(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017637
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】防食構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 31/06 20060101AFI20240201BHJP
E02D 5/60 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E02D31/06 D
E02D31/06 C
E02D5/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120413
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227261
【氏名又は名称】日鉄防食株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 義行
(72)【発明者】
【氏名】岩本 桂二
(72)【発明者】
【氏名】横山 琢也
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041BA07
(57)【要約】
【課題】隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された壁の表面を高度に防食することができる防食構造体の提供。
【解決手段】隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された壁の表面に配置する、少なくとも防食層および耐食層ならびにこれらを前記壁に固定する固定手段を含む防食構造体であって、前記継手の外面と前記耐食層の内面との間にビーズ状発泡体が充填されてなるビーズ層を有し、前記固定手段は前記継手には固定されておらず、前記鋼管本体の外面に固定されている、防食構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された壁の表面に配置する、少なくとも防食層および耐食層ならびにこれらを前記壁に固定する固定手段を含む防食構造体であって、
前記継手の外面と前記耐食層の内面との間にビーズ状発泡体が充填されてなるビーズ層を有し、
前記固定手段は前記継手には固定されておらず、前記鋼管本体の外面に固定されている、防食構造体。
【請求項2】
前記鋼管本体の中心軸に垂直な断面において、
隣り合う2つの前記鋼管本体の中心軸を示す点同士をつなぐ直線と、その中心軸を示す点および前記固定手段の存在位置を結ぶ直線と、がなす角度が20~50度である、請求項1に記載の防食構造体。
【請求項3】
前記固定手段は、前記鋼管本体に固定される固定板と、前記固定板に固定されたボルトと、前記ボルトと螺合するナットとを含み、前記ボルトを前記防食層および前記耐食層に貫通させた後、前記ナットと螺合させることで前記鋼管本体の外面に固定される、請求項1または2に記載の防食構造体。
【請求項4】
前記耐食層と前記防食層との間に、さらにクッション層を有する、請求項1または2に記載の防食構造体。
【請求項5】
前記防食層と前記クッション層との間に、さらに遮水シートを有する、請求項4に記載の防食構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防食構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管矢板の表面に防食構造体を設置して防食する方法が適用されている。このような防食方法の一つとして、鋼管矢板の表面に有機樹脂等からなる防食層を形成し、その表面に、さらに耐食層を密着させ固定することで、防食構造体を設置する方法が知られている。
このような防食処理を施すことで、鋼管矢板に長期の防食性を付与することができる。
このような防食方法は、例えば特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-28949号公報
【特許文献2】特開2015-194215号公報
【特許文献3】実開平6-1991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隣り合う鋼管本体が継手を介して連結されてなる壁として、海洋構造物や河川構造物等の既設構造物の少なくとも一部である鋼管矢板や、ジャイロプレス工法(登録商標)にて形成された連壁が挙げられる。
