熱交換器から流入する前記排気ガスに含まれる水分を取り除くように構成される脱水部と、
前記脱水部を通過した前記排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着するように構成される二酸化炭素吸着部と、
前記熱交換器と前記脱水部との間の前記排気ガスの流路に設けられ、前記排気ガスから凝縮した水が前記流路を伝って前記脱水部に流入することを抑制するための排水構造と、
を備える二酸化炭素分離装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素吸着部は、前記二酸化炭素の吸着材としてゼオライトを備える請求項1記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項3】
前記内燃機関を備える車両に搭載される請求項1記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項4】
前記排水構造は、
前記排気ガスから凝縮した水を収集するように構成される窪み構造と、
前記窪み構造によって収集された水を排出するように構成される排水孔と、
を備える請求項1記載の二酸化炭素分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置が既に知られている(例えば特許文献1参照)。二酸化炭素分離装置は、例えば内燃機関の排気系に設けられる。二酸化炭素分離装置は、内燃機関から流入する排気ガスに含まれる水を吸着する水吸着部と、水吸着部から流入する排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着部とを備える。
【0003】
二酸化炭素吸着部には、二酸化炭素吸着材として、例えばリチウム複合酸化物やゼオライトなどが使用される。二酸化炭素吸着材は、雰囲気中に水が多く存在すると、二酸化炭素の吸着量が大きく低下する性質を有する。このため、水吸着部において排気ガスに対する脱水処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-152289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気ガスからの脱水を、吸着材を用いて実現する場合、水吸着部に流入する水の量が多いほど、その水を吸着するために、多くの吸着材を水吸着部に搭載する必要がある。すなわち、脱水部に流入する水の量が多いほど、脱水部に高い脱水能力が要求される。
【0006】
そこで、本開示の一側面によれば、排気ガスに対して必要な脱水能力を抑え、効果的に二酸化炭素を吸着可能な二酸化炭素分離装置を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面によれば、二酸化炭素分離装置が提供される。二酸化炭素分離装置は、脱水部と、二酸化炭素吸着部と、排水構造とを備える。
脱水部は、熱交換器に接続される。熱交換器は、内燃機関から排出される排気ガスを冷却するように構成される。脱水部は、熱交換器から流入する排気ガスに含まれる水分を取り除くように構成される。
【0008】
二酸化炭素吸着部は、脱水部を通過した排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着するように構成される。排水構造は、熱交換器と脱水部との間の排気ガスの流路に設けられる。排水構造は、排気ガスから凝縮した水が流路を伝って脱水部に流入するのを抑制するために設けられる。
【0009】
排水構造を熱交換器と脱水部との間の排気ガスの流路に設けることによれば、脱水部に流入する水の量を抑えることができる。従って、上記の二酸化炭素分離装置によれば、排気ガスに対して必要な脱水能力を抑え、効果的に二酸化炭素を吸着可能である。
【0010】
本開示の一側面によれば、二酸化炭素吸着部は、二酸化炭素の吸着材としてゼオライトを備えることができる。ゼオライトは、二酸化炭素だけでなく水も吸着する性質を有する。こうした性質を有する吸着材を含む二酸化炭素分離装置において上記の排水構造を設けることによれば、二酸化炭素吸着部における二酸化炭素吸着能力が、水により低下するのを効果的に抑制することができる。
【0011】