このような壁が飛沫帯や干満帯等、海水に曝される環境またはそれに類似する環境に設置されている場合、その壁には腐食対策が必要となり得る。
【0005】
鋼管矢板やジャイロプレス工法(登録商標)にて形成された連壁のような壁では、鋼管本体と継手との相対的な位置のバラツキが大きく、また、設置後も鋼管本体に対する継手の相対的な位置が変動しやすい。そのため、その外面を防食する防食層および耐食層を外面に固定する固定手段が継手に固定された場合、防食層または耐食層を壁の外面に適切に設置することが難く、また、設置したとしても防食層または耐食層と壁との間に隙間が形成されることがあり、長期にわたって防食層または耐食層を適切な位置に維持することが困難であった。したがって壁の表面を高度に防食することが困難な場合があった。
【0006】
本発明は、隣り合う鋼管本体が継手を介して連結されてなる壁の表面を高度に防食することができる防食構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は次の(1)~(5)である。
(1)隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された壁の表面に配置する、少なくとも防食層および耐食層ならびにこれらを前記壁に固定する固定手段を含む防食構造体であって、
前記継手の外面と前記耐食層の内面との間にビーズ状発泡体が充填されてなるビーズ層を有し、
前記固定手段は前記継手には固定されておらず、前記鋼管本体の外面に固定されている、防食構造体。
(2)前記鋼管本体の中心軸に垂直な断面において、
隣り合う2つの前記鋼管本体の中心軸を示す点同士をつなぐ直線と、その中心軸を示す点および前記固定手段の存在位置を結ぶ直線と、がなす角度が20~50度である、上記(1)に記載の防食構造体。
(3)前記固定手段は、前記鋼管本体に固定される固定板と、前記固定板に固定されたボルトと、前記ボルトと螺合するナットとを含み、前記ボルトを前記防食層および前記耐食層に貫通させた後、前記ナットと螺合させることで前記鋼管本体の外面に固定される、上記(1)または(2)に記載の防食構造体。
(4)前記耐食層と前記防食層との間に、さらにクッション層を有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の防食構造体。
(5)前記防食層と前記クッション層との間に、さらに遮水シートを有する、上記(4)に記載の防食構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隣り合う鋼管本体が継手を介して連結されてなる壁の表面を高度に防食することができる防食構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】護岸Gに設置された鋼管矢板の海側に、本発明の防食構造体を取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図2】ジャイロプレス工法(登録商標)によって陸地Lに設置された連壁の海側に、本発明の防食構造体を取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図3】ジャイロプレス工法(登録商標)によって陸地Lに設置された別の連壁の海側に、本発明の防食構造体を取り付けた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、隣り合う鋼管本体が継手を介して連結された壁の表面に配置する、少なくとも防食層および耐食層ならびにこれらを前記壁に固定する固定手段を含む防食構造体であって、前記継手の外面と前記耐食層の内面との間にビーズ状発泡体が充填されてなるビーズ層を有し、前記固定手段は前記継手には固定されておらず、前記鋼管本体の外面に固定されている、防食構造体である。
このような防食構造体を、以下では「本発明の防食構造体」ともいう。
【0011】
本発明の防食構造体の具体的な実施態様について、図を用いて説明する。
以下に図を用いて説明する態様は本発明の防食構造体の好適例であって、本発明の防食構造体はこれらに限定されない。
【0012】
[実施態様1]
図1は、海洋構造物の少なくとも一部である鋼管矢板1が護岸Gに設置されており、その鋼管矢板1の海S側(外側)に、本発明の防食構造体2を取り付けた状態を示す概略断面図である。
図1に示す本発明の防食構造体の具体的な実施態様を、以下では「実施態様1」ともいう。
なお、海洋構造物に対して海水等の水が存在するサイドを「外側」、その反対サイドを「内側」ともいう。実施態様1の場合であれば、護岸Gに対して海S側が「外側」であり、その反対サイドが「内側」である。
【0013】
図1において、鋼管矢板1は、長尺筒型鋼材で形成された断面円形状の鋼管本体11と、2つの鋼管本体11に挟まれるように配置された継手12とを有する。鋼管本体11を継手12が連結することで壁を構成している。
【0014】
継手12は鋼管本体11に対して小径の円筒からなり、その周方向の一部が切断されて、この切断部分に他の円筒を装入することで継手12をなしている。このような継手12をP-P型という。本発明の防食構造体において継手はP-P型でなくてもよく、例えばP-T型やL-T型であってもよい。
【0015】
実施形態1の鋼管矢板1は、港湾施設の岸壁構造物を構築するために用いられる。このような用途では、海水に曝されることによる腐食が進行しやすい。そこで、鋼管矢板1には、本発明の防食構造体2を好ましく適用することができる。
【0016】
実施態様1において本発明の防食構造体2は、鋼管矢板1の表面に形成された防食層21を備える。また、防食層21における鋼管本体11の表面に形成された部分の外側にクッション層23を備える。また、防食層21における継手12の表面に形成された部分の外側にビーズ層25を備える。そして、クッション層23およびビーズ層25の外側に、最も外側の層として耐食層27を備えている。
これらの層は、鋼管本体11の表面に固定された固定手段29によって、鋼管矢板1の表面に密着するように固定されている。
【0017】
<防食層>
実施態様1において防食層21は、鋼管矢板1の外側の表面に密着するように設けられる。すなわち、鋼管本体11の外側表面および継手12の外側表面に密着するように設けられる。
【0018】
防食層21は従来公知の防食剤を用いて形成することができる。例えば、市販の防食剤であるペトロラタム(ペトロラタムペースト、ペトロラタムシート)、エポキシ樹脂、酸化重合樹脂などを用いて防食層を形成することができる。例えばペトロラタムペーストを鋼管矢板1の表面に塗布し、さらにその外面にペトロラタムシートを貼り付けて防食層を形成することができる。
【0019】
鋼管矢板1の外側の表面に密着するように設ける防食層21の量は、鋼管矢板1の外面の単位面積当たりの防食層の質量として、2.0~4.0kg/m2であることが好ましく、2.0~3.0kg/m2であることがより好ましく、2.0~2.5kg/m2であることがより好ましく、2.0~2.2kg/m2であることがさらに好ましい。
また、防食層21の厚さは特に限定されないが、2~5mmであることが好ましく、2~4mmであることがより好ましく、2~3mmであることがより好ましい。
【0020】
<クッション層>
実施態様1では、防食層21における鋼管本体11の外面に形成された部分の外側にクッション層23を備える。ここでクッション層23は、鋼管本体11と継手12との境界付近まで存在していることが好ましい。例えば固定手段29から継手12に近い側にはクッション層23ではなく、ビーズ層25が存在していてもよい。クッション層23とビーズ層25との境界の位置は必ずしも厳密である必要はなく、鋼管本体11と継手12との境界付近であればよい。この境界付近でクッション層23とビーズ層25とは接していて、これらの間に隙間がないことが好ましい。
【0021】
なお、本発明の防食構造体においてクッション層23は必須ではない。
【0022】
クッション層23は緩衝材からなるシートである。
緩衝材としては、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、発泡スチロールが挙げられる。
クッション層23の厚さは特に限定されないが、5~20mmであることが好ましく、10~15mmであることがより好ましい。
【0023】
<ビーズ層>
実施態様1では、防食層21における継手12の外面に形成された部分の外側であって、後述する耐食層27よりも内側にビーズ層25を備える。
【0024】
ビーズ層25は、ビーズ状発泡体が充填されてなる層である。
ビーズ状発泡体とは、発泡プラスチックからなる、直径が数mm程度の粒子(ビーズ)の集合体を意味する。ビーズの直径は2~6mm程度であることが好ましく、3~5mm程度であることがより好ましい。
発泡プラスチックは発泡スチロール(気泡を含ませたポリスチレン)であってよい。発泡プラスチックは、ポリスチレンの他、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレンなどからなるものであってもよい。
【0025】