本開示の一側面によれば、二酸化炭素分離装置は、内燃機関を備える車両に搭載されてもよい。必要な脱水能力を抑えることができることによれば、二酸化炭素分離装置を小型化可能である。小型で二酸化炭素吸収能力の高い二酸化炭素分離装置は、車両への搭載に適している。
【0012】
本開示の一側面によれば、排水構造は、窪み構造を備え得る。窪み構造は、排気ガスから凝縮した水を収集するように構成され得る。排水構造は、排水孔を備え得る。排水孔は、窪み構造によって収集された水を排出するように構成され得る。窪み構造を設けることによって、脱水部への水の流入を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態における二酸化炭素分離装置の構成を表す図である。
図2図2A及び図2Bは、二酸化炭素分離装置の配置を例示する図である。
図3】コントローラが実行するバルブ制御処理を表すフロチャートである。
図4】排気ガスの流路における水の残留量を表すグラフである。
図5】第二実施形態における排水構造の構成を表す図である。
図6】第三実施形態における排水構造の構成を表す図である。
図7】二酸化炭素分離装置に、排気ガスの一部が流入する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[第一実施形態]
本実施形態の二酸化炭素分離装置10は、図1に示すように車両1に搭載される。車両1の例には、二輪及び四輪自動車が含まれる。
【0015】
車両1は、内燃機関2を備える。内燃機関2では、燃料と空気との混合気の燃焼によって高温の燃焼ガスが発生する。この高温の燃焼ガスが、排気ガスとして排気通路C0に排出される。二酸化炭素分離装置10は、この排気通路C0からの排気ガスが通る排気通路C1に接続される。図1に示される排気通路C0,C1,C2,C3,C4は、排気ガスの流路を構成する中空の構造体であり、例えば、排気ガスを排気口(図示せず)に導くための導管によって構成される。
【0016】
車両1がガソリン車である場合、内燃機関2と二酸化炭素分離装置10との間の排気ガスの流路には、例えば図2Aに示すように、触媒3、フィルタ4、及び、マフラー5が配置される。この場合、排気通路C1は、マフラー5と連通する排気通路であり得る。二酸化炭素分離装置10は、例えば触媒3、フィルタ4、及び、マフラー5を通って内燃機関2から流入する排気ガスに含まれる二酸化炭素を、排気ガスから分離するように構成される。
【0017】
車両1がディーゼル車である場合、内燃機関2と二酸化炭素分離装置10との間の排気ガスの流路には、例えば図2Bに示すように、触媒6A、フィルタ7、SCR(Selective Catalytic Reduction)8、触媒6B、及びマフラー9が配置される。この場合、排気通路C1は、マフラー9と連通する排気通路であり得る。二酸化炭素分離装置10は、例えば触媒6A、フィルタ7、SCR8、触媒6B、及びマフラー9を通って内燃機関2から流入する排気ガスに含まれる二酸化炭素を、排気ガスから分離するように構成される。
【0018】
図1に示すように、二酸化炭素分離装置10は、熱交換器20と、水吸着器30と、二酸化炭素吸着器40とを備える。熱交換器20は、内燃機関2からの排気ガスが流れる排気通路C1に接続される。
【0019】
水吸着器30は、排気通路C2を通じて熱交換器20と接続される。二酸化炭素吸着器40は、排気通路C3を通じて水吸着器30と接続される。二酸化炭素吸着器40の出口には、車両1の外部に排気ガスを排出するための排気口と直接又は間接的につながる排気通路C4が接続される。
【0020】
熱交換器20は、排気通路C1を通じて内燃機関2から流入する排気ガスを冷却するように構成される。内燃機関2からの高温の排気ガスは、熱交換器20によって、二酸化炭素吸着器40での二酸化炭素吸着に適した温度まで冷却される。冷却された低温の排気ガスは、排気通路C2を通じて、水吸着器30に送出される。
【0021】
水吸着器30は、脱水部として機能する。水吸着器30は、排気通路C2を通じて熱交換器20から流入する低温の排気ガスに含まれる水分を取り除くように構成される。水吸着器30は、排気ガスに含まれる水分を吸着するための水吸着材35を備える。
【0022】
例えば、水吸着材35は、排気ガスの流路において、排気ガスの流れ方向に垂直な断面の全体をおよそ満たすように、水吸着器30内に充填される。水吸着材35の例には、固体吸着材としてのゼオライト及びアルミナが含まれる。水吸着材35は、単一種類の水吸着材で構成されてもよいし、複数種類の水吸着材の組合せで構成されてもよい。
【0023】
二酸化炭素吸着器40は、排気通路C3を通じて水吸着器30から流入する排気ガス、すなわち水吸着材35を通過した排気ガスから二酸化炭素を取り除くように構成される。二酸化炭素吸着器40は、排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着するための二酸化炭素吸着材45を備える。
【0024】
例えば、二酸化炭素吸着材45は、排気ガスの流路において、排気ガスの流れ方向に垂直な断面の全体をおよそ満たすように、二酸化炭素吸着器40内に充填される。二酸化炭素吸着材45の例には、固体吸着材としてのゼオライト、活性炭、及び金属有機構造体(MOF :Metal Organic Frameworks)が含まれる。ゼオライト等は、多孔質材料であり、高い表面積を有する。
【0025】
二酸化炭素分離装置10は更に、熱交換器20と水吸着器30との間において排気ガスの流路を構成する排気通路C2に、排水構造50を備える。
【0026】
排気ガスの低温化によっては、排気ガスに含まれる水分としての水蒸気の一部が凝縮する。この凝縮により排気ガスに含まれる水蒸気の一部は、液体に変化する。すなわち、排気通路C2の内壁には、排気ガスから凝縮した液体の水が付着して、排気ガスの流れ方向に移動する。
【0027】
排水構造50は、排気ガスから凝縮した水が排気通路C2を伝って水吸着器30に流入するのを抑制するために設けられる。具体的に、排水構造50は、貯留構造51と、排水孔53と、バルブ55とを備える。図1は、排水構造50の断面形状を概略的に表す。
【0028】
貯留構造51は、排気ガスから凝縮した水を貯留するように構成される。排気ガスから凝縮した水は、重力によって排気通路C2の内壁下側、すなわち排気通路C2の底部に落ち、底部を伝って水吸着器30側に流れる。ここでいう下は、重力が働く方向である。
【0029】
排気通路C2は、その底部が熱交換器20から水吸着器30に向けて水平となるように配置される。あるいは、水吸着器30は、熱交換器20よりも低い位置に配置され、排気通路C2は、その底部が、熱交換器20から水吸着器30に向けて下り坂を形成するように斜めに配置される。
【0030】
貯留構造51は、水の主な通り道である排気通路C2の底部に設けられる。貯留構造51は、排気通路C2の内壁に形成された窪み構造に対応する。貯留構造51は、周囲からの水の収集及び水の貯留のために、排気通路C2において、周囲よりも低い位置に底を有する。貯留構造51は、水の収集のために、底が最低部に向けて傾斜した構成にされる。
【0031】
貯留構造51の底には、貯留構造51によって収集及び貯留された水を排出するための排水孔53が設けられる。排水孔53は、貯留構造51の底に設けられた水抜き用の底孔53Aと、底孔53Aから下方に延びる中空の排水管53Bと、を備える。底孔53Aは、貯留構造51の最低部に設けられる。
【0032】
排水管53Bは、底孔53Aに接続された第一端部とは反対側の第二端部が、車両1の外部に連通するように設置され、それにより、底孔53Aから落ちる水は車両1の外部に排出される。
【0033】
バルブ55は、排水管53Bの上部に設けられ、排水孔53を通じてバルブ55より下に流れる水の流量を変更可能に構成される。バルブ55は、例えば電動モータによって駆動される電動式のバルブとして構成され、車両1に設けられたコントローラ70からの制御信号に従って、排水孔53を開閉するように構成される。
【0034】
バルブ55が閉じている状態では、排水孔53において、バルブ55より下の流路がバルブ55により閉塞される。それにより、排水孔53から外部に水が流れず、貯留構造51には、水が蓄えられる。
【0035】
バルブ55が開いている状態では、排水孔53において、バルブ55より下の流路が解放される。それにより、貯留構造51において収集及び蓄積されていた水は、排水孔53を通って外部に排出される。
【0036】
コントローラ70は、二酸化炭素分離装置10のバルブ55を制御するために車両1に設けられる。別例によれば、バルブ制御とは別の車両制御のために設けられた電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が、コントローラ70として機能する。