例えば、このようなビーズ状発泡体を多数装入した袋を、継手12の外面と耐食層27の内面との間(実施態様1の場合であれば、防食層21における継手12の表面に形成された部分の外側、かつ、耐食層27の内側)に充填することで、ビーズ層25を形成することができる。
【0026】
ここでビーズ状発泡体が装入された袋の中にさらに砂等を入れて、ビーズ状発泡体が装入された袋の浮力を調整することが好ましい。
【0027】
<遮水シート>
本発明の防食構造体は、防食層21とクッション層23との間や、防食層21とビーズ層25との間に、さらに遮水シートを有してもよい。
遮水シートとして例えば従来公知のポリエチレンからなるシートを利用することができる。
【0028】
<耐食層>
耐食層27は耐食性を備えるシート状または板状のものであって、本発明の防食構造体2において最も外側に配置され、鋼管矢板1の外面に固定できる形状に加工されたものであれば特に限定されない。耐食層27は、例えば鋼管矢板1における鋼管本体11の外面形状に沿った断面半円形状の部分と、その端部から直線的に延びる部分とからなっていてよい。また、
図1に示す実施態様1のように、鋼管本体11の外面形状に沿った断面半円形状の部分にフランジ部271が形成されていて、隣に配置された別の耐食層27におけるフランジ部271と、ボルト273およびナット275によって結合されていてもよい。
【0029】
耐食層27は、例えば耐食性金属板からなることが好ましい。
耐食層27が耐食性金属板からなる場合、耐食性金属板の材質は特に限定されない。例えば耐食性金属として、チタン、チタン合金、ステンレス(例えばSUS316、SUS316L、SUS317、SUS317にCu、N等を添加して耐孔食性等を改善したもの等)が挙げられ、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
【0030】
耐食性金属板の板厚も特に限定されないが、0.3~5.0mmが好ましく、1.0~3.0mmがより好ましい。軽量であり施工時の取扱いが容易だからである。
また、耐食性金属板は2枚以上を接合したものであってもよい。
【0031】
耐食層27は、ガラス繊維や炭素繊維などを含む繊維強化プラスチック(Fiber-Reinforced Plastics(FRP))からなるものであってよい。
この場合、FRPからなる耐食層の厚さは0.3~5.0mmであることが好ましく、2.0~3.0mmであることがより好ましい。
【0032】
<固定手段>
固定手段29は、継手12には固定されておらず、鋼管本体11の外面に固定されている。
固定手段29はボルトとナットとであることが好ましい。
例えば複数のボルトを固定板(帯鋼等)の表面に立てるように溶接したものを用意し、ボルトが外側を向くように固定板を鋼管本体11の外面に溶接し、その後、ボルトを、防食層21、クッション層23および耐食層27の順に貫通させ、耐食層27の外面側からボルトとナットとを螺合させて固定する。
【0033】
固定手段29は鋼管本体11の外面であって、継手12になるべく近い位置に設置することが好ましい。この場合、継手12の外面側において、耐食層27、ビーズ層25および防食層21を継手12の外面へより密着させることができるからである。
【0034】
具体的には、
図1に示すような鋼管本体11の中心軸ωに垂直な断面において、隣り合う2つの鋼管本体11の中心軸ωを示す点同士をつなぐ直線と、その中心軸ωを示す点および固定手段の存在位置を結ぶ直線と、がなす角度θが20~50度であることが好ましく、30~45度であることがより好ましい。継手12の外面側において耐食層27、ビーズ層25および防食層21を継手12の外面へより密着させることができるからである。
【0035】
[実施態様2]
次に、本発明の防食構造体の別の具体的な実施態様を、
図2を用いて説明する。
図2に示す本発明の防食構造体の具体的な実施態様を、以下では「実施態様2」ともいう。
【0036】
図2は、ジャイロプレス工法(登録商標)にて形成された連壁3の概略断面図である。実施態様2に示す連壁は鋼管本体31が継手32を介して連結された海洋構造物であり、陸地Lに設置されている。また、その海S側(外側)に、本発明の防食構造体2を取り付けた状態を示している。
なお、海洋構造物に対して海水等の水が存在するサイドを「外側」、その反対サイドを「内側」ともいう。実施態様2の場合であれば、陸地Lに対して海S側が「外側」であり、その反対サイドが「内側」である。
【0037】
図2では、前述の
図1を用いて説明した実施態様1と同様のものについては、同じ符号を付している。
【0038】