【0037】
コントローラ70は、プロセッサ71とメモリ73とを備える。メモリ73は、図3に示すバルブ制御処理をプロセッサ71に実行させるためのコンピュータプログラムを記憶する。プロセッサ71は、図3に示すバルブ制御処理を繰返し実行することにより、排気ガスが内燃機関2で発生しているとき、バルブ55を閉じた状態に維持するように、バルブ55を制御する。
【0038】
バルブ制御処理において、プロセッサ71は、内燃機関2が停止するまでバルブ55を閉じた状態に維持する(S110,S120)。なぜなら、内燃機関2が停止してないとき、すなわち内燃機関2が作動中であるときには、内燃機関2で発生した排気ガスが排水孔53から流出する可能性があるためである。例えば、プロセッサ71は、イグニッションスイッチのオン/オフ信号の入力を受けて、内燃機関2の作動/停止を判断することができる。
【0039】
プロセッサ71は、内燃機関2が停止したと判断すると(S120でYes)、バルブ55を制御して、所定条件が満足されるまで、バルブ55を開いた状態に維持する(S130,S140)。これにより、貯留構造51に貯留された水は、排水孔53を通じて外部に排出される。
【0040】
プロセッサ71は、内燃機関2が作動を開始するまで、バルブ55を開いた状態に維持することができる。あるいは、プロセッサ71は、所定時間が経過するまで、バルブ55を開いた状態に維持することができる。所定時間は、貯留構造51に貯蓄された水がすべて流れ出るのに必要な時間として予め見積もられた時間であり得る。
【0041】
プロセッサ71は、所定条件が満足されたと判断すると(S140でYes)、バルブ55を制御して、バルブ55を閉じた状態に切り替える(S150)。これにより、排水孔53は、閉じられる。プロセッサ71は、このような処理を繰返し実行することによって、排気ガスの流出を抑制するように、排水タイミングを制御する。
【0042】
図4には、内燃機関2から水吸着器30に至るまでの排気ガスの流路における水の残留量の変化を、グラフを用いて概念的に示す。図4におけるグラフの縦軸は、水の残留量を示し、横軸は、排気ガスの流路上の位置を表す。
【0043】
グラフに示される位置P1は、内燃機関2と排気通路C0との接続地点に対応する。位置P2は、熱交換器20と排気通路C2との接続地点に対応する。位置P3は、排水構造50が設置された地点に対応する。位置P4は、排気通路C2と水吸着器30との接続地点に対応する。
【0044】
上述したように、排気ガスに含まれる水蒸気は、温度低下と共に凝縮し、液体の水として排気ガスから分離する。排気ガスは、熱交換器20で強制的に冷却されることから、位置P2において、排気通路C2を流れる水蒸気の量は、位置P1と比較して減少し、代わりに液体の水の量が増大する。
【0045】
従来では、排水構造50が存在しないために、位置P4まで、液体の水が、水蒸気と共に移動し、水吸着器30に流入していた。これに対し、本実施形態では、排水構造50の存在により、位置P3で、液体の水のほとんどが取り除かれる。位置P4に到達する水は、排気ガスに含まれる水蒸気が大半である。
【0046】
従って、本実施形態によれば、水吸着器30で吸着しなければならない水の量を、排水構造50がない場合と比較して大きく低減することができる。すなわち、水吸着器30において必要な水の吸着能力を、大きく低減することができる。
【0047】
水吸着器30における水の吸着能力は、吸着材の量に関係する。必要な吸着能力の低減は、水吸着器30における必要な吸着材の量の低減を可能にし、水吸着器30の小型化及び軽量化を可能にする。
【0048】
このため、本実施形態によれば、排気ガスに対する必要な脱水能力を抑えて、効果的に二酸化炭素を吸着可能な小型及び軽量の二酸化炭素分離装置10を提供することができる。
【0049】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態の二酸化炭素分離装置10を説明する。但し、第二実施形態の二酸化炭素分離装置10は、排水構造80が、第一実施形態と異なるだけである。第二実施形態の二酸化炭素分離装置10の排水構造80以外の構成は、第一実施形態と実質同じである。従って、以下では、図5を用いて排水構造80の構成を選択的に説明する。
【0050】