図2において、連壁3は、長尺筒型鋼材で形成された断面円形状の鋼管本体31と、2つの鋼管本体31に挟まれるように配置された継手32とを有する。鋼管本体31を継手32が連結することで壁を構成している。
【0039】
継手32は鋼管本体31に対して小径の円筒からなる鋼管である。このような鋼管が陸地L側と海S側とに各々、合計で2つ配置されている。
【0040】
実施形態2の連壁3は、港湾施設の岸壁構造物を構築するために用いられる。このような用途では、海水に曝されることによる腐食が進行しやすい。そこで、連壁3には、本発明の防食構造体2を好ましく適用することができる。
【0041】
実施態様2において本発明の防食構造体2は、連壁3の表面に形成された防食層21を備える。また、防食層21における鋼管本体31の表面に形成された部分の外側にクッション層23を備える。また、防食層21における継手32の表面に形成された部分の外側にビーズ層25を備える。そして、クッション層23およびビーズ層25の外側に、最も外側の層として耐食層27を備えている。
これらの層は、鋼管本体31の表面に固定された固定手段29によって、連壁3の表面に密着するように固定されている。
【0042】
実施態様2において防食層21、クッション層23、ビーズ層25、耐食層27および固定手段29は、実施態様1の場合と同様のものであってよい。好適態様についても同様である。
また、実施態様1の場合と同様、実施態様2の場合も、防食層21とクッション層23との間や、防食層21とビーズ層25との間に、さらに同様の遮水シートを有してもよい。
【0043】
[実施態様3]
次に、本発明の防食構造体の別の具体的な実施態様を、
図3を用いて説明する。
図3に示す本発明の防食構造体の具体的な実施態様を、以下では「実施態様3」ともいう。
【0044】
図3は、ジャイロプレス工法(登録商標)にて形成された連壁4の概略断面図である。実施態様3に示す連壁は鋼管本体41が継手42を介して連結された海洋構造物であり、陸地Lに設置されている。実施態様3では実施態様2と異なり、継手42が土留めの役割を果たす二等辺山形鋼からなる。
また、その海S側(外側)に、本発明の防食構造体2を取り付けた状態を示している。
なお、海洋構造物に対して海水等の水が存在するサイドを「外側」、その反対サイドを「内側」ともいう。実施態様3の場合であれば、陸地Lに対して海S側が「外側」であり、その反対サイドが「内側」である。
【0045】
図3では、前述の
図1を用いて説明した実施態様1および
図2を用いて説明した実施態様2と同様のものについては、同じ符号を付している。
【0046】
図3において、連壁4は、長尺筒型鋼材で形成された断面円形状の鋼管本体41と、2つの鋼管本体41に挟まれるように配置された継手42とを有する。鋼管本体41を継手42が連結することで壁を構成している。
実施態様3では、継手42と鋼管本体11との隙間を埋めるようにシール材43が充填されている。シール材として、例えば水中硬化型エポキシ樹脂シール材を用いることができる。
【0047】
実施形態3の連壁4は、港湾施設の岸壁構造物を構築するために用いられる。このような用途では、海水に曝されることによる腐食が進行しやすい。そこで、連壁4には、本発明の防食構造体2を好ましく適用することができる。
【0048】
実施態様3において本発明の防食構造体2は、連壁4の表面に形成された防食層21を備える。また、防食層21における鋼管本体41の表面に形成された部分の外側にクッション層23を備える。また、防食層21における継手42の表面に形成された部分の外側にビーズ層25を備える。そして、クッション層23およびビーズ層25の外側に、最も外側の層として耐食層27を備えている。
これらの層は、鋼管本体41の表面に固定された固定手段29によって、連壁4の表面に密着するように固定されている。
【0049】
実施態様3において防食層21、クッション層23、ビーズ層25、耐食層27および固定手段29は、実施態様1の場合と同様のものであってよい。好適態様についても同様である。
また、実施態様1および実施態様2の場合と同様、実施態様3の場合も、防食層21とクッション層23との間や、防食層21とビーズ層25との間に、さらに同様の遮水シートを有してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 鋼管矢板
11、31、41 鋼管本体
12、32、42 継手
2 本発明の防食構造体
21 防食層
23 クッション層
25 ビーズ層
27 耐食層
271 フランジ部
273 ボルト
275 ナット
29 固定手段
3、4 連壁