第二実施形態の二酸化炭素分離装置10は、熱交換器20と水吸着器30との間の排気通路C2において、水吸着器30と隣接する位置に、排水構造80を備える。
【0051】
水吸着器30は、排気ガスの流路を構成する筐体31内に、水吸着材35を備える。水吸着材35は、排気ガスの流れ方向に垂直な断面全体をおよそ満たすように、筐体31内に充填される。
【0052】
排水構造80は、排気ガスから凝縮した水が水吸着器30に流入するのを抑制するための構成として、貯留構造81と、排水孔83と、バルブ85とを備える。図5は、排水構造80及び水吸着器30の断面形状を概略的に表す。
【0053】
貯留構造81は、水吸着器30の筐体31と排気通路C2との接続地点において、排気通路C2の内壁下側、すなわち排気通路C2の底部に設けられ、筐体31内の水吸着材35の収容空間と分離された水の貯留空間を形成する。貯留空間は、排気通路C2の下側に窪んだ内壁と、筐体31の外壁とで囲まれた空間に対応する。
【0054】
貯留空間は、水吸着器30における排気ガスの流入口33より下に設けられる。従って、排気ガスから凝縮した水が、排気通路C2を伝って水吸着器30側に移動するとき、水は、水吸着器30に到達せずに、貯留構造81で貯留される。
【0055】
排水孔83は、貯留構造81に貯留された水を排出するために、貯留構造81の底に設けられた水抜き用の底孔83Aと、底孔83Aから下方に延びる中空の排水管83Bと、を備える。
【0056】
貯留構造81は、水の収集のために、底が最低部に向けて傾斜した構成にされる。底孔83Aは、貯留構造81の最低部に設けられる。排水管83Bは、排水管53Bと同様に、底孔83Aから落ちる水を車両1の外部に排出することができるように構成される。
【0057】
バルブ85は、排水管83Bに設けられ、排水孔83を通じてバルブ85より下に流れる水の流量を変更可能に構成される。バルブ85は、バルブ55と同様に、電動バルブとして構成され、車両1に設けられたコントローラ70により開閉制御される。
【0058】
本実施形態によれば、排気ガスが水吸着材35に到達するまでの排気ガスの流路において、水吸着材35に非常に近い位置に排水構造80が存在する。このため、水吸着材35に近い位置で凝縮した水を含めて、水吸着材35に到達するまでに排気ガスから分離した水の大半を、排水することができる。
【0059】
従って、本実施形態によれば、水吸着器30を小型及び軽量化でき、特には車載用に好適な二酸化炭素分離装置10を提供することができる。
【0060】
[第三実施形態]
続いて、第三実施形態の二酸化炭素分離装置10を説明する。但し、第三実施形態の二酸化炭素分離装置10は、排水構造90が、第一実施形態と異なるだけである。第三実施形態の二酸化炭素分離装置10の排水構造90以外の構成は、第一実施形態と実質同じである。従って、以下では、図6を用いて排水構造90の構成を選択的に説明する。
【0061】
第三実施形態の二酸化炭素分離装置10は、熱交換器20と水吸着器30との間の排気通路C2の底部に、排水構造90を備える。排水構造90は、窪み構造91と、排水孔93と、タンク98とを備える。図6は、排水構造90の断面形状を概略的に表す。
【0062】
窪み構造91は、第一実施形態の貯留構造51と同様に構成される。排水孔93もまた、第一実施形態の排水孔53と同様に、窪み構造91の底に設けられた水抜き用の底孔93Aと、排水管93Bとを備える。
【0063】
但し、本実施形態では、排水管93Bにバルブは存在しない。排水管93Bは、その端部が水で満たされたタンク98に浸されるように配置される。具体的には、排水管93Bは、排水管93Bの窪み構造91と接続される第一端部とは反対側の第二端部が、タンク98の水面より下に位置するように、配置される。この配置により、排水管93Bの第二端部は、排気ガスが流出しないように、水により閉塞される。
【0064】
排気ガスから凝縮した水は、排気通路C2を移動する過程で、周囲より低い底を有する窪み構造91内に流れ込む。窪み構造91に流れ込んだ水は、底孔93Aから排水管93Bを通ってタンク98内に落ちる。
【0065】
タンク98は、水が完全に充填された状態で、その水面が、排水管93Bの第一端部より下に位置するように、配置される。このため、タンク98に落ちる水によって、タンク98内の水量が増えると、排水管93Bの水位が、第一端部にまで到達することなく、タンク98から水があふれ出る。
【0066】
このように、本実施形態の排水構造90によれば、窪み構造91で収集された水を、タンク98からあふれ出る水として、外部に排出することができる。この排水構造90は、バルブを用いることなく、排気ガスの流出を抑制しながら、窪み構造91で収集された水を、外部に排出可能である点で有利である。
【0067】
[その他の実施形態]
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、本開示の技術は、車載用の二酸化炭素分離装置10への適用に限定されない。例えば、本開示の技術は、一般家庭、オフィス、及び工場等に設置されて、燃焼装置や焼却装置からの排気ガスを処理する二酸化炭素分離装置に適用されてもよい。排水構造50,80は、バルブ55,85を備えなくてもよい。
【0068】
二酸化炭素分離装置10は、脱水部として、水吸着器30に代えて、分離膜を用いて排気ガスから水分を取り除くフィルタが設けられてもよい。分離膜は、排気ガスを通すが、そこに含まれる水分を通さない性質の膜材料で構成され得る。分離膜に流入する水の量が、フィルタの脱水能力に関係する場合、本開示の技術を適用することによって、フィルタのサイズや設置コストを抑制することが可能である。
【0069】
二酸化炭素吸着器40は、化学吸収により排気ガスから二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部として構成されてもよい。この場合、二酸化炭素吸収部は、例えば、アミン溶液などの液体材料を、二酸化炭素吸収材として用いて、排気ガスから二酸化炭素を分離することができる。すなわち、本願明細書でいう「吸着」は、「吸収」を含むと理解されてよい。
【0070】
二酸化炭素分離装置10は、図2A及び図2Bに示すように、内燃機関2から直接又は間接的に流入する排気ガスを処理するように配置され得る。二酸化炭素分離装置10は、図7に示すように、内燃機関2からの排気ガスのうち、例えばバルブや分離膜等を通じて分岐した一部の排気ガスのみが流入するように配置されてもよい。この場合、二酸化炭素分離装置10は、内燃機関2で発生した排気ガスの一部から二酸化炭素を分離するように機能し得る。
【0071】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0072】
[本明細書が開示する技術思想]
本明細書には、次の技術思想が開示されていると理解することができる。
[項目1]
内燃機関から排出される排気ガスを冷却するように構成される熱交換器に接続され、前記熱交換器から流入する前記排気ガスに含まれる水分を取り除くように構成される脱水部と、
前記脱水部を通過した前記排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着するように構成される二酸化炭素吸着部と、
前記熱交換器と前記脱水部との間の前記排気ガスの流路に設けられ、前記排気ガスから凝縮した水が前記流路を伝って前記脱水部に流入することを抑制するための排水構造と、
を備える二酸化炭素分離装置。
[項目2]
前記二酸化炭素吸着部は、前記二酸化炭素の吸着材としてゼオライトを備える項目1記載の二酸化炭素分離装置。
[項目3]
前記内燃機関を備える車両に搭載される項目1又は項目2記載の二酸化炭素分離装置。
[項目4]
前記排水構造は、
前記排気ガスから凝縮した水を収集するように構成される窪み構造と、
前記窪み構造によって収集された水を排出するように構成される排水孔と、
を備える項目1~項目3のいずれか一項記載の二酸化炭素分離装置。
[項目5]
前記排水孔は、排水タイミングを制御するためのバルブを備える項目4記載の二酸化炭素分離装置。
【符号の説明】
【0073】
1…車両、2…内燃機関、10…二酸化炭素分離装置、20…熱交換器、30…水吸着器、31…筐体、33…流入口、35…水吸着材、40…二酸化炭素吸着器、45…二酸化炭素吸着材、50,80,90…排水構造、51,81…貯留構造、53,83,93…排水孔、53A,83A,93A…底孔、53B,83B,93B…排水管、55,85…バルブ、70…コントローラ、71…プロセッサ、73…メモリ、91…窪み構造、98…タンク、C0,C1,C2,C3,C4…排気通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